東京地方裁判所 平成3年(ワ)12991号 判決 1993年12月20日
原告
甲野一郎
被告
株式会社スポーツニッポン新聞東京本社
右代表者代表取締役
牧内節男
右訴訟代理人弁護士
田村公一
同
小原健
同
椎名茂
被告補助参加人
社団法人共同通信社
右代表者理事
犬養康彦
右訴訟代理人弁護士
西村利郎
同
柏倉栄一
同
淵邉善彦
同
笹本麻
主文
一 原告の請求を棄却する。
二 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第一請求
被告は、原告に対し、金三〇〇万円及びこれに対する昭和六〇年九月一九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
第二事案の概要
本件は、被告の発行する新聞である「スポーツニッポン」紙上に掲載された原告に関する記事が、原告の名誉を毀損するものであるとして、原告が被告に対し、不法行為に基づく損害賠償(慰謝料)を請求した事案である。
一基本となる事実
以下の事実のうち、証拠を挙示したもの以外の事実は、争いがない。
1 当事者
原告は、原告の愛人であった者と共謀の上、昭和五六年八月一三日(アメリカ合衆国太平洋標準時)、同国カリフォルニア州ロサンゼルス市内のホテルにおいて、原告の妻であった甲野花子(以下「花子」という。)を殴打して殺害しようとしたが、その目的を遂げなかったという容疑(以下「殴打事件」という。)で刑事訴追を受け、現在被告人の立場にあるものである(弁論の全趣旨)。
被告は、日刊新聞の発行及び販売等を目的とする株式会社で、日刊紙「スポーツニッポン」を発行している。
2 本件記事の掲載
被告は、昭和六〇年九月一九日、「スポーツニッポン」紙上に、「甲野、花子さんに偽装工作を指示」などの見出しを付した記事(以下「本件記事」という。)を掲載した。
3 本件記事の体裁
本件記事は、以下の体裁のものである(<書証番号略>)。
まず、「甲野、花子さんに偽装工作を指示」という縦書きの大見出し及び「抜糸した日本の医師が証言」、「花子さんは『ハワイで落下物でケガをした』と言っていた」という横書きの小見出しが付されている。
小見出しの下に、原告と花子の写真が掲げられており、その下に、梅丘産婦人科医院の写真が掲げられ、その写真説明として、「花子さんが甲野の指示?でウソの説明をして抜糸してもらった梅丘産婦人科」と記載されている。
本文記事は、第一段落で、「花子さん=死亡当時二九歳=は抜糸手術をしてくれた都内の医師に殴打事件で受けた頭の傷は『ハワイで物が落ちてきて当たった』とウソの説明をしていた。警視庁特捜本部が一八日までに事情聴取した医師の証言から明らかになったもの。同本部は保険金殺人に失敗した甲野が、花子さんに指示して巧みに偽装工作をしていたものとみている。」とし、これに続けて、第二段落から第四段落にかけて、花子が、殴打事件の八日後の昭和五六年八月二一日に梅丘産婦人科医院の小山栄三郎医師(以下「小山医師」という。)を訪ねて、「ハワイで道を歩いていたら、建築現場から物が落ちてきて頭に当たり、救急車で運ばれた」と説明して、同医師に抜糸をしてもらったとし、第五段落では、花子が同医院から帰る際の状況等に若干触れた上、第六段落で、「同医師は花子さんの傷について『古いことなのでよく覚えていない。しかし、傷口はギザギザで、切創ではなく鈍器が当たったようだった』と説明している。」とし、最後に第七段落で、「殴打事件について甲野はこれまで『花子は仮縫いにきた中国系女性ともみ合って転んだ』と主張してきたが、この花子さんの説明はそれとも違う。同本部は、甲野が事件の発覚を防ぐために『本当のことを言うと(けがの)保険金が下りなくなる』などと、言葉巧みに花子さんに口止め、偽装工作をしていたのではないかとみて、甲野を厳しく追及していく。」と記載している。
二争点
1 本件記事が掲載された新聞を被告が発行した行為により、原告の名誉が毀損されたか否か。
その具体的な争点は、次のとおりである。
(一) 本件記事の与える印象
(原告の主張)
