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東京地方裁判所 平成15年(ワ)20420号 判決 2006年3月02日

原告

A野一江

他3名

上記四名訴訟代理人弁護士

松本誠

被告

B山松夫

他2名

上記三名訴訟代理人弁護士

坂東司朗

池田紳

石田香苗

園部敏洋

吉野慶

岡田純一

主文

一  被告B山松夫及び被告D原工業株式会社は、連帯して、原告A野一江に対し、九〇四四万四七八一円及び内金八六六〇万一七八一円に対する平成一一年七月二一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  被告あいおい損害保険株式会社は、原告A野一江の被告B山松夫及び被告D原工業株式会社に対する判決のいずれかが確定したときは、原告A野一江に対し、九〇四四万四七八一円及び内金八六六〇万一七八一円に対する平成一一年七月二一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

三  原告A野一江のその余の請求並びに原告A野太郎、同A野花子及び同A野一郎の請求をいずれも棄却する。

四  訴訟費用は、原告A野一江と被告らとの間においては、原告A野一江に生じた費用及び被告らに生じた費用を五分し、その二を被告らの負担とし、その余を原告A野一江の負担とし、その余の原告らと被告らとの間においては、全てその余の原告らの負担とする。

五  この判決は、第一項及び第二項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由

第一請求

一  被告B山松夫及び被告D原工業株式会社は、連帯して、原告A野一江に対し、五一〇八万九七〇一円及び内金四七二四万三七〇一円に対する平成一一年七月二一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  被告B山松夫及び被告D原工業株式会社は、連帯して、原告A野太郎、同A野花子に対し、それぞれ八八〇万円及びこれに対する平成一一年七月二一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

三  被告B山松夫及び被告D原工業株式会社は、連帯して、原告A野一郎に対し、三三〇万円及びこれに対する平成一一年七月二一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

四  被告B山松夫及び被告D原工業株式会社は、連帯して、原告A野一江に対し、平成一五年一〇月一〇日限り一三一四万二二八〇円、平成一六年から平成二八年まで毎年一〇月一〇日限り六五七万一一四〇円を支払え。

五  被告B山松夫及び被告D原工業株式会社は、連帯して、原告A野一江に対し、平成二八年一〇月一〇日限り九三九四万七八六五円を支払え。

六  被告あいおい損害保険株式会社は、原告A野一江の被告B山松夫及び被告D原工業株式会社に対する判決のいずれかが確定したときは、原告A野一江に対し、五一〇八万九七〇一円及び内金四七二四万三七〇一円に対する平成一一年七月二一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

七  被告あいおい損害保険株式会社は、原告A野太郎及び同A野花子の被告B山松夫及び被告D原工業株式会社に対する判決のいずれかが確定したときは、原告A野太郎、同A野花子に対し、それぞれ八八〇万円及びこれに対する平成一一年七月二一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

八  被告あいおい損害保険株式会社は、原告A野一郎の被告B山松夫及び被告D原工業株式会社に対する判決のいずれかが確定したときは、原告A野一郎に対し、三三〇万円及びこれに対する平成一一年七月二一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

九  被告あいおい損害保険株式会社は、原告A野一江の被告B山松夫及び被告D原工業株式会社に対する判決のいずれかが確定したときは、原告A野一江に対し、平成一五年一〇月一〇日限り一三一四万二二八〇円、平成一六年から平成二八年まで毎年一〇月一〇日限り六五七万一一四〇円を支払え。

一〇  被告あいおい損害保険株式会社は、原告A野一江の被告B山松夫及び被告D原工業株式会社に対する判決のいずれかが確定したときは、原告A野一江に対し、平成二八年一〇月一〇日限り九三九四万七八六五円を支払え。

第二事案の概要

本件は、原告A野一江(以下「原告一江」という。)、その両親である原告A野太郎(以下「原告太郎」という。)及び同A野花子(以下「原告花子」という。)並びに原告一江の弟である原告A野一郎(以下「原告一郎」)が、後記一(1)の交通事故(以下「本件事故」という。)について、被告B山松夫(以下「被告B山」という。)に対し民法七〇九条、被告D原工業株式会社(以下「被告会社」という。)に対し自動車損害賠償保障法(以下「自賠法」という。)三条及び民法七一五条、被告あいおい損害保険株式会社(以下「被告保険会社」という。)に対しては自動車保険契約上の約款に基づき、それぞれ損害賠償を求めた事案である。

一  前提事実(争いのない事実並びに掲記証拠及び弁論の全趣旨により明らかに認められる事実)

(1)  本件事故の発生(争いがない。)

ア 日時 平成一一年七月二一日午後二時三五分ころ

イ 場所 山口県萩市大字南古萩町三三番地の三先路上(以下「本件現場」という。)

ウ 被告車両 普通貨物自動車(車両番号《省略》、以下「被告車」という。)

所有者 被告会社

運転者 被告B山

エ 原告車両 原動機付自転車(車両番号《省略》、以下「原告車」という。)

運転者 原告一江

オ 態様 信号機によって交通整理のなされていない本件現場の交差点(以下「本件交差点」という。)において、交差道路を走行していた原告車と被告車が衝突した。

(2)  原告一江の傷害(争いがない。)

原告一江は、本件事故により受傷し、左前頭骨骨折、両側前頭葉脳挫傷、脳内出血、後頭部挫創、左肩甲骨骨折等と診断された。

(3)  原告一江の治療経過(争いがない。)

ア 玉木病院

平成一一年七月二一日から同月二二日まで 入院

イ 医療法人医誠会都志見病院(以下「都志見病院」という。)

平成一一年七月二二日から同年九月二八日まで 入院

ウ 北里大学病院

平成一一年九月三〇日から平成一三年一〇月一〇日まで 通院

平成一一年一〇月一四日から同月二六日まで 入院

平成一二年四月一二日から同月二六日まで 入院

平成一二年九月一〇日から同月一一日まで 入院

(平成一三年一〇月一〇日 症状固定)

(4)  自動車損害賠償責任保険(以下「自賠責保険」という。)における後遺障害の認定(争いがない。)

原告一江の後遺障害は、損害保険料率算出機構により、自賠法施行令二条別表の後遺障害別等級表に基づき、併合第三級と認定された。

(5)  被告らの責任(争いがない。)

被告B山は、民法七〇九条により本件事故による損害を賠償する義務がある。

被告会社は、被告車の保有者であり、本件事故は、被告会社の業務執行中の事故であるから、自賠法三条及び民法七一五条により、本件事故による損害を賠償する義務がある。

被告保険会社は、被告会社と自家用自動車総合保険契約を締結しており、本件事故は、同契約期間内に発生した。契約約款第一章賠償責任条項中、第一条乃至第六条(支払責任、直接請求権)に基づき、被告保険会社は本件事故による賠償金額を支払う義務がある。

(6)  損害のてん補(争いがない。)

原告一江は、損害のてん補として、平成一五年一月二二日、自賠責保険金二一九〇万円の支払を受け、さらに、被告保険会社から合計九一〇万七〇二五円の支払いを受けた。

二  争点

(1)  過失割合

(原告らの主張)

ア 被告B山の徐行義務違反及び制限速度違反

本件現場は、城下町萩の名所旧跡がある風致地区で、徒歩の観光客が群れをなし、頻繁に往来する特殊な地域であり、古い町並みの風景を保存するために道路標識やカーブミラーは設置されていない。道幅は狭く、歩車道の分離はなく、本件交差点には左右ともに二メートルの生け垣が迫り見通しが悪い。したがって、本件交差点手前では徐行しなければならない。しかしながら、被告B山は、現場監督から呼ばれ、早く現場に戻らなければいけないというあせった気持ちになり、この交通環境に著しく不都合な時速四八キロメートルという高すぎる速度を出していたもので、速度超過と徐行義務の不履行という過失がある。

イ 被告B山の前方不注視

被告B山は、右折しようか直進しようか逡巡していたため、左右前方の安全確認がおろそかになり、交差道路左可視領域内に姿を見せ、一旦停止後交差点に進行し、右前方角まで既に三メートル地点まで先入していた原告車の発見が遅れ、制動するが間に合わず衝突したもので、前方不注視の過失がある。

ウ 本件現場は、高さ二・二メートルの植え込みで視界が遮られていたが、原告一江は、本件交差点手前で一時停止し、安全確認をしたものであり、それ以上完璧に車両の有無を確認しようとすれば、原告車の大半を交差点内に乗り出さない限り不可能である。

また、原告車後部にある座席右側面に被告車の前部右側が衝突したことからすれば、原告車が本件交差点に先入したことは明らかである。

よって、原告一江に過失はない。

(被告らの主張)

被告B山に前方不注視及び制限速度違反の過失があったことは認める。

しかしながら、被告車の走行していた道路の幅員は三・三メートル、原告車の走行していた道路の幅員は一・九メートルであり、被告車の走行していた道路の方が幅員が明らかに広いことが認められる。

被告車は時速四〇キロメートルで走行していたもので、原告車が発進する時点において、被告車は本件交差点からわずか七・七メートルの至近距離に迫っていた。原告一江が右方道路を確認したのであれば、被告車を視認できたはずであり、視認できたとすれば、交差点に進入しないと考えるのが自然である。結局、原告一江が右方道路の確認を怠っていたと考えざるを得ない。

原告一江は、右方の確認を怠った著しい過失が認められるから、過失割合は、原告車二五パーセント、被告車七五パーセントとするのが相当であるが、本件交差点は、原告車狭路、被告車広路の交差点とみるべきであって、原告車の著しい過失と被告車の明らかな先入により、原告車八〇パーセント、被告車二〇パーセントとみるべきである。

(2)  損害及びその額

(原告らの主張)

ア 一時金支払分

(ア) 治療費 二四四万二九五一円

(イ) 入院付添費、症状固定日までの付添費 五二七万八〇〇〇円

a 原告一江は、瀕死の重傷を負い、入院中は全面的な介護が必要であった。おむつ交換、体位交換(じょく創予防)、清拭作業、マッサージ、声掛けなど看護師がすべき作業を家族がやらねばならず、譫妄妄想と情緒障害もあるため、突発的な行動もあり、家族がそれを押さえつけることが必要であった。病院及び医師の指示のもとに家族が二四時間付添い、介護に勤しんだことは明らかである。原告一江の症状は重篤状態が続き、命の危険もあり、かつ、目が離せない状態で二四時間監視が必要であった。完全介護体制が実質上なされている病院はごくわずかであり、現実には看護師がやるべき介護も病院の指示により家族がしており、それが治療の前提となっていた。親子三人で二四時間交代で監視を伴う介護をする労力を考えれば、一日一万円が妥当である。入院日数一〇〇日につき一日一万円として計算する。

(計算式)

一万円×一〇〇日=一〇〇万円

b 原告一江は、併合三級とされた後遺障害があり、退院後でも、入院時同様の付添いや介護が必要であった。通院日でない日もてんかん発作が起きないように監視する必要があり、症状固定日までにてんかんと前頭額部腫瘍摘出手術のために計三度も入院しており、手術後の経過観察や予後の監視も必要であるから、当然に見守る必要もある。これらの労力を考えれば、一日六〇〇〇円が妥当である。症状固定日までの日数から入院日数を差し引いた七一三日につき、一日六〇〇〇円として計算する。

(計算式)

六〇〇〇円×七一三日=四二七万八〇〇〇円

(ウ) 付添のための交通費、宿泊費等 一一七万四二九二円

a 付添のための交通費 五六万六四九七円

b 付添のためのホテル等宿泊代 六〇万七七九五円

平成一一年七月二九日から同年八月一六日までの宿泊代は三六万九二五五円である(被告保険会社が支払済み)。

家族が原告一江の勤務先の社宅を賃借し、付添いのため通院した際のアパートの賃料は月額六万七五〇〇円である。

(エ) 入院雑費等 一三六万九五〇〇円

入院雑費は、一日三〇〇〇円、入院日数一〇〇日で計算する。

(計算式)

三〇〇〇円×一〇〇日(入院日数)=三〇万円

症状固定日までの自宅療養期間においても、しかるべき費用はあったのだから、一日一五〇〇円、入院日数を除く七一三日で計算する。

(計算式)

一五〇〇円×七一三日=一〇六万九五〇〇円

(オ) 医師への謝礼 六〇万円

原告一江は、都志見病院で二度、北里病院で一度大手術を受け、会計六〇万円の謝礼を支払った。本件事故による損害であり、相応の支払対価である。

(カ) ビデオ作成、鑑定及び調査交通費 二七五万円

a ビデオ作成費及び鑑定費 一〇〇万円

b 調査のための交通費 一七五万円

(キ) 休業損害 七七九万七〇二〇円

原告一江は、平成一一年六月二一日からC川有限会社に技術スタッフとして勤務し、平成一一年七月分(同年六月二一日から同年七月二〇日まで)の給与は二二万三三九〇円である。一年目(同年七月二一日から平成一二年六月二〇日まで)は、上期賞与が一〇万円、下期賞与は一・八四か月(三・六八か月÷二)分であるから、年収二九六万八三二七円となる。

(計算式)

二二万三三九〇円×(一一か月+一・八四か月)+一〇万円=二九六万八三二七円

二年目(平成一二年六月二一日から平成一三年六月二〇日まで)は、過去の勤務先の平均昇給率が四・二三パーセントであるので、一か月二三万二八三九円になり、賞与は平均実績で三・六八か月分であるから、三六五万九一五円となる。

(計算式)

二三万二八三九円×(一二か月+三・六八か月)=三六五万九一五円

三年目(平成一三年六月二一日から同年一〇月一〇日までの一一二日分)は、前記平均昇給率により、一か月二四万二六八八円(一日八〇八九円)となり、賞与は一・一二か月分(三・六八か月分×一一二日/三六五日)であるから、一一七万七七七八円となる。

(計算式)

八〇八九円×一一二日+二四万二六八八円×一・一二か月=一一七万七七七八円

以上の合計は、七七九万七〇二〇円である。

(ク) 慰謝料

a 傷害慰謝料 八〇〇万円

原告一江は、玉木病院に平成一一年七月二一日から同月二二日まで入院し、都志見病院に平成一一年七月二二日から同年九月二八日まで入院し、北里大学病院脳神経外科に平成一一年九月三〇日から平成一三年一〇月一〇日まで通院する間に、平成一一年一〇月一四日から同月二六日まで、平成一二年四月一二日から同月二六日まで、平成一二年九月一〇日から同月一一日までにそれぞれ入院した。

原告一江は、都志見病院で左前頭骨骨折、両側前頭葉脳挫傷、脳内出血、左肩甲骨骨折と診断され、瀕死の重傷で危篤状態が続き、平成一一年七月二四日には両側前頭開頭血腫除去の大手術を受けた。北里大学病院では抗けいれん剤を投与しているが、平成一一年一〇月にけいれん発作、平成一二年四月に前頭部皮下術後膿瘍手術、同年九月にけいれん発作のために入院し、平成一三年一〇月一〇日に症状固定に至ったものである。

原告一江は衝突され、跳ね上げられ、頭部が被告車のフロントガラスに激突したもので、被告B山の過失は大きく、被告らの事故後の対応の誠意のなさ、症状固定日までの期間を考慮すれば、傷害慰謝料として八〇〇万円は下らない。

b 後遺障害慰謝料 三〇〇〇万円

(a) 原告一江は、後遺障害診断書によれば、自覚症状として「頭部顔面の変形、あごの下前頭部の瘢痕、嗅覚脱失、事故前に比べて積極性の減退」、他覚症状として「①両側前頭葉脳挫傷あり。頭部CT(平成一二年九月一〇日)において六スライスにわたって広範囲に広がっている。②脳波異常(てんかん性)平成一一年一〇月二五日両側前頭に鋭波散発、同年一〇月七日両側前頭に徐波と速波、平成一二年二月一八日右半球に鋭波、同年九月一一日前頭に不規則な徐波・速波、③てんかん発作 症状固定前にてんかん発作で二度の入院。てんかん対策として、現在もてんかん発作抑制のための投薬を要する。④両側前頭葉障害による意欲減退、⑤嗅覚脱失 アリナミンテストfile_2.jpg。醜状障害 醜状部位 頭部、顔面部、頸部、前額部陥凹、顎下四cmと五cmの瘢痕」があるとされている。障害は固定し、緩解の見込みはなく、抗てんかん薬は生涯必要であり、皮下チタンプレートにより再び皮下膿瘍をきたす可能性ありとされている。

自賠責保険では、神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないものとして第五級二号に、女子の外貌に著しい醜状を残すものとして第七級一二号に、頭部外傷による嗅覚脱失として第一二級に該当し、併合三級と認定されている。

(b) 原告一江は、後遺障害のため、断続的な疲労感、性格の急激な変化に苦しみ、対応能力が著しく低くなった。ガラス工芸の道の夢を完全に絶たれ、てんかんの恐れから仕事に就くこともできない。外貌の醜状により女性としての絶望感も強い。精神障害も生じている。頭蓋骨陥没もあり、脳膿瘍の危険からも解放されておらず、転倒すれば生命の危険もある。

(c) 被告B山の行為及び態度は悪質であり、被告B山は、右折する地点に注意を奪われて逡巡し、時速四八キロメートルという高速度のまま進行し、左右前方への注意と徐行義務を怠り、重大な過失があった。また、被告B山は、事故後もまともに謝罪しておらず、原告一江が入院中、病室に入り込んで「保険で解決」といったため追い出されて以降、見舞いや謝罪に来ていない。また被告会社の代表者も、「こういう事故は誰でも起こる。お父さんでも速度オーバーなどの交通違反はしょっちゅうしているでしょう。娘さんは運が悪かったのです。」などと発言して、原告らの心情を著しく傷つけた。

(d) 以上の事情を考慮すれば、後遺障害慰謝料は増額すべきであり、上記金額が相当である。

(ケ) 損害のてん補

原告一江は、損害のてん補として、自賠責保険金二一九〇万円及び被告保険会社から九一〇万七〇二五円の支払を受けた。

(コ) 確定遅延損害金

原告は、平成一五年一月二二日に、前記自賠責保険金を受領したところ、同金額に対する本件事故発生日から前記支払日まで(一二八二日間)の年五分の割合による遅延損害金を損害として加算する。

(計算式)

二一九〇万円×〇・〇五÷三六五×一二八二日=三八四万六〇〇〇円

(サ) 弁護士費用 二二〇〇万円

原告一江は、被告らが任意に以上の損害賠償金を支払わないため、原告ら訴訟代理人に本訴提起追行を依頼し、二二〇〇万円をその費用及び報酬として支払うことを約した。

(シ) 合計 五四二五万〇七三八円

イ 損害の定期金払

不法行為に基づく損害賠償請求権は、全ての損害が不法行為時に発生するものと観念されるものであるが、その支払方法については法律上特段の根拠がない一方、民事訴訟法一一七条が口頭弁論終結前に生じた損害につき定期金賠償を命じた確定判決について、口頭弁論終結後に損害額の算定の基礎となった事情に著しい変更が生じた場合に、その判決の変更を求める訴えを提起できる旨規定し、定期金賠償方式を予定している。死亡の場合は相続構成をとりながら定期金賠償方式をとることは容認しがたいとされるが、本件は死亡ではないので定期金賠償方式で支払われるべきである。

(ア) 将来費用

a 症状固定後の医療費、交通費

年額 一七万三六四〇円

平成一四年度一年間で一七万三六四〇円であり、将来も同額を要する。

b 将来介護費 年額 七三万円

原告一江は、過去二回のてんかん発作から抗てんかん薬を継続服用中であり、家族が随時監視できる体制にしている。器質性精神病という新たな後遺障害により金銭管理も事実上できておらず、精神障害の症状は年々悪くなっている。原告一江は、日常生活における主な動作は自力で可能であるが、将来にわたり、できる限り円滑に生活を営むためには、指示や声かけ等を含めた近親者の部分的な付添いが必要である。

よって、将来介護費は、一日二〇〇〇円は下回らない。

c 年間の医療費、交通費及び介護費の合計 年額 九〇万三六四〇円

(イ) 逸失利益

年額 五六六万七五〇〇円

原告一江は、前記ア(ク)bのとおり、後遺障害等級併合三級に認定されており、さらに、てんかん、嗅覚脱失、左眼の視野狭窄後遺障害もあるので、併合二級と考える。嗅ぎ分け及び目視による危険予知能力を奪われ、てんかんと左眼の視野狭窄がいつ起きるかわからないので機械装置の運転操作(ガラス工芸炉制御と手作業、車の運転等)は医師から禁じられ、ガラス工芸を断念した。感染潜伏可能性と潜伏期間の予測のつかない術後膿瘍再発のおそれも指摘されている。現状のままとしても、頭蓋骨に凹みもあり、転倒等があれば生命の危険もある。感情的な傾向、自己中心的な傾向にみられる情緒障害、人格障害のほか、発現時期の予測できない術後皮下膿瘍や脳膿瘍の可能性、てんかん、高次脳機能障害、嗅覚脱失、外貌醜状等が相互に重複し、あるいは相乗して精神障害をきたしている上、人格水準の低下としての器質的精神病により症状固定時の自賠責保険の認定されたときよりも悪化し、新たな就労能力制約条件となっている。後遺障害の程度からすれば、軽易な労務につくのも困難であり、労働能力喪失率は一〇〇パーセントである。

原告一江は、勤務後一か月で本件事故に遭ったもので、就労後間もない時期の事故であり、全年齢平均賃金が得られる蓋然性があるから、それによるべきである。就労者の男女の別で格差を生じるのは憲法一四条の法の下の平等に反し、大卒男女の平均賃金(賃金センサスにおける男子大卒労働者と女子大卒労働者の就労期間を通じた平均賃金)を採用するのが妥当であり、基礎収入は五六六万七五〇〇円とすべきである。

(ウ) 損害の支払

a 平成一四年から平成二八年までの定期金支払額

症状固定後、一年目の平成一四年一〇月一〇日を第一回目の支払日として、平成二八年までの一五年間に毎年一〇月一〇日に原告一江に支払われる損害額は六五七万一一四〇円(一五年間の合計九八五六万七一〇〇円)である。

b 平成二八年一〇月一〇日の一括支払額

(a) 逸失利益(原告一江四三歳から六七歳まで)

五六六万七五〇〇円×一三・七九八六=七八二〇万三五六五円

(b) 将来介護費と将来医療費(原告一江四三歳から余命八五歳までの四二年分)

九〇万三六四〇円×一七・四二三二=一五七四万四三〇〇円

(c) 合計 九三九四万七八六五円

ウ 原告一江の損害合計

前記アとイを合計すれば、二億四六七六万五七〇三円となるが、その一部である二億四三六〇万四六六六円の支払を求める。

エ 原告太郎、同花子及び同一郎の損害

(ア) 慰謝料

原告太郎及び同花子 各八〇〇万円

原告一郎 三〇〇万円

本件事故により、原告一江は極めて重度の傷害を負い、ガラス工芸の道が絶たれ、性格的に大きく変化し、自分ではコントロールできない感情的な傾向や突飛な発言で通常の仕事に就けなくなり、意欲が減退していくのを見ていると、原告太郎ら両親にとって不憫で仕方がない。その上、原告一江の言動で家族が疲れることも多く、妙齢の女性であるのに外貌が醜くなってしまい、幸せな結婚も難しくなり、将来の脳障害の悪化の可能性もあり、不安が尽きない。原告一郎は、本件事故当時、イギリス留学中であったが、原告一江の看病のため帰国し、復学の機会を逸した。原告太郎、同花子は、父母として、原告一江の生命が害されたにも比肩すべき精神上の苦痛を受けたものであるから、民法七〇九条、七一〇条により固有の慰謝料請求権を有し、その金額は八〇〇万円を下らない。原告一郎も同様であり、慰謝料の金額は三〇〇万円を下らない。

(イ) 弁護士費用

原告太郎及び同花子 各八〇万円

原告一郎 三〇万円

(ウ) 合計

原告太郎及び同花子 各八八〇万円

原告一郎 三三〇万円

(被告らの主張)

ア 治療費は認める。

イ 入院付添費は、一日あたり六五〇〇円が相当である。入院日以外の付添看護費は争う。

ウ 入院雑費は、一日あたり一五〇〇円が相当である。入院雑費以外の雑費は根拠がなく認められない。

エ 医師への謝礼、付添のための費用、休業損害は不知ないし争う。

オ 傷害慰謝料、後遺障害慰謝料は争う。

原告らは、慰謝料増額事由として、①本件事故態様の悪質さ、②事故後の被告B山及び被告会社の不誠実な対応を挙げているが、原告一江にも過失が認められる本件事故においては、①は認められないし、被告B山は面会の都度謝罪しており、「保険で解決」という意味のことを申し向けた事実はない。被告会社の代表者が「こういう事故は誰でも起こる。お父さんでも速度オーバーなどの交通違反はしょっちゅうしているでしょう。娘さんは運が悪かったのです。」などと発言した事実もない。

カ 逸失利益について、自賠責保険の後遺障害等級認定が併合三級であったことは認めるが、その余は争う。

基礎収入は、本件事故前の実績収入によるべきである。原告一江の職種は、作品の評価によって収入が決まり、さらに作品の評価が高くても商業的な成功には結びつくとは限らず、賃金センサスの平均賃金を得られる蓋然性が認められるとはいえない。原告一江の職種に学歴は関係なく、大学卒業後もガラス工芸の勉強と技術の習得に二年を費やし、ガラス工業の会社に就職し、収入を得ていた。同年齢の女子の大卒平均賃金より原告一江の実収入は低額である。

カルテの記載上、通院期間中の人格水準の低下は顕著ではない。易怒性は、事故後の様々な精神的なストレスが関与している可能性がある。てんかんは抗てんかん剤によってコントロールが可能であり、原告一江は、平成一三年一〇月一〇日以降はてんかんを起こしていない。また、皮下チタンプレートによる皮下膿瘍の再発可能性は低い。

原告一江の後遺障害は九級に該当するものであって、労働能力喪失率は三五パーセントとすべきである。仮に自賠責保険の事前認定どおり、高次脳機能障害が五級二号に相当するものとしても、労働能力喪失率は七九パーセントとすべきである。

キ 将来の費用は不知。

ク 将来の介護費は争う。

ケ 弁護士費用、確定遅延損害金は争う。

コ 原告太郎、同花子、同一郎の損害は争う。

原告太郎取び同花子には、「原告一江の生命を害されたときにも比肩すべき精神上の苦痛」や「これに比しても著しく劣らない程度の精神的苦痛」があったものとは認められない。

原告一郎は、民法七一一条の近親者には含まれず、固有の慰謝料請求権を認める余地はない。

第三争点についての判断

一  争点(1)(過失割合)について

(1)  《証拠省略》によれば、以下の事実が認められる。

ア 本件現場は、江向(市民球場)方面から南片河町方面に向かって東西に走る幅員三・三メートルの道路(以下「東西道路」という。)と平安古町方面から呉服町方面に向かって南北に走る道路(以下「南北道路」という。)が交差する、信号機により交通整理がなされていない十字路交差点である。南北道路は、本件交差点を挟んで南側の幅員が一・九メートル、北側の幅員が三・一メートルである。いずれの道路も中央分離がなされておらず、外側線もないが、両側には有蓋・無蓋の側溝が設けられている。東西道路、南北道路とも、路面はアスファルト道路舗装がされており、凹凸勾配等はなく、本件事故当時は乾燥していた。

本件現場付近は、萩城下町の風情を顕著残す閑静な住宅街であり、萩市観光コースの一つとなっている地域(観光客の往来する風致地区)で、観光客が散策を楽しむ道路である。南北道路については、呉服町方面に向かって一方通行(七時から二二時まで、二輪車を除く。)の交通規制があり、民家敷地内に同交通標識が設置されているが、このほかに速度規制・一時停止・右左折禁止・一方通行等の規制はない。東西道路、南北道路とともに前後の見通しはよいが、本件交差点における交差道路に対する見通しは、本件交差点の南東側に存在する石井茶碗美術館の生け垣のために極めて悪く、市民球場方面から南片河町方面に向かっては、右方(呉服町方面)は約一・五メートル、左方(平安古町方面)は約〇・五メートルの見通ししかなかった。本件事故当時、本件現場を走行する車両はなく、歩行者もほとんどいなかった。

イ 被告B山は、仕事を終えて帰宅途中に、仕事現場に引き返してほしいとの電話連絡を受け、右折を繰り返して引き返そうと時速四五キロメートルないし五〇キロメートルの速度で走行していたところ、本件交差点を発見し、右折しようと思ったが、タイミングがずれたため右折を中止し、本件交差点を直進しようとした。被告B山は、別紙交通事故発生現場見取図③地点(以下丸で囲まれた文字、数字は同見取図上の地点を示す。)で八・四メートル離れたfile_3.jpg地点に原告車を発見して、危険を感じて急ブレーキをかけたが、間に合わず、原告車と衝突した。原告車はfile_4.jpgの地点まではねとばされて停止し、原告一江は、file_5.jpg地点に転倒した。被告車は⑤の地点に停止した。

ウ 本件事故後、本件交差点西側には、S1部分点に被告車停止位置まで続く一〇・二メートルのスリップ痕が、S2部分に左前輪一・二メートルのスリップ痕がそれぞれ印象されていたほか、file_6.jpg地点に血痕が認められた。

被告車には、本件事故によりフロントバンパー衝突痕、フロントグリル曲損、右前照灯ガラス破損(ひび割れ)、ボンネット先端曲損、フロントガラス運転席前部割損(蜘蛛の巣状)が認められた。原告車には、前かご曲損、カウル右側中央部割損、車体(ヘルメット収納トランク)右側凹損が認められた。

(2)  前記認定のとおり、本件現場は、観光客の往来する風致地区で、道路標識等は存在せず、交通量の少ない道幅の狭い道路で、自動車で走行する場合には、もとより低速度で周囲の安全に配慮しながら走行しなければならない上、本件交差点は、生け垣の存在する左右の見通しの悪い交差点であるのであるから、同交差点に進入する際には、徐行して、十分に左右の安全を確認してから進行しなければならない。にもかかわらず、被告B山は、本件現場の状況に配慮することなく時速四五キロメートルから五〇キロメートルという速度で走行し、さして減速することなく漫然と本件交差点に進入し、急ブレーキをかけたもののそれが効く間もなく原告車と衝突していることからすれば、その過失は著しいものであったといわざるを得ない。

(3)  他方、前記のとおり、被告車の損傷が車両の右側部分に集中しており、原告車のヘルメット収納トランク(座席部分)右側に直接衝突による凹み痕がみられること、原告一江の転倒位置、原告車の停止転倒位置、血痕がいずれも東西道路の北端であることからすれば、衝突地点が実況見分調書において被告B山が指示説明するfile_7.jpg地点よりも北側であった可能性は否定できず、衝突時には、原告車がある程度本件交差点内に進入していたことが認められる。

しかしながら、原告一江は、本件交差点において、一時停止し、左右を確認していた様子が目撃されていること、前記のとおり、生け垣の存在により原告一江からの右方交差道路の見通しが悪いため、ある程度本件交差点内に入って左右の安全を確認することはやむを得ないことを考慮すると、原告一江は、本件交差点に向かって進行してくる被告車の速度、距離の判断を誤った可能性があることは否定できないものの、一時停止をし、左右確認等一応の義務は果たしているから、過失があるとしてもわずかであるというべきである。

(4)  以上認定した本件現場の状況、事故態様、当事者双方の過失の内容、程度にかんがみれば、原告一江には、過失相殺しなければ公平を欠くと認めるべきほどの落ち度は認められない。

二  争点(2)(損害及びその額)について

(1)  治療費 二四四万二九五一円

当事者間に争いがなく、原告一江の請求額が認められる。

(2)  入院付添費、症状固定日までの付添費 二七八万九〇〇〇円

《証拠省略》によれば、原告一江の症状固定日までの症状及び付添状況については、以下の事実が認められる。

ア 原告一江は、本件事故により受傷し、救急車で玉木病院に搬送され、頭部打撲、左肩甲骨骨折、顔面切創と診断され応急処置を施された。意識レベルはJCS一桁程度であり、脳内出血による手術の適応が認められたため、平成一一年七月二二日、都志見病院に転院したところ、脳浮腫が増悪し、JCS三桁の重い意識障害が認められたため、CT診断後、同月二四日、開頭術により血腫等を除去し、バルビタール療法・低体温療法が実施された。同年八月には意識レベル、脳浮腫とも改善傾向にあったため、同年九月一六日、自家骨による頭蓋形成術が施され、同月二八日同病院を退院した。原告太郎らは、その間、おむつ交換、シーツ交換、氷枕の交換、ガーゼ交換、意識を戻すためのマッサージを行っていた。原告一江の意識レベルは回復したが、いきなり叫んだり、無意識に暴れ、けいれんのおそれ、異常行動、突発的な行動があり、家族がそれを押さえつけたり、監視することが必要であった。

原告一江は、平成一一年九月三〇日北里大学病院に転院し、通院治療を受けた。同年一〇月一四日、原告花子が付き添って買い物に出かけたところてんかんの発作を起こし、救急車で搬送され、同月二六日まで北里大学病院に入院した。さらに、平成一二年三月ころより、同年四月一二日北里大学病院に緊急入院し、前額部の術後膿瘍により、頭蓋骨を固定したチタンプレートをはずし、皮膚のデブリードメントの手術をし、同月二六日退院した。

同年九月一〇日、原告一江は、菓子店でのアルバイト中に、両上肢のけいれんと意識消失が認められ、救急車で北里大学病院に搬送されたが、来院時には意識清明となり、翌日退院した。

原告一江は、その後も北里大学病院で通院治療を受けていたが、平成一四年三月から転地療養として北海道に転居し、北海道大学病院(以下「北大病院」という。)で治療を受けるようになった。現在に至るまで、てんかん剤を服用しており、平成一二年九月以降はてんかんの発作は起きていない。

イ 原告一江が入院した病院はいずれも完全看護制であったが、原告一江は、玉木病院、都志見病院に入院していた期間のうち、しばらくの間意識障害を有する重篤な状態にあったもので、原告太郎ら家族が交代でおむつ交換等の看護作業を行うほか、原告一江の症状の変化に気を配ったり、行動を制したり、監視を行っていたことが認められる。また、北里大学病院入院時において、平成一二年四月の手術は、全身麻酔による開頭手術であり、自家骨を取り出して、人工硬膜のみになった頭部に気を使わなければならない状態であったものであり、てんかん発作後の入院時は、原告花子らが転倒に注意しながら歩行に付添っていたことが認められ、いずれも付添いの必要性は否定できない。

したがって、一日六五〇〇円の入院付添費を入院期間(一〇〇日)分認めるのが相当である。

通院期間中も、通院付添いに加え、退院直後の一定期間は日常生活動作にもある程度の介護を必要とすると考えられるほか、前記のとおり、原告一江にはてんかん発作の可能性があったために、通院以外の外出時にも付添いを要するなど原告一江の症状にかんがみれば、一定の監視を含む介護の必要性が認められる。親族による随時の付添を要したものとして、症状固定日までの間一日あたり三〇〇〇円の介護費用を認めるのが相当である。

(計算式)

六五〇〇円×一〇〇日=六五万円

三〇〇〇円×七一三日=二一三万九〇〇〇円

(3)  付添のための交通費、宿泊費等 三六万九二五五円

前記(2)のとおり、原告太郎らが交代で付添いをしたことは認められるが、宿泊代等の支払の事実、支払金額を裏付ける証拠がないので、被告の即払額の限度(ホテル代三六万九二五五円)で損害と認められる。

(4)  入院雑費等 一五万円

原告一江の入院期間(延日数一〇〇日)について、一日あたり一五〇〇円の入院雑費を認めるのが相当である。

それ以外の期間において、雑費を要したことを認めるに足りる証拠はない。

(5)  医師への謝礼 三〇万円

原告一江が都志見病院及び北里大学病院において三回大きな手術を受けたことにより、原告らが担当医師らへ支払った謝礼は、三〇万円の限度で本件事故との因果関係が認められる。

(6)  ビデオ作成、鑑定及び調査交通費 〇円

原告一江は、①ビデオ作成費及び鑑定費一〇〇万円、②調査のための交通費一七五万円を請求するが、いずれも本件事故との相当因果関係が認められない。

(7)  休業損害 七一三万五九八六円

原告一江は、症状固定日まで休業の必要性が認められるところ、同原告の本件事故前の収入は、平成一一年六月二一日から同年九月二七日までの約四か月で七五万三四二九円であった。

昇給率、賞与については、その算定根拠は明らかでなく、年によるばらつきもあるが、本件事故前三年間の賞与、昇級の実績にかんがみると、今後これらがないとはいい難いので、控えめにみて、事故前三年間のうち最も低い平成一一年の実績(賞与各期一・五五か月、昇給率三・一二パーセント)をもとに収入を算定する。

ア 原告一江の平成一一年七月分(同年六月二一日から同年七月二〇日まで)の給与は二二万三三九〇円である(交通費を除く)。一年目(同年七月二一日から平成一二年六月二〇日まで)は、一年未満の社員に賞与がなく、下期手当は一〇万円であるから、二五五万七二九〇円となる。

(計算式)

二二万三三九〇円×(一一か月)+一〇万円=二五五万七二九〇円

イ 二年目(平成一二年六月二一日から平成一三年六月二〇日まで)は、昇給率三・一二パーセントであるので、一か月二三万三五九円になり、賞与は平均実績で三・一か月分であるから、三四七万八四二〇円となる。

(計算式)

二三万〇三五九円×(一二か月+三・一か月)=三四七万八四二〇円

ウ 三年目(平成一三年六月二一日から同年一〇月一〇日までの一一二日分)は、前記昇給率により、一か月二三万七五四六円(一日七八〇九円)となり、賞与は〇・九五か月分(三・一か月分×一一二日/三六五日)であるから、一一〇万〇二七六円となる。

(計算式)

七八〇九円×一一二日+二三万七五四六円×〇・九五か月=一一〇万〇二七六円

エ 以上のアないしウの合計は、七一三万五九八六円である。

(8)  慰謝料 二五七〇万円

ア 傷害慰謝料 二七〇万円

原告一江は、玉木病院、都志見病院、北里大学病院に合計一〇〇日間入院し、平成一一年九月三〇日から症状固定日である平成一三年一〇月一〇日まで北里大学病院に通院(実通院日数は、甲五三によれば平成一三年四月一一日から症状固定日まで六日、北大病院へは二日)したものであるところ、同原告の傷害の部位、程度、治療状況に鑑みれば、傷害慰謝料としては二七〇万円が相当と認められる。

イ 後遺障害慰謝料 二三〇〇万円

原告一江の後遺障害は、高次脳機能障害は「自用を弁ずることができるが、労働能力に著しい支障が生じ、終身極めて軽易な労務にしか服することができない」ものとして第五級二号に、頭部外傷に伴う嗅覚障害については、第一二級に、醜状障害については第七級一二号に該当し、後遺障害併合第三級に該当すると認定されており、後記(10)のとおり、てんかんのおそれがあり、現在も抗てんかん剤を服用していること、後記(10)のとおり、介護を要する程度には至らないと認められるものの、人格障害、易度性、易興奮性、意欲の減退といった症状からして、家族の協力やサポートを要すると認められること、原告一江は、本件事故当時二五歳の未婚女性であり、生活面、精神面において影響が大きいと考えられる外貌醜状、嗅覚脱失の後遺障害の存在等本件に顕れた一切の事情を考慮すれば、後遺障害慰謝料としては二三〇〇万円が相当と認められる。

なお、本件事故態様は著しく悪質であるとまではいえず、被告B山及び被告会社の本件事故後の対応が、慰謝料を増額させるべきといえるほど不誠実であったとは認めるに足りない。

(9)  将来の医療費 〇円

前記(2)のとおり、原告一江が抗てんかん剤の服用をしており、今後もその必要があることは認められるが、医療費の額については立証がなく、損害としては認められないものの、後遺障害慰謝料において考慮する。

(10)  将来の介護費用 〇円

《証拠省略》によれば、以下の事実が認められる。

ア 原告一江の後遺障害については、

傷病名:脳挫傷、外傷性てんかん、頭皮下膿瘍・術部創感染

自覚症状:①頭部顔面(前額)の変形、顎の下、前額部の瘢痕、②嗅覚脱失、③事故前と比べて積極性の減退

他覚症状および検査結果、精神・神経の障害

①両側前頭葉脳挫傷あり。頭部CT(平成一二年九月一〇日)において六スライスにわたって広範に広がっている。

②脳波異常(てんかん性)

H11・10・25 両側前頭に鋭波散発

11・10・7 両側前頭に徐波と速波

12・2・18 右半球に鋭波

12・9・1

前頭に不規則な徐波と速波

③てんかん発作

上記入院①と③を要した。

現在もてんかん発作抑制のための投薬を要している。

④両側前頭葉障害による意欲減退

⑤嗅覚脱失 アリナミンテストfile_8.jpg

鼻の障害 嗅覚脱失

醜状障害(採皮痕を含む)

イ.頭部

ロ.顔面部

ハ.頸部

両側前額に人工骨によるへこみあり

あごの下に四cmと五cmの瘢痕あり

障害内容の増悪・緩解の見通しなどについて

上記障害は固定しており緩解の見込みはない。抗てんかん薬は生涯必要となる可能性がある。今后皮下チタンプレートにより再び皮下膿瘍をきたす可能性がある。

との後遺障害診断書が作成されている。

上記後遺障害診断書に基づき、自賠責保険において、高次脳機能障害は「自用を弁ずることができるが、労働能力に著しい支障が生じ、終身極めて軽易な労務にしか服することができない」ものとして第五級二号に、頭部外傷に伴う嗅覚障害については第一二級に、醜状障害については第七級一二号に該当し、後遺障害併合第三級と認定された。

北里大学病院脳神経外科山田勝医師作成の脳外傷による精神症状等についての具体的な所見においては、c.短気、易刺激性、易怒性、j.発想が幼児的で、自己中心的、t.睡眠障害、寝付きが悪い、すぐに目が覚める、v.人混みの中に出かけることを嫌う、の項目が「中等度」とされたほかは、精神障害、性格障害の内容として見られた症状は、一部(五項目)が「軽度」、その多く、(一四項目)が「なし」であった。

脳研式記銘力検査の結果は、平均水準に達しており記銘力障害は認めない、とされ、Neuropsychological test(精神・神経検査)は、概ね、良好な結果が得られており、WAIS―R(ウエイスラー)知能検査においては「Full Scale IQ102、VIQ(言語性IQ)97、PIQ(動作性IQ)109で知的水準は、Average class(平均的クラス)に分類されている。

原告太郎の作成した日常生活状況報告書においても、すぐに泣いたり怒ったり笑ったり「する」、わずかなことで「興奮する」「いらいらしやすい」興奮すると「乱暴することもある」場所をわきまえず怒って大声を「出す」など感情の変化や易怒性、易興奮性のほか幼児的な発想、言動、自己中心的な態度があると記載されているが、他方、お金を持たせてもすぐには「使わない」、計画的な行動が「できる」、家事も「指示があればできる」などとある。

北大病院安部川智浩医師の国民年金・厚生年金保険・船員保険用の診断書によれば、「両側前頭葉損傷に起因する人格水準の低下が顕著となり、情動制御不良、現実検討能力の障害などの深刻な後遺症状が残存し、これまで可能であった年齢相応の社会生活が不能となった」とされており、現在の症状又は状態像として「強迫間代けいれん発作、数年間に二度程度、器質性人格障害」、日常生活状況として「アパートにて独居生活は親の手あついサポートを受けながら何とか可能である。しかし前述のような理由で対人交流の適切な維持、確立はきわめて困難である」、適切な食事摂取、身辺の清潔保持は「自発的にできる」、金銭管理と買物は「適切にできる」、通院と服薬は「概ねできるが援助が必要」、他人との意志伝達及び対人関係は「自発的にはできないが援助があればできる」、身辺の安全保持及び危機対応は「概ねできるが援助が必要」と評価されている。

イ 原告一江には、「お酒の飲み過ぎ。お金の使いすぎ(お金を手にすると一度に使ってしまう。貯金しない。あればあるだけ使う。お金で人からだまされやすい。)。約束が守れない。気分が変わりやすい。睡眠が不規則。たまにはしゃぐことがあるが、沈鬱な時間が多い。友人が少なくなった。限られた人としか交流できない。口数が少ない。気分が滅入ると何も話さない。意欲がない(本を読まない。新聞に興味を示さない。気が向けばパソコンネットを見るが、自分からは文章を作らない。陶器まがいの作品にも創作興味が失せてしまい、何かに手をつける気力が出てこない。)。ちょっとしたことで怒るので腫れ物に触るよう。そうかと思えば、静かになり、引きこもり状態になりがち。疲れやすい。飽きやすい。辛抱が足りない。元気をなくするのが怖い(抜け出すのにながくかかるから。)。自分ではいつも「何ともない」と思いこんでおり、精神面での病識が薄い。」などの状態がみられ、家族が声をかけ、外出に付き合う、お金を少額でその都度渡す、服薬に気を遣う、緊急カードや緊急処方箋を携帯させるなどしていることが認められる。

他方、各病院の診療録上、症状固定時までの入院中やリハビリテーション期間中には特にトラブルがあったことは窺えない。

原告一江は、平成一二年九月ころ、菓子店でアルバイトのほか、栄養食品の配達、ちらし折り込みのアルバイトを試みたが、その際には付添いはいなかった。

平成一四年四月ころから、北海道で生活し、北大病院において治療を受け、同年五月ころから一人暮らしを始めている。この期間は時々母親が付き添ったり、親戚が一緒にいるときもあったが、二、三週間一人で生活することもあり、その間は家事を一人でこなし、送金された生活費も二、三万円の金額をやりくりして遣っていた。

また、北大病院での治療を受けるに際しては、てんかんのコントロールと就職の面接に受からないことを何とかしたいということを医師に適切に説明し、病院からの緊急連絡先として原告一江自身の携帯電話の番号を伝え、病院に電話連絡をして処方箋を郵送してもらえないかどうかを問い合わせ、病院へ、公共交通機関を用いて一人で通院することもできた。

また、北海道では、アルバイトの機会はなかったものの、工芸作品を製作し、友人と個展を開くなど、忙しく活動していた。

ウ なお、原告らは、原告一江は金銭管理ができないと主張するが、原告太郎が自ら作成した前記日常生活状況報告書の内容とも原告一江が北海道で一人暮らしをしていたときの状況とも異なる上、預けておいた金銭をだまし取られたなどの具体的な事実を裏付ける証拠もなく、少額の金銭を遣ってしまうあるいは貯金ができないというだけで、原告一江について金銭管理能力が全くないと直ちに評価することはできない。

また、原告らは、原告一江が抗てんかん薬を継続して服用しており、てんかん発作に備え、同原告を随時監視する体制が必要であると主張する。しかしながら、最後にてんかんの発作があったのは平成一二年九月であり、それ以降はてんかん発作はおきておらず、てんかん発作に対しては、抗てんかん剤処方内容を記述した緊急カードを所持するなど備えがあることが認められる。

エ 以上の認定事実によれば、原告一江は、日常生活において自立しており、一人暮らしの経験もあり、随時監視も含めて日常的な介護が必要であるとまではいい難い。原告一江の状態からすれば、前記のイのとおり、家族の協力ないしサポートが必要であることは否定できないが、将来の介護費用として認定することはできず、かかる事情は、前記(8)イのとおり、後遺障害慰謝料の算定において考慮するのが相当である。

(11)  逸失利益 七〇九二万一六一四円

ア 原告一江は、本件事故当時二五歳であり、大学を卒業後、平成一一年六月からC川有限会社に就職していたところ、当時の収入は、前記(7)のとおり二五五万七二九〇円ほどであり、症状固定の年である平成一三年の賃金センサス第一巻第一表産業計・企業規模計・女性労働者大卒の二五歳から二九歳までの平均賃金にも満たないが、就職してからまだ間がなく、若年であり、将来的には収入が増加する可能性もあるので、基礎収入は、前記賃金センサス第一巻第一表産業計・企業規模計・女性労働者大卒・全年齢の平均賃金である四五三万〇一〇〇円とするのが相当である。なお、原告一江の本件事故前の収入からすれば、将来にわたって男性の平均賃金と同程度の収入を得られる蓋然性は認め難い。

イ 原告一江が、本件事故により後遺障害を残し、後遺障害等級併合三級に認定されていることについては、当事者間に争いがない。

原告一江の神経系統の機能又は精神の障害の程度は、五級二号と認定されており、その具体的な症状は、前記(10)ア及びイのとおりであり、人格障害があり、易度性、易興奮性等が認められ、意欲も減退していること、現在は仕事をしておらず、就業しようとしてアルバイトもてんかん発作のため、あるいは対人関係などに疲れ、自ら無理であるとして辞めていることが認められる。

しかしながら、他方、各種検査の結果、原告一江の知能は正常で、精神心理検査の結果も良好であり、症状固定の診断をした北里大学病院山田医師も、原告一江が従事していたガラス細工の仕事については、抗てんかん剤投与中で発作の生じる可能性はあるが、状況が許せば可能と考えていたことが認められる。

本件事故後も、症状固定前である平成一二年九月ころから、結局継続してなかったとはいえ、アルバイトを試みており、当時は、自ら就職したいという意欲が窺え、北海道において、一人暮らしをし、金銭をやりくりして家事をこなしていたことにかんがみると、一〇〇パーセント労働能力を喪失したとは認め難い。

そして、原告一江には、嗅覚脱失の後遺障害が認められるが、一般の職業において、嗅覚を失ったことが直ちに労働能力に影響するとは考え難い。原告一江は、本件事故前ガラス工房に勤務していたものであるところ、嗅覚脱失がその仕事に何らかの影響を与える可能性は立証されていない。さらに、原告一江の前記職業及び職務内容からすれば、外貌醜状が直ちに減収と結びつくといえる明らかな影響があるとまではいい難い。嗅覚障害及び外貌醜状による日常生活上の支障や対人関係における影響等については、前記(8)イの後遺障害慰謝料において考慮する。

以上を考慮すれば、原告一江の労働能力喪失率は九二パーセントとみるのが相当である。

ウ 原告一江は、症状固定時(平成一三年一〇月一〇日)二八歳であり、就労可能年数は、六七歳までの三九年間とするのが相当であり、年五パーセントの割合による中間利息を控除し(ライプニッツ係数一七・〇一七〇)、以下のとおり症状固定時の一時金として計算すると、後遺障害による逸失利益は七〇九二万一六一四円になる。

(計算式)

四五三万〇一〇〇円×九二%×一七・〇一七〇=七〇九二万一六一四円

(12)  定期金による請求について

原告一江は、将来の医療費、将来の介護費用、後遺障害逸失利益について、症状固定後一五年間の定期金、その後一時金による支払を求めているが、将来の医療費及び介護費用については、前記のとおり、本件事故による損害とは認められないので、以下、後遺障害逸失利益について判断する。

民訴法一一七条一項は、口頭弁論終結時に生じた損害につき、定期金による賠償を命じた確定判決について、口頭弁論終結後に後遺障害の程度、賃金水準その他の損害額の算定の基礎となった事情に著しい変更が生じた場合には、その判決の変更を求める訴えを提起することができると規定しているが、これは、将来において、口頭弁論終結時に予測し得なかった著しい事情の変更があった場合、損害額に大きな影響を及ぼすことがあることに配慮したものであると解される。

そこで、検討するに、例えば、将来の介護費用のように、介護費用の額に大幅な変動の可能性があり、その認定が困難であるとか、余命の認定が困難である等の事情から、著しい事情の変化が損害額に大きく影響を与えるような場合において、当事者の衡平を図るため、定期金賠償方式による支払を命じる合理性及び必要性が認められるといえる。そして、将来の介護費用に関しては、被害者が事後的に交通事故とは別の原因で死亡した場合に、その時点で損害が認められなくなること(いわゆる「切断説」)との関係においても、終期を「死亡時」とする定期金賠償方式に整合するものといえる。

これに対し、後遺障害逸失利益については、前記民訴法一一七条一項の規定があるので、定期金賠償を認め得る場合があることは否定できないが、一時金賠償の場合に、被害者が事後的に交通事故とは別の原因で死亡した場合でも損害は存続すること(いわゆる「継続説」)、本件の場合、前記(10)において認定した原告一江の後遺障害の内容、程度に照らして、将来の介護費用と一体のものとして定期金賠償を認め得る場合ではないこと、原告一江が定期金による支払を求めているのが症状固定後一五年間のみであり、その後については一時金による支払を求めているが、その合理的理由が明らかでないこと、被告らが定期金による支払を求めていないことを総合考慮すると、本件においては、後遺障害逸失利益について、定期金賠償方式によるべき合理性及び必要性があるものとは認められないから、定期金による支払を認めることは相当とはいえない。

そして、原告らの合理的意思を解釈すれば、裁判所が定期金による請求を相当でないと判断したときには、一時金による支払を求めているものと解することができるから、一時金による支払を前提として損害額を算定する。

(13)  小計 一億〇九八〇万八八〇六円

前記(1)ないし(13)の合計額

(14)  損害のてん補後の残額 七八八〇万一七八一円

原告一江は、損害のてん補として、平成一五年一月二二日、自賠責保険金二一九〇万円の支払を受け、さらに、被告保険会社から合計九一〇万七〇二五円の支払を受けた(争いがない前提事実)ので、てん補後の残額は上記金額となる。

(15)  弁護士費用 七八〇万円

本件事案の概要、審理の経過及び認容損害額に照らすと、本件事故と相当因果関係のある弁護士費用は、七八〇万円と認めるのが相当である。

(16)  合計 八六六〇万一七八一円

前記(14)及び(15)の合計額

(17)  確定遅延損害金 三八四万三〇〇〇円

原告一江は、前記(14)のとおり、平成一五年一月二二日に、前記自賠責保険金二一九〇万円を受領したところ、同金額に対する本件事故発生日から前記支払日まで(三年と一八六日間)に、以下のとおり年五分の割合による遅延損害金が発生している。

(計算式)

二一九〇万円×〇・〇五×(三年+一八六日÷三六五日)=三八四万三〇〇〇円

(18)  確定遅延損害金を加算した合計 九〇四四万四七八一円

(19)  原告太郎、同花子及び同一郎の固有の慰謝料

前記(10)のアのとおり、原告一江の後遺障害は重大なものではあるが、その内容、程度に照らし、原告太郎、同花子及び同一郎が死に比肩すべき精神的苦痛を被ったとまではいえないから、同原告らの固有の慰謝料は認められない。

第四結論

よって、原告一江の請求は、被告B山及び被告会社に対し、連帯して、九〇四四万四七八一円及び確定遅延損害金を除いた内金八六六〇万一七八一円に対する不法行為日である平成一一年七月二一日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金、被告保険会社に対し、被告B山及び被告会社に対する判決のいずれかが確定したことを条件として同金額の各支払を求める限度において、理由があるからこれらを認容し、原告一江のその余の請求並びに原告太郎、同花子及び同一郎の請求は理由がないからいずれも棄却することとして、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 芝田俊文 裁判官 髙取真理子 蛭川明彦)

<以下省略>

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