大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京地方裁判所 平成18年(ワ)1276号 判決 2006年10月26日

原告

X1

ほか三名

被告

三徳実業株式会社

主文

一  被告は、原告X1に対し、二三九五万七四四〇円及び内金二〇八八万九四八二円に対する平成一六年八月二三日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  被告は、原告X2に対し、七八七万七二六五円及び内金六八六万三一六一円に対する平成一六年八月二三日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

三  被告は、原告X3に対し、七八七万七二六五円及び内金六八六万三一六一円に対する平成一六年八月二三日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

四  被告は、原告X4に対し、七八七万七二六五円及び内金六八六万三一六一円に対する平成一六年八月二三日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

五  原告らのその余の請求をいずれも棄却する。

六  訴訟費用は、これを五分し、その二を原告らの負担とし、その余を被告の負担とする。

七  この判決は、第一項から第四項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由

第一請求

一  被告は、原告X1に対し、四一九五万三五三二円及び内金三七四六万八四一六円に対する平成一六年八月二三日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  被告は、原告X2に対し、一五二六万八九九四円及び内金一三六七万二八〇六円に対する平成一六年八月二三日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

三  被告は、原告X3に対し、一五二六万八九九四円及び内金一三六七万二八〇六円に対する平成一六年八月二三日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

四  被告は、原告X4に対し、一五二六万八九九四円及び内金一三六七万二八〇六円に対する平成一六年八月二三日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

本件は、被告の従業員であるAの飲酒運転により死亡したBの夫及び子である原告らが、被告に対し、自動車損害賠償保障法三条に基づき、損害賠償を求めた事案である。

一  前提となる事実(当事者間に争いのない事実又は文章末尾の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定することができる事実)

(1)  (当事者)

原告X1はB(昭和○年○月○日生。)の夫であり、原告X2、原告X3及び原告X4は、いずれもBの子である。

(2)  (本件事故)

日時:平成一四年一二月九日午前一時一五分ころ

場所:千葉県松戸市南花島三丁目三六番地の一

被害者:B(当時四三歳)

加害車両:普通乗用自動車(<番号省略>)

運転者―A

所有者―被告

事故態様:Aは、平成一四年一二月九日午前一時五分ころ、千葉県松戸市松戸一三三六番地付近道路において、運転開始前に飲んだ酒の影響により前方注視及び運転操作が困難な状態で、加害車両を走行させ、もって、アルコールの影響により正常な運転が困難な状態で加害車両を走行させたことにより、同日午前一時一五分ころ、同市南花島三丁目三六番地の一付近道路において、仮眠状態に陥り、加害車両を時速五〇ないし五五kmで道路左外側線側に進出させ、折から同道路左側線付近を対面歩行してきたB外四名に加害車両を順次衝突させて跳ね飛ばし、Bらを駐車車両に激突ないし路上に転倒させるなどした。この結果、Bは、心破裂の傷害を負い、即死した。

(3)  (責任)

被告は加害車両の保有者であって、同車両を自己のために運行の用に供していた者であるから、自動車損害賠償保障法三条に基づき、原告らに生じた損害を賠償すべき責任がある。

(4)  (損害のてん補)

自賠責保険から、平成一六年八月二三日、原告X1に対し、三〇〇〇万三四〇〇円が支払われた。なお、自賠責保険から、三井住友海上火災保険株式会社に対し、治療費五万七二五〇円が支払われている。【甲五、六】

(5)  (刑事処分)

Aは、平成一五年一〇月六日、千葉地方裁判所松戸支部において、危険運転致死罪により、懲役一五年の刑を言い渡された。【甲三】

二  争点

本件においては、本件事故態様及び被告が自動車損害賠償保障法三条に基づく責任を負うことについては当事者間に争いがなく、争点は損害の算定である。

三  争点についての当事者の主張

(1)  原告らの主張

ア Bの損害

(ア) 治療費 五万七二五〇円

(イ) 逸失利益 三七九七万二五〇五円

基礎収入:三九三万一三〇〇円(平成一四年賃金センサス第一巻第一表産業計企業規模計四〇~四四歳の女性労働者の平均賃金)

