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東京地方裁判所 平成14年(ワ)28691号 判決 2004年8月25日

A事件原告(反訴被告)

X1

B事件被告・C事件原告

X2

A事件被告・C事件被告

Y1

A事件被告(反訴原告)・B事件原告・C事件被告

ニッポンレンタカーサービス株式会社

主文

一  被告Y1及び被告会社は、原告X1に対し、各自一八〇万七六〇〇円及びこれに対する平成一四年八月二四日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  被告Y1及び被告会社は、原告X2に対し、各自七一万六六一〇円及びこれに対する平成一四年八月二四日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

三  原告X1及び原告X2のその余の請求をいずれも棄却する。

四  被告会社の原告X1に対する反訴請求及び原告X2に対する請求をいずれも棄却する。

五  訴訟費用は、全事件を通じてこれを五分し、その一を原告X1及び原告X2の負担とし、その余を被告Y1及び被告会社の負担とする。

六  この判決は、第一、二項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由

第一請求

一  A事件

(1)  本訴

被告Y1及び被告会社は、原告X1に対し、各自二四〇万七六〇〇円及びこれに対する平成一四年八月二四日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

(2)  反訴

原告X1は、被告会社に対し、二七三万一七五五円及びうち二二四万二四七五円に対する平成一四年一一月二三日から、うち七万六一五〇円に対する同月二八日から、うち二一万三一三〇円に対する同年一二月二八日から各支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  B事件

原告X2は、被告会社に対し、一二三万四四二五円及びうち一〇二万九六五〇円に対する平成一四年一一月二三日から、うち一〇万五九五〇円に対する平成一四年二月二八日から、うち九万八八二五円に対する平成一五年五月三〇日から各支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

三  C事件

被告Y1及び被告会社は、原告X2に対し、各自一五六万六六一〇円及びこれに対する平成一四年八月二四日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

一  A事件

(1)  本訴

ア 原告X1の請求原因

(ア) 事故の発生

次の事故が発生した(以下「本件事故」という。)

a 日時 平成一四年八月二四日午後二時三五分ころ

b 場所 東京都目黒区<以下省略>先路上

c 車両一 普通乗用自動車(<番号省略>。以下「原告車」という。)

同運転者 原告X1

同同乗者 原告X2

d 車両二 普通乗用自動車(<番号省略>。以下「被告車」という。)

同運転者 被告Y1

同保有者 被告会社

e 態様 原告X1が、原告車を歩道に右側前輪及び右側後輪を乗り上げる形で停車させていたところ、被告車を運転していた被告Y1は、停車中の原告車を避けきれずに、被告車を原告車の左側側面に衝突させ、その衝撃で原告車は押し出され、歩道上のポールに原告車の右側前部が衝突した。

(イ) 責任原因

a 被告Y1は、前方不注視の過失があるから、民法七〇九条に基づく損害賠償責任を負う。

b 被告会社は、被告車の保有者であるから、自動車損害賠償保障法(以下「自賠法」という。)三条に基づく損害賠償責任を負う。

(ウ) 原告X1の受傷及び治療経過

原告X1は、本件事故により、頸椎捻挫、腰椎捻挫の傷害を負い、平成一四年八月二七日から同年一二月二五日までの間、渋谷サンクスクリニックに通院し(実日数五四日)、次の損害を被った。

(エ) 原告X1の損害及びその額

a 治療費 四九二〇円

平成一四年一一月二一日から同年一二月二七日までの未払分である。

b 通院交通費 二万二六八〇円

c 休業損害 五八万〇〇〇〇円

平成一四年一〇月二六日から同年一一月二五日までの未払分である。

d 傷害慰謝料 一五〇万〇〇〇〇円

原告X1は、あたかも保険金詐欺をしたかのような被告会社の対応によって、著しく名誉を傷つけられ、甚大な精神的苦痛を被った。

e 弁護士費用 三〇万〇〇〇〇円

(オ) よって、原告X1は、被告Y1及び被告会社に対し、各自、損害賠償金二四〇万七六〇〇円及びこれに対する本件事故日である平成一四年八月二四日から支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

