東京地方裁判所 平成16年(ワ)26871号 判決 2006年2月22日
原告
X1
ほか一名
被告
Y1
ほか七名
主文
一 被告Y1、被告Y2及び被告Y3は、原告ら各自に対し、連帯して各三七二七万七〇三三円及びこれに対する平成一四年五月二〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
二 被告日本興亜損害保険株式会社は、被告Y1に対する一の判決が確定したときは、原告ら各自に対し、各二二二七万七〇三三円及びこれに対する判決確定の日の翌日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
三 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。
四 訴訟費用は、原告らと被告Y1との間で、これを八分し、その五を原告らの負担とし、その余を同被告の負担とし、原告らと被告Y2との間では、これを八分し、その五を原告らの負担とし、その余を同被告の負担とし、原告らと被告Y3との間では、これを八分し、その五を原告らの負担とし、その余を同被告の負担とし、原告らと被告日本興亜損害保険株式会社との間では、これを五分し、その四を原告らの負担とし、その余を同被告の負担とし、原告らとその余の被告らとの間では、原告らの負担とする。
五 この判決は、第一項及び第二項に限り、仮に執行することができる。
事実
第一当事者の求めた裁判
一 請求の趣旨
(1) 被告Y1、被告Y4、被告Y5、被告Y2、被告Y3、被告Y6及び被告Y7は、原告ら各自に対し、連帯して各一億〇八八三万七九五三円及びこれに対する平成一四年五月二〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
(2) 被告日本興亜損害保険株式会社は、被告Y1に対する(1)の判決が確定したときは、原告ら各自に対し、各九三八三万七九五三円及びこれに対する判決確定の日の翌日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
(3) 訴訟費用は被告らの負担とする。
(4) (1)及び(2)につき仮執行宣言
二 請求の趣旨に対する答弁
(1) 原告らの請求をいずれも棄却する。
(2) 訴訟費用は原告らの負担とする。
第二当事者の主張
一 請求原因
(1) 事故の発生
A(昭和○年○月○日生まれ。)は、次の交通事故(以下「本件事故」という。)に遭い、頭部打撲による硬膜下血腫、脳挫傷、脳挫滅の傷害を負って、平成一四年五月二〇日に死亡した。
日時 同日午前四時二〇分ころ
場所 千葉県船橋市西船一丁目八番九号先路上
加害車両<1> 普通自動二輪車(<番号省略>。以下「被告Y1車両」という。)
<2> 普通自動二輪車(<番号省略>。以下「被告Y2車両」という。)
運転者<1> 被告Y1車両につき被告Y1
<2> 被告Y2車両につき被告Y2
事故の態様 Aが同乗する被告Y1車両が、先行する被告Y2車両を右側から追い越した後、被告Y2車両の進路前方に進入したところ、被告Y1車両の後輪右側と被告Y2車両の前輪左側とが衝突し、その衝撃により被告Y1車両が左側路上の縁石に乗り上げ、路外のブロック塀に衝突した結果、Aが頭部を路上に強くたたきつけた。
(2) 責任原因
ア 被告Y1
被告Y1は、本件事故の当時、<1>血中アルコール濃度一・三四ミリグラム/ミリリットル以上の酒気帯び状態であったから、被告Y1車両の運転を差し控えるべき注意義務があるのにこれを怠り、その運転をした点について、<2>本件事故の現場は緩やかなカーブであり、安全な速度で運転すべき注意義務があるのにこれを怠り、時速約一〇〇キロメートルで被告Y1車両を運転した点について、<3>先行する被告Y2車両の右側を追い越してその進路前方に進行するに当たり、その進行を妨害しないように急激な運転操作を避け、その安全を確認しながら進行すべき注意義務があるのにこれを怠り、被告Y2車両との安全を確認しないまま急に減速した点について、それぞれ過失がある。
また、被告Y1は、本件事故の当時、被告Y1車両を保有し、自己のために運行の用に供していた。
したがって、被告Y1は、民法七〇九条、自動車損害賠償保障法(以下「自賠法」という。)三条本文に基づき、Aらが本件事故により被った損害を賠償すべき責任を負う。
イ 被告Y4及び被告Y5
被告Y4及び被告Y5は、被告Y1(昭和○年○月○日生まれ)の両親であり、本件事故の当時、同被告と同居していたところ、本件事故に先立ち、同被告が飲酒運転を繰り返していることを容易に知り得たはずであり、親権者としてこれを制止すべき注意義務があるのにこれを怠り、漫然と同被告の飲酒運転を黙認していた過失があるので、民法七〇九条に基づき、Aらが本件事故により被った損害を賠償すべき責任を負う。
ウ 被告Y2
被告Y2は、本件事故の当時、<1>呼気一リットル当たり〇・三ミリグラムの酒気帯びの状態であったから、被告Y2車両の運転を差し控えるべき注意義務があるのにこれを怠り、その運転をした点について、<2>本件事故の現場は緩やかなカーブであり、安全な速度で運転すべき注意義務があるのにこれを怠り、時速約七〇キロメートルで被告Y1車両を運転した点について、<3>被告Y1車両が被告Y2車両の右側を追い越して進路前方に進入したのであるから、減速するなどして被告Y1車両との距離を保ち衝突を防止すべき注意義務があるのにこれを怠り、漫然と進行した点について、それぞれ過失があるから、民法七〇九条に基づき、Aらが本件事故により被った損害を賠償すべき責任を負う。
エ 被告Y3
被告Y3は、本件事故の当時、被告Y2車両を保有し、自己のために運行の用に供していた。
また、被告Y3は、被告Y2(昭和○年○月○日生まれ)の父であり、本件事故の当時、同被告と同居していたところ、平成一三年春以降同被告が飲酒運転を繰り返していた上、本件事故の直前に、同被告が酒気帯び状態で自宅に戻った後、被告Y2車両に乗って外出しようとしているのを知ったのであるから、親権者としてこれを制止すべき注意義務があるのにこれを怠り、漫然と同被告の飲酒運転を黙認していた過失がある。
したがって、被告Y3は、自賠法三条本文、民法七〇九条に基づき、Aらが本件事故により被害を被った損害を賠償すべき責任を負う。
オ 被告Y6
被告Y6は、被告Y2の母であり、本件事故の当時、同被告と同居していたところ、平成一三年春以降同被告が飲酒運転を繰り返していた上、本件事故の直前に、同被告が酒気帯び状態で自宅に戻った後、被告Y2車両に乗って外出しようとしているのを知ったのであるから、親権者としてこれを制止すべき注意義務があるのにこれを怠り、漫然と同被告の飲酒運転を黙認していた過失があるので、民法七〇九条に基づき、Aらが本件事故により被った損害を賠償すべき責任を負う。
カ 被告Y7
