東京地方裁判所 平成16年(モ)4715号 決定 2006年9月01日
別紙当事者目録のとおり
主文
1 相手方は、本決定送達の日から2週間以内に、別紙文書目録記載の文書のうち、B1、B8、B11、B12、B20、B39からB41まで、B43及びB44(B44につき添付の経歴書を除く。)の各文書を提出せよ。
2 申立人(原告)のその余の申立てを却下する。
理由
第1本件申立ての概要
1 本案事件の概要
本件の本案事件は、五洋建設株式会社(以下「五洋建設」という。)が、①平成10年4月1日から平成13年11月22日までの間に長崎県県北振興局等発注の工事に関し、②平成7年9月中旬ころから平成13年11月22日までの間に長崎県対馬支庁発注の工事に関し、それぞれ受注談合をしたとして、公正取引委員会から、①について8880万円、②について7462万円の合計1億6342万円の課徴金納付命令を受けたことについて、同社の株主である申立人(原告)が、同社の取締役である被告らには、取締役として善管注意義務違反があったと主張して、上記課徴金相当額の損害賠償金を五洋建設に支払うように求めている株主代表訴訟である(以下、上記の受注談合を「本件談合」という。)。
2 本件申立ての趣旨等
本件申立ての概要は以下のとおりである。
(1) 文書の表示
別紙文書目録記載のとおり
(2) 文書の趣旨
別紙文書目録記載1の各文書は、公正取引委員会の職員が五洋建設の従業員から本件談合につき聴取したうえ作成された供述調書であり、同目録記載2の各文書は、五洋建設が、公正取引委員会の報告命令に基づき、公正取引委員会に本件談合につき報告した文書である(以下、同目録記載1及び2の各文書を併せて「本件対象文書」という。)。
(3) 文書の所持者
相手方
(4) 証明すべき事実
五洋建設等がどのようにして談合していたか、それに誰がどのように関与したか、このような談合はいつから行われていたか等に関する前提事実を明らかにして、五洋建設のコンプライアンス体制の欠陥を明らかにする。
(5) 文書の提出義務の原因
民事訴訟法220条4号
第2関係人の主張の概要
1 証拠調べの必要性について
(1) 申立人(原告)の主張
本件の本案事件における争点は、①被告らが本件談合を自らないし社内組織を通じて認識していたか、あるいは認識し得たか、②本件談合を未然に防止し得るに実効ある内部統制システムを構築していたかである。
①を立証するためには、本件談合の態様、すなわち、営業所のだれが、どのような手続を経て、いつ、どこで、だれと談合したのか、入札はいかなる方法で行われ、支店等への入札結果報告がどのようにされていたか、これに対し支店はどのように対応していたのかなどの間接事実を明らかにする必要がある。
②についても、被告が講じたと主張する措置が談合を未然に防止し得る実効性があるかという点を考慮するに当たって、本件談合の態様を明らかにすることが不可欠である。
(2) 相手方の主張
本件では、五洋建設は、勧告に応諾して課徴金も争わずに納付し、かつ、入札談合が行われたことについては実質的に認めており、各個別物件について受注調整があったことも争っておらず、争点は、入札談合を阻止しなかったことについて被告らに注意義務違反があるか否か、具体的には、被告らが入札談合の事実を知っており、又は知り得たか、入札談合をやめさせる必要な措置がとられていたか、五洋建設において、内部統制システムが構築され、機能していたか、などである。
しかるに、本件対象文書の記載内容は、別紙「相手方の意見」の「必要性」欄に記載したとおり、いずれも原告の立証事項とは関連性がない。
2 民事訴訟法220条4号ロ該当性について
(1) 相手方の主張
①私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独占禁止法」という。)違反事件の調査過程で得られる供述調書・報告書等には、顧客、ノウハウ、契約関係、対価等事業者の秘密や個人のプライバシーに係る情報が含まれることが多く、審査官が、審査・審判手続のみに利用する目的で、供述者から協力を得てその供述・報告を得たものについて、これをみだりに目的外の手続において開示すれば、供述者を含む国民から今後協力を得られなくなるなど、公正取引委員会の審査業務に著しい支障を生ずるおそれがある。また、供述調書が開示されることで、特定の供述者の供述内容の詳細が明らかになると、その所属する団体等から何らかの不利益を受けることも否定できない。
