東京地方裁判所 平成14年(ワ)6709号 判決 2003年12月19日
原告 有限会社金井音楽出版
原告 A
上記両名訴訟代理人弁護士 井上準一郎
同 佐藤隆男
同訴訟復代理人弁護士 新井裕幸
被告 株式会社フジテレビジョン
同訴訟代理人弁護士 前田哲男
同 中川達也
同 本橋光一郎
同 小川昌宏
同 下田俊夫
主文
1 被告は、原告有限会社金井音楽出版に対し、金276万3180円及びこれに対する平成14年9月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 被告は、原告Aに対し、金60万円及びこれに対する平成14年9月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。
4 訴訟費用は、原告有限会社金井音楽出版に生じた費用の2分の1を原告有限会社金井音楽出版の負担とし、原告Aに生じた費用の20分の19を原告Aの負担とし、その余は被告の負担とする。
5 この判決は、第1、2項に限り、仮に執行することができる。
事実及び理由
第1請求
1 被告は、原告有限会社金井音楽出版に対し、金653万5488円及びこれに対する平成14年9月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 被告は、原告Aに対し、金1200万円及びこれに対する平成14年9月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2事案の概要
1 争いのない事実等
(1) 当事者
原告有限会社金井音楽出版(旧商号金井音楽出版株式会社。以下「原告会社」という。)は、音楽出版社の事業を主たる目的として設立された株式会社であり、その後有限会社に組織変更されたものである。
原告Aは、多数のヒット曲を作詞作曲している作詞作曲家である。
被告は、放送法に定める一般放送事業及び放送番組の企画制作事業等を目的とする株式会社であり、フジテレビ局(JOCX)の放送をするとともに、被告系列下の地方テレビ放送局(以下「系列局」という。)に番組を提供するなどしている。
(2) 原告らの権利
原告Aは、昭和41年、別紙1記載の歌曲「どこまでも行こう」を作詞作曲して、その歌詞及び楽曲(以下、その楽曲を「甲曲」という。)の各著作物について著作権及び著作者人格権を取得した。この歌曲は、同年、株式会社ブリヂストン(当時の商号は、ブリヂストンタイヤ株式会社)のテレビコマーシャルとして、民放各社により放送され公表された。
原告Aは、昭和42年2月27日、原告会社に対し、甲曲について著作権法(以下「法」という。)27条及び28条の権利を含む著作権を、その歌詞に係る著作権とともに信託譲渡した。甲曲の著作者人格権は、原告Aに留保されている。
原告会社は、同月28日、社団法人日本音楽著作権協会(以下「JASRAC」という。)に対し、著作権信託契約約款(甲72の1及び2、乙35の1及び2。以下「本件信託契約約款」という。)に従い、甲曲の著作権を信託譲渡して管理を委託した(甲2。ただし、譲渡した支分権の範囲については争いがある。)。
(3) 「記念樹」の創作
株式会社ポニーキャニオン(以下「ポニーキャニオン」という。)及び株式会社フジパシフィック音楽出版(以下「フジパシフィック」という。)は、共同で、被告及びその系列局で放送するテレビ番組「あっぱれさんま大先生」(以下「本件番組」という。)のCDアルバム「キャンパスソング集」を制作することを企画した。実際の制作作業は、ポニーキャニオンの担当者Bの指揮の下に行われ、Bは、アルバム中の「記念樹」につきその作曲を作曲家であるCに依頼した(甲60の2)。
そこで、Cは、平成4年、別紙2記載の歌曲「記念樹」に係る楽曲(以下「乙曲」という。)を創作した。乙曲は、同年12月2日、Dを作詞者、Eを編曲者、ポニーキャニオンをレコード製作者(原盤制作者)、「あっぱれ学園生徒一同」を歌手とする曲として、「『あっぱれさんま大先生』キャンパスソング集」との題号のCDアルバムに収録される形で公表された(甲17)。
Cは乙曲についての著作権を、Dはその歌詞についての著作権を、それぞれフジパシフィックに対して譲渡し、フジパシフィックは、平成4年12月21日、JASRACに乙曲の作品届を提出し、同月1日付けでJASRACに乙曲及びその歌詞についての著作権を信託譲渡して管理を委託した(甲19)。JASRACは、利用者に対し、利用許諾して、乙曲を利用させた。
(4) 被告の行為
被告は、平成4年12月31日の本件番組の年末スペシャルにおいて、また、平成5年3月14日以降平成14年9月1日まで毎週1回、本件番組のエンディング・テーマ曲等として、原告Aの氏名を表示することなく乙曲を放送した(検甲1)。また、被告は、乙曲を放送用に録音し、系列局に乙曲の録音物を販売し、系列局をして原告Aの氏名を表示することなく乙曲を放送させた。
(5) 別件訴訟
原告らは、平成10年7月28日、乙曲を創作したCに対し、乙曲が甲曲を複製したものであり、原告会社の著作権(複製権)及び原告Aの著作者人格権(同一性保持権及び氏名表示権)を侵害するなどと主張して、損害賠償請求訴訟を提起した(東京地方裁判所平成10年(ワ)第17119号。以下「別件訴訟」という。)。東京地方裁判所は、平成12年2月18日、乙曲は甲曲を複製したものではないとして、原告らの請求を棄却する旨の第1審判決を言い渡した(乙1)。
そこで、原告らは控訴し、控訴審において、乙曲が甲曲の二次的著作物であるとして、法27条の権利(編曲権)侵害の主張を追加した(東京高等裁判所平成12年(ネ)第1516号)。東京高等裁判所は、平成14年9月6日、Cによる乙曲の創作が甲曲に係る編曲権を侵害するとして、第1審判決を取り消し、原告らの請求を一部認容する旨の控訴審判決を言い渡した(甲56)。
Cは、上告及び上告受理の申立てをしたが、最高裁判所第三小法廷は、平成15年3月11日、Cの上告を棄却し、かつ上告審として受理しない旨の決定をした(甲57)。
なお、原告会社は、平成13年2月28日、乙曲を含むCDアルバムの原盤を制作したポニーキャニオン及びフジパシフィックに対し、編曲権侵害を理由として損害賠償請求訴訟を提起した(東京地方裁判所平成13年(ワ)第3851号)。さらに、原告会社は、平成15年4月16日、乙曲の利用者に対する利用許諾をしていたJASRACに対し、損害賠償請求訴訟を提起した(東京地方裁判所平成15年(ワ)第8356号)。
(6) 別件訴訟後の被告の対応等
被告は、別件訴訟の控訴審判決を受けて、平成14年9月1日放送分を最後に、同月8日以降は、本件番組において、乙曲を放送しないことを決定し、乙曲の放送を中止した。
JASRACは、別件訴訟の最高裁決定を受けて、平成15年3月13日に至り、乙曲の利用許諾を中止した。
2 本件は、被告が自ら乙曲を放送し、乙曲を放送用に録音して、系列局に乙曲を放送させた前記1(4)記載の行為につき、原告会社が甲曲の著作権(法27条又は法28条の権利)侵害を理由として、原告Aが甲曲の著作者人格権侵害を理由として、被告に対し、それぞれ不法行為に基づく損害(平成11年4月1日以降の放送による損害)の賠償を請求する事案である。
3 争点
(1) 乙曲は甲曲に係る編曲権を侵害する曲といえるか。
(2) 被告の行為により原告会社の著作権が侵害されたか。
(3) 被告の行為により原告Aの著作者人格権が侵害されたか。
(4) 被告に過失があるか。
(5) 損害の発生の有無及びその額
第3争点に関する当事者の主張
1 争点(1)(編曲権を侵害する曲といえるか)について
〔原告らの主張〕
(1) 法27条所定の編曲権侵害における類似性の判断において、一般人が被疑曲から原曲の創作的部分である本質的特徴を感じ取ることができる場合には、編曲権の保護を及ぼす必要があると解される。楽曲は、旋律、和音、リズム、テンポ、拍子及び様式等の各要素で構成されているから、これらの要素を総合的に比較する必要があるが、楽曲の同一性に対して最も影響力の大きいのは旋律である。
甲曲の8小節全体としての旋律ライン、特に各フレーズで採用されている旋律の起承転結は、他に存在しない極めてユニークな旋律であり、甲曲の本質的特徴たる高度に創作的な表現である。
乙曲は甲曲と各フレーズの旋律が極めて類似し、また楽曲の展開である起承転結はデッドコピーであり、乙曲の中間部分の1小節以外は旋律の音が属する和声も同一である。リズム、テンポ、拍子及び形式は、甲曲と乙曲の類似性を否定するほどには異ならず、聴いた印象も類似している。したがって、乙曲は、甲曲を編曲したものとして酷似しており、乙曲からは甲曲の創作性の本質的特徴を直接かつ明白に感得することができる。
(2) 甲曲は、昭和41年以降、テレビコマーシャルとして大量に放送され、ヒット曲として人気を博し、当時の有名歌手であるFの歌唱によるレコードや出版物が大量に販売され、小・中学生の音楽教科書にも掲載されるなど、国民に広く知られる愛唱歌である。Cは、昭和41年以前から日本に居住し、音楽関係者であり、昭和59年ころには株式会社ブリヂストンの社歌を作曲し、Fの歌唱曲を多数編曲・作曲し、海外公演にも同行するなど株式会社ブリヂストン及びFと親しい関係にあったのであるから、同社のコマーシャルソングとして大ヒットし、Fがレコード化した甲曲を知らないはずがない。また、Cは、テレビインタビューや記者会見において甲曲を知っていること及びアクセスを自認している。これらの事情に、乙曲のフレーズの構成が甲曲のデッドコピーであるほど類似していることを考慮すれば、Cが甲曲に依拠して乙曲を創作したことは明らかである。
(3) したがって、乙曲は、原告会社に無断で甲曲を編曲したものである。
〔被告の主張〕