(ア) 被告Y7は、被告Y1及び被告Y2と同じアルバイト先で勤務していた仕事仲間であり、Aの友人であったところ、本件事故に先立ち、Aが被告Y1及び被告Y2から被告Y1車両又は被告Y2車両に同乗するよう誘われた際、前記被告両名が飲酒をしたことを知っていたのであるから、Aに前記車両への乗車を勧めることを差し控え、これを制止すべき注意義務があるのにこれを怠り、漫然とAに前記車両への乗車を勧めた過失があるので、民法七〇九条に基づき、Aらが本件事故により被った損害を賠償すべき責任を負う。
(イ) 被告Y7は、被告Y1及び被告Y2とともにカラオケ店において飲酒し、その席上前記被告両名に酒を勧めた上、カラオケ店を離れる際、酒に酔い正常な運転ができない状態にあった前記被告両名があえて自動二輪車を運転しようとしたのであるから、前記被告両名が運転することを制止すべき注意義務があるのにこれを怠り、その運転を認容した点に過失があるというべきであり、少なくとも民法七一九条二項に基づき、Aらが本件事故により被った損害を賠償すべき責任を負う。
キ 共同不法行為
本件事故の当時、被告Y1及び被告Y2は、相互に認識しつつ被告Y1車両及び被告Y2車両を運転していたし、被告Y4、被告Y5、被告Y3、被告Y6及び被告Y7の行為の間にも相互に客観的に関連共同関係が認められる。
ク 被告日本興亜損害保険株式会社(以下「被告会社」という。)
被告会社は、本件事故の当時、被告Y4との間で、被告Y1を被保険者、被告Y1車両を被保険自動車とし、被保険者が損害賠償請求権者に対して負担する法律上の損害賠償責任の額について、被保険者と当該損害賠償請求権者との間で判決が確定したときは、法律上の損害賠償責任の額から自動車損害賠償責任保険(以下「自賠責保険」という。)によって支払われる金額を控除した金額を、保険者が当該損害賠償請求権者に支払うことなどを内容とする自動車総合保険契約(以下「本件契約」という。)を締結していた。
(3) 損害等
ア Aの損害
(ア) 入院治療費 三七万二一〇〇円
Aは、本件事故による頭部打撲による硬膜下血腫、脳挫傷、脳挫滅の傷害を治療するため、平成一四年五月二〇日、船橋市立医療センターに入院し、入院治療費として三七万二一〇〇円を負担した。
(イ) 逸失利益 一億四四五二万六七八〇円
a 基礎収入
Aは、本件事故の当時、大学二年生であり、その得べかりし収入を平成一四年賃金センサス(男性労働者・大卒平均)により確定すると、年額六七四万四七〇〇円となる。
b 生活費控除率
Aは、本件事故の当時、独身であったから、その生活費控除率は五〇パーセントとなるが、男性の平均初婚年齢である二九・〇歳後の三〇歳までには婚姻する可能性があるので、三〇歳となる平成二四年一月以降の生活費控除率は、四〇パーセントとすべきである。
c 中間利息控除
Aは、本件事故に遭わなければ、大学卒業後六七歳まで四三年間就労可能であったところ、大学卒業後婚姻年齢の三〇歳までの期間は七年、婚姻後六七歳までの期間は三六年となる。そして、近年の低金利が継続している状況を踏まえると、中間利息の利率は年一パーセントとすべきであるところ、大学卒業後婚姻までの就労期間七年に対応するライプニッツ係数は六・七二八、婚姻後六七歳まで三六年間に対応するライプニッツ係数は三〇・一〇七となる。
d 計算式
674万4700円×(1-0.5)×6.728+674万4700円×(1-0.4)×30.107≒1億4452万6780円
(ウ) 慰謝料 二〇〇〇万〇〇〇〇円
Aは、本件事故の結果、弱冠二〇歳の若さで突然命を奪われており、その無念さは察するに余りがあり、精神的苦痛は甚大である。
(エ) 葬儀費用 三〇二万二一三五円
本件事故後、Aの葬儀が行われ、葬儀費用として三〇二万二一三五円が支出された。
(オ) 弁護士費用 一六七五万四八九一円
イ 相続
原告らは、Aの両親である。
ウ 原告らの損害
(ア) 慰謝料 各一五〇〇万〇〇〇〇円
原告らは、本件事故の結果、長年苦労して育て上げたAを突然奪われており、原告X2においては不眠や幻聴に悩まされるなど、その精神的苦痛は甚大である。
(イ) 弁護士費用 各一五〇万〇〇〇〇円
(4) まとめ
よって、原告らは、
ア 被告Y1、被告Y4、被告Y5、被告Y2、被告Y3、被告Y6及び被告Y7に対し、民法七〇九条、自賠法三条本文に基づき、連帯して、原告ら各自につき各一億〇八八三万七九五三円及びこれに対する不法行為の日である平成一四年五月二〇日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求め、
イ 被告会社に対し、本件契約に基づき、被告Y1に対するアの判決が確定したときは、原告ら各自につきそれぞれ前記各損害から自賠責保険の保険金一五〇〇万円を控除した残額九三八三万七九五三円及びこれに対する判決確定の日の翌日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。
二 請求原因に対する被告Y1、被告Y4、被告Y5及び被告会社の認否
(1) 請求原因(1)は認める。
(2)ア 請求原因(2)アは認める。
イ 同イのうち、被告Y1が昭和○年○月○日生まれであること、被告Y4及び被告Y5が被告Y1の両親であり、本件事故の当時、同被告と同居していたことは認め、その余は争う。
被告Y4及び被告Y5は、被告Y1が飲酒運転をしていたことを知らなかったし、飲酒運転をしていることを疑わせる状況も存在せず、かつ、常日ごろから飲酒運転をしてはならない旨注意していた。
ウ 同ウないしオは知らない。
エ 同カのうち、被告Y7が、被告Y1及び被告Y2と同じアルバイト先で勤務していた仕事仲間であり、Aの友人であったことは認め、その余は知らない。
オ 同キは争う。
カ 同クは認める。
(3)ア(ア) 請求原因(3)ア(ア)は認める。
(イ)a 同(イ)aのうち、平成一四年賃金センサス(男性労働者・大卒)による平均賃金が六七四万四七〇〇円であることは認める。
b 同bのうち、Aが、本件事故の当時、独身であったから、その生活費控除率は五〇パーセントとなることは認め、平成二四年一月以降の生活費控除率を四〇パーセントとすべきであるとの主張は争う。
Aは、独身であったから、生活費控除率は、全期間にわたって五〇パーセントとすべきである。
c 同c及びdは争う。
(ウ) 同(ウ)のうち、Aが精神的苦痛を被ったことは認め、その慰謝料の額は争う。
(エ) 同(エ)は知らない。
(オ) 同(オ)は否認する。
Aが本件事故により被った損害の賠償を請求するために訴えの提起をせざるを得なかったのは原告らであって、Aではないから、Aについて弁護士費用の損害は発生しない。
イ 同イは認める。
ウ(ア) 同ウ(ア)のうち、原告らが精神的苦痛を被ったことは認め、その慰謝料の額は争う。
(イ) 同(イ)は知らない。
なお、被告Y1車両及び被告Y2車両については、いずれも自賠責保険の契約が締結されており、原告らは、自賠法一六条一項に基づく請求が可能であり、訴訟をしなくても比較的簡易な手続で、自賠責保険から相当額の支払を受けられるから、弁護士費用の損害の算定に当たっては、自賠責保険から支払われる金額を考慮すべきである。
