東京地方裁判所 平成16年(行ウ)248号 判決 2005年12月07日
原告 甲
上記訴訟代理人弁護士 村重慶一
上記補佐人税理士 吉川弘人
被告 大森税務署長
山端武信
上記指定代理人 石川貴司
同 渡邉泰雄
同 横島淳子
同 高梨武光同 實川嘉晴
同 為我井利昌
主文
1 本件訴えのうち、原告が、昭和63年2月7日相続開始に係る相続税の更正請求に対し被告が平成14年11月27日付でした、乙に係る相続税額を1814万7900円(原告の法定相続分相当額604万9300円)とする更正処分の取消しを求める訴えを却下する。
2 原告のその余の請求を棄却する。
3 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1請求
1 昭和63年2月7日相続開始に係る相続税の更正請求に対し被告が平成14年11月27日付でした、乙に係る相続税額を1814万7900円(原告の法定相続分相当額604万9300円)とする更正処分を取り消す。
2 原告の被告に対する平成2年3月4日相続開始に係る相続税の更正請求に対し、被告が平成14年11月27日付でした更正すべき理由がない旨の通知処分を取り消す。
第2事案の概要
1 本件の外形的事実関係は、次のとおりである(いずれも当事者間に争いがない。)。
(1) 原告の母である丙(以下「亡丙」という。)は、昭和63年2月7日に死亡した(以下、亡丙の死亡により開始した相続を「第一次相続」という。)。第一次相続に係る亡丙の共同相続人は、亡丙の配偶者である亡乙(以下「亡乙」という。)、亡丙と亡乙の子である原告及び丁(以下「丁」という。)並びに亡戊(亡丙と亡乙の子)の代襲相続人であるA及びB(以下、Aと併せて「A兄弟」ということがある。)の5人であった。
(2) 亡乙は、平成2年3月4日に死亡した(以下、亡乙の死亡により開始した相続を「第二次相続」という。)。第二次相続に係る共同相続人は、原告、丁及びA兄弟の4人であった。
(3) 第一次相続及び第二次相続に係る遺産分割については、共同相続人間で争いがあり、東京家庭裁判所に対して遺産分割調停の申立てがされ、この調停はその後審判に移行した。
東京家庭裁判所は、平成10年2月27日、上記遺産分割申立事件について審判をし、同年3月31日上記審判を更正した(以下、更正後の審判を「本件審判」といい、本件審判に基づく相続財産の価額を「本件審判価額」という。)。原告は、本件審判について東京高等裁判所に即時抗告をしたところ、同裁判所は、平成13年7月17日、
上記抗告を棄却する旨の決定をし、更に、同年8月17日、上記決定に対する抗告許可の申立てを許可しない旨の決定をし、本件審判は確定した。
(4) 第一次相続に係る課税の経緯
ア(ア) 原告は、昭和63年8月8日、第一次相続により取得した財産について、他の共同相続人との間で遺産分割が行われていなかったため、相続税法(平成4年法律第16号による改正前のもの。以下同じ。)55条に基づき、法定相続分の割合に従って当該財産を取得したものとして、被告に対し、相続税の課税価格を6297万4000円、納付すべき税額を2176万4500円と記載した申告書(以下「第一次相続税申告書」という。)を提出した。
(イ) 亡乙は、前同日、原告と同様、相続税法55条に基づき、被告に対し、相続税の課税価格を1億8892万4000円、納付すべき税額を6529万3600円と記載した第一次相続税申告書を提出した。
イ 原告は、平成元年5月1日、所得税法等の一部を改正する法律(昭和63年法律第109号)による相続税法及び租税特別措置法の改正(遺産に係る基礎控除額の改正)が行われたことを理由として、被告に対し、相続税の課税価格は前記ア(ア)と同額、納付すべき税額を1593万3700円とする旨の更正の請求をした。
亡乙も、前同日、原告と同様の理由に基づき、被告に対し、相続税の課税価格を前記ア(イ)と同額、納付すべき税額を4780万1100円とする旨の更正の請求をした。
ウ 上記各更正の請求を受けた被告は、原告に対し、上記各更正の請求の内容と同内容の減額更正をした。
(5) 第二次相続に関する課税の経緯
原告は、平成2年9月4日、第二次相続により取得した財産について、他の共同相続人らとの間で遺産分割が行われていなかったため、相続税法55条に基づき、法定相続分の割合に従って当該財産を取得したものとして、被告に対し、相続税の課税価格を3億6059万1000円、納付すべき税額を1億4870万8300円と記載した申告書(以下「第二次相続税申告書」という。)を提出した。
(6) 修正申告
原告は、平成3年11月29日、第一次相続に係る相続税の修正申告書(以下「第一次相続税修正申告書」という。)及び第二次相続に係る相続税の修正申告書(以下「第二次相続税修正申告書」という。)を被告に提出した。
なお、第一次相続税修正申告書の亡乙の欄には「乙相続人代表甲」と記載され、押印がされており、第一次相続の亡乙の相続税については、原告が相続人代表として修正申告を行った。
(7) 更正の請求
原告は、被告に対し、平成13年12月14日、第一次相続及び第二次相続に係る遺産分割が成立したとして、相続税法32条1号に基づき、第一次相続に係る自らの相続税につき、相続税の課税価格を3415万6485円、納付すべき税額を1190万9552円とする旨の更正の請求をするとともに、第二次相続に係る相続税につき、相続税の課税価格を1億9084万9404円、納付すべき税額を7480万0163円とする旨の更正の請求をした。
なお、第一次相続に係る亡乙の相続税についても相続税法32条1号に基づく更正の請求があったか否かについては、後記4(1)のとおり、当事者間に争いがある。
(8) 更正処分等
ア 被告は、平成14年11月27日付けで、原告に対し、第一次相続に係る原告の相続税につき、相続税の課税価格を4366万2000円、納付すべき税額を1110万1600円とする減額更正処分をし、更に、第二次相続に係る原告の相続税に関する更正の請求について、更正すべき理由がない旨の通知処分(以下「本件通知処分」という。)をした。
イ また、被告は、第一次相続の共同相続人である亡乙の相続税についても、前同日付けで、その課税価格を7134万円(原告承継分2378万円)、納税すべき税額を1814万7900円(原告承継分604万9300円)とする減額更正処分(以下「本件更正処分」という。)をした。
(9) なお、以上の課税処分等の経緯については、別紙1ないし3記載のとおりである。
2 本件は、原告が、本件更正処分には、亡乙が本件審判前に死亡したため、亡丙からその財産を現実に承継した事実がないにもかかわらず、承継したものとして相続税額を算定した違法があるなどと主張して、本件更正処分の取消しを求めるとともに、本件通知処分には、相続財産の「時価」の評価に当たり遺産分割時ではなく相続開始時を基準時とした誤りがあるなどと主張して、その取消しを求めたところ、被告が、本件更正処分に係る訴えは更正の請求なくして提起されたものであるから訴えの利益がない旨主張して却下を求め、また、相続財産の「時価」は相続開始時と解すべきであるから、本件通知処分は適法であるなどと主張して争う事案である。
3 法令等の定め
(1) 更正の請求に関する定め
相続税法32条(更正の請求の特則)は、相続税又は贈与税について申告書を提出した者又は決定を受けた者は、同条各号のいずれかに該当する事由により当該申告又は決定に係る課税価格及び相続税額又は贈与税額が過大となったときは、当該各号に規定する事由が生じたことを知った日の翌日から4月以内に限り、納税地の所轄税務署長に対し、その課税価格及び相続税額又は贈与税額につき国税通則法第23条第1項(更正の請求)の規定による更正の請求をすることができると定め、同条1号は、更正の請求ができる場合として、同法第55条の規定により分割されていない財産について民法(第904条の2(寄与分)を除く。)の規定による相続分又は包括遺贈の割合に従つて課税価格が計算されていた場合において、その後当該財産の分割が行われ、共同相続人又は包括受遺者が当該分割により取得した財産に係る課税価格が当該相続分又は包括遺贈の割合に従つて計算された課税価格と異なることとなったことを掲げている。
また、国税通則法23条3項は、更正の請求をしようとする者は、その請求に係る更正前の課税標準等又は税額等、当該更正後の課税標準等又は税額等、その更正の請求をする理由、当該請求をするに至つた事情の詳細その他参考となるべき事項を記載した更正請求書を税務署長に提出しなければならないと定めている。