(1) 音楽の著作物とは、もともと譜面ないし楽譜自体を指すのではなく、音の連続からなるところの抽象的な存在であるから、言語の著作物等とは異なり、その表現形式上の特徴を直感的かつ全体的にしか把握することができない性質のものである。したがって、音楽の著作物における編曲の範囲は、音符の数量的比較によって判断されるべきではなく、甲曲の存在及びその表現形式をよく知っているが、似ている・似ていない論争の存在を特に意識していない一般人でも、乙曲に接したとき、甲曲の存在を想起し、その表現形式上の本質的特徴を直感的に想起するか否かによって判断されるべきである。
乙曲は、その全体的雰囲気、拍子、テンポ、リズム、形式、和声及びメロディーの総和において、甲曲とは全く別個の独自の創作性を有しているのであって、甲曲と乙曲とが鑑賞者に与える印象は大きく異なり、乙曲に接した通常人が甲曲の存在を思い起こし、その表現形式上の本質的特徴を直感的に想起するとはいえない。乙曲の放送開始から原告らのCに対する別件訴訟提起までの5年以上の間、乙曲が甲曲に類似しているなどという指摘が一切なかったことは、一般人が乙曲に接しても甲曲の存在を想起しないことを示している。
(2) また、Cは、甲曲に依拠して乙曲を創作したのではないから、依拠性も認められない。
(3) したがって、乙曲は甲曲の編曲権を侵害するものではない。
2 争点(2)(原告会社の著作権が侵害されたか)について
〔原告会社の主張〕
(1) 法27条の権利の侵害
原告会社は、甲曲の著作権者であり、JASRACに対し、甲曲の著作権を信託譲渡して管理を委託したものであるところ、その際、原告会社とJASRAC間で交わされた本件信託契約約款には、法27条の権利が特掲されていないから、法61条2項により、法27条の権利は譲渡しておらず、原告会社がこれを専有している。
法27条は、編曲する権利を保護する規定であり、編曲権は、二次的著作物を著作する権利であり、この結果として、二次的著作物の著作権者は、原著作物の著作権者の許諾なくして二次的著作物を公表できないし、第三者に対して公表を許諾することもできない。すなわち、法27条は、編曲行為のみならず、第三者が無断で編曲した二次的著作物を放送する行為によっても侵害される。法49条2項が二次的著作物の複製物を頒布する行為につき翻案を行ったものとみなしたり、法113条1項が違法著作物の頒布及び所持を著作権侵害行為としていることとの均衡上、法27条は、編曲権を侵害している二次的著作物の放送などの利用行為に及ぶものである。
したがって、違法に編曲された翻案権を侵害する二次的著作物を放送することは、著作権者の編曲権により保護された利益を侵害していることになるから、法27条の権利を専有する原告会社は、編曲権を侵害する乙曲を放送した被告に対し、損害賠償請求権を有する。
(2) 法28条の権利の侵害
本件信託契約約款には、法28条の権利は特掲されていないから、原告会社は、JASRACに対して、包括的には法28条の権利を信託譲渡していない。すなわち、本件信託契約約款には、法27条及び法28条の権利についての記載はないから、すべての支分権について信託譲渡されたものとはいえない。深刻な利害対立のあるJASRACに法28条の権利を譲渡すると自らの編曲権を無にされてしまうから、原告会社が事前に法28条の権利を譲渡するはずがない。著作権者は、編曲権を侵害する二次的著作物についてJASRACに法28条の権利を譲渡し、放送等の利用を認めることはあり得ない。JASRACが、原著作物の著作権者の承認のない違法な二次的著作物をも管理しているとすると、原著作物の著作権者にとってあたかも適法な二次的著作物と同様に管理されることになり、二次的著作物の使用料の分配問題等においてJASRACの業務に支障が生じる。
したがって、原著作物の著作者が創作した二次的著作物に関する権利は、法28条の権利ではないし、第三者が創作した二次的著作物については、第三者が提出する編曲届に記載される原権利者の承認により初めて個別に管理委託されるのである。このように、JASRACは、原著作物の著作権者の承認のない違法な二次的著作物を管理していない。
そうすると、原告会社は、法28条の権利を有するから、甲曲を無断で編曲した乙曲を放送した被告の行為は、法27条の定める編曲権を侵害するといえないとしても、法28条の権利及びこれによって認められる放送権を侵害するものであり、被告に対し、損害賠償請求権を有する。
〔被告の主張〕
(1) 法27条の権利の侵害について
法27条は、二次的著作物を創作する権利であって、二次的著作物を利用する権利を定める法28条とは別個の権利である。すなわち、法27条は編曲された著作物の利用行為を直接に規制する権利ではない。被告は乙曲を創作したのではないから、仮に乙曲が甲曲を無断で編曲したものであったとしても、乙曲を放送したにすぎない被告には、編曲権侵害が成立する余地がない。
(2) 法28条の権利の侵害について
甲曲の著作権者である原告会社の有していた法28条の権利は、以下の理由で、明示又は黙示の合意により、JASRACに移転している。
ア 本件信託契約約款1条本文の文理解釈からして、編曲者が第三者かどうかによって信託譲渡の有無を区別することはできず、原告会社とJASRAC間の著作権信託契約は、法61条2項の推定を及ぼす余地がないものである。
法28条が定める二次的著作物の利用とは、法21条ないし26条に定める権利であるが、これは結局、JASRACが信託契約で定める管理の範囲に含まれるものであって、原告会社は、現在保有し、又は「将来保有するすべての作品」に関する法21条ないし26条までの権利をJASRACに信託しなければならないところ、法28条の権利とは、結局、編曲作品に対して働く法21条ないし26条までの権利であるから、これらもまた、当然にJASRACに信託譲渡されているのである。したがって、法28条の権利を特掲したものと同義であり、法61条2項による推定は覆されている。
イ 著作権集中管理団体に対する信託譲渡の実態からして、法28条の権利の譲渡に一定の留保がなされるという解釈を採る余地はない。
ウ 平成12年法律第131号による廃止前の著作権ニ関スル仲介業務ニ関スル法律(昭和14年法律第67号。以下「仲介業務法」という。)の下においては、翻案された作品の複製や放送等の利用を許諾する権利はJASRACに信託譲渡されていたから、著作権を信託譲渡した音楽出版者が自ら著作権を行使することは、同法に抵触すると考えられており、原告会社は、その有する法28条の権利のすべてをJASRACに移転していたと解するほかない。
エ 原告会社が編曲権(法27条の権利)を留保していることと第三者が編曲した二次的著作物に関する法28条の権利をJASRACに信託譲渡することとは矛盾しないし、編曲権の留保を無意味にすることはない上、同様に、原告Aが著作者人格権を有していることと法28条の権利をJASRACに信託譲渡することとは矛盾しない。
オ JASRACが編曲届の提出に際し「原権利者の承認を証明する文書」の添付を要求しているのは、ある音楽著作物を編曲著作物として管理し、編曲者に所定の分配率に従った使用料取り分を認めることが、原著作物の著作権者(作詞者・作曲者)の使用料取り分が減少することを意味するものであるから、かかる書面を要するものとしたにすぎない。
カ 原告会社は、平成10年9月、JASRACに対して、乙曲について「管理除外」ではなく「分配保留」の措置を求め、JASRACがこれに対して同措置を執ったことについて、「適切な措置をとってくれました」と感謝の意を表していたことからすれば、原告会社は、乙曲に関する法28条の権利をJASRACに信託譲渡したことを認めていたものである。 以上のとおり、法28条の権利は、原告会社からJASRACに移転し、原告会社は、法28条の権利を有していない。また、JASRACは、法28条の権利の譲渡を受けているから、JASRACによる乙曲の利用許諾は、権限に基づく有効なものであり、被告は、JASRACの有効な利用許諾に基づいて乙曲の放送を行っていたものであり、原告会社が自ら損害賠償請求権を行使することは許されない。
3 争点(3)(原告Aの著作者人格権が侵害されたか)について
〔原告Aの主張〕
著作者人格権は、Cが甲曲を乙曲に編曲するという方法によって侵害することができるだけでなく、Cが無断で編曲した曲を放送することによっても侵害することができる。著作者人格権を侵害した楽曲を自由に放送や録音等できてよいはずがない。被告は、放送の時にCが編曲した二次的著作物と全く同じ楽曲を編曲したといえるし、編曲した曲の放送も禁止しない限り、著作者人格権を法律上保護することが無意味となるからである。
法113条1項2号は、本来著作者人格権侵害行為でない行為について、著作者人格権保護を十分なものにするために、行為者の「情を知って」を要件として著作者人格権の権利内容を拡大したものである。すなわち、保護法益に対する侵害の危険が小さい頒布や所持という行為態様さえ、「情を知って」という要件を加重されて禁止されているのであるから、法益侵害の危険が大きく直接的かつ全国的な影響を与える放送等は当然に禁止されていると解さなければ、法113条の趣旨に反する。
〔被告の主張〕
仮に、乙曲が原告Aの同一性保持権を侵害するものであったとしても、改変行為を行ったのはCであり、被告ではない。
同一性保持権とは、あくまで意に反して著作物及び題号の改変を受けない権利を意味するのであって(法20条1項)、改変された後の著作物等の利用行為まで対象とする権利ではない。同一性保持権を侵害して作成されたものを用いて放送する行為は改変行為ではなく、法113条1項2号は、同一性保持権を侵害して作成されたものを情を知って頒布し、又は頒布の目的をもって所持する行為を著作者人格権侵害とみなしているが、放送はこれに加えられていない。
