東京地方裁判所 平成2年(ワ)8979号 判決 1992年12月21日
東京都板橋区志村二丁目二〇番九号
原告
ユニオン光学株式会社
右代表者代表取締役
柳川邦衛
右訴訟代理人弁護士
沼田安弘
右復代理人弁護士
宮之原陽一
右輔佐人弁理士
神保欣正
東京都豊島区東池袋一丁目三二番四号
被告
メイジテクノ株式会社
右代表者代表取締役
佐藤善祐
右訴訟代理人弁護士
松尾翼
同
小杉丈夫
同
長浜隆
同
内藤正明
同
内田公志
同
石井藤次郎
同
佐藤昌巳
同
森島庸介
同
西塔真達
同
田倉保
主文
一 原告の請求をいずれも棄却する。
二 訴訟費用は原告の負担とする。
事実
第一 当事者の求めた裁判
一 請求の趣旨
1 被告は、別紙第二目録及び同目録説明書記載の測定顕微鏡を製造、販売、輸出してはならない。
2 被告は、原告に対し、二四二六万六八四〇円及びこれに対する訴状送達の日の翌日から支払済みに至るまで年五分の割合による金員を支払え。
3 訴訟費用は被告の負担とする。
4 2項につき仮執行宣言
二 請求の趣旨に対する答弁
主文と同旨
第二 当事者の主張
一 請求の原因
(
1 原告は、工業用光学機器メーカーであり、東京証券取引所の第二部に上場している株式会社であって、昭和三八年以降、別紙第一目録及び同目録説明書記載の測定顕微鏡(以下「原告商品」という。)を製造、販売、輸出している。
2 原告商品は、別紙第一目録及び同目録説明書記載のとおりの外観及び構造を有する測定顕微鏡である。その外観上の特徴は、次のとおりである。
(一) 偏平長方体の両側面を中途箇所より後部に向ってやや幅狭に絞るとともに、各稜線箇所に丸みを施した形状よりなる台座10の後端に、正面に対し背面をやや幅狭に絞るとともに、中途部より上方に向って正面の垂直面を保ったまま相似形状に絞って先細とした形状よりなる支柱30を、背面を同一線上に揃えて立設した点。
(二) この支柱30の正面に、平面を水平面に底面を後下向き斜面にそれぞれ形成し、両側面には底面の後下向き斜面と略平行の位置関係を保って下方前後にコロ状の微動ハンドル47a、47bと車輪状の粗動ハンドル46a、46bをそれぞれ突出した角ブロック状のブラケット45を接合し、このブラケット45の正面に上下端面を水平面とした鏡筒40を段差が生じることなく連続的に接合し、この鏡筒40の正面にはやや先細りの円柱状にして先端に接眼レンズ42を接合した単眼チューブ41を鏡筒と一体をなすように斜め上方に向かって連続的に接合した点。
3 原告商品の形態は、次のとおり、平成元年七月には、原告商品の販売について原告の商品であることを示す表示として、日本全国にわたって、取引者及び需要者間に広く認識されるに至っている。
(一) 原告商品は、右2のとおりの外観上の特徴があるから、形態上の特異性がある。
第一に、原告商品の外観上の特徴は、原告商品の技術的機能から必然的に由来する唯一不可避のものではなく、全くの選択によるものである。
即ち、測定顕微鏡において、技術的機能から必然的に由来する形態とは、装置全体を支持可能な形状の台座より支柱が垂直に起立され、接眼レンズが正面に、対物レンズが底面に、鏡筒を上下動させるためのハンドルが側面に設けられた形状の鏡筒部がこの支柱正面に接合されることであり、その具体的形態については、他社商品との差別化、需要者の嗜好への対応を考慮して多様のものを選択し得る余地が十分に存する。
第二に、原告商品の外観上の特徴は、無秩序に選択されたものではなく、需要者の嗜好を考慮したうえで、その注意を引くべく、デザイン的に工夫を施して創作されたものであり、外観上の特徴をもって、需要者及び取引者の注意を喚起する作用を果たすものである。
即ち、原告商品は、台座及び支柱よりなるボデー部の正面から背面、底面より平面にかけて絞り込み方向に向かう流れるような軽快なラインが看取されるとともに、鏡筒部の背面から正面にかけて斜め上方に向かって躍動するかのようなラインが前後二段にわたって連続的に看取され、全体として台座正面に安定感を持たせつつ他の方向には躍動を加味した軽快感を持たせたスマートかつコンパクトな印象を看者に与え、この印象は、需要者又は取引者の脳裏に深く焼き付けられる。
第三に、原告商品の外観上の特徴は、原告商品独自の創作に係わるものであって、現在までに市販された他社の同種商品に、原告商品の外観上の特徴を備えるものは皆無である。
(二) 原告商品は、その形態が原告の商品形態として、昭和三〇年から現在まで約三五年間にわたり、基本的な形態を変化させることなく継続的かつ独占的に使用されてきた。
(三) 原告商品は、右期間に、合計約一万六一〇〇台製造販売されている。
(四) 原告は、右期間に、多大の費用をかけて、原告商品を宣伝した。原告商品は、その特異な形態の商品として専門文献に引用されるなどして著名となっている。
(五) 測定光学顕微鏡のメーカーは、その数が限られ数社にすぎず、しかも、各メーカーは、それぞれ独自の形態上の特徴を工夫しているので、形態をみれば、どこのメーカーの商品であるか推測できるものである。
4 被告は、教育機器・光学機器の製造、販売、輸出入を業とする株式会社であり、被告は、平成元年七月頃から別紙第二目録及び同目録説明書記載の測定顕微鏡(以下「被告商品」という。)を製造、販売、輸出している。
5 被告商品は、別紙第二目録及び同目録説明書記載のとおりの外観及び構造を有する測定顕微鏡であり、その外観上の特徴は、次のとおりである。
(一) 偏平長方体の両側面を中途箇所より後部に向ってやや幅狭に絞るとともに、各稜線箇所に丸みを施した形状よりなる台座10の後端に、正面に対し背面をやや幅狭に絞るとともに、中途部より上方に向って正面の垂直面を保ったまま相似形状に絞って先細とした形状よりなる支柱30を、背面を同一線上に揃えて立設した点。
