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東京地方裁判所 平成15年(ワ)28128号 判決 2006年3月29日

原告

X1

ほか一名

被告

主文

一  原告らの請求をいずれも棄却する。

二  訴訟費用は原告らの負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

(1)  被告は、原告らに対し各六二四万六七四八円及びこれに対する平成一四年一月九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

(2)  訴訟費用は被告の負担とする。

(3)  仮執行宣言

二  請求の趣旨に対する答弁

主文同旨

第二当事者の主張

一  請求原因

(1)  事故の発生

A(昭和○年○月○日生まれ。)は、次の交通事故(以下「本件事故」という。)に遭って負傷し、その結果、平成一四年一月一六日午前九時一二分、多臓器不全により死亡した。

日時 同月九日午後五時ころ

場所 東京都杉並区堀ノ内三―四九―一先交差点(以下「本件交差点」という。)

加害車両 普通貨物自動車(<番号省略>。以下「被告車両」という。)

運転者 被告

事故の態様 Aが自転車(以下「原告車両」という。)に乗って本件交差点を横断中、左折してきた被告車両が接触し、Aが転倒した。

(2)  責任原因

被告は、自動車の運転者として、信号機により交通整理の行われている本件交差点を左折するに当たり、左折道路を横断する歩行者や自転車運転者がいないかどうか確認し、前方を注視すべき義務があるのにこれを怠り、本件事故を発生させたから、民法七〇九条に基づき、Aが本件事故により被った損害を賠償すべき責任を負う。

(3)  損害等

ア Aの損害

(ア) 治療費 三万七二〇〇円

Aは、本件事故後、医療法人社団彰誠会伊藤脳神経外科病院(以下「伊藤脳神経外科病院」という。)に入院した後、平成一四年一月一五日に東京医科大学病院に転院したところ、同病院の治療費は、三万七二〇〇円である。

(イ) 入院雑費 一万二〇〇〇円

Aは、平成一四年一月九日から一六日まで八日間、伊藤脳神経外科病院及び東京医科大学病院に入院していたから、その間の入院雑費は、1万2000円(1500円×8日)となる。

(ウ) 見舞い交通費 二万二六六〇円

原告X2は、Aの子であり、Aの入院以来、毎日見舞いのために通院していたところ、その交通費は、平成一四年一月九日から一四日までが合計一万三六八〇円、同月一五日が三四〇〇円、同月一六日が五五八〇円であった。

(エ) 葬儀関係費用 二八二万〇四七七円

(オ) 休業損害 三万七六六四円

Aは、本件事故の当時、ヘルパーとして稼働し、本件事故前三か月の給料は平成一三年一〇月分が一二万八六五〇円、同年一一月分が一四万八四五〇円、同年一二月分が一五万六一〇〇円であるところ、本件事故の結果、八日間の休業を余儀なくされたから、本件事故と相当因果関係のある休業損害は、次の計算式のとおり三万七六六四円となる。

(12万8650円+14万8450円+15万6100円)÷(31日+30日+31日)≒4708円

4708円×8日=3万7664円

(カ) 逸失利益 一〇一二万六七二二円

Aは、本件事故の当時、六八歳で、ヘルパー年収が一五一万七一〇五円であったところ、本件事故に遭わなければ八年間は就労可能であった。

また、Aは、本件事故の当時、国民年金老齢基礎年金四四万八七五八円を受給していたところ、平均余命は一八年である。

したがって、生活費控除率を三〇パーセントとし、中間利息をライプニッツ方式で控除して、本件事故と相当因果関係のある逸失利益を算出すると、次の計算式のとおり一〇一二万六七二二円となる。

151万7105円×(1-0.3)×6.463+44万8758円×(1-0.3)×10.388≒1012万6722円

(キ) 慰謝料

a 死亡慰謝料 二八〇〇万〇〇〇〇円

b 入院慰謝料 一三万六七七四円

イ 相続

原告X1は、Aの夫であり、原告X2は、前記のとおりAの子である。

ウ 原告らの損害―弁護士費用 各六五万〇〇〇〇円

(4)  まとめ

よって、原告らは、被告に対し、民法七〇九条に基づき、それぞれ前記損害から弁済を受けた一五〇〇万円を控除した残額六二四万六七四八円及びこれに対する不法行為の日である平成一四年一月九日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

二  請求原因に対する認否

(1)  請求原因(1)のうち、Aが昭和○年○月○日生まれであること、Aが平成一四年一月一六日午前九時一二分に多臓器不全により死亡したことは認め、Aが本件事故に遭って負傷したことは、当初認めたが、それは真実に反する陳述で錯誤に基づいてしたものであるから、その自白を撤回し(原告らは、この自白の撤回に異議がある。)、その余の点も含めて否認する。