したがって、被告は、原告Aの著作者人格権を侵害していない。
4 争点(4)(被告の過失の有無)について
〔原告らの主張〕
(1) 乙曲を放送した被告には過失がある。
ア 被告は、マスメディアとして、常時多数の音楽著作物を放送し、音楽著作物の著作権について広範かつ重大な侵害を招来する危険のある立場にある。よって、音楽著作権を保護するためには、被告に対して、高度の注意義務を課す必要があるから、被告は、一般国民より高度の注意義務を負担しているというべきである。
イ 被告は、多数の音楽を放送する放送局として、当然に甲曲をテレビ及びラジオで放送したことがあり、甲曲を認識していた。甲曲は一般国民にも良く知られていた楽曲であり、ましてや被告のような音楽業界関係者は一般国民以上によく知っていた。
被告は、傘下の系列企業であるポニーキャニオンが、被告が放送する本件番組とタイアップして、本件番組のキャンパスソング集のCDアルバムを制作販売するという企画に賛同し、平成4年春頃、被告が上記CDアルバムの制作に協力するため、<1> 被告は番組名と同じ表題の使用を承諾すること、<2> 被告の従業員G(プロデューサー)、H(ディレクター)らの番組制作スタッフを関与させること、<3> 完成後、CDジャケットに上記スタッフの氏名を掲出し、表示して販売すること等について、ポニーキャニオンと合意した。その結果、被告の従業員Hは、番組制作スタッフの中心となり、提携業務である上記CDアルバムの制作について、アルバムに収録する楽曲「あっぱれ学園校歌」を自ら作曲したり、収録する他の楽曲の選定をするなど、当初から完成に至るまで関与した。そして、Hは、アルバムに収録する「記念樹」の作曲を依頼されたCが提出した2曲の中から乙曲を採用するときも、その決定に同意した。
ウ そして、前記第3の1〔原告らの主張〕のとおり、乙曲は甲曲の編曲権を侵害するものとして酷似しているのである。
エ 上記のような状況の中で、音楽業界関係者である被告の従業員が乙曲と甲曲との類似性に気づかないはずはない。前記のように、被告は、作曲段階から密接に乙曲の制作に関わっているのであるから、乙曲が放送開始される前から乙曲の編曲権侵害を発見できる立場にあった。また、本件番組のエンディング・テーマ曲として企画され、採用されれば長い期間放送され続けられる楽曲であるから、被告としては、慎重に審査すべきものであり、容易に編曲権を侵害するものであることを知り得たはずである。
したがって、被告には著作権侵害及び著作者人格権侵害についての予見可能性が十分にあり、予見すべき義務があった。
オ また、被告の組織の大きさ及び資本力から見て、当然に乙曲のような著作権侵害及び著作者人格権侵害の楽曲を放送してしまうことを回避するための予防措置を取ることは容易であり、かつ回避義務を負担している。
しかるに、被告は、これを怠り、原告らがC、ポニーキャニオン及びフジパシフィックらに対して、著作権ないし著作者人格権侵害を理由とする訴えを提起したことを知っていたにもかかわらず、平成10年7月以降も乙曲の放送を継続した。
したがって、乙曲を放送した被告には過失があり、故意すら容易に認定できる。違法と考えなかったことは、法律の錯誤に過ぎない。
(2) 被告の主張に対する反論
JASRACは、専ら既に公表された楽曲を管理し、これを複製する者から著作権使用料を徴収し分配することを業としているのであり、複製権侵害については、その発見及び侵害者に対する追及のための法的措置を執る能力、経験及び組織を有するものの、前記第3の2〔原告会社の主張〕のとおり、法27条の権利を管理していないのであるから、編曲権が侵害されているか否かについては管理の対象外であるし、それを判断する能力も経験もなく、JASRACの判断及び行動は信頼に値しない。
したがって、被告がJASRACの利用許諾を信頼したとしても、被告の注意義務を軽減させるものではない。
〔被告の主張〕
(1) 被告は、JASRACとの間で利用許諾契約を締結し、JASRAC管理楽曲のすべてを放送に使用することについて、JASRACから許諾を受けていた。
JASRACは、音楽著作物の著作権に関する仲介業務を行うことを主たる業務とし、当時の我が国における唯一の音楽著作権の処理機関として、音楽著作物のほとんどを管理する、極めて高度の社会的信用性を有していた公益社団法人である。
JASRACに楽曲の管理を委託する者は、管理を委託する著作物について自らが著作権を有していること、及びそれが他人の著作権を侵害していないことをJASRACに対して保証しており、JASRACは、一旦管理の委託を受けた楽曲であっても、著作権の侵害又は著作権の帰属等について、訴訟の提起又は異議の申立てがあったときは、著作物の利用許諾、著作物使用料等の徴収を必要な期間行わないことができる権限を有していることなどからすれば、JASRACは、楽曲の管理の委託を受けるに際して、通常要求される注意義務をもって、他人の著作権を侵害する楽曲の委託を受けないようにしなければならない法律上の義務を負っている。
したがって、被告が尽くすべき注意義務の内容は、利用しようとする楽曲がJASRACの管理楽曲に含まれているか否かを調査することに尽きており、それ以上の注意義務を負わない。そして、JASRACは、権利保証をした上で何の制限も付することなく乙曲の利用を許諾していたのであり、原告らによる別件訴訟提起後も、なお乙曲を管理除外とすることなく、被告に乙曲の使用を許諾していたのであって、このことは、JASRACが、乙曲が甲曲の著作権を侵害するものではなく、第三者に許諾を与える正当な権限を有していると判断していたことを意味する。しかも、被告に乙曲の放送を許諾したJASRACは、乙曲のみならず、甲曲についても著作権の譲渡を受けて管理していたものである。JASRACの判断が到底合理的でない場合は格別、被告としては、JASRACから得ていた乙曲の利用許諾を信頼するのが当然であり、このようなJASRACの判断を信じて、乙曲が甲曲の著作権を侵害するものではないと考えたことについて被告の過失はないし、被告がJASRACから得ていた乙曲の放送許諾の有効性を信じたことについても過失はない。
(2) 被告がマスメディアであることから安易に無過失責任に等しいような判断をするのは許されないが、仮に、被告に原告らの主張するような予見義務及び結果回避義務があったとしても、乙曲を聴いただけで、世の中に無数に存在する音楽の中から、甲曲と特定して想起することはおよそ不可能である。実際に、被告は平成5年3月以降、乙曲を毎週、平穏かつ公然に放送してきたが、放送開始から原告らによる別件訴訟提起までの5年以上の間、乙曲が甲曲に類似しているなどという指摘は、被告の知る限りなく、また視聴者からの問い合わせや指摘も被告に寄せられた事実がない。
また、<1>前記のとおり、甲曲と乙曲とでは、聴く者に与える全体的な印象が大きく異なっており、乙曲が原告らの翻案権を侵害していることが一見して明らかとはいえないこと、<2>Cは、甲曲と乙曲との同一性を否定するとともに、依拠性も明確に否定する記者会見を行い、かつその後も別件訴訟でその旨を主張していること、<3>豊富な経験と実績を有する高名な音楽家であるCが、同じく高名な音楽家である原告Aの権利を侵害して作曲するとは通常では考えられないこと、<4>別件訴訟第1審では、乙曲による甲曲の著作権侵害を否定する判決が言い渡されており、乙曲が原告らの著作権を侵害していないと信じるに足る基盤がより強固になったことなどの事情に鑑みれば、被告には何ら過失がない。
5 争点(5)(損害の発生の有無及びその額)について
〔原告らの主張〕
(1) 原告らは、本件訴訟提起の日である平成14年3月29日から3年遡った平成11年4月1日以降の放送分に限って、損害賠償を請求する。
(2) 法114条2項に規定する相当対価額を定めるための基準としては、日本音楽著作権協会著作物使用料規程(甲48。以下「本件使用料規程」という。)により定められた著作物使用料に準じるのが合理的である。
本件使用料規程には、1曲1回ごとの曲別使用料と利用許諾契約による月額又は年額の使用料の規定(以下「包括使用料方式」という。)が併記して定められているが、包括使用料方式による使用料の規定は、管理業務の効率化と著作物使用契約締結の誘引のために低額に定められているものであり、無許諾で音楽著作物を使用した著作権侵害の場合には適用がなく、曲別使用料の規定が適用される。仮に、包括使用料方式による月額又は年額使用料を損害額とするなら、あえて著作物利用許諾契約を締結する必要はなく、無断使用を指摘された後に著作物使用料を払えばよいということになり、許諾権の機能が失われ、無力化する結果、円滑な音楽著作物の管理が不可能になるからである。
(3) 前記第3の2〔原告会社の主張〕(1)に主張するとおり法27条が適用されるべきであるところ、法27条は、編曲による1曲分の経済的利益すべてを原著作物の著作権者に還元する趣旨の規定であるから、原告会社は、法27条により甲曲について編曲の利益、放送や録音による利益を守られている。よって、作詞者及び編曲者に対する分配分はこれを控除すべきではないし、JASRACにも管理権限がないので、管理手数料を控除する必要はない。
また、仮に、前記第3の2〔原告会社の主張〕(2)に主張する法28条による場合であっても、編曲権侵害のない適法な二次的著作物の放送の場合と同一に処理するのは不合理であり、編曲権侵害曲について編曲した編曲者、歌詞を付けた作詞者、著作権の信託譲渡を受けて利用許諾業務を管理したJASRACの行為は、違法著作物の利用に加担した侵害行為であり、これらの者の著作権料や手数料を尊重する必要はない。
(4) 以上によれば、原告会社の損害は、次のとおり総計653万5488円である。
ア 放送による使用料相当額 492万1600円