イ 請求原因に対する認否

(ア) 被告Y1

請求原因(ア)(事故の発生)及び同(イ)(責任原因)aは認め、その余は争う。

(イ) 被告会社

a 請求原因(ア)(事故の発生)は否認する。

本件事故と称される状況は、偶発的に発生したものではない。

b 同(イ)(責任原因)bは否認する。

c 同(ウ)(原告X1の受傷及び治療経過)は不知。

d 同(エ)(原告X1の損害及びその額)は否認する。

(2)  反訴

ア 被告会社の請求原因

(ア) 被告会社は、原告X1に対し、本件事故に基づく損害賠償請求に応じて一二四万三八八三円(治療費六万四五七〇円、休業損害一一七万九三一三円)を支払ったが、これは、被告会社が負担すべきいわれのないものであることが明らかとなった。

そこで、被告会社は、原告X1に対し、平成一四年一一月一五日、一週間以内に上記金員を返金するよう請求した。

(イ) 被告会社は、平成一四年一一月一三日、車両修理費として九九万八五九二円を担当修理業者に、同月二五日に代車代七万六一五〇円をレンタカー業者に、同年一二月二五日に治療費残金二一万三一三〇円を担当治療機関にそれぞれ直接支払った。

(ウ) よって、被告会社は、原告X1に対し、不当利得金二七三万一七五五円及びうち二二四万二四七五円に対する期限経過後である平成一四年一一月二三日から、うち七万六一五〇円に対する着金の翌日である同月二八日から、うち二一万三一三〇円に対する着金の翌日である同年一二月二八日から各支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

イ 請求原因に対する原告X1の認否

被告会社の支払の事実及び返金請求の事実は認め、その余は否認する。

二  B事件

(1)  被告会社の請求原因

ア 被告会社は、原告X2に対し、本件事故に基づく損害賠償請求に応じて一〇二万九六五〇円(治療費六万三六五〇円、休業損害九六万六〇〇〇円)を支払ったが、これは、被告会社が負担すべきいわれのないものであることが明らかとなった。

そこで、被告会社は、原告X2に対し、平成一四年一一月一五日、一週間以内に上記金員を返金するよう請求した。

イ 被告会社は、治療費残金として、平成一四年一二月二五日に一〇万五九五〇円を、同年五月二七日に九万八八二五円を担当治療機関に振込送金して支払い、それぞれ各二営業日後には所定の口座に着金した。

ウ よって、被告会社は、原告X2に対し、不当利得金一二三万四四二五円及びうち一〇二万九六五〇円に対する期限経過後である平成一四年一一月二三日から、うち一〇万五九五〇円に対する支払着金日の翌日である同年一二月二八日から、うち九八八二五円に対する支払着金日の翌日である平成一五年五月三〇日から各支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

(2)  請求原因に対する原告X2の認否

被告会社の支払の事実及び返金請求の事実は認め、その余は否認する。

三  C事件

(1)  原告X2の請求原因

ア 事故の発生

A事件本訴のア(原告X1の請求原因)(ア)(事故の発生)と同じ。

イ 責任原因

A事件本訴のア(原告X1の請求原因)(イ)(責任原因)と同じ。

ウ 原告X2の受傷及び治療経過

原告X2は、本件事故により、頸椎腰椎挫傷の傷害を負い、平成一四年八月二四日から同付き二六日までの間東邦大学医学部附属大橋病院に、同月二七日から同月三一日までの間渋谷サンクスクリニックに、同年九月二日から同年一〇月三一日までの間駒崎病院にそれぞれ通院した(実日数合計三一日間)。

エ 原告X2の損害及びその額

(ア) 通院交通費 一万六六一〇円

(イ) 傷害慰謝料 一三〇万〇〇〇〇円

原告X2は、何ら過失なく事故を起こされ、怪我をさせられ、会社に迷惑をかけ、家族や友人に心配をかけ、大変な思いをしているのに、被告会社は、謝るどころか、あたかも保険金詐欺をしたかのような疑いをかけて裁判まで起こしており、悲憤に耐えない。その精神的苦痛は言語に尽くし難いものがあり、あえて金銭に見積もれば上記金額を下回らないというべきである。

