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東京地方裁判所 平成16年(行ウ)506号 判決 2006年1月27日

主文

1  原告の請求をいずれも棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

第1請求

被告が原告に対し平成14年11月1日付けでした平成12年所得分及び平成13年所得分に係る各個人事業税賦課決定処分をいずれも取り消す。

第2事案の概要

本件は,自己の単独所有建物及び妻との共有建物を他に賃貸して収入を得ている原告が,当該貸付けを地方税法の定める「不動産貸付業」に該当するものと認定し,これに対して個人事業税を課する旨の賦課決定処分をした被告に対し,共有不動産については各共有者の持分割合によって事業の規模を判定すべきであり,これによれば原告の貸付けは「不動産貸付業」に該当しないなどと主張して,上記の個人事業税賦課決定処分の取消しを求める事案である。

1  個人事業税に関する法律及び通達の定め

(1)  地方税法(平成15年法律第9号による改正前のもの。以下同じ。)

事業税は,法人の行う事業並びに個人の行う第一種事業,第二種事業及び第三種事業に対し,法人にあっては所得及び清算所得又は収入金額,個人にあっては所得を課税標準として事務所又は事業所所在の都道府県において,その法人及び個人に課する(72条1項,1条2項)。

個人事業税が課される「第一種事業」とは,72条5項各号に掲げる事業をいい,同項4号は,「不動産貸付業」を掲げている。

個人事業税の課税標準は,当該年度の初日の属する年の前年中における個人の事業の所得による(72条の16第1項)。その事業の所得は,当該前年中の事業に係る総収入金額から必要な経費を控除した金額によるものとし,原則として,所得税法26条及び27条に規定する不動産所得及び事業所得の計算の例によって算定する(72条の17第1項)。事業を行う個人については,当該個人の事業の所得の計算上,290万円を控除する(72条の18第1項)。

(2)  個人事業税課税事務提要(平成7年3月31日6主課個第117号東京都主税局長通達。以下「都局長通達」という。乙3)

不動産貸付業とは,継続して,対価の取得を目的として,不動産の貸付け(地上権又は永小作権の設定によるものを含む。)を行う事業をいい(第3章第2節第4の1),不動産貸付業に該当するかどうかの認定は,所得税の取扱いを参考とするが,社会通念上事業と称するに至る規模,賃貸料収入の状況,貸付不動産の管理の状況等を総合勘案して判定する(第3章第2節第4の2前文)。そして,不動産貸付業に当たると認定できるための不動産の貸付規模については,第3章第2節第4の2(2)において認定基準が定められている。

しかしながら,不動産の貸付規模が上記の認定基準未満であっても,その賃貸状況等からみて認定基準以上の不動産の貸付けを行っているものと同様の事情にあり,課税しないとすれば著しく他との均衡を失すると考えられるものについては,不動産貸付業と認定するものとし,具体的には,土地を除く貸付不動産の総面積が600m2以上であり,かつ,当該貸付不動産に係る賃貸料収入が年1000万円以上である場合は,特段の事情がない限り,不動産貸付業と認定して差し支えない(第3章第2節第4の2(3)。以下「通達第4の2(3)」という。)。

共有物件については,その共有物につき持分に応じて制約されはするが,共有物の全部につき,使用・収益できるものであるから(民法249条),不動産貸付業の認定基準の適用に当たっては,持分にかかわりなく,共有者各自の貸付件数等を算定するものとし,通達第4の2(3)による場合であっても,共有者各自につき共有物件全体に係る貸付面積及び賃貸料収入による(第3章第2節第4の4キ。以下「通達第4の4キ」という。)。

2  前提となる事実(当事者間に争いがない。)

(1)  原告は,別紙物件目録記載1の建物(以下「建物1」という。)及び同目録記載2の区分所有建物(以下「建物2」という。)を所有している。

また,原告及びP1(原告の妻。)は,別紙物件目録記載3の区分所有建物(以下「建物3」という。)を共有している。共有持分の割合は,原告が1000分の348,P1が1000分の652である。

(2)  原告は,平成12年及び平成13年において,建物1のうち1階及び2階部分(貸付面積190.14m2)を賃料年額600万円で,建物2(貸付面積56.09m2)を賃料年額84万円で,それぞれ医療法人社団P2眼科医院に賃貸した。

また,原告及びP1は,平成12年及び平成13年において,建物3(貸付面積460.25m2)を賃料年額600万円で,P3眼科こと医療法人社団P2眼科医院に賃貸した。

(3)  東京都知事の権限の委任を受けた所管課税庁である被告は,原告に係る前記(2)の建物の貸付けに都局長通達の規定を適用すると,貸付不動産の総面積が600m2以上(706.48m2)で,かつ,賃貸料収入が年1000万円以上(1284万円)となることから,不動産貸付業に該当するものと認定し,平成14年11月1日付けで,原告に対し,平成12年所得分及び平成13年所得分の各個人事業税賦課決定処分(以下「本件各処分」という。)をした。本件各処分に係る課税標準額及び税額は,次のとおりである。

平成12年所得分   平成13年所得分

課税標準額   9万7000円    56万9000円

税   額     4800円     2万8400円

(4)  原告は,本件各処分をいずれも不服として,平成14年12月13日,東京都知事に対し,審査請求をしたところ,東京都知事は,平成16年8月26日,これを棄却する旨の裁決をし,同月30日,裁決書謄本が原告に送達された。原告は,同年11月26日,本件訴訟を提起した。

3  当事者の主張

(1)  原告の主張

ア 共有不動産の貸付事業の場合,不動産貸付業の認定は,それぞれの持分割合に応じて判定すべきである。したがって,持分割合にかかわらず,建物全体の面積・収入を基準とすべきことを定めた通達第4の4キは違法であるから,これに基づいて行われた本件各処分も違法である。建物3について持分割合に応じた面積及び収入を基準とすると,原告の建物3の貸付面積は160.17m2,賃貸料収入は年208万8000円となり,貸付不動産の総面積は406.40m2,賃貸料収入は年892万8000円となるから,通達第4の2(3)の基準を下回り,不動産貸付業に該当しない。