生活費控除率:三〇%

中間利息控除:一三・七九八六

(就労可能年数二四年)

(ウ) 慰謝料 四四〇〇万七七二七円

イ 原告X1の損害

(ア) 葬儀費用 一五〇万円

(イ) 慰謝料 五〇〇万円

(ウ) 相続したBの損害賠償請求権

原告X1は、Bの相続人として、法定相続分に従い、ア(イ)と(ウ)の損害の合計八一九八万〇二三二円の二分の一である四〇九九万〇一一六円を取得した。

(エ) 損害のてん補

原告X1は、自賠責保険から、三〇〇〇万三四〇〇円の法定相続分(二分の一)にあたる一五〇〇万一七〇〇円の損害のてん補を受けた。

(オ) 弁護士費用 四九八万円

(カ) 以上により、損害賠償請求額は合計三七四六万八四一六円である。

(キ) 確定遅延損害金

(カ)の損害額に(エ)のてん補額一五〇〇万一七〇〇円を加えた五二四七万〇一一六円に対する、本件事故日である平成一四年一二月九日から上記保険金支払の日の前日である平成一六年八月二二日までの六二四日間の民法所定の年五分の割合による確定遅延損害金は四四八万五一一六円である。

(ク) よって、原告X1は、被告に対し、(カ)と(キ)の合計四一九五万三五三二円及び(カ)の三七四六万八四一六円に対する自賠責保険支払の日である平成一六年八月二三日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

ウ 原告X2の損害

(ア) 慰謝料 三〇〇万円

(イ) 相続したBの損害賠償請求権

原告X2は、Bの相続人として、法定相続分に従い、ア(イ)及び(ウ)の損害の合計八一九八万〇二三二円の六分の一である一三六六万三三七二円を取得した。

(ウ) 損害のてん補

原告X2は、自賠責保険から、三〇〇〇万三四〇〇円の法定相続分(六分の一)にあたる五〇〇万〇五六六円の損害のてん補を受けた。

(エ) 弁護士費用 二〇一万円

(オ) 以上により、損害賠償請求額は合計一三六七万二八〇六円である。

(カ) 確定遅延損害金

(オ)の損害額に(ウ)のてん補額を加えた一八六七万三三六二円に対する、本件事故日である平成一四年一二月九日から上記保険金支払の日の前日である平成一六年八月二二日までの六二四日間の民法所定の年五分の割合による確定遅延損害金は一五九万六一八八円である。

(キ) よって、原告X2は、被告に対し、(オ)と(カ)の合計一五二六万八九九四円及び(オ)の一三六七万二八〇六円に対する自賠責保険支払の日である平成一六年八月二三日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

エ 原告X3の損害

(ア) 慰謝料 三〇〇万円

(イ) 相続したBの損害賠償請求権

原告X3は、Bの相続人として、法定相続分に従い、ア(イ)及び(ウ)の損害の合計八一九八万〇二三二円の六分の一である一三六六万三三七二円を取得した。

(ウ) 損害のてん補

原告X3は、自賠責保険から、三〇〇〇万三四〇〇円の法定相続分(六分の一)にあたる五〇〇万〇五六六円の損害のてん補を受けた。

(エ) 弁護士費用 二〇一万円

(オ) 以上により、損害賠償請求額は合計一三六七万二八〇六円である。

(カ) 確定遅延損害金

(オ)の損害額に(ウ)のてん補額を加えた一八六七万三三六二円に対する、本件事故日である平成一四年一二月九日から上記保険金支払の日の前日である平成一六年八月二二日までの六二四日間の民法所定の年五分の割合による確定遅延損害金は一五九万六一八八円である。

(キ) よって、原告X3は、被告に対し、(オ)と(カ)の合計一五二六万八九九四円及び(オ)の一三六七万二八〇六円に対する自賠責保険支払の日である平成一六年八月二三日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