本件記事、特にその大見出しは、殴打事件に関して、あたかも原告が殺人に失敗したため花子に偽装工作を指示したとの印象を一般読者に強烈に与えるものである。
本件記事の大見出しが、原告が花子に偽装工作を指示したと断定していることは明らかである。
このため、本件記事が、捜査本部は原告が偽装工作を行ったとの見方をとっているということを報道したものであるとしても、本件記事を読んだ読者は、原告が偽装工作を指示したということを事実として理解するのである。
(被告の主張)
本件記事の大見出しは、「甲野、花子さんに偽装工作を指示」というもので、そのものからは、殴打事件とのかかわりは明白ではなく、また、「偽装工作」の内容自体も不明である。そのため、「偽装工作」の内容や、それが何のためにされたかを知るためには、読者は本件記事の本文を読まなければならず、そうすれば、「偽装工作」とは、原告が殴打事件の発覚を防ぐために花子に対してした口止め工作のことであり、捜査本部がこのような工作がされたとの見方をとっていることが理解される。
したがって、右大見出しは一見断定的であるが、本件記事全体は、原告が花子に偽装工作を指示したと断定した印象を一般読者に与えるものではない。
(被告補助参加人の主張)
本件記事は、第一段落において「同本部は…偽装工作していたものと見ている。」とし、また、最終段落においても「同本部は…偽装工作をしていたのではないかとみて、甲野を厳しく追及していく。」として、捜査の途中の段階にあることを明示しており、原告が花子に指示して偽装工作をした可能性があることを指摘したものにすぎない。また、それ以外の段落は、花子を診察した小山医師の話を客観的に報道したものにすぎず、原告が偽装工作を指示したか否かに関して一般読者に何らの印象も与えるものではない。
したがって、本件記事は、一般読者に原告の主張するような印象を与えるものではない。
(二) 原告の社会的評価
(原告の主張)
本件記事の報道により、原告の社会的評価は著しく低下した。その違法性は重大である。
原告は、殴打事件に係る刑事事件について、第一審で有罪判決を受けているが、それだけで、確定した有罪判決を受けていない原告を犯人と決めつけたり犯人視することは許されない。しかも、本件記事は、原告について右の第一審判決が出される二年も以前の、起訴もいまだされずに単に容疑を受けて取調べをされている時点で報道されたものであり、原告は、その当時から無実であることを終始主張していたのであるから、本件記事の違法性は明らかである。
また、本件記事が報道された当時は、原告が強制捜査を受けて取調べを受けていた段階にとどまること、原告が無実であることを終始主張していることが広く報道されていたことなどからして、原告が殴打事件の犯人であるという社会的評価を受けていたことはない。
(被告の主張)
原告は、殴打事件に係る刑事事件について、東京地方裁判所において昭和六二年八月七日に有罪判決の言渡しを受けた。原告は控訴しているが、本件訴訟において、同判決の覆る可能性があるような証拠が何ら明らかにされていない以上、本件訴訟においても原告が殴打事件の犯人であると扱うべきであるから、かかる立場にある原告は、仮に、本件記事によって原告の主張するような印象を一般読者に持たれたとしても、それを甘受すべきであり、名誉を毀損されたとはいえない。
(被告補助参加人の主張)
(1) 原告は、殴打事件に係る刑事事件について、第一審で有罪判決を受けているから、特段の事由がない限り、本件訴訟においても、原告が殴打事件の犯人であると扱うべきである。そして、本件記事にいう偽装工作は、殴打事件の一側面にすぎないから、本件記事は、原告の社会的評価を低下させるものではない。
(2) 原告は、本件記事が報道された当時、殴打事件の犯人であるという社会的評価を受けていたから、本件記事の報道により、原告の社会的評価は何ら低下していない。