(二) この支柱30の正面に、平面を水平面に底面を後下向き斜面にそれぞれ形成し、両側面には底面の後下向き斜面と略平行の位置関係を保って下方前後にコロ状の微動ハンドル47a、47bと車輪状の粗動ハンドル46a、46bをそれぞれ突出した角ブロック状のブラケット45を接合し、このブラケット45の正面に上下端面を水平面とした鏡筒40を段差が生じることなく連続的に接合し、この鏡筒40の正面にはやや先細りの円柱状にして先端に接眼レンズ42を接合した単眼チューブ41を鏡筒と一体をなすように斜め上方に向かって連続的に接合した点。
6(一) 被告商品の右5の外観上の特徴は、原告商品のそれと全く同一であるばかりでなく、両者は、全体的な外観の細部にわたっても酷似しており、外観上相紛らわしく、両商品を時と所を違えて離隔的に観察した場合に、需要者がその出所について混同を生じることは勿論、通常の取引上の注意力をもって対比観察した場合でも混同を生じるおそれがあるものであり、両者の形態は類似する。
(二) 更に、近年、測定顕微鏡の分野においてもOEMが一般的となっている状況からすれば、被告商品を見て原告商品のOEM商品と判断するおそれが大である。かような面からも被告商品が原告商品そのものであるとの誤認混同が生じている。
7 原告商品と被告商品とは、市場において、ほぼ完全な競合関係にあり、原告は、被告商品が原告商品と混同されることより、その営業上の利益を現に害され、また、今後も継続して害されるおそれがる。
(
8 被告は、被告商品の製造、販売、輸出が不正の競業になることを知りながら、敢えて、平成元年七月以降、前記4ないし7のとおりの行為をし、原告の営業上の利益を害したから、被告は、原告に対し、右行為によって原告が被った損害を賠償すべき義務がある。
9 原告・被告は、市場において原告商品、被告商品の販売につき完全な競業関係にあり、被告商品は、原告商品のコピー商品として販売されているから、被告が被告商品の販売により上げた利益は、原告が被った損害というべきである。
そして、被告があげた利益は、次のとおりである。
原告商品中SM-25は、定価六三万二〇〇〇円、卸価格四四万二四〇〇円、製造原価二四万〇四六六円であるから、卸価格は定価の〇・七〇倍(四四万二四〇〇円÷六三万二〇〇〇円=〇・七〇)、製造原価は卸価格の〇・五四倍(二四万〇四六六円÷四四万二四〇〇円=〇・五四)である。
被告商品中、MTM250の卸価格は四〇万五八〇〇円であるところ、製造原価が卸価格の〇・五四倍とすると、被告商品の製造原価は、二一万九一三二円である。被告は、被告商品を一三〇台製造したものであるから、被告の得た利益は、合計二四二六万六八四〇円((四〇万五八〇〇円-二一万九一三二円)×一三〇台=二四二六万六八四〇円)である。
そうすると、原告が被告の右行為によって被った損害は、二四二六万六八四〇円である。
10 よって、原告は、被告に対し、不正競争防止法一条一項一号の規定に基づき被告商品の製造、販売、輸出の差止、並びに、同法一条の二に基づき損害賠償金二四二六万六八四〇円及びこれに対する訴状送達の日の翌日から支払済みに至るまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める。
二 請求の原因に対する認否
1 請求の原因1のうち、原告商品を製造、販売、輸出しているのが昭和三八年以降であること及び原告商品が別紙第一目録説明書記載のとおりであることは知らない。その余は認める。
2 同2のうち、原告商品が別紙第一目録の写真のとおりの外観及び構造を有する測定顕微鏡であることは認め、同目録説明書記載の外観及び構造を有することは知らない。同(一)及び(二)は知らない。(一)及び(二)が原告商品の特徴であるとする点は争う。
3 同3のうち、前文、(一)及び(四)は否認し、(二)及び(三)は知らない。
(五)のうち、測定光学顕微鏡のメーカー数が七、八社であることは認め、その余は否認する。
4 同4は、別紙第二目録説明書中の説明図面の正面図に、正しくは台座正面パネルの下部の被告のロゴマーク及び社名を表示すべきであるのに表示されていない点を争い、その余は認める。
5 同5のうち被告商品が別紙第二目録記載のとおりの外観及び構造を有する(ただし、同目録説明書中の説明図面の正面図に台座正面パネルの下部の被告のロゴマーク及び社名の表示がない点を除く。)測定顕微鏡であることは認める。
(一)及び(二)は認める。ただし、(一)のうち、「各稜線箇所に丸みを施した形状よりなる台座」については、「丸み」というほどのものではなく「面とり」程度である。(一)及び(二)が被告商品の外観上の特徴であるとする点は否認する。
6 同6は否認する。
7 同7のうち、原告商品と被告商品とが市場においてほぼ完全な競合関係にあることは認め、その余は否認する。
8 同8は否認する。
9 同9のうち、原告商品中SM-25の定価、卸価格、製造原価並びにこれらの比率が原告主張のとおりであるかは知らない。その余は否認する。
10 同10は争う。
三 被告の主張
1 原告商品は、原告の商品であることを示す商品表示となっていない。
即ち、原告商品にはそもそも自他商品識別力を有するような形態の独自性がなく、かつ、原告商品の出所を具体的に「ユニオン光学株式会社」という名称で認識していない者が存在していることは原告が自ら認めている。
2 原告商品と被告商品とは、外観が類似しない。
即ち、本件で問題となっている測定顕微鏡の取引者又は需要者は、高度の技術者、専門家であるから、原告商品と被告商品との類否の判断に当たっては、これらの者が原告商品と被告商品とが異なる商品であると認識できる相違があるかどうかを問題にすべきである。このような観点から観察すると、以下のような外観上の明らかな相違点が存在し、これらの相違点は、右のような取引者又は需要者にとって原告商品と被告商品が異なる商品であると認識するに足りるものである。
(一) 支柱の形態
(1) 背面と側面
原告商品と被告商品とでは、背面上方及び側面上方の傾斜部分並びに背面下方及び側面下方の垂直部分のそれぞれの長さ、割合が違っており、両者は、明らかに異なる印象を与える。