原告車両と被告車両とが接触したことはない。

Aは、本件事故の結果、軽傷を負い、高齢であることもあり、検査のため伊藤脳神経外科病院に入院したところ、セラチア菌に院内感染し(本件事故により開放骨折等の開放創を負っておらず、開放創がなければ開放創からの感染症は発病しない。)、死亡したのであって、その死亡と本件事故との相当因果関係を認めることはできない。

(2)  請求原因(2)は否認する。

本件事故は、歩行者用信号機の赤色表示を無視又は看過して本件交差点を横断しようとしたAの重大な過失により発生したものであって、被告に過失はない。

(3)ア(ア) 請求原因(3)ア(ア)のうち、Aが、本件事故後、伊藤脳神経外科病院に入院した後、平成一四年一月一五日に東京医科大学病院に転院したことは認め、その余は否認する。

東京医科大学病院に転院したのは、伊藤脳神経外科病院においてセラチア菌に感染したことによるものであり、本件事故との相当因果関係はない。

(イ) 同(イ)のうち、Aが、平成一四年一月九日から一六日まで八日間、伊藤脳神経外科病院及び東京医科大学病院に入院していたことは認め、その余は否認する。

仮に入院雑費が認められるとしても、本件事故と相当因果関係が認められる入院雑費は、本件事故直後の検査入院のための一日程度である。

(ウ) 同(ウ)ないし(オ)は否認する。

(エ) 同(カ)のうち、Aが、本件事故の当時、六八歳であったことは認め、その余は否認する。

(オ) 同(キ)は否認する。

イ 同イは認める。

ウ 同ウは否認する。

三  抗弁―過失相殺

本件事故は、歩行者用信号機の赤色表示を無視又は看過して本件交差点を横断しようとしたAの重大な過失により発生したから、過失相殺がされるべきである。

四  抗弁に対する認否

否認する。

第三証拠関係

本件訴訟記録中の書証目録及び証人等目録の記載を引用する。

理由

一  請求原因(1)(本件事故の発生)について

(1)  請求原因(1)のうち、Aが昭和○年○月○日生まれであること、Aが平成一四年一月一六日午前九時一二分に多臓器不全により死亡したことは、当事者間に争いがない。

(2)  被告は、Aが本件事故に遭って負傷したことを当初認めたが、それは真実に反する陳述で錯誤に基づいてしたものであるとしてその自白を撤回したところ、原告らは、この自白の撤回に異議を述べたので、この点について判断する。

ア  証拠(甲一、八ないし一一、一四、一五、二〇、乙七、一七)及び弁論の全趣旨によると、次の事実が認められる。

(ア) 本件事故の場所は、松ノ木方面と和田二丁目方面とを結び東西に通じる区道(以下「本件区道」という。)と、大森方面と板橋方面とを結び南北に通じる都道環状七号線(片側三車線。以下「環状七号線」という。)とが交差する信号機により交通整理の行われている交差点(本件交差点)であるところ、本件区道は、アスファルト舗装された平たんで乾燥した直線道路で、幅員が約五・三メートル(両側の幅約一・三メートルの路側帯を含む。)であり、環状七号線は、幅員が約一九メートルで、両側に幅員約三・〇五メートルの歩道が、中央にコンクリート製土台の上に鉄パイプの中央分離帯(幅員約〇・八メートル)がそれぞれ設けられていた。

本件交差点の入口には、幅員約六・一メートルの横断歩道及びこれに接して幅員約一・六メートルの自転車横断帯が設けられていた。

本件区道は、松ノ木方面から環状七号線方面に向けて一方通行(自転車を除く。)、終日駐車禁止、最高速度毎時三〇キロメートル、環状七号線は、最高速度毎時四〇キロメートル、終日駐車禁止、終日転回禁止、歩行者横断禁止、自転車歩道通行可のそれぞれ交通規制がされていた。

本件交差点は、市街地にあり、交通が頻繁であり、夜間は照明により明るかった(なお、平成一四年一月九日の東京都における日の入りは、午後四時四五分であった。)。

本件区道の本件交差点における見通しは、松ノ木方面から環状七号線方面に向けて前方、右方、左方いずれも良好であった。

(イ) 被告は、平成一四年一月九日午後五時ころ、被告車両を運転して、本件区道を松ノ木方面から和田二丁目方面に向かい進行中、板橋方面に向かって本件交差点を左折するため、本件交差点の手前で方向指示器で合図を出しながら信号待ちをした後、対面信号機が青色を表示したことから発進して約一〇・五メートル進行し、ハンドルを左に切り、約七・二メートル進行したところ、本件交差点の入口の横断歩道上を横断する歩行者がいたことから、横断歩道及び自転車横断帯に差し掛かる位置で停車した。その際、右側の第三車線上にも対向右折車が一時停止していた。被告は、横断歩道上の歩行者が横断し終わるのを確認すると、再び発進し、左折を完了して第二車線に進入しようと時速五ないし一〇キロメートルで約一・八メートル進行すると、右方から横断歩道上を進行してきたA運転の自転車(原告車両)と衝突し(衝突地点は、自転車横断帯から約二・六メートル離れた横断歩道上であった。)、約〇・七メートル進行して停車した。そして、Aは、原告車両とともに路上に転倒した。