三 請求原因に対する被告Y2、被告Y3及び被告Y6の認否
(1) 請求原因(1)は認める。
(2)ア 請求原因(2)アは認める。
イ 同イは知らない。
ウ 同ウは否認ないし争う。
本件事故は、被告Y1の一方的な過失によるもので、被告Y2には過失がない。すなわち、本件事故は、被告Y1車両が、進行方向に向かい緩やかに右カーブになっており、かつ、追越しのための右側部分はみ出し通行禁止の場所において、速度を毎時約一〇〇キロメートルに上げて右側から被告Y2車両を追い抜いた直後、急激に減速した結果、発生したのであり、被告Y2にとって、被告Y1車両が追い抜いた直後に減速することは全く予想できず、衝突を避けることはできなかった。
エ 同エのうち、被告Y3が、本件事故の当時、被告Y2車両を保有し、自己のために運行の用に供していたこと、被告Y2が昭和○年○月○日生まれであること、被告Y3が被告Y2の父であり、本件事故の当時、同被告と同居していたことは認め、その余は否認ないし争う。
オ 同オのうち、被告Y6が、被告Y2の母であり、本件事故の当時、同被告と同居していたことは認め、その余は否認ないし争う。
カ 同カは知らない。
キ 同キは争う。
(3)ア(ア) 請求原因(3)ア(ア)は認める。
(イ)a 同(イ)aは否認ないし争う。
b 同bは否認ないし争う。
生活費控除率は、全期間にわたって五〇パーセントとすべきである。
c 同c及びdは否認ないし争う。
(ウ) 同(ウ)ないし(オ)は否認ないし争う。
イ 同イは認める。
ウ 同ウは否認ないし争う。
四 請求原因に対する被告Y7の認否
(1) 請求原因(1)は認める。
(2)ア 請求原因(2)アのうち、被告Y1が、本件事故の当時、飲酒していたことから、被告Y1車両の運転を差し控えるべき注意義務があるのにこれを怠り、その運転をしたこと、同被告が、本件事故の当時、時速約一〇〇キロメートルで被告Y1車両を運転していたこと、同被告が、本件事故の当時、先行する被告Y2車両の右側を追い越してその進路前方に進行するに当たり、その進行を妨害しないように急激な運転操作を避け、その安全を確認しながら進行すべき注意義務があるのにこれを怠り、被告Y2車両との安全を確認しないまま急に減速した過失があることは認め、その余は知らない。
イ 同イのうち、被告Y1が昭和○年○月○日生まれであること、被告Y4及び被告Y5が被告Y1の両親であることは認め、その余は知らない。
ウ 同ウのうち、被告Y2が、本件事故の当時、飲酒していたことから、被告Y2車両の運転を差し控えるべき注意義務があるのにこれを怠り、その運転をしたこと、同被告が、本件事故の当時、時速約七〇キロメートルで被告Y2車両を運転していたことは認め、その余は知らない。
エ 同エのうち、被告Y2が昭和○年○月○日生まれであること、被告Y3が被告Y2の父であることは認め、その余は知らない。
オ 同オのうち、被告Y6が被告Y2の母であることは認め、その余は知らない。
カ(ア) 同カ(ア)のうち、被告Y7が、被告Y1及び被告Y2と同じアルバイト先で勤務していた仕事仲間であり、Aの友人であったこと、被告Y7が、本件事故に先立ち、Aが被告Y1及び被告Y2から被告Y1車両又は被告Y2車両に同乗するよう誘われた際、前記被告両名が飲酒をしたことを知っていたことは認め、その余は否認する。
被告Y7は、本件事故の当時、Aと同年齢であり、対等な関係を保っていたところ、Aに被告Y1車両又は被告Y2車両への乗車を勧めた事実はなく、Aは、本件事故の当時、既に二〇歳に達しており、被告Y1及び被告Y2が飲酒した状態であることを認識しながら、自らの判断で主体的に被告Y1車両に乗車した。また。被告Y7は、被告Y2と一緒に飲酒したのはわずか一時間にすぎず、同被告が運転できないほど酔っているという認識はなかった。したがって、被告Y7にはAが被告Y1車両に乗車することを制止すべき法的な注意義務はなかった。
(イ) 同(イ)のうち、被告Y7が、被告Y1及び被告Y2とともにカラオケ店において飲酒したことは認め、その余は否認ないし争う。
被告Y7が同乗していたのは被告Y2車両であるところ、本件は、被告Y1、被告Y2及び被告Y7が一団となって暴走行為を繰り返していたような事案ではないから、仮に被告Y7に同乗者の責任が認められる余地があるとしても、被告Y2車両に同乗したことに関する注意義務違反のみが問われるべきである。被告Y7は、被告Y2と年齢差がわずか一歳で、アルバイト先の同僚にすぎず、優越的な立場にあったわけではなく、被告Y2に飲酒運転をさせたこともなければ、飲酒運転を阻止しなければならない立場にもなかった。被告Y7は、被告Y2車両に同乗した後も、スピード違反を助長したり、被告Y2の運転をおろそかにさせるような行為は一切していない。
キ 同キのうち、本件事故の当時、被告Y1及び被告Y2が相互に認識しつつ被告Y1車両及び被告Y2車両を運転していたことは不知、その余は否認する。
(3)ア(ア) 請求原因(3)ア(ア)は認める。
(イ)a 同(イ)aのうち、Aが本件事故の当時大学二年生であったことは認め、その余は知らない。
b 同bのうち、Aが、本件事故の当時、独身であったから、その生活費控除率は五〇パーセントとなることは認め、その余は知らない。
c 同c及びdは争う。
(ウ) 同(ウ)のうち、Aが、本件事故の結果、弱冠二〇歳の若さで突然命を奪われており、その無念さは察するに余りがあり、精神的苦痛は甚大であることは認め、その余は知らない。
(エ) 同(エ)のうち、本件事故後、Aの葬儀が行われたことは認め、その余は知らない。
(オ) 同(オ)は否認する。
イ 同イは認める。
ウ(ア) 同ウ(ア)のうち、原告らが、本件事故の結果、長年苦労して育て上げたAを突然奪われており、その精神的苦痛が甚大であることは認め、その余は知らない。
(イ) 同(イ)は否認する。
五 抗弁
(1) 被告Y3―自賠法三条ただし書
前記のとおり、本件事故は、被告Y1の過失に基づき発生したもので、被告Y2に過失はない。
本件事故の当時、被告Y2車両は、構造上の欠陥も機能の障害もなかった。
(2) 被告ら―過失相殺(同乗減額)
本件事故は、Aが、被告Y1、被告Y2及び被告Y7とともに、カラオケ店で飲酒した上、午前四時ころ、自宅に送ってもらうために被告Y1車両に同乗した際に発生したものであり、Aは、飲酒運転による危険を承知の上で同乗したといわざるを得ず、相当割合の過失相殺がされるべきである。
六 抗弁に対する認否
(1) 抗弁(1)は否認する。
本件事故の場所は、片側一車線の道路であるから、被告Y2は、被告Y1に追い越された時点で同被告が自車進路上に進入してくることや、追越しのため加速した車両が、追越しの終了後加速を終え一定の減速をすることを予見できたし、被告Y2車両が制限速度を三〇キロメートル程度超過した時速約七〇キロメートルで走行していたことをも併せ考慮すれば、被告Y1車両に追い越された段階で、十分な車間距離を確保するため一定の減速をすべき注意義務を負っていたというべきである。それにもかかわらず、被告Y2は、減速をすることなく漫然と進行した点に過失があるといわざるを得ない。