(ウ) 弁護士費用 二〇万〇〇〇〇円

オ よって、原告X2は、被告Y1及び被告会社に対し、各自、損害賠償金一五六万六六一〇円及びこれに対する本件事故日である平成一四年八月二四日から支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

(2)  請求原因に対する認否

ア 被告Y1

請求原因ア(事故の発生)及び同イ(責任原因)のうち被告Y1の部分を認め、その余は争う。

イ 被告会社

(ア) 請求原因ア(事故の発生)は否認する。

本件事故と称される状況は、偶発的に発生したものではない。

(イ) 同イ(責任原因)(イ)は否認する。

(ウ) 同ウ(原告X2の受傷及び治療経過)は不知。

(エ) 同エ(原告X2の損害及びその額)は否認する。

第三判断

一  A事件

(1)  本訴

ア 原告X1の請求原因について

(ア) 本件事故の発生について

a 関係各証拠によれば、本件の経過として、次の事実が認められる。

(a) 平成一四年八月二四日午後二時三五分より以前において、原告X1及び原告X2のいずれかと被告Y1とが面識があったことをうかがわせる証拠は一切ない。

原告X1は、平成一三年三月二四日及びそれ以前において、複数回の交通事故に遭っていた(乙一六、原告X1本人)。別件事故において提出された休業損害証明書によれば、原告X1は、神戸市所在の奥山商店に平成一二年一月一〇日から勤務していることになっており(乙一六)、本件において提出された休業損害証明書(甲七)によれば、東京都所在のアクア東京株式会社に同年二月一日以後勤務していることになっている。これは、原告X1によれば、原告X1が、平成一三年四月に奥山商店を辞めるまでの間、一か月の大半は奥山商店で仕事をし、数日間は東京でアクア東京株式会社の仕事をするというように二重の生活を続けており、別件事故当時は未だ神戸に居住していたことから、奥山商店の勤務を前提とする休業損害証明書を提出したにすぎないという(甲一〇、原告X1本人)。原告X1の説明は必ずしも不合理なものではない。

(b) 平成一四年八月二四日午後三時一〇分から三時二五分までの間、被告Y1立会いの実況見分が行われた。その際、作成された実況見分調書(甲八)添付の現場見取図は別紙のとおりである。被告Y1は、別紙の<1>地点において時速約三〇kmで進行し、<2>地点において脇見をし、<3>地点において衝突し、<4>地点において停止したと指示説明した。また、原告車については、衝突時の地点<ア>と停止時の地点<イ>までの距離が〇・五mと記載されている。

(c) 富士火災海上保険株式会社宛ての事故原因調査報告書(乙四、一三)には、平成一四年八月二九日、警察官と面談聴取したところによれば、現場臨場した際、原告車はガードフェンスのポールに衝突した状態であり、現場ポールに衝突痕も確認できた。

株式会社損害保険リサーチの報告書(乙一四)によれば、同年一〇月七日、面談に応じた被告Y1は、「時速二〇ないし二五kmくらいで直進を続けたが、脇見をして進行方向から注意がそれて、いつの間にか右に寄っていて、はっと気がついたときには原告車が右直前一mくらいに迫っていた。全く回避する余裕はなく、被告車の右角フェンダーが斜めに擦るように、原告車の左後部フェンダー付近に衝突し、原告車は衝撃で数一〇m進んでガードフェンスの支柱に衝突して停止し、被告車は急ブレーキをかけたため、その左横にやや原告車より進んだ位置で停止し、直後の位置は被告車の運転席が原告車のボンネット後部付近にあった。私が脇見をした理由は、その前の週に海水浴に行って日焼けをしており、体の皮膚が剥けてかゆみがあり、特に膝から下のすねあたりのかゆみが非常に強かったため、運転中にズボンの裾をまくって足を擦り合わせたりしていたためだと思う。衝突後、私はすぐ被告車を先に進めて脇に寄って停止し、降車して原告車の方に行って安否を確認した。相手はしきりに首のあたりを抑えていた。その直後に携帯電話で一一〇番通報をした。救急車が来るまでの間、相手にひたすら謝罪した。相手が何を言ったのか詳しくは記憶していないが、彼らは車内でカーナビを見ていたと言っていたように思う。この事故で私に負傷したところはない。」などと述べていた。その後もほぼ一貫すると思われる被告Y1のこの説明は、何ら不自然なものではない。