本件使用料規程第2章第3節2によれば、1曲1回当たり著作物使用料最低額は、第1類8000円、第2類5600円、第3類4800円、第4類3200円、第5類2400円、第6類2000円である。これに、被告がその系列局も含めて、平成11年4月1日以降被告が放送を止めるまでの間に乙曲を放送した回数を乗じて算出した使用料相当額は、別紙「放送による使用料相当額一覧表」の「原告会社の主張」欄記載のとおり、合計492万1600円である。
イ 放送用録音による使用料相当額 52万4640円
被告及びその系列局における平成11年4月1日以降の合計放送回数は、別紙「放送による使用料相当額一覧表」の「原告会社の主張」欄に記載された放送回数を合計した2186回であるから(なお、被告及び関西テレビ放送株式会社において平成13年11月までに放送された分は、Cに請求したため、被告に対しては請求しない。)、1回当たりの使用料240円を乗じると、放送用録音による使用料相当額は、52万4640円である。
ウ 弁護士費用 108万9248円
上記アとイの合計額544万6240円の2割である108万9248円が相当である。
(5) 原告Aの損害は、次のとおり総計1200万円である。
ア 慰謝料 1000万円
被告は、多数回にわたり、自ら乙曲を放送し、同時に全国の系列局31局に放送用録音物を交付して、乙曲を全国的に放送した。しかも、原告らが、Cやフジパシフィック、そして被告に対する訴えを提起した後も、被告は、乙曲の放送及び放送用録音物の販売を中止しなかった。このため、被告が放送を中止した後においても、乙曲の放送メディアによる普及効果は莫大なものがあり、消え去るものではない。
なお、別件訴訟において、Cについては、平成13年12月31日までの分の慰謝料を請求したものであり、それ以降の放送行為については考慮されていない。被告については、平成14年1月1日以降の分は当然として、乙曲が被告の放送行為によって普及宣伝され、多方面で利用されることに決定的に貢献したことを考慮すべきである。
このような悪質な被告の行為により、原告Aが受けた精神的苦痛からすれば、1億円の慰謝料を請求しても不当とは思えないが、その一部として1000万円を請求する。
イ 弁護士費用 200万円
弁護士費用は、上記アの2割が相当であり、200万円を請求する。
〔被告の主張〕
(1) 本件において、1曲1回当たりの曲別使用料を積算する算定方法を用いることは誤りである。原告会社は、甲曲の著作権をJASRACに信託譲渡しており、その放送使用に関して著作権使用料を得るには、JASRACから分配を受ける以外の方法はないから、原告会社の主張する法114条2項の許諾料相当額は、JASRACから包括使用料方式で定められた乙曲に関する分配金相当額を超えることはあり得ない。被告は、乙曲の放送を行った全期間を通じて、その著作権を管理していたJASRACから正式に利用許諾を受けていたのであるから、本件において、包括使用料方式による算定を行っても公平を失することはない。
(2) JASRACとの本件信託契約約款等によれば、会員は、その有するすべての著作権及び将来取得するすべての著作権を包括的にJASRACに信託譲渡するものとされており、原告会社は、JASRACの会員である。したがって、原告会社が編曲を許諾した場合の当該二次的著作物の利用に関する権利は、JASRACに当然信託譲渡されるのであるから、JASRACの管理手数料は常に発生することになる。したがって、原告会社の損害の算定にあたっては、JASRACの管理手数料を控除すべきである。
(3) 二次的著作物として保護を受けるための要件として、当該二次的著作物の創作の適法性は要件とされておらず、編曲によって付加された創作性ゆえに市場価値が増し、当該二次的著作物の相当使用料が高額になる場合もあるから、作詞者及び編曲者への分配分は控除されるべきである。
(4) 被告が利用許諾契約に基づいてJASRACに支払っている著作権使用料の中には、放送用録音の対価も含まれており、原告会社が受けるべき許諾料相当額は、原告会社がJASRACから乙曲に関する分配金として受けたであろう金額を超えることはないから、本件において、放送用録音による別個の損害額を算定することは誤っている。
また、系列局が本件番組を放送するために使用するテープは、各局ごとに1本ずつ存在するわけではなく、何本かの限られたテープが、各局間で使い回されているというのが実態であり、被告の調査によれば、平成11年4月期以降に作成された正確なテープの本数は、以下の合計881本である。
ア 平成11年4月期(4月1日から9月30日まで) 161本
系列局用テープ7本×放送回数23回=161本
イ 平成11年10月期(10月1日から翌年3月31日まで)114本
系列局用テープ6本×放送回数19回=114本
ウ 平成12年4月期 120本
系列局用テープ5本×放送回数24回=120本
エ 平成12年10月期 120本
系列局用テープ6本×放送回数20回=120本
オ 平成13年4月期 115本
系列局用テープ5本×放送回数23回=115本
カ 平成13年10月期 118本
被告用マザーテープ1本×放送回数13回=13本
系列局用テープ5本×放送回数21回=105本
キ 平成14年4月期 133本
被告用マザーテープ1本+系列局用テープ6本=7本
7本×放送回数19回=133本
もっとも、別件訴訟において、系列局の1つである関西テレビ放送株式会社分として、平成5年1月23日から平成13年10月21日までの合計274回分の放送用録音の損害賠償が命じられ、既に支払済みであるから、上記記載のテープのうち、平成11年4月1日から平成13年10月21日の間に同社が放送した80本分(平成11年度39本、平成12年度30本、平成13年度11本)については、既に損害が填補されている。したがって、上記881本から80本を控除した801本が本件訴訟における放送用録音の回数となる。
(5) 仮に、被告が原告Aに対する平成11年4月1日からの放送分に対応する慰謝料債務を負担するとしても、別件訴訟控訴審判決で、原告Aが受けるべき慰謝料の額は、控訴審の口頭弁論終結時である平成14年5月10日までの放送分について、約10年間の精神的苦痛を考慮して500万円と認定されている。そして、原告Aに対する慰謝料債務は、Cと被告の不真正連帯債務であるところ、原告Aは別件訴訟控訴審判決の仮執行宣言に基づいて、500万円全額の支払を既に受け、同訴訟も確定したから、同債務は弁済済みであり、被告の支払義務はない。
仮に、被告が慰謝料を支払う義務を負うとしても、被告は、甲曲と乙曲は類似しておらず、かつ依拠の事実もないと考えているのであり、原告らの別件訴訟提起後も、JASRACから正式に許諾を受けて乙曲の使用を継続したにすぎず、過失もないことは前記主張のとおりであり、また、被告は、別件訴訟控訴審判決後直ちに放送を中止したのであるから、本件訴訟における被告の慰謝料債務は、500万円をはるかに下回る。
第4当裁判所の判断
1 争点(1)(編曲権を侵害する曲といえるか)について
(1) 法27条にいう編曲とは、既存の著作物である楽曲に依拠し、かつ、その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ、具体的表現に修正、増減、変更等を加えて、新たに思想又は感情を創作的に表現することにより、これに接する者が既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することのできる別の著作物である楽曲を創作する行為をいう(最高裁平成11年(受)第922号同13年6月28日第一小法廷判決・民集55巻4号837頁参照)。
(2) 依拠性
ア 甲曲は、昭和41年、株式会社ブリヂストンのテレビコマーシャルとして、民放各社により放送され公表された。原告会社は、昭和42年、歌手Fの吹き込みによる甲曲のレコード化を企画し、キングレコード株式会社により、同レコードが製作・販売された。また、株式会社ブリヂストンは、甲曲を同社の愛唱歌としてレコード化し、原告Aに甲曲の変奏又は編曲を依頼して、平成4年ころまで27年間にわたり、甲曲をさまざまなバリエーションでテレビコマーシャルとして放送した。甲曲は、その後、有名な曲を編集したさまざまな歌集に掲載され、小・中学生の音楽教科書にも掲載された(甲1、3ないし15、36、弁論の全趣旨)。
したがって、甲曲は、昭和41年に公表されたコマーシャルソングとしてばかりではなく、その後も、乙曲が創作される平成4年ころまで、長く歌い継がれる大衆歌謡ないし唱歌として著名な楽曲であることが認められる。
イ Cは、甲曲の公表前ではあるが、昭和35年と昭和37年の2回にわたり歌手Fが旧ソ連へ公演旅行した際に、伴奏者としてこれに同行し、Fの歌う曲の作編曲を多数手がけている(甲34、乙20)。また、Cは、昭和59年ころ、ブリヂストンの社歌を作曲している(甲29、34)。
このように、Cは、甲曲を歌唱した歌手やコマーシャルソングとした会社と関係が深かったのであるから、甲曲に接触する機会があったということができる。また、Cが記者会見やインタビューの際に甲曲を聴いたことがあることを認めていたことや(甲32、33の1及び2)、甲曲の著名性及びC自身が音楽家であることに照らせば、Cが乙曲の創作以前に甲曲を知っていたものということができる。
ウ これらの事情に加えて、後記(3)に認定するとおり、甲曲と乙曲の旋律が類似していることに鑑みれば、乙曲は、甲曲に依拠して創作されたものということができる。
(3) 表現上の本質的特徴の同一性
ア 一般に、楽曲に欠くことのできない要素は、旋律(メロディー)、和声(ハーモニー)及びリズムの3要素であり、これら3要素の外にテンポや形式等により一体として楽曲が表現されるものであるから、それら楽曲の諸要素を総合して表現上の本質的特徴の同一性を判断すべきである。