即ち、原告商品は、その背面及び側面の下端より全高の約二分の一までの部分から上方に向かって正面方向に傾斜をしており、後記(2)の支柱の長方円の穴が存在することとあいまって、幅広のずんぐりした印象を与えるのに対し、被告商品は、その背面及び側面の下端より全高の約五分の一までの部分から上方に向かって正面方向に傾斜をしており、むしろすっきりした細みの印象を与える。
(2) 側面の長孔の存否
原告商品は、支柱の中央部分に長方円の孔か穿ってあるので、運搬、移動に際しては右長孔に手を入れて運ぶことができるのに対し、被告商品は、右のような長孔が存在せず、他方、台座の正面の底部に凹みが存在するため、右凹みに手を入れることによって、被告商品を持ち上げ、運搬、移動をすることが容易にできる。
(二) 台座の形態
(1) 台座の正面
原告商品では、台座正面中央に四角形の上辺の部分が台座内部に凹んだ窪みの部分が存在し、その窪みの部分には、メインスイッチ及びパイロットランプの二つのみが横一列に併設されている。その窪みの部分の色は、顕微鏡全体の色と同じベージュ系である。なお、この部分には、社名の表示は存在せず、社名の表示はブラケットの右側面上方に付されている。また、正面の底部には窪みがない。更に、調光用つまみ及び照明切り換えスイッチは、台座の側面部分に設置されている。
これに対し、被告商品では、台座正面中央に、顕微鏡全体の色であるライトグレーとは異なる黒色に塗装されたパネルの上に、メインスイッチを中心に、左右に調光用つまみ及び照明切り換えスイッチがそれぞれ一個ずつ並設されており、また、被告のロゴマーク及び「MEIJI TECHNO CO・LTD・JAPAN」の社名が右横一列に並んだスイッチ等の下の部分に横書きで表示されている。更に、正面の底部には凹みがあり、重量のある被告商品の運搬を容易にしている。なお、台座の側面にはスイッチやツマミが一切ない。
(2) 台座の背面
原告商品の背面部分には、右上にヒューズホルダー、中央にベージュ系に着色された透過照明装置、背面上方には、製造番号のプレートがそれぞれ設けられ、右照明装置の接続プラグは、側面の背後方向に設けられている。
これに対し、被告商品の背面部分には、正面パネルと同一の色である黒色のパネルの上に、左上にヒューズホルダー、中央に黒色の透過照明装置、同照明装置との接続プラグ及び二次コード用ソケット、右側に長方形の一次コード用プラグ(電源ソケット用)が設けられている。なお、被告商品の製造番号は底蓋に刻印されている。
(3) 稜線箇所の丸み
原告商品の台座の稜線箇所には丸みがあるのに対し、被告商品の台座の稜線箇所には面とり程度の角張った稜線があるに過ぎない。
(4) 台座の平面図の形
原告商品の台座の側面は、その中央付近から背面方向にかけて傾斜を開始しており、後方の幅が狭くなっているが、その角度はゆるやかで、台座全体として、ずんぐりとしたイメージがある。
これに対し、被告商品の台座の側面は、その背面に近い部分から背面方向にかけて傾斜しており、台座全体として、むしろ長方形に近いイメージがある。
(三) 鏡筒部
(1) 鏡筒の傾斜角度
原告商品の鏡筒の傾斜角度は、斜め上方に向かって四五度であるのに対し、被告商品の鏡筒の傾斜角度は、斜め上方に向かって三〇度である。被告商品は、傾斜角度三〇度の鏡筒を採用することにより使用者の首の疲れが少なくてすむようにされており、これは単に美観の問題だけではなく、使い勝手にも密接に結び付いているのである。
(2) 接眼レンズの固定方法
原告商品では、接眼レンズ及び接眼スリーブをそれぞれ固定用締めネジ、即ち、セットスクリューによるねじ止めによって固定している。
これに対し、被告商品では、コレット方式が採用されており、接眼レンズ及び接眼スリーブがリングを回転させることによって固定されており、原告商品のような締めネジを有しない。
(3) 対物レンズの作動距離
四〇倍の対物レンズ使用時の対物レンズの作動距離は、原告商品では約○・三五ミリメートルであるのに対し、被告商品では約〇・八ミリメートルであり、機能面での被告商品の優秀性が現れている。
(4) 粗動ハンドル及び微動ハンドルの色
粗動ハンドル及び微動ハンドルの色は、原告商品では銀色であるのに対し、被告商品では黒色である。
3 原告商品と被告商品が誤認混同されたことも、誤認混同のおそれもない。
(一) 原告商品と被告商品とは、過去において誤認混同されたことがない。
(二) 本件の測定顕微鏡については、需要者である専門家が慎重に考慮、選択して購入するであろうこと、及び、その購入に当たって両者を識別することは容易であることが認められるから、原告商品と被告商品との誤認混同のおそれがない。
(1) 販売形式を見ても、原告商品と被告商品との誤認混同のおそれがない。
即ち、被告の販売形式は、全て対面形式によっており、取引者又は需要者との緊密な接触の下に商品の購入が決定される。また、取引者又は需要者は、付属品(アクセサリー)として、例えばテレビセット、デジタルカウンターを追加注文することが多く、更に、顕微鏡自体の仕様の変更、例えば、レンズや照明装置の変更を求めることもしばしばあるのであって、この事実は、取引者又は需要者が顕微鏡のおおまかな外観によって購入を決めていないことを示すものである。
(2) 本件の測定顕微鏡の取引者又は需要者は、当該顕微鏡について高度の知識、経験を有する専門家である。このような専門家は、測定顕微鏡を購入するに当たり、複数のカタログを取り寄せ、それぞれの機能を十分に比較検討した上で、しかも、自分の仕事に不要な部分機能を除き、仕事に必要な機能を追加するなどして仕様を変更させて購入するのである。つまり、専門家としての特別な注意を払い、慎重に考慮し、選択した上で購入するのである。
(3) 商品の価格面からみても、光学顕微鏡は、高価な商品であるから、需要者である専門家は、慎重に考慮、選択して購入する。
(4) 原告商品と被告商品との間には、前記のとおりの違いが存し、また、採用する光学系統の違いからくる機能の違いがあり、これらの要素は、取引者又は需要者にとって選択に当たっての重要な要素であるから、誤認混同のおそれはない。
四 被告の主張に対する原告の反論