被告は,①事業税の性質を,事業収入に応じて課税される応能税ではなく,個人や企業が都道府県から受ける公共サービスを根拠とする応益税であるとして,不動産貸付業の事業性認定においては,貸付不動産の規模を基準とすることが合理的であると主張し,そのうえで,②貸付不動産が共有の場合について,不動産全体を事業性認定基準とする通達第4の4キは妥当であるという。しかしながら,現行法上の事業税は,応益税としての性質と,応能税としての性質を併有するものと解される。すなわち,地方税法は,個人事業税の課税標準について,所得を基準としているところ,事業税が都道府県の公共サービスを受ける利益の対価であることからすれば,課税標準は所得ではなく,受益の程度をよりよく現す事業者の経済活動の規模を基準にすべきとも考えられる。この点,シャウプ勧告では,企業の付加価値を課税標準とすることが勧告され,昭和25年に一旦は制度化されたが,実施されないままに廃止されている。現行法は,事業税が応益税としての性質を有するとしても,課税標準として,あえて所得を用いているのであり,ここに応能税としての性質が加味されているのである。このように,事業税が応益税としての性質を有するとしても,それは抽象的な性質にとどまり,課税標準という具体的な面では応能税的性質が機能しているのである。したがって,応益税という性質論から,通達第4の4キの基準及びこれに基づく本件各処分を根拠付けようとすることには,無理があるというべきである。むしろ,個人事業税における共有不動産貸付業の事業性認定に際しても,応能税としての性質をふまえ,事業全体の規模ではなく,個人の所得等,持分割合を基準とすることが自然である。また,上記被告の主張のうち,①の考え方が仮に一般論としては妥当であるとしても,②の考え方には論理的必然性はない。むしろ,各共有者は「その持分に応じて」しか共有物の使用・収益ができないのであり,殊に貸付不動産の場合使用・収益による利益は賃料という形で表れるのであるから,行政サービスに関する「受益」の量も「その持分に応じて」いると考えるべきである。すなわち,共有物の賃貸を常に共同事業と認定し,その共同事業体に課税するというのであればともかく,個々の共有者ごとに事業性を認定し,課税することとしている以上,事業性の認定に当たっても,個々の共有持分及びそこから発生する所得を基準とするのが当然である。

なお,被告は,「規模のメリット」についても言及しているが,事業効率としての規模のメリットの有無が,事業性認定基準・課税基準を根拠付けるという関係にはない。

被告は,事業税は事業活動の経費として事業そのものに課税するものであるとして,応能税の性質を有することを否定するが,そうであるとすれば,共有不動産の貸付業においては,共同事業体そのものの事業規模に基づいて事業認定を行ったうえで,共同企業体に対して課税するのが自然であるが,現行法ではそのような取扱いはなされていない。すなわち,事業性認定においては,各共有者ごとに,共有不動産のみならず,他の賃貸不動産も含めて判断することとなっており,課税標準については,各自の事業所得を基準としているのである。このように,現行法上は,事業者の税負担能力が重視されているのであり,不動産貸付業における個人事業税が応能税としての性質を有することは明らかである。

被告は,事業税が所得税又は法人税の所得計算に際して必要な経費又は損金に算入されることが上記の事情を物語っているというが,各租税の性質は,その立法趣旨や課税対象等に基づいて判断すべきであり,他の租税においてどのような扱いを受けているかによって決せられるものではない。したがって,事業税が,所得税や法人税の所得計算に際して,必要な経費又は損金に算入されるとしても,このことによって不動産貸付業に係る個人事業税が応能税としての性質を有することが否定されるものではない。

イ 通達第4の4キの違法事由を整理すると,以下のとおりとなる。

(ア) 民法249条違反

通達第4の4キが引用する民法249条は,1個の物に対して,各共有者の持分に基づく物理的支配の及ぶ範囲を確定することが困難であることから,全部について使用を可能としたにすぎない。とすれば,同条は,物理的な使用関係についてのみ適用されるべきである。そして,事業性認定に当たっては,面積と収入について,それぞれ持分の及ぶ範囲を数量的に確定することによって,共有者各自の事業範囲を別個独立に観念することができるのであるから,民法249条の適用はなく,各持分に従って判断すべきである。このことは,民法252条が共有物の管理に関して,各共有者の持分の価格に従ってその過半数をもって決すると定めていることからも明らかである。

また,民法249条は,各共有者は共有物の全部につき,「その持分に応じた」使用・収益をなすことができると定めている。すなわち,各共有者は,所有者であることから,共有物全体に対する支配権を有し,共有物全体を賃貸の対象とすることができるとしても,それによる収益は自ずと「持分に応じた」ものとなり,持分による制限を受けるのである。したがって,同条の趣旨からも,各共有者の事業性認定に当たっては,「持分に応じた」面積及び収入を基準とすべきである。

(イ) 応能原則(憲法14条)違反

平等原則を定めた憲法14条は,同一の条件にある者が同一の租税負担をし,異なる条件にある者は,差異のある租税負担をしなければならないことをも包含している(応能原則)。そして,応能原則によれば,税負担能力に従った納税義務を課すべきであり,事業性認定という税負担能力存否の判断基準と,課税標準算定基準は一致しなければならないはずである。

ところが,不動産貸付業の事業性認定については,通達第4の4キにより,共有物件は,持分にかかわりなく面積等が考慮されるのに対し,課税標準算定においては,地方税法72条の16により,各個人の事業の所得に基づき算定されることとなっており,基準が一致していないのである。このため,事業性認定の際,共有物件について持分割合が考慮されず,実際の収入額よりも過大な担税力があることを前提として判断され,納税者は過大な納税義務を負わされてしまうこととなる。共有者は,共有物件の賃貸に関し,その持分に応じた収入を得るにすぎず,その担税力は持分を限度とするものであるから,応能原則に従えば,事業性認定は,持分に従って判断すべきものである。

このことは,共有物件を共有者の一部が賃借している場合について検討すれば,その不当性がより明らかとなる。すなわち,共有者の1人が共有物件を賃借している場合,賃貸借契約上は他の共有者の持分部分のみが対象となる。それにもかかわらず,事業性認定について通達第4の4キによるとすれば,共有物全体について使用させているのであるから,共有物件全体の面積を貸付面積として判断することとなってしまう。しかし,賃貸借契約の対象が持分部分のみであり,これに対応した収益しか得られないにもかかわらず,持分を超えて物件全体を基準として担税力を判断するとすれば,応能原則に反するといわざるを得ない。

(ウ) 応益原則(憲法14条)違反

事業税については,納税者が,その受ける公共サービスに対応した税負担を負うことが公平であるとも考えられ(応益原則),この趣旨は,平等原則を定めた憲法14条に包含されていると解される。

この点,通達第4の4キにより,共有物件に関して,持分を考慮せず,共有物件全体を事業性認定基準とした場合,各共有者の事業性認定に当たり,それぞれ共有物件全体が判断基準に含まれてしまい,物件に対する公共サービスは1件であるにもかかわらず,事業性認定の判断に当たっては,重複して考慮されることになってしまう。

前記(イ)の共有物件を共有者の一部が賃借している場合の事業の受ける公共サービスについてみると,持分部分のみが貸付業の対象となり,その限度で公共サービスを受けるのであれば,共有物件全体が対象となる場合に比べて,明らかに事業実態は小規模なのであるから,その受ける公共サービスもより小さくなるはずである。したがって,共有物全体にかかる公共サービスを想定して税負担を判断することは,応益原則に反することとなる。

(エ) 地方税法10条の2第1項違反

地方税法10条の2第1項は,共同事業の徴収金について,納税者が連帯して納付する義務を負うと定めている。

この点,通達第4の4キは,共有物件の貸付業について,各共有者の持分を考慮せず,物件ごとに1件と算定している。これは,共有物件の貸付業は,各共有者による持分を限度とした貸付業の集合体ではなく,共有者全員で物件を賃貸する1個の共同事業と解することを前提としたものである。他方で,通達第4の2(3)は,各共有者についてそれぞれ別個独立して判断することを前提に,当該共有物件だけでなく他の賃貸物件も併せた面積等を認定基準としている。