②本件対象文書のように審査手続の過程で取得され、審判手続の場に顕出されていない手持ち情報が、公正取引委員会の権限のもとにある審査・審判手続とは無関係に、民事訴訟等の目的外の場で、いつ何時、第三者に公表されかねないということになれば、現在又は将来の公正取引委員会の調査・審査活動の密行性・確実性を確保することは困難となる。その結果、以後の審査活動の中止、中断を余儀なくされたり、審査計画を変更せざるを得なくなるなど、事件審査に多大な影響を与えるおそれがある。また、情報の保秘について、事件を担当する審査官に無用の不安を与え、審査活動に萎縮効果を及ぼすおそれがあることも否定できない。
③公正取引委員会の審査の手法や着眼点が開示されれば、今後、公正取引委員会が独占禁止法違反行為について審査を行う場合に、その手法が違反行為者に先読みされることになり、口裏合わせや証拠隠滅等が行われるおそれがある。
(2) 申立人(原告)の主張
公正取引委員会は、事件について必要な調査をするため事件関係人又は参考人に出頭を命じて審尋し、又はこれらの者から意見若しくは報告を徴することができるとされ(独占禁止法47条)、これを拒み、妨げ又は忌避した者は、刑事罰に処せられる(同法94条)。このように、公正取引委員会の調査、審査に対し任意の協力に応じない事件関係人、参考人に対しては、刑罰をもって担保された強制処分が予定されている。このような強制処分があるからこそ「任意の協力」が得られるものであり、「任意の協力」をもってのみしか事件関係人、参考人に対する調査・審査がなしえないとしたら、独占禁止法違反行為についての事実調査は成立し得ない。
相手方の主張する支障とは、当該独占禁止法違反事件が現に公正取引委員会において係属中のときに、文書提出命令によって文書が提出されることによるものであるが、本件においては、独占禁止法違反事件の手続がすべて終了しており、他の事件の端緒情報など将来の事件処理に必要な情報が含まれているという事実も認められない。
そして、一定の手法や着眼点を念頭にして捜査や調査がされることは、公正取引委員会の審査等のみならず、刑事処分はもちろん、行政処分等についても同様であるが、相手方の主張のとおりであれば、刑事上、行政上の捜査、審査調査による供述調書、聴取書等は、すべて捜査や調査の一定な手法や着眼点が開示されたものとしてそれによって違反行為者の口裏合わせや証拠隠滅等が行われるおそれがあるということとなり、不合理である。
第3当裁判所の判断
1 一件記録によれば、以下の各事実が認められる。
(1) 公正取引委員会は、平成14年6月10日、五洋建設らに対し、①五洋建設外22社は、遅くとも平成10年4月1日以降、長崎県県北振興局等発注の特定海上土木工事について、受注価格の低落防止等を図るため、長崎県県北振興局等から指名競争入札の参加者として指名を受けた場合には、受注予定者を決定し、受注予定者が受注すべき価格を定め、受注予定者以外の者は、受注予定者がその定めた価格で受注できるように協力する旨の合意の下に、平成13年11月22日までの間、受注予定者を決定し、受注予定者が受注できるようにしていたこと、②五洋建設外4社は、平成7年9月中旬ころ、長崎県対馬支庁発注の美津島漁港広域防波堤本体築造工事について、全国業者の中では上記5社のみが当該工事にかかる指名競争入札に参加者として指名されること、その施工困難性等から地元業者が受注を希望しないこと及び各年度に数件の工事が継続して発注されることを予測した上で、長崎県対馬支庁から指名競争入札の参加者として指名を受けた場合には、上記5社の中から受注予定者を定め、受注予定者以外の者は、受注予定者がその定めた価格で受注できるように協力する旨の合意の下に、平成13年11月22日までの間、受注予定者を決定し、受注予定者が受注できるようにしていたことが、独占禁止法2条6項に規定する不当な取引制限に該当し、同法3条に違反するとして、平成14年法律第47号による改正前の独占禁止法48条2項に基づく勧告を行った。