もっとも、これらの諸要素のうち、旋律は、単独でも楽曲とすることができるのに対し、これと比較して、和声、リズム、テンポ及び形式等が、一般には、それ単独で楽曲として認識され難く、著作物性を基礎づける要素としての創作性が乏しく、旋律が同一であるのに和声を付したり、リズム、テンポや形式等を変えたりしただけで、原著作物の表現上の本質的な特徴の同一性が失われるとは通常考え難いこととされている(甲76、79、81)。
そして、甲曲は、歌詞を付され、旋律に沿って歌唱されることを想定した歌曲を構成する楽曲である。甲曲の構成は、全16小節を1コーラスとする、比較的短い楽曲であり、後記のとおり、4小節を1フレーズとすると、4フレーズをA-B-C-Aと定式化することができる簡素な形式が採用されている。また、和声も基本3和音による3コードで進行する常とう的な和声が付けられているにとどまる。さらに、甲曲の旋律と類似する楽曲としても、せいぜい1フレーズ程度の旋律しか発見されず、4フレーズの旋律全体の構成が類似する楽曲が発見されていないことからすれば(乙2、4、19、26、27、検乙1、2)、甲曲の楽曲としての表現上の本質的な特徴は、和声や形式といった要素よりは、主としてその簡素で親しみやすい旋律にあり、特に4フレーズからなる起承転結の組立てという全体的な構成が重要視されるべきである(甲76)。
よって、甲曲のように、旋律を有する楽曲に関する編曲権侵害の成否の判断において最も重視されるべき要素は、旋律であると解するのが相当であるから、まず、旋律について検討し、その後に楽曲を構成するその余の諸要素について総合的に判断することとする。
イ そこで、甲曲と乙曲の旋律を対比する。
甲曲を2回繰り返し、その2小節分を1小節として乙曲の1小節と対応させ、いずれもハ長調に移調して上下に並べると、別紙3のとおりとなる。
甲曲は、4小節(別紙3では2小節)を1フレーズとすると、第1フレーズと第4フレーズが同一であるから、4フレーズをA-B-C-Aと定式化することができる。乙曲は、2小節を1フレーズとすると、第1フレーズと第5フレーズ及び第8フレーズがほぼ同一であり、第4フレーズは後半部分においてそれらとわずかに異なっており、第2フレーズと第6フレーズ、第3フレーズと第7フレーズがそれぞれ同一であるから、[a-b-c-a'
乙曲の全128音中92音(約72%)は、これに対応する甲曲の旋律と同じ高さの音が使用されている(甲85)。また、甲曲と乙曲は、各フレーズの最初の3音以上と最後の音が第4フレーズを除く全フレーズにおいて、すべて一致している(甲79ないし81)。しかも、両曲は、ともに弱拍で始まる楽曲であり、各小節の最初の音に強拍部が位置するが、その強拍部の音は第4フレーズを除いてすべて一致する(甲80、81、乙3)。
したがって、両曲の旋律は、起承転結の構成においてほぼ同一であり、そのことが各フレーズの連結の仕方に顕著に現れているということができる(甲76、77、79)。唯一相違する乙曲における第4フレーズa'まる常とう的な改変にすぎないことを考慮すると、このフレーズにおける相違点をもって、両曲の表現上の同一性を否定することはできない。
両曲の各フレーズごとの旋律を比較すると、甲曲の第1フレーズAには主音の半音下にあって次の主音を導く導音シが使用されているが、乙曲には使用されていない点(乙2、19、21、26ないし28)、甲曲の第2フレーズBは音の高さが上がっていくのに対し、乙曲の第2フレーズbは音の高さが下がっていく点(乙26)が相違するが、その他の旋律は、単に譜割りを細かくした程度の違いしかない。特に、甲曲の第3フレーズCから第4フレーズAへかけてと乙曲の第3フレーズcから第4フレーズa'
したがって、両曲の旋律は、表現上の本質的な特徴の同一性を有するものと認められる。
ウ 甲曲の和声は、基本3和音によるいわゆる3コードの曲であり、明るく前向きな印象をもたらしているのに対し、乙曲の和声は、きめ細かな経過和音と分数コードを多用して複雑に進行し、感傷的な雰囲気をもたらしており、この点で両曲には曲想の差異が生じている(乙2ないし4、26、27)。しかし、両曲のような大衆的な唱歌に用いられる楽曲の場合は、アカペラ(無伴奏)で歌唱されることもあるとおり、これに接する一般人の受け止め方として、歌唱される旋律が主、伴奏される和声は従という位置づけになることは否定し難いから(甲83)、和声の差異が旋律における両曲の表現上の本質的な特徴の同一性を損なうものとはいえない。
甲曲が2分の2拍子で、4分の4拍子による楽譜もあるのに対し、乙曲が4分の4拍子であるが、メロディーを比較する場合、2分の2拍子と4分の4拍子はさしたる違いとはいえない(甲77、85)。甲曲の付点二分音符が乙曲では八分音符3個になったりするなど甲曲と乙曲で譜割が一部同一でない部分もあるが、同一の音の長さとしては同じで歌詞の字数との関係にすぎない。その程度の差異は、演奏上のバリエーションの範囲内というべきもので、両曲のリズムはほとんど同一といってよい。
また、楽譜上テンポの指定はないが、仮に差異があったとしても、演奏上のバリエーションの範囲内というべき差異にすぎず、上記両曲の表現上の本質的な特徴の同一性に影響を与えるものではない(検甲5、6)。
形式については、前記のとおり、甲曲が4フレーズ1コーラスをA-B-C-Aの起承転結で構成するものであるのに対し、乙曲が、おおむね[a-b-c-a'ものであって、これを繰り返して反復二部形式とすることは、編曲又は複製の範囲内にとどまる常とう的な改変にすぎないというべきである。その他、両曲の楽曲としての表現上の本質的な特徴の同一性を損なう要因は見当たらない。
エ 被告は、編曲の成否は、一般人が乙曲に接したとき、甲曲の存在を想起し、その表現形式上の本質的特徴を直感的に想起するか否かによって判断されるべきであるとし、乙曲の放送開始から原告らのCに対する別件訴訟提起までの5年以上の間、乙曲が甲曲に類似しているなどという指摘が一切なかったことは、一般人が乙曲に接しても甲曲の存在を想起しないことを示している旨主張する。
しかしながら、甲曲が最初に公表されたのは、テレビコマーシャルソングとしてIが歌唱したものであるが、これは実演家としてのIの個性が強く表現されている(検乙2)。また乙曲が最初に公表されたのは、本件番組のエンディング・テーマに用いるために生徒一同が斉唱したものであって、子供達による斉唱という特定の歌唱による印象づけが行われている上(検甲1)、Eによる編曲とJによるストリングス編曲が施されており(甲17)、歌詞の付された歌曲として、歌詞自体が持つ印象の相違が及ぼす影響も無視することはできない。したがって、前記の両曲の類似性にもかかわらず、一般視聴者から指摘がなかったからといって、一般人が乙曲に接しても甲曲の存在を想起しないというのは相当ではなく、被告の上記主張は、採用することができない。
(4) したがって、乙曲は、甲曲に依拠し、かつ、その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ、具体的表現に修正、増減、変更等を加えて、新たに思想又は感情を創作的に表現することにより、これに接する者が甲曲の表現上の本質的な特徴を直接感得することができるものということができる。よって、乙曲は、原告会社の甲曲に係る法27条の権利(編曲権)及び原告Aの甲曲に係る同一性保持権を侵害して創作されたものである。
2 争点(2)(原告会社の著作権が侵害されたか)について
(1) 法27条について
法27条は、「著作権者は、その著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案する権利を専有する。」と規定し、法28条は、「二次的著作物の原著作物の著作者は、当該二次的著作物の利用に関し、この款に規定する権利で当該二次的著作物の著作者が有するものと同一の種類の権利を専有する。」と規定する。このように、法27条は、文言上、「著作物を編曲する権利を専有する」旨定めており、「編曲する」という用語に「編曲した著作物を放送する」という意味が含まれると解することは困難である。そして、法27条とは別個に、法28条が、編曲した結果作成された二次的著作物の利用行為に関して、原著作物の著作権者に法21条から27条までの二次的著作物の経済的利用行為に対する権利を定めていることに照らせば、法27条は、著作物の経済的利用に関する権利とは別個に、二次的著作物を創作するための原著作物の転用行為自体、すなわち編曲行為自体を規制する権利として規定されたものと解される。
原告会社は、二次的著作物を放送する行為に対しても、法27条の権利侵害が成立すると主張するが、そのように解すると、「編曲」の意味を法27条に例示された形態以上に極めて広く解することになるし、著作権法が法27条とは別個に法28条の規定を置いた意味を無にするものとなるから、法27条を理由とする同原告の主張は、採用することができない。
(2) 法28条について
本件において、甲曲について法27条の権利を専有する原告会社の許諾を受けずに創作された二次的著作物である乙曲に関して、原著作物である甲曲の著作権者は、法28条に基づき、乙曲の複製権(法21条)、放送権(法23条)及び譲渡権(法26条の2)を有するから、原告会社の許諾を得ずに乙曲を放送、録音し、録音物を販売した被告に対しては、法27条に基づくのではなく、法28条に基づいて権利行使をすることができると解すべきである。
被告は、原告会社が法28条の権利を有しない旨主張するので、この点について検討する。