そして、相続税法35条3項1号は、税務署長は、第32条第1号から第5号までの規定による更正の請求に基づき更正をした場合において、当該請求をした者の被相続人から相続又は遺贈により財産を取得した他の者が第27条若しくは第29条の規定による申告書(これらの申告書に係る期限後申告書及び修正申告書を含む。)を提出し、又は相続税について決定を受けた者である場合において、当該申告又は決定に係る課税価格又は相続税類(当該申告又は決定があつた後修正申告書の提出又は更正があった場合には、当該修正申告又は更正に係る課税価格又は相続税額)が当該請求に基づく更正の基因となつた事実を基礎として計算した場合におけるその者に係る課税価格又は相続税額と異なることとなるときは、当該事由に基づき、その者に係る課税価格又は相続税額の更正又は決定をする旨を定めている。
(2) 更正通知書の記載事項に関する定め
国税通則法28条2項は、更正通知書の必要的記載事項について、その更正前及び更正後の課税標準等及び税額等(同項1号、2号)、納付すべき税額又は還付金の増減額(同項3号イ、ロ、ハ、ニ、ホ)を記載しなければならないと定め、同条3項は、その更正が同法27条の調査(国税庁又は国税局の職員の調査)に基づくものであるときは、その旨を附記しなければならないと定めている。
(3) 相続財産の評価に関する定め等
相続税法22条(評価の原則)は、相続若しくは遺贈又は贈与により取得した財産の価額は、当該財産の取得の時における時価による旨を定め、相続税法基本通達1の3・1の4共-8(1)は、相続又は遺贈による財産取得の時期は、相続の開始の時によるものと定めている。
また、財産評価基本通達1(評価の原則)の(2)は、時価の意義として、財産の価額は、時価によるものとし、時価とは、課税時期(相続、遺贈又は贈与により財産を取得した日又は相続税法の規定により相続・遺贈又は贈与により取得したものとみなされた財産のその取得の日をいう。)において、それぞれの財産の現況に応じ、不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額をいい、その価額は、この通達の定めによって評価した価額によると定めている。
なお、相続税法55条は、相続又は包括遺贈により取得した財産に係る相続税について申告書を提出する場合又は当該財産に係る相続税について更正若しくは決定をする場合において、当該相続又は包括遺贈により取得した財産の全部又は一部が共同相続人又は包括受遺者によってまだ分割されていないときは、その分割されていない財産については、各共同相続人又は包括受遺者が民法(904条の2を除く。)の規定による相続分又は包括遺贈の割合に従って当該財産を取得したものとしてその課税価格を計算する旨定めている。
4 本件の争点及び当事者の主張
本件通知処分の適法性に関する被告の主張は、別紙4記載のとおりであり、下記の争点に関する部分を除き当事者間に争いがない。
本件において争われているのは、①本件更正処分の取消請求の適法性、すなわち、第一次相続に係る亡乙分の相続税について、相続税法32条1号に基づく更正請求があったか否か(争点1)、②亡乙が相続により亡丙の財産を取得したか否か(争点2)、③本件更正処分及び本件通知処分に理由附記の違法があるか否か(争点3)及び④本件通知処分と相続税法22条所定の「時価」の意義(争点4)の4点である。
そして、上記の争点に関する当事者の主張の要旨は次のとおりである。
(1) 争点1(本件更正処分の取消請求の適法性)について
(被告の主張)
以下のとおり、第一次相続に係る亡乙の相続税については、相続税法32条1号に基づく更正の請求がされていないことは明らかであり、納税者である原告の側からもはやこれを是正する方法はなく、その納税額は本件更正処分により確定しているというべきであるから、抗告訴訟によってその救済を求めることは許されず、本件更正処分の取消請求は不適法である。
ア 相続税法32条1号は、同法55条の規定により分割されていない財産について
民法の規定による法定相続分に従って課税価格が計算されていた場合において、その後当該財産の分割が行われ、共同相続人又は包括受遺者が当該分割により取得した財産に係る課税価格が当該相続分又は包括遺贈の割合に従って計算された課税価格と異なることとなったときは、当該事由を知った日の翌日から4月以内に限り、国税通則法23条1項の規定による更正の請求をすることができるとしている。そして、国税通則法23条3項は、更正の請求をしようとする者は、その請求に係る更正前の課税標準等又は税額等、当該更正後の課税標準等又は税額等、その更正の請求をする理由、当該請求をするに至った事情の詳細その他参考となるべき事項を記載した更正請求書を税務署長に提出しなければならないとしている。更に、相続税法35条3項1号は、税務署長は、同法32条1号から4号までの規定による更正の請求に基づき更正をした場合において、当該請求をした者の被相続人から相続又は遺贈により財産を取得した他の者につき、相続税の申告をした者の当該申告に係る課税価格又は相続税額が当該更正の請求に基づく更正の基因となった事実を基礎として計算した場合におけるその者に係る課税価格又は相続税額と異なることとなった場合には、これに基づき、その者に係る課税価格又は相続税額の更正又は決定をするとしている。
このように、相続税法が、納税者が後発的事由による更正の請求ができるものとして、その救済方法を定めている以上、このような場合における納税者の救済は専ら上記更正の請求によって図られるべきであって、一般的行政救済制度としての抗告訴訟によってその救済を求めることは許されず、かかる訴えは訴えの利益を欠くというべきである。
イ 原告が平成13年12月14日に提出した更正請求書(2通)には、原告が取消を求める第一次相続に係る亡乙の相続税についての「課税標準等又は税額等」の記載はない。また、上記更正請求書の記載によれば、上記更正請求の請求人が原告であることは明白であり、「亡丙相続人乙(同相続人甲)」といった記載は一切見当たらない。
したがって、上記更正請求書によれば、上記更正請求がいずれも第一次相続及び第二次相続に係る原告自身の相続税について更正の請求をしたことは明らかであり、第一次相続に係る亡乙の相続税について、相続税法32条に基づく更正の請求がされていると解する余地はない。
(原告の主張)
被告の主張は争う。被告は、第一次相続の亡乙に係る相続税の修正申告について、原告が相続人の代表として修正申告をしたという取扱いをしていること、相続税法35条3項に基づき、亡乙に係る課税価格又は相続税額を減額更正をしたこと等の事情にかんがみれば、第一次相続に係る亡乙の相続税についても、相続税法32条1号に基づく更正の請求があったと解するのが相当である。
(2) 争点2(亡乙が相続により亡丙の財産を取得したか否か)について
(原告の主張)
亡乙は、本件審判前の平成2年3月4日に死亡しており、亡丙の遺産分割審判に関与していないから、亡乙が亡丙の財産を取得した事実はない。そして、相続税法は取得課税であるから、取得のない者に課税することはできないはずであり、第一次相続に関し亡乙に相続税が発生する余地はない。したがって、亡乙が第一次相続において亡丙の財産を承継したことを前提として亡乙に相続税を課税した本件更正処分は違法である。
(被告の主張)
亡乙は、被相続人亡丙の死亡時の配偶者であり、本件審判が認定しているとおり、亡丙の共同相続人のうちの1人である。そして、本件審判によれば、亡丙の現金等は、亡乙を含む第一次相続の共同相続人間で被相続人亡丙の相続開始時に分割されたと同視すると判示されているから、亡丙の現金等は、亡乙が本件審判時に死亡していたか否かに関係なく、亡乙の生存中に分割され亡乙がこれを取得するに至ったものと扱われる。したがって、亡乙は、本件審判による遺産分割時に死亡していたか否かに関わらず、亡丙の現金等を取得するのであるから、原告の主張が失当であることは明らかである。
(3) 争点3(本件更正処分及び本件通知処分に理由附記の違法があるか否か)について
(原告の主張)
行政手続法14条1項は、不利益処分の理由の提示を規定している。理由附記の趣旨は、処分庁の判断の慎重・合理性を担保して、その恣意を抑制するとともに、処分の理由を相手方に知らせて不服申立てに便宜を与えるためであるから、それに必要な程度の記載を欠くときは、理由附記の要件を満たしているとはいえない。そして、同法1条1項の定めにかんがみれば、理由附記の規定がある所得税や法人税のみならず、明文の規定のない相続税についても、理由附記の必要があるというべきである。殊に、本件においては、亡乙が本件審判前の平成2年3月4日に死亡し、亡丙の遣産分割審判に関与していないから、亡乙が現実に相続財産を取得した事実がないにもかかわらず、何故に第一次相続について財産を取得したものとして相続税を納付すべきとされたのかの理由が不明であり、理由を附記する必要があったというべきである。
しかし、本件更正処分に係る更正通知書にはこの点に関する記載がないし、本件通知処分についても不利益処分としては不十分な記載しかない。したがって、本件更正処分及び本件通知処分は理由附記の違法がある。
