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東京地方裁判所 平成14年(ワ)9529号 判決 2004年5月24日

原告

三井住友海上火災保険株式会社

被告

主文

一  被告は、原告に対し、一一七七万八三七二円及びこれに対する平成一三年一一月四日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用はこれを四分し、その一を原告の負担とし、その余を被告の負担とする。

四  この判決は、第一項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由

第一請求

被告は、原告に対し、一五八〇万〇九一一円及びうち七二万七八九一円に対する平成一〇年九月二五日から、うち一五七〇万三〇二〇円に対する同年二月一四日から各支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

一  請求原因

(1)  事故の発生

次の事故が発生した(以下「本件事故」という。)。

ア 日時 平成八年六月一日午前七時四〇分ころ

イ 場所 埼玉県比企郡川島町大字戸守五一七番地

ウ 車両1 普通乗用自動車(車両番号・<省略>。以下「被告車」という。)

同運転者 被告

エ 車両2 普通乗用自動車(<番号省略>以下「A車」という。)

同運転者 A

オ 車両3 普通乗用自動車(<番号省略>以下「B車」という。)

同運転者 B

カ 態様 本件事故現場の交差点(以下「本件交差点」という。)において、A車が時速約五〇kmの速度で直進しようとしたところ、被告車がA車の進行を妨害するように右折したため、A車がガードレールに衝突するとともに、その反動で被告車に後続するB車に衝突し、B車に同乗していたC(以下「亡C」という。)が死亡した。

(2)  B及び亡Cに対するA及び被告の責任原因及び過失割合

本件事故は、A及び被告の共同不法行為により生じた。被告は、交差点において右折する際、直進する車両のないことを確認し、また、他の車両の動静に注意して、その進行を妨げないよう注意する義務があるのに、これを怠った過失があるから、民法七〇九条に基づく損害賠償責任を負う。

本件事故は、信号機による交通整理の行われている交差点における双方青信号による進入の事案であり、被告が直近で右折していることに照らし、過失割合はA一割、被告九割と解すべきである。

(3)  B及び亡Cの損害及びその額

本件事故により、B及び亡Cは、次の損害を被った。

ア Bの損害

(ア) 車両時価額 六一万五〇〇〇円

(イ) 買替費用 五万六八九一円

(ウ) 代車代相当額 五万六〇〇〇円

イ 亡Cの損害

(ア) 治療費 一四二二万九〇〇五円

(イ) 看護料 四〇万〇〇〇〇円

(ウ) 通院費 一〇万〇〇〇〇円

(エ) 諸雑費 三六万三〇〇〇円

(オ) 文書料 八七五〇円

(カ) 傷害慰謝料 二二二万三五〇〇円

(キ) 死亡逸失利益 六九一万〇〇〇〇円

(ク) 死亡慰謝料 一〇五〇万〇〇〇〇円

(ケ) 葬儀費 一〇〇万〇〇〇〇円

(4)  保険代位

原告は、Aとの間で締結した普通自動車保険契約に基づき、Bの損害につき、平成一〇年九月二四日、Bに対して七二万七八九一円を支払い、亡Cの損害につき、平成一〇年二月一三日までに、亡Cの遺族及び医療機関に対して三五七三万四二五五円を支払った。

なお、原告は、Aが契約する自賠責保険から一九四六万一二三五円、被告が契約する自賠責保険から一二〇万円のてん補を受けた。

(5)  よって、原告は、被告に対し、求償権に基づき、一五八〇万〇九一一円及び、うち七二万七八九一円に対する保険金支払日の翌日である平成一〇年九月二五日から、うち一五〇七万三〇二〇円に対する保険金の最終支払日の翌日である平成一〇年二月一四日から、各支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