1 被告の主張1は争う。
2 被告の主張2について
被告商品を全体的に観察した場合に、それが請求の原因2(一)及び(二)のとおりの原告商品の外観上の特徴を備えている以上、時と所を異にして両者を観察した場合、取引者又は需要者には、右外観上の共通性が支配的なイメージとして記憶されるものであり、被告が主張する各部の相違点があっても、そのイメージに影響を及ぼすことがあり得ず、したがって、両商品の類似性に何らの影響も与えない。
被告は、原告が主張する原告商品と被告商品との外観上の特徴における基本的な共通性を無視し、両商品を対比して初めて気が付く程度の各部の抹消的な相違点のみを主張している。
なるほど、観察者は、原告商品と被告商品とを並べて意識的に子細に観察すれば、被告の主張するところの相違点を認識することができるであろう。しかしながら、不正競争防止法一条一項一号の規定における商品表示の類否の判断は、観察者が時と所を異にして両商品を観察した状態を想定して行う離隔観察によるものであり、両商品を同一場所に時を同じくして並べて意識的に子細に観察した状態を想定して行うものではない。また、右離隔観察の方法は、取引者又は需要者は通常記憶している商品表示のイメージに基づいて商品を選択するとの経験則により、観察者が、両商品を凝視し、逐一分析的に対比するのではなく、需要者が商品取引において通常商品表示に注意を払う限られた時間内に与えられた記憶を基準にして考察するものである。
本件の測定顕微鏡のように高額かつ専門的な商品の場合には、被告商品に接した取引者又は需要者は、十分な時間と注意力をもって被告商品を観察するであろうが、その際に、比較の対象となるのは、取引者又は需要者が記憶している原告商品のイメージ、即ち原告の主張する原告商品の外観上の特徴である。被告の主張する形態上の相違点ば、いずれも余程の注意力を払って観察しないと正確には把握できない抹消的なものであり、かつ、原告商品との対比において初めて特徴として認識できる程度のものである。このような相違点が取引者又は需要者に記憶されることはない。そもそも、取引者又は需要者は、原告の主張する原告商品の外観上の特徴を原告商品の大まかなイメージとして記憶するのであり、測定顕微鏡が高価かつ専門的な商品であって、取引者又は需要者が高度の技術者ないし専門家であっても、被告の主張する形態上の特徴を正確に記憶していることは不可能である。
3 被告の主張3について
被告は、ほとんどの場合、対面販売によって測定顕微鏡の購入が決定されるから、原告商品と被告商品が外観において類似していても、出所の誤認混同は生じない旨主張している。しかしながら、原告商品を熟知している取引者又は需要者は、被告商品の外観から「ユニオン光学株式会社」という具体的な出所を想起するであろうから、銘板に記されている「MEIJI TECHNO CO・LTD・JAPAN」という表示を見て原告のOEM製品であると誤認したり、原告の第二ブランド商品であると誤認する等原告との間に何らかの関係があると誤認したりすることが予想される。他方、実際の取引において、例えば大手ユーザーの生産ラインや、同業者又は同程度規模の異業種の生産ラインで原告商品を見たことがある者とか、社名や機種名は定かではないがとにかく長年に渡って使用されているユニークな外観を有するベストセラー機として原告商品の外観を記憶している者は、そもそも原告商品の出所を具体的な「ユニオン光学株式会社」という名称で認識していないのであるから、これらの者は、対面販売によっても、被告商品を原告商品と誤認混同することは必定である。
また、被告商品の購入を検討する取引者又は需要者は、技術的内容に子細な検討を加え、その結果により購入の可否を決定するであろうが、その購入を検討する初期の段階、即ち、被告商品の資料の取寄せや販売担当者の招集、あるいは広告や展示会において被告商品に目を止めた段階で、取引者又は需要者は、被告商品を自身が知っている原告商品と誤認混同するのであり、それ以降にいくら被告商品の内容につき子細な検討を加えてもそれが原告商品と異なることを知る術はないのである。
第三 証拠関係
本件記録中の書証目録及び証人等目録記載のとおりであるから、これを引用する。
理由
一 原告が別紙第一目録の写真のとおりの外観及び構造を有する原告商品を製造、販売、輸出していること、被告が別紙第二目録の写真及び同目録説明書中の説明図面(ただし、同図面中の正面図に台座正面パネルの下部の被告のロゴマーク及び社名の表示がない点を除く。)並びに請求の原因5(一)(ただし、台座の各稜線箇所の丸みについては争いがある。)及び(二)のとおりの外観及び構造を有する測定顕微鏡を製造、販売、輸出していることは当事者間に争いがない。
二 被告商品の形態が原告商品の形態と類似しているとの原告の主張について判断する。
1 原告は、原告商品の形態の特徴は、第一に、偏平長方体の両側面を中途箇所より後部に向ってやや幅狭に絞るとともに、各稜線箇所に丸みを施した形状よりなる台座10の後端に、正面に対し背面をやや幅狭に絞るとともに、中途部より上方に向って正面の垂直面を保ったまま相似形状に絞って先細とした形状よりなる支柱30を、背面を同一線上に揃えて立設した点にあり、第二に、この支柱30の正面に、平面を水平面に底面を後下向き斜面にそれぞれ形成し、両側面には底面の後下向き斜面と略平行の位置関係を保って下方前後にコロ状の微動ハンドル47a、47bと車輪状の粗動ハンドル46a、46bをそれぞれ突出した角ブロック状のブラケット45を接合し、このブラケット45の正面に上下端面を水平面とした鏡筒40を段差が生じることなく連続的に接合し、この鏡筒40の正面にはやや先細りの円柱状にして先端に接眼レンズ42を接合した単眼チューブ41を鏡筒と一体をなすように斜め上方に向かって連続的に接合した点にあるところ、被告商品の形態は原告商品の形態と類似している旨主張する。
