東京地方裁判所 平成15年(ワ)5111号 判決 2004年3月24日
原告
X
上記訴訟代理人弁護士
野口啓朗
同
丸山知子
被告
損害保険ジャパン労働組合
上記代表者執行委員長
A
上記訴訟代理人弁護士
山口健一
主文
1 被告に,原告に対し,金3305万7050円及び内金3125万7050円に対する平成15年1月1日から,内金180万円に対する平成16年3月25日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 原告のその余の請求をいずれも棄却する。
3 訴訟費用は,これを20分し,その1を原告の負担とし,その余を被告の負担とする。
4 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。
事実及び理由
第1請求
被告は,原告に対し,3466万3040円及びこれに対する平成15年1月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2事案の概要
本件は,原告が,書記として勤務してきた全日本損害保険労働組合大成支部(以下「大成支部」という)を退職するに当たり,退職手当金,早期退職加算金,功労金加算,第一適格年金,第二適格年金及び精励加算金として合計3166万3040円の支払を受けるべき権利を有しており,大成支部の権利義務を被告が承継したとして,被告に対し,これらの支払を求めるとともに,被告がその支払を不当に拒んだとして,弁護士費用相当額300万円の損害賠償の支払を求めた事案である。
1 争いのない事実
(1) 大成支部は,大成火災海上保険株式会社(以下「大成火災」という)の従業員らで組織された労働組合である。
(2) 被告は,株式会社損害保険ジャパン(以下「損保ジャパン」という)の従業員らで組織された労働組合である。
2 争点
(1) 原告を雇用していたのは大成支部か,大成火災等か。原告の雇用主が大成支部の場合,その雇用条件はどのような内容であったか。
【原告の主張】
ア 大成支部は,全日本損害保険労働組合(以下「全損保」という)の一支部であると同時に,それ自体が一つの独立した労働組合である。
イ 原告は,昭和48年3月12日,大成支部に書記として雇用され,平成14年11月29日に退職した。
ウ ところで,原告と大成支部は,原告の雇用条件として,時間外勤務手当を除き大成火災の正社員に準じること及び時間外手当の代わりに書記手当(当初月額3000円)を支給することを合意した。
エ そこで,原告について,大成火災における福利厚生制度や社会保険,労働保険を適用して,大成火災の正社員と同様に処遇する必要が生じたが,その場合,形式上の雇用主が大成支部のままでは制度等を原告に適用することが困難であったことから,大成支部と大成火災は,原告の形式上の雇用主を大成火災の子会社である大成興産株式会社(以下「大成興産」という),大成サービス株式会社(以下「大成サービス」という)ないし大成火災とすることに合意した。そのため,原告の賃金は,大成火災等から原告に直接支払われ,給与明細等も当該会社の書式が用いられていたが,賃金の最終的な負担者は大成支部であった。
【被告の主張】
ア 原告が大成支部に雇用されたことは否認する。原告は,大成興産ないし大成火災に一般嘱託として雇用されたと聞いている。
イ 原告は,大成興産ないし大成火災から賃金の支給を受け,当該会社で用いられていた書式の給与明細を受け取っており,その役職欄には一般嘱託である旨の記載がされている。また,原告は,大成火災の常勤役員及び従業員の組織である共済会の会員でもあった。そして,原告は,大成火災の管財人宛に退職届を提出している。
(2) 被告は大成支部の権利義務を承継したか。
【原告の主張】
ア 更生会社となっていた大成火災は,平成14年12月1日,損保ジャパンと合併する予定であったところ,大成支部は,同年11月16日,第112回臨時支部大会(以下「本件臨時支部大会」という)を開催し,被告と組織合同することを決議し,被告も,同月30日に開催した第2回臨時組合大会(以下「被告第2回大会」という)において,大成支部と組織統合することを決議した。
この結果,大成支部は,同年12月1日をもって被告に吸収されて消滅し,その権利義務はすべて被告が承継した。
イ 被告は,同月12日,大成支部の資産である合計残高4961万1016円の預金通帳を大成支部の旧代表者から受領しており,これを被告の予算に組み込む処理を行っている。
【被告の主張】
ア 全損保は個人加入の労働組合であるところ,大成支部に所属していた全損保の組合員中9割を超える者が,同年11月30日付けで全損保を脱退し,同年12月1日付けで被告に加入したものである。したがって,大成支部はこれを脱退しなかった者によって,依然として構成され,存続しており,被告に吸収され消滅したものではない。
大成支部や被告は,以上の法的状況を「組織統合」と表現したにすぎない。
イ また,被告は,大成支部の預金通帳を預かっているが,これは,全損保を脱退して被告に加入した者が9割を超えていたため,被告で預金通帳を預かり,全損保を脱退した者と全損保に残った者の間で,金員を人数費(ママ)で案分することが予定されていたからである。したがって,同金員を被告の予算に組み込むことはしていない。なお,本訴提起のため,案分の手続は停止している。
(3) 原告が使用者から退職時に支払を受けるべき金員(以下「退職給付」という)の額は幾らか。
【原告の主張】
ア 別紙「退職給付算定書」記載のとおりである。
イ(ア) なお,大成火災は,損保ジャパンとの合併に当たり,余剰人員削減を図るため,社員に対して,所定の条件(平成15年3月31日時点で満45歳以上59歳未満であること及び勤続満20年以上であること)を満たし,かつ,平成14年11月30日に退職する場合,<1>功労金加算,<2>精励加算金(同年12月支給予定の臨時給与相当額),<3>早期退職加算金(満55歳の年度末以降の退職という支給条件を撤廃したもの)を支給し,<4>第一適格年金の一時金受取を可能とする(従前は分割支給)との「早期退職者への特別支援措置」(以下「本件支援措置」という)の適用希望者を募った。
(イ) 原告が大成支部を退職したのは,大成支部が,大成火災と損保ジャパンの合併を受けて,同時期に被告と組織統合することになり,原告の退職を迫ったことによるものであるから,原告は,本件支援措置の適用対象者に該当するというべきである。
ウ なお,大成火災の退職手当金規程では,退職手当金の支払期日は,退職の日から1か月以内とされている。
【被告の主張】
原告が大成支部に雇用されていたことを前提とする主張は否認する。
(4) 原告は,大成支部との間で,退職給付の額を1791万2000円とする旨合意したか。
【被告の主張】
原告は,大成支部との間で,平成14年11月15日,退職給付の額を1791万2000円とする旨合意した。
【原告の主張】
争う。原告は,大成支部の執行役員の腹案について,一旦「分かった」旨答えたものの,大成支部としての正式な意思決定がされ,原告に伝達される前に,前記の腹案を拒否する旨明確に伝えており,退職給付に係る合意は,原告と大成支部の間で何ら成立していない。
(5) 弁護士費用請求の可否
【原告の主張】
ア 被告代表者は,何ら正当な理由がないのに,大成支部との組織統合を否認するなどの虚言を弄し,また,原告との接触すら拒否した上,原告の照会に対しても一切回答しなかった。
イ このように老後の生活の資となるべき退職給付の支払を拒否された一庶民にすぎない原告は,原告代理人弁護士に本訴の追行を委任せざるを得ず,そのために支払わざるを得ない弁護士費用のうち300万円については,被告の退職給付不払の債務不履行と相当因果関係のある損害である。
ウ また,被告代表者の前記アの行為は,善良な社会通念から著しく逸脱した極めて不当な行為であり,不法行為にも該当し,被告は,民法44条の準用により不法行為責任を負い,同額の賠償義務がある。
【被告の主張】
争う。本件は,原告と大成支部の間で平成14年11月30日までに解決されるべき問題であって,被告が関知する問題でなく,原告の請求を拒否したからといって,非難される筋合いにない。
第3争点に対する判断
1 争点(1)について
(1) 前記争いのない事実,証拠(<証拠・人証省略>)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められ,これを覆すに足る証拠はない。
ア(ア) 全損保は,全国組織の個人加入の労働組合であり,一企業体が80名を超える所属組合員を有する場合,支部を組織することができるとされ,また,既に組織されている企業組合の加入も認められている。他方,個人のみならず支部の脱退も認められている。(<証拠省略>)
(イ) 大成支部は,大成火災内の全損保組合員で組織され,規約を定めて,分会,支部大会,常任委員会,執行委員会,役員といった機関を設けるとともに,多数決原理を採用し,組合員の加入脱退にかかわらず組織として存続して,独自の財政基盤を有する権利能力なき社団である(<証拠・人証省略>)。
イ 大成支部は,昭和48年2月,書記1名が退職することとなり,新たに書記1名を募集し,原告がこれに応募した(<証拠・人証省略>)。
ウ 大成支部は,採用面接の結果,原告を採用することとし,原告に対して,雇用条件として,当時の大成火災の給与規程及び退職金規程を示し,基本給,月例給与,臨時給与(賞与)及び退職給付について,大成火災の女子社員と全く同じ扱いをすること,ただし,勤務時間については,大成火災の勤務時間終了後の業務が想定されたことから,30分繰り下がり,これについては,一定額の手当を支給することを説明し,原告はこれを了承し,原告は,昭和48年3月12日,大成支部に雇用された(<証拠・人証省略>)。
エ そして,大成支部では,原告の賃金について大成火災の社員と同一の算定基準がとられること,原告にも大成火災の社員と同じ福利厚生制度,社会保険,労働保険を適用するのが望ましいと判断したことから,原告の給与算定及び給与の支払事務について,大成火災に協力を要請した。その結果,大成支部と大成火災は,原告の形式上の雇用主を大成興産とすることで合意し,原告の賃金は,大成興産から同社の給与明細書を使用して算定した金額を原告に直接支払い,その後,大成支部が大成興産に同額及び社会保険の事業主負担額を支払うことさ(ママ)れた(<証拠・人証省略>)。
オ その後,昭和55年10月1日,大成興産が大成サービスに商号変更し,原告の形式上の雇用主は,大成サービスとなったが,原告の給与が大成サービス内で高額となったことから,平成12年1月1日,原告の雇用主は,大成火災に変更された。その間における原告の賃金の支給内容及び基準は,組合費(原告自身は大成支部の組合員でない),勤務時間が繰り下がることによる手当,個人で選択可能な保険の加入や財形貯蓄,原告があえて請求しなかった管理職等の手当を除き,大成火災の社員と同一の内容及び基準で形式上の雇用主から支払われ,大成支部がこれを補填した。なお,通勤手当については,大成支部から原告に直接支給された。(<証拠・人証省略>)
カ 大成支部は,その予算において,書記退職手当基金として一定額を毎年繰り入れており,平成14年度決算では,書記退職手当基金として,1771万0669円が計上されていた(<証拠・人証省略>)。
(2) 以上によれば,原告の雇用主は大成支部であり,その雇用条件は,退職給付を含め大成火災の社員に準じるものとされていたというべきである。
2 争点(2)について
(1) 前記争いのない事実,証拠(<証拠・人証省略>)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
ア(ア) 大成火災,安田火災海上保険株式会社(以下「安田火災」という)及び日産火災海上保険(以下「日産火災」という)は,平成12年11月,平成14年4月に合併することを発表していたが,平成13年11月,大成火災の経営が破綻して,金融機関の更生手続の特例等に関する法律の適用を受けることとなった。そのため,安田火災及び日産火災が,平成14年7月1日に合併して損保ジャパンとなり,大成火災は,更生計画に基づき,同年12月1日,損保ジャパンと合併することとなった。(<証拠・人証省略>)
(イ) 被告は,平成14年7月1日,発足したが,損保ジャパンの労働組合としては,被告の外に全損保日産火災支部,全損保安田支部が存在した(<証拠・人証省略>)。
イ 大成支部の平成15年度(平成14年8月1日から)の執行委員長は,B(以下「B前委員長」という)であり,書記長はC(以下「C前書記長」という)であったが(以下,当該執行部体制を「旧執行部」という),旧執行部では,大成火災の損保ジャパンへの合併に当たって,大成支部としての組織をそのまま存置する方針であった(<証拠・人証省略>)。
ウ これに対し,被告側では,同年3月23日に設立された「新労組設立準備委員会」が,大成支部に対して,将来における被告との組織統合を働きかけていた(<証拠省略>)。
エ 大成支部は,同年9月14日,第111回定例支部大会(以下「本件定例支部大会」という)を開催したが,損保ジャパン合併後の労働組合の組織の在り方について,旧執行部の方針は明確でないとして否決され,早期に臨時支部大会を開催し,再度,方針を討論することとなった(<証拠省略>)。
オ 大成支部は,同年11月16日,本件臨時支部大会を開催し,次のとおり,提案されていた各議題について,採決がされた(<証拠・人証省略>)。
(ア) 執行部から提出された次の議案第2号について,反対42,保留1,賛成8で否決
a 大成火災が損保ジャパンと合併する時点では,大成支部としての役割機能を存置する。
b 損保ジャパンの全損保日産火災支部と合流を実現する方向での議論を深め一致を目指す。
(イ) 10の分会から提出された次の議案第4号について,反対7,保留2,賛成42で可決
a 大成火災が損保ジャパンに合流するに当たって,被告との同年12月1日の組織合同を目指す。
b 全損保に留まる限り,被告との組織合同はできないことから,被告との組織合同を実現するに当たって,全損保を脱退する。
c 組合員個人の労働組合選択の自由を確保する。
(ウ) 新役員として,次の者を選出(以下「新執行部」という)
a 執行委員長 D(以下「D新委員長」という)
b 執行副委員長 E,F
c 書記長 G
d 副書記長 H
e 執行委員 I,J,K,B前委員長,C前書記長
カ 本件臨時支部大会の決議に対し,同日,B前委員長及びC前書記長が中心となって「全損保にとどまる大成支部有志の会」(以下「本件有志の会」という)が結成され,大成支部の組合員に対し,同決議にかかわらず,全損保の組合員として留まることを呼びかける活動を開始した(<証拠・人証省略>)。
キ(ア) 他方,新執行部は,大成支部に所属していた組合員は,同年12月1日までに意思表示がない限り,被告の組合員となるとの見解を明らかにした(<証拠省略>)。
(イ) また,新執行部は,同年11月29日,大成支部の予算を組み直し,労働金庫の出資金及び分会活動資金以外の科目を全て一般会計に組み込むとともに,新執行部のG書記長は,中央労働金庫に対して,「組合資産の移行について」として,本件臨時支部大会の決議に伴い,大成支部の資産についても,同年11月30日の時点における一切のものを統合時に被告に移行するため,各種手続を行う旨申し入れた(<証拠・人証省略>)。
(ウ) そして,新執行部は,その機関誌で,本件有志の会の活動は,個人の労働組合選択の問題でなく,本件臨時支部大会の決議に反し容認できないとの見解を明らかにした(<証拠省略>)。
ク 被告は,同年11月30日,被告第2回大会を開催し,本件臨時支部大会において,同日付けで全損保を脱退し,脱退した従業員が同年12月1日付けで被告に加入することを組織決定したとした上,次の議案第2号を全会一致で可決した(<証拠省略>)。
(ア) 被告は,従前の大成支部との組織統合を実現する。
(イ) 組織統合の内容
a 労働協約・組合規約等については,被告のそれを承継する。
b 上部団体は,損害保険労働組合連合会とする。
c 執行部体制及び分会役員体制については,現行の役員が平成15年度末まで継続して業務執行に当たり,別途補充選挙を行う。
また,被告は,被告第2回大会の質疑応答の中で,組織統合に伴い大成支部の資産はどうなるのかとの質問に対して,大成支部の資産の取扱いについては,正式な決定事項はないものの,理にかなった取扱いをする必要があると回答した(<証拠省略>)。
ケ 大成支部の預金通帳を管理していたC前書記長は,同月末,新執行部のD新委員長にそれらを引き渡し,更にD新委員長は,同年12月12日,これらの通帳(残高合計4961万1016円)を被告に引き渡した(<証拠・人証省略>)。
コ(ア) 大成支部の組合員数は,約1000名であったところ,同月1日の時点で,その内93名が全損保に留まる旨の意思表示をし,その者達は,全損保日産火災支部に所属変更した(<人証省略>)。
(イ) 他方,新執行部は,全損保に対して,大成支部が全損保から脱退する旨の通告をした(<人証省略>)。
サ 被告は,同月5日付けの機関誌で,本件有志の会の活動について,本件臨時支部大会の決議の内容に反するもので容認できず,被告に対する組織介入であるとの見解を明らかにした(<証拠省略>)。
シ 被告は,平成15年3月8日,第3回臨時組合大会(以下「被告第3回大会」という)を開催し,平成15年度(平成14年7月1日から)の一般会計収支予算について,収入の部の組合費を4億7700万円から5億5000万円と7300万円増加させた(<証拠省略>)。
なお,被告における組合員一人当たりの平均組合費は,月額4000円程度である(<人証省略>)。
ス 大成支部の規約上,納入された組合費はいかなる理由によっても返還しないとされている(<証拠省略>)。
(2)ア ところで,構成員が労働者個人である労働組合を単位組合といい,そのうち,内部においてそれ自体独自の労働組合(法人又は権利能力なき社団)といえる下部組織を有するものを特に単一組合と呼ぶのが通例であるところ,そのような下部組織が単一組合から脱退することが可能か否かについては,当該下部組織の独自性と単一組合の加入者が飽くまで労働者個人であることの調和の観点から,次のとおり解するのが相当である。
すなわち,当該下部組織は,総会の4分の3以上の多数決(労働組合法10条2号準用)による決定により,組織自体を単一組合から離脱させることができるが,離脱に反対する構成員個人の単一組合からの脱退までの効果(いわゆる「引きさらい効果」)は生じず,他方,当該下部組織の積極・消極の財産は,すべて当該下部組織に帰属し,これに反対する者は,組織規約上特段の定めがない限り,財産の分割を請求することができない。ただし,下部組織が,内部対立によりその統一的な存続・活動が極めて高度かつ永続的に困難となり,組合の分裂といえるような事態が生じた場合には,別個の考察を要する。
イ また,2つの労働組合が合併することは,両組合において合同の決議をすれば可能であり,その場合,特段の意思表示がない限り,両組合の積極・消極の財産は,合併後の存続する組合に承継されると解するのが相当である。
(3) これを本件についてみるに,次のとおりである。
ア 全損保は,構成員が労働者個人である労働組合であるところ,その下部組織である大成支部も,独自の労働組合(権利能力なき社団)である(前記1(1)ア)。
イ 全損保では支部の脱退を認められている(前記1(1)ア(ア))。
ウ(ア) 大成支部は,平成14年11月16日の本件臨時支部大会で,全損保を脱退し,被告との同年12月1日の組織合同を目指す旨の決議を4分の3以上の多数決で決議して,新執行部を選出した(前記2(1)オ)。
(イ) そして,新執行部は,大成支部に所属していた組合員は,同年12月1日までに意思表示がない限り,被告の組合員となるとの見解を明らかにするとともに,全損保に対し脱退の届けを提出した上,全損保脱退に反対する本件有志の会の活動は,個人の労働組合選択の問題でなく,本件臨時支部大会の決議に反し容認できないとの見解を明らかにした(同キ(ア)(ウ),コ(イ))。
エ(ア) 他方,被告は,同年11月30日の被告第2回大会において,全会一致で,大成支部との組織統合を実現すること,その内容として,労働協約・組合規約等は被告のそれを承継し,現行の執行部及び分会役員が平成15年度末まで継続して業務執行に当たり,別途補充選挙を行うことを決議した(同ク)。
(イ) そして,被告も,本件有志の会の活動について,本件臨時支部大会の決議の内容に反するもので容認できず,被告に対する組織介入であるとの見解を明らかにした(同サ)。
オ(ア) 新執行部のG書記長は,中央労働金庫に対して,本件臨時支部大会の決議に伴い,大成支部の資産一切を被告に移行する手続を申し入れた(同キ(イ))。
(イ) D新委員長は,大成支部の預金通帳(残高4961万1016円)をB前委員長,C前書記長から預かり,更に被告に引き渡した(同ケ)。
カ(ア) 被告は,被告第2回大会で,組織統合に伴う大成支部の資産の取扱いについては,理にかなった取扱いをする必要があるとの見解を述べた(同ク)。
(イ) 平成14年12月1日以降,被告の組合員数は,約900人増加し(同コ(ア)),その組合費の月額平均は約4000円であるから(同シ),平成15年6月30日までの組合費の増加は,約2520万円であるところ,被告は,平成15年3月8日の被告第3回大会で,平成15年度(平成14年7月1日から)の一般会計収支予算の組合費収入について,7300万円増加させるとの決議をした(同シ)。したがって,その差額約4800万円の出所が問題となるが,これは前記オ(イ)の大成支部保有の預金額とほぼ一致しており,当該預金が組み込まれたと推認される。
以上によれば,大成支部は,総会の4分の3以上の多数決による決定により,大成支部の組織自体を全損保から脱退させた上(全損保の規約上も認められている),被告と合併するとの決議を行い,他方,被告も大成支部と合併するとの決議を全会一致で行ったもので,これにより大成支部と被告は合併し,大成支部の積極・消極の財産は,現在存続している被告が承継したものというべきであり,実際上も,大成支部及び被告の財産管理上,財産の承継手続が取られていることは明らかである。
(4) これに対し,被告は,大成支部の9割を超える組合員が全損保を脱退し,被告に加入したもので,大成支部の預金通帳を所持しているのは,これを全損保脱退者と全損保残留者の間で案分するためであると主張する。
ア しかし,本件で問題となっているのは,権利能力なき社団である大成支部の権利義務の帰趨であり,前段の主張自体は,本件の問題と何ら関係がない。
この点,仮に,被告の主張の趣旨が,大成支部の9割を超える組合員が個々に大成支部を脱退したというものであるとしても,大成支部及び被告が,組織の決定として,組織合同,組織統合を決議したものであることは,前記(3)ウ及びエの各(イ)から明らかである。
また,仮に,被告の主張の趣旨が,大成支部が組合として分裂したというものであるとしても,組合の分裂が認められるためには,大成支部内部の内部対立によりその統一的な存続・活動が極めて高度かつ永続的に困難となったことが必要というべきであるところ,本件証拠上,かかる事態が生じたとは認められない。
イ そして,大成支部が組合として分裂したと認められない以上,組合間での財産の案分は無意味であり,仮に個人間で案分するとするならば,全損保では,納入された組合費はいかなる理由があっても返還しないとされているのであるから,大成支部脱退者が預金の配分を受けることはできない。しかも,本件証拠上,案分の実施については,その気配すらうかがわれない(本訴が案分の実施の障害となる理由も明らかでない。被告の論法によれば,資産を案分する以上,債務も案分されるはずであり,その旨主張すれば,被告の負担が過大になることはないはずである)。
ウ よって,被告の主張は,採用の限りでない。
エ そして,前掲各証拠のうち,前記認定及び判断に反する部分は採用できない。
(5) 以上によれば,被告は,大成支部の債務を承継したものである。
3 争点(3)及び(4)について
(1) 前記争いのない事実,証拠(<証拠・人証省略>)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
ア 平成14年7月1日に被告が発足するに当たっては,約2000人が全損保日産火災支部を脱退して,被告に加入するという現象が生じていた(<証拠・人証省略>)。
イ 大成支部の旧執行部では,従前からの組合員減少傾向に加えて,前記アの現象を踏まえ,同年12月1日の大災(ママ)火災,損保ジャパン合併以後の成り行きが不透明であったことから,同年7月ころ,原告の処遇について検討を開始し,原告に対して,同年12月以降は,正職員としては退職扱いとし,アルバイトとして再雇用する旨を申し入れた。これに対して,原告は,回答を保留したが,明確な拒絶もしなかった(<証拠・人証省略>)。
ウ 旧執行部は,同年8月,原告が同年11月末で書記を退職し,同年12月以降,アルバイトとして勤務することを前提とした予算案を作成し,同予算案は,同年9月14日の本件定例支部大会で可決される一方,旧執行部が提案した大成支部の組織を存置する方向での方針案は否決された(<証拠・人証省略>)。
エ 旧執行部は,同年10月,前記ウの結論を受け,同年12月1日の大災(ママ)火災,損保ジャパン合併以後,大成支部が存続することは困難であり,合併先の被告における原告の雇用も期待できないとして,同月以降,全損保日産支部での雇用の可能性を検討することとなった(<証拠・人証省略>)。
オ(ア) 原告は,同年11月12日,大成支部と被告との合併は不可避であり,原告が失職することはほぼ確実であると判断し,同日付けで,次のとおりの質問文書を作成し,同月14日,B前委員長に交付した(<証拠・人証省略>)。
a 同年12月以降,勤務を継続するとした場合の雇用条件
b 同年11月での退職を余儀なくされた場合の退職給付の条件
(イ) なお,原告は,前記(ア)bに関して,本件支援措置と同様の措置をとると退職給付は次のようになると申し添えた(<証拠省略>)。
a 退職手当金 643万4000円
b 早期退職加算金 366万8000円
c 功労金加算 583万6000円
d 第二適格年金(一時金) 1147万7000円
e 第一適格年金(一時金) 810万円
カ 前記オの質問に対し,B前委員長は,同月14日,原告が同年11月末で退職することについては,原告が受け入れたと考えていること,退職給付については,退職手当金及び第二適格年金(一時金)のみを支払うことを一応回答し,改めて検討した結果を翌15日に伝えると回答した(<証拠・人証省略>)。
キ(ア) B前委員長及びC前書記長は,同月15日,執行委員会に諮る前の私案として,退職手当金643万5000円,第二適格年金(一時金)1147万7000円は支給するが,第一適格年金については,大成支部として退職基金の引き当てをしておらず,支給しないこと,早期退職手当金は支給要件を欠いていること,本件支援措置は労働組合とし受(ママ)け入れ難い措置であり,これを適用することはできないこと,他方,大成支部の平成15年度予算で,平成14年12月以降も残務処理のため原告をアルバイトとして雇用するとされており,年度末である平成15年7月までのアルバイト代107万5800円については,原告の就労の有無を問わず支払うことを提案した(<証拠・人証省略>)。
(イ) これに対し,原告は,翌16日に本件臨時支部大会が開催される予定であり,時間がないと急か(ママ)されたことから,前記(ア)の内容で執行委員会に諮ることを了承した(<証拠・人証省略>)。
(ウ) B前委員長は,同月15日夜の執行委員会に前記(ア)の案を提案し,了承を得た(<証拠・人証省略>)。
ク 同月16日,本件臨時支部大会が開催され,大成支部が被告と合併することが決議された(<証拠・人証省略>)。
ケ(ア) 原告は,同月16日及び17日の週末に再考した結果,前記キ(ア)の提案はやはり受け入れることができないとの結論に達し,週明けの同月18日,B前委員長に対して,前記キ(イ)の同意を撤回する旨を申し入れた。なお,当該撤回の申入れは,同(ウ)の執行委員会での了承が原告に伝えられる前であった。(<証拠・人証省略>)
(イ) 他方,原告は,同月末での退職自体はやむを得ないと判断していたことから,同日,労働組合の都合により,同月29日付けで退職する旨の退職届を大成火災の管財人に提出した(<証拠省略>)。
コ 旧執行部は,新執行部に原告の退職給付の問題を引き継いだ(<人証省略>)。
サ 原告(昭和22年○月○日生)は,平成14年11月29日当時,大成火災の基準に当てはめると5級の職級にあり,考課Bの評価を受けており,勤続年数は,29年9か月(月に満たない日は月に切り上げ)で,満55歳の年度の3月31日(原告の場合平成15年3月31日)には到達していなかった(<証拠・人証省略>)。
シ 大成火災の退職給付に関する規程では,次のとおり決められている。
(ア) 退職手当金(<証拠省略>)。
職級5級,考課B,勤続29年9か月の者の場合,643万5000円
(イ) 早期退職加算(<証拠・人証省略>)
定年以前に社命又は会社斡旋により社外に就職した場合若しくは満55歳の年度末以降に自己都合により退職した場合,繰上げ年数1年につき退職手当金の11.4%相当を加算する(千円未満切上げ)。
(ウ) 第二適格年金(<証拠省略>)
職級5級の者が一時金で受け取る場合,1147万7000円
(エ) 第一適格年金(<証拠省略>)
満55歳の年度の年度末到達前に社命又は会社斡旋により社外に就職した場合,勤続満25年以上かつ満50歳以上で自己都合により退職した場合,勤続25年以上30年未満の職級5級の者については,月額4万5000円を15年間支給する。なお,第一適格年金は会社拠出に係るものである。
ス 大成火災は,損保ジャパンとの合併に当たって,次のとおりの本件支援措置を実施した(<証拠省略>)。
(ア) 応募対象者
大成火災に在籍する社員で,平成14年11月30日時点において,年度末時点で満45歳以上満59歳以下,かつ,勤続満20年以上の者
(イ) 措置の内容
a 退職手当金,第一適格年金,第二適格年金
退職事由を会社斡旋による社外就職として取り扱い,各規定に基づく支給をする。これにより,早期退職加算金が支給され,年金については,全ての対象者に受給権が発生する。
ただし,年金の受取方法は,一時金受取を原則とし,第一適格年金についても,一時金受取を選択できるようにする(一時金受取を選択した場合,15年の残余保証期間に対する係数は,140.8154であり,千円未満を切り上げる)。
b 功労金加算
年齢55歳,勤続29年の場合,年間給与に1を乗じた額を支給する。ただし,退職手当金と早期退職加算金の合計額が,当該職級における定年退職時退職金(5級の場合771万6000円)を超過した場合には,当該超過分を功労金加算額から同額を限度として控除する。
なお,年間給与とは,月例給与(資格給,業績給,管理職手当,上位職手当,専任職手当,家族手当,調整手当,特別手当の合計額)及び臨時給与相当額(55歳以下の社員は,3.5か月)の合計額である。
(ウ) 精勤加算金
本件支援措置適用者は,平成14年11月30日付けで退職となり,同年12月の臨時給与相当額が支払われないこととなるが,更生対応の最終月であることに鑑み,同年11月末までの精勤状況を見て,同年12月の臨時給与相当額の範囲内で,精勤加算金を支給する。
(エ) 退職日 平成14年11月30日付け
セ 原告の年間給与は,572万7450円である(<証拠省略>)
(2) 争点(3)について
ア 前記1からすれば,原告は,その退職に当たって,大成火災の正社員に準じる退職給付を受けることができるところ,前記3(1)シによれば,原告は,退職手当金643万5000円及び第二適格年金1147万7000円の支給を受けることができるのは明らかである。
イ また,本件支援措置は,損保ジャパンとの合併による余剰人員対策としてとられたものと解され,会社都合による早期退職者(ママ)希望者に対する優遇措置というべきところ,前記3(1)イないしカによれば,原告は,使用者である大成支部の都合により雇用継続が困難であるとして退職を勧奨され,退職を余儀なくされたものであり,かかる立場は,本件支援措置の対象となった大成火災の正社員と同様の立場というべきであるから,原告についても,大成火災の正社員に準じて本件支援措置の適用があると解するのが相当である(なお,本件支援措置の適用対象者は,平成14年11月30日の時点で在職していることが条件とされているところ,原告は同月29日で退職しているが,これは同月30日が土曜日であることによるものと解され,原告に対する本件支援措置の適用が否定されるものではない)。
なお,本件において,労働者の雇用継続ができなくなった原因は,本件支援措置においては,大成火災と損保ジャパンの合併による余剰人員の発生にある一方,大成支部においては,全損保脱退と被告への合流という労働組合の運動上,組織上の方針転換にあり,同一の原因とは認められないが,いずれも使用者側の事情であって,労働者に責任はない点において変わりはないから,かかる差異をもって,原告に本件支援措置が適用されないとすることはできない。
よって,原告は,本件支援措置の適用を前提とした退職給付の支給を受けることができるというべきであり,その内容は次のとおりとなる。
(ア) 早期退職加算金
退職手当金643万5000円×5年×11.4%=366万8000円(千円未満切上げ)
(イ) 第一適格年金
4万5000円×140.8154=633万7000円(千円未満切上げ)
なお,大成支部は,第一適格年金について,退職基金の引当てをしていないことを理由に支払義務がないとしているが,第一適格年金は,会社拠出の年金であって,受給資格を満たした大成火災の正社員が当然に支給を受けることができるものである以上,原告も正社員と同様の受給資格を満たしていれば,その支給を受けることができるというべきである。退職基金の引当ての欠如は,大成支部の怠慢というべきであり,不支給を正当化する根拠たり得ない。
(ウ) 功労金加算
572万7450円-(643万5000円+366万8000円-771万6000円)=334万0450円
(エ) なお,精励加算金については,更生対応の最終月であることに鑑み,同年11月末までの精勤状況を見て,同年12月の臨時給与相当額の範囲内で支給されるものであり,使用者側の査定が前提となっていると解されるところ,原告について大成支部による査定がされたと認めるに足る証拠はないから,精励加算金を請求する権利は原告に生じていないといわざるを得ない。
(3) 争点(4)について
前記認定(1)キ(ア)(イ),ケ(ア)によれば,平成14年11月15日,B前委員長及びC前書記長は,原告に対し,私案として合計1898万7800円を支払う旨提示し,原告は,かかる内容で同日夜の執行委員会に諮ることを了承したが,執行委員会の決定を告げられる前に前記の了承を撤回したものであり,原告と大成支部の間に原告の退職給付を合計1898万7800円とする旨の合意が成立したとは認められない。
よって,争点(4)についての被告の主張は理由がない。
4 争点(5)について
(1) 前記争いのない事実,証拠(<証拠・人証省略>)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
ア 原告は,平成14年11月18日,退職給付に関するB前委員長の私案受入れを撤回し,退職給付についての交渉を原告訴訟代理人らに委任した(<証拠・人証省略>)。
イ 原告訴訟代理人らは,大成支部に対し,同月21日付け内容証明郵便で,退職給付として,B前委員長が提示したものに加え,早期退職手当金,功労金加算,第一適格年金及び12月分臨時給与を支払うよう請求した(<証拠省略>)。
ウ 原告は,その退職日である同月29日,B前委員長及びC前書記長に対して,原告の退職給付について,大成支部から提案のあった金額を原告に支給することの可否を尋ねた。両名は,原告の退職給付の問題を引き継いだD新委員長に対し,その可否を聞いたところ,D新委員長は,被告から支払を留保するよう言われているとして,これを拒み,両名は,原告にその旨回答した(<証拠・人証省略>)。
エ その後,原告訴訟代理人らは,D新委員長及び被告副委員長L(以下「L副委員長」という)に対し,原告の退職給付を支払うよう求めたが,L副委員長は,原告の退職給付の問題は大成支部の問題であり,被告は無関係であるとしてこれを拒んだため,同年12月13日付けの内容証明郵便で,再度被告に原告の退職給付の支払を請求した(<証拠省略>)。
オ これに対し,被告は,原告と大成支部間の関係及び交渉経緯は知らず,また,大成支部と被告が合併したことはなく,仮に原告が大成支部に退職給付請求権を有していても被告がこれを承継することはないとの回答をした(<証拠省略>)。
カ 原告訴訟代理人らは,被告に対し,平成15年1月7日付け内容証明郵便で,被告が大成支部の資産を引き継いだ理由,大成支部の資産の具体的内容及びその管理状況等について照会をし,回答を求めた(<証拠省略>)。
キ これに対し,被告は,前記オの回答以上に回答することはないとの回答をした(<証拠省略>)。
ク 原告は,原告訴訟代理人らに委任して,同年3月10日,本訴を提起した(弁論の全趣旨)。
(2) 以上に加え,前記2,3によれば,被告代表者は,原告が大成支部に対して退職給付として,少なくとも退職手当金643万5000円及び第二適格年金1147万7000円の合計1791万2000円の支払請求権を有していること並びに被告が当該債務を大成支部との合併により承継し,大成支部からその引き当てとなっていた資産を譲り受けていたことを十分認識していたというべきであり,それにもかかわらず,被告代表者は,合併前の大成支部が原告に同額を支払うことをやめるよう要請した上,大成支部との合併後においても,大成支部との合併はなくその債務は承継しないなどとおよそ不合理な理由を述べて,原告からの支払請求を全て拒絶したものであり,このような被告代表者の行為は,原告の請求権行使を少なくとも重大な過失によって妨げたといわざるを得ず,不法行為を構成するものといわざるを得ない。
そして,原告は,被告代表者の当該不法行為によって,速やかに支払われるべきであった退職手当金及び第二適格年金の分についてまで,原告訴訟代理人らに訴訟の追行を委任し,弁護士費用相当額を出捐せざるを得なかったものであり,それによって180万円の損害を被ったと認めるのが相当である(弁論の全趣旨)。
これに対し,本件支援措置の適用があること前(ママ)提とした原告の請求の当否について,被告がこれを争ったことが,正当な防御権行使の範囲を逸脱したものということはできない。
よって,原告は,被告に対し,不法行為(民法709条,44条)に基づき金180万円の支払を求めることができる(なお,本件において,原告が原告訴訟代理人に対して弁護費用を既に支払ったと認めるに足る証拠はないから,当該請求に係る遅延損害金の起算点は,本判決言渡しの日の翌日と解される)。
5 以上によれば,原告の本訴請求は,退職給付として,<1>退職手当金643万5000円,<2>第二適格年金1147万7000円,<3>早期退職加算金366万8000円,<4>第一適格年金633万6600円(633万7000円の内金請求)及び<5>功労金加算334万0450円の合計3125万7050円及びこれに対する弁済期の翌日である平成15年1月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金並びに不法行為に基づく損害賠償請求として180万円及びこれに対する本判決言渡しの日の翌日である平成16年3月25日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の各支払を求める限度で理由がある。
(裁判官 增永謙一郎)
退職給付算定表
<省略>