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東京地方裁判所 平成19年(行ク)344号 決定 2008年12月08日

申立人

中央労働委員会

申立人補助参加人

JR北海道労働組合

被申立人

北海道旅客鉄道株式会社

主文

1  被申立人を原告,申立人の所属する国を被告とする当庁平成19年(行ウ)第598号不当労働行為救済命令取消請求事件の判決の確定に至るまで,被申立人は,申立人補助参加人X1,同X2及び同X3に対する平成16年2月1日付け転勤命令をなかったものとして取り扱い,申立入補助参加人X1,X2及び同X3を原職に復帰させなければならない。

2  申立費用は被申立人の負担とする。

理由

1  本件申立ての趣旨及び理由

本件申立ての趣旨及び理由は,緊急命令申立書記載のとおりである。

申立人が,中労委平成18年(不再)第36号及び第37号事件について平成19年8月1日付けで発した命令(以下「本件命令」という。)の主文のとおりであるところ,申立入は,同主文第1項の1(以下「本件救済命令」という。)の履行を求めている。

2  本件救済命令の適法性

本件救済命令は,被申立人が,申立人補助参加人JR北海道労働組合(以下「補助参加人組合」という。)に所属する組合員で札幌車掌所の車掌であった申立人補助参加人X1,同X2及び同X3(以下「補助参加人X1ら」という。)に対し,平成16年2月1日付けで釧路支社勤務及び釧路運輸車両所車掌への異動を命じたこと(以下「本件転勤命令」という。)が,不当労働行為にあたるとして,被申立入に対し,本件転勤命令がなかったものとして取り扱い,補助参加人X1らを原職に復帰させることを命じるものである。

本件疎明資料及び本案事件の記録によれば,本件転勤命令は,補助参加人組合の組合員であることを理由とする不利益な取扱いであるとともに,被申立人が,補助参加人組合の組合員に当該不利益取扱いの意向を示すことによって,補助参加人組合の弱体化を意図して行った行為でもあると認められ,労働組合法7条1号の不利益取扱い及び同条3号の支配介入にあたるから,これに対する救済方法として原職復職を命じた本件救済命令は適法であると認められる。

3  緊急命令の必要性

本件疎明資料及び本案事件の記録によれば,申立人が本件命令を発し,その写しが平成19年8月29日に被申立人に交付された後も,被申立入は本件数済命令を履行しておらず,自発的に本件救済命令を履行しようとする意思がないこと,本件転勤命令発令後,補助参加人組合の組合員間に,補助参加人組合に所属していれば不利益な取扱いがされるのではないかとの不安が広がり,組合活動意思が萎縮させられ,補助参加人組合から脱退する事象が発生し,また,補助参加人X1らの生活上の不利益も経過年数と共に蓄積し,深刻なものとなっており,本案事件の判決の確定に至るまで本件救済命令が履行されない状態が継続した場合には,補助参加人組合の団結権侵害がより深刻化し,補助参加人X1らの生活上の不利益がさらに拡大するおそれがあることが一応認められる。

以上によれば,緊急命令を発する必要性があるというべきである。

4  よって,本件申立ては理由があるのでこれを認容することとし,主文のとおり決定する。

東京地方裁判所 民事第36部

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