(2) これに対し、五洋建設らは、勧告を応諾したため、公正取引委員会は、同月28日、五洋建設らに対し、当該勧告と同趣旨の審決をした。
そして、公正取引委員会は、平成15年2月19日、五洋建設に対し、平成17年法律第35号による改正前の独占禁止法48条の2第1項に基づき、上記(1)について8880万円、上記(2)について7462万円の合計1億6342万円の課徴金納付命令を行い、五洋建設は、審判手続開始の請求をすることなく同額を納付した。
(3) 原告は、本案事件において、被告らは、五洋建設の取締役として従業員の行為を監視すべき善管注意義務を負い、内部統制システム構築義務を負うと主張し、五洋建設は、公正取引委員会から、昭和63年12月、米軍工事の談合事件について課徴金納付命令を受け、平成4年6月、埼玉土曜会談合事件について談合の排除勧告を受けているのであるから、取締役である被告らは、遅くとも平成5年6月ころまでには(被告Y1 については平成10年6月以降)、談合防止プログラムを構築すべき注意義務があり、それは、①発注機関ごとの公共工事発注状況の把握、②業界担当者が出席した他の業者との会合連絡についての報告書提出とその内容把握、③応札価格について応札の経過と応札金額の根拠を応札担当者から聴取、④積算部門又は積算担当者から応札価格について積算したかどうかのチェック及び積算したときの応札価格の妥当性の聴取、⑤定期的な各営業所・支店に対する別部門からの調査を内容としたプログラムでなければならないと主張している。
(4) 別紙文書目録記載1の各文書は、公正取引委員会の職員が独占禁止法違反事件の審査の過程で五洋建設の従業員である供述人らの供述を録取した調書であり、同目録記載2の各文書は、公正取引委員会が報告命令(平成17年法律第35号による改正前の独占禁止法46条1項1号)に基づき、五洋建設から取得した報告書である。
そして、本件対象文書の標目は、別紙「相手方の意見」の「標目」欄記載のとおりであり、また、その記載内容は、同書面の「概要」欄及び「必要性」に記載のとおりである。
2 以上を前提として、まず証拠調べの必要性について判断する。
原告は、本案事件の争点である、被告らが本件談合を自らないし社内組織を通じて認識し、又は認識し得たか、本件談合を未然に防止し得るに実効ある内部統制システムを構築していたかの各点についての立証のために、本件談合の態様、すなわち、営業所のだれが、どのような手続を経て、いつ、どこで、だれと談合したのか、入札はいかなる方法で行われ、支店等への入札結果報告がどのようにされていたか、これに対し支店はどのように対応していたのかなどの間接事実を明らかにする必要があると主張する。
そこで、本件対象文書について検討するに、前記の本件対象文書の「標目」欄、「概要欄」及び「必要性」欄の各記載内容に照らせば、上記の事実について記載されている文書は、本件対象文書のうち、B1、B8、B11、B12、B20、B39からB41まで、B43及びB44(B44につき添付の経歴書を除く。)であると認められる。
これらの文書はいずれも、公正取引委員会の職員が五洋建設の従業員の供述を録取し、その内容を読み聞かせられた供述人が誤りのない旨を申し立てて署名押印した文書であるが、相手方は、B1については、入札に関する社内での具体的な指示、連絡や積算価格等の検討の経過、支店への報告等には一切触れられていない、B8については、県北地区における受注調整行為について述べられているが、社内の意思決定も長崎営業所内のものである、B11及びB12については、違反行為、対象物件についての記述があるものの、単にルールの存在・内容、価格連続等の落札までの手順を述べたにすぎず、しかも長崎営業所内の手続にとどまっている、B20については、違反行為の存在、これについての供述者の認識について述べたにすぎない、B39については、県の意向を踏まえることが指名につながることから県と打ち合わせをしたことに関するものであり、そもそも入札談合に関するものでもない、B40については、違反行為の実行の様子であるが、社内における協議や会社の意思決定も対馬営業所限りである、B41については、個別物件に係る入札談合の状況である、B43については、受注調整や価格連絡に関する部分があるが、これに関する社内の連絡も長崎営業所内部のものである、B44については、社内での意思決定や、社会のチェック体制、監視体制に関する事項は含まれていないなどと主張して、これらの文書のいずれについても原告の立証事項とは関連性がないから、証拠調べの必要はないと主張する。