すなわち、本件記事は、原告が殴打事件に関して殺人未遂容疑で逮捕されたことが各報道機関によって大々的に報道された昭和六〇年九月一二日(なお、逮捕は同月一一日深夜である。)の一週間後の新聞に掲載されたものであり、本件記事掲載時には、原告は殴打事件に関して強制捜査を受けており、かつ、原告が殴打事件の犯人であると指摘する新聞やテレビの報道が連日、大量に行われていたから、本件記事を読む一般読者は、既に、原告が殴打事件の犯人であるとの印象を強く受けていた。
本件記事は、殴打事件の被害者である花子に対して、原告が殴打事件について口止めをしていた可能性があることを指摘することにより、殴打事件の一側面ないしその状況証拠となり得べき周辺的な事実を指摘したものにすぎないから、本件記事の報道により、原告の社会的評価は何ら低下していない。
2 本件記事が掲載された新聞を被告が発行した行為は、公共の利害に関するもので、その目的は専ら公益を図るためであり、かつ、その摘示事実は、真実であるか(違法性阻却事由の有無)。もし、それが真実と認められないときは、被告には、それを真実と信じるについて相当の理由があるか(責任阻却事由の有無)。
その具体的な争点は、次のとおりである。
(一) 本件記事の公共性及び公益目的
(二) 本件記事の真実性
(被告の主張)
本件記事の摘示する原告の偽装工作は、原告が花子に対し花子の負傷原因について虚偽の説明をするように働きかけたというものであるが、花子は既に死亡しているので、右働きかけの事実は、様々な状況証拠のほかは、たまたま生前に花子から右事実を打ち明けられたとする乙野雪子(以下「雪子」という。)の殴打事件に係る刑事事件の公判における証言によることになる。花子が雪子に対し原告から何らの働きかけもないのに働きかけがあったと虚偽を述べることは、花子に虚偽を述べる理由がないので考え難い。そして、雪子の右証言は、その信用性を争う原告の右公判における供述と比較してみても、十分信用するに足りるものである。
(被告補助参加人の主張)
本件記事は、小山医師の発言内容及び警視庁特捜本部の見方を伝えたものであり、その内容はすべて真実である。仮に、本件記事が、原告が殴打事件の真相について口止め工作を指示したことを摘示したものであるとしても、前述のとおり原告が殴打事件に係る刑事事件の第一審において有罪判決を受けていることに加え、刑事事件における関係証拠等を総合すれば、本件記事が摘示した事実が真実であることが認められる。
(原告の主張)
真実性の立証対象たる本件記事の主要部分は、原告が花子に偽装工作を指示した事実があったか否かであるが、これについては、被告、被告補助参加人も認めるとおり、直接真実を聞き出すことは不可能である。被告、被告補助参加人の主張は、真偽が定かでない関係者らの証言の都合のよい部分を取り出して推測しているだけであり、真実性の証明にはなり得ない。
(三) 本件記事の真実性の誤信についての相当の理由
(被告の主張)
被告は、被告補助参加人の配信した記事(以下「本件配信記事」という。)を基に、その内容をほとんど変更することなく本件記事を作成し、掲載したものであるが、右配信記事が権威ある世界的な通信社である被告補助参加人の配信に係るものであることから、その内容が真実であると信じて右掲載をしたものである。したがって、このような場合には、被告には、本件記事が真実であると信じるについて相当の理由があるというべきである。
なぜなら、現代社会においては、多様なマスメディアが存在することに価値があり、それが維持されるためには、一般に信用性があると認められる通信社の配信する記事については、特段の事由のない限り、とりあえずこれを真実であると信じて紙面を作成することが、必要不可欠であるからである。
(被告補助参加人の主張)
(1) 被告は、補助参加人という信用性の高い通信社が配信した記事を、一見明白に不合理な部分がないため、その内容が真実であると信じたのであるから、被告には、本件記事が真実であると信じるについて相当の理由があるというべきである。
(2) 被告補助参加人は、以下のとおり綿密な取材をした上本件配信記事を作成し、配信したものであるから、被告補助参加人には、本件配信記事の内容を真実であると信じるについて相当の理由があり、したがって、これに基づき本件記事を掲載した被告にも、その内容を真実であると信じるについて相当の理由があるというべきである。