(被告の主張)
更正通知書の記載事項についての一般原則を定めている国税通則法28条2項は、更正通知書の記載事項として更正の理由を掲げていない。他方、所得税法155条2項及び法人税法130条2項は、それぞれ、青色申告書に係る更正について更正通知書に更正の理由を附記すべき旨を定めているが、これは、更正処分庁の判断の慎重、合理性を担保してその恣意を抑制するとともに、更正の理由を相手方に知らせて不服申立ての便宜を与える趣旨から、国税通則法28条2項の例外規定として特に定められたものである。
これに対し、相続税法には、更正通知書に更正の理由を附記すべき旨の定めはなく、相続税に係る更正については、青色申告書に係る更正と異なり、特に更正の理由の附記を義務付けるべき事情もない。したがって、相続税の更正通知書に更正の理由を附記する必要はなく、その附記がなかったとしても、これをもって当該更正処分が違法となるものではないから、原告の主張は失当である。
(4) 争点4(本件通知処分と相続税法22条所定の「時価」)について
(原告の主張)
本件通知処分は、本件審判により原告が取得する旨定められた①東京都大田区所在の土地(別表2-4「土地の明細」順号1。以下「本件土地」という。)、及び②ゴルフ会員権(C倶楽部及びDクラブ。別表2-9「その他の財産の明細」順号1及び3。以下「本件ゴルフ会員権」という。)の坪価について、いずれも遺産分割時ではなく亡乙の相続が開始した平成2年当時の時価で算定しているが、誤りである。相続税の本質は取得課税であり、遺産分割があった場合には審判で決着を見た価額を課税要件事実と認定して各相続人の相続税額を計算するのであるから、相続税法22条にいう財産の取得の時における「時価」は、財産の取得時、すなわち、遺産分割時における客観的交換価値と解すべきことは明らかである。
被告は、相続財産の基準時について、遺産分割の遡及効(民法909条本文)を根拠として相続開始時とすべき旨主張するが、このような解釈や相続税評価通達による運用の実態は、バブル崩壊以降の経済情勢等に照らし、常に納税者側に不利に働いており、実質的に正当性を失ったというべきである。現に、本件においても、亡乙らの遺産を巡る紛争は、十余年に渡り、家庭裁判所における審判によってようやく決着をみた。原告が遺産分割により取得した本件土地の公示価格は、いわゆるバブル価格を反映したものであり、この間、遺産分割時における本件土地及び本件ゴルフ会員権の価額は、相続開始時と比較して、3分の1程度まで下落した。もともと相続税事案は一生に一度発生するに過ぎないから、大量取引という理由に基づく全国一律の路線価の適用になじむものではなく、類似取引資料に基づいて個別的に算定されるべきである。相続税法22条の「時価」の解釈に当たっては、こうした相続税の特殊性を十分考慮すべきであって、被告が主張する相続開始時の時価に基づく運用は、租税法律主義の要諦ともいうべき課税要件明確性と予測性に反する結果となり、公平課税の原則、法の下の平等の原則に違反し、財産権の侵害という憲法侵害の結果をも招来する。
(被告の主張)
相続により取得した財産の評価の時点は、当該財産の取得の時(相続税法22条)であるところ、相続は被相続人の死亡によって開始し(民法882条)、相続人は相続開始時から被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継するから(民法896条)、相続により取得した財産の評価の時点は、相続開始時、すなわち、被相続人の死亡の日である。
原告は、本件における遺産分割の審判時を基準とすべきである旨主張する。しかしながら、民法909条本文は、遺産分割は相続開始の時に遡って効力が生ずるとし、遺産分割を経た場合であっても、各相続人は相続開始時に被相続人から直接相続財産を取得したことになるのであって、遺産分割による財産の取得時は、遺産分割の時点ではなく相続開始の時、すなわち、被相続人の死亡の日である。また、相続税法は、共同相続人らが遺産分割をして遺産を相続した場合、家庭裁判所において遺産を遺産分割時の実勢価格によって評価し、それに基づいて審判による遺産分割を行った場合について、何らの除外規定を設けていない。
そうすると、相続税法は、上記のような場合であっても、同法22条に基づき、各相続人が遺産分割により相続した財産の相続開始時における時価を相続税の課税価格とするものとみるほかなく、原告の主張は失当である。
第3争点に対する判断
1 争点1について
まず、被告は、亡乙の相続税申告については、更正の請求がされていないところ、納税申告制度に基づいて納税申告がされた場合において、納税額の是正を図るためには、専ら更正の請求という手続によるべきであり(更正の請求の排他的管轄)、これを経ないまま納税額を争うことは許されないものというべきであるから、本件更正処分の取消しを求める訴えは、更正の請求の排他的管轄に反するという意味で不適法であると主張するので、この点について判断する。
(1) まず、申告納税制度と更正の請求との関係等に関する国税通則法、相続税法の定めは次のとおりとなっている。
ア 国税通則法は、課税関係に関する事実を最もよく熟知しているのは納税者自身であることから、納付すべき税額が納税者のする申告により確定することを原則とする申告納税方式を採用しているが(同法16条1項1号)、納税者が自らの申告により確定させた税額が過大であることなどを法定納期限後に気づいた場合には、当該申告書に係る国税の法定申告期限から1年以内に限り、税務署長に対し更正の請求ができる旨を定めることにより、真実過大な納税申告をした納税者の救済を図っている(同法23条1項)。
イ また、相続税法32条は、国税通則法23条の特則として、相続税又は贈与税の納税申告書を提出した者等に対し、未分割遺産の分割が民法の規定による相続分又は包括遺贈の割合に従って行われなかったこと等の特定の事由によりその申告等に係る課税価格、相続税額又は贈与税額が過大となったときは、その事由が生じたことを知った日の翌日から4月以内に限り更正の請求をすることができる旨を定めている。
ウ 更正の請求をしようとする者は、その請求に係る更正前の課税標準等又は税額等、当該更正後の課税標準等又は税額等、その更正の請求をする理由、当該請求をするに至った事情の詳細その他参考となるべき事項を記載した更正請求書を税務署長に提出しなければならず(国税通則法23条3項)、税務署長は、更正の請求があった場合には、その請求に係る課税標準等又は税額等について調査し、更正をし、又は更正をすべき理由がない旨をその請求をした者に通知する(同条4項)。
エ また、納税者は、更正をすべき理由がない旨の税務署長の処分に対し不服がある場合には、処分があったことを知った日(処分に係る通知を受けた場合には、その通知を受けた日)の翌日から起算して2月以内に、税務署長に対する異議申立てをすることができ(国税通則法75条1項1号、77条1項)、この異議申立てについての決定があった場合において、当該異議申立てをした者が当該決定をした後の処分になお不服があるときは、その者は、異議決定書の謄本の送達があった日の翌日から起算して1月以内に、国税不服審判所長に対して審査請求をすることができる(同法75条3項、77条2項)。
そして、更正をすべき理由がない旨の税務署長の処分の取消しの訴えは、上記審査請求に対する裁決を経た後でなければ、提起することができない(同法115条1項本文)。
(2) 以上のとおり、国税通則法及び相続税法は、納税者が自己の申告に係る税額が過大であってその是正を図る必要がある場合には、更正の請求によるべき旨を定めており、更正の請求ができる期間についても短期の期間制限を設けることによって、納税者の権利救済を図るとともに、課税法律関係の安定を図っているということができる。
また、更正の請求に対し請求の理由がない旨の税務署長の通知処分があった場合には、異議申立て及び審査請求という二段階の不服申立てを経た上ではじめて訴訟により争うことができるものとされている。
そうすると、国税通則法23条1項及び相続税法32条は、いわゆる手続の排他性(更正の請求の排他的管轄)を定めた規定と解するのが相当であって、相続税の納税申告書を提出した者としては、自らの申告に係る税額が過大であることを理由にその是正を図るためには、専ら更正の請求によるべきであり、この手続を経ないまま、申告納税額が過大であるとの主張をすることは許されないものというべきである。
(3) そこで、亡乙の相続税申告について更正の請求がされたと認められるかどうか(別の言い方をすると、本件更正処分は、相続税法32条1号所定の更正の請求に基づくものであったか否か。)について検討する。
ア 前記前提となる事実に、証拠(甲1ないし4、乙6、9)及び弁論の全趣旨を総合すると、次の事実を認めることができる。