二  請求原因に対する認否

(1)  請求原因(1)(事故の発生)について

同記載の日時場所で交通事故が発生したことは認めるが、事故態様は争う。

被告は、被告車に先行する車両に続いて本件交差点に進入したところ、対向直進中のA車を発見し、中央線の延長線上を越えない位置で右折待機のため停止した。本件交差点は、A車の進行方法から左にふくらむ形で進行しなければ右折待機車両を回避して直進できない形状になっていたが、Aは、適正な速度で前方を十分注視して進行していれば、このような交差点の状況は十分了解し得たはずであった。しかるに、Aは、時速約五〇kmを大幅に上回る速度で、ブレーキ操作による衝突回避もせず、急ハンドルで旋回した。被告としては、A車を発見した時点では、停止する以外に採り得る手段はなかった。本件事故は、もっぱらAの前方不注意、速度超過によって引き起こされたものである。

(2)  同(2)(B及び亡Cに対するA及び被告の責任原因及び過失割合)について

争う。

本件事故は、もっぱらAの過失によるものであって、被告には何ら過失はない。

(3)  同(3)(B及び亡C損害及びその額)について

不知。

(4)  同(4)(保険代位)について

いずれも不知。

三  抗弁

(1)  消滅時効

ア 本件事故日から三年が経過した。

原告は、被告が本件事故について無責の主張をしていたことを認識していた。また、原告は、本件事故から三年以内に保険金を支払ったから、本件事故後三年以内に速やかに求償のための法的措置を採ることが可能であったし、そうすべきであった。本件においては、純粋な共同不法行為者間の求償権行使とパラレルに考える必要性は低い。むしろ、不法行為に基づく短期消滅時効を適用すべきである。

イ 被告は、原告に対し、平成一四年九月二日の本件口頭弁論期日において、上記時効を援用する旨の意思表示をした。

(2)  信義則違反

仮に、本件求償金請求権の消滅時効期間が一〇年であるとしても、事故の発生から七年、原告の求償権取得からでも既に四年近くが経過した後、求償金請求権を行使することは、もはや何らの請求もされるような事態はないと信じた被告の正当な信頼を裏切るものであり、信義則に反するのみならず、保険金支払時からの遅延損害金を請求するに至っては、権利の濫用というほかない。

四  抗弁に対する認否

(1)  消滅時効について

共同不法行為者間の求償権の消滅時効期間は一〇年であり、被告の主張は失当である。

(2)  信義則違反について

被告は、全労済の自動車共済に加入しており、本件請求が認められた場合でも、実質的には共済金による支払となるのであり、被告個人にとって酷であるとはいえない。

第三判断

一  請求原因について

(1)  請求原因(1)(事故の発生)について

同記載の日時場所で交通事故が発生したことは当事者間に争いがない。

これに加え、関係各証拠(甲一、二、一四ないし一六、一八、一九、乙一ないし三《枝番を含む。》、証人A、被告本人)及び弁論の全趣旨によれば、本件事故態様として、次の事実が認められる。

ア 本件事故現場は、東松山市方面から川越市方面に通じる幅員約六mの道路(県道岩殿観音・南戸守線。以下「被告進行道路」という。)と、上尾市方面から北西に通じる幅員約六・二mの町道(以下「A進行道路」という。)及び熊谷市方面から南方に通じる幅員約六・四mの町道とが交差する、南北に広い、変形した十字路交差点であり、信号機による交通整理が行われていた。本件事故現場の状況は、おおむね別紙一(平成八年七月八日付け実況見分調書《実況見分の日時が同年六月一日のもの。甲二の表紙を入れて二ないし九丁目》添付の交通事故現場見取図)及び別紙二(同年七月八日付け実況見分調書《実況見分の日時が同年六月一七日のもの。甲二の表紙を入れて一〇丁目以下》添付の交通事故現場見取図)のとおりである。A進行道路を上尾市方面から北西に向かい、本件交差点を越えてさらに東松山方面に向かう直進車との関係では、被告進行道路を東松山市から川越市方面に向かう車両は、対向右折車となる関係にある。本件交差点は変形しており、本件交差点に至るA進行道路及び被告進行道路の各中央線の延長線が一致せず、間隔がある。

被告進行道路及びA進行道路のいずれについても、最高速度時速四〇kmの規制がされていた。

イ 被告は、本件交差点を通勤のためよく利用していた。被告は、本件事故当時、娘を助手席に同乗させて被告車を運転して、本件交差点において、対面信号機の赤色表示に従い、先行車に続いて停止し、信号機が青色表示に変わったので、右折しようと徐行発進した。被告は、先行車の車種や大きさなどには関心がなく、先行車がその後直進したのか右折したのかも覚えていない。被告は、対向直進中のA車の存在を認識して、右折進行をあきらめて本件交差点内に停止した。被告は、本人尋問において、本件交差点内に右折待機可能な場所に関するペイントによる道路標示があったと述べるが、本件事故当時どのような道路標示があったか必ずしも定かではない。また、被告の記憶として、被告車が停止した地点が、同人が認識するところの道路標示に従ったものであるか否かも、定かではない。

他方、Aは、ゴルフ場に向かうべく、A進行道路を上尾市方面から北西に向かって時速約六〇kmの速度で進行していた(Aの陳述書《甲一四》には、時速五〇km程度であったとの記載があるが、平成八年六月一五日及び同月一七日に原告担当者に対してされたと解される説明《甲一九》においては時速約五〇ないし六〇kmであったとされていたし、Aは、証人尋問において、時速五〇km以上出ていた可能性を自認していることなどに照らし、その速度は少なくとも時速約六〇kmであったと推認すべきである。)。Aは、それ以前に本件交差点を一〇回は通っていた。Aは、本件交差点の手前約五〇mの地点付近において、対向車線から約二トンのアルミバンが右折するのを見るとともに、対面信号機の青色表示を確認した。Aは、約二トンのアルミバンの後続車である被告車の存在も認識したが、右折しないだろうと考えて、減速せず、直進進行した。しかし、その後、Aの認識として、被告車の先端の方向が変わり、被告車の同乗者が驚いたような顔をしたように見えたことから、被告車が右折しようとしており、このまま進行すれば衝突すると判断し、ハンドルを左に転把した。A車は、被告車と接触せず、別紙一の<×>一地点のガードレールに衝突し、さらに対向車線を直進してきたB車に<×>二地点で衝突した。

ウ 本件事故日の午前八時二二分から九時一〇分までの間、Aと被告が立ち会って実況見分が行われた。その際、被告は、初めてA車を認めたのは別紙一の<1>地点であり、その時のA車は<ア>地点。曲がれないと思いブレーキをかけたのは<2>地点、その時の相手は<イ>地点、停止したのは<3>地点であると指示説明した。<1>地点と<2>地点の間の距離は二・三m、<1>地点と<ア>地点との間の距離は二八・三m、<2>地点と<イ>地点との間の距離は二〇・三m、<ア>地点と<イ>地点との間の距離は五・七m、<2>地点と<3>地点との間の距離は四・〇mであった。また、Aは、初めて被告車を発見したのは<ア>'地点、その時の被告車は<1>'地点、危険を感じて左にハンドルを転把したのは<イ>'地点、その時の被告車は<2>'地点、ガードレールに衝突したのは<×>一地点、B車と衝突したのは<×>二地点であると指示説明した。<ア>'地点と<イ>'地点との間の距離は二九・三m、<イ>'地点と<2>'地点との間の距離は一四・二m、<1>'地点と<2>'地点との間の距離は一一・八であった。

被告は、本人尋問において、この実況見分において、Aに有利になるように真実と異なる指示説明をした旨述べるが、上記のとおり、その際作成された実況見分調書は、Aと被告の指示説明を区別して記載しており、その内容も一致しているわけではない。Aは、被告車が<2>'地点まで進行していたと指示説明するのに対し、被告は、それより手前の<3>地点で被告車を停止させたと指示説明しており、その内容において特に不自然な点も見当たらない。被告車の動静が、この実況見分におけるAの指示説明のとおりであったとまでは断定できないが、少なくとも、次のエにおいて検討する第二回目の実況見分における被告の指示説明のとおりであったとは認められない。