ア 被告補助参加人は、昭和六〇年八月ころには、原告に関連する事件についての取材体制を整えたが、その陣容は、社会部次長(デスク)一名、サブデスク二名、警視庁捜査一課担当記者三名及び遊軍記者らの合計一〇名程度であった(以下「取材班」という。)。
イ 取材班において警視庁捜査一課を担当していた記者が、小山医師に対し取材を行ったところ、同医師から、昭和五六年八月二一日に花子が長女と花子の妹雪子と共に同医師を訪れ、頭の傷を見てくれないかと頼み傷口を見せたこと、傷は縫合されてほぼ治っていたが、日本では使われない青い糸で縫合されていたため「どうしたのか」と尋ねると、「ハワイで路上を歩いていたら、建築現場で物が落ちてきて頭に当たり、救急車で運ばれた。」と説明したこと、同医師は花子の抜糸を行ったが、花子の答え方が自然であり、傷口もふさがっていたため、産婦人科が専門で抜糸が片手間の仕事であったこともあって、抜糸したことをカルテに記載せず、治療費も要らないと言ったところ、花子が「保険金が入ったから」と言って、三〇〇〇円ほどを置いて帰ったこと、花子の頭の傷は傷口がギザギザで切り傷ではなく、鈍器が当たったために形成されたもののようであったこと等の回答を得た。
ウ 取材班所属の各記者は、それぞれが個別取材を主として担当する警視庁の捜査官を割り当てられていた。そして、取材班のキャップ(デスク)が、当時の警視庁幹部に対し、警視庁特捜本部が小山医師に事情聴取した事実及び花子が同医師に対して「頭の傷はハワイで物が落ちてきて当たったために負った傷である」と述べた事実の真偽を確かめたところ、同幹部は、いずれも事実である旨認めた。
さらに、取材班のサブデスク及び捜査一課担当記者らも、それぞれ、自らが担当する警視庁捜査担当者から、右各事実が真実であること及び原告が花子に口止めをしたと特捜本部がみていることを確認した。
なお、原告に関連する刑事事件に関しては、原告が殴打事件で逮捕された後は、警視庁捜査一課長が報道機関の記者を集めて毎日二回程度の割合で記者会見を行っていたが、本件記事は記者会見の内容に基づくものではない。一般に、各報道機関とも、他社に先駆けて取材を始めている情報については、他社に知られたくないため、記者会見のような公式の場ではこれを捜査当局に確認せず、主として夜回りの過程で直接個々の捜査官に対して取材を行い確認するのが一般であり、捜査当局も、記者会見では抽象的かつ断片的事実しか開示しないのが常であるので、公式発表のみに基づいて作成される記事は少ないのが実情である。
エ なお、被告補助参加人は、原告に対して直接取材を行っていないが、本件記事は、警視庁特捜本部の見方及び小山医師の話を客観的に報道したものであり、原告に裏付け取材することが必要とされる性格のものではない。
(原告の主張)
本件記事が信頼性の高い通信社からの配信記事に基づくものであることのみをもって、真実性の誤信に相当の理由があるとはいうことができない。しかも、本件配信記事は、その当事者には一切裏付け取材もしていない不合理なものであることが一見して明らかであるから、被告は、当事者本人に裏付け取材を行うこともなく漫然とそれに基づく本件記事を報道すべきではなかった。
小山医師は、殴打事件に係る刑事事件の公判において自ら証人として述べているとおり、マスコミからの取材は受けていない。原告は、本件記事の摘示する事実に関して、特捜本部から追及を受けたことはない。また、原告及びその弁護人は、本件記事に関して一切取材を受けていない。
3 損害額(慰謝料額)はいくらか。
第三争点に対する判断
一争点1について
1 具体的な争点(一)について
一般に、新聞読者の記事についての印象は、記事の見出しのみならず、見出しと共に記載されている本文記事の内容にも大きく左右されることはいうまでもないから、新聞記事の摘示事実が個人の名誉を毀損するものであるか否かは、当該記事の見出しの文言、その大きさ・配置のみならず、本文記事の内容、写真等を総合して、当該新聞の一般読者が当該記事を読んだ際にその記事全体から通常受けるであろう印象によって判断するのが相当である。
