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東京地方裁判所 平成18年(行ク)123号 決定 2006年7月06日

参加申立人

東京地方医療労働組合連合会

上記代表者執行委員長

武藤勝

上記代理人弁護士

竹中喜一

長尾宜行

富永由紀子

渡部照子

生駒巌

相手方(原告)

医療法人社団根岸病院

(以下「原告病院」という。)

上記代表者理事長

松村英幸

上記代理人弁護士

福岡清

大橋正典

河本毅

髙橋一郎

相手方(被告)

上記代表者法務大臣

杉浦正健

処分行政庁

中央労働委員会(以下「中労委」という。)

上記委員会代表者会長

山口浩一郎

指定代理人

尾木雄

外4名

参加人

根岸病院労働組合

上記代表者執行委員長

根本君雄

上記代理人弁護士

竹中喜一

長尾宜行

富永由紀子

渡部照子

生駒巌

主文

1  参加申立人の本件申立てを却下する。

2  申立費用は参加申立人の負担とする。

理由

第1  申立て

参加申立人の本案事件への参加を許可する。

第2  事案の概要及び争点

1  根岸病院労働組合(参加人,以下「本件組合」という。)は,平成11年4月21日,東京都地方労働委員会(現・東京都労働委員会,以下「都労委」という。)に対し,①原告病院が事前に協議することなく初任給を引き下げたこと,②原告病院の初任給引下げについて行った団体交渉における対応が不誠実であったことが不当労働行為に当たるとして,不当労働行為救済申立てを行った(都労委平成11年(不)第35号事件,以下「本件初審申立て」という。)。都労委は,平成15年7月15日付けで,本件初審申立てについて,原告病院に対し,別紙1のとおり,①初任給引下げについての団体交渉に誠実に応じること,②同11年3月1日以降に新規採用された申立組合員の初任給額の是正,③謝罪文の掲示を命じた(以下「本件初審命令」という。)。原告病院は,平成15年9月10日,中労委に対し,本件初審命令の取消しを求めて,再審査を申し立てた(中労委平成15年(不再)第43号事件,以下「本件再審査申立て」という。)。中労委は,平成17年10月5日付けで,別紙2のとおり,本件初審命令主文第2項を取り消し,これにかかる本件初審申立てを棄却するなど本件初審命令を一部変更したものの,その余の本件再審査申立てを棄却する救済命令をした(以下「本件命令」という。)。本案は,原告病院が本件命令のうち原告病院に対して誠実団交及び謝罪文掲示を命じた部分の取消しを求めた事案である。

2  参加申立人は,本案の訴訟結果により権利を害される第三者に当たるとして,平成18年4月27日付けで行政事件訴訟法(以下「行訴法」という。)22条1項に基づき参加の申立てをした。当裁判所は,相手方らに対し,本件参加申立てについて意見を聴いたところ,原告病院は,参加申立人は本案の訴訟結果により権利を害される第三者に当たらないとして,参加申立人の参加申立てについて異議を述べた。

3  本件の争点は,参加申立人が本案の「訴訟の結果により権利を害される第三者」(行訴法22条1項)に当たるか否かである。

第3  当裁判所の判断

1 行訴法22条1項に規定する「訴訟の結果により権利を害される第三者」とは,当該処分の取消判決の効力自体によって直接法律上の利益が侵害される者又は処分行政庁等が取消判決の拘束力に従って新たな処分をする結果,権利が侵害されるなど取消判決の拘束力を通じて法律上の利益を侵害される者をいい,単に訴訟の結果について事実上又は経済上の利害関係を有するにすぎない者は含まないものと解するのが相当である。

2  上記見解に照らし,参加申立人が「訴訟の結果により権利を害される第三者」に当たるか否かについて検討することにする。

一件記録によれば,参加申立人は,本件組合のいわゆる上部団体に当たることが認められ,そうだとすると,規約の定め又は慣行があれば,本件組合に関する事項について本件組合と競合して団体交渉権を持つものと解するのが相当である。しかし,参加申立人は,本件再審査申立ての当事者ではなく,本件命令の名宛人にもなっておらず,本件命令が取り消されたとしても,その判決の効力によって直接法律上の利益が侵害されるという関係にはない。また,参加申立人が,原告病院と本件組合との間の団体交渉に関与していたことや本件組合に対し団体交渉に関する資料を提供したことがあったとしても,本件命令が取り消されることにより参加申立人が受ける不利益は,本件組合が敗訴することによる事実上の不利益にすぎず,本件命令の取消判決により参加申立人固有の法律上の利益が侵害されたと評価することは困難である。したがって,参加申立人は,「訴訟の結果により権利を害される第三者」(行訴法22条1項)には当たらないと解するのが相当である。

3  以上によれば,参加申立人の参加申立ては理由がないのでこれを却下することとし,主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官・難波孝一,裁判官・山口均,裁判官・知野明)

別紙1,2<省略>

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