なお、被告車両には、前部にいくつか損傷が認められるものの、原告車両には、明らかな損傷はうかがわれない。

また、本件交差点の信号サイクルは、一サイクル一二〇秒であり、被告車両の対面信号機(車両用)が赤(八四秒)→青(三〇秒)→黄(三秒)→赤(三秒)、原告車両が進行していた横断歩道の歩行者用信号機が赤(八四秒)→青(二八秒)→赤(八秒)であった。

(ウ) 東京女子医科大学医学部法医学教室がAの遺体を平成一四年一月一七日に解剖した結果作成した平成一五年一月一七日付け鑑定書(以下「本件鑑定書」という。)は、Aの遺体の成傷状況について、「主として背部の左殿部下端外側から左大腿外後側にわたる部・左上肢外後側の高度の皮膚変色の程度、頭蓋内損傷(左側頭筋肉内中等層の出血、左頭蓋窩外側寄りの硬膜下出血など)の程度及び左腎腎動静脈損傷などから、道路を自転車で左から右に横断中、左側寄りから走行してきた自家用車に衝突・打撃された際に成傷されたものと推測される。更にこの打撃力によって転倒した際に、頭部及び右上肢を打撲し、更に衝突・打撃時の外力の介達性鈍的作用により左腎血管損傷などが生じたものと推測される。」と述べている。

イ  被告本人尋問の結果(被告本人の陳述書(乙一四)を含む。以下同じ。)中には、原告車両には損傷がないことなどから、被告車両と原告車両とが衝突したことはないとの供述部分があり、前示のとおり、原告車両には明らかな損傷がうかがわれないことが認められる。

しかしながら、前示のとおり、被告車両は、本件事故の当時、低速で進行しており、原告車両に明らかな損傷がうかがわれないとの一事から直ちに衝突がなかったとまではいえない。また、前示のとおり、Aの遺体の成傷状況は、被告車両に衝突されたことを裏付けている。以上の点に、証拠(乙七)によると、被告は、平成一四年二月三日、保険契約を締結していた保険会社の調査の際、本件事故の発生状況について、「この時点で歩行者信号は赤でしたが、アクセルを踏んだ瞬間に右方から相手自転車が来ているのに気付き、すぐにブレーキをかけましたが間に合わずに衝突しています。自転車はさほどスピードが出ていた様子も無く、衝突直前に自車の方を見て気が付いた様子でしたが、止りきれずにわずかに自車の前に出た所を衝突され、自車に押し出されるように、横断歩道の右側へ横倒しになっています。自車も自転車をわずかに押し込んだ程度(一〇cm位?)で停止しています。」と具体的に述べていることが認められることをも併せ考えると、被告本人の前示供述部分は、にわかに信用することができず、他にAが本件事故に遭って負傷したことが真実に反することを認めるに足りる証拠はない(なお、仮に被告車両が原告車両と衝突していないとしても、前示事実関係によると、Aは、低速とはいえ接近してくる被告車両との衝突を避けようとして、原告車両とともに路上に転倒したということができるから、被告車両の走行とAの負傷との間には相当因果関係があるというべきである。)。

以上によると、その余の点について判断するまでもなく、被告の自白の撤回は、許されないというべきである。

(3)  次に、本件事故とAの死亡との因果関係について判断する。

ア  前示事実関係に、証拠(甲八、一二ないし一四、一七、乙五、八、一〇ないし一二)及び弁論の全趣旨を総合すると、次の事実が認められる。

(ア)a Aは、昭和○年○月○日に出生した女性で、平成一四年一月九日午後五時ころ、本件交差点の横断歩道を原告車両に乗って横断していたところ、左折してきた被告運転の被告車両に衝突されて転倒し、伊藤脳神経外科病院に搬送された。

Aは、搬送された伊藤脳神経外科病院において、右顔面・前額部挫創、逆行性健忘症が認められたところ、血圧一三〇/九〇、脈拍八〇、体温三六度四分であり、意識レベルは、JCS(ジャパンコーマスケール)で〇、GCS(グラスゴーコーマスケール)で一五点であり、瞳孔は左右とも等大で対光反射がみられ、眼の動きは完全で、脳神経、運動系、知覚系、小脳症状、脳膜症状はいずれも異常がなかった。

Aは、同日から伊藤脳神経外科病院に入院することとなったところ、主治医が同日付けで作成した入院診療計画書には、病名として「頭部外傷、外傷性健忘症」、症状として「受傷直后の記憶障害、頭部打撲」、治療計画として「精査、安静」、検査内容として「頭部MRI」、推定される入院期間として二、三週間と記載されていた。

Aは、同月一二日までに、胸部レントゲン、頭部CT、頭部MRI、MRA(脳血管造影MRI)の各検査を受けたが、いずれも外傷性変化等の異常は認められず、健忘症も改善し、神経学的に正常化しており、同日には車いすによる移動が許されていた。

b Aは、同月一三日、三八度台の発熱があったが、せきはなかった。同月一四日も三八度台の発熱があり、腹痛を訴え、食欲も低下し、同月一五日午前一時には、最高血圧が五〇ないし六〇に低下し、同日午前六時三〇分にはチアノーゼが出現し、血小板数が減少して、急性腹症、播種性血管内凝固症候群(DIC)が疑われ、東京医科大学病院に転院することとなった。

なお、同日に伊藤脳神経外科病院において撮影された腹部レントゲン写真には特に異常はなかった。

c Aは、同日午前八時ころ、東京医科大学病院に搬送され、顔面、四肢末梢に紫斑が認められるとともに、腹痛を訴え、各種の処置を受けたものの、敗血症性ショック、出血傾向(皮下出血)、呼吸不全の悪化が認められ、「敗血症性ショック、腹膜炎の疑い」との診断で、同日午後四時ころから、試験開腹術を施行されたところ、腹腔内に少量の漿液性腹水があるものの、明らかな腹膜炎は認められず、また、胃・十二指腸・小腸・大腸にかけてDICに伴うと思われる一部の点状出血はあるものの、異常所見はなく、手術診断は「腹膜炎否定、後腹膜血腫」であった。その後、Aは、治療を受け続けたが効果がなく、同日午前九時一二分ころ、死亡した。同病院における確定診断名は、敗血症性ショック、DIC、多臓器不全であった。

なお、同月一五日に同病院で撮影された胸部レントゲン写真には左右肺に高度のうっ血がみられ、腹部エコーの結果、腹水少量が認められるとともに、腹部から骨盤部にかけてのCTの結果、左骨盤部の左腸骨内側に血腫を示す陰影がみられる(切開したがうみはなく血腫のみであった。)ものの、左腎茎部に血腫を示す陰影はなく、左腎静脈も正常に写っており、腹部及び骨盤のレントゲン写真にも特に異常はなかった。

d 東京都監察医が同月一六日付けで作成した死体検案調書には、紫赤変色域のある部位として、顔面、左右肩前面、左右前腕前面、背部左側の中央部、左臀部下端から左大腿後面上端にわたる範囲が図示され、「打撲部と思われる部位」と記載されている。

e 本件鑑定書は、Aの創傷について、次のように述べるとともに、内部所見として、腹腔内に血液を混じる浸出液約四〇〇ミリリットル、左胸腔内に同様の液約三〇〇ミリリットル、右胸腔内に同様の液約二〇〇ミリリットルを認めている。

(a) 頭部

<1> 側頭筋肉内に、左は中等層軟凝性、右は薄層軟凝性の側頭筋肉内出血がある(側頭筋肉出血、軽傷)。

<2> 左硬膜下において脳冠部(主として頭頂葉上面)に、右硬膜下において脳冠部(主として頭頂葉上面ほぼ全面に相当するところ)にそれぞれ薄層の血腫がある(やや陳旧性硬膜下血腫、軽傷ないしやや中等傷)。

<3> 頭蓋底部において、前頭窩ほぼ全面、後頭窩上端部、左中頭窩外側寄りに薄層の膜様化した硬膜下血腫がある(やや陳旧性硬膜下血腫、軽傷)。

<4> 大脳冠部ほぼ全面、小脳全面及び下面くも膜下に、一般に中等層ないし薄層(右側)の暗赤色出血がある(脳くも膜下出血、軽傷)。

(b) 胸腹部

<1> 後腹膜下の側腹部と骨盤部にわたる範囲に広範な中等層ないし厚層の後腹膜下血腫があり、卵巣周囲にまで及んでいる(後腹膜下血腫、重傷)。

<2> 左腎において、左腎動脈が裂離、左腎静脈が微小裂傷、周囲に軟凝血多量が付着している(茎部腎動静脈損傷、やや重傷ないし重傷)。

<3> 左右卵巣内に厚層(左側)ないし中等層(右側)の出血があり、子宮体底部に浸潤している(卵巣損傷、中等傷)。

(c) 背部

<1> 左側胸部背側寄りに約二分の一手掌面大の暗赤色皮膚変色があり、この部皮下組織間に中等層の軟凝性出血がある(打撲傷様こん、軽傷ないし中等傷)。

<2> 左臀部下端外側から左大腿上端外後側にわたる範囲に約手掌面大の暗赤色皮膚変色があり、この部皮下・筋肉組織間に厚層ないし中等層の軟凝血性出血がある(打撲傷様こん、底部に腎血管損傷、卵巣損傷を伴って重傷)。

<3> 左右肩部から左右上肢外後側ないし外側に斑紋状暗赤色皮膚変色があり、これらの部皮下組織間に浸潤性の薄層ないし中等層の軟凝血性出血がある(打撲傷様こん、軽傷ないし中等傷)。

<4> 左膝部はほぼ全面にわたり赤色に皮膚変色しており、この部皮下組織間に浸潤性の薄層の出血がある(打撲傷様こん、軽傷)。

(イ) 伊藤脳神経外科病院において、平成一三年一二月二〇日から平成一四年一月一五日までの間に一日以上入院していた患者六一名のうち、二四名につき三八・五度以上の発熱がみられ、そのうち一二名につき動脈血又は静脈血から薬剤感受性及びPFGE(パルスフィールドゲル電気泳動)が一致するセラチア菌が分離された。セラチア菌とは、腸内細菌の一属で、代表的な菌種は日和見感染(感染抵抗力が低下した宿主における日和見病原体による感染症)の原因菌に挙げられている。

前記二四名のうち、寝たきりの患者は一名にすぎず、その余は軽症の原疾患で入院し、又は術後の経過が順調で歩行、身の回りの世話などに問題がなかった患者が突然高熱を発し、七名(うち六名はセラチア菌が分離された症例)は二、三日の間に多臓器不全、血管内凝固症候群(DIC)を合併して死亡した。前記二四名の年齢分布は、二〇歳から九六歳までにわたり(ただし、二〇歳台は二名のみで中央値は七〇歳であった。)、死亡例の中には二四歳の女子が含まれていた。

平成一四年五月に東京都世田谷区が発行した「セラチア院内感染事故対策報告書」は、伊藤脳神経外科病院における前記症例について、セラチア菌の血流感染による集団発生であり、留置針で血流確保を受けていた患者で、平成一三年一二月二六日から平成一四年一月一五日までの間にヘパリン加生理食塩水(ヘパリン生食)で血管ルートの抗凝固処置(ヘパリンロック)を受けたものの発症が多く、同時期に使用されたヘパリン生食がセラチア菌に汚染され、血流感染を起こした可能性が示唆されると結論づけているところ、伊藤脳神経外科病院について、<1>二階ナースステーションの点滴調整台(ここにヘパリン生食が掛けである。)は雑然としており、職員の手洗い用の流しがわずか一メートル以内にある、<2>流しのわきの医療廃棄物容器は覆いがなく、血液が付着した注射器、注射針が露出している、<3>いわゆる包交車上に中性水が置かれ、職員が患者を処置する間に手指を消毒する用などに供されている、<4>手術室前室の術前の手洗い場はチューブその他の物品が雑然と置かれ、清潔とはいい難い、<5>二階ナースステーションの手洗い場の流しは、職員の手洗いのみでなく、膿盆などの不潔医療器具の水洗いにも使用され、手をふくタオルも共用であるなどの衛生上の問題点を指摘していた。

(ウ) 本件鑑定書は、Aの死因等について、次のとおり述べている。

a Aの死因は、左腎茎部血管損傷などの交通外傷後のセラチア菌感染に併発・合併した多臓器不全である。

b 頭皮に表在損傷が認められない左右側頭筋肉出血、頭蓋内のやや陳旧性硬膜下血腫及び脳くも膜下出血は、創傷(受傷後約七日)の程度から一般に軽傷であり、これらのみでは直接死因にはなり難いと考えられる。

他方、開腹創底部にみられる左側腹部及び骨盤部の後腹膜下血腫は、総合してやや重傷の左腎茎部動静脈損傷及び左右卵巣損傷を伴っていることから、死亡にかかわる基盤となる損傷と考えられる。すなわち、Aは、後腹膜下血腫を伴う左腎血管損傷及び卵巣損傷などの交通外傷後、セラチア菌感染による合併症、続発症(播種性血管内凝固症候群)によって二次的多臓器不全に陥り死亡したところ、当該多臓器不全は、セラチア菌感染による過剰な炎症反応が強く関与していることが認められ、死因は総合して多臓器不全ではあるが、左腎血管損傷及び卵巣損傷がやや重傷ないし重傷であることから、交通外傷である左腎血管損傷及び卵巣損傷は、死亡にかかわる基盤となる損傷と考えられる。

c セラチア菌は、健常者に感染定着しても発症はしないが、感染防御能の低下した宿主にのみ感染症を起こす寄生体で、日和見感染菌である。

重篤な疾患で入院経過中の患者にみられる感染症の多くは、日和見感染であるとともに院内感染でもある。院内感染は、<1>入院時には感染症はなかったが、原疾患の進行や各種の医療処置に伴って易感染性が高まり、元来宿主に常在していた微生物が病原性を発揮する場合と、<2>病院環境下で新たな病原体を受け取り発症する場合とがあり、<2>は医原性の要因が大きいところ、Aの場合は交通外傷後の医原性の要因(静脈カテーテル留置例での点滴ルートの汚染など)が大きく、解剖検査所見によると、交通外傷後のセラチア菌感染に引き続く全身性炎症反応を伴う病態の所見及びそれらが増悪して死に至った所見がみられることから、交通外傷後入院した病院における医療行為は適切ではないと思慮される。

(エ) 伊藤脳神経外科病院の院長Bは、平成一六年四月一六日、「被告人は、…医療法人社団彰誠会伊藤脳神経外科病院の理事長兼管理者たる院長として、病院の安全・衛生環境管理等に関し、医師、看護師等を指導・監督するなどの業務に従事していたものであるが、病院においては、細菌に対する抵抗力の弱い患者が入院しているところ、細菌に感染した患者が多数来院し、あるいは入院して、細菌が繁殖する可能性がある以上、院内の衛生環境に不備・不衛生があり、十分な手洗い及び消毒を励行しないで、血液凝固防止のために使用するヘパリン加生理食塩水などを作製し、常温で保存すれば、同食塩水にセラチア菌などの細菌が混入して増殖し、これを患者の治療に使用して血液中に注入することにより、敗血症などの感染症を引き起こし、患者の死傷の結果を招くことが予見できたのであるから、院内感染防止のためのマニュアル、点滴治療法等医療行為手順等の基準を作成し、看護師らに対して、これらに基づき研修等の職員教育を実施して、医療行為等直前の手洗い及び消毒を励行させて、医療行為等を行うときの清潔保持を徹底させた上、ヘパリン加生理食塩水を作製したときは、冷蔵庫に保管し、作製当日に使用することを義務づけるなどの指導・監督を行うなどして、院内における入院患者への細菌の感染を未然に防止すべき業務上の注意義務があるのにこれを怠り、院内感染防止のためのマニュアルを作成せず、看護師らに対して院内感染防止のための研修等の職員教育を実施しなかった上、ヘパリン加生理食塩水を作製する際の基準を示さないなど清潔保持を徹底させないまま放置した過失により、平成一四年一月七日ころ、前記伊藤脳神経外科病院二階ナースステーション点滴作業台において、…准看護師をして手洗い等不十分なままヘパリン加生理食塩水を作製させて、同生理食塩水にセラチア菌を混入させた上、…血液凝固防止のための点滴中断操作のため、担当看護師をして上記作り置きしたヘパリン加生理食塩水を投与させ、よって、同月九日午前八時四二分ころから同月一六日午前九時一二分ころまでの間、上記伊藤脳神経外科病院…において、…をセラチア菌感染症による敗血症性ショックにより死亡させた…ものである。」などとの罪となるべき事実で、罰金刑に処する略式命令を受けた。

(オ) 山形大学名誉教授Cは、Aの診療録、画像等を検討して、その本件事故に起因する損傷等について、次のような内容の意見書(以下「本件意見書」という。)を作成した。

a 本件事故に起因する損傷

(a) 左腎血管損傷及び卵巣損傷と本件事故との関係

左腎血管損傷は、<1>東京医科大学病院で平成一四年一月一五日に撮影された腹部CTの結果、左腎茎部には血腫その他の異常は認められず、左腎静脈の走行もほぼ正常であること、<2>仮に本件事故により左腎動脈が切れて左腎臓に血液が行かない状態になっていれば、左腎臓に虚血性変化が起こり、左腎臓に梗塞の所見がみられるはずであるが、腹部CTでは左腎臓は右腎臓と同様に写っていること、<3>本件鑑定書では、腎臓の肉眼的所見、病理学的所見も、左腎臓に右腎臓と異なった所見があるとの記載はなく、左腎臓に虚血性所見が生じていないことに照らすと、同病院における試験開腹後死亡までの間に出現したと考えられる。

側腹部から骨盤部及び卵巣周囲にわたる広範囲の後腹膜下出血や子宮体底部にまで浸潤する左右卵巣内出血も、<1>本件事故によるものであれば、試験開腹の際に見落とされるはずはないこと、<2>同病院において撮影された腹部CTで認められた後腹膜下出血は左骨盤部で腸骨部後腹膜下出血のみであることに照らすと、試験開腹後死亡までの間に出現したと考えられる。

なお、左腎血管損傷及び卵巣損傷は、左臀部下端から左大腿後側にわたる範囲の皮下組織間内出血とは関係がない。すなわち、<1>左腎茎部の腎動静脈部は、左腰部に相当して存在し、左臀部下端の皮下筋肉組織間内の軟凝血性出血部よりはかなり上にあることから、左腎血管損傷は、左臀部下端の皮下筋肉組織間内の出血とは関係がないし、<2>卵巣内出血は、左卵巣のみならず右卵巣にもあったところ、右卵巣内出血は、少なくとも左臀部下端の皮下筋肉組織間内の出血とは関係のない部位に生じていることから、左右卵巣内出血も、左臀部下端の皮下筋肉組織間内の出血とは関係なく生じたと考えるのが妥当である。

(b) 左腎血管損傷及び卵巣損傷の原因

試験開腹時には明らかな腹膜炎はないとされたのに、平成一四年一月一七日に解剖した際には四〇〇ミリリットルの浸出液を伴う炎症の度合が異常であることに気が付くほどの腹膜炎があることから、試験開腹後死亡までの間に、セラチア菌感染による腹膜炎が急速に進行したことがうかがわれ、死亡直前には、セラチア菌によるショック状態が一段と進み、これによりDICが更に進行し、高度の血小板減少から出血傾向が高まるとともに、血管内凝固傾向も高度になっていたことから、組織壊死が生じやすくなったことが考えられる。

以上によると、試験開腹時には認められず解剖時に認められた左腎血管損傷、側腹部から骨盤部及び卵巣周囲にわたる広範囲の後腹膜下出血及び子宮体底部にまで浸潤する左右卵巣内出血は、開腹後死亡までの間に、セラチア菌によるショック状態の進行、これによるDICの進行に伴う血流の遮断の結果、末梢組織の壊死が生じやすくなっていたことが原因と考えられる。

(c) まとめ

本件事故に起因する損傷は、<1>薄い硬膜下血腫、<2>くも膜下出血、<3>左側胸部の背側寄りや左右肩から左右上肢外側にわたる皮下出血、<4>左臀部下端から左大腿後側にわたる範囲の皮下筋肉組織間内出血、<5>左膝の皮下出血、<6>左骨盤部の腸骨部の後腹膜下血腫であり、広範な筋肉の挫滅や骨折などはない。

b 本件事故に起因する腹部損傷を示す症状の有無

本件事故による明らかな腹部損傷は、左骨盤部の後腹膜下血腫のみであるところ、これは、その位置及び大きさに照らして特に腸や骨盤腔内の諸臓器を圧迫するほどのものではなく、症状を出すことはない。

c 本件事故による傷害の程度

Aが負った程度の皮下出血、皮下筋肉組織間内出血、後腹膜下血腫では、外傷性ショックの原因となることは考えられない。Aは、平成一四年一月一三日に高熱を発する前までは神経学的にも正常化しているとされ、血圧低下などのショックの所見は認められない。本件事故による損傷は、それのみでは死亡するには至らない程度のものであり、Aは、セラチア菌に感染していなければ死亡には至らなかった。

イ  以上のとおり、本件事故による傷害は、Aの死亡の結果を招くようなものではなく、その症状は、本件事故から三日を経過した平成一四年一月一二日までには徐々に軽減し、健忘症も改善して、神経学的に正常化するに至っていた一方、Aの直接の死因は、入院していた伊藤脳神経外科病院の清潔保持義務違反あるいは衛生管理上の瑕疵により、投与されていたヘパリン加生理食塩水にセラチア菌が混入し、その感染による多臓器不全であり、伊藤脳神経外科病院の重大な過失がなければAが死亡することはなかったということができることに照らすと、Aの本件事故による傷害とその死亡との間に相当因果関係を認めることはできないというべきである。なお、本件鑑定書は、前示のとおり、本件事故による左腎血管損傷及び卵巣損傷が死亡にかかわる基盤となる損傷と考えられると述べているが、本件意見書に照らすと、これらの傷害は本件事故に起因するものとはいえないというべきであり、その前提を欠くから、前示認定を左右するものではない。

二  請求原因(2)(責任原因)について

前示事実関係によると、被告は、被告車両の運転者として、本件交差点を左折するに当たり、横断歩道上を横断する自転車、歩行者等の有無及びその安全を十分に確認すべき義務があるのにこれを怠り、漫然と本件交差点を左折した結果、本件事故を発生させたということができるから、民法七〇九条に基づき、Aらが本件事故により被った損害を賠償すべき責任を負うというべきである。

三  請求原因(3)(損害等)ア(Aの損害)及びイ(相続)について

(1)  同アについて

ア  治療費 〇円

請求原因(3)ア(ア)(治療費)のうち、Aが、本件事故後、伊藤脳神経外科病院に入院した後、平成一四年一月一五日に東京医科大学病院に転院したことは、当事者間に争いがないものの、前示したところによると、同病院に転院したのは、伊藤脳神経外科病院においてセラチア菌に感染したことによるものであり、東京医科大学病院における治療は、本件事故と相当因果関係がないということができるから、同病院における治療費を本件事故と相当因果関係のある損害と認めることはできないというべきである。