これを本件記事についてみると、大見出しは、「甲野、花子さんに偽装工作を指示」という文言のものであって、確かに、それ自体からは原告が偽装工作を指示したと断定するものと読めなくもない。しかも、その体裁は、縦16.5センチメートル、横5.2センチメートルの囲みの中に白抜きの文字と黒色の文字を一行ずつ使って二行にわたり記載されているもので、七段にわたる本件記事全体の中でかなりの面積を占めるものであることが認められる(<書証番号略>)。
しかしながら、本件記事の大見出しは、単に「偽装工作を指示」とするのみで、それが何に関して、どのような内容の指示をしたものであるかなど、内容にあいまいな点があって、それ自体だけでは何についての記述であるかは必ずしも明らかであるとはいえないから、本件記事の一般読者は、その具体的な内容を知るべく、本文記事を読むことが当然予想される。そして、本文記事を見ると、まず、第一段落で、花子が抜糸をした小山医師に殴打事件で受けた頭の傷の原因について虚偽の説明をしていたことが同医師の供述から明らかになったという事実から、警視庁特捜本部が保険金殺人に失敗した原告が花子に指示して偽装工作をしていたものと見ているとして、同本部の見方を紹介した上で、第二段落以下で右の見方を裏付ける事実について、花子が同医師を訪ねて、「ハワイで道を歩いていたら、建築現場から物が落ちてきて頭に当たり、救急車で運ばれた」と説明して、同医師に抜糸をしてもらったこと、同医師が花子の傷について「古いことなのでよく覚えていない。しかし、傷口はギザギザで、切創ではなく鈍器が当たったようだった」と説明していたこと、花子の右説明は、殴打事件についての原告のこれまでの主張とも食い違うことなどの点を挙げた上、最終段落で、これらに基づき、同本部は、原告が花子に対し殴打事件の発覚を防ぐために口止め、偽装工作を指示していたのではないかとみて、原告を追及していくとして、同本部の今後の捜査見通しを述べていることが明らかである。
そうすると、本文記事を読んだ読者は、小山医師の供述に基づいて、捜査当局が、原告が花子に対して偽装工作を指示したのではないかとの見方をし、殴打事件について、そのような観点からも捜査を進めていくという事実を理解することができる。
また、本件記事には、「抜糸した日本の医師が証言」、「花子さんは『ハワイで落下物でケガをした』と言っていた」という横書きの小見出しが読者の眼につく場所に付されているから、本件記事の一般読者は、花子の診療を行った医師が抜糸の際に花子から「ハワイで落下物でケガをした」と聞いたという事実が、本件記事の内容の中で相当な重さを占めていることを一応理解することができる。さらに、その小見出しの付近には、小山医師が花子の抜糸を行った梅丘産婦人科医院の写真の説明として、「花子さんが甲野の指示?でウソの説明をして抜糸してもらった梅丘産婦人科」との、原告の花子に対する指示という事実が確定的なものではないことを明示した記載もある。
以上の諸点を総合すれば、本件記事の大見出しには、記事全体の内容に照らして必ずしも適切であるとはいい難い面はあるが、本件記事を全体としてみると、本件記事は、小山医師の供述に基づいて、捜査当局が、原告が花子に対して偽装工作を指示したのではないかとの見方をしており、かつ、そのような偽装工作が行われた疑いがある旨の印象を一般読者に抱かせるにとどまるものであって、それ以上に、原告が花子に対して偽装工作を指示した事実が存在することを断定している旨の印象を一般読者に与えるものとまでは到底いうことができない。
2 具体的な争点(二)について
不法行為法上、法的保護の対象となるべき名誉とは、人がその人格的価値について社会から受ける客観的な評価をいうものと解すべきである。