しかし、B1には、五洋建設の長崎営業所の副所長が長崎県発注の港湾・漁港工事の入札などについて供述した内容が含まれていること、B8には、五洋建設の長崎営業所の副所長が県北地区において担当した工事案件に関する、受注調整の動機、受注者決定のルール、落札及び受注について供述した内容などが含まれていること、B11及びB12には、五洋建設の佐賀営業所所長が、担当地区であった県北振興局発注の工事についての入札状況、落札状況のほか、受注調整によって落札した状況など違反行為そのものの状況などについて供述した内容が含まれていること(直接、本件本案訴訟の被告らの認識や関与の状況は含まれていないが、これら具体的な違反の状況は、被告がこれらの違法行為を認識し得たか、被告らがとった措置が適切なものであったか、と関連する。)、B20には、五洋建設の佐世保営業所長が、担当地区における県発注の工事の入札について供述した内容が含まれていること、B39及びB41には、五洋建設の現在及び元の各対馬営業所長が、対馬営業所管内における堤体工事に関する受注調整の模様及び入札談合の状況についての供述が含まれていること、B43及びB44には、五洋建設の元対馬営業所長事務所及び現在の対馬営業副所長が、当時の漁港工事についての入札の準備状況や入札の状況について供述した内容が含まれていることが、それぞれ認められ、長崎営業所又は対馬営業所内にとどまるとされる本件談合の意思決定についても、本件談合の態様が明らかになることによって、間接的にではあるにせよ被告らの本件談合についての認識又は認識可能性や五洋建設における内部統制システムの欠陥等の立証に資する可能性は否定できず(なお、相手方は、B39について、入札談合に関するものではないと主張するけれども、受注調整の模様に関して供述されているものであるから、当該主張は理由がない。)、原告の立証のための証拠調べの必要性を肯認することができるというべきである。また、入札に関する添付資料についても供述内容と一体のものとして、やはり証拠調べの必要性が肯認できる。
他方、上記以外の本件対象文書については、その記載内容等に照らし、原告の立証事項と関連するとは認められず、証拠調べの必要性が認められない。
したがって、本件対象文書のうち、B1、B8、B11、B12、B20、B39からB41まで、B43及びB44(B44につき添付の経歴書を除く。)については、証拠調べの必要性が存在する。
3 そこで、次に、上記の証拠調べの必要性が認められる各文書について、相手方が主張するような民事訴訟法220条4号ロに該当する事由があるか否かを検討する。
(1) 本件対象文書のうち、B1、B8、B11、B12、B20、B39からB41まで、B43及びB44(B44につき添付の経歴書を除く。以下「本件各文書」という。)は、本件談合に関し、五洋建設の従業員が任意の事情聴取に応じて公正取引委員会の職員に対して供述した内容を録取し、その内容を読み聞かせられた供述人が誤りのない旨を申し立てて署名押印した文書である。
そして、本件談合についての独占禁止法違反事件は、公開の手続である審判手続に至ることなく勧告審決がされ、課徴金納付命令に対しても審判手続開始の請求がされていないのであるから、本件各文書に記載された内容は、公正取引委員会の職員が職務上知り得た非公知の事項であって、実質的にも秘密として保護に値するものというべきである。
したがって、本件各文書は、民事訴訟法220条4号ロに規定する「公務員の職務上の秘密に関する文書」に該当すると解するのが相当である。
(2) 相手方は、本件各文書を提出することは、民事訴訟法220条4号ロに規定する「公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれがある」と主張し、その理由として、次の各点を指摘する。