(2) 抗弁(2)のうち、本件事故が、Aが、被告Y1、被告Y2及び被告Y7とともに、カラオケ店で飲酒した上、午前四時ころ、自宅に送ってもらうために被告Y1車両に同乗した際に発生したものであることは認め、その余は否認する。
Aは、本件事故の発生の危険性を助長し、又は積極的に容認したと思われる事情が存在しない以上、過失相殺がされるべきではない。
第三証拠関係
本件訴訟記録中の書証目録及び証人等目録の記載を引用する。
理由
一 請求原因(1)(本件事故の発生)について
請求原因(1)の事実は、当事者間に争いがない。
二 請求原因(2)(責任原因)について
(1) 同ア(被告Y1)について
同アの事実は、被告Y7を除く当事者間に争いがない。
また、同アのうち、被告Y1が、本件事故の当時、飲酒していたことから、被告Y1車両の運転を差し控えるべき注意義務があるのにこれを怠り、その運転をしたこと、同被告が、本件事故の当時、時速約一〇〇キロメートルで被告Y1車両を運転していたこと、同被告が、本件事故の当時、先行する被告Y2車両の右側を追い越してその進路前方に進行するに当たり、その進行を妨害しないように急激な運転操作を避け、その安全を確認しながら進行すべき注意義務があるのにこれを怠り、被告Y2車両との安全を確認しないまま急に減速した過失があることは、原告らと被告Y7との間で争いがない。
(2) 同イ(被告Y4及び被告Y5)について
ア 同イのうち、被告Y1が昭和○年○月○日生まれであること、被告Y4及び被告Y5が被告Y1の両親であることは、原告らと被告Y1、被告Y4、被告Y5、被告会社及び被告Y7との間では争いがなく、被告Y4及び被告Y5が、本件事故の当時、被告Y1と同居していたことは、原告らと被告Y1、被告Y4、被告Y5及び被告会社との間では争いがない。
イ 前示当事者間に争いのない事実に、証拠(甲一ないし一四、三一、三二、乙イ一、五ないし一一、ロ一ないし四、ハ一ないし三、被告Y1本人、被告Y4本人、被告Y5本人、被告Y2本人、被告Y3本人、被告Y6本人、被告Y7本人)及び弁論の全趣旨を総合すると、次の事実が認められる。
(ア) Aは、原告X1を父、原告X2を母として昭和○年○月○日に出生した男子であるところ、本件事故の当時、大学二年生(二〇歳)であった。
被告Y1は、被告Y4を父、被告Y5を母として同年○月○日に出生した男子であるところ、本件事故の当時、専門学校生(一九歳)であった。
被告Y2は、被告Y3を父、被告Y6を母として昭和○年○月○日に出生した男子であるところ、本件事故の当時、大学生(一九歳)であった。
被告Y1は、ファミリーレストランにおいてアルバイトをするようになり、そこで働いていた被告Y2と知り合い、親しくなっていた。
被告Y7は、昭和○年○月○日に出生し、Aとは高等学校の同級生となって交際を始め、本件事故の当時、大学生(二一歳)で、Aのアパートで同居していたところ、平成一四年二月から、ファミリーレストランにおいてアルバイトを始め、同僚である被告Y1及び被告Y2と親しくなった(ただし、一緒に外出することまではなかった。)。なお、Aも、本件事故の当時、被告Y7を通じて、被告Y1及び被告Y2と面識があった(一〇回程度会って話をしたことがある程度で、一緒に遊びに行くことまではなかった。)。
(イ) 被告Y1は、本件事故の当時、両親である被告Y4及び被告Y5と同居していたところ、午後三時から八時まで専門学校に通いながら、週に三日、午後一〇時から翌日の午前五時までファミリーレストランにおいてアルバイトをしており、アルバイト先から自宅に帰宅するのは午前六時前ころであり、両親はまだ寝ていた。
被告Y1は、一六歳で原動機付自転車免許を、一七歳で普通自動二輪車免許を、一八歳で普通自動車免許をそれぞれ受けていたところ、平成一三年九月ころ、被告Y1車両を購入し、アルバイトや遊びに行く際に運転するほか、通学の際にも運転することがあったが、電車を利用する方が所要時間が短いことから、通学に被告Y1車両を使用したのは、週に一、二回であった。
被告Y1は、一六歳ころに初めて飲酒し、一七歳ころから月に一回以上飲酒していたところ、被告Y4及び被告Y5は、本件事故の当時、被告Y1が自宅で飲酒することがあることは知っていた。
被告Y1は、両親から飲酒運転をしないよう注意されていたにもかかわらず、一七歳のころから、両親に隠れて、自宅や居酒屋で飲酒をした後、自動二輪車を運転するようになり、その回数は本件事故までに一〇回程度であった。飲酒運転をしていたのは、自動二輪車に乗って遊びに行った帰りに、友人同士で飲酒をした後、自動二輪車を運転して帰宅した場合とか、自宅において友人と飲酒をした後、ビデオレンタル店にビデオを借りに行く際に自動二輪車を運転した場合とか、アルバイトの帰りに、アルバイト先の近所で飲酒をした後、自動二輪車を運転して帰宅した場合であった。他方、専門学校の同級生と通学の帰りに懇親会等で飲酒に行く場合は、あらかじめ日程が決まっていることから、その日は電車で通学しており、学校に行ってから突然飲酒に行くことを誘われても、アルバイトがある日は断り、アルバイトがない日でも自動二輪車で通学している日はやはり断っており、通学の帰りに飲酒して自動二輪車を運転することはなかった。
被告Y1の自宅は、住宅街にあり、夜遅くや早朝に自動二輪車で帰ったときは、自宅の前まで自動二輪車で乗り付けると近所迷惑になることから、自宅から三〇ないし四〇メートル離れたところにある鉄道の高架下でエンジンを切り、自宅まで引っ張って帰るようにし、夜遅くに自動二輪車に乗って外出する際も、同じ場所まで引っ張っていき、そこでエンジンを掛けるようにしていた。
なお、被告Y1は、本件事故に先立つ一七歳のころ、原動機付自転車を運転中、スピード違反で警察に捕まったことがあるほか、平成一四年一月一九日、普通乗用自動車を運転中、交差点を右折する際に、自転車横断帯を横断する自転車に衝突し、自転車の運転者に傷害を負わせる事故を起こしたことがあるところ、この人身事故の際には飲酒はしておらず、本件事故の前に飲酒運転を理由として警察に捕まったことはなかった。被告Y1は、この人身事故後本件事故までの間、週四回程度、被告Y1車両を運転していた。
(ウ) 被告Y2は、本件事故の当時、両親である被告Y3及び被告Y6と同居していたところ、一か月に二〇日程度、午後一〇時から翌日の午前五時までファミリーレストランにおいてアルバイトをしていた。
被告Y2は、高校三年生のときに普通自動二輪車免許を取得し、通学やアルバイトに行く際に被告Y3所有の被告Y2車両を運転していた。
被告Y2は、高校生のころから、主に友人の家で飲酒をするようになったところ、被告Y3及び被告Y6は、飲酒をほとんどしないこともあって、本件事故の当時、被告Y2が飲酒をしているとの認識がなかった。