そして、右評価は、当該不法行為がされた時点のものであることはいうまでもないから、本件の場合、本件記事の報道がされた昭和六〇年九月一九日の時点を基準にして、右報道により原告の社会的評価が低下したか否かを判断すべきであり、その後になって、原告が、殴打事件について刑事訴追を受けた結果、昭和六二年八月七日に第一審裁判所である東京地方裁判所において有罪判決の言渡しを受けたことが認められる(<書証番号略>)からといって、右事実は、本件記事の報道によって原告の社会的評価が低下したか否かの判断には関係しないというべきである。なお、名誉とは人が社会から受ける客観的評価をいうのであるから、原告が真に殴打事件の犯人であるか否かそれ自体は、社会的評価の低下を判断するについて問題とはならない。
ところで、本件記事が報道されたのは昭和六〇年九月一九日であるところ、それに先立って、原告は、同月一二日に殴打事件について殺人未遂容疑で逮捕され(争いがない事実)、その当日以降右逮捕の事実が各報道機関によって大々的に報道されたことが認められる(<書証番号略>)から、本件記事の報道当時、原告に関しては殴打事件の犯人であると疑うに足りる相当な理由がある(刑事訴訟法一九九条一、二項参照)とする一般的な社会的評価が存したことは明らかである。したがって、原告について殴打事件の容疑事実それ自体を摘示することは、本件記事の報道当時においては、何ら原告の社会的評価の低下をもたらすものではないといわざるを得ない。
しかしながら、かかる殴打事件の容疑事実に関連する種々の個別的な周辺事実を摘示することは、その内容いかんによっては原告の社会的評価に新たな低下をもたらし得るものと解すべきである。なぜなら、このように解さない場合、人がひとたび逮捕された後は、容疑事実に関連する周辺事実が、本来、それ自体として人の社会的評価を低下させるものであっても、容疑事実に関連する周辺事実ということで、それが何ら真偽の確認がされないままに摘示されても、不法行為法上その者の名誉が保護される余地が全くなくなるという不都合な結果を招くことになるからである。
これを本件についてみると、殴打事件に関連して原告が花子に対して偽装工作を指示した疑いがある旨の印象を一般読者に抱かせる本件記事は、疑いがあるというにとどまるものであっても偽装工作の指示という一般に社会的評価の低下をもたらす内容を摘示するものであり、かつ、それは、殴打事件そのものの事実には包含されないものであるから、新たに原告の社会的評価を低下させるものとして、原告の名誉を毀損するものと認定するのが相当である。
二争点2について
1 具体的な争点(一)について
本件記事の内容は、原告についての保険金詐取を目的とする殺人未遂事件という極めて重大な犯罪の容疑(保険金詐取を目的とする点については、<書証番号略>及び弁論の全趣旨)に関して、原告が偽装工作を指示したのではないかとの捜査当局の見方及びそのような偽装工作が行われた疑いを報道したものであるから、右報道は、公共の利害に関する事項にかかり、専ら公益を図る目的に出たものと認められ、右認定を妨げる事情は認められない。
2 具体的な争点(二)について
(一) まず、本件記事について真実性の証明の対象となる事実について検討する。
本件記事において主要な内容となっている事実は、前記一で認定判断したとおり、①花子が抜糸をした小山医師に殴打事件で受けた頭の傷の原因について虚偽の説明をしていたことが同医師の供述から明らかになったという事実、②捜査当局が、右供述に基づいて、原告が花子に対して偽装工作を指示したのではないかとの見方をし、そのような観点からも殴打事件の捜査をしていくという捜査状況についての事実、及び③原告には、捜査当局の見方のように花子に対して偽装工作を指示した疑いがあるという事実である。