2 原告が原告商品の形態の特徴として第一に主張する点について検討するに、前記当事者間に争いがない別紙第一目録の写真によれば、原告商品は、台座及び支柱よりなるボデー部、この支柱に上下動自在に摺嵌される鏡筒部、台座上に設けられる測定ステージ部よりなるものであって、原告が原告商品の形態の特徴として第一に主張する点はボデー部に関するものであるところ、原告商品は、後記3に認定する原告、被告商品の形態上の相違のある点を捨象した全体的観察において、原告が右に主張するような形態を有することが認められる。
右認定の原告商品の形態と当事者間に争いがない請求の原因5(一)(ただし、台座の各稜線箇所の丸みについては争いがある。)のとおりの被告商品の形態とを対比すると、被告商品は、原告商品ほどに各稜線箇所に丸みはなく、どちらかといえば角ばった感じがするものの、右原告、被告商品の形態上の相違のある点を捨象した全体的観察の限度において両商品の形態には類似性があるものと認められる。
3 しかしながら、原告商品と被告商品のボデー部の具体的形態を検討すると次のとおりと認められる。
(一) 原告商品の具体的な形態についてみると、別紙第一目録の写真、並びに、同写真及び弁論の全趣旨により原告商品の外観及び構造を示すものと認められる別紙第一目録説明書中の説明図面によれば、(1)原告商品のボデー部を形成している台座10の正面中央には、正面から見て長方形の形状で、その下辺側から上辺側に徐々に深くなる窪みが形成され、メインスイッチ13がその窪みの中の右方に、パイロットランプ14がその左方に並設されていること、右窪みの部分もボデー部全体と同じくベージュ色であること、(2)台座10の右側面には、反射・右側斜光照明装置用の調光つまみ15、反射・右側斜光照明装置用の照明切り換えスイッチ17、二次コード用ソケット19が前方より後方に向かって横一列に順次並設されていること、(3)台座10の左側面には、透過・左側斜光照明装置用の調光つまみ16、透過・左側斜光照明装置用の照明切り換えスイッチ18、一次コード用プラグ12が前方より後方に向かって横一列に順次並設されていること、(4)台座10の背面中央には、透過照明装置61が後部を露出して設けられ、この右上にはヒューズホルダー21が設けられていること、(5)台座10の平面には、支柱30が後部に立設されるとともに、斜光照明装置63との接続プラグ67が接続されるべき二次コード用ソケット20a、20bがこの支柱30を挟んで左右に対称的に設けられていること、(6)台座10の底面には、ゴム足11が突設されていること、(7)支柱30の正面には、鏡筒部のアリ溝が摺嵌されるべきアリ(突条)が上下方向に連続的に設けられていること、(8)支柱30の平面には、反射照明装置62との接続プラグ66が接続されるべき二次コード用ソケット31が設けられていること、(9)支柱30の背面は、その下端から全高の約半分の高さまでを垂直とし、これより上部を正面側に向かって直線的に傾斜させていること、(10)支柱30の側面には、支柱全体の高さの約四割の長さで上下方向に長い透孔が窄設されているほか、背面側の縁は前記のような支柱背面の立ち上がりの状況を表していること、以上の事実を認めることができる。
(二) 次に、被告商品の具体的な形態についてみると、別紙第二目録の写真及び同目録説明書中の説明図面によれば、(1)被告商品のボデー部を形成している台座10の正面には、その最下部に横長の切欠き部を形成し、右切欠き部の上方には黒色のパネルを配し、右パネルの左右両端に反射・透過照明装置用の調光つまみ16、左右斜光照明装置用の調光つまみ16が、この両つまみ間の内側の左右に反射・透過照明装置用の照明切り換えスイッチ17、左右斜光照明装置用の照明切り換えスイッチ18が、更にその中央にメインスイッチ13が横一列に並設されていること、パネルの下部の右スイッチ等の列の下方には被告のロゴマーク及び「MEIJI TECHNO CO・LTD」の社名が横書きに表示されていること、(2)台座10の左右側面には、つまみ、スイッチ、ソケット、プラグ等は何も設けられていないこと、(3)台座10の背面中央には、透過照明装置61が後部を露出して設けられ、この左上にヒューズホルダー21が、左下に接続プラグ65が接続されるべき二次コード用ソケット19が、右下に一次コード用プラグ12がそれぞれ設けられていること、(4)台座10の平面には、支柱30が後部に立設されるとともに、斜光照明装置63との接続プラグ67が接続されるべき二次コード用ソケット20a、20bがこの支柱30を挟んで左右に対称的に設けられていること、(5)台座10の底面には、ゴム足11が突設されていること、(6)支柱30の正面には、鏡筒部のアリ溝が摺嵌されるべきアリ(突条)が上下方向に連続的に設けられていること、(7)支柱30の平面には、反射照明装置62との接続プラグ66が接続されるべき二次コード用ソケット31が設けられていること、(8)支柱30の背面は、その下端から全高の約五分の一の高さまでを垂直とし、これより上部を正面側に向かって直線的に傾斜させていること、(9)支柱30の側面には透孔はなく、背面側の縁は前記のような支柱背面の立ち上がりの状況を表していること、以上の事実を認めることができる。
4 ところで、別紙第一目録の写真及び同目録説明書中の説明図面及び別紙第二目録の写真及び同目録説明書中の説明図面により認められる原告商品及び被告商品の形態によれば、原告商品及び被告商品の台座の形態及び支柱の形態は、ブラケット部、鏡筒部の形態とともに、看者の注意を引く部分、つまり要部であると認められる。
そこで、まず原告商品及び被告商品の台座の形態について対比するに、両商品の台座の正面の形態は、原告商品では、前記3(一)(1)のとおり、台座10の正面中央に、正面から見て長方形の形状で、その下辺側から上辺側に徐々に深くなる窪みが形成され、メインスイッチ13がその窪みの中の右方に、パイロットランプ14がその左方に並設されていて、右窪みの部分もボデー部全体と同じくベージュ色であるのに対し、被告商品では、同3(二)(1)のとおり、右のような窪みがなく、台座10の最下部に横長の切欠き部を形成し、右切欠き部の上方には黒色のパネルを配し、右パネルの左右両端に反射・透過照明装置用の調光つまみ16、左右斜光照明装置用の調光つまみ16が、この両つまみ間の内側の左右に反射・透過照明装置用の照明切り換えスイッチ17、左右斜光照明装置用の照明切り換えスイッチ18が、更にその中央にメインスイッチ13が横一列に並設されており、パネルの下部の右スイッチ等の列の下方には被告のロゴマーク及び「MEIJI TECHNO CO・LTD」の社名が横書きに表示されている。