被告Y2は、平成一三年春ころから、両親に隠れて、自宅や居酒屋で飲酒をした後、自動二輪車を運転するようになり、その回数は本件事故までに一〇回程度であったが、事故を起こしたことも警察に捕まったこともなかった。
(エ) 被告Y2は、平成一四年五月一九日午後九時三〇分ころ、被告Y1に対し、携帯電話で連絡をして飲酒に誘い、アルバイト先のファミリーレストランで待合せをすることとし、被告Y1は被告Y1車両を、被告Y2は被告Y2車両をそれぞれ自宅から運転して、同日午後一〇時三〇分ころ、ファミリーレストランで落ち合った後、両被告は、それぞれ自分の普通自動二輪車(被告Y1車両及び被告Y2車両)を運転していったん被告Y1の自宅に向かい、その敷地内に被告Y1車両及び被告Y2車両を止めると、徒歩で近くの居酒屋に行き、同日午後一一時ころから同月二〇日午前〇時ころまで飲食をした。飲酒の量は、被告Y1が生ビール中ジョッキ一杯、焼酎のウーロン茶割り(ジョッキは五〇〇ミリリットル程度)を三、四杯程度、被告Y2が生ビール中ジョッキ二杯程度であった。被告Y2は、少し酔った感じがあったが、被告Y1からみてそれほど酔っているという感じは受けなかった。被告Y1は、顔色も変わらず、外見上酔っぱらった様子はなかった。
他方、被告Y7は、同月一九日午後六時から一〇時までファミリーレストランでアルバイトをした後、いったんアパートに帰り、Aとともに、勉強道具を持って自転車で再びファミリーレストランに向かい、食事をしながら大学の課題に取り組んでいた。
被告Y2は、居酒屋で飲食をしながら、被告Y1や他の友人とカラオケ店に行くことを思いつき、被告Y7の携帯電話に連絡をして誘ったところ、被告Y7は、大学の課題を理由に断っていたものの、電話を替わったAが課題が終われば参加するなどと答えて、いったん通話は終わった。
これに対し、被告Y1及び被告Y2は、被告Y7がカラオケ店に行くことを承知したものと考え、居酒屋を出て被告Y1の自宅に戻り、そこから被告Y1車両及び被告Y2車両を運転して、被告Y7がいるファミリーレストランに向かい、同月二〇日午前一時ころ、ファミリーレストランに着くと(被告Y1の自宅からファミリーレストランまでの走行距離は約二・二キロメートル)、被告Y7及びAの席に向かった。被告Y7は、被告Y1及び被告Y2が上機嫌だったことから飲酒しているように思ったが、足元がふらつくなど、酔っぱらっているという雰囲気は見受けられず、被告Y1及び被告Y2に対し、「どのくらい飲んでいるの。」と尋ねると、被告Y2は、「そんなに飲んでいないよ。」などと答えた。被告Y7は、課題を続けていたが、時刻が午前一時を過ぎており、これらの予定を被告Y1又は被告Y2に尋ねたところ、再びカラオケ店に行くことを誘われたことから、課題が終わるのを待たれていると考え、Aとも相談して、課題を適当に切り上げ、Aとともにカラオケ店に行くこととした。
被告Y7及びAは、勉強道具や自転車を置くため、いったんアパートに帰ることとし、被告Y1車両を運転する被告Y1とともに、ファミリーレストランからアパートに向かう一方、被告Y2は、カラオケの料金分の現金を持ち合わせていなかったことから、現金自動預金支払機(ATM)で現金を下ろすため、独りで被告Y2車両に乗ってファミリーレストランを出発し、Aのアパートで待合わせをすることとなった。
被告Y7は、被告Y2を待っている間、被告Y1に対し、「事故は嫌だよ。ヘルメットはどうしたの。一個足りないよ。」などと言うと、同被告は、被告Y2に携帯電話で連絡をしてヘルメットを持ってくるように頼んだ。また、被告Y1は、被告Y7から「お酒を飲んでいて大丈夫なの。」と尋ねられて「最近大きな事故は起こしてないよ。余裕だよ。」などと答えた。他方、被告Y2は、ATMが休止していたことから、いったん自宅に戻り、被告Y3から現金を借りる(ただし、同被告は、被告Y2から、電話で、使途について説明のないまま現金を貸してほしいとの連絡があったことから、自宅のテーブルに現金を置いた後に就寝しており、同被告に直接手渡すことはなかった。なお、被告Y6も、被告Y2が自宅に戻った際には既に就寝していた。)と、被告Y2車両を運転してAのアパートに向かった。
被告Y2が到着すると、四名は、じゃんけんで被告Y1車両及び被告Y2車両の各後部に乗車する者を決め、被告Y1が運転する被告Y1車両の後部に被告Y7が同乗し、被告Y2が運転する被告Y2車両の後部にAが同乗し、被告Y1の自宅の近くにあるカラオケ店(アパートからの走行距離は約三・三キロメートル)に向かった。その際、四名は、全員ヘルメットを装着していた。
四名は、同日午前二時ころから四時ころまで、カラオケ店において、飲酒をしながら歌っていたところ、飲酒の量は、被告Y1が焼酎のウーロン茶割りを四杯程度、被告Y2がカクテルを三杯程度、Aがカクテルを四杯程度、被告Y7がカクテルを三杯程度であった。四名は、各自の判断で飲酒しており、互いに飲酒を勧めることはなかった。
カラオケ店を出た際、被告Y1も被告Y2も、陽気な気分になり顔が熱く感じ酔っていることが分かったが、足元がふらつくほどではなく、酔った歩き方ではなかった。被告Y7は、酔っており眠気があったが、Aから「帰ってからレポートできるの。」と尋ねられたのを記憶している程度の酔いであった。
カラオケ店から出ると、A又は被告Y7が被告Y1車両及び被告Y2車両でAのアパートまで送るよう頼んだり、被告Y1又は被告Y2がA及び被告Y7を送ると言い出すこともなく、暗黙のうちに、被告Y1及び被告Y2が被告Y1車両及び被告Y2車両を運転してA及び被告Y7をAのアパートに送ることとなり、被告Y1が運転する被告Y1車両の後部にAが同乗し、被告Y2が運転する被告Y2車両の後部に被告Y7が同乗し(なお、このときは、じゃんけんをして後部に乗車する者を決めることはしておらず、Aより先にカラオケ店から出た被告Y7は、被告Y2が既に被告Y2車両に乗っているのを見て、黙ってそのまま被告Y2車両の後部に座ったことから、Aは、空いている被告Y1車両の後部に乗ることとなった。)、Aのアパートに向かって、被告Y1車両が先頭で出発した(ただし、被告Y2本人尋問の結果《同被告本人の陳述書(乙ロ二)を含む。以下同じ。》中には、Aを除く三名のうちだれか《被告Y1又は被告Y2のいずれかである可能性が高く、被告Y7である可能性は低い。》の発言で以前にアルバイト仲間で行ったことのある公園に行くこととなった旨の供述部分がある。また、被告Y7本人尋問の結果中には、カラオケ店から出発する際に公園に行く話が出たものの、まとまらなかったことから、Aのアパートに向かうものと思い込んでいた旨の供述部分がある。)。その際、四名は、いずれもヘルメットを装着していた(なお、被告Y2本人尋問の結果《被告Y2の司法警察員に対する平成一四年八月九日付け供述調書(乙イ七)を含む。》には、Aがヘルメットを浮くようにかぶっているのを見たとの供述部分があるものの、大丈夫だろうと思って注意まではしなかったとの供述部分があり、被告Y7本人尋問の結果中には、Aの髪型がいわゆるアフロヘアであることから浮いているように見えたにすぎず、きちんとかぶっていたと思うとの供述部分もあるが、他にAのヘルメットの着用の不備がその死亡の結果の発生等に寄与したことを認めるに足りる証拠はない。)。また、Aは、被告Y1車両の後部座席に同乗中、被告Y1の身体に手を回さず、後部座席を手でつかんでいた(後に判示するとおり、同被告も本件事故の結果、路上に投げ出されており、仮にAが同被告の身体に手を回していたとしても、路上に投げ出されていた可能性が高く、他にAが前示態様で乗車していたこととその死亡との間に相当因果関係があることを的確に裏付ける証拠はない。)。
