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東京地方裁判所 平成18年(行ウ)418号 決定 2007年3月14日

被告

補助参加申立人ジェーアール西日本労働組合大阪地方本部

異議申立人(原告)

西日本旅客鉄道株式会社

被告

処分行政庁

中央労働委員会

被告補助参加人

ジェーアール西日本労働組合

主文

1  本件補助参加申立てを却下する。

2  本件補助参加申立てに対する異議の申立てによって生じた費用は、被告補助参加申立人の負担とする。

理由

第1申立ての趣旨

本件基本事件について、被告補助参加申立人ジェーアール西日本労働組合大阪地方本部は、被告(処分行政庁中央労働委員会)を補助するため、本訴に参加する。

第2事案の概要及び争点

1  被告補助参加人ジェーアール西日本労働組合(以下「補助参加人JR西労」という。)及びジェーアール西日本労働組合近畿地方本部(以下「近畿地本」という。)は、平成6年6月28日、大阪府労働委員会(以下「大阪府労委」という。)に対し、①原告大阪支社鳳電車区計画助役Y1が近畿地本に所属していたX1組合員に対し転勤等の人事権を利用して脱退勧奨をしたこと、②原告大阪支社が近畿地本からの同年5月11日付け団体交渉申入れを拒否したこと、③原告大阪支社が、同明石電車区に勤務していた補助参加人JR西労組合員について、同月23日付けで転勤させたことが不当労働行為に当たるとして、不当労働行為救済命令申立てをしたところ、大阪府労委は、同10年9月28日付けで上記申立てをすべて棄却した。補助参加人JR西労及び近畿地本が、中央労働委員会(以下「中労委」という。)に対し、再審査申立てをしたところ、中労委は、平成18年6月21日付けで、上記初審命令を一部変更し、上記①の脱退勧奨は不当労働行為に当たるとして、原告に対し、支配介入の禁止、謝罪文の手交を命じた。本件基本事件は、原告が上記中労委命令のうち原告に対し支配介入の禁止、謝罪文の手交を命じた部分の取消しを求めた事案である。

2  被告補助参加申立人ジェーアール西日本労働組合大阪地方本部(以下「申立人大阪地本」という。)は、補助参加人JR西労の組織改編に伴い近畿地本は解散され、新たに原告の各支社に対応する組織として申立人大阪地本、京都地方本部、神戸地方本部が結成されたところ、本件基本事件については、原告大阪支社に対応する申立人大阪地本が訴訟の結果について利害関係を有しているとして、平成18年10月11日、被告を補助するため民訴法42条に基づき補助参加申立てをした。これに対し、原告は、申立人大阪地本は法人ではなく、民訴法29条所定の法人でない社団にも該当しないから当事者能力を有しないとして、申立人大阪地本の補助参加申立てについて異議を述べた。

3  本件の争点は、申立人大阪地本が権利能力なき社団に当たり当事者能力を有するか否かである。

第3当裁判所の判断

1  民訴法29条は、いわゆる権利能力のない社団の当事者能力について規定するところ、権利能力のない社団が成立するためには、団体としての組織を備え、多数決の原則が行われ、構成員の変更にもかかわらず団体が存続し、その組織において代表の方法、総会の運営、財産の管理等団体としての主要な点が確定していることを要すると解するのが相当である(最一小判昭和39年10月15日民集18巻8号1671頁参照)。以下、このような見地から申立人大阪地本が権利能力のない社団に当たり当事者能力を有するか否かについて検討する。

2  一件記録によれば、以下の事実が認められる。

(1)  補助参加人JR西労は、原告の従業員等で組織する労働組合である。補助参加人JR西労は、平成18年7月10日、組合規約を一部改正し、組織を中央本部・地域本部・地方本部・支部・分会・業職種別分科会及び青年部に改編した(規約14条)。そして、補助参加人JR西労は、近畿地本について、関西地域本部及びその下部組織である申立人大阪地本、京都地方本部、神戸地方本部に改編した。

(2)  補助参加人JR西労は、「ジェーアール西日本労働組合地方本部等機関設置運営規則」を定めているところ、同規則には概略以下の規定が存在する。

(地方本部の任務)

第2条 地方本部等は、綱領・規約・諸規則にもとづき関西地域本部から指示された業務を遂行する。

(組織)

