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東京地方裁判所 平成2年(行ウ)17号 判決 1991年12月09日

原告

菅田信子

右訴訟代理人弁護士

山崎馨

秋山清人

被告

地方公務員災害補償基金東京都支部長

鈴木俊一

右訴訟代理人弁護士

大山英雄

主文

一  被告が原告の昭和五九年一〇月一〇日付け認定請求につき昭和六一年二月一三日付け通知書をもって通知した、公務外の災害と認定した処分は、これを取り消す。

二  訴訟費用は被告の負担とする。

事実及び理由

第一請求

主文同旨

第二事案の概要

本件は、保母である原告が、学園のスケート教室実施中に転倒し、頭部を打撲した結果外傷性てんかんに罹患したとして、右傷病につき公務災害認定請求をしたが、被告により公務外災害と認定する処分を受けたので、その処分の取消を求めた事案である。

一争いのない事実

1  原告は、昭和五六年当時、東京都江東区立新舞子健康学園に勤務する保母であったところ、同年一二月四日午後二時五〇分頃、岩井スポーツガーデン(千葉県安房郡富山町高崎字下広尾一七六四番地)内のスケート場で行われた同学園のスケート教室において、自由滑りをしていた際、スケートを付けて滑走する原告の前方に滑り出てきた同学園児童を避けようとしてフェンスに衝突して転倒し、後頭部をリンク氷面に打ちつけた(以下、「本件事故」という。)。

2  原告は、同日以降、頭痛、視力低下、めまい、耳鳴り、嘔吐、両腕のしびれ、肩と頚部の痛み、握力低下、筋力低下等の症状をきたし、同月五日以降、入院及び通院にて治療を受けていた。

3  原告は、昭和五七年六月一〇日、傷病名を「後頭部打撲、頚椎捻挫、バレーリュー症候群」として被告に公務災害の認定を請求し、被告は原告に対し、昭和五八年一月二八日付け通知書をもって、これらの傷病を公務上の災害と認定する旨通知した。

4  ところが、原告は、昭和五九年四月一四日以降、めまい様の意識障害発作を起こすようになり、「外傷性てんかん」(以下、「本件傷病」という。)と診断されたので、本件傷病は前記本件事故に起因して発症したものであるとして、同年一〇月一〇日付け公務災害認定請求書を被告に提出したが、被告は、昭和六一年二月一三日付け通知書をもって、原告の右認定請求につき、公務外の災害と認定する処分(以下、「本件処分」という。)をした旨通知してきた。

5  原告は、地方公務員災害補償法五一条二項の規定に基づき、本件処分の取消を求めて、昭和六一年四月四日付けで地方公務員災害補償基金東京都支部審査会に対し審査請求をしたが、右支部審査会は、昭和六三年五月一九日付けでこれを棄却する旨の裁決をした。そこで、原告は、さらに本件処分と右審査会の裁決の取消を求めて同年七月六日付けで地方公務員災害補償基金審査会に対し、再審査請求を行ったが、右審査会は、平成元年一〇月一一日付けでこれを棄却する旨の裁決をし、右裁決は、同年一一月一四日原告に告知された。

二争点

本件の争点は、原告の罹患している傷病が外傷性てんかんであるか否か及び仮にそれが外傷性てんかんであるとして本件事故に起因するものであるか否かである。

三原告の主張

1  原告が罹患している本件傷病が「外傷性てんかん」であることは元国立療養所静岡東病院(てんかんセンター)神経科医長という専門医の渡辺靖之が同病名の診断をしており、これを否定する医師の診断がないことから明らかであるが、さらに次の事実からも明らかである。

(一) 「てんかん」自体の診断については、意識障害発作と脳波異常が根拠となるが、処分庁の裁決書にも「請求人の症状が、てんかん性の疾病によるものであることは、昭和五八年一一月一五日及び昭和五九年六月七日の脳波所見からみて認められる」との意見が記載されていることからも脳波の異常はあったことが明らかである。