(ア) 原告は、被告に対し、昭和63年8月8日、第一次相続に関する申告書(第一次相続申告書)を提出した。第一次相続申告書には、課税価格の計算として、取得財産の価額が合計3億8187万0419円(うち原告分6364万5069円)、課税価格が合計3億7784万6000円(うち原告分6297万4000円)であること、相続税の総額が1億3058万7200円(うち原告分2176万4577円)であること等の記載がされている。
(イ) 第一次相続に関し、原告が被告に対し平成3年11月29日に提出した第一次相続修正申告書には、「乙相続人代表甲」と記載された上、押印されており、第一次相続における亡乙の相続税については、亡乙の死亡後、原告が亡乙の相続人代表として修正申告を行ったものである。
(ウ) 原告は、大森税務署長に対し、平成13年12月14日、相続税の更正の請求書を2通提出した。
(エ) 原告が提出した請求書のうち1通(甲2)には、請求をする者として原告の氏名等、被相続人として亡乙の氏名等、相続の年月日として亡乙の死亡の日である平成2年3月4日がそれぞれ記載されているほか、更正の請求をする理由として、「遺産分割の審判が確定し、各相続人が均等に相続することとなったが、分割遺産の価額が均等となっておらず、不衡平を生じているため、分割された遺産の価額に応じた相続税となるように更正を求める。」との記載がある。
(オ) また、原告が提出したもう1通の請求書(甲1)には、請求をする者として原告の氏名等、被相続人として亡丙の氏名等、相続の年月日として亡丙の死亡の日である昭和63年2月7日をそれぞれ記載した上、更正の請求をした理由として、「被相続人乙の更正の請求書に記載した内容と同じ。」と記載されている。しかし上記請求書における具体的な課税価格、税額等の記載をみると、申告(更正・決定)額欄にはいずれも第一次相続申告書における原告分のみに相当する金額(上記(ア)参照)が記載されており、第一次相続に係る亡乙の相続税に関する課税標準等又は税額等の具体的記載はない。そして、この請求書とは別に、亡乙名義の更正の請求書が提出されたことを認めるに足りる証拠はない(原告も、この点に関しては何ら主張をしていない。)。
(カ) 大森税務署長は、第一次相続に関し、平成14年11月27日付けで、亡乙の相続人としての原告及び原告自身に対し、減額更正処分をした。前者の更正処分(本件更正処分)の通知(甲4)には、通知に係る処分の理由として、「遺産分割審判が確定し、乙殿(平成2年3月4日死亡)に係る納付税額が減少したため」との理由が附された上で、本税額が3024万6800円減少すること等の記載がある。また、後者の通知(甲3)には、通知に係る処分の理由として、「遺産分割審判が確定し納付税額が減少したため」との理由が附された上で、本税額が503万円減少すること等の記載がある。
イ 前記認定の事実によれば、原告は、大森税務署長に対し、平成13年12月14日、2通の更正請求書(甲1、2)を提出しているが、甲1の請求書の記載内容をみると、原告がした第一次相続修正申告書と異なり、原告が第一次相続における亡乙の相続税に関し相続人を代表して申告する旨が明記されておらず、かえって、原告が自らの相続税に関し更正の請求をしたことは明らかというべきである。上記請求書における具体的な課税価格、税額等の記載をみても、上記請求書には、第一次相続に係る亡乙の相続税に関する課税標準等又は税額など、国税通則法23条3項が請求書に記載すべき事項として定める事項に関する具体的記載はなく、かえって、上記ア(オ)記載のとおり、亡乙の相続税については、原告本人のそれとは別個のものとして、別に更正の請求をすることが予定されていたものというべきであるから、甲1の更正請求書は、相続税法32条1号に基づき、あくまで第一次相続に係る原告自身の相続税に関し提出されたものと解すべきであって、上記請求書に亡乙の相続税についても更正を求める趣旨が含まれていたと解することはできない(すなわち、甲1の更正請求書をもって、原告が、亡乙の相続人を代表して、亡乙の相続税について更正の請求をしたと認めることはできないことはもとより、亡乙の修正申告に係る相続税納付義務のうち、原告の相続税に相当する部分は、国税通則法5条によって原告に承継されたことになるから、この部分については、原告固有の納税義務の問題として、原告名義で更正の請求をすることができるという考え方があり得るとしても、本件については、上記承継分についての更正の請求がされたと認めることはできないものといわざるを得ないのである。)。また、甲2の更正請求書が第二次相続に係る原告の相続税につき相続税法32条1号に基づく更正の請求をしたものであることは、その記載内容に照らし明らかというべきである。
ところで、被告が、平成14年11月27日付で、第一次相続に係る亡乙の相続税につき、課税価格を7134万円(原告承継分2378万円)、相続税額を1814万7900円(原告承継分604万9300円)とする本件更正処分をしていることは前認定のとおりであるため、本件更正処分の位置づけが問題となるが、原告が第一次相続に係る原告自身の相続税について相続税法32条1号の更正の請求をし、これに基づく減額更正処分がされていることも前認定のとおりであるから、本件更正処分は、同法32条1号の更正の請求に基づく更正処分ではなく、同法35条3項の規定を適用して、亡乙に係る課税価格又は相続税額を減額更正したものであると認められるべきこととなる。
ウ これに対し、原告は、第一次相続に係る亡乙の相続税についても相続税法32条1号に基づく更正の請求があったと主張するが、第一次相続に関し提出された更正請求書(甲1)が同相続に係る原告自身の相続税について提出されたと認められること、被告がした本件更正処分が相続税法35条3項に基づくものであって、同法32条1号に基づく更正の請求を受けてなされたものでないことはいずれも前判示のとおりであるから、上記主張は理由がない。
(4) 以上を前提として検討すると、本件更正処分は、更正の請求に基づいて行われたものではなく、相続税法35条3項に基づいて行われたものなのであるから、それ自体として見れば、亡乙の相続税納付額を一方的に減額する利益処分というものであることになる。そして、亡乙の相続税について、更正の請求が行われたとは認められない以上、その相続人である原告が、亡乙の相続税額は本件更正処分の額を下回ると主張することは許されない筋合いなのであるから、結局、原告が本件更正処分の取消しを求める利益はないものといわざるを得ない。したがって、本件更正処分の取消しを求める訴えは、不適法として却下すべきものであるから、本案上の争点である争点2及び争点3については判断するまでもないこととなる。
2 争点3について
争点3のうち、原告が本件通知処分に理由附記の違法がある旨を主張する部分について判断する。
(1) 原告は、本件通知処分には「遺産分割の審判が確定したことにより、取得した財産の課税価格が分割前の課税価格と異なることになりましたが、納付税額は減少しないため」と記載されているが、不利益処分の理由としては不十分であり、理由不備の違法がある旨主張する。
しかしながら、更正通知書の記載事項についての一般原則を定める国税通則法28条2項は、更正通知書の記載事項として、更正の理由を掲げていないのであり、相続税法にも更正通知書に更正の理由を附記すべき旨の定めはないのであるから、法律上は、更正通知書に理由を附記することは要求されていないものといわざるを得ない。
もっとも、青色申告書に係る更正に関する所得税法155条2項、法人税法130条2項は、青色申告書に係る更正処分について、更正通知書に更正の理由を附記すべき旨を定めているが、これは、青色の申告に係る所得の計算が法定の帳簿組織による正当な記載に基づくものである以上、その帳簿の記載を無視して更正されることがない旨を納税者に保障した趣旨にかんがみ、更正処分庁の判断の慎重さや合理性を担保してその恣意を抑制するとともに、更正の理由を相手方に知らせて不服申立ての便宜を与える趣旨に出たものであって、青色申告の性質に即し、あくまで国税通則法28条2項の例外ないし特則を定めたにすぎないというべきであるから、この規定を他の場合にまで一般化するのは相当ではない。なお、原告は、理由附記を要するとする根拠として、行政手続法1条1項、同法14条1項を挙げるが、同法1条1項は一般的な趣旨、目的を定めた規定にすぎないと解されるし、国税に関する法律に基づき行われる処分その他公権力の行使に当たる行為については、行政手続法第2章及び第3章の規定は適用されず(国税通則法74条の2第1項)、したがって、同法第3章において規定されている同法14条1項が本件に適用される余地はないから、上記主張は失当である。