しかし,共有物件の賃貸を1個の共同事業と解するのであれば,その事業性認定は,共同事業自体を基準として判断されるべきである。そして,事業性が認められる場合には,地方税法10条の2第1項により,共同事業者全員が納税義務者となり,連帯して納付する義務を負うと解すべきである。

また,通達第4の2(3)に従えば,共有物件の共同事業者間で,不動産貸付業者と認定される者と認定されない者が生じ,公共サービスを受ける事業を共に営む者の間に,税負担に関する不公平が発生してしまうこととなる。

以上からすれば,共有物件の貸付業は,1個の共同事業と解すべきではなく,この点において,通達第4の4キは,地方税法10条の2第1項の趣旨に反する。

(オ) 不動産貸付業の本質

一般的に事業とは,資産と労働が結合して収益を発生させるものであるのに対し,不動産貸付業は,資産から直接,収益を発生させるという性質を持つものである。そのため,不動産貸付業は,昭和55年まで,事業税の対象とされていなかった。とすれば,不動産貸付業の性質に照らし,課税基準は,個人の資産に求めるのが相当である。したがって,共有物件に関する課税基準は,各個人の資産,すなわち各自の持分を基準とすべきであり,通達第4の4キに定める扱いは,不動産貸付業の本来的性質に反するものである。

このことは,以下の具体的事例において,不平等,不適切な結果が生じることによっても明らかである(以下の事例で想定する建物の共有者間の持分割合は平等とする。)。

【事例1】

面積600m2の建物を所有する個人が,これを賃貸し,賃料収入が年800万円である場合,当該個人は不動産貸付業者と認定されないが,同じ建物を2名で共有して,これを賃貸し,賃料収入が年1200万円であった場合には,各共有者はそれぞれ不動産貸付業者と認定される。ここで両者を比較すると,後者において,各共有者の賃料収入は,その持分に対応して年600万円と前者より少額であるにもかかわらず,税負担が生じることとなり,明らかに不公平である。

また,面積1000m2,賃料収入1200万円の賃貸不動産を,A・Bが共有している場合,事業税が賦課されるが,A・Bの2名が,それぞれ,面積600m2,賃料収入800万円の賃貸不動産を所有する場合には,両名とも事業税は賦課されない。この2つを比較すれば,後者の方が,1人当たりの(あるいは両名合計しての)賃貸面積も,賃料収入も大きいにもかかわらず,事業税は賦課されないのである。このような結論は,応益という観点からも,応能という観点からも,合理的に説明できるものではない。

【事例2】

建物内が2室に分かれている総面積600m2の物件を2名で共有していたところ,共有者間で各1室ずつを自由に使用収益できる旨合意し,各自別個に第三者との間で賃貸借契約を締結した。ここで,それぞれ年600万円の賃料収入がある場合,建物全部の賃料収入は年1200万円となる。しかし,各自が固有の使用収益権限に基づいて自己の責任と名義で賃貸している以上,それぞれ独立の事業者として自己が賃貸する貸室分の年600万円のみが事業性認定の判断対象となり,不動産貸付業者とは認定されないはずである。他方,共有者間で上記のような合意をすることなく,共同名義で各室を賃貸している場合は,各自が共有建物全体を賃貸しているとして扱われ,建物全体の賃料収入年1200万円が判断対象となり,不動産貸付業者と認定されてしまうのである。このように,各共有者の賃料収入は,いずれも年600万円と同じであるにもかかわらず,共有者間で使用収益による合意をし,各別に賃貸借契約を締結したか否かによって,税負担の存否に差異が生じることは,不当な扱いであるといわざるを得ない。この場合,使用区分の合意の有無によって受ける公共サービスの量に差はないのであるから,応益税という性質から説明できるものではない。

被告は,契約上合意が認められた場合は,建物の区分所有の場合と同様の扱いとなると説明するが,この考え方は明らかに不当である。この考え方に従うならば,ほんの小手先の契約書の作り方次第で,課税が回避し得ることとなってしまう。実態がほとんど変わらないにもかかわらず,小手先の操作で課税が回避されてしまうというのは,もともとの基準が事案に対して適切なものではないことの顕れである。

(カ) 地方税法72条の16第1項違反

前記アのとおり,地方税法72条の16第1項は,個人事業税の課税標準について,所得を基準としているのであり,現行法上の事業税は,応益税としての性質と,応能税としての性質を併有するものと解される。そして,応益税としての性質は抽象的な性質にとどまり,課税標準という具体的な面では応能税的性質が機能しているのである。このような事業税の性質ないし地方税法72条の16第1項の採用する基準を前提とすれば,個人事業税における共有不動産貸付業の事業性認定に際しても,各個人の所得等,持分割合を基準とすべきことも前記アのとおりである。

通達第4の4キは,この当然の論理を無視しているものであり,その結果,前記(オ)のような明らかな不平等,不適切な結果を生じることとなっているのである。すなわち,通達第4の4キは,地方税法72条の16第1項と矛盾するものであり,同条項に違反するものである。

被告は,通達第4の4キは,地方税法72条5項4号が規定する不動産貸付業の事業性認定に関する基準であり,税負担額算定基準について定める同法72条の16第1項とは論理的に区別すべきであると主張するが,前記(イ)のとおり,憲法14条に根拠を有する応能原則によれば,税負担能力に従った納税義務を課すべきであり,事業性認定という税負担能力存否の判断基準と税負担額算定基準は,一致しなければならないはずである。とすれば,事業性認定と税負担額算定の各基準の適用に論理的先後関係があり,それぞれ別の問題として該当性の判断や税額算定を行わなければならないとしても,各基準の内容については,応能原則に基づき相互に関連づけて決するべきである。

ウ 仮に建物3の貸付けを共同事業と解するとしても,建物3の貸付けの事業主はP1であるから,建物3の面積・収入を原告に対する事業性認定の判断基準に含めるべきではない。

すなわち,所得税法12条及び地方税法24条の2では,「実質所得者課税の原則」が定められており,事業から生ずる収益が法律上帰属するとみられる者が単なる名義人であって,当該収益を享受せず,その者以外の者が当該収益を享受する場合には,当該収益を享受する者が納税義務を負担することとなっている。そして,事業から生ずる収益を享受する者が誰であるかは,その事業主が誰であるかによって判定され(事業税取扱通知五において準用する所得税取扱基本通達12-2),生計を一にしている親族間においては,その事業の経営方針の決定につき支配的影響力を有すると認められる者が事業主と推定される(同12-5)。

この点,建物3の持分の割合からすれば,建物3の貸付事業の経営方針決定に支配的影響力を有するのは,約6割5分の持分を有するP1であり,同人が事業主と推定される。とすれば,建物3の貸付事業から生ずる収益を享受するのは事業主たるP1であり,原告は建物3について持分を有しているために,賃貸借契約上も賃貸人となっているにすぎず,単なる名義人である。

したがって,建物3についてはP1のみが納税義務を負担するのであるから,本件各処分は,原告の事業性認定の判断基準に,建物3の面積・収入を含めている点で違法である。建物3を除く原告の貸付面積は246.23m2,賃貸料収入は年684万円であるから,原告の貸付けは不動産貸付業に該当しない。