オ 原告X4の損害

(ア) 慰謝料 三〇〇万円

(イ) 相続したBの損害賠償請求権

原告X4は、Bの相続人として、法定相続分に従い、ア(イ)及び(ウ)の損害の合計八一九八万〇二三二円の六分の一である一三六六万三三七二円を取得した。

(ウ) 損害のてん補

原告X4は、自賠責保険から、三〇〇〇万三四〇〇円の法定相続分(六分の一)にあたる五〇〇万〇五六六円の損害のてん補を受けた。

(エ) 弁護士費用 二〇一万円

(オ) 以上により、損害賠償請求額は合計一三六七万二八〇六円である。

(カ) 確定遅延損害金

(オ)の損害額に(ウ)のてん補額を加えた一八六七万三三六二円に対する、本件事故日である平成一四年一二月九日から上記保険金支払の日の前日である平成一六年八月二二日までの六二四日間の民法所定の年五分の割合による確定遅延損害金は一五九万六一八八円である。

(キ) よって、原告X4は、被告に対し、(オ)と(カ)の合計一五二六万八九九四円及び(オ)の一三六七万二八〇六円に対する自賠責保険支払の日である平成一六年八月二三日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

(2)  被告の主張

ア Bの逸失利益については争う。基礎収入は全年齢の平均賃金とするのが相当である。

イ 慰謝料については争う。

ウ その余の損害については不知ないし争う。

エ なお、自賠責保険による既払金は、治療費を含めると三〇〇六万一二五〇円である。

第三当裁判所の判断

一  Bの損害について

(1)  証拠(甲五)及び弁論の全趣旨によれば、治療費五万七二五〇円はBの損害であると認められる。

(2)  逸失利益について

ア 原告らは、逸失利益の算定に当たって、Bの基礎収入を平成一四年賃金センサス第一巻第一表産業計企業規模計四〇~四四歳の女性労働者の平均賃金とするのに対し、被告は、同年の賃金センサスを用いるにしても、女性労働者の全年齢の平均賃金を基礎収入とすべきであると主張している。

そこで検討するに、証拠(甲一三)及び弁論の全趣旨によれば、Bは、主婦として稼働すると共に、損保会社の営業や宅急便のアルバイトをしていたことが認められるところ、Bがアルバイトにより得ていた収入の額は不明であり、主婦としての家事労働の内容や労働対価性は、労働能力喪失期間を通じ、年齢変化に応じた格別の変動があるとは通常認めがたいことを考慮すると、女性労働者の全年齢の平均賃金を基礎収入とするのが相当である。

したがって、平成一四年賃金センサス第一巻第一表産業計企業規模計の女性労働者の全年齢の平均賃金である三五一万八二〇〇円を基礎収入とする。

イ 弁論の全趣旨によれば、Bの逸失利益の算定に当たって、生活費控除率を三〇%とするのが相当であると認められ、中間利息控除については、死亡当時、Bは四三歳であったことから、就労可能年数二四年に対応するライプニッツ係数一三・七九八六を用いることにする。

ウ 以上により、Bの逸失利益は、次の算式に基づき、三三九八万二三六四円となる。

(算式) 351万8200円×(1-0.3)×13.7986≒3398万2364円

(3)  慰謝料について

証拠(甲三)及び弁論の全趣旨によれば、Aは、本件事故の前日の午後五時三〇分ころから行われた勤務先の忘年会や二次会で飲酒し、飲酒量は、本件事故の約一時間後の検査で呼気一リットル中約〇・五五ミリグラムという高濃度のアルコールが検出されるほど多量に及んでいたといえるところ、部下に対しては当日車で参加しないように注意が喚起されていたにもかかわらず、自らは車で出勤し、飲酒後も、翌朝も車で出勤したいとの考えから、アルコールの影響により正常な運転が困難な状態であったにもかかわらず加害車両を走行させ、その後、仮眠状態に陥り、時速五〇ないし五五kmで走行したために、本件事故を惹き起こしたものと認められる。他方、Bに落ち度というべき事情は見受けられない。このような本件事故の悪質さや、Aの運転動機の身勝手さ、そして、何より、薬局を経営する原告X1や、当時、高校生であった原告X2、小学六年生であった原告X3、及び小学四年生であった原告X4の成長を見届けることなく生命を奪われた、Bの無念さなど、本件に顕れた一切の事情を総合考慮すると、Bに対する慰謝料としては二七〇〇万円が相当である。

