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東京地方裁判所 平成19年(行ク)25号 決定 2008年12月25日

申立人

中央労働委員会

被申立人

奥道後温泉観光バス株式会社

主文

被申立人は、被申立人を原告、申立人を被告とする当庁平成18年(行ウ)第640号不当労働行為救済命令取消請求事件の判決の確定に至るまで、申立人が中労委平成17年(不再)第62号事件について発した命令によって維持するものとした愛媛県労委平成16年(不)第3号事件について、愛媛県労働委員会がした平成17年8月19日付けの命令の主文第1項ないし第3項に従い、

1  被申立人は、申立外奥道後温泉観光バス労働組合(以下「申立外組合」という。)の組合員が被申立人事務所で勤務、待機あるいは休憩をしているときは、同事務所2階の事務室に設置している2台の監視カメラ及び音声モニターができる防犯装置の音声モニター機能を作動させてはならない。

2  被申立人は、貸切バス運転者に対する配車において、申立外組合の組合員であるバス運転者と非組合員である奥道後交通株式会社所属のバス運転者とを公平に取り扱わなければならない。

3  被申立人、は申立外組合の組合員が、奥道後交通株式会社所属のバス運転者との間で平等に貸切バス運転業務に従事したものとして、平成16年4月以降分の賃金月額を再計算し、この再計算額が既支払賃金月額を上回る場合は、その差額を支払わなければならない。

理由

1  申立て

主文同旨

2  救済命令の適法性

愛媛県労働委員会は、愛媛県労委平成16年(不)第3号事件において、原告に対し、平成17年8月19日、①組合員の事務室での勤務時等における監視カメラ等の作動の禁止、②貸切バスの配車における組合員と非組合員の公平な取扱い、③平成16年4月以降分の組合員の賃金月額の再計算及び差額の支払、④文書掲示を命ずる救済命令をし、中央労働委員会は、平成18年9月20日、これに対する再審査申立てを棄却した。

記録によっても、上記中央労働委員会の再審査申立てを棄却した命令の適法性に疑義は認められない。

3  緊急命令の必要性

記録によれば、被申立人は、上記再審査申立てを棄却した命令を不服として、平成18年11月22日、訴えを提起したことが認められるところ、被申立人と申立外組合は、救済命令の履行がされていないと確認していること、救済命令の履行がされていないために、申立外組合の組合員は経済的に困窮するなどして組合活動が弱体化してしまうおそれがあることが認められるから、現時点において、上記救済命令のうち①ないし③(本決定主文1ないし3)について、緊急命令の必要性があるというべきである。

被申立人は、監視カメラ等は、申立外組合組合員の勤務時間中は作動させていないし、経済的に困窮しているとはいえないと主張するが、上記のとおり、被申立人も、救済命令を履行していないことを認めており、これにより賃金差額の支払を受けられないでいるのであるから、被申立人の主張は採用できない。

4  よって、申立人の申立ては理由があるから、主文のとおり决定する。

東京地方裁判所 民事第19部

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