第4条 関西地域本部規約・諸規則にもとづき関西地域本部大会の決定により地方本部・支部・分会をおく。

2 関西地域本部内に設置する、地方本部・支部・分会の運営は関西地域本部規約・諸規則および中央本部規約を準用し、必要により別に定める。

(機関)

第5条 地方本部・支部・分会に次の機関をおく。

(1)  地方本部執行委員会

(2)  支部執行委員会

(3)  分会大会(分会総会とする場合もある)

(4)  分会執行委員会

(役員)

第6条 地方本部・支部・分会に執行委員長1名・副執行委員長若干名・書記長1名・執行委員若干名、および必要により書記次長および会計監査員の役員をおく。

(役員の任務)

第7条 地方本部・支部・分会役員の任務は、次のとおりとする。

(1)  地方本部・支部・分会執行委員長は、地方本部・支部・分会を代表する。((2)号以下省略)

(役員の選出)

第8条 地方本部役員および支部役員は、関西地域本部大会において組合員の中から代議員の直接無記名投票により選出し、任期は2年間とする。地方本部役員および支部役員の選出ならびに欠員補充の手続は、中央本部役員選挙規則に準ずる。(2項省略)

(会計)

第9条 地方本部および支部の経費は、関西地域本部の会計をもってまかなう。

(2項省略)

(3)申立人大阪地本は、「ジェーアール西日本労働組合大阪地方本部規約」を定めているところ、同規約には概略以下の規定が存在する(なお、「大阪地本」とは申立人大阪地本のことであり、「JR西労」とは補助参加人JR西労のことである。)。

(機関)

第11条 大阪地本に、地本執行委員会の機関を置く。

(地本執行委員会)

第12条 地本執行委員会は、地域本部執行委員会の決定にもとづき、具体的事項および緊急の事項について運営し、地本役員で構成する。

2 地本執行委員会は、地本執行委員長が招集し、構成員の3分の2以上の出席によって成立する。

3  地本執行委員会の議長は、地本執行委員長がつとめ、議事は、地本執行委員会定数の過半数で決定する。可否同数の場合は、議長が決定する。

(地本役員の定数)

第14条 地本役員に地本執行委員長1名・地本執行副委員長若干名・地本書記長1名・地域本部執行委員若干名の役員を置く。(2項省略)

(地本役員の任務)

第15条 地本執行委員長は、大阪地本を代表する。(2項以下省略)

(地本役員の選出と任期および欠員の補充)

第16条 地本役員は、地域本部大会において組合員の中から代議員の無記名投票により選出する。地本役員の選出方法は、中央本部規則に準ずる。(2項以下省略)

(役員の解任)

第17条 各級機関役員が次に該当する場合は、地域本部大会または地域本部委員会の決定により解任される。

(1) 綱領・規約・諸規則・運動方針および地域本部機関決定に違反したとき。

(2) JR西労の名誉を著しく汚す行為のあったとき。

(3) JR西労の団結または統制を著しく乱す行為があったとき。

(規約の改正)

第18条 この規約の改正を行う場合、地域本部大会において代議員の直接無記名投票により、代議員定数3分の2以上の賛成を得なければならない。

3  前記2の認定事実によれば、申立人大阪地本は、補助参加人JR西労及び同関西地域本部の下部組織であるところ、独自の規約が存在し、組織の代表者、組織としての役割等を定めているものの、関西地域本部大会又は同地域本部委員会の決定に基づかずに役員の選出・解任、運営事項の決定、規約改正を行うことができないこと、構成員による総会又はこれに類するものが設置されていないこと、経費は関西地域本部の会計をもってまかなうとされ独立した財産を持たないことなど、団体としての主要な点が定められておらず、補助参加人JR西労及び同関西地域本部から独立して組織運営、財産管理等を行っていると認めることができない。したがって、申立人大阪地本は、いわゆる権利能力のない社団には当たらず、民訴法29条により当事者能力を有していると解することはできない。そうだとすると、一件記録上は、近畿地本の組織改編に伴い、本件基本事件の補助参加資格は、申立人大阪地本ではなくJR西労関西地域本部にあるといわざるを得ない。

4  以上によれば、申立人大阪地本の本件基本事件についての補助参加申立てには理由がないので、これを却下することとし、主文のとおり決定する。

東京地方裁判所 民事第36部

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