(4)  以上により、Bの損害は六一〇三万九六一四円となる。

二  原告X1の損害について

(1)  弁論の全趣旨によれば、Bの葬儀費用一五〇万円は原告X1の損害であると認められる。

(2)  原告X1は固有の慰謝料として五〇〇万円を請求している。

原告X1は、本件事故の数時間前までBと一緒に食事をしていたが、先に帰宅したことから、なぜ一緒に帰宅させなかったのか、後悔の念にさいなまれている。本件事故によって、原告X1の生活は一変し、薬局経営の傍ら、家事にも従事し、いまだ母親の存在を必要とする原告X3や原告X4を一人で養育するに至っている。家計的にも窮する状態に陥っている。(甲三、一三)

このほか、前述のような本件事故の態様や、突如妻を失った無念さなど、本件に顕れた一切の事情を総合考慮すると、原告X1に対する慰謝料としては二〇〇万円が相当である。

(3)  原告X1は、相続により、Bの損害である六一〇三万九六一四円の賠償請求権のうち、法定相続分(二分の一)である三〇五一万九八〇七円の損害賠償請求権を取得した。

(4)  ところで、原告らは、自賠責保険から損害のてん補を受けたが、これを確定遅延損害金ではなく損害に充当して損害を算定しており、この点につき被告は特に異議を述べていない。そして、前記前提となる事実のとおり、原告X1は自賠責保険から治療費を含む合計三〇〇六万〇六五〇円の支払を受けたが、これにより、原告X1は、法定相続分(二分の一)である一五〇三万〇三二五円の損害のてん補を受けたことになる。したがって、原告X1の損害の残額は、次の算式により、一八九八万九四八二円(<1>)となる(なお、被告は、自賠責保険による既払金は、治療費を含め三〇〇六万一二五〇円であると主張するが、証拠(甲五)によれば、自賠責保険による既払金は計三〇〇六万〇六五〇円であると認められる。)。

(算式) (150万円+200万円+3051万9807円)-1503万0325円=3401万9807円-1503万0325円=1898万9482円

(5)  原告X1の弁護士費用は、上記の認容額にかんがみ、一九〇万円(<2>)を損害と認める。

(6)  原告X1は、Bの治療費を除く損害に対する、本件事故日から自賠責保険から損害のてん補を受けた日の前日である平成一六年八月二二日までの六二四日間の民法所定の年五分の割合による確定遅延損害金を請求しており、その額は、次の算式により、三〇六万七九五八円(<3>)となる。

(算式) (3398万2364円+2700万円)×2分の1=3049万1182円

(150万円+200万円+3049万1182円+190万円)×0.05×624/365≒306万7958円

(7)  以上により、原告X1の被告に対する請求は、二三九五万七四四〇円(<1>+<2>+<3>)及び内金二〇八八万九四八二円(<1>+<2>)に対する平成一六年八月二三日から支払済みまで年五分の割合による金員の限度で理由がある。

三  原告X2の損害について

(1)  原告X2は固有の慰謝料として三〇〇万円を請求している。

原告X2は、本件事故当時高校生であり、Bの死亡による衝撃の大きさは、Bへの手紙(甲九)に「本当に残念で今にもつぶれそうだよ。」と記していることから容易に推察することができるところであり、Bの死亡後、遅刻や欠席が増えるなど生活態度に変化が見られるようになったことについても、母親を失ったことによる影響がうかがわれる。このほか、前述のような本件事故の態様など、本件に顕れた一切の事情を総合考慮すると、原告X2に対する慰謝料は一〇〇万円が相当である。

(2)  原告X2は、相続により、Bの損害である六一〇三万九六一四円の賠償請求権のうち、法定相続分(六分の一)である一〇一七万三二六九円の損害賠償請求権を取得した。

(3)  原告X2は、自賠責保険から三〇〇六万〇六五〇円の法定相続分(六分の一)である五〇一万〇一〇八円の損害のてん補を受けており、これにより原告X2の損害の残額は、次の算式により、六一六万三一六一円(<1>)となる。