また、両商品の台座の両側面の形態は、原告商品においては前記3(一)(2)(3)のとおり、つまみ、スイッチ、ソケット、プラグ等が並設された形態であるのに対し、被告商品においては同3(二)(2)のとおり、つまみ、スイッチ、ソケット、プラグ等は何も設けられていない。
次に、原告商品及び被告商品の支柱の形態について対比するに、両商品の支柱の背面及び側面の形態は、原告商品では、前記3(一)(9)(10)のとおり、支柱30の背面は、その下端から全高の約半分の高さまでを垂直とし、これより上部を正面側に向かって直線的に傾斜させており、支柱30の側面には、支柱全体の高さの約四割もの長さの透孔が窄設されているのに対し、被告商品では、前記3(二)(8)(9)のとおり、支柱30の背面は、その下端から全高の約五分の一の高さまでを垂直とし、これより上部を正面側に向かって直線的に傾斜させており、支柱30の側面には透孔がない。
以上認定のような、原告商品及び被告商品の、台座の正面及び両側面の形態並びに支柱の背面及び側面の形態における相違は顕著であり、前記2に認定したようなボデー部の全体的観察の限度における類似性、前記3(一)(4)ないし(8)及び3(二)(3)ないし(7)認定の両商品の台座の側面、平面、底面、支柱の正面、平面における類似性を考え合わせ、かつ、原告が原告商品の形態の特徴として第二に主張する点が被告商品と共通するとしてもなお、後記三2認定のようなこの種商品の専門の代理店である取引者又は専門家である需要者において、両商品を異なる商品であると認識するに足りるものと認められる。
5 以上の認定判断によれば、仮に原告商品の形態が原告の商品たることを示す表示であると認められるとしても、両商品の形態は、その要部において類似するものとは認められず、また、両商品を全体的に観察しても類似するものとは認められない。
6 原告は、被告商品を全体的に観察した場合に、それが原告商品の外観上の特徴である不正競争防止法一条一項一号に基づく請求の請求の原因2(一)及び(二)のとおりの特徴を備えている以上、時と所を異にして両者を観察した場合、取引者又は需要者には、右外観上の共通性が支配的なイメージとして記憶されるものであり、被告が主張する各部の相違点があっても、そのイメージに影響を及ぼすことがあり得ず、したがって、両商品の類似性に何らの影響も与えない旨主張する。
しかしながら、前記認定判断によれば、原告、被告商品の台座の正面及び側面並びに支柱の背面及び側面の形態の相違は、前記のようなこの種商品の取引者又は需要者において、両商品を異なる商品であると認識するに足りるものであるから、原告の右主張は、採用することができない。
三 次に、原告は、被告商品は、原告商品と混同されており、また混同のおそれがある旨主張するので、同主張について判断する。
1 取引者又は需要者の間に被告商品と原告商品との混同が生じていることを認めるに足りる証拠はない。
2 証人石川雪夫の証言によれば、原告商品は、常に光学機器専門の代理店を通じて販売されており、需要者が右代理店に対して注文すると、原告において、当該需要者に対して直接又は代理店を通じて納品していることが認められ、他方、被告代表者尋問の結果によれば、被告商品は、常に需要者から直接注文を受けて販売していることが認められる。右認定の事実によれば、原告商品と被告商品との販売ルートは全く異なっているものである。
また、成立に争いのない甲第四八号証及び乙第一号証、証人石川雪夫の証言により真正に成立したものと認められる甲第五号証及び第四〇号証、証人石川雪夫の証言、被告代表者尋問の結果並びに弁論の全趣旨によれば、本件で問題となっている測定顕微鏡は、その販売価格が六〇万円ないし九〇万円というかなり高額なものであって、測定顕微鏡の需要者は、企業、官公庁、大学等の技術者や研究者などの専門家であり、その購入の決定に当たっては、見た目の形態よりも、性能等が重視され、他で目にした測定顕微鏡の形態の記憶に頼るのではなく、カタログや見本によるデモンストレーションによって性能や使い勝手を確認し、製造者や機種等も確かめた上で選択するものと認められる。
更に、前記二3(二)の(1)に認定したとおり、被告商品の台座10の正面のパネルの下方には被告のロゴマーク及び「MEIJI TECHNO CO・LTD」の社名が表示され、商品が被告の製品であることを明示している。
以上のような原告商品と被告商品との販売ルートの違い、本件で問題となる測定顕微鏡の価格、需要者が専門家であって、購入決定の際の行動、台座正面のパネルに被告の社名が表示されていることを考えると、光学機器専門の代理店である取引者や専門家である需要者が被告商品を原告商品と混同して取引するおそれはないものと認められる。
3 原告は、原告商品を熟知している取引者又は需要者は、被告商品の外観から「ユニオン光学株式会社」という具体的な出所を想起するであろうから、銘板に記されている「MEIJI TECHNO CO・LTD・JAPAN」という表示を見て原告のOEM製品であると誤認したり、原告との間に何らかの関係があると誤認したりすることが予想される旨主張する。また、原告は、被告商品の購入を検討する取引者又は需要者は、技術的内容に子細な検討を加え、その結果により購入の可否を決定するであろうが、その購入を検討する初期の段階、即ち、被告商品の資料の取寄せや販売担当者の招集、あるいは広告や展示会において被告商品に目を止めた段階で、取引者又は需要者は、被告商品を自身が知っている原告商品と誤認混同する旨主張する。