その後、被告Y1車両及び被告Y2車両は、途中で信号待ちをした後、被告Y2車両が先頭になって出発した。
(オ) 被告Y2は、平成一四年五月二〇日午前四時二〇分ころ、後部に被告Y7を乗せて被告Y2車両を運転し、千葉県船橋市西船一丁目八番九号先道路(片側一車線。以下「本件道路」という。)を同市西船四丁目方面から同市海神六丁目方面に向かい、時速七〇キロメートルで前照灯を下向きにして、センターライン寄りを進行中、前方の緩やかな右カーブを認めた際、右側約二・二メートルの地点を、被告Y1が運転し、後部にAが同乗する被告Y1車両が時速約一〇〇キロメートルで追い抜いていくのに気が付いた。その後、被告Y2は、時速約七〇キロメートルで約四〇・二メートル進行すると、被告Y1車両が、右前方約二・七メートルの地点から、被告Y2車両の進路直前に入ってきて、時速約七〇キロメートルに減速したのを発見したものの、被告Y1車両はこれ以上減速することはないと考え、減速して被告Y1車両との車間距離をとることなく、時速約七〇キロメートルで更に約二二メートル進行を続けた。すると、被告Y1車両が被告Y2車両の左前約一・七メートルの地点において、急に減速したことから、被告Y2は、急ブレーキを掛けたものの、約二五メートル進行した地点において、被告Y2車両の前輪左側が被告Y1車両の後輪右側に接触した。その結果、被告Y1車両は、バランスを崩して本件道路左側のブロック塀に激突し、被告Y1及びAは、路上に投げ出された。
(カ) 本件道路は、東方(同市海神六丁目方面)から西方(同市西船四丁目方面)に通じる国道で、アスファルト舗装され、西方から東方にかけて緩やかな右カーブとなった平たんな道路で、平成一四年五月二〇日午前五時ころの時点で路面は乾燥していた。
本件道路の幅員は、約八・六メートルで、中央には黄色実線が引かれ、片側交互通行に区分されるとともに、両側には、白色実線により幅員約〇・八メートルの外側線が引かれ、更にその外側に幅員約二メートルの歩道が設置されていた。
本件道路は、終日最高速度毎時四〇キロメートル、終日駐車禁止、追越しのための右側部分はみ出し通行禁止の交通規制がされていた。
本件道路は、市街地にあり、交通が頻繁で、西方から東方にかけての見通しは、前後左右いずれも良好であった。なお、本件事故現場付近の状況は、おおむね別紙図面(平成一五年一月三一日付けY2供述調書添付の交通事故現場見取図《甲九》)のとおりである。
(キ) 被告Y1は、本件事故の当時、血液一ミリリットルにつき一・三四ミリグラムに及ぶアルコールを身体に保有していた。また、被告Y2は、平成一四年五月二〇日午前五時過ぎころ、飲酒検知を受けたところ、吸気一リットル当たり約〇・三ミリグラムのアルコールが検出された。
ウ 原告らは、「被告Y4及び被告Y5は、被告Y1の両親であり、本件事故の当時、同被告と同居していたところ、本件事故に先立ち、同被告が飲酒運転を繰り返していることを容易に知り得たはずであり、親権者としてこれを制止すべき注意義務があるのにこれを怠り、漫然と同被告の飲酒運転を黙認していた過失がある」などと主張し、前示のとおり、被告Y4及びY5は、被告Y1の両親であり、本件事故の当時、同被告と同居し、同被告が自宅で飲酒する機会があることは知っていたことが認められる。
しかしながら、他方において、同被告は、飲酒運転を両親に隠れてしていたこと、飲酒運転をした回数は本件事故までに一〇回程度にすぎず、本件事故の前に飲酒運転を理由として警察に捕まったことはないこと、本件事故の前に起こした人身事故の際には飲酒はしていなかったこと、夜遅くや早朝に自動二輪車で帰ったり外出する際には自宅から離れた場所で乗り降りしていたことも併せ認められ、これに同被告の年齢が成年に近いことも考慮すると、被告Y4及び被告Y5が被告Y1の両親であり、同被告と同居し、同被告が飲酒する機会があることを知っていたことから、直ちに同被告が飲酒運転を繰り返していることを容易に知り得たとまではいえず、原告らの前示主張は、その前提を欠いており、理由がないというべきである。
(3) 同ウ(被告Y2)について
同ウのうち、被告Y2が、本件事故の当時、飲酒していたことから、被告Y2車両の運転を差し控えるべき注意義務があるのにこれを怠り、その運転をしたこと、同被告が、本件事故の当時、時速約七〇キロメートルで被告Y2車両を運転していたことは、原告らと被告Y7との間では争いがない。
前示事実関係によると、被告Y2は、本件事故の当時、被告Y1車両が時速約一〇〇キロメートルで追い抜いていくのに気が付いた後、被告Y1車両が、右前方約二・七メートルの地点から、被告Y2車両の進路直前に入ってきて、時速約七〇キロメートルに減速したのを発見したのであるから、被告Y1車両の動静に十分注意するとともに、適宜速度を調節して被告Y1車両との間に十分な車間距離をとるべき義務があるのにこれを怠り、被告Y1車両はこれ以上減速することはないと考え、減速して被告Y1車両との車間距離をとることなく、漫然と同一速度で進行を続けた過失により、本件事故の発生を招いたということができる。
以上によると、被告Y2は、民法七〇九条に基づき、Aらが本件事故により被った損害を賠償すべき責任を負うというべきである。
これに対し、被告Y2は、「本件事故は、被告Y1車両が、進行方向に向かい緩やかに右カーブになっており、かつ、追越しのための右側部分はみ出し通行禁止の場所において、速度を毎時約一〇〇キロメートルに上げて右側から被告Y2車両を追い抜いた直後、急激に減速した結果、発生したのであり、被告Y2にとって、被告Y1車両が追い抜いた直後に減速することは全く予想できず、衝突を避けることはできなかった」などと主張し、被告Y2本人尋問の結果中にもこれに沿うかのような供述部分がある。
しかしながら、前示のとおり、被告Y2は、被告Y1車両が被告Y2車両を追い抜いたのに気が付いた後、約四〇・二メートル進行すると、被告Y1車両が、右前方約二・七メートルの地点から、被告Y2車両の進路直前に入ってきて、減速したのを発見したものの、被告Y1車両はこれ以上減速することはないと考え、更に約二二メートル進行を続けたところ、被告Y1車両が、被告Y2車両の左前約一・七メートルの地点において、急に減速したのであり、被告Y1車両が被告Y2車両の前方に出てから減速するまでに、被告Y1車両の動静に注意し、適宜速度を調節して被告Y1車両との間に車間距離をとることが可能なだけの時間的な余裕が十分にあったということができるから、被告Y2本人の前示供述部分は、採用することができない。
