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東京地方裁判所 平成19年(行ク)9号 決定 2008年1月31日

申立人

中央労働委員会

被申立人

医療法人社団慈恵会

主文

被申立人は、被申立人を原告、国を被告とする当庁平成18年(行ウ)第594号不当労働行為再審査申立棄却命令取消請求事件の判決の確定に至るまで、申立人が中労委平成17年(不再)第24号事件について発した命令によって維持するものとした兵庫県地労委平成15年(不)第4号事件について、兵庫県労働委員会がした平成17年3月15日付け命令の主文1項及び2項に従い、

①  被申立人は、関西合同労働組合及び関西合同労働組合兵庫支部が申し入れた平成15年2月18日付け春聞要求書及び同年5月7日付け夏期一時金要求書に基づく団体交渉に、誠実に応じなければならない。

②  被申立人は、関西合同労働組合及び関西合同労働組合兵庫支部が、病院の診療開始時間前に公道から施設出入口に至るスロープ下の通路部分で行うビラ配布に対し、施設管理権を理由にこれを一律に禁止してはならない。

事実及び理由

1  申立ての趣旨及び理由

別紙記載のとおり

2  救済命令の適法性について

兵庫県労働委員会が兵庫県地労委平成15年(不)第4号事件について発した平成17年3月15日付け命令(以下「本件命令」という。)は、被申立人が、関西合同労働組合及び関西合同労働組合兵庫支部(以下「組合ら」という。)が配布したビラに被申立人の名誉を毀損する記載があるとして同記載部分を撤回し、謝罪するまでは団体交渉を拒否すると通告したこと、病院敷地内におけるビラ配布を施設管理権を理由に一律に禁止していることがそれぞれ不当労働行為に当たるとして本決定主文①、②記載の内容を命じたものである。被申立人は、本件命令を不服として再審査申立てをしたが、申立人は本件命令と同樣の判断をして平成18年9月20日付けで再審査申立てを棄却した。

記録によれば、上記再審査申立て棄却の命令の適法性に疑義を認めることはできない。

3  緊急命令の必要性について

記録によれば、被申立人は、上記の再審査申立て棄却の命令を不服として、平成18年11月1日、その取消しを求め訴えを提起したこと(基本事件)、上記再審査申立て棄却の命令を受けて平成18年10月4日付けで組合らが申し入れた団体交渉に対しても応じることなく、現在に至るまで、一切の団体交渉を行っていない状況にあり、組合らによる病院敷地内でのビラ配布についてもこれを一律禁止する姿勢を崩しておらず、基本事件においてもその旨主張し、本件命令主文(本決定主文①、②)の内容を履行していないこと、これによって、組合らは、団結権の侵害という重大な不利益を受けており、また、その不利益解消のための協議を早急に行う必要があることが認められるから、現時点において、本件命令主文(本決定主文①、②)について、緊急命令の必要性があるというべきである。

被申立人は、緊急命令の必要性がないとして縷々主張しているが、本件において緊急命令の必要性があるというべきであることは前記のとおりであり、被申立人の主張を採用することはできない。

4  以上によれば、申立人の本件申立ては、理由があるから、本件命令主文(本決定主文①、②)について緊急命令を発することとし、主文のとおり決定する。

東京地方裁判所 民事第19 部

file_2.jpg別紙

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