右のうち、①及び②の事実については、それがそのまま真実性の証明の対象となることは明らかである。問題は③の事実であるが、前示のとおり、本件記事は、一般読者に対して、原告が花子に対して偽装工作を指示した疑いがある旨の印象を抱かせるにとどまり、そのような偽装工作の指示の事実を断定している旨の印象を与えるものではない。そして、原告については、本件記事の報道に先立ち、その一週間前に殴打事件の容疑で逮捕されており、右逮捕手続を通じて、右報道の時点においては、既に逮捕令状を発付した裁判官によって、殴打事件について罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があると客観的に判断されていたことは明らかであり、本件記事の報道は、原告の殴打事件についての右の客観的な容疑の存在を前提として、殴打事件に密接に関連する事件後の偽装工作の有無という状況証拠ともなり得る重要な事実について、殴打事件についての捜査報道の一環として行われたものということができる。犯罪捜査報道の中でも、とりわけ強制捜査に係る事件の報道が社会的に重要性を有し、その報道の迅速性が特に要請されるものであることにかんがみるならば、このように既に客観的な容疑のある逮捕被疑事実に密接に関連し状況証拠ともなり得る事実について、これを断定するのではなく、単にその疑いがあるという限度で報道したにとどまる場合には、名誉毀損の違法性阻却との関係では、右の事実の存在そのものを証明しなくとも、右報道の時点を基準にして、右事実についての合理的な疑いの存在を証明すれば、真実性の証明があったものと解するのが相当である。
したがって、本件においても、被告は、前記③の事実については、本件記事の報道の時点を基準にして、原告には捜査当局の見方のように花子に対して偽装工作を指示した合理的な疑いがあったことを証明すれば、真実性の証明があったものというべきである。
右の見地に立って、以下、判断する。
(二) 証拠(<書証番号略>、野中憲証人)によれば、本件記事掲載に至るまでの経緯として、次の各事実が認められる。
(1) 前認定のとおり、原告は、殴打事件の容疑で、昭和六〇年九月一二日に逮捕されたが、被告補助参加人は、それに先立つ昭和五九年一月ころから、いわゆる「ロス疑惑」事件についての取材の一環として、殴打事件について関連取材を開始していた。取材の中心となった記者は、社会部遊軍(日常は本社に待機していて大事件、大事故が発生した際にその取材に当たるほか、それぞれの専門分野の取材と企画連載記事の執筆をする者である。)、警視庁捜査一課担当者及びロサンゼルス支局駐在者であり、取材対象は、花子の関係者、医師、捜査当局などであった。昭和六〇年九月一二日の逮捕以前の取材の具体的な内容は、以下のとおりであった。
ア 乙野雪子(花子の双子の妹)に対する取材
被告補助参加人のシンガポール支局長が、昭和五九年一月三一日、シンガポール所在のホテルにおいて、面会して取材した。その際雪子の話した内容は、以下のとおりである。
殴打事件について、花子自身が雪子や両親に対して語った内容は、一回目と二回目で異なっていた。花子は、最初、「ルームサービスを頼んだら、ルームサービスのコーヒーを持ってきたメイドが変装して襲ってきた。」と述べていたが、その後、よく聞くと、「チャイナドレスの仮縫いに来たといってホテルの部屋に入ってきた中国人女性にミシンの部品のようなもので頭を殴られたので、この女の人を組み伏せ、英語ができないのでこの女にフロントに電話をさせ、コーヒーハウスにいる原告を呼んだ。原告は、頭から血が流れているのでおろおろしていた。そのすきに女は消えた。原告に、何で女を行かせてしまったのかと聞いた。ルームサービスのメイドにやられたと嘘を言ったのは、原告に言い含められたからである。」と述べた。
イ 藤原忠雄医師(花子の傷を診察し縫合した医師。以下「藤原医師」という。)に対する取材
被告補助参加人のロサンゼルス支局長及び備前記者が、昭和六〇年一月ころ、ロサンゼルス市内のホテルにおいて、面会して取材した。その際藤原医師の話した内容は、以下のとおりである。
昭和五六年八月一三日午後七時から七時半に、フロントから電話があり、午後九時すぎ、ホテルの依頼で花子の部屋に行き診察した。左後頭部に水平に二センチメートルの裂傷があり、深さは二センチメートルで骨に達していた。救急隊による応急手当の跡があった。花子は服を着替えたらしく、服に血の付着はなかった。花子は一言も話さず、一緒にいたひげを生やした男が、花子はバスルームで倒れて打ったというので、バスルームを調べたが、何の痕跡もなかった。おかしいