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東京地方裁判所 平成15年(モ)1581号 決定 2003年9月16日

東京都足立区●●●

申立人(原告)

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上記訴訟代理人弁護士

園山俊二

大阪市中央区淡路町二丁目3番9号

相手方(被告)ジー・イー・コンシューマー・クレジット株式会社訴訟承継人

GEコンシューマー・クレジット有限会社

代表者代表取締役

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上記訴訟代理人弁護士

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主文

相手方は,本決定送達の日から14日以内に,別紙文書目録1,2記載の文書を提出せよ。

理由

1  申立の趣旨及び理由

申立人が提出命令を求める文書の表示,文書の趣旨,文書の所持者,証すべき事実及び文書提出義務の原因は,別紙文書提出命令申立書のとおりである。

2  判断

(1)  当裁判所は,申立人(原告)の,本件申立てを相当と認めるものである。

(2)  なお,相手方(被告)は,文書目録1記載の文書について,既に廃棄している,同2記載の文書については,乙1号証(平成10年11月4日付融資限度額設定基本契約書)以前の文書は,書換えがなされたとき原告に返却している,としていずれも存在しないと主張しているので,この点について理由を述べておく。

ア  文書目録1記載の文書等貸金業法19条に定める帳簿は,貸金業者がその業務の内容を逐一記載してその運営の適正を図り,借主との紛争を未然に防止するため,貸金業者に作成及び保存が義務づけられている帳簿であると理解できる。したがって,文書目録1記載の文書は,民事訴訟法220条3号の法律関係文書であると認められる。また,同3記載の文書が,同号記載の法律関係文書に該当することは明らかである。

イ  ところで,文書目録1記載の文書は,貸金業法19条でその保存が貸金業者に義務づけられており,保存期間は,貸金業法施行規則17条1項で「貸付の契約ごとに,当該契約に定められた最終の返済期日から少なくとも3年間保存しなければならない」と規定されている。本件での各貸付における最終返済期日は明らかでないから,本件において上記保存期間が経過したか否かは明らかではないものの,申立人の昭和60年から相手方との間で貸借関係が生じているとの主張を前提とし,各貸付が別個独立のものであるとすれば,その帳簿等の保存期間が経過した貸付も存在すると考えることは可能である。

しかし,保存期間が経過した帳簿等が保存期間経過後に直ちに廃棄処分されることはまれであり(本件でも,相手方は平成4年6月8日以降の取引経過を開示している。乙4号証),相当の期間その保管を継続していると思われるのであるから,本件の文書提出命令の判断にあっては,文書目録1記載の文書に法律上保存期間が定められているとしても,その不存在が相当程度客観的に推認できるなどの特段の事情のない限り,その文書の廃棄を主張する者(相手方)が,その廃棄の事実を具体的に主張疎明すべきと解するのが相当である。

ウ  本件においては,相手方は,従前から取引履歴に関するデータをコンピュータから消除しており,その時期は特定できないと主張するにとどまり,その消除の具体的過程について何ら主張疎明していない。しかも,申立人代理人からの取引履歴の照会に対して,相手方は平成14年6月7日に初めて回答をしている(この時は,平成10年9月21日以降の取引履歴を開示した。甲1号証)が,相手方の主張は,丁度この回答日以前の取引経過が消除されているものであって,その主張自体に疑問を挟む余地のあるものである。したがって,本件において,相手方は,依然文書目録1記載の文書を所持しているものと推認するのが相当である。

エ  また,文書目録2記載の文書についても,一旦相手方が保管していたことは相手方も認めるところであり,その上で,相手方が,その不存在を主張する以上は,不存在に至った経過を具体的に主張,疎明すべきである。しかも,文書目録2記載の文書は,いわゆる17条書面であり,貸金業者であれば,みなし弁済(貸金業法43条)の主張・立証に備え,少なくともその控えは保管しておくのが通常であると考えられる。しかし,本件においては,相手方は,文書目録2記載の文書について,書替えの際に申立人に返却したと主張しているにどどまり,少なくとも平成4年6月8日以降の取引履歴を開示しておきながら,これ以降,何時,書替えがあったのかの点についてさえの主張もなされていない。したがって,相手方が,不存在に至った具体的事情を主張,疎明していない以上,本件文書提出命令の判断にあたっては,相手方がこれを所持しているものと推認するほかない。

オ  以上のとおり,相手方の上記主張はいずれも理由がない。

(3)  よって,主文のとおり決定する。

(裁判官 鳥居俊一)

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