ア JASRACは、昭和40年9月1日、原告会社から、同年10月15日から著作権の全存続期間を信託期間として、本件信託契約約款により、原告会社の有する総ての著作権並びに将来取得することあるべき著作権の信託を引き受ける旨の契約を締結した。本件信託契約約款1条本文において、委託者は「その有する総ての著作権並びに将来取得することあるべき総ての著作権」を信託財産として受託者に移転する旨規定されている(甲72の1及び2、乙35の1及び2)。そして、原告会社は、昭和42年2月28日、JASRACに対し、甲曲及びその歌詞につき、著作権を信託する旨の作品届を提出した(甲2)。
法61条2項は、「著作権を譲渡する契約において、法27条又は28条に規定する権利が譲渡の目的として特掲されていないときは、これらの権利は、譲渡した者に留保されたものと推定する。」旨規定している。原告会社がJASRACに甲曲の著作権を信託譲渡した昭和40年当時の旧著作権法(法律明治32年法律第39号)においては、2条に「著作権ハ其ノ全部又ハ一部ヲ譲渡スルコトヲ得」と規定されているだけであったが、現行著作権法(昭和45年法律第48号)が施行される際、附則9条によって、旧法の著作権の譲渡その他の処分は、附則15条1項の規定に該当する場合を除き、これに相当する新法の著作権の譲渡その他の処分とみなす旨定められたため、法61条2項の推定規定は、旧法時代に行われた著作権譲渡契約にも適用される。
法61条2項は、通常著作権を譲渡する場合、著作物を原作のままの形態において利用することは予定されていても、どのような付加価値を生み出すか予想のつかない二次的著作物の創作及び利用は、譲渡時に予定されていない利用態様であって、著作権者に明白な譲渡意思があったとはいい難いために規定されたものである。そうすると、単に「将来取得することあるべき総ての著作権」という文言によって、法27条の権利や二次的著作物に関する法28条の権利が譲渡の目的として特掲されているものと解することはできない。この点につき、法28条の権利が、結果的には法21条ないし法27条の権利を内容とするものであるとして、単なる「著作権」という文言に含まれると解釈することは、法61条2項が、法28条の権利についても法27条の権利と同様に「特掲」を求めている趣旨に反する。
また、現行の著作権信託契約約款(甲55。平成13年10月2日届出)によれば、委託者は、その有するすべての著作権及び将来取得するすべての著作権を信託財産として受託者に移転する旨の条項(3条)のほか、委託者が別表に掲げる支分権又は利用形態の区分に従い、一部の著作権を管理委託の範囲から除外することができ、この場合、除外された区分に係る著作権は、受託者に移転しないものとする旨の条項がある(4条)。そして、この「別表に掲げる支分権及び利用形態」とは、<1> 演奏権、上演権、上映権、公衆送信権、伝達権及び口述権、<2> 録音権、頒布権及び録音物に係る譲渡権、<3> 貸与権、<4> 出版権及び出版物に係る譲渡権、<5> 映画への録音、<6> ビデオグラム等への録音、<7> ゲームソフトへの録音、<8> コマーシャル放送用録音、<9> 放送・有線放送、<10> インタラクティブ配信、<11> 業務用通信カラオケであり、二次的著作物に関する法28条の権利については明記されていない。
他方、JASRACは、法28条の権利をも譲渡の対象とするのであれば、著作権信託契約約款に、例えば、社団法人日本文藝家協会の管理委託契約約款のように、「委託者は、その有する著作権及び将来取得する著作権に係る次に定める利用方法で管理委託契約申込書において指定したものに関する管理を委任し、受託者はこれを引き受けるものとする。(1) 著作物又は当該著作物を原著作物とする二次的著作物の出版、録音、録画その他の複製並びに当該複製物の頒布、貸与及び譲渡 (2) 著作物又は当該著作物を原著作物とする二次的著作物の公衆送信、伝達、上映、上演及び口述 (3) 著作物の翻訳及び映画化等の翻案」という条項によって、明確に「特掲」することが可能である(弁論の全趣旨)。
以上によれば、原告会社の有する法28条の権利が、明示の合意により、JASRACに譲渡されたことを認めるに足りない。
イ 被告は、原告らが別件訴訟提起時に、JASRACに対し、乙曲の著作物使用料の分配保留を求めたこと(乙37)をもって、JASRACへの信託譲渡を容認している旨主張する。しかしながら、もともと乙曲の管理を委託したのは原告会社ではなく、著作物使用料も原告会社に支払われていたわけではないから、上記の事実をもって、原告会社が許諾することなく編曲された二次的著作物の利用に関する権利をもJASRACに信託譲渡したと認めることはできない。
また、原告会社が、編曲を許諾していない二次的著作物の自由な利用までもJASRACに容認していたと認めるに足りる証拠はない。
他に原告会社の法28条の権利が黙示の合意によりJASRACに譲渡されたことをうかがわせる事実はない。
ウ かえって、<1> JASRACにおいて、編曲著作物の届出方法が定められ、原著作物の著作権がある作品については、原著作物の著作権者の承認を証明する文書が必要とされ、JASRACにおいて、編曲審査委員会及び理事会に諮って、当該編曲著作物がJASRACの管理する二次的著作物として妥当なものであるかどうかを決定すること(甲73、90、乙36)、<2> JASRAC発行の「日本音楽著作権協会の組織と業務」と題する説明書において、「編曲や翻訳等を認める権利はJASRACに譲渡されていないので、著作権法第61条により、これらの権利は当然著作者なり、著作権者なりに留保されていることに気を付ける必要がある。」と記載されていること(甲90)等の事実によれば、少なくとも原著作物の著作権者の許諾なくして編曲され編曲著作物として届出されていない二次的著作物に関する権利についてまで信託契約の対象とする意思は、原告会社のみならず、JASRACにもなかったものと認められる。
このように解しても、著作権集中管理団体に対する信託譲渡の実態や仲介業務法に反するものではない。
逆に、原著作物の著作権者の許諾なくして編曲された二次的著作物に関する権利が信託契約の対象となり、JASRACに譲渡されたものであるとすると、編曲権を侵害する二次的著作物が放送等利用された場合に、JASRACが編曲権を侵害する二次的著作物に当たらないと判断したときには、これと異なる見解を有する原著作物の著作権者が、何らの権利も行使することができないこととなる。現に、本件において、JASRACは、被告に対し乙曲について利用許諾を与えて使用料を徴収していたのであるから、JASRACがこれらの利用者に対し法28条の権利を行使して利用差止めや損害賠償等の請求をすることは期待し難く、原著作物の著作権者の保護に欠ける不当な結果となりかねない。
エ したがって、少なくとも、法27条の権利(編曲権)を侵害して創作された乙曲を二次的著作物とする法28条の権利は、JASRACに譲渡されることなく原告会社に留保されているということができる。そうすると、原告会社は、法28条に基づき、乙曲の複製権(法21条)、放送権(法23条)及び譲渡権(法26条の2)を専有するから、原告会社の許諾を得ることなく乙曲を放送、録音し、録音物を販売した被告は、原告会社の有する法28条の権利を侵害したことになる。
3 争点(3)(原告Aの著作者人格権を侵害するか)について
(1) 被告が原告Aの氏名を表示することなく乙曲を放送したことは前記第2の1(4)のとおりである。被告の上記行為が法19条1項後段所定の氏名表示権を侵害することは明らかである。
(2) 法20条によれば、同一性保持権とは、その著作物及びその題号の同一性を保持する権利を有し、その意に反してこれらの変更、切除その他の改変を受けない権利である。そして、法20条は、条文上、改変行為だけを侵害行為としており、改変された後の著作物の利用行為については規定されていない。
また、法113条1項には、同一性保持権侵害とみなされる行為が規定されているが、そこで列挙されているのは、頒布行為や頒布目的の所持、輸入などの行為である。すなわち、同項は、法21条から法26条の3に定められた支分権の対象となる行為の中から、一定の類型の行為のみを一定の要件を課して同一性保持権侵害とみなしているのである。法113条1項においては、頒布行為と同列に扱われるべき公衆送信(放送)行為や複製(録音)行為は、同一性保持権侵害とはみなされていないし、「頒布」は、法2条1項19号において定義されているとおりの行為をいい、公衆送信(放送)や複製(録音)を含むと解することはできない。
原告Aは、著作者人格権を侵害した楽曲を自由に放送や録音等することができるとすると、著作者人格権を法律上保護することが無意味となる旨主張する。同一性保持権については、立法論としてはともかく、現行法の解釈としては、上記のとおり、同一性保持権を侵害して作成された二次的著作物を放送する行為は、同一性保持権侵害とならないといわざるを得ない。
4 争点(4)(過失の有無)について
(1) 被告は、放送事業及び放送番組の制作等を業としている法人であり、その放送する番組や音楽等が他人の著作権及び著作者人格権を侵害することのないように万全の注意を尽くす義務がある。特に、本件においては、平成10年7月に別件訴訟が提起され、乙曲が甲曲に係る著作権等を侵害するか否かが問題になっていることは大きく報道されたのであるから(甲32、33の1及び2)、被告は、遅くとも平成10年7月以降は、乙曲が甲曲に係る著作権ないし著作者人格権を侵害するものか否かについて真摯に調査検討し、著作権ないし著作者人格権侵害を防止する方策をとるべき注意義務があったというべきである。そして、被告は、その事業規模からしても、調査能力を十分有していたというべきであり、乙曲が甲曲に係る著作権ないし著作者人格権を侵害していると判断される可能性があれば、乙曲の放送を中止することによって、著作権侵害の結果を回避することができたものである。
