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東京地方裁判所 平成2年(行ウ)226号

原告

渡川義彦

被告

社会保険庁長官北郷勲夫

右指定代理人

青木正存

小林辰夫

東幸邦

佐藤健治

加治佐昭

神田弘二

簗瀬雅一

主文

本件請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告が、原告に対し、昭和六三年四月二〇日付けでした厚生年金保険法に基づく障害厚生年金の不支給決定処分を取り消す。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

二  請求の趣旨に対する答弁

主文同旨

第二当事者の主張

一  請求原因

1  原告(大正七年八月三日生)は、厚生年金保険法の被保険者であった昭和五〇年二月を初診日とする心筋梗塞症により、障害の状態にあるとして、昭和六二年一一月六日、被告に対し、障害厚生年金の裁定を請求した(以下、右請求を「本件請求」という。)。

2  これに対し、被告は、昭和六三年四月二〇日付けで、原告の本件請求は、原告が六五才に達する日の前日までになされたものでないとの理由で、これを支給しない旨の決定(以下「本件不支給決定」という。)をした。

3  しかし、本件請求は、原告が満六四歳であった昭和五八年七月五日の時点で誤って国民年金法に基づく障害年金の請求として行い、適法に受理された右請求を、広島県の指示に従って厚生年金保険法に基づく障害年金の裁定の請求に切り換えることとしたものであるから、当初の請求の効果は継続しているとみるべきである。したがって、昭和六二年一一月の請求時点で原告が六五歳に達していることを理由としてした本件不支給決定は、違法であり、取り消されるべきである。

二  請求の原因に対する認否

請求の原因1及び2の事実は認める。同3の事実は知らない。その主張は争う。

三  被告の主張

1  原告は、昭和六二年一一月六日付けで広島西社会保険事務所に厚生年金保険障害年金裁定請求書を提出した。

2  これに対し、被告は、同年一二月一一日付けで原告に対し障害認定日(昭和五一年八月)の診断書を提出するよう指示し、併せて診断書が提出できない場合は事後重症による請求とみなす旨を告げたところ、原告は、同月一七日付けで障害認定日における診断書が提出できない理由を明らかにしたうえで事後重症による請求を了承する旨の回答書を提出した。

3  ところで、初診日が昭和六〇年七月一日前にある傷病による障害について法四七条の二第一項の規定の事後重症による障害厚生年金の支給を請求する場合は、六五歳に達する日の前日又は初診日から起算して五年を経過する日のうちいずれか遅い日までにすべきものとされている(厚生年金保険法四七条の二、国民年金法等の一部を改正する法律(昭和六〇年法律第三四号。以下「改正法」という。)附則六七条、国民年金法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置に関する政令(昭和六一年政令第五四号)七九条)ところ、本件請求に係る原告の障害の初診日は昭和五〇年二月であるから、初診日から起算して五年を経過する日は昭和五五年二月ということとなり、また、大正七年八月三日生まれの原告が六五歳に達する日の前日は昭和五八年八月二日ということとなる。

4  したがって、昭和六二年一一月六日になされた本件請求は、右の請求期間を徒過した不適法な請求であり、これを却下した本件処分に違法はない。

四  被告の主張に対する原告の認否

被告の主張1の事実は認める。

第三証拠

本件記録中の書証目録記載のとおりである(略)。

理由

一  原告が本件請求書を被告に提出した時期が昭和六二年一一月六日であること、本件請求に係る障害の初診時が昭和五〇年二月であること及び本件請求書の提出時において本件請求に係る障害の初診時から五年を経過しかつ原告の年齢が六五才に達していたことは、いずれも原告の自認するところである。

二  原告は、本件請求は、原告が六四歳であった昭和五八年七月五日に行った国民年金法に基づく障害年金の請求の効果が継続している状態で、これを厚生年金保険法に基づく障害年金の請求に切り替えたものであり、最初の請求の時に同法に基づく障害年金の請求があったものとみるべきであるから、改正法による改正後の厚生年金保険法における障害年金の給付の請求の要件を満たしており、適法なものであると主張する。

しかし、仮に原告主張のように、本件請求を昭和五八年七月の時点で行われたものとして扱った場合においても、右改正法による改正前の当時の厚生年金保険法では、いわゆる事後重症による障害年金の請求については、初診日から起算して五年を経過する日までに請求を行うという方法しか認められていなかった(改正前の厚生年金保険法四七条)ところ、原告はその時点では既に初診日から五年を経過していたのであるから、当時の厚生年金保険法(改正法による改正前のもの)のもとでは、右請求は同法四七条二項の事後重症による障害年金の請求としては不適法なものであったといわざるを得ない。また、改正法が施行された昭和六一年四月一日の時点では、原告は既に六五歳に達していたのであるから、その後になされた右改正後の厚生年金保険法に基づく本件請求も、被告の主張するとおりの改正後の厚生年金保険法の規定に照らし、事後重症による障害年金の請求として不適法なものであることは明らかである。したがって、いずれにしても、本件請求が不適法なものであることは明らかである。

三  以上のとおり、被告のした本件不支給決定には違法はなく、原告の本件請求は理由がないこととなるから、これを棄却することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 涌井紀夫 裁判官 市村陽典 裁判官 小林昭彦)

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