エ 仮に建物3の貸付けを原告及びP1を共に事業主とする共同事業と解するとしても,その共同事業団体の法的性質は民法上の組合(民法667条)であるため,各構成員の事業性認定はそれぞれの持分に応じた面積及び収入で判定すべきである。

すなわち,所得税法及び法人税法においては,権利能力なき社団は法人とみなされるため(所得税法4条,法人税法3条),社団が納税義務者となり,各構成員から独立した1個の事業が観念されている。これに対して,民法上の組合は,組合員相互間の個々的契約関係によって結合する団体で,各構成員の目的から独立した団体固有の目的が存在しないものをいう。そして,組合は,税法上,各組合員が納税義務者となり,その収入の帰属分に応じて課税される。権利能力なき社団の要件として,判例は,団体としての組織をそなえ,多数決の原則が行われ,構成員の変更にもかかわらず団体が存続し,その組織において代表の方法,総会の運営,財産の管理等,団体としての主要な点が確定していることを要するとしている(最高裁判所昭和39年10月15日第一小法廷判決・民集18巻8号1671頁)。

そこで,本件についてみると,共有者である原告とP1との間には,団体としての組織はなく,その他,上記判例の判示するいずれの要件も満たさない。

したがって,建物3の貸付事業は,民法上の組合というべきであり,各構成員の単独事業の集合体であるから,各人が納税義務者となり,その収入の帰属分に応じて課税されることとなる。とすれば,事業性認定は原告とP1それぞれの持分割合に応じた面積・収入で判定すべきであるから,建物3全体について判定対象としている点で,本件各処分は違法である。

(2)  被告の主張

ア 不動産貸付業とは,継続して,対価の取得を目的として,不動産の貸付けを行う事業をいい,ある個人の行う不動産の貸付けがこれに該当するかどうかの認定は,社会通念上事業と称するに至る規模,賃貸料収入の状況,貸付不動産の管理の状況等を総合勘案して判定するのが相当である。

ところで,共有不動産を貸し付ける場合についてみると,共有関係においては,各共有者は,共有物の全部につきその持分に応じた使用(収益)をすることができる(民法249条)ことから,共有に係る不動産が貸し付けられている場合においては,共有者全員が共同で当該不動産の全部を貸し付けているというべきであり,換言すれば,各共有者においても,その持分割合に応じた部分ではなく,当該不動産の全部を貸し付けているものと観念することができる。したがって,その共有者の一人(個人)についての事業性の判断において,通達第4の2(3)の定める床面積基準及び収入金額基準を適用するに当たっても,持分相当床面積あるいは持分相当賃貸料収入に分割して認定を行うのではなく,当該建物全体の床面積及び全体の収入金額をもって認定を行うとすることが相当である。

また,事業税は,事業収入に応じて課税される応能税ではなく,個人や企業が都道府県から受ける公共サービスを根拠とする応益税である。すなわち,事業税の基礎にあるのは,事業は,地方団体の各種の行政サービスを受益し,また各種の行政サービスの原因を作り出しているから,住民税とは別に,それに応じた負担をすべきであるという考え方である。このような観点からみれば,不動産貸付業の場合,より大きな不動産を事業に供している場合は,当然ながらより大きな行政サービスを受益しているといえる。したがって,不動産貸付業の場合,事業といえる規模であるかどうかを判定するに当たっては,原則として貸付不動産の規模を基準とすることが合理的である。これを共有不動産の場合についてみると,各共有者は,その持分に応じて「当該不動産の全部につき」使用・収益できるところから,行政サービスについても「当該不動産の全部につき」受益していると解することが妥当であるから,事業性認定も不動産全体として行うことが妥当というべきである。

なお付言すれば,事業性の認定において,共有不動産の貸付けの場合,共有者がいわゆる「規模のメリット」を受けていることが重要である。すなわち,事業を行う場合は,小規模に行うよりは,大規模に行う方が,採算性が高いことは経験上一般に知られているところである。例えば建物の場合,部屋数が多い方が,顧客の選択範囲が広くなり,事業としての効率性が高まる。こうして共有不動産貸付けの場合の各共有者は,各自が単独で事業を行う場合より,遙かに有利に事業を展開しているのである。この点でも,事業性認定において各自の持分を基準としないことの方が合理的である。

原告は,個人事業税の性質について,応益税としての性質を有しているとしてもそれは抽象的なものであり,課税標準に個人の所得を用いている以上具体的な面では応能税的な性質が機能していると主張する。しかしながら,前述のとおり,事業税は,事業が行政サービスから受益していることを根拠とする応益税である。また,事業税は,事業そのものに担税力を見出す物税であり,所得税や法人税などの人税とはその性質を異にする。さらに,事業税は,事業に対する課税であることから,その事業を行うための経費と考えるべきである(事業税が所得税又は法人税の所得計算に際して必要な経費又は損金に算入されるということは,このことを物語っている。)。事業税のこのような性質からすれば,その課税標準は,事業の規模又は活動量を最もよく表すもの,例えば売上金額や資本金額等の外形標準的なものを採用することが最も適当である。しかしそれが所得とされたのは,歴史的理由ないし課税技術上の問題からであって,あくまで,事業の規模又は活動量を表すための便宜上の指標と考えるべきである。事業税への外形標準の導入がたびたび議論されているのも,より正確な指標のためである。したがって,所得が課税標準とされたからといって,事業税の性質が応能税に変質したとか,応能的な性質が加わったとかいうように解すべきではない。

原告は,上記のように応能的性質が具体的に機能する場面として,事業性の認定をあげ,共有不動産貸付業の事業性認定に際しても,個人の所得等持分の割合を基準とすることが自然であるとし,また,行政サービスの「受益」も「その持分に応じて」おり,共同事業体でなく個々の共有者に課税する以上,所得基準は当然であるとする。しかしながら,前述のとおり,事業税は,行政サービスから受益していることを根拠とする応益税であり,事業そのものに課税される物税である。そうすると,個人事業税の事業性認定に際しても,まず当該行為そのものに着目し,それが社会通念上,行政サービスの「受益」を受けており,事業の経費を負担すべきだと認定するに足る程度の規模かどうかを問題にすべきである。この見地からすれば,共有不動産貸付業の事業性認定の場合も,端的に事業の規模,すなわち共有不動産の規模,及びそこから発生する収入に着目することは極めて当然である。行政サービスの「受益」については,次のように考えればわかりやすいであろう。例えば,不動産に接道する道路がある場合に,共有者は,その持分に応じて不動産全部について使用・収益できるのに応じて,当該道路の一部ではなく,その接道部分全部について接道による利益を享受することができるのである。こうして受益についても,共有不動産の全体を考慮すべきである。

イ 本件各処分が適法であることは,前記アに述べたところから明らかであり,原告が通達第4の4キについて主張する個々の違法事由も,以下に述べるとおり理由がない。

(ア) 民法249条違反の主張について

「面積について持分の及ぶ範囲を数量的に確定できる」との主張は,各共有者が「共有物の全部につき」その持分に応じた使用・収益をすることができるとする民法249条の趣旨に反し,そもそも失当である。