(二) 遺伝的素因によるてんかんは、三〇歳以降に発症することはごくまれであるとされるところ、原告は、四〇歳代に発症していることからすると、遺伝的素因によるものとは考えられない。

(三) 四〇歳代発症のてんかんの原因として外傷の他に考えられるのは、脳腫瘍、血管奇形、脳血管障害、脳炎等の頭蓋内疾患であるが、原告についてはこれらはいずれも否定されている。

(四) 原告が、本件事故によって「後頭部打撲・頚椎捻挫・バレーリュー症候群」の傷害を受けたことは争いのない事実であるが、このような傷害を引き起こすだけの外力が作用したのであるから、この時後頭部ないし頚部打撲によって、脳に損傷を受けた可能性は大きい。

(五) しかも、昭和五七年九月、昭和五八年五月及び昭和五九年五月の脳波に棘波異常が認められており、社団法人東京都教職員互助会三楽病院(以下、「三楽病院」という。)整形外科医師桧垣昇三も昭和五八年一二月一二日付け回答書で「左脳幹部あたりの症状が考えられる」と診断していることと、右四の事実を合わせ考えると、本件事故による脳損傷の存在が推認される。

(六) 原告は、本件事故以前にはてんかん発作を起こしておらず、外傷後に初めててんかん発作を起こしているが、このように、外傷、脳波異常の発生(脳損傷の発見)、てんかん発作の初発という経過をたどっていることは外傷性てんかんとして特徴的なものである。

以上、要するに、てんかんの原因を「外傷性」と診断すべき十分の根拠があり、「外傷性」とした場合に矛盾を来すような事情は全くなく、また、「外傷性」以外の原因はほとんど考えられないのであるから、本件傷病を外傷性てんかんと判断すべきことは明らかである。

2  本件傷病と本件事故との因果関係について

(一) 本件事故については、それによって起きた初発傷病(後頭部打撲・頚椎捻挫・バレーリュー症候群)の存在から相当な打撃が後頭部に加えられたと認めることができ、したがって、この時、脳損傷が起こった可能性は強い。なお、原告は、本件事故の直後である昭和五六年一二月六日には五回も嘔吐をしている旨三楽病院のカルテに記載されており、この点からも本件事故において頭部に強度の打撃を受けたことは認められる。

(二) しかも、右初発傷病がなかなか治癒せず、昭和五九年五月に至って、完治しないまま症状固定の通知を受けたのであるが、このように症状改善が進まなかったのは、本件事故によって脳損傷が起きていたのにこれに対応した治療をせず、整形外科のリハビリ治療のみ(投薬もビタミン剤と痛み止めのみ)を行っていたためである可能性が強い。

(三) 原告に、右リハビリ治療の主治医であった前記桧垣医師は、前述のように、「左脳幹部あたりの症状が考えられる」と診断しており、原告がどこが悪いのか尋ねた際、「頭だ、頭だ」といって脳損傷の存在を肯定したことがあった。その時、原告は、診断書を書いてくれるよう頼んだが、「僕は整形外科医だから頭の診断書は書けない」と断られた。

(四) 脳損傷が起きた場合は、それが次第に周辺細胞に影響をもたらし、やがて脳波の異常として検出されるに至るものであるから、本件においても、本件事故後はしばらくは脳波の異常はなく、昭和五七年九月になって脳波の異常が現れてきたことは、本件事故による脳損傷の発生を裏づける事実として評価できる。

(五) 本件では、CTスキャン(以下、「CT」という。)によって脳損傷の存在を発見することはできなかったが、CTでは通常五ミリメートル以下の傷は発見できないものである。また、脳損傷がCTに現れやすいのは、受傷の一、二日後であり、その後は次第に現れにくくなるところ、本件では、受傷直後の昭和五六年一二月一二日にCTの記録がなく、昭和五七年二月二日に撮ったといわれるCTも詳細は不明であって、受傷後一年近く経過した後の昭和五七年一一月四日及び一一月一六日のものしか明確ではない。このような事情からして、CTによって異常が認められるに至っていないことは、脳損傷の発生を否定すべき理由とはならない。