しかるに、被告は、JASRACの利用許諾を信用したと主張するのみで、一般に放送する音楽著作物について著作権等の侵害を防止するための何らかの方策を採っているという主張も立証もなく、JASRACに任せきりで、自らは全く関知していないで上記注意義務を尽くさなかったのである。本件全証拠によっても、被告社内において、乙曲が他の音楽著作物あるいは甲曲に係る著作権ないし著作者人格権を侵害しているかどうかを検討した形跡すらない。そして、被告は、本件において損害を請求されている平成11年4月以降の放送分については、別件訴訟が提起された後であるから、乙曲が甲曲の著作権ないし著作者人格権を侵害するものであるか否かについてとりわけ慎重な検討をして権利侵害の結果を回避すべき義務があった。しかるに、被告は、これを怠り、漫然と乙曲の放送をし続けたのであるから、過失があったといわざるを得ない。
(2) 被告は、被告が尽くすべき注意義務の内容は、利用しようとする楽曲がJASRACの管理楽曲に含まれているか否かを調査することに尽きており、それ以上の注意義務を負わないと主張する。
なるほど、JASRACは、現行の著作権信託契約約款7条において、委託者に管理を委託する著作物について自らが著作権を有していること、かつ、それが他人の著作権を侵害していないことを保証させ、29条では、著作権の侵害又は著作権の帰属等について、告訴、訴訟の提起又は異議の申立てがあったときは、著作物の利用許諾、著作物使用料等の徴収を必要な期間行わないことができる旨定めている(甲55)。したがって、JASRACは、楽曲の管理の委託を受けるに際して、他人の著作権を侵害する楽曲の委託を受けないようにしているものということができる。そして、本件において、JASRACは、原告らによる別件訴訟提起後も、なお乙曲を管理除外とすることなく、何の制限も付することなく乙曲の利用を許諾していたのである。
しかしながら、このように自らが管理する著作物に関して著作権侵害のないように注意しているJASRACが、乙曲を管理除外とすることなく被告に乙曲の利用を許諾していたからといって、JASRACから利用の許諾を受けた被告に直ちに過失がないということはできない。JASRACがこのような体制をとりながら被告に乙曲の利用を許諾していたことは、JASRACが当該曲の管理委託を受けた時点及び別件訴訟が提起された時点で、乙曲が甲曲に係る著作権を侵害するものと判断しなかったという事情を示すものにすぎず、JASRACと被告との間の内部関係においてこの点を斟酌することがあるとしても、法28条の権利を有する原告会社との関係で被告に過失がないということはできない。したがって、被告の上記主張は、採用することができない。
(3) 被告は、乙曲を聴いただけで、世の中に無数に存在する音楽の中から、甲曲と特定して想起することはおよそ不可能であるとか、視聴者からの問い合わせや指摘も一切なかったなどと主張するが、遅くとも平成10年7月以降は、乙曲に類似する曲として甲曲が特定されていたにもかかわらず、被告はそもそも何の調査も検討もしていないのであるから、注意義務を果たしたといえないことに変わりはない。
さらに、被告は、乙曲が原告らの権利を侵害していることが一見して明らかとはいえないとか、Cが甲曲と乙曲との同一性を否定していたとか、高名な音楽家であるCが著作権を侵害して作曲するとは通常では考えられないとか、別件訴訟第1審では乙曲による甲曲の著作権侵害を否定する判決が言い渡されたなどと縷々述べるが、いずれも、著作権者又は著作者人格権を有する原告らとの関係で過失があるとした前記の判断を覆すに足りない。
したがって、被告の前記主張は、採用することができない。
5 争点(5)(損害の発生の有無及び額)について
(1) 原告会社の損害額の算定基準
ア 甲曲及び乙曲を含む音楽著作権の管理が、実際上は大多数の場合において、JASRACに対する信託を通じてされていること、当該管理はJASRACの本件使用料規程(甲48)及び著作物使用料分配規程(乙43。以下「本件分配規程」という。)に準拠して行われていること、使用料規程については、仲介業務法3条の規定により文化庁長官の認可を受けていたものであることから、JASRACの本件使用料規程及び本件分配規程に基づく著作物使用料の徴収及び分配の実務は、音楽の著作物の利用の対価額の事実上の基準として機能するものであり、法114条2項の相当対価額を定めるに当たり、これを一応の基準とすることには合理性があると解される。
イ JASRACの本件使用料規程及び分配規程によれば、一般放送事業者の行う放送及び放送用録音に係る使用料については、包括使用料方式のほかに、1曲1回当たりの曲別使用料を積算する算定方法が定められている。
被告は、原告会社の主張する法114条2項の許諾料相当額は、JASRACから包括使用料方式で定められた乙曲に関する分配金相当額を超えることはあり得ないから包括使用料方式によって算定すべきであると主張する。
しかしながら、包括使用料方式は、全体として低廉な使用料を設定することにより、著作物の利用許諾を受けるインセンティブを与えることに意味があるから、違法な著作物の利用を行った侵害事件において、包括使用料方式を採用することはできない。したがって、著作権侵害訴訟における損害額の算定については、包括使用料方式ではなく、1曲1回当たりの曲別使用料を積算する算定方式を基準とすることが合理的である。
ウ 被告は、相当対価額の算定上、JASRACの管理手数料を控除すべきである旨主張する。
しかしながら、音楽著作物の著作権の管理をJASRACに委託するかどうかは自由であり、しかも、前記のとおり、二次的著作物の利用に関する権利は当然にはJASRACに移転していないと解するから、JASRACの管理手数料は当然に発生するものであるとはいえない。また、本件は、使用料請求ではなく損害賠償請求であり、現行法114条2項において、「通常」の文言が削除された趣旨からすれば、被告の上記主張は、採用できない。
エ 原告会社は、編曲権を侵害する曲について歌詞を付けた作詞者の行為は、すべて編曲権侵害行為であるから、作詞者に対する分配分はこれを控除すべきではない旨主張する。
しかしながら、歌詞と楽曲が別個の著作物として独立に保護し得るものであり、しかも、本件においては歌詞が先に作詞され、それにCが曲を付けたのであるから(甲60の2)、作詞者Dの行為が編曲権を侵害する行為であるということはできない。
そして、歌曲「記念樹」は、作詞者Dと作曲者Cのいわゆる結合著作物であり、その楽曲(乙曲)についての著作権とは別個に、歌詞についての著作権が存在している。他方、JASRACによる著作物使用料の分配額は、歌曲「記念樹」の使用料として分配されている種目及び歌詞と楽曲を分けてそれぞれに適用される種目がある。歌詞と楽曲を併せて算定される使用料については、楽曲としての乙曲の相当対価額の算定上は、歌詞の著作物の利用の対価額を控除するのが相当である。
オ 原告会社は、翻案権を侵害する曲について編曲した編曲者の行為は翻案権侵害行為であるから、編曲者に対する分配分はこれを控除すべきではない旨主張する。
しかしながら、このような解釈は、翻案権侵害の範囲を不当に拡大するものであるし、法2条1項11号は、二次的著作物に著作権法上の保護を与える要件として、当該二次的著作物の創作過程の適法性を要求していないといえるから、原告会社の主張は、採用できない。
そして、乙曲は甲曲を原曲としつつ、Cにより創作的な表現が加えられた二次的著作物であるから、Cは、二次的著作物として新たに付与された創作的な部分について著作権を取得し(最高裁平成4年(オ)第1443号同9年7月17日第一小法廷判決・民集51巻6号2714頁参照)、これをフジパシフィックに譲渡したものである。また、歌曲「記念樹」は、Eの編曲が施されたものとして公表されているところ、Eの編曲についても同様である。
そうすると、甲曲を原曲とする二次的著作物である乙曲の利用の対価額中には、原曲の著作権者に分配されるべき部分と二次的著作物の著作権者及びその編曲者に分配される部分とを観念することができる。したがって、甲曲の相当対価額を定めるに当たっては、二次的著作物の著作権者及びその編曲者の分配分を控除すべきであり、その控除されるべき割合は、原曲の編曲者への分配率に準じて定めるのが相当である。
(2) 原告会社の損害額
ア 被告は、自ら乙曲を放送し、放送用録音等したことにより、原告会社に生じた損害を賠償すべきであるのみならず、その系列局に録音物を販売して乙曲を放送させたことにより権利侵害を惹起したのであるから、これにより原告会社に生じた損害を賠償すべきである。
イ 放送に係る相当対価額
本件使用料規程第2章第3節2(2)(甲48)によれば、1曲1回当たり著作物使用料最低額は、第1類8000円、第2類5600円、第3類4800円、第4類3200円、第5類2400円、第6類2000円である。
証拠(甲53、乙29の1ないし94、乙30、弁論の全趣旨)によれば、平成11年4月1日から被告が乙曲の放送中止を決定するまでの間、被告及びその系列局で乙曲が放送された回数及びそれらの回数に上記使用料最低額を乗じて算出した使用料相当額は、別紙「放送による使用料相当額一覧表」の「当裁判所の判断」欄記載のとおり、合計568万5600円となる。なお、原告会社は、平成11年4月1日以降の分を請求するため、平成11年度分の回数を全体の12分の9の割合として計算していたが(乙30)、乙第30号証の各年度は、毎年4月1日ないし3月31日までを指しているから、12分の9の割合として計算する必要はない。
そして、本件分配規程8条(乙43)によれば、放送に係る使用料の分配率は、関係権利者が作曲者、作詞者及び編曲者の場合、作曲者5/12、作詞者5/12、編曲者2/12とされているから、作詞者及び編曲者への分配分として7/12を控除する。