(4) 同エ(被告Y3)及び抗弁(1)(自賠法三条ただし書)について
同エのうち、被告Y2が昭和○年○月○日生まれであること、被告Y3が被告Y2の父であることは、原告らと被告Y2、被告Y3、被告Y6及び被告Y7との間では争いがなく、被告Y3が、本件事故の当時、被告Y2車両を保有し、自己のために運行の用に供していたこと、被告Y3が、本件事故の当時、被告Y2と同居していたことは、原告らと被告Y2、被告Y3及び被告Y6との間では争いがない。
そこで、抗弁(一)について判断すると、被告Y3は、「本件事故は、被告Y1の過失に基づき発生したもので、被告Y2に過失はない」などと主張するが、前示のとおり、本件事故の発生につき被告Y2に過失があるというべきであるから、被告Y3の主張は理由がなく、その余の点について判断するまでもなく、抗弁(一)は理由がない。
したがって、被告Y2は、自賠法三条本文に基づき、Aらが本件事故により被った損害を賠償すべき責任を負うというべきである。
(5) 請求原因(2)オ(被告Y6)について
同オのうち、被告Y6が、被告Y2の母であることは、原告らと被告Y2、被告Y3、被告Y6及び被告Y7との間では争いがなく、被告Y6が、本件事故の当時、被告Y2と同居していたことは、原告らと被告Y2、被告Y3及び被告Y6との間では争いがない。
原告らは、「被告Y6は、被告Y2の母であり、本件事故の当時、同被告と同居していたところ、平成一三年春以降同被告が飲酒運転を繰り返していた上、本件事故の直前に、同被告が酒気帯び状態で自宅に戻った後、被告Y2車両に乗って外出しようとしているのを知ったのであるから、親権者としてこれを制止すべき注意義務があるのにこれを怠り、漫然と同被告の飲酒運転を黙認していた過失がある」などと主張し、前示のとおり、被告Y6は、被告Y2の母であり、本件事故の当時、同被告と同居していたことが認められる。
しかしながら、他方において、前示のとおり、同被告は、飲酒運転を両親に隠れてしていたこと、飲酒運転をした回数は本件事故までに一〇回程度にすぎず、本件事故の前に飲酒運転を理由として警察に捕まったことはないことも併せ認められ、これに同被告の年齢が成年に近いことも考慮すると、被告Y6が被告Y2の母であり、同被告と同居していたことから、直ちに同被告が飲酒運転を繰り返していることを容易に知り得たとまではいえない。
また、被告Y6が、本件事故の直前に、被告Y2が酒気帯び状態で自宅に戻った後、被告Y2車両に乗って外出しようとしているのを知ったことを認めるに足りる証拠はない。
以上によると、原告らの前示主張は、その前提を欠いており、理由がない。
(6) 同カ(被告Y7)について
ア 同(ア)(民法七〇九条)について
同(ア)のうち、被告Y7が、被告Y1及び被告Y2と同じアルバイト先で勤務していた仕事仲間であり、Aの友人であったことは、原告らと被告Y1、被告Y4、被告Y5、被告会社及び被告Y7との間では争いがなく、被告Y7が、本件事故に先立ち、Aが被告Y1及び被告Y2から被告Y1車両又は被告Y2車両に同乗するよう誘われた際、前記被告両名が飲酒をしたことを知っていたことは、原告らと被告Y7との間では争いがない。
原告らは、「被告Y7は、被告Y1及び被告Y2と同じアルバイト先で勤務していた仕事仲間であり、Aの友人であったところ、本件事故に先立ち、Aが被告Y1及び被告Y2から被告Y1車両又は被告Y2車両に同乗するよう誘われた際、前記被告両名が飲酒をしたことを知っていたのであるから、Aに前記車両への乗車を勧めることを差し控え、これを制止すべき注意義務があるのにこれを怠り、漫然とAに前記車両への乗車を勧めた過失がある」などと主張し、前示のとおり、被告Y7は、被告Y1及び被告Y2と同じアルバイト先で勤務していた仕事仲間であり、Aの友人であった(本件事故の当時、被告Y7はAのアパートで同居していた。)こと、被告Y1及び被告Y2が飲酒していることを知っていたことが認められる。
しかしながら、本件事故に先立ち、被告Y7がAに被告Y1車両への乗車を勧めたことを認めるに足りる証拠はなく(前示のとおり、カラオケ店から出たときは、じゃんけんをして後部に乗車する者を決めることはしておらず、Aより先にカラオケ店から出た被告Y7は、被告Y2が既に被告Y2車両に乗っているのを見て、黙ってそのまま被告Y2車両の後部に座ったことから、Aは、空いている被告Y1車両の後部に乗ることとなったにすぎない。)。前示のとおり、Aは、本件事故の当時、既に成年に達し、被告Y7の一歳年少であるにすぎないこと、被告Y7は、カラオケ店に行くことに積極的ではなく、カラオケ店においても被告Y1に飲酒を勧めていないこと、被告Y1は、カラオケ店から出る際、足元がふらつくほどではなく、酔った歩き方ではなかったこと、被告Y7は、カラオケ店から出た際、被告Y1車両及び被告Y2車両でAのアパートまで送るよう頼んでいないことをも考慮すると、被告Y7は、Aに被告Y1車両への乗車を勧めることを差し控え、これを制止すべき法的な注意義務があったとまではいえないというべきである。
以上によると、原告らの前示主張は、その前提を欠いており、理由がない。
イ 同(イ)(民法七一九条二項)について
同(イ)のうち、被告Y7が、被告Y1及び被告Y2とともにカラオケ店において飲酒したことは、原告らと被告Y7との間では争いがない。
原告らは、「被告Y7は、被告Y1及び被告Y2とともにカラオケ店において飲酒し、その席上前記被告両名に酒を勧めた上、カラオケ店を離れる際、酒に酔い正常な運転ができない状態にあった前記被告両名があえて自動二輪車を運転しようとしたのであるから、前記被告両名が運転することを制止すべき注意義務があるのにこれを怠り、その運転を認容した点に過失がある」などと主張し、前示のとおり、被告Y7は、被告Y1及び被告Y2とともにカラオケ店において飲酒したことが認められる。
しかしながら、被告Y7が、カラオケ店において、被告Y1及び被告Y2に飲酒を勧めたことを認めるに足りる証拠はなく、前示のとおり、被告Y1及び被告Y2は、被告Y7の二歳年少であるにすぎず、本件事故の当時、成年に近い年齢に達していたこと、被告Y7は、カラオケ店に行くことに積極的ではなく、カラオケ店から出た際、被告Y1車両及び被告Y2車両でAのアパートまで送るよう頼んでいないこと、カラオケ店を出る際、被告Y1も被告Y2も、足元がふらつくほどではなく、酔った歩き方ではなかったことをも考慮すると、被告Y7は、被告Y1及び被告Y2が運転することを制止すべき法的な注意義務があったとまではいえないというべきである。
以上によると、原告らの前示主張は、その前提を欠いており、理由がない。