(算式) (100万円+1017万3269円)-501万0108円=1117万3269円-501万0108円=616万3161円

(4)  原告X2の弁護士費用は、上記の認容額にかんがみ、七〇万円(<2>)を損害と認める。

(5)  原告X2は、原告X1と同様に、確定遅延損害金を請求しており、その額は、次の算式により、一〇一万四一〇四円(<3>)である。

(算式)(3398万2364円+2700万円)×6分の1≒1016万3727円

(100万円+1016万3727円+70万円)×0.05×624/365≒101万4104円

(6)  以上により、原告X2の被告に対する請求は、七八七万七二六五円(<1>+<2>+<3>)及び内金六八六万三一六一円(<1>+<2>)に対する平成一六年八月二三日から支払済みまで年五分の割合による金員の限度で理由がある。

四  原告X3の損害について

(1)  原告X3は固有の慰謝料として三〇〇万円を請求している。

原告X3は、本件事故当時小学六年生であり、翌春には中学校に進学することから、その制服姿を見せることなく母親を失った無念さや、あまりの突然さに母親の死を事実として受け容れることができなかったことがうかがわれるのであって(甲一〇)、このほか、前述のような本件事故の態様など、本件に顕れた一切の事情を総合考慮すると、原告X3に対する慰謝料は一〇〇万円が相当である。

(2)  原告X3は、原告X2と同様に、相続により、一〇一七万三二六九円の損害賠償請求権を取得した。この結果、原告X3は、計一一一七万三二六九円の損害賠償請求権を有することになるが、自賠責保険からの五〇一万〇一〇八円の損害のてん補により、原告X3の損害の残額は六一六万三一六一円(<1>)となる。

(3)  原告X3の弁護士費用は、上記の認容額にかんがみ、七〇万円(<2>)を損害と認める。

(4)  原告X3は、原告X2らと同様に、確定遅延損害金を請求しており、その額は一〇一万四一〇四円(<3>)である。

(5)  以上により、原告X3の被告に対する請求は、七八七万七二六五円(<1>+<2>+<3>)及び内金六八六万三一六一円(<1>+<2>)に対する平成一六年八月二三日から支払済みまで年五分の割合による金員の限度で理由がある。

五  原告X4の損害について

(1)  原告X4は固有の慰謝料として三〇〇万円を請求している。

原告X4は、本件事故当時小学四年生で、母親に甘えたい盛りであったところ、突如、母親を失い、その寂しさの甚大さはBへの手紙(甲一一)の最後に記した「もっとながくいてほしかった」、「もっと大きくなって、みていてほしかった」との言葉から容易に推察できる。このほか、母親の葬儀が終わるまで、けなげに母親の死に耐えていたことがうかがえることや(甲一三)、前述のような本件事故の態様など、本件に顕れた一切の事情を総合考慮すると、原告X4に対する慰謝料は一〇〇万円が相当である。

(2)  原告X4は、原告X2らと同様に、相続により、一〇一七万三二六九円の損害賠償請求権を取得し、計一一一七万三二六九円の損害賠償請求権を有することになるが、自賠責保険から五〇一万〇一〇八円の損害のてん補を受けており、この結果、原告X4の損害の残額は六一六万三一六一円(<1>)となる。

(3)  原告X4の弁護士費用は、上記の認容額にかんがみ、七〇万円(<2>)を損害と認める。

(4)  原告X4は、原告X2らと同様に、確定遅延損害金を請求しており、その額は一〇一万四一〇四円(<3>)である。

(5)  以上により、原告X4の被告に対する請求は、七八七万七二六五円(<1>+<2>+<3>)及び内金六八六万三一六一円(<1>+<2>)に対する平成一六年八月二三日から支払済みまで年五分の割合による金員の限度で理由がある。

第四結論

以上の次第で、原告らの請求は主文第一項から第四項の限度で理由があるから、主文のとおり判決する。

(裁判官 佐久間邦夫 齋藤顕 蛭川明彦)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例