そして、更正すべき理由がない旨の通知(国税通則法23条4項)については、更正と異なり、通知書に記載すべき事項についての定めそのものが存しないが、理由附記を要求する規定がないことや、青色申告の場合のような、理由附記を要求すべき特段の根拠がないことは、一般の更正の場合と同様なのであるから、理由附記が義務付けられていると解することはできず、また、通知書に記載された理由の程度が上記通知処分自体の効力を左右すると解することもできない。
(2) したがって、原告の上記主張は理由がない。
3 争点4について
(1) 原告は、遺産分割の審判によって初めて現実に財産を取得したから、本件土地等の時価の評価に当たっては遺産分割の審判時を基準とすべきであったのに、本件通知処分は、相続開始時、すなわち被相続人である亡乙の死亡時を基準として財産を評価した違法がある旨主張する。
(2) そこで、まず、相続税額の算定方法及び相続財産の評価方法に関する相続税法等の定めについて検討する。
ア 相続税の納税義務は、相続又は遺贈による財産の取得の時に成立し(国税通則法15条2項4号)、相続により財産を取得した者は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10月以内に課税価格等を記載した申告書を納税地の所轄税務署長に提出しなければならない(相続税法27条1項)。
イ 次に、相続税額の算定方法に関する定めをみると、相続税は、相続又は遺贈により財産を取得した者の被相続人からこれらの事由により財産を取得した全ての者に係る相続税の総額を計算し、当該相続税の総額を基礎としてそれぞれこれらの事由により財産を取得した者に係る相続税額として計算した金額により課するものとされる(相続税法11条)。
これを具体的にみると、相続税額を算出するに当たっては、まず各相続人又は受遺者の課税価格を計算するが、この課税価格は、各相続人又は受遺者が相続又は遣贈によって得た財産の価額とされ(同法11条の2)、相続人及び包括受遺者の場合は、当該合計額からその者の負担に属する被相続人の債務の金額及び葬式費用の金額を控除した金額が課税価格となる(同法13条1項)。そして、各相続人及び受遺者の課税価格を合計して、その合計額から遺産に係る基礎控除の金額を控除し(同法15条)、その残額を、民法所定の相続人が法定相続分に応じて取得したと仮定した場合の各金額に税率表を適用して算出された金額の合計額が、相続税の総額となる(同法16条)。この総額を、各相続人及び受遺者に、その課税価格に応じて按分した金額が、各相続人及び受遺者の相続税額となる(同法17条)。
このように、相続税法は、民法所定の各相続人が民法所定の相続分に応じて被相続人の財産を相続したと仮定した場合の相続税額を計算し、実際に相続又は遺贈によって相続財産を取得した者が、この相続税の総額を、取得した財産の価額に応じて按分し、相続税として納付することとされている(いわゆる法定相続分課税方式による遺産取得税方式)。
ウ 他方、相続税の申告等の際に、相続又は包括遺贈によって取得した財産の全部又は一部が、共同相続人又は包括受遺者によってまだ分割されていない場合は、その分割されていない財産については、各共同相続人又は包括受遺者が民法所定の相続分又は包括遺贈の割合に従って当該財産を取得したものとして、その課税価格を計算するものとされる(相続税法55条本文)。そして、同法32条は、法定相続分に従って相続税の申告等がなされた後に、当該財産の分割が行われ、共同相続人又は包括受遺者が当該分割により取得した財産に係る課税価格が当該相続分又は包括受遺の割合に従つて計算きれた課税価格と異なることとなったため、申告に係る課税価格及び相続税額が過大となったときは、相続税について申告書を提出した者は、その課税価格及び相続税額につき国税通則法23条1項の規定による更正の請求をすることができ(相続税法32条本文、同条1号)、この場合、税務署長は、その請求に係る課税標準等又は税額について調査し、更正し、又は更正をすべき理由がない旨をその請求をした者に通知する(国税通則法23条4項)。
エ 次に、相続財産の評価に関する定めをみると、相続税法22条は、いわゆる時価主義を採用し、相続若しくは遺贈又は贈与により取得した財産の価額は、当該財産の取得の時における時価による旨を定め、相続税法基本通達1の3・1の4共-8(1)は、相続又は遺贈による財産取得の時期は、相続の開始の時によるものと定めている。
(3) 以上を前提に、相続により取得した財産の価額をいつの時点を基準として評価すべきかについて検討する。
ア まず、前記(2)エのとおり、相続税法22条は、相続若しくは遺贈又は贈与により取得した財産の価額は、当該財産の取得の時における時価による旨を定めているが、相続人による相続財産の取得時期については、遺産分割の場合を含め、特段の定めはないのであるから、相続による財産の取得時については、相続に関する一般的な定めである民法の解釈によることが予定されているものと解される。
そして、民法上、相続は被相続人の死亡によって開始し(民法882条)、相続人は相続開始時から被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継するから(同法896条)、相続人は、被相続人が死亡した日にその財産を取得するのであって、相続人が数人ある場合であっても、相続財産はその共有に属し(同法898条)、遺産分割があったときには、遺産分割に遡及効が認められる結果(同法909条本文)、各相続人は、相続開始の時に遡って、被相続人から直接分割により財産を取得したものと扱われる。このように、民法上、相続人は、遺産分割によって、相続開始の時に遡って被相続人から財産を取得すると解されるのであるから、相続法22条にいう当該財産の取得の時は、相続開始時、すなわち、被相続人の死亡の日を指すというべきである。
イ また、前記(2)アのとおり、相続税の納税義務は、相続又は遺贈による財産の取得の時に成立し、相続により財産を取得した者は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10月以内に課税価格等を記載した申告書を納税地の所轄税務署長に提出しなければならないのであるから、相続税の申告に当たっては、当然、相続財産を当該相続開始時の時価により評価することが予定されており、これを基礎として、民法所定の各相続人が民法所定の相続分に応じて被相続人の財産を相続したと仮定した場合の相続税額を計算し、実際に相続又は遺贈によって相続財産を取得した者が、この相続税の総額を、取得した財産の価額に応じて按分し、相続税として納付することとされているのであって、このこともアの結論に符合する。
ウ そして、相続税法は、未分割遺産に対する課税については、各共同相続人が民法の規定による相続分による相続分に従ってその財産を取得したものとしてその課税価格を計算するとともに、その後これと異なる割合で遺産分割がなされた場合には、その分割された内容に従って課税価格の計算をやり直し、それに基づいて更正の請求等ができるものと定めるが(同法55条、32条1号)、この更正の請求に基づく調整も、取得財産に関する特段の定めはされていない以上、法定相続分課税方式による遺産取得税方式という相続税法の建前の範囲内で、取得者課税という相続税の原則にかんがみ、課税価格の調整計算を行うものにすぎないというべきであるから、前記調整に当たり、当初の申告書に記載された財産の評価について、遺産分割時における時価を改めて調査し、これに基づき課税価格等を計算すべき趣旨を含むものではない。
エ 以上説示したところを総合すると、相続税法22条にいう時価の算定は、相続開始時を基準時としてなされるべきであり、このことは、たとえ申告後遺産分割時までの間に相続財産の価額が下落した場合であっても同様と解すべきである(神戸地裁平成11年3月15日判決・税務訴訟資料241号76頁、大阪高裁平成11年10月6日判決・税務訴訟資料244号106頁、最高裁平成12年3月17日判決・税務訴訟資料246号1331頁参照)。
(4) これに対し、原告は、本件土地等の価額を遺産分割の時点における時価によって評価すべきである旨主張する根拠として、大要、①相続税の本質は取得課税であり、遣産分割があった場合には審判で決着を見た価額を課税要件事実と認定して各相続人の相続税額を計算するのであるから、相続税法22条にいう財産の取得の時における「時価」は、財産の取得時、すなわち、遺産分割時における客観的交換価値と解すべきであること、②被告の相続税評価通達による運用の実態は、バブル崩壊以降の経済情勢等に照らし、常に納税者側に不利に働いており、実質的に正当性を失い、これを形式的に適用することは憲法違反に当たることを挙げる。