(d) 富士火災損害調査株式会社技術部Aによる平成一四年一〇月二一日付け意見書(乙一)には、<1>原告車の左側面の損傷が一過性のものではなく、複数の入力があること、<2>被告車の損傷と原告車の損傷状態が整合しないこと、<3>原告車の前部損傷についても、一〇cm程度の前進で損傷したものではないこと、<4>被告Y1の説明は不自然な点が多いことなどから、偽装事故の疑いがぬぐえないとの記載がある。

しかし、上記意見書は、原告車の左リアドアの損傷部分や左フロントフェンダー先端部の損傷部分が本件事故前のものであることを原告X1が調査員に申告していた(原告本人、弁論の全趣旨)にもかかわらず、整合性を否定する論拠とされていたり、実況見分によれば、原告車は、本件事故の衝撃により五〇cm前方に進んでガードパイプに衝突したことになっているのに、わずか一〇cm程度の前進であることを前提としている。その内容は、極めて恣意的かつずさんな内容といわざるを得ない。

次に、富士火災損害調査株式会社技術部Aによる平成一五年一〇月一五日付け補充書(乙九)には、<1>原告車と被告車に一貫性のない衝突痕(擦過傷)があるので、偶発的に発生した事故とは思われないこと、<2>本件事故の態様では被告車の右ミラーは脱落するはずがないことなどの記載がある。

しかし、原告らが主張するとおり、そもそも、原告車及び被告車の損傷状況に関する写真(乙一ないし三、九、一〇)は不鮮明であり、上記補充書において前提とされる原告車及び被告車の損傷状況を事実として認めるに足りない。加えて、被告Y1は、制動措置を講じながら衝突して停止したのであるから、被告車がある程度上下に移動することもあり得ることであるし、被告Y1は、衝突後、原告車と被告車が並行した状態となり、ドアを開けることができなかったので移動させたが、パニック状態であり、その際、被告車をどのように動かしたか明確に記憶していない(若干後退させた可能性も否定できない。)というのである(被告Y1本人)から、二次的な損傷もあり得ることである。また、本件事故の態様の詳細は必ずしも明確ではなく、被告車の右ミラーが脱落することはあり得ないとまで断定することはできない。

(e) 当初、被告会社は、原告車及び被告車の損傷について、整合性を全く否定することはできず、ただ他の事故の損傷は混入しているという立場(乙一五)から、原告X1及び原告X2の治療費や休業損害の支払に応じていた。

しかし、平成一四年一一月一四日付けで、被告会社代理人から原告X1及び原告X2に対し、原告車の損傷と被告車の損傷との間に整合性がないことが判明するに至ったので、この間に被告会社において支払った額を返還するよう求める書面がいずれも送付された(甲五、乙五の一、二)。

原告X1は、父親とともに財団法人日弁連交通事故相談センターに相談に赴き、原告ら代理人に委任してA事件を提起した(甲一〇、原告X1本人)。原告X2もまた、原告ら代理人に委任してC事件を提起した(甲一一)。原告X1は、「私は、今回の件について、最初は、どうしてこんなことになるのか不思議で仕方ありませんでしたが、段々、腹立たしくなり、現在は、怒りの気持ちを抑えることができない状態です。」などと記載された平成一六年七月二一日付け陳述書(甲一〇)を提出し、同月二八日の第六回口頭弁論期日に出頭し、本人尋問において同趣旨を供述した。

被告Y1は、平成一五年二月六日、被告会社代理人から、受任できないと告げられた。被告Y1の陳述書(丙一)には、同日のやり取りとして、「『自分を疑っているのか。事故を起こしたことは悪い事ですけど、疑われる事は絶対にない。自分が起こした事故だから示談で終わるなら示談したいけど、保険に入っていたし、自分でもどうしていいか分からない。』と言うと、『気持ちは分かるが、X1・X2氏の話と論点が違うので弁護士に相談して下さい。』との事で」あった旨の記載がある。被告Y1は、財団法人日弁連交通事故相談センターを通じて被告Y1代理人に委任した。被告Y1は、本件口頭弁論期日及び弁論準備手続に自ら複数回出頭した。被告Y1は、平成一六年七月二八日の第六回口頭弁論期日に出頭し、本人尋問において、従前の説明と同趣旨を供述した。