しかしながら、右2認定のような事実を合わせ考えると、取引者又は需要者が被告商品の外観から原告のOEM製品であると誤認したり、原告との間に何らかの関係があると誤認したりすることはあり得ないというべきである。
また、仮に原告主張のとおり取引者又は需要者が、測定顕微鏡の購入を検討する初期の段階において、漠然とイメージのみで記憶していた原告商品の形態と被告商品の形態との区別がつかないことがあるとしても、前記2認定の事実に照らせば、取引者又は需要者が測定顕微鏡の外観によって購入するかどうかを決することはありえず、したがって、被告商品を最後まで原告商品であると思って購入してしまうということはあり得ないというべきである。
よって、原告の右主張は採用することができない。
四 以上によれば、被告の行為は、不正競争防止法一条一項一号の規定に該当しないものというべきであるから、原告の被告に対する本訴請求は、その余の点について判断するまでもなくいずれも理由がないから、これを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条の規定を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 西田美昭 裁判官 宍戸充 裁判官 櫻林正己)
第一目録
「測定顕微鏡」
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第一目録説明書
一、写真の説明
第1図はこの商品の斜視図、第2図は同上正面図、第3図は同上右側面図、第4図は同上左側面図、第5図は同上平面図、第6図は同上背面図である。
二、商品の目的及び機能
この商品は微小、微細部品の形状・寸法の測定及び外観の検査を実施するために使用される測定顕微鏡と称される商品である。
そして、この商品は右目的を達成するために第一に被測定物をレンズ系をもって光学的に拡大して観察する機能を、第二に対物レンズ下に載置した被測定物を方向及び量を測定しながら縦横及び回転方向に移動させる機能を、第三に移動量を測定しながら鏡筒を上下動させる機能を有する。
三、商品の外部構造
(1)概要
この商品は台座及び支柱よりなるボデー部、この支柱に上下動自在に摺嵌される鏡筒部、台座上に設けられる測定ステージ部よりなる。
以下、各部の外部構造を添付説明図面に付した符号及び部品名称に従って説明する。
(2)ボデー部
ボデー部は装置全体を支える台座10及びこの後部に立設される支柱30を主たる構成部材とする。
右台座10の正面には電源を投入するためのメインスイッチ13が右方に、この投入状態を視認するためのパイロットランプ14が左方にそれぞれ並設される。
同じく右側面には反射若しくは斜光照明を調光するための調光っまみ15、同照明を切り換えるための照明切り換えスイッチ17、透過照明装置61との接続プラグ65が挿入されるべき二次コード用ソケット19が前方より後方に向かって横一列に順次並設される。
同じく左側面には透過若しくは斜光照明を調光するための調光つまみ16、同照明を切り換えるための照明切り換えスイッチ18、装置全体に電気を供給するための電源ソケットが挿入されるべき一次コード用プラグ12が前方より後方に向かって横一列に順次並設される。
同じく背面中央には被測定物を下方より照射するための透過照明装置61が着脱自在に後部を露出して設けられ、この右上にはヒユーズホルダー21が設けられる。
同じく平面には支柱30が後部に立設されると共に、斜光照明装置63との接続プラグ67が挿入されるべき二次コード用ソケット20b及び20aがこの支柱30を挟んで左右に対称的に設けられる。
同じく底面には装置全体を支持するためのゴム足11が突設される。
次に、支柱30の正面には鏡筒部のアリ溝が摺嵌されるべきアリ(突条)32が上下方向に連続的に設けられる。
同じく平面には反射照明装置62との接続プラグ66が挿入されるべき二次コード用ソケット31が設けられる。
(3)鏡筒部
鏡筒部は支柱30に沿って上下に粗動するブラケット45及びこのブラケット45に沿って上下に微動する鏡筒40を主たる構成部材とする。
このブラケット45は光学系を構成する鏡筒40を上下動自在に正面に保持すると共に、背面に設けたアリ溝33を支柱30のアリ32に摺嵌することにより支柱30に対し上下動自在に保持される。
そして、このブラケット45の後方両側面にはブラケット45を支柱30に対し上下動させるための粗動ハンドル46a、46bが対称的に突設され、同じく前方両側面にして右粗動ハンドルより上方位置には鏡筒40をブラケット45に対し上下動させるための微動ハンドル47a、47bが対称的に突設される。
同じく右側面にして微動ハンドル47aには、被測定物を斜め上方より照射するための斜光照明装置63が上部にリング状の係合部を有する取りつけアーム64を介して着脱自在に設けられる(但し、この斜光照明装置63は左側面の微動ハンドル47bに取付けることもできる)。
同じく平面にはブラケット45に対する鏡筒40の上下移動量を測定するためのダイヤルゲージ49が立設される。
次に鏡筒40の正面には斜め上方に向かって接眼レンズ42が単眼チューブ41を介して着脱自在に突設される。
同じく左側面下方には光路を接眼レンズ42側若しくは反射照明装置62側に切り換える光路切り換えつまみ48が設けられる。
同じく平面には被測定物を上方より照射するための反射照明装置62が着脱自在に後部を露出して設けられる。
同じく底面には対物レンズ44が対物つなぎ43を介して着脱自在に突設される。
(4)測定ステージ部
測定ステージ部は台座10上に載置固定される測定ステージ50及びこの測定ステージ50上に嵌入されるべきステージガラス55を主たる構成部材とする。
測定ステージ50は各々が可動する上中下のステージの積み重ねよりなり、台座10平面に載置固定した下レール68に対し下ステージ51が横方向に移動自在に摺嵌され、この下ステージ51上面に載置固定される中レール69には中ステージ52が縦方向に移動自在に摺嵌され、この中ステージ52上面には平面に回転ステージ54を回転自在に設けた上ステージ53が固定され、この回転ステージ54内には被測定物を載置すべきステージガラス55が嵌入される。