しかしながら、上記①については、相続税法22条にいう「財産の取得の時」とは、相続開始時を意味するものと解すべきことは前説示のとおりなのである以上、その主張は、民法や相続税法の規定を無視するものといわざるを得ない。そして、相続財産は、相続財産開始時において、客観的には相続人らに移転しているのであり、寄与分や特別受益等の調整をした後の個々の相続人の具体的相続分も、相続開始時において、客観的には定まっているということが可能なのであるから、相続開始時において、相続財産を取得したとみることが、相続税の本質が取得課税であることと矛盾するものではない。また、上記②について検討すると、相続税法は、相続により財産を取得した場合、一旦申告により納税額が確定した以上、その後何らかの理由によって財産の価値が下落した場合であっても、それに伴い課税価格に算入すべき価額が減少することを予定していないことは前述したとおりであるから、仮に、本件審判までの間に、本件土地等の価額が下落した実態があるとしても、そのことをもって直ちに本件土地等の価額を遺産分割時を基準として算定すべき根拠となるものではない。のみならず、相続財産のうち、金銭債権等は、相続開始時において法定相続分に従って当然に分割され、個々の相続人が独自に権利を行使することが可能になる上、不動産等、遺産分割の合意を必要とする財産についても、相続人の合意に基づいて処分等をすることが可能である以上、各相続人が、相続開始時において、その時点における価格評価に基づく財産を取得したものとして相続税課税を行うことが酷に失するとは必ずしもいい難いところがある上、原告主張のとおり解するとすれば、相続開始後に遺産分割をどのような時点で行うかは納税者により様々であるから、課税価格の基礎となる評価、ひいては納税額が異なることになり、納税者の恣意を許す結果にもなりかねず、かえって課税の公平の原則に反する結果をもたらしかねない側面があることを考慮すると、原告のような解釈によらなければ実質的な妥当性を確保することはできないと断定することも困難である。そして、以上の点にかんがみれば、例えば、相続開始後、相続財産の価額が極端に下落した結果、遺産分割時点における取得財産の価額が、相続開始時の評価額を前提として算定された相続税額をも下回るといった極端な事例はともかくとして、そのような事情が認められない本件においては、相続開始時における評価額を前提として相続税を課することが憲法に違反するということもできないものというべきである。
このように、原告の主張はいずれも採用することができない。
(5) そうすると、相続による財産取得の時期を第二次相続の相続開始時によるものとして本件土地等の価額を算定することを前提とし、原告の更正の請求に理由がないものとした本件通知処分は適法というべきである。
4 本件通知処分に関する小括
そして、原告は、本件通知処分の課税要件について、上記のほかは争わないから、以上を前提として原告の第二次相続に係る納付すべき税額を算出すると、別紙4の別表2-1順号16の原告欄記載のとおり、1億6911万7200円となるところ、第二次相続税修正申告書を提出したことにより、原告が納付すべき相続税額は、1億4921万3100円であるから、本件通知処分は適法である。
第4結論
よって、本件訴えのうち、原告が本件更正処分の取消しを求める訴えは不適法であるからこれを却下し、原告のその余の請求は理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条、民事訴訟法61条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 鶴岡稔彦 裁判官 清野正彦 裁判官 進藤壮一郎)
(別紙1)
別表1-1 課税処分等の経緯
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(別紙2)
別表1-2 課税処分等の経緯
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(別紙3)
別表2 課税処分等の経緯
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(別紙4)
本件通知処分の根拠及び適法性に関する被告の主張
1 第一次相続における亡乙の相続税額
被告が本件において主張する第一次相続に係る亡乙の相続税の課税価格及び納付すべき相続税額は、別表1-1の「課税価格等の計算明細表」に記載したとおりであり、その内容は次のとおりである。
(1) 課税価格の合計額(別表1-1順号10の合計額の金額) 3億8063万4000円
上記金額は、次のアの金額のうち、亡乙及びその他の相続人がそれぞれ取得した財産の価額(別表1-1順号7欄の各金額)から、次のイの同人らがそれぞれ負担する債務等の金額(別表1-1順号8欄の各金額)を控除して算出した各人の課税価格(ただし、国税通則法118条1項の規定により、本件被相続人の相続人毎に課税価格の1000円未満の端数金額を切り捨てた後の金額。別表1-1順号10欄の各金額)を合計した金額である。
ア 第一次相続により取得した財産の価額(別表1-1順号7の合計欄の金額) 3億8465万6890円
上記金額は、第一次相続に係る共同相続人が当該相続により取得した財産の総額であり、その内訳は次のとおりである。
(ア) 土地等の価額(別表1-1順号1の合計欄及び別表1-4順号3の価格欄の金額) 9万6174円
上記金額の内訳は、別表1-4「土地の明細」のとおりであり、第一次相続税申告書に記載された金額と同額である。
なお、原告は、第一次相続税申告書提出後に第一次梢続税修正申告書を被告に提出しているところ、当初修正申告は、第一次相続税申告書の第11表「相続税がかかる財産の明細書」に記載された財産に、現金278万6471円を加えてなされたものであるから、第一次相続税修正申告書に係る各相続財産の価額は、現金を除き、第一次相続税申告書に記載された金額と同じである。
(イ) 家屋、構築物の価額(別表1-1順号2の合計欄及び別表1-5順号3の価額欄の金額) 326万2465円
上記金額の内訳は、別表1-5「家屋、構築物の明細のとおりであり、第一次相続税申告書に記載された金額と同額である。
(ウ) 有価証券の価額(別表1-1順号3の合計欄及び別表1-6順号26の価額欄の金額) 2億9581万7148円
上記金額の内訳は、別表1-6「有価証券の明細」のとおりであり、第一次相続税申告書に記載された金額と同額である。
(エ) 現金、預貯金等の価額(別表1-1順号4の合計欄及び別表1-7順号38の価額欄の金額) 6709万7332円
上記金額の内訳は、別表1-7「現金、預貯金等の明細」のとおりであり、第一次相続税申告書に記載された金額に現金278万6471円を加算した金額である。
(オ) 家庭用財産の価額(別表1-1順号5の合計欄及び別表1-8順号1の価額欄の金額)5万円
上記金額は、別表1-8「家庭用財産の明細」のとおりであり、第一次相続税申告書の金額に記載された同額である。
(カ) その他の財産の価額(別表1-1順号6の合計欄及び別表1-9順号7の価額欄の金額) 1833万3771円
上記金額の内訳は、別表1-9「その他の財産の明細」のとおりであり、第一次相続税申告書に記載された金額と同額である。
イ 債務等の金額(別表1-1順号8の合計欄及び別表1-10順号7の金額欄の金額) 402万0580円
上記金額の内訳は、別表1-10「債務等の明細」のとおりであり、第一次相続税申告書に記載された金額と同額である。
(2) 第一次相続に係る分割の審判等について
本件審判は平成13年8月17日に確定したところ、本件審判には要旨次の記載がある。
ア A兄弟は別表1-3の順号3の建物、順号5、6及び8ないし14の株式(E株式会社は9807株、F株式会社は9501株、G株式会社は3745株、H株式会社は983株、I株式会社は1450株、J株式会社は1000株、K株式会社は4800株)を各2分の1の割合で共有取得する。
イ 丁は別表1-3の順号4の家屋、順号23及び順号24のLに対する貸付金、未収利息を取得する。
ウ 一部分割の合意として、本件第一次相続に係る共同相続人は、第一次相続に係る相続税の支払のため、亡丙の現金等を解約・現金化していることから、別表1-3-2のとおり、分割がされたものと同視する。
エ 亡丙が作成した各遺言の内容を前提とし、別表1-3順号7の株式は、丁が取得する。
オ 別表1-3順号1及び順号2の土地は、A兄弟が取得することに当事者全員の合意があった。
(3) 亡乙の課税価格(別表1-1順号10の亡乙欄の金額)
亡乙 7074万8000円
亡乙分のうち原告承継分 2358万2666円
上記金額は、次のアからイの金額を控除した金額(ただし、国税通則法118条1項の規定により、1000円未満の端数を切り捨てた後の金額)である。
ア 相続財産の金額(別表1-1順号7の亡乙欄の金額)
亡乙 7275万8447円
亡乙分のうち原告承継分 2425万2815円
イ 債務等の金額(別表1-1順号8の亡乙欄の金額)
亡乙 201万0290円
亡乙分のうち原告承継分 67万0096円