これら原告X1及び被告Y1の対応に不自然な点はない。

b 以上を総合すると、原告主張の事故が偶発的に発生したと認めるべきであり、これを覆すに足りる証拠はない。

(イ) 責任原因について

a 被告Y1が民法七〇九条に基づく損害賠償責任を負うことは、原告X1と被告Y1との間において争いがない。

b 関係各証拠(甲五、乙五の一)及び弁論の全趣旨によれば、被告会社が被告車の所有者であると認められるから、被告会社は、自賠法三条に基づく損害賠償責任を負う。

(ウ) 原告X1の受傷及び治療経過について

関係各証拠(甲二の一、二、甲三の一ないし九、甲一〇、乙一五、原告X1本人)及び弁論の全趣旨によって認める。

(エ) 原告X1の損害及びその額について

a 治療費 四九二〇円

関係各証拠(甲三の一ないし九)及び弁論の全趣旨によって認める。

b 通院交通費 二万二六八〇円

公共交通機関分であり、相当である。

c 休業損害 五八万〇〇〇〇円

関係各証拠(甲四、七、九、一〇、原告X1本人)によれば、原告X1のアクア東京株式会社からの平成一三年分の年収が六九六万円であり、一月当たりの本給が五八万円であることが認められる。

d 傷害慰謝料 一〇〇万〇〇〇〇円

原告X1の受傷内容、入通院の経過等諸般の事情を考慮すると、傷害慰謝料としては一〇〇万円が相当である。

e 弁護士費用 二〇万〇〇〇〇円

本件の事案の内容、審理の経過、認容額等にかんがみると、原告X1が被告らに賠償を求めることができる弁護士費用としての損害は二〇万円が相当である。

(2)  反訴

被告会社の支払の事実は原告X1及び被告会社との間において争いがない。

しかし、本件事故の発生に関する上記認定事実に照らし、その支払による原告X1の利得が法律上の原因に基づかないことを認めることができない。

したがって、その余の点を判断するまでもなく、被告会社の反訴請求には理由がない。

二  C事件

(1)  原告X2の請求原因について

ア 事故の発生について

A事件の本訴ア(ア)の判断と同様である。

イ 責任原因について

A事件の本訴ア(イ)の判断と同様である。

ウ 原告X2の受傷及び治療経過について

関係各証拠(甲一一、丁一の一、二、丁二)及び弁論の全趣旨によって認める。

エ 原告X2の損害及びその額について

(ア) 通院交通費 一万六六一〇円

関係各証拠(甲一一、丁一の一、二、丁二)及び弁論の全趣旨によって認める。

(イ) 傷害慰謝料 六〇万〇〇〇〇円

原告X2の受傷内容、入通院の経過等諸般の事情を考慮すると、傷害慰謝料としては六〇万円が相当である。

(ウ) 弁護士費用 一〇万〇〇〇〇円

本件の事案の内容、審理の経過、認容額等にかんがみると、原告X2が被告らに賠償を求めることができる弁護士費用としての損害は一〇万円が相当である。

三  B事件

被告会社の支払の事実は原告X2及び被告会社との間において争いがない。しかし、本件事故の発生に関する前記認定事実に照らし、その支払による原告X2の利得が法律上の原因に基づかないことを認めることができない。

したがって、その余の点を判断するまでもなく、B事件に係る被告会社の請求には理由がない。

第四結論

よって、A事件の本訴については、原告X1が被告らに対し、各自一八〇万七六〇〇円及びこれに対する本件事故日である平成一四年八月二四日から支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し、その余の請求には理由がないからこれを棄却し、A事件の反訴及びB事件については、被告会社の請求にはいずれも理由がないからこれらを棄却し、C事件については、原告X2が被告らに対し、各自七一万六六一〇円及びこれに対する本件事故日である平成一四年八月二四日から支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し、その余の請求には理由がないからこれを棄却することとして、主文のとおり判決する。

(裁判官 本田晃)

現場見取図

<省略>

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