以上からすれば、本件事故により脳損傷が生じ、その結果本件傷病が発生したものであり、本件事故と本件傷病との間には相当因果関係がある。

四被告の主張

1  原告が罹患している傷病は「外傷性てんかん」とは認められない。

外傷性てんかんであるというためには、脳損傷の存在を明らかにしなければならず、その最も良い方法はCTやMRIであるが、原告が受診したCTの結果、異常を証明する記録が存在しない。また、昭和五八年一一月一五日の脳波で棘波類似の異形波を一、二回認めるが、異常波と認めるほどのものでなく、焦点も決定できない。

2  仮に、原告の罹患している傷病が外傷性てんかんであるとしても、その発症は本件事故後二年四か月も経過した時点であることからすれば、本件事故との間に相当因果関係はない。

第三争点に対する判断

一「外傷性てんかん」は、外力によって生じた脳損傷が原因となって発症するてんかんであるが、一般に外傷性てんかんであるか否かの診断には、次の基準が用いられていることは当事者間に争いがない。すなわち、①てんかん発作があること、②外傷前には同じ発作をみていないこと、③他にてんかん発作の原因となり得る脳疾患や全身疾患をもっていないこと、④外傷により脳損傷を生じていること、⑤脳損傷部位と脳波異常部が一致することの五つの基準である。また、Walkerは、右④のかわりに外傷は脳損傷を起こし得るほどに強かったことという基準を掲げ、さらに、⑥最初のてんかん発作が外傷後あまり経過していない時期に起こったことという基準を加えており、この基準も良く用いられている(<書証番号略>)。

そして、右①ないし③は外傷性てんかん診断の前提条件であって、実際の運用上問題になることは少ないが、Walkerの④⑥の基準はあいまいで、④については二四時間以上の意識傷害を伴う場合を、⑥については閉鎖性頭部外傷の場合は受傷後二年間、開放性頭部外傷については一〇年以内を「外傷後あまり経過していない時期」と考えるのが普通とされているが、判定上問題が多く、医師間中信也らが東大脳神経科外来に通院加療中の外傷性てんかん患者を対象として研究した結果、Walkerの六つの基準をすべて満足した者はわずか一割であったことから、右基準はかなり理想的な基準であるとされている(<書証番号略>)。

また、脳損傷の存在は、CTによる診断が有用であるとされているが、右間中の論文によれば、これまで外傷性てんかんとCTに関する論文中には、外傷性てんかんの一七パーセントはCTが正常であったとするものがあり、同人らの症例でも、三二パーセントが正常であったとしていることから、CTが外傷性てんかん診断の有力な武器であることは確かであるが、CTが正常であるからといって外傷性てんかんではないということはできない。

さらに、脳波については、脳波の異常が検出され、その焦点が認められ、かつ焦点が現認または推認される脳損傷部位と一致すれば、当該脳損傷がてんかんの原因であると診断する有力な根拠となるが、外傷性てんかんであっても、脳波の異常が検出されない場合もあり、検出されても焦点がない場合や、焦点があっても脳損傷部位と同定できない場合もあるので、⑤の事実が認められなければ外傷性てんかんと認められないというものでないことは当事者に争いがなく、<書証番号略>によれば、外傷性てんかんに関する論文中には、外傷性てんかんの内23.4パーセントの者が脳波が正常であったとするものや、成人の外傷性てんかん患者にはてんかん波をあまり認めないとするものがあり、右間中も外傷性てんかんの確診には脳波はそれほど有用ではないとしていることが認められる。

二原告の傷病

1  原告の傷病が「てんかん」であること

<書証番号略>によれば、一般にてんかんの診断は、発作症状の確認と対応する脳波所見によってなされ、発作症状の確認の方法で最も確実なものはビデオによる録画や直接の目撃であるが、普通には本人からの自覚症状を聴取したり、家族など周囲の人による目撃談の聴取によってなされること、そして発作症状の確認が確実であれば、脳波所見が乏しくてもてんかんと診断され、治療が開始されることも少なくないことが認められる。