上記金額は、第一次相続税申告書に記載された債務等の金額402万0580円に、法定相続分の割合(別表1-2順号4の亡乙欄)を乗じて求めた金額である。
なお、亡乙の課税価格については、別表1-3(亡丙遺産の内訳)記載のとおり分割されたものとして算定されたものであるところ、その配分方法は、次のとおりである。
(ア) 順号1ないし順号14及び順号23、順号24までの各財産については、上記(2)のとおり、本件審判等の分割内容に基づいて配分した。
なお、順号8ないし順号10の財産については、本件審判等において認定された各株数が、第一次相続税修正申告書に記載された各申告株数を上回っていると認められるが、第一次相続税修正申告書の提出により確定している各々の株数、すなわち、E株式会社は9520株、F株式会社は8638株、G株式会社は3405株を基礎として、本件審判等の分割内容に基づいて配分した。
(イ) 順号25のLに対する未収給与については、上記(2)イのとおり、Lに対する未収金は丁が取得することとされていることから、当該未収給与も同視し、同人に配分した。
(ウ) 順号15ないし順号22の各財産については、上記(2)ウのとおり、預金等を解約、現金化し第一次相続に係る共同相続人で分割したものと同視し、別表1-3-2のあん分割合に基づき、共同相続人各人に配分した。
(4) 亡乙の納付すべき税額(別表1-1順号15の亡乙欄の金額)
亡乙 1799万0100円
亡乙分のうち原告承継分 599万6700円
上記金額は、相続税法(平成元年法律第48号による改正前のもの。以下、第一次相続について同じ。)15条ないし17条の各規定に基づき、次のとおり算出した金額である。
ア 第一次相続の課税価格の合計額(別表1-2順号1及び別表1-1順号10の合計欄の金額) 3億8063万4000円
イ 遺産に係る基礎控除額(別表1-2順号2欄の金額) 8000万円
上記イの金額は、上記アの課税価格の合計額から控除すべき基礎控除額であり、相続税法15条の規定により、4000万円と800万円に第一次相続に係る法定相続人の人数である5を乗じて算出した金額4000万円との合計額である。
ウ 課税遺産総額(別表1-2順号3欄の金額) 3億0063万4000円
上記ウの金額は、上記アの金額から上記イの金額を控除した後の金額である。
エ 法定相続分に応ずる取得金額(別表1-2順号5の各人欄の金額)
(ア) 亡乙(法定相続分2分の1) 1億5031万7000円
(イ) 丁(法定相続分6分の1) 5010万5000円
(ウ) 原告(法定相続分6分の1) 5010万5000円
(エ) A(法定相続分12分の1) 2505万2000円
(オ) B(法定相続分12分の1) 2505万2000円
上記(ア)ないし(オ)の各金額は、相続税法16条の規定により、第一次相続に係る各相続人が上記ウの金額を法定相続分に応じて取得したものとした場合の各人の取得金額であり、上記ウの金額に当該各相続人の法定相続分をそれぞれ乗じて算出した金額(相続税法基本通達(昭和34年1月28日付直資10による国税庁長官通達(以下「相続税法基本通達」という。)16-3の取扱いにより、各法定相続人毎に1000円未満の端数を切り捨てた後の金額)である。
オ 相続税の総額(別表1-2順号7欄及び別表1-1順号11の合計欄の金額) 9678万9500円
上記金額は、上記エの各金額に相続税法16条に規定する税率を乗じて算出した金額(ただし、相続税法基本通達16-3の取扱いにより各法定相続人毎に100円未満の端数を切り捨てた後の金額)の合計額である。
カ 亡乙の納付すべき税額(別表1-1順号15の亡乙欄の金額)
亡乙の納付すべき相続税額 1799万0100円
亡乙分のうち原告承継分 599万6700円
上記の納付すべき税額については、相続税法17条の規定により、上記オの金額に、亡乙の課税価格(別表1-1順号10の亡乙欄の金額)が上記の課税価格の合計額(同表順号10の合計欄の金額)のうちに占める割合(別表1-1順号12欄の亡乙欄の割合)を乗じて算出した金額(国税通則法119条1項の規定により100円未満の端数を切り捨てた後の金額)である。
2 第二次相続における原告の相続税額
被告が本件において主張する第二次相続における原告の相続税の課税価格及び納付すべき相続税額は、別表2-1の「課税価格等の計算明細表」に記載したとおりであり、その内容は次のとおりである。
(1) 課税価格の合計額(別表2-1順号11の合計欄の金額) 10億7325万1000円
上記金額は、次のアの金額のうち、原告渋びその他の相続人がそれぞれ取得した財産の価額(別表2-1順号8欄の各金額)から、次のイの同人らがそれぞれ負担する債務等の金額を控除して算出した各人の課税価格(ただし、国税通則法118条1項の規定により、本件被相続人の相続人毎に課税価格の1000円未満の端数金額を切り捨てた後の金額。別表2-1順号11欄の金額)を合計した金額である。
ア 第二次相続により取得した財産の価額(別表2-1順号8の合計欄の金額) 11億0579万7478円
上記金額は、第二次相続に係る共同相続人が当該相続により取得した財産の総額であり、その内訳は次のとおりである。
(ア) 土地等の価額(別表2-1順号1の合計欄及び別表2-4順号15の価額欄の金額) 4億3642万1563円
上記金額の内訳は、別表2-4「土地の明細」のとおりであり、第二次相続税修正申告書に記載された金額と同額である。
(イ) 家屋、構築物の価額(別表2-1順号2の合計欄及び別表2-5順号5の価額欄の金額) 647万7132円
上記金額の内訳は、別表2-5「家屋、構築物の明細」のとおりであり、第二次相続税修正申告書に記載された金額と同額である。
(ウ) 有価証券の価額(別表2-1順号3の合計欄及び別表2-6順号25欄の価額欄の金額) 3億0756万1759円
上記金額の内訳は、別表2-6「有価証券の明細」のとおりであり、第二次相続税修正申告書に記載された金額と同額である。
(エ) 現金、預貯金等の価額(別表2-1順号4の合計欄及び別表2-7順号47の価額欄の金額) 1億3074万4518円
上記金額の内訳は、別表2-7「現金、預貯金等の明細」のとおりであり、第二次相続税修正申告書に記載された金額と同額である。
(オ) 家庭用財産の価額(別表2-1順号5の合計欄及び別表2-8順号1の価額欄の金額) 80万円
上記金額の内訳は、別表2-8「家庭用財産の明細」のとおりであり、第二次相続税修正申告書に記載された金額と同額である。
(カ) その他の財産の価額(別表2-1順号6の合計欄及び別表2-9順号12の価額欄の金額) 2億2379万2506円
上記金額の内訳は、別表2-9「その他の財産の明細」のとおりであり、第二次相続税修正申告書に記載された金額と同額である。
イ 債務等の金額(別表2-1順号9の合計欄及び別表2-10順号7の金額欄の金額) 3254万4164円
上記金額の内訳は、別表2-10「債務等の明細」のとおりであり、第二次相続税修正申告書に記載された金額と同額である。
(2) 第二次相続に係る分割の審判等について
本件審判には要旨次の記載が認められる。
ア A兄弟は別表2-3順号9及び順号10の土地、E株式会社の株式のうち421株、M株式会社の株式のうち346株、順号29及び順号30の株式、順号41の温泉給湯保証金、順号42の電話加入権を各2分の1の割合で共有取得する。
イ 丁は別表2-3順号6及び順号7の土地、順号13の家屋及び順号19の株式を取得する。
ウ 原告及びA兄弟は、別表2-3順号1の土地を、原告が2分の1、A兄弟が各4分の1の持分割合で共有取得する。
エ 一部分割の合意として、本件第二次相続に係る共同相続人は、第二次相続に係る相続税の支払のため、亡乙の現金等を解約・現金化していることから、別表2-3-2のとおり、分割がされたものと同視する。
オ 別表2-3順号2ないし順号5及び順号8の土地は、A兄弟が取得することに当事者全員の合意があった。
カ 別表2-3順号1の土地の分割時の価額は、2億4401万5000円である。
キ 本件審判によれば、「原告は、別表2-3順号1の土地の取得の代償として、A兄弟に対し各28万円、丁に対し495万円を支払え。」とする旨の記載がある。
(3) 原告の課税価格(別表2-1順号11の原告欄の金額) 3億8845万8000円
上記金額は、次のアからイの金額を控除した金額(ただし、国税通則法118条1項の規定により、1000円未満の端数を切り捨てた後の金額)である。
ア 相続財産の価額(別表2-1順号8の原告欄の金額 )3億9930万6919円
上記金額は、原告が相続により取得する財産の合計金額4億0749万7459円から、原告がその他の相続人に対し支払う代償財産の金額819万0540円を控除した金額である。なお、代償財産の金額の算定については、別表2-12「相続税の課税価格に算入(減算)する代償金額の計算明細」のとおりである。