そして、測定ステージ50の正面にして中レール69には中ステージ52及び上ステージ53の移動量を測定するためのマイクロメーターが取りつけられるべきステー57が突設され、同じく右側面にして下レール68には下ステージ51、中ステージ52、上ステージ53の移動量を測定するためのマイクロメーターが取りつけられるべきステー56が突設される。
〔説明図面〕
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第二目録
「測定顕微鏡」
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第二目録説明書
一、図面の説明
第1図はこの商品の斜視図、第2図は同上正面図、第3図は同上右側面図、第4図は同上左側面図、第5図は同上平面図、第6図は同上背面図である。
二、商品の目的及び機能
この商品は微小、微細部品の形状・寸法の測定及び外観の検査を実施するために使用される測定顕微鏡と称される商品である。
そして、この商品は右目的を達成するために第一に被測定物をレンズ系をもって光学的に拡大して観察する機能を、第二に対物レンズ下に載置した被測定物を方向及び量を測定しながら縦横及び回転方向に移動させる機能を、第三に移動量を測定しながら鏡筒を上下動させる機能を有する。
三、商品の外部構造
(1)概要
この商品は台座及び支柱よりなるボデー部、この支柱に上下動自在に摺嵌される鏡筒部、台座上に設けられる測定ステージ部よりなる。
以下、各部の外部構造を添付説明図面に付した符号及び部品名称に従って説明する。
(2)ボデー部
ボデー部は装置全体を支える台座10及びこの後部に立設される支柱30を主たる構成部材とする。
右台座10の正面には両側左右端には斜光照明を調光するための調光つまみ16及び反射若しくは透過照明を調光するための調光つまみ16が、この両つまみ間内側の左右には斜光照明を切り換えるための照明切り換えスイッチ18及び反射若しくは透過照明を切り換えるための照明切り換えスイッチ17が、更にその中央には電源を投入するためのパイロットランプ兼用のメインスイッチ13がそれぞれ横一列に並設される。
同じく背面中央には被測定物を下方より照射するための透過照明装置61が着脱自在に後部を露出して設けられ、この左上にはヒユーズホルダー21が、右方には装置全体に電気を供給するための電源ソケットが挿入されるべき一次コード用プラグ12が、左下には透過照明装置61との接続プラグ65が挿入されるべき二次ゴード用ソケット19がそれぞれ設けられる。
同じく平面には支柱30が後部に立設されると共に、斜光照明装置63との接続プラグ67が挿入されるべき二次コード用ソケット20b及び20aがこの支柱30を挟んで左右に対称的に設けられる。
同じく底面には装置全体を支持するためのゴム足11が突設される。
次に、支柱30の正面には鏡筒部のアリ溝が摺嵌されるべきアリ(突条)32が上下方向に連続的に設けられる。
同じく平面には反射照明装置62との接続プラグ66が挿入されるべき二次コード用ソケット31が設けられる。
(3)鏡筒部
鏡筒部は支柱30に沿って上下に粗動するブラケット45及びこのブラケット45に沿って上下に微動する鏡筒40を主たる構成部材とする。
このブラケット45は光学系を構成する鏡筒40を上下動自在に正面に保持すると共に、背面に設けたアリ溝33を支柱30のアリ32に摺嵌することにより支柱30に対し上下動自在に保持される。
そして、このブラケット45の後方両側面にはブラケット45を支柱30に対し上下動させるための粗動ハンドル46a、46bが対称的に突設され、同じく前方両側面にして右粗動ハンドルより上方位置には鏡筒40をブラケット45に対し上下動させるための微動ハンドル47a、47bが対称的に突設される。
同じく右側面にして微動ハンドル47aには、被測定物を斜め上方より照射するための斜光照明装置63が上部にリング状の係合部を有する取りつけアーム64を介して着脱自在に設けられる(但し、この斜光照明装置63は左側面の微動ハンドル47bに取付けることもできる)。
同じく平面にはブラケット45に対する鏡筒40の上下移動量を測定するためのダイヤルゲージ49が立設される。
次に鏡筒40の正面には斜め上方に向かって接眼レンズ42が単眼チューブ41を介して着脱自在に突設される。
同じく左側面下方には光路を接眼レンズ42側若しくは反射照明装置62側に切り換える光路切り換えつまみ48が設けられる。
同じく平面には被測定物を上方より照射するための反射照明装置62が着脱自在に後部を露出して設けられる。
同じく底面には対物レンズ44が対物つなぎ43を介して着脱自在に突設される。
(4)測定ステージ部
測定ステージ部は台座10上に載置固定される測定ステージ50及びこの測定ステージ50上に嵌入されるべきステージガラス55を主たる構成部材とする。
測定ステージ50は各々が可動する上中下のステージの積み重ねよりなり、台座10平面に載置固定した下レール68に対し下ステージ51が横方向に移動自在に摺嵌され、この下ステージ51上面に載置固定される中レール69には中ステージ52が縦方向に移動自在に摺嵌され、この中ステージ52上面には平面に回転ステージ54を回転自在に設けた上ステージ53が固定され、この回転ステージ54内には被測定物を載置すべきステージガラス55が嵌入される。
そして、測定ステージ50の正面にして中レール69には中ステージ52及び上ステージ53の移動量を測定するためのマイクロメーターが取りつけられるべきステー57が突設され、同じく右側面にして下レール68には下ステージ51、中ステージ52、上ステージ53の移動量を測定するためのマイクロメーターが取りつけられるべきステー56が突設される。
〔説明図面〕
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