原告の場合についてこれを見るに、<書証番号略>及び証人渡辺靖之の証言によれば、原告は、昭和五八年五月一八日に医療法人社団港勤労者医療協会芝病院(以下、「芝病院」という。)で受診したが、同病院における同月二五日の原告の脳波所見によると右前側頭部に棘波焦点が認められたこと、その時にはいまだ発作症状は見られず、同年七月二〇日を最終として右病院通院を中断したが、昭和五九年四月中頃から「めまい」を数分間自覚する発作症状が出現したため、同年五月九日再度右病院で受診したが、その「めまい」発作は、同病院医師大月篤夫の記録によれば「見ている物が左に流れるかんじがして、目が左にひっぱられる。左の視野の左外上方四分の三が暗くなる。」というものであり、同病院神経内科医師渡辺靖之の昭和五九年六月二三日付け意見書によれば「眼前が左手から暗くなり、網目模様がみえて眼前の光影とダブッてくる。「アーめまいがする。」と言ってしゃがみこむが、意識はかなり保たれている。持続数分。一日数回〜一〇回のシリーズ。」というもので、再び脳波にも異常が認められ、抗てんかん剤テグレトールの投与により発作はコントロールされるに至っていること、右発作は右渡辺靖之の診断によればてんかん発作であり、発作型は部分発作、てんかん分類では部分てんかん(側頭葉てんかん)であると診断されたことが認められる。

2  原告のてんかんが外傷性てんかんであるか否か

原告にてんかん発作が見られることは前記認定のとおりであるが、右てんかん発作が外傷に起因するものであるか否か検討するに、前記証人渡辺靖之の証言によれば原告は本件事故前にはてんかん発作を起こしていないことが認められ、同証人の証言及び<書証番号略>によれば、遺伝的素因によるてんかんが三〇歳以降に発症することはごく稀であるとされているところ(このことは当事者間に争いがない。)、原告は昭和一二年一月一五日生まれであるから、てんかん発作を起こした当時は四七歳であり、その点から遺伝的素因によるものとは考えにくいこと、てんかんの原因として他に脳腫瘍、脳膿瘍、脳炎、脳血管奇形、脳血管障害等が一般的に考えられるが、脳腫瘍、脳膿瘍、脳炎等であれば症状が変化してくると考えられるところ、原告が発作を初めて起こした昭和五九年四月から平成三年三月まで原告に症状の悪化が見られないことからこれらが原因であることは否定でき、さらに、平成三年三月一六日に医療法人社団同友会春日クリニックが撮影した原告の頭部の核磁気共鳴のコンピューター画像(以下、「MRI」という。)によれば、大脳基底核部に小異常影が認められるが、これは外傷によって出血を起こしたかあるいは小さな脳出血ないし脳梗塞等の脳血管障害を起こしたかどちらかであるが、脳血管障害であれば麻痺とか感覚障害や頭痛等の症状が出るがそのような症状は見られないことからその他の原因も否定できることが認められる。

そこで次に、外傷による脳損傷の有無について検討するに、前述のように脳損傷の有無の判断にはCTが有力な資料となるが、<書証番号略>によれば、本件事故直後にCTを撮った記録はなく、三楽病院の昭和五七年二月二三日のカルテには「頭部CT異常なし」と記載されているが詳細は不明であり、明確なものは昭和五七年一一月四日(頭部、頸部)及び同月一六日(頸部)に日本専売公社東京病院で撮影されたCTのみで、それによるとほぼ正常とされていることが認められ、原告の頭部の異常を示すCTは存在しない。

しかし、前記認定のように、専門医の研究結果によれば、外傷性てんかん患者の三二パーセントはCTが正常であったとの症例結果報告もなされている程であるから、脳の異常を示すCTが存在しないからといって脳損傷が存在しないとすることはできず、むしろ右認定のように、原告の平成三年三月一六日のMRIによれば、大脳基底核部に外傷の可能性の高い小異常影が認められることや、三楽病院整形外科医師桧垣昇三の被告の照会に対する昭和五八年一二月一二日付け回答によると、同医師は「左脳幹部あたりの症状が考えられる」旨指摘していること及び右認定のように他の原因がほぼ否定されていることを総合すると、外傷による脳損傷の存在が推認できる。