また,「収入について持分の及ぶ範囲を数量的に確定」でき,事業性の認定につき持分に応じた(分配された)収入を考慮すべきであるとの主張は,事業性の捉え方と課税標準の捉え方(収益の分配が原則として持分の割合によることを前提として,各共有者に分配された収益(収入)から必要経費を控除した金額が課税標準となること)とを混同したものであって,失当というべきである。

(イ) 憲法14条違反の主張について

事業に当たるかどうかの問題は,課税客体である事業を行っているかどうかの問題であり,そのことと,所得計算の結果,実際に事業税の負担が生じるかどうかとは直接結びついていないから,応能原則違反の問題は生じない。

また,共有物全体を判断基準にすれば公共サービスが重複認定されて応益原則に反するとの原告の主張の趣旨は不明であるが,各共有者が,それぞれ物件全体に対する公共サービスを受益していることについては前記アのとおりである。そうである以上,事業性認定基準(課税の基準)が物件全体にわたるのは当然というべきである。

さらに,共有者の1人が共有物件を賃借した場合に関する主張は,そもそも自己使用であれば事業の用に供しているとはいえないから,的はずれの議論である。

(ウ) 地方税法10条の2第1項違反の主張について

地方税法10条の2第1項は,「徴収金」についての規定であり,税額計算の結果納付すべき税額がある場合に関する規定である。これに対し,個人事業税の課税標準は,各個人の所得を基礎に計算される(地方税法72条の17以下)。不動産貸付業の場合は,所得税法上の不動産所得が基礎となる。

原告の主張は,共有不動産の貸付業においては,税額計算の結果算定された各個人の「徴収金」について,各共有者が連帯して納税する義務を負うべきであるという主張と解されるが,この主張は地方団体側の徴収権が強化されるだけであって,各共有者の税額には変化がなく,原告にとっては意味がない。あるいは,もし原告が,共有不動産の貸付業においては,課税標準の算定においても全体の事業収入を基礎として算定し,このようにして算出された税額について連帯納税義務を負うと解すべきだと主張しているものとすれば,地方税法72条の16に反するばかりか,納税者有利の原則にも反するものというべきである(例えば,上記の場合は,1回の事業主控除(地方税法72条の18)しか認められないが,個人の所得を基礎とすれば,各個人ごとに事業主控除が認められる。)。したがって,いずれの主張も原告に有利な主張とはいえず,原告がそのように主張すること自体失当というべきである。

なお,原告は,通達第4の2(3)が,ある共有者について,当該共有物件のみでなく,単独所有の他の物件も併せて事業性を認定できることとしていることを根拠に,事業性を認定される者とされない者が生じ,不公平が生じると主張するが,ある共有者が,共有物件だけでなく単独所有の物件も併せ有している以上,それだけ多くの公共サービスを受けているものというべきであるから,これを加えて事業性を認定するのは当然である。

(エ) 不動産貸付業の本質に関する主張について

原告は,不動産貸付業の課税標準は個人の資産とすべきであると主張するが,事業税は,事業収入に応じて課税される応能税ではなく,個人や企業が都道府県から受ける公共サービスを根拠とする応益税であるから,公共サービスに事業性の根拠を求めることが妥当である。したがって,共有不動産の場合も,不動産全体を事業性認定の基準とすべきである。なお,その場合であっても,その課税標準は個人の所得である。

【事例1】については,事業税が応益税である以上,原告主張のような差異が生じても必ずしも不合理ではなく,合理的根拠があるというべきである。2つ目の例でいえば,事業規模からすれば,面積1000m2と面積600m2,賃料収入1200万円と800万円となり,前者の場合に事業としての規模を有するものとして,社会通念上その経費を負担させてもやむを得ないものとしたとしても,必ずしも不合理とはいえないものというべきである。

【事例2】については,契約上合意が認められた場合は,独占的に使用,収益し得ることとなるのであるから,建物の区分所有の場合と同様の認定がなされるものである。原告は,このような被告の主張を,小手先の操作で課税が回避されるので不当であると主張するが,実態が課税回避に利用されるおそれがあるからといって,独占的な契約があることを無視することはできない。課税回避に利用されないよう厳格に適用すれば済むことである。

(オ) 地方税法72条の16第1項違反の主張について

事業性の認定は,地方税法72条5項4号の問題であり,課税標準の問題は,事業税を負担すべき事業として認定された場合に,税負担の額をどのように算定すべきかの問題である。両者はそれぞれ別の問題として,順序立てて考慮すべきものである。原告は,応能税の性格があるから,課税標準たる所得を基準に事業かどうかを認定すべきであると主張するものであるが,事業税の性質論は別として,論理が逆転しており,本末転倒というほかない。

通達第4の4キは,地方税法72条5項4号が規定する不動産貸付業についての事業性の認定に関し,これを適正に認定するために定めた課税客体についての課税庁内部の基準であり,他方は事業性と論理的に区別された課税標準額たる同法72条の16第1項であって,それぞれ区別すべきである。したがって,事業性認定に当たって同法72条の16第1項違反の問題は生じようがないものというべきである。

なお,個人事業税の課税標準の算定方法については,前年中の所得について所得税法26条及び27条の不動産所得及び事業所得の計算の例によって算定するものとされている(地方税法72条の17)。ところで所得税については,所得計算の前提として,不動産貸付けを事業的規模で行っているかどうかについての判定基準をみると,共有不動産については,共有持分で按分した室数又は棟数ではなく,実際の(全体の)室数又は棟数で判定するものとされている。

ウ 原告は,建物3の貸付けの事業主はP1であって,建物3についてはP1のみが納税義務を負担し,建物3の面積・収入を原告に対する事業性認定の判断基準に含めるべきではないと主張する。

しかしながら,原告は,平成12年分及び平成13年分の所得税の確定申告において,建物1ないし建物3の貸付事業が原告に帰属するものとして,その合計賃料収入から必要経費(建物3についての租税公課,減価償却費を含む。。)を控除した額を「不動産所得」として申告したものである原告が上記主張のような考えに立つのであれば,本来,本件以前に,税務署長に対し,更正の請求(国税通則法23条1項1号)又は修正申告(同法19条)をして然るべきである。

原告の上記主張は,自らが行った確定申告と齟齬を来しているものであり,失当である。

エ 原告は,建物3の貸付けを原告及びP1を共に事業主とする共同事業と解するとしても,その共同事業団体の法的性格は民法上の組合であり,各人が納税義務者となり,その収入の帰属分に応じて課税されることとなるから,各構成員の事業性認定はそれぞれの持分に応じた面積及び収入で判定すべきであると主張する。

しかしながら,本件において,原告とP1が行う事業が民法上の組合に当たるとしても,そもそも,民法上の組合は納税義務の主体ではなく,その所得は出資持分等に応じて組合員の所得となり,したがって,組合財産を貸し付ける事業の収益はその出資持分等に応じて組合員に帰属するものの,組合財産は総組合員の共有に属するのであるから(民法668条),納税義務の主体としての組合員である個人について,不動産貸付業と認定すべきか否かという問題は,結局前記アで述べたことと同一に帰するのであり,組合員全員が,共同で,組合財産である不動産の全部を貸し付けているものと観念することができるものである。