エ 本件事故日から二週間以上が経過した平成八年六月一七日午後一時三〇分から二時までの間、再びAと被告が立ち会った実況見分が行われた。その際、被告は、初めてA車を認めたのは別紙二の<1>地点、その時のA車は<ア>地点。直進車を通過させようと停止したのは<2>地点、その時の相手は<イ>地点と指示説明した。<1>地点と<2>地点の間の距離は一〇・九m、<1>地点と<ア>地点との間の距離は七〇・一m、<2>地点と<イ>地点との間の距離は三六・七m、<ア>地点と<イ>地点との間の距離は二〇・六mであった。Aは、相手が進路を妨害するように右折してきたのは<1>'地点と説明したが、事故当日から時間が経過して記憶も薄れているのでその位置ははっきりしない、事故当日に説明した位置の方が正しいと思う、と述べた。

被告は、本人尋問において、この実況見分の方が正しいと述べるが、被告車が停止した地点が<2>地点であるか否かについてさえ曖昧である(被告本人尋問調書一八ないし二〇頁)。被告が、約七〇mも先の直進車を認識しながら待機することとしたことも不自然である。被告は、A車をやり過ごしてから右折進行を再開し、横断歩道を過ぎてからA車の衝撃音を聞いたなどと、あまりにも不合理な供述もしている。結局、本件事故当時の被告車の動静が、この第二回目の実況見分における被告の指示説明のとおりであったと認めることはできず、少なくとも、上記ウにおいて検討した第一回目の実況見分における被告の指示説明のとおりであったと認めるべきである(もっとも、上記のとおり、その後、さらにAが指示説明するほど進行していたとまでは断定できない。)。

オ 上記のとおり、本件事故当時、本件交差点を右折しようとする車両がどこまで進行して待機できるか、あるいは、本件交差点の直進車がどの地点より左側のみを進行すべきかについての道路標示があったかについては、必ずしも明確ではない(平成一四年二月一八日の時点ではかなり明瞭な標示を認めることができる《乙三》が、少なくとも、本件事故当時、これと同様の標示があったとは認められない《甲二》。)。仮に道路標示があったとしても、それは、本件交差点に至るA進行道路及び被告進行道路の各中央線の間隔の二分の一と、川越市方面に向かう道路の中央線が交わる地点(以下「本件交差点の中央部」という。)を基準に設置されていることが推測される。すなわち、上尾市方面からであれ、東松山市方面からであれ、本件交差点を直進車が直進するには、いずれも進路をやや右に変える必要があったとみるのが自然である。被告は、上尾市方面からの直進車に限って、「左にふくらむ形で進行しなければ右折待機車両を回避して直進できない形状になっていた」と主張するが、東松山市方面から進行する直進車の通行できる間隔の方が上尾市方面から進行するそれよりかなり広くなる根拠に乏しく、採用できない。

そして、別紙一の<3>地点は、A進行道路の中央線の延長線を基準にすれば、これを越えてはいないが、本件交差点の中央部を越えた地点にあると認められる。

(2)  同(2)(B及び亡Cに対するA及び被告の責任原因及び過失割合)について

以上によれば、被告には、対向直進中の原告車の速度又は方向を急に変更しなければならないこととなるおそれがあったのに、その進路を妨げる位置に進出した過失があるといわざるを得ない。他方、Aにも前方不注視、速度超過(制限速度を時速約二〇km超過したと認められる。)、回避措置不適切の過失があり、いずれも、B及び亡Cに対し、民法七〇九条に基づく損害賠償責任を負う。

これら双方の過失のほか、本件交差点の特殊な形状等を考慮すると、本件における過失割合は、A五〇%、被告五〇%と解するのが相当である。

(3)  同(3)(B及び亡Cの損害及びその額)について

ア Bの損害及びその額

関係各証拠(甲三、八)及び弁論の全趣旨によれば、Bの損害及びその額が、車両時価額六一万五〇〇〇円、買替費用五万六八九一円及び代車代相当額五万六〇〇〇円の合計七二万七八九一円であることが認められる。この認定を左右すべき証拠はない。

イ 亡Cの損害及びその額

関係各証拠(甲四、五、九、一三、二〇)及び弁論の全趣旨によれば、亡C(大正○年○月○日生、本件事故当時七三歳)は、本件事故により、頭部外傷(急性硬膜下血腫)、第七胸椎圧迫骨折、胸部外傷の傷害を負い、本件事故当日、埼玉医科大学総合医療センターに救急車で搬送され、平成八年一一月一日旭ケ丘病院に転院し、リハビリ中心の加療中、肺炎を併発し、平成九年五月二九日死亡したこと、亡Cが、治療費一四二二万九〇〇五円、看護料四〇万〇〇〇〇円、通院費一〇万〇〇〇〇円、文書料八七五〇円、死亡逸失利益六九一万〇〇〇〇円の損害を被ったことが認められる。この認定を左右すべき証拠はない。

また、亡Cの入院雑費については、一日当たり一三〇〇円の三六三日間分である四七万一九〇〇円が相当であり、葬儀費用については実額一四六万五二五〇円を要しているところ、そのうち一二〇万円は相当範囲である。さらに、亡Cの負った傷害の内容、治療経過その他諸般の事情を考慮すると、傷害慰謝料としては二九二万円が相当であり、本件事故の態様その他本件に顕れた諸般の事情を考慮すると、亡Cの死亡慰謝料としては二〇〇〇万円が相当である。

そうすると、亡Cの適正な損害額は四六二三万九六五五円となる。

(4)  同(4)(保険代位)について

関係各証拠(甲三ないし九)及び弁論の全趣旨によって認める。

ところで、Bの適正な損害額は七二万七八九一円、亡Cの適正な損害額は四六二三万九六五五円であり、そのうちAの過失割合である五割(小数点以下を切り上げると、Bにつき三六万三九四六円、亡Cにつき二三一一万九八二八円。)は、原告の負担部分である。共同不法行為者間において求償権を行使するためには、自己の負担部分を超えて賠償することを要するところ(最高裁昭和六三年七月一日第二小法廷判決・民集四二巻六号四五一頁)、原告の出捐額(Bにつき七二万七八九一円、亡Cにつき三五七三万四二五五円)のうち、その負担部分を超える額は、Bにつき三六万三九四五円、亡Cにつき一二六一万四四二七円となる。

そして、被告が契約する自賠責保険によっててん補された亡Cに関する自賠責保険金一二〇万円を控除すると、亡Cについての残額は一一四一万四四二七円となる。なお、自賠責保険金は、被保険者の損害賠償債務の負担による損害をてん補するものであるから、共同不法行為者間の求償関係においては、被保険者の負担部分に充当されるべきである(最高裁平成一五年七月一一日第二小法廷判決・民集五七巻七号八一五頁参照)。

そうすると、原告が被告に対して求償し得る額は、Bに係る三六万三九四五円と亡Cに係る一一四一万四四二七円の合計一一七七万八三七二円となる。

また、主観的な共同関係にない共同不法行為者間において、弁済をした日から直ちに遅滞に陥ると解するのは公平を欠くから、民法四四二条二項を準用するのは相当でなく、民法四一二条三項により、請求を受けた時から遅滞に陥ると解すべきところ、関係各証拠(甲一一の一ないし三)によれば、原告が被告に対し本件求償権に基づく請求を行ったのは平成一三年一一月三日であることが認められるから、原告の遅延損害金の請求中、Bに係る求償金に対する平成一〇年九月二五日から、及び亡Cに係る求償金に対する同年二月一四日から各平成一三年一一月三日までの部分にはいずれも理由がない。

二  抗弁について

(1)  抗弁(1)(消滅時効)について

本件において原告が被告に対して行使する共同不法行為者間の求償権は、公平の理念から認められるものであり、その実質は不当利得返還請求権であって、その消滅時効期間は一〇年(民法一六七条一項)と解すべきである。

被告主張の事実は、この点に関して本件を異別に解すべき根拠とはならない。

(2)  同(2)(信義則違反)について

被告主張の事情のみから、本件求償権の行使が信義則に違反して許されないとまでは認め難い。

第四結論

よって、本訴請求は、原告が被告に対し、求償金一一七七万八三七二円及びこれに対する請求の日の翌日である平成一三年一一月四日から支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し、その余の請求には理由がないからこれを棄却することとして、主文のとおり判決する。

(裁判官 本田晃)

別紙1 交通事故現場見取図

<省略>

別紙2 交通事故現場見取図

<省略>

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