また、脳波についても、<書証番号略>によれば、昭和五六年一二月一四日の三楽病院における脳波検査等正常であるとする所見も見られるが、昭和五七年九月一一日の第三北品川病院脳外科における脳波検査で左右側頭部に棘波〜鋭波が認められて異常と判定された他、昭和五八年五月及び昭和五九年五月にいずれも芝病院において脳波の異常が認められ、特に昭和五八年五月の場合には右側頭前部に棘波焦点が認められたことが認められ、しかも前記証人の証言によれば、前記MRIの結果と右脳波異常の部位は側頭葉という点で一致していることが認められる。

以上を総合すると、原告のてんかんは、外傷性てんかんであると推認するのが相当である。

この点につき、脳神経外科医師早川勲の鑑定意見書(<書証番号略>)は、てんかんの他の原因すべてについて検討されたといい難いので、本件てんかんの原因が何であるかを特定しうる材料はないとするが、本件においては、そこに記載されている他の原因は前記認定のように高い確率で否定されているというべきであるから、右意見は採用しない。

三本件事故との因果関係

原告のてんかんが外傷性てんかんであることは前記認定のとおりであるが、右疾病が本件事故によって発症したものであるか否かにつき検討する。

右の点につき検討するうえでは、本件てんかん発作は本件事故後二年四か月を経過して発現しているが、そのような場合でも本件事故が原因であるといえるか否かが特に問題となる。

<書証番号略>の間中論文によれば、外傷性てんかんの発症時期に関しては種々の統計があるがほとんどその内容は一致しており、一年目までに約半分が、二年目までに約四分の三が発症するとされており、同人の教室のデータでは一月で18.3パーセント、一年で66.7パーセント、二年で七五パーセント、五年で九〇パーセント、一〇年で91.7パーセントが発症していることが認められる。また、右書証中の前記早川医師の鑑定意見書によれば、軽傷の閉鎖性頭部外傷例で受傷後二年以上してからてんかん発作の起こるものが0.5パーセント以下ながら存在することが文献上明らかにされていることが認められるが、前記証人の証言によれば、軽傷の閉鎖性頭部外傷とは骨折を伴わず、脳が露出しない外傷であって、そのうちの二〇〇人に一人が外傷性てんかんになり、かつ、二年以上して発症するということは、医学的にはそれが決して稀なことであるとはいえないことが認められる。そして、このことは、前記のとおりWalkerの「最初のてんかん発作は外傷以来あまり経過していない時期に起こった。」という基準については、閉鎖性頭部外傷の場合は受傷後二年間、開放性頭部外傷については一〇年以内を「外傷後あまり経過していない時期」と考えるのが普通とされていることからも是認できる。

これを本件について見るに、本件原告は本件事故後約二年四か月後にてんかん発作を起こしており、右基準の二年を少し上回っているものの、前記認定のように、原告は本件事故以前にてんかん発作を起こしたことがなく、本件事故後にも脳に損傷を受けるような事故に遭遇したことを窺わせるような事情も見当らず、てんかんの他の原因もほぼ否定されていることを合わせ考えると、原告の本件傷病は、本件事故によって頭部をリンクに打ち付けたことにより、脳に損傷を受け、そのために外傷性のてんかんに罹患したものと認めるのが相当である。

そうであるとすれば、本件事故と本件傷病との間には相当因果関係があることになり、原告の本件傷病は公務上の災害ということができる。

四結論

よって、被告が、原告の昭和五九年一〇月一〇日付け認定請求につき、昭和六一年二月一三日付け通知書をもって通知した、公務外の災害と認定した処分は違法であるから、これを取り消し、主文のとおり判決する。

(裁判官高田健一)

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