原告の上記主張も,前記アと同様,事業性の捉え方と課税標準の捉え方とを混同したものであって,やはり失当である。

第3当裁判所の判断

1  争点の所在

不動産貸付業とは,不動産の貸付けを事業として行うこと,すなわち,反復継続して,対価の取得を目的として,不動産の貸付けを行うことをいうものと解されるところ,不動産の貸付けがこのような意味での事業に該当するかどうかの判定は,貸付不動産の規模(面積,個数),賃貸料収入の金額,貸付不動産の管理の状況等を総合的に勘案して行われるべきものである(この点は,都局長通達にも記載されているとおりである。)。

ところで,個人の具体的な営みが事業に該当するかどうかは,必ずしも一義的に明確であるとはいえず,何らの基準もなく個別に事業性を判定する方法をとると,事案ごとに区々ばらばらの判定となる事態を避け難く,また,課税庁の事務負担が重くなり,課税事務の迅速な処理が困難となるおそれがあること等から,あらかじめ定められた基準に基づいて判定する方が,納税者間の公平,徴税費用の節減等の見地からみて合理的である。そこで,東京都では,事業性の判定基準を定める都局長通達を発して,個人事業税に関する課税事務の統一的かつ迅速な執行を図っているものと解される(乙3)。したがって,都局長通達に定める事業性の判定基準が合理的なものである限り,これは事業性の判定基準として妥当性を有するものというべきである。

不動産貸付業について都局長通達が定める事業性の判定基準のうち,通達第4の2(3)については,原告もその合理性及び妥当性を争っておらず,社会通念に照らしても不合理な基準とはいえないから,事業性の判定基準として妥当性を有するものということができる。問題は,通達第4の4キの合理性であり,本件の争点はこれに尽きるものである(ただし,後記4は,都局長通達適用の前提事実に関する争点である。)。

2  事業税の趣旨・性格

(1)  文献によれば,事業税の趣旨・性格について,次のように説明されている。

ア 金子宏著『租税法第九版』(平成15年10月30日発行。乙4)

「(事業税)の基礎にあるのは,事業は,地方団体の各種の行政サービスを受益し,また各種の行政サービスの原因を作り出しているから,住民税とは別に,それに応じた負担をすべきである,という考え方である。事業税は企業が都道府県の公共サービスから受ける利益の対価であると考えると,所得よりも,受益の程度をよりよく現わす物差しを課税標準とする方が好ましい。」

イ 佐々木喜久治監修・正橋正一著『事業税』(平成8年7月1日発行。乙5)

「事業税は,事業を行う者と道府県との間の応益負担の原則に立脚して課される道府県税である。事業に対し,道府県が事業税を課するのは道府県が事業に対して与える各種のサーヴィスについて事業自らがこれに要する経費を負担すべきであるとする考え方に基づいている。いうまでもなく,事業は,労働,資本等の生産要素を結合することによって営まれるものであるが,その際,事業自体は道府県の各種行政による受益があってはじめてその経営を全うすることができるわけである。換言すれば,事業は,道路,橋梁,港湾,学校,公衆衛生施設等各種の道府県の設置する公共施設の利用による受益があってはじめて完全な収益活動を行うことができるものであるから,事業を行う者は当然にこれらの行政のために必要とされる経費を賄うための租税を負担すべきであると考えられるのである。」

「事業税は,法人税または所得税のような人税とはその性格を異にしている。所得税は同一個人に帰属するすべての所得を総合して課する租税であり,また,法人税は所得税の前取り的な考え方にたって課税されるものであって,いずれも人税であるが,事業税はこれらの人税と異なり,事業そのものに経済価値収得の力が存するものとして課する税である。従って,所得税及び個人に対して課する事業税においては,ともに基礎控除(事業税は事業主控除)の制度が認められているが,この制度は所得税の場合には最低生活費と考えられているのに対して,事業税の場合は事業そのものに潜在する最低経費的な色彩と事業に係る勤労所得相当部分の概算控除的性格が濃く,併せて少額所得者に対する負担の軽減を図っているものと考えられる。また,所得税において扶養控除その他の諸控除が行われているのに対して事業税においてそれらの諸控除が認められていないのも,両税の性格の相違に基づくものである。」

「事業税は事業に対する課税であることから,事業にとっては他の労賃利子と同様にその事業を行うための一種の経費であると考えられている。事業税が所得税または法人税の所得計算に際して必要な経費または損金に算入されるということは,このことを物語っているといえよう。国税である所得税や法人税,また,地方税である道府県民税や市町村民税が利潤のうちから支払われる税金であるのに対し,事業税はその経費のうちから支払われる税金である。」

「以上述べたような事業税の性格等からみれば,事業税の課税標準はその事業の規模または活動量を最もよく表現するものを選ぶべきことは当然であり,その意味合いにおいて売上金額,資本金額等のいわゆる外形標準的なものを課税標準とすることが適当であると考えられている。(…(中略)…)。ただ,現行事業税において一般的に所得を課税標準としているのはわが国経済の実情等によるものであって,事業税本来の在り方等からみれば充分検討の余地が存在するものといえよう。」

ウ 丸山高満著『地方税の一般理論』(昭和58年5月15日発行。乙6)

「事業税を地方税として賦課する考え方は,事業は,道路,教育,衛生その他各般の地方公共団体の施設を利用してその収益活動を行っているから,これらの施設に必要な経費を分担せしめるために課されるものとされている。シャウプ勧告も『都道府県が企業にある種の税を課することは正当である。というのは,事業および労働者がその地方に存在するために必要となって来る都道府県施策の経費支払を事業とその顧客が援助することは当然だからである。たとえば,工場とその労働者がある地域で発展増加してくれば,公衆衛生費は当然増大して来るのである。』と事業税課税の根拠を述べている。このような課税根拠論を普遍すれば,事業税は事業という収益活動を行っている事実に着目して,そこに担税力を見出して課税しようとするものであるから,事業税は,本来,所得課税の補完税たる性格をもつべきものである。したがって,事業税は,所得以外に,収益活動を通じて実現される担税力を測定する基準を求めてこれを課税標準として課することが期待されるものである。しかし,現行制度においては,歴史的理由と課税技術上の問題から,電気事業等の特定の事業を除いては所得を課税標準としているので,個人の事業税においては所得税の,法人の事業税においては法人税の付加税的色彩を有している部面が多く,納税者に二重課税ではないのかといった類の疑惑を招来する危険を有しているのである。このような危険を回避し,納税者の疑惑を払拭するためには,事業税をその性格に符合する税制に改変することが必要である。その方策としてはシャウプ勧告で勧告された付加価値税への変容が考えられる。」

(2)  以上の各文献で指摘されている諸点に加え,事業税に関し,いわゆるシャウプ勧告において,企業の付加価値を課税標準とすることが勧告されたことを受けて,昭和25年の税制改正で実際に制度化されたこと(ただし,実施されないままに廃止),現行の地方税法(ただし,平成15年法律第9号による改正前のもの)においても,法人の行う電気供給業,ガス供給業,生命保険業及び損害保険業に対しては,各事業年度の収入金額を課税標準としており(72条の12),また,事業税の課税標準の特例として,事業の情況に応じ,所得によらないで,資本金額,売上金額,家屋の床面積若しくは価格,土地の地積若しくは価格,従業員数等を課税標準とし,又は所得とこれらの課税標準とを併せ用いることができるとする規定が存在すること(72条の19)なども併せ考慮すると,事業税は,事業という収益活動の事実に担税力を見出して,事業そのものに対して課する税であり,事業が都道府県の公共サービスから受ける利益の対価としての性格を有するものと認められる。その意味では,被告のいう応益税としての性質を持った税であるということができる。