よって、放送に係る甲曲の利用についての相当対価額は、以下の計算式のとおり、236万9000円と認めるのが相当である。
568万5600円×5/12=236万9000円
ウ 放送用録音による使用料相当額
(ア) 本件使用料規程第2章第4節1(甲48)によれば、「普通映画」に主題歌又は挿入歌曲として著作物を使用する場合、「文化映画、5分未満」として1曲の使用料は1200円であるところ、「テレビジョン映画」は、その20/100とされているから、基準となる1曲の使用料単価は240円(1200円×20/100=240円)である。この単価は、歌詞、楽曲それぞれに適用されることが明示されているから、作詞者に対する分配分を控除する必要はないが、楽曲分については編曲者に対する分配分を控除するのが相当であるところ、本件分配規程29条(甲31、乙43)によれば、録音に係る使用料の分配率は、関係権利者が作曲者及び編曲者の場合、作曲者6/8、編曲者2/8とされているから、これに準拠することとする。
被告は、被告が利用許諾契約に基づいて著作権使用料をJASRACに支払っていることを根拠に、放送用録音による別個の損害額を算定することは誤りである旨主張する。しかしながら、違法な著作物の利用を行った侵害事件において、包括使用料方式を採用することができないことは、前記(1)イに述べたとおりであるから、被告の上記主張は、採用できない。
(イ) 平成11年4月以降に被告が行った放送用録音の回数、すなわち平成11年4月期以降に作成されたテープの本数は、次のとおり合計881本である。なお、被告における平成13年11月までの放送分は、別件訴訟においてCが支払ったとして原告会社が請求していないため、除外している(乙44)。
平成11年4月期(4月1日から9月30日)
系列局用テープ7本×放送回数23回=161本
平成11年10月期(10月1日から翌年3月31日)
系列局用テープ6本×放送回数19回=114本
平成12年4月期
系列局用テープ5本×放送回数24回=120本
平成12年10月期
系列局用テープ6本×放送回数20回=120本
平成13年4月期
系列局用テープ5本×放送回数23回=115本
平成13年10月期
被告用マザーテープ1本×放送回数13回=13本
系列局用テープ5本×放送回数21回=105本
平成14年4月期
7本(被告用マザーテープ1本+系列局用テープ6本)×放送回数19回=133本
次に、系列局の1つである関西テレビ放送株式会社における平成13年11月までの放送分は、別件訴訟において請求が認容され、これをCが支払い、損害が填補されているため、除外する。すなわち、平成11年4月1日から平成13年10月21日の間に関西テレビ放送株式会社で放送された回数は、平成11年度39回、平成12年度30回、平成13年度11回、合計80回である(乙44)。これらについては、1回当たり1本の放送用録音が行われたとして、既に損害が填補されている。したがって、上記881本から80本を控除した801本が本件訴訟における放送用録音の回数となる。
(ウ) 1回当たりの使用料240円に放送用録音の回数801本を乗じて、編曲者への分配分2/8を控除すると、放送用録音に係る甲曲の利用についての相当対価額は、次の計算式のとおり、14万4180円と認めるのが相当である。
240円×801本×6/8=14万4180円
エ 弁護士費用
以上のとおり、原告会社の損害額は、上記イ及びウの合計額である251万3180円(236万9000円+14万4180円=251万3180円)であるから、弁護士費用としては、その約1割である25万円を被告に負担させるのが相当である。
オ 合計
したがって、原告会社の損害額は、上記イないしエの合計額である276万3180円となり、遅くとも最終の放送日である平成14年9月1日に遅滞に陥る。
236万9000円+14万4180円+25万円=276万3180円
(3) 原告Aの損害額
ア 慰謝料
被告は、原著作者すなわち甲曲の著作者である原告Aの氏名を表示することなく乙曲を放送した結果生じた原告Aの精神的損害について賠償すべき義務がある。
被告の上記行為は、乙曲を創作したCとの共同不法行為というべきであるから、被告の原告Aに対する慰謝料支払義務は、Cとの不真正連帯の関係に立つ。別件訴訟控訴審判決においては、控訴審の口頭弁論終結時である平成14年5月10日まで約10年間にわたって、被告の本件番組のエンディング・テーマ曲として放送が継続されていた事実も総合考慮して、原告Aが受けるべき慰謝料の額は500万円が相当であると認定された(甲56)。原告Aは、上記別件訴訟控訴審判決に基づいて、Cから慰謝料500万円全額の支払を既に受けている(弁論の全趣旨)。しかし、被告が乙曲の放送を中止したのは、平成14年9月1日であり、上記口頭弁論終結時以降更に放送され続けた分については、既払分以上に原告Aの損害が発生しているということができる。また、別件訴訟控訴審判決においては、被告の系列局による放送について、関西テレビによる放送しか認定されておらず、残り30局による放送の影響が考慮されていない。
したがって、これらの事情を考慮すると、別件訴訟控訴審判決に基づくCによる慰謝料債務の弁済があったとしてもなお、被告は、原告Aに対し、氏名表示権侵害を理由とする慰謝料支払義務を負うというべきであり、その額としては、50万円が相当である。
イ 弁護士費用
原告Aの弁護士費用としては、上記アの2割である10万円を被告に負担させるのが相当である。
ウ 合計
したがって、原告Aの損害額は、上記ア及びイの額の合計額である60万円となり、遅くとも最終の放送日である平成14年9月1日に遅滞に陥る。
6 結論
以上のとおり、原告会社の請求は、276万3180円及び平成14年9月1日以降の遅延損害金の支払を求める限度で理由があり、原告Aの請求は、60万円及び平成14年9月1日以降の遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからそれぞれ認容し、その余は理由がないから棄却することとして、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 高部眞規子 裁判官 東海林保 裁判官 瀬戸さやか)
(別紙) 放送による使用料相当額一覧表
テレビ局名
原告会社の主張
当裁判所の判断
1回あたりの単価
(株)フジテレビジョン
第1類 8000円
×33回=26万4000円
(なお、平成13年11月までの分は、服部に請求したため、被告に対しては請求しない。)
×33回=26万4000円
関西テレビ放送(株)
第2類 5600円
×17回=9万5200円
(なお、平成13年11月までの分は、服部に請求したため、被告に対しては請求しない。)
×17回=9万5200円
東海テレビ放送(株)
第3類 4800円
×56回=26万8800円
×62回=29万7600円
北海道文化放送(株)
第4類 3200円
×138回=44万1600円
×149回=47万6800円
(株)テレビ西日本
3200円
×107回=34万2400円
×107回=34万2400円
(株)仙台放送
第5類 2400円
×67回=16万0800円
×67回=16万0800円
福島テレビ(株)
2400円
×0回=0円
×0回=0円
(株)新潟総合テレビ
2400円
×75回=18万円
×86回=20万6400円
(株)テレビ静岡
2400円
×75回=18万円
×86回=20万6400円
(株)青森テレビ
第6類 2000円
×105回=21万円
×111回=22万2000円
秋田テレビ(株)
2000円
×63回=12万6000円
×63回=12万6000円
(株)岩手めんこいテレビ
2000円
×119回=23万8000円
×130回=26万円
(株)さくらんぼテレビジョン
2000円
×138回=27万6000円
×149回=29万8000円
(株)長野放送
2000円
×17回=3万4000円
×23回=4万6000円
(株)山梨放送
2000円
×24回=4万8000円
×24回=4万8000円
石川テレビ放送(株)
2000円
×138回=27万6000円
×149回=29万8000円
福井テレビジョン放送(株)
2000円
×138回=27万6000円
×149回=29万8000円
富山テレビ放送(株)
2000円
×0回=0円
×0回=0円
(株)テレビ新広島
2000円
×138回=27万6000円
×149回=29万8000円
山陰中央テレビジョン放送(株)
2000円
×0回=0円
×0回=0円
岡山放送(株)
2000円
×55回=11万円
×66回=13万2000円
テレビ山口(株)
2000円
×17回=3万4000円
×23回=4万6000円
愛媛放送(株)
2000円
×50回=10万円
×61回=12万2000円
高知さんさんテレビ(株)
2000円
×138回=27万6000円
×149回=29万8000円
(株)テレビ高知
2000円
×0回=0円
×0回=0円
(株)サガテレビ
2000円
×138回=27万6000円
×149回=29万8000円
(株)テレビ長崎
2000円
×40回=8万円
×40回=8万円
(株)テレビ宮崎
2000円
×0回=0円
×0回=0円
(株)テレビ熊本
2000円
×74回=14万8000円
×85回=17万円
(株)テレビ大分
2000円
×0回=0円
×0回=0円
鹿児島テレビ放送(株)
2000円
×138回=27万6000円
×149回=29万8000円
沖縄テレビ放送(株)
2000円
×138回=27万6000円
×149回=29万8000円
合計
492万1600円
568万5600円
別紙1<省略>
別紙2<省略>
別紙3<省略>