(7) 同キ(共同不法行為)について
前示したところによると、被告Y1及び被告Y2は、客観的にみて時間的、場所的、内容的に競合した複数の過失によって本件事故を発生させ、Aに不可分の損害を与えたということができるから、民法七一九条一項前段に基づき、Aらが本件事故により被った損害を連帯して賠償すべき責任を負うというべきである。なお、被告Y3は、自賠法三条本文に基づき、Aらが本件事故により被った損害を賠償すべき責任を負うにすぎず、民法七一九条一項前段に基づき、被告Y1及び被告Y2と連帯して損害賠償責任を負うとは解されない。
(8) 同ク(被告会社)について
同クの事実は、原告らと被告会社との間に争いがない。
三 請求原因(3)(損害等)について(その一)
(1) 同ア(Aの損害)について
ア 入院治療費 三七万二一〇〇円
請求原因(3)ア(ア)(入院治療費)の事実は、原告らと被告Y1、被告会社、被告Y2及び被告Y3との間では争いがない。
イ 逸失利益 五一四五万四六四一円
請求原因(3)ア(イ)(逸失利益)のうち、平成一四年賃金センサス(男性労働者・大卒)による平均賃金が六七四万四七〇〇円であること、Aが、本件事故の当時、独身であったから、その生活費控除率は五〇パーセントとなることは、原告らと被告Y1及び被告会社との間では争いがない。
前示事実関係によると、Aは、昭和○年○月○日に出生し、本件事故の当時、大学二年に在籍する満二〇歳の男子であり、本件事故に遭わなければ、大学卒業後の二三歳(大学卒業は平成一七年三月の見込み)から六七歳まで就労可能であったというべきであるから、本件事故と相当因果関係のある逸失利益は、賃金センサス平成一四年第一巻第一表男性労働者大卒全年齢平均賃金を基礎とし、生活費控除率を五割とし、中間利息をライプニッツ方式で控除して(二〇歳から六七歳までの四七年に対応するライプニッツ係数から、二〇歳から二三歳までの三年に対応するライプニッツ係数を差し引く。)算出すると、次の計算式のとおり五一四五万四六四一円となる。
なお、原告らは、「男性の平均初婚年齢である二九・〇歳後の三〇歳までには婚姻する可能性があるので、三〇歳となる平成二四年一月以降の生活費控除率は、四〇パーセントとすべきである。」と主張するが、原告らも自認するとおりあくまでその可能性があるにとどまるから、採用することができない。また、交通事故による被害者の将来の逸失利益を現在価額に換算するために控除すべき中間利息は、民法所定の年五分の割合によるべきである(最高裁平成一六年(受)第一八八八号平成一七年六月一四日第三小法廷判決・民集五九巻五号九八三頁参照)。
674万4700円×(1-0.5)×(17.9810-2.7232)≒5145万4641円
ウ 慰謝料 一八〇〇万〇〇〇〇円
請求原因(3)ア(ウ)(慰謝料)のうち、Aが精神的苦痛を被ったことは、原告らと被告Y1及び被告会社との間では争いがないところ、Aの死亡による慰謝料は、Aの年齢、家族構成、本件事故の態様その他本件に現れた一切の事情を考慮すると、一八〇〇万円が相当である。
エ 葬儀費用 一五〇万〇〇〇〇円
証拠(甲一八ないし三〇)によると、Aの葬儀費用として一五〇万円を超える支出がされたことが認められ、本件事故と相当因果関係のある損害としては一五〇万円を認めるのが相当である。
(2) 同イ(相続)について
同イの事実は、当事者間に争いがない。
(3) 同ウ(原告らの損害)(ア)(慰謝料)について
請求原因(3)ウ(ア)のうち、原告らが精神的苦痛を被ったことは、原告らと被告Y1及び被告会社との間では争いがないところ、前示事実関係その他本件に現れた一切の事情を考慮すると、本件事故によりAが死亡したことに対する原告らの精神的苦痛を慰謝するには各二〇〇万円が相当である。
(4) 小計 原告X1につき三七六六万三三七一円、原告X2につき三七六六万三三七〇円
以上の原告らの損害額を合計すると、原告X1につき三七六六万三三七一円、原告X2につき三七六六万三三七〇円となる(割り切れない一円は原告X1に割り振った。)。
四 抗弁(2)(過失相殺)について
抗弁(2)のうち、本件事故が、Aが、被告Y1、被告Y2及び被告Y7とともに、カラオケ店で飲酒した上、午前四時ころ、自宅に送ってもらうために被告Y1車両に同乗した際に発生したものであることは、原告らと被告Y1、被告会社、被告Y2及び被告Y3との間に争いがない。
前示事実関係によると、Aは、被告Y1、被告Y2及び被告Y7とともに、カラオケ店で飲酒し、被告Y1が飲酒によるアルコールの影響を受けている状態にあることを認識しながら、被告Y1が運転する被告Y1車両に同乗したということができるから、この点をもって損害額を減じる事由とすることが損害の公平な分担という観点からみて相当であるところ、前示のとおり、Aは、カラオケ店に行くことに積極的ではなく、カラオケ店において被告Y1に飲酒を勧めていないこと、カラオケ店から出た際、被告Y1車両又は被告Y2車両でAのアパートまで送るよう頼んでいないこと、カラオケ店を出る際、被告Y1も被告Y2も、足元がふらつくほどではなく、酔った歩き方ではなかったことを考慮すると、損害額の一割を減じることが相当というべきである。
以上によると、減額後の損害額は、原告らにつき各三三八九万七〇三三円となる。
五 請求原因(3)について(その二)―弁護士費用
弁論の全趣旨によると、原告らは、本件訴訟の提起及び追行を原告ら訴訟代理人に委任し、相当額の費用及び報酬の支払を約束していることが認められるところ、本件事案の性質、審理の経過、認容額その他諸般の事情を考慮すると、原告らが本件事故と相当因果関係のある損害として賠償を求めることができる弁護士費用相当額は、各三三八万円が相当である。
なお、原告らは、Aの損害としても弁護士費用が発生した旨主張するが、死亡したAが本件訴訟の提起及び追行を委任することはあり得ず、失当である。
六 結論
よって、原告らの請求は、<1>被告Y1、被告Y2及び被告Y3に対し、連帯して、原告ら各自につき各三七二七万七〇三三円及びこれに対する不法行為の日である平成一四年五月二〇日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を、<2>被告会社に対し、被告Y1に対する<1>の判決が確定したことを条件として、原告ら各自につき前示損害から自賠責保険の保険金一五〇〇万円を控除した残額二二二七万円七〇三三円及びこれに対する判決確定の日の翌日から支払済みまで同法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払をそれぞれ求める限度においていずれも理由があるから認容し、その余はいずれも失当であるから棄却し、訴訟費用の負担につき民訴法六四条本文、六一条、六五条一項本文を、仮執行の宣言につき同法二五九条一項をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官 小林邦夫)
交通事故現場見取図
<省略>