この点,原告が援用する財団法人日本税務研究センター編『地方税の法的課題』,(平成13年3月20日発行。甲7)には「地方税である事業税の課税根拠は,通常の企業課税である法人税とは異なり,租税能力説と応益説的な考え方とが混合されたものとされている。」との記述があり,また,ドイツにおいて営業税が主として収益に対する課税であると認識されてきたことが紹介され,さらに,わが国の事業税の沿革として,明治11年に道府県の営業税が採用され,そのときの課税標準は,業種別,資本金額又は売場面積をもとに定額とされていたが(いわゆる外形標準),政府の見解は,営業税は収益税であるが,収益の測定は困難であるので,外形標準によらざるを得ないものとされてきたものであり,昭和2年に至って,国税として純益を課税標準とする営業収益税に変更され,戦後,昭和23年に所得あるいは収入金額を課税標準とする事業税とされ,現行の事業税が形成されたという説明がされているが,他方で,上記文献には,「事業税とは,基本的に,企業が地方公共団体から受けるサービスに対するものであり,応益説的な考え方が妥当するとされてきているのである。そこで,事業税について企業の応益課税の基準を何に求めるかということが問題となるのであるが,企業が受けるサービスとは企業の経済活動の規模に対応するものであるということがいわれてきている。」「事業税とは,企業の収益力に対する課税であるとされてきたが,企業の収益力の基準として,シャウプ勧告は,付加価値を考えたのである。付加価値とは,企業が他の企業から仕入れた財・サービスに付加した価値である。そして,すべての企業の付加価値の合計が総生産であると考えられる。そこで,企業の付加価値とは,賃金・給与,個人に対する支払い利子・地代,及び企業の利益と等しくなるとしたのである。(…(中略)…)。この生産税の考え方では,利益説というものが根拠となる。つまり,生産税の考え方では,特に,政府サービスの対価というものが強調されるが,政府のサービスの配分の基準として,付加価値という考え方がでてくるのである。」との記述もあるのであるから,この文献が,前記(1)の各文献と殊更に違う内容を述べたものとは認められない(事業税が「租税能力説」的な考え方を含むという説明は,主として事業税の沿革について述べたものとも考えられる。)。

また,原告は,地方税法が事業税の課税標準として所得を用いていることからすると,応益税としての性質は抽象的なものにとどまり,課税標準という具体的な面では応能税的性質が機能していると主張して,事業税の応能税としての性格を強調するのであるが,事業税の性格は,事業税に関する法律の定めの全体的な構造や,立法の経緯,租税の体系の中における事業税の位置付け等を全体的にみた上で,判断すべきであるところ,これらの点からすれば応益税とみるべきであることは前記のとおりであり,地方税法が所得を事業税の課税標準としている点のみから,その性格を応能税であるとすることは相当ではない(なお,事業税の課税標準が所得とされていることは,前記(1)の各文献において,」「わが国経済の実情等「歴史的理由と課税技術上の問題」によるものとされ,「所得よりも,受益の程度をよりよく現わす物差しを課税標準とする方が好ましい」「売上金額,資本金額等のいわゆる外形標準的なものを課税標準とすることが適当である」「所得以外に,収益活動を通じて実現される担税力を測定する基準を求めてこれを課税標準として課することが期待される」などと評されているところである。)。

3  通達第4の4キの合理性

(1)  前記のような事業税の趣旨・性格からすると,個別具体の収益活動が事業税課税の対象となる事業に該当するかどうかの判定は,当該収益活動の事実そのものに着目して行うべきものと解するのが相当である。

このような観点から,共有不動産の貸付けの場合を考えてみると,共有不動産が貸し付けられている場合には,共有者間に不動産の各部についての独占的な使用収益の取り決めが存在するなど各共有者がそれぞれ独立に貸付けを行っているものと認められるような特段の事情のない限り,当該不動産の貸付部分の全部につき全共有者が共同して一括して貸し付けているものと評価することができるから,通達第4の2(3)の定める事業規模の不動産貸付けに該当するかどうかの判定に当たって,当該貸付けに係る共有不動産全体の面積及び賃貸料収入を基準とするという通達第4の4キの考え方には,相応の合理性があるものというべきである(本件の場合,建物3に係る建物賃貸借契約書(甲6)によれば,原告及びP1は,共同賃貸人として,建物3を一括して賃貸していることが認められ,原告とP1の間に建物3の独占的な使用収益に関する取り決めが存在することをうかがわせるような証拠はない。上記契約書中には,賃料及び保証金の各自の取り分に関する取り決めが存在するものの,独占的な使用収益に関する取り決めの存在までを推認させるものではない。)。

なお,所得税の課税標準である不動産所得の金額の計算上,不動産の貸付けが事業として行われている場合には,その不動産の取壊し,除却,滅失等の損失金額が全額必要経費に算入され,事業として行われていない場合には,その損失金額は不動産所得の金額を限度として必要経費に算入されることとなるところ(所得税法51条1項,4項),証拠(乙7)によれば,所得税の課税実務においては,建物の貸付けが「事業」としての規模で行われているかどうかは,共有建物の場合には,原則として,共有持分で按分した室数又は棟数ではなく,実際の室数又は棟数により判定することとされていることが認められるから,通達第4の4キの考え方は,このような他の税の課税実務とも整合するものである。

(2)  原告の主張について

ア 民法249条違反の主張について

民法249条は,「各共有者は,共有物の全部について,その持分に応じた使用をすることができる。」と定めるところ,これは,共有不動産の貸付けが事業に該当するかどうかの判定とは直接関係する規定ではない(なお,この点については原告も,事業性の認定に同条の適用はないと主張している。)から,同条違反をいう原告の主張は,要するに,同条の趣旨からしても,各共有者が共有不動産の貸付けによって得る収益は持分に応じたものでしかないから,通達第4の2(3)の適用に当たっても,持分に応じた面積及び収入を基準とすべきであるというものと解される。

しかしながら,前記のとおり,事業性の判定は収益活動の事実そのものに着目して行うべきものであり,当該事業が1人によるのか複数人によるのかということや,複数人による場合に事業収益が各共同事業者間でどのような割合で分配されるかということは,事業性の判定においてはひとまず関係のないことである(事業主体が1人であるか複数人であるかによって事業そのものの性質が異なるものでもないし,事業収益の分配の結果は課税標準である所得の計算において考慮されることになる。)。したがって,原告の上記主張は理由がない。

イ 応能原則(憲法14条)違反の主張について

原告の主張は,要するに,事業性認定の際,共有不動産について持分割合を考慮せず,実際の所得よりも過大な担税力があることを前提に事業性を認定すると,事業を営んでいない他の同程度の所得の者との間に不平等が生じるので,憲法14条1項の平等原則に違反するというものと解される。