①独占禁止法違反事件の調査過程で得られる供述調書・報告書等には、顧客、ノウハウ、契約関係、対価等事業者の秘密や個人のプライバシーに係わる情報が含まれることが多く、審査官が、審査・審判手続のみに利用する目的で、供述者から協力を得てその供述・報告を得たものについて、これをみだりに目的外の手続において開示すれば、供述者を含む国民から今後協力を得られなくなるなど、公正取引委員会の審査業務に著しい支障を生ずるおそれがある。また、供述調書が開示されることで、特定の供述者の供述内容の詳細が明らかになると、その所属する団体等から何らかの不利益を受けることも否定できない。
②本件各文書のように審査手続の過程で取得され、審判手続の場に顕出されていない手持ち情報が、公正取引委員会の権限のもとにある審査・審判手続とは無関係に、民事訴訟等の目的外の場で、いつ何時、第三者に公表されかねないということになれば、現在又は将来の公正取引委員会の調査・審査活動の密行性・確実性を確保することは困難となる。その結果、以後の審査活動の中止・中断を余儀なくされたり、審査計画を変更せざるを得なくなるなど、事件審査に多大な影響を与えるおそれがある。また、情報の保秘について、事件を担当する審査官に無用の不安を与え、審査活動に萎縮効果を及ぼすおそれがあることも否定できない。
③公正取引委員会の審査の手法や着眼点が開示されれば、今後、公正取引委員会が独占禁止法違反行為について審査を行う場合に、その手法が違反行為者に先読みされることになり、口裏合わせや証拠隠滅等が行われるおそれがある。
(3) そこで①及び②について検討するに、独占禁止法は、審判が開始された場合には、原則として審判は公開され(同法61条1項)、その事件記録は利害関係人において閲覧又は謄写を求めることができることが制度上予定されているのであるから(同法70条の15)、審査官の行う調査に応じ、任意に自己の知り得た事実等を供述する者は、当該事件について任意に供述した事実及びその内容が、将来にわたっても、決して他に開示されることはないとの信頼を前提に供述を行っているものとは解されないこと、公正取引委員会には、事件について必要な調査をするため、事件関係人又は参考人に出頭を命じて審尋し、又はこれらの者から意見若しくは報告を徴することなどの処分をする権限が認められ(独占禁止法47条)、これらに応じない者は1年以下の徴役又は300万円以下の罰金に処せられることとされていること(同法94条)、本件各文書が作成された審査の対象となった事件については、既に公正取引委員会における手続はすべて終了し、これに関する新たな調査は予定されていないこと、本件各文書の記載内容からは、本件各文書が本件文書提出命令申立事件の手続に従って開示されたとしても、そのことによって、これらの各供述を行った五洋建設の従業員らが、所属する法人その他の者から不利益な取扱いを受けるとは推認できないことなどを考え併せれば、公正取引委員会の調査・審査活動における密行性・確実性等の要請を考慮しても、現段階において本件各文書を開示したとしても、それによって、今後、これらの独占禁止法違反事件の調査について、関係者をはじめとする国民の協力を得られなくなるなど具体的に公正取引委員会の審査業務に著しい支障を生ずるおそれがあるとは認めがたい。
また、③については、本件各文書においては、公正取引委員会の審査の手法や着眼点自体が記載されているわけではなく、これらを本件各文書の内容から推知される可能性があるというにすぎず、本件各文書の記載内容に照らしても、そのような程度の可能性があるからといって、具体的に公正取引委員会の審査活動に著しい支障を生ずるおそれがあるとまでは認められない。
したがって、本件各文書の提出について、民事訴訟法220条4号ロに規定する「公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれがある」に該当するとはいえないから、相手方の主張はいずれも採用することができない。
4 よって、主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 市村陽典 裁判官 小川雅敏 進藤光慶)
<以下省略>