東京地方裁判所 平成16年(タ)264号 判決 2005年2月16日
主文
1 本訴・反訴に基づき,原告と被告とを離婚する。
2 原告と被告間の長男A(平成○年○月○日生)の親権者を原告と定める。
3 原告のその余の本訴請求及び被告のその余の反訴請求をいずれも棄却する。
4 原告の財産分与の申立てに基づき,被告は,原告に対し,299万円を支払え。
5 被告は,原告に対し,Aの養育費として,150万円及び平成16年12月からAが成人に達する日の属する月まで,毎月末日限り,1か月8万円の割合による金員を支払え。
6 訴訟費用は,本訴・反訴を通じてこれを2分し,それぞれを各自の負担とする。
事実及び理由
第1請求
1 本訴請求
(1) 主文1項同旨
(2) 主文2項同旨
(3) 被告は,原告に対し,800万円を支払え。
(4) 被告は,原告に対し,長男Aの養育費として,375万円及び平成16年11月から同人が成人に達する日の属する月まで毎月末日限り15万円ずつを支払え。
2 反訴請求
(1) 主文1項同旨
(2) 原告は,被告に対し,500万円及びこれに対する本判決確定の日の翌日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2事案の概要
1 原告(昭和○年○月○日生)と被告(昭和○年○月○日生)は,平成12年×月×日婚姻した夫婦であるが,原告が妊娠中の平成13年×月×日救急車で病院に搬送されて以降,別居状態にある。その後原告は,実家で暮らし,平成○年○月○日,長男Aを出生し,現在まで養育している。(争いがない事実)
原告の本訴請求は,被告との離婚,離婚に伴う子の親権者の原告への指定,慰謝料として400万円,財産分与として400万円の合計800万円の支払及び子の養育費の支払を求めるものである。
被告の反訴請求は,原告との離婚,慰謝料として500万円及びこれに対する遅延損害金の支払を求めるものである。
2 原告の主張
(1) 離婚原因について
(省略)
(2) 親権者の指定について
(省略)
(3) 慰謝料について
(省略)
(4) 財産分与について
(省略)
(5) 養育費について
原告は,子の出産及び養育に専念するため,平成13年8月×日から平成14年10月×日までの間休業したため無収入であり,同年10月×日に復職したが,みるべき収入はない。これに対し,被告は,月収約100万円で年収が1000万円を超えているから,被告は,原告に対し,子の養育費として月額15万円を負担すべきである。
被告は,これまで子の養育費を一度も負担したことはないから,過去に遡って平成14年10月分から平成16年10月分までの合計375万円を原告に支払うとともに,同年11月から子が成人に達する日の属する月まで毎月末日限り15万円ずつを支払うべきである。
3 被告の主張
(1) 離婚原因について
(省略)
(2) 慰謝料について
(省略)
(3) 原告の財産分与についての主張に対し
(省略)
(4) 原告の養育費の支払請求についての主張に対し
平成15年度の被告の収入は合計1029万円余であり,原告の年収は約403万円である。被告は,離婚成立時からこの収入を基準とする相当額の養育費を支払う用意はある。
第3当裁判所の判断
1 原告及び被告の各離婚請求について
原告も被告も本訴・反訴において婚姻関係破綻を理由に離婚を請求していること,後記認定の婚姻生活の経過及び別居期間が本件口頭弁論終結時までにすでに3年4か月を経過していること等に鑑みれば,婚姻関係がすでに破綻していることは明らかであるので,その破綻原因及びその責任の所在を検討するまでもなく,それぞれの離婚請求は理由があるものとしてこれを認容すべきである。
2 離婚に伴う親権者の指定について
原被告間に長男Aは,出生後現在まで原告の実家で原告に養育されていることに加え,被告においても離婚後子の親権者が原告となるべきことについて争っていないこと等から,離婚に伴うAの親権者はこれを原告と指定するのが相当である。
3 原告及び被告の各慰謝料請求について
(省略)
4 原告の財産分与の申立てについて
(省略)
5 原告の養育費支払の申立てについて
(1) 原告は,Aが出生した平成14年10月に遡って養育費の支払を求めているところ,前記認定事実と以下に掲記の書証及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
ア 原告は,平成13年7月×日ころから被告と別居し,実家で暮らしている。その間の平成○年○月○日に長男Aを出生し,実家で育てている。原告は,平成13年8月×日から平成14年10月×日までの間,出産及び育児のために休業して無収入であった(本訴の訴状7頁)。
イ 被告の年間給与(税込み額)は,平成13年度が903万9558円,平成14年度が998万2710円,平成15年度が1029万5397円であった(乙31の2ないし4)。そして,被告は,その中から,△△銀行に対する借入金債務として年間234万5344円を負担していたほか(乙62の1,2),月額5万2220円(年額62万6640円)のマンション管理費を負担していた。
他方で,被告は,平成14年10月に復職し,同年10月分は20万0543円,同年11月分は22万0597円,同年12月分は21万5104円の給与(税込み)の支給を受けた(甲25)。
ウ 被告は,原告と別居後,養育費の趣旨で,原告と共同で使用していた銀行口座に定期的に入金し,原告は,同口座から平成16年4月までに約90万円を引き出した(乙36)。
(2) 以上の事実に基づき,Aが出生した平成13年10月以降に被告が負担すべき養育費の額について検討する。
ア まず,平成13年10月から原告が無収入であった平成14年9月までの間について検討すると,その間は被告の収入のみに依存せざるを得なかったところ,その間の被告の年収額を平成13年度と平成14年度の平均額の951万1134円とし,これから本件マンションに関する債務の年間負担額297万1984円を控除した653万9150円をもって実質収入額とした上で,その収入額とAの年齢に照らすと,Aの養育費は月額7万円が相当であり,その全額は被告が負担すべきである。
イ 次に,原告が復職した平成14年10月から財産分与の精算月とすべき平成16年11月までの間について検討すると,その間の被告の年収額を平成14年度と平成15年度の平均額の1013万9053円とし,これから本件マンションに関する債務の年間負担額297万1984円を控除した716万7069円をもって実質収入額とし,他方,原告の年収額を平成14年10月分から12月分までの3か月間の給与収入から推計される254万4976円とした上で,その原被告の収入額の合計とAの年齢に照らすと,Aの養育費は月額8万円が相当であり,そのうち被告が負担すべき額は原被告の収入割合に応じて月額6万円とするのが相当である。
ウ 次に,財産分与の精算月の翌月である平成16年12月以降について検討すると,被告の年収額をイと同様1031万9053円としつつ,本件マンションはすでに婚姻財産とみるべきではないからこれに関する被告の債務を全額控除するのは相当でなく,その半分の148万5992円を控除するのを相当とし,したがって883万3061円をもって実質収入額とし,他方,原告の年収額もイと同様254万4976円とした上で,その原被告の収入額の合計とAの年齢に照らすと,Aの養育費は月額10万円が相当であり,そのうち被告が負担すべき額は原被告の収入割合に応じて月額8万円とするのが相当である。
エ 以上によれば,被告が負担すべき養育費は,アの期間が84万円,イの期間が156万円となるところ,前記認定のとおり,被告がAの養育費の趣旨で原告と共同で使用していた銀行口座に定期的に入金した預金から原告が平成16年4月までに引き出した約90万円は,被告が支払うべき養育費から控除するのが相当であるから,被告は,その残金150万円を支払うべきである。
そして,被告は,ウのとおり,平成16年12月以降は,Aの養育費として毎月8万円ずつを支払うべきであり,その期限は毎月末日限りとし,その終期は,Aが成人に達する日の属する月までと定めるのが相当である。
6 よって,主文のとおり判決する。