しかしながら,前記のとおり,事業税本来の趣旨は,各事業者の所得にではなく,事業という収益活動の事実そのものに担税力を見出して,課税を行うというものであり,事業を行っている者と行っていない者との間に課税上の区別を設けるものである。しかもその区別は,事業が都道府県から各種の公共サービスを受益しており,これについて相応の負担をすべきであるとの考え方に立脚するものであるから,合理性のあるものといえる。したがって,共有不動産の貸付事業に参加している共有者が,事業税を課されることにより,結果的に事業を営んでいない他の同程度の所得の者よりも重い納税義務を負担することになっても,それは結局は事業を行っているかどうかの違いに基づく合理的な差異というべきであり,これをもって憲法14条1項の平等原則に違反するということはできない。

なお,原告は,上記の主張及び後記ウの主張に関連して,共有不動産を共有者の一部が賃借している場合を例に挙げるが,共有者自らが使用するのであれば,そもそも事業の用に供しているとはいえないから,適切な例に基づく主張とはいえない。

ウ 応益原則(憲法14条)違反の主張について

原告の主張は,必ずしも趣旨が明確ではないが,要するに,共有不動産に係る事業が公共サービスから受ける利益の量も持分に応じたものであるから,持分割合を考慮しないと,持分の多い者と少ない者との間に不平等が生じるので,憲法14条1項の平等原則に違反するという主張かとも解される。

しかしながら,このような共有者間の事業税負担の平等という問題は,当該共有不動産の貸付けがそもそも事業と認定されなければ生じない問題であり,事業と認定されて初めて問題になるものであるから,事業性の判定基準の当否を論ずるに当たってこのような観点を持ち出すのは適切とはいえず,また,事業者間の税負担の公平は,事業税の課税標準が各自の所得とされていることによって,一応担保されているものといえるから,原告の上記主張は理由がない。

エ 地方税法10条の2第1項違反の主張について

地方税法10条の2第1項は,「共有物,共同使用物,共同事業,共同事業により生じた物件又は共同行為に対する地方団体の徴収金は,納税者が連帯して納付する義務を負う。」と規定する。通達第4の4キがこの規定に違反するという原告の主張は,必ずしも趣旨が明確ではないが,要するに,通達第4の4キの考え方は,共有不動産の貸付けを共有者全員が行う1個の共同事業と解するものであるところ,このように解すると,共有者の中に他の貸付不動産と併せて事業性を認定される者が現れた場合に,単独では事業性を認定されない共有者も事業税を連帯して負担させられることになるから,不合理であるという主張かとも解される。

しかしながら,共有不動産の貸付けが事業に該当せず,自己の他の貸付不動産と併せても事業該当性が認められない共有者が,当該共有不動産の貸付けについて事業税を負担しなければならないいわれはない(地方税法10条の2第1項も,事業税に関していえば,当該共同事業自体が事業税の課税対象となる事業に該当する場合に適用すべきものと解される。)から,原告の上記主張は前提を誤っており失当である。

なお,原告は,上記の主張に関連して,通達第4の4キを前提に,通達第4の2(3)に従えば,貸付けに係る共有不動産の共有者間で,不動産貸付業者と認定される者と認定されない者が生じ,公共サービスを受ける事業を共に営む者の間に,税負担に関する不公平が発生してしまうとも主張するが,このような「不公平」は,原告の主張するように当該共有不動産の貸付けについて持分割合に応じて事業性を判定したとしても同様に生じる問題であり,要するに通達第4の2(3)の基準を満たす者と満たさない者との間の「不公平」を言っているものにすぎず,結局前記イの平等原則違反の主張(事業を行っている者と行っていない者との間の不平等)と同じことであるから,理由のない主張というべきである。

オ 不動産貸付業の本質に関する主張について

原告は,不動産貸付業は,資産から直接,収益を発生させるという性質を持つものであるから,共有不動産の貸付けに関する課税の基準は,各共有者の資産,すなわち各自の持分を基準とすべきであると主張する。

しかしながら,不動産貸付業といえども,事業税賦課の根拠は当該事業が都道府県の公共サービスを受けていることに求められるべきであり,この点では他の事業と何ら異なるものではないから,不動産貸付業に限って当該収益活動の事実そのものに着目せず,異なる基準を用いて事業性を判定すべきであるとの主張は正当ではない。

なお,原告は,これに関連して,いくつかの事例を挙げて通達第4の4キの不合理性を主張するが,これらの各事例に見られる納税者間の差異は,結局は通達第4の2(3)の基準を満たす者と満たさない者との間の差異に帰着するのであり,このような差異が不合理なものでないことは既に指摘したとおりである。むしろ,原告の主張を前提とすると,大規模な商業ビルを建設し,それを多数のテナントに賃貸して多額の賃料を得ているという,外形的には明らかに不動産貸付業が行われ,行政サービスによる相当程度の利益を享受していると見られるような場合であっても,当該商業ビルが相当数の者の共有となっている結果,個々の共有者の持分割合を前提にした計算をすると,都局長通達の定める基準に達しない場合には,事業税が一切課されないということになるが,このような結論は,事業税の応益税的性格に明らかに反するものであるといわざるを得ない。

カ 地方税法72条の16第1項違反の主張について

ここでの原告の主張は,要するに,事業税の応能税的性格を強調しつつ,前項までに検討してきた各種の主張を繰り返すものであり,これらの主張が理由のないものであることは既に各所において指摘したとおりである。

キ 建物3の貸付けの事業主体が民法上の組合であるとの主張について

ここでの原告の主張も,建物3の貸付けの主体を民法上の組合としつつも,原告及びP1がそれぞれ納税義務者となるべきことを前提として,収入の帰属の割合である持分割合に応じた面積及び収入で事業性を判定すべきであると主張するものであるから,前項までに検討してきた原告の主張と実質的に異なるものではなく,理由のない主張というべきである。

4  建物3の貸付けの事業主がP1であるとの原告の主張について

原告は,建物3の貸付けの収益は共有持分の約6割5分を有するP1のみが享受するものであるから,原告は建物3の貸付けの主体ではないと主張する。

しかしながら,弁論の全趣旨によれば,原告は,平成12年分及び平成13年分の所得税の確定申告において,建物1及び建物2の賃料収入に,建物3のうち貸付面積160.17m2に相当する賃料収入208万8000円を合算し,その合計賃料収入から建物3についての租税公課及び減価償却費を含む必要経費を控除した額を不動産所得として申告したことが認められる。

そうすると,建物3の貸付けの収益は持分割合に応じて原告も享受しているものであり,原告もP1とともに建物3の貸付けの主体であるということができるから,原告の主張は理由がなく,原告が建物3の貸付けの主体であるとの前提で行われた本件各処分は適法である。

5  本件各処分の適法性

以上のとおり,通達第4の4キの基準には合理性が認められ,不動産貸付業の事業性の判定基準として妥当性を有するものといえるから,これに基づいてされた本件各処分は適法であり,本件各処分の違法をいう原告のその他の主張も理由がない。

第4結論

以上の次第で,原告の請求はいずれも理由がないから棄却することとし,訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 鶴岡稔彦 裁判官 古田孝夫 裁判官 潮海二郎)

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