イ 債務等の金額(別表2-1順号9の原告欄の金額) 1084万8055円
上記金額は、第二次相続税修正申告書の債務等の金額3254万4164円に、法定相続分の割合(別表2-2順号4欄)を乗じて求めた金額である。
なお、原告の課税価格については、別表2-3(亡乙遺産内訳)記載のとおり分割されたものとして算定したものであるところ、その配分方法は、次のとおりである。
(ア) 順号1ないし順号10、順号13、順号19、順号29、順号30、順号41及び順号42までの各財産については、前記(2)のとおり、本件審判等の分割内容に基づいて配分した。
(イ) 順号21及び順号28の財産については、本件審判等において認定された各株数が、第二次相続税修正申告書に記載された各申告株数を上回っていると認められるが、第二次相続税修正申告書の提出により確定している各々の株数を基礎として、本件審判等の分割内容に基づいて配分した。
(ウ) 順号25のLに対する未収給与については、上記(2)イのとおり、Lに対する未収金は丁が取得することとされていることから、当該未収給与も同視し、同人に配分した。
(エ) 順号15ないし順号22の各財産については、上記(2)ウのとおり、預金等を解約、現金化し第一次相続に係る共同相続人で分割したものと同視し、別表2-3-2のあん分割合に基づき、共同相続人各人に配分した。
(4)原告の納付すべき税額(別表2-1順号16欄の原告欄の金額) 1億6911万7200円
上記金額は、相続税法15条ないし17条の各規定に基づき、次のとおり算定した金額である。
ア 第二次相続の課税価格の合計額(別表2-2順号1欄及び別表2-1順号11の合計欄の金額)10億7325万1000円
イ 遺産に係る基礎控除額(別表2-2順号2欄の金額) 7200万円
上記イの金額は、上記アの課税価格の合計額から控除すべき基礎控除額であり、相続税法15条の規定により、4000万円と800万円に第二次相続に係る法定相続人の人数である4を乗じて算出した金額3200万円との合計額である。
ウ 課税遺産総額(別表2-2順号3欄の金額) 10億0125万1000円
上記ウの金額は、上記アの金額から上記イの金額を控除した後の金額である。
エ 法定相続分に応ずる取得金額(別表2-2順号5欄の各人の金額)
(ア) 原告(法定相続分3分の1) 3億3375万円
(イ) 丁(法定相続分3分の1) 3億3375万円
(ウ) A(法定相続分6分の1) 1億6687万5000円
(エ) B(法定相続分6分の1) 1億6687方5000円
(オ) 以上の各金額は、相続税法16条の規定により、第二次相続に係る各相続人が上記ウの金額を法定相続分に応じて取得したものとした場合の各人の取得金額であり、上記ウの金額に当該各相続人の法定相続分をそれぞれ乗じて算出した金額(相続税法基本通達16-3の取扱いにより、第二次相続に係る各法定相続人毎に1000円未満の端数を切り捨てた後の金額)である。
オ 相続税の総額(別表2-2順号7欄及び別表2-1順号12欄の合計欄の金額) 4億8163万7500円
上記金額は、上記エの各金額に相続税法16条に規定する率を乗じて算出した金額(ただし、相続税法基本通達16-3の取扱いにより各法定相続人毎に100円未満の端数を切り捨てた後の金額)の合計額である。
カ 原告の算出税額(別表2-1順号14欄の原告欄の金額) 1億7432万6359円
上記オの金額にあん分割合(別表2-1順号13の原告欄の割合)を乗じて算出した金額である。
キ 原告の相次相続控除額(別表2-1順号15欄の原告欄の金額) 520万9143円
上記金額は、相続税法20条の規定に基づき、上記1(3)カ記載のとおり、第一次相続に係る亡乙の相続税の税額1799万0100円を基に別表2-13の「相次相続控除額の計算明細表」のとおり計算した相次相続控除額の総額に、原告の第二次相続により取得した純資産価額がその合計額に占める割合を乗じて算出した金額である。
ク 原告の納付すべき税額(別表2-1順号16欄の原告欄の金額) 1億6911万7200円
上記カの金額から、上記キの金額を控除した金額(国税通則法119条1項により100円未満の端数を切り捨てた後の金額)である。
3 本件通知処分の適法性
被告が本件において主張する原告の第二次相続に係る納付すべき税額は、上記2(4)クのとおり、1億6911万7200円となるところ、第二次相続税修正申告書を提出したことにより、原告が納付すべき税額は、1億4921万3100円であるから、原告が平成13年12月14日にした第二次相続に係る更正の請求に対し、更正すべき理由がないとした本件通知処分は適法である。
以上
別表1-1 課税価格等の計算明細表
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別表1-2 相続税の総額の計算明細表(第一次相続)
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別表1-3 亡丙遺産の内訳
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別表1-3-2 本件審判に基づく第一次相続に係る分割について
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別表1-4 土地の明細
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別表1-5 家屋、構築物の明細
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別表1-6 有価証券の明細
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別表1-7 現金、預貯金等の明細
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別表1-8 家庭用財産の明細
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別表1-9 その他の財産の明細
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別表1-10 債務等の明細
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別表2-1 課税価格等の計算明細表
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別表2-2 相続税の総額の計算明細表(第二次相続)
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別表2-3 亡乙遺産の内訳
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別表2-3-2 本件審判に基づく第二次相続に係る分割について
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別表2-4 土地の明細
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別表2-5 家屋,構築物の明細
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別表2-6 有価証券の明細
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別表2-7 現金、預貯金等の明細
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別表2-8 家庭用財産の明細
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別表2-9 その他の財産の明細
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別表2-10 債務等の明細
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別表2-11 本件土地の平成2年分の相続税評価額の計算明細
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別表2-12 相続税の課税価格に算入(減算)する代償金額の計算明細
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別表2-13 相次相続控除額の計算明細表
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