東京地方裁判所 平成15年(モ)458号 決定 2003年2月04日
主文
本件申立てをいずれも却下する。
理由
1 本件申立ての趣旨及び理由
申立人らは、「本件を神戸地方裁判所に移送する」との裁判を求め、その理由として、本件は、譲渡担保の目的物である破産者○○酒造株式会社(破産会社)の敷地にあるタンク内の清酒を処分した申立人らの行為が、不法行為に当たると主張して、その損害賠償を求めるものであるが、その行為地は、兵庫県小野市であること、審理にあたって譲渡担保契約の解釈及びその損害額が問題になるところ、その関係者はいずれも兵庫県に居住していること、東京地方裁判所で審理を行うことにより申立人らは相手方に比して多大な費用を負担することにならざるを得ないことから、訴訟の著しい遅滞を避け、また当事者間の衡平を図るため移送の必要があると主張する。
2 当裁判所の判断
本件は、破産会社が、相手方との間において、破産会社の敷地内のタンクに保有している清酒についていわゆる流動集合動産譲渡担保契約(本件契約)を締結し、相手方がその占有を占有改定の方法により取得していたところ、破産会社の破産宣告により目的物たる清酒は固定化され、相手方は同清酒に関し動産譲渡担保権者としての地位を得たが、申立人破産管財人がこれを相手方に無断で売却したとして、相手方が申立人らに対し損害賠償を求めた事案である。
そこで検討するに、本件において予想される争点は、本件契約の有効性(特に目的物の特定性の有無)及び損害額であるところ、一件記録によれば、不法行為地は兵庫県であり、申立人ら及び本件契約締結にかかる関係者はいずれも兵庫県に在住することが認められるが、本件契約の有効性については契約書(甲3)の解釈が中心であり、また損害額についても相当程度書証による立証が可能であることからすると、現段階において証人等を尋問する必要性が高いものともいえず、また審理に当たり、電話会議ないしテレビ会議を活用することが可能であること、東京と神戸間の交通事情を考慮すると、東京地方裁判所において審理することが訴訟の著しい遅滞を及ぼすとはいえず、またそのことにより申立人らに多大な費用負担をかけるとも認められないから、当事者間の衡平を図るために移送することが必要であるということもできない。したがって、申立人らの主張は理由がない。
よって、本件申立てをいずれも却下することとして、主文のとおり決定する。