イ  入院雑費 一万二〇〇〇円

請求原因(3)ア(イ)(入院雑費)のうち、Aが、平成一四年一月九日から一六日まで八日間、伊藤脳神経外科病院及び東京医科大学病院に入院していたことは、当事者間に争いがないところ、前示事実関係によると、Aは、セラチア菌に感染しなかったとしても、少なくとも同日までは入院していた可能性が高いということができるから、原告らが次の計算式のとおり主張する入院雑費は、本件事故と相当因果関係のある損害と認めるのが相当である。

1500円×8日=1万2000円

ウ  見舞い交通費 〇円

前示のとおり、東京医科大学病院における治療は、本件事故と相当因果関係がないから、同病院への見舞い交通費を本件事故と相当因果関係のある損害と認める余地はないし、Aの前示傷害の部位、程度、治療経過等に照らすと、伊藤脳神経外科病院への見舞い交通費を本件事故と相当因果関係のある損害と認めることもできないというべきである。

エ  葬儀関係費用 〇円

前示のとおり、本件事故とAの死亡との間には相当因果関係を認めることができないから、Aの死亡による損害である葬儀関係費を本件事故と相当因果関係のある損害と認めることはできない。

オ  休業損害 二万八四六〇円

証拠(甲六の一ないし五、七)及び弁論の全趣旨によると、Aは、平成一三年一月から五月までは株式会社サン・ケアネットにおいて、同月から本件事故の当時までは社団法人友愛の灯協会においてそれぞれ訪問介護員として稼働し、平成一三年に支給を受けた給与は一四八万四〇〇五円であることが認められるところ、前示事実関係によると、Aは、本件事故の結果、セラチア菌に感染しなかったとしても、平成一四年一月一〇日から一六日まで七日間の休業を余儀なくされたということができるから、本件事故と相当因果関係のある休業損害は、次の計算式のとおり二万八四六〇円を認めるのが相当である。

148万4005円÷365日×7日≒2万8460円

カ  逸失利益 〇円

請求原因(3)ア(カ)(逸失利益)のうち、Aが、本件事故の当時、六八歳であったことは、当事者間に争いがないものの、前示のとおり、本件事故とAの死亡との間には相当因果関係を認めることができないから、Aの死亡による損害である逸失利益を本件事故と相当因果関係のある損害と認めることはできない。

キ  慰謝料 一三万六七七四円

(ア) 死亡慰謝料 〇円

前示のとおり、本件事故とAの死亡との間には相当因果関係を認めることができないから、Aの死亡による損害である死亡慰謝料を本件事故と相当因果関係のある損害と認めることはできない。

(イ) 入院慰謝料 一三万六七七四円

前示したAの受傷の部位、程度、入院経過その他諸般の事情を考慮すると、原告らが主張する入院慰謝料一三万六七七四円は、本件事故と相当因果関係のある損害と認めるのが相当である。

ク  小計 一七万七二三四円

以上のAの損害額を合計すると、一七万七二三四円となる。

(2)  同イについて

同イの事実は、当事者間に争いがない。

四  抗弁(過失相殺)について

前示事実関係によると、Aは、原告車両に乗って横断歩道上を横断するに当たり、本件交差点を左折してくる車両の有無を十分に確認していれば本件事故の発生を避けられた可能性があるということはできるものの、本件事故の当時六八歳であり、自転車横断帯に接する横断歩道を走行中であったことを考慮すると、Aにつき過失相殺を相当とすべき事由があるとまではいえない。

なお、被告本人尋問の結果(保険会社の原因調査報告書(乙七)における被告の供述を含む。)中には、本件事故の当時、Aが対面する歩行者用信号機が赤色を表示していたとの供述部分があるところ、仮にこの供述部分を信用することができるとしても、前示のとおり、Aは、本件事故の当時、原告車両に乗って横断していたから、車両用信号機によって規制されるというべきであって、前示判断を左右しない。

五  請求原因(3)ウ(弁護士費用)について

以上によると、Aの損害額の合計は、一七万七二三四円であるところ、原告らは、それぞれ一五〇〇万円の損害のてん補を受けたことを自認しており、これによると、前示損害額を上回る損害のてん補を受けていることとなる。そして、請求の認容額がないことからすると、本件事故と相当因果関係のある損害としての弁護士費用の発生を認めることは相当でない。

六  結論

よって、原告らの請求は、いずれも理由がないから棄却し、訴訟費用の負担につき民訴法六一条、六五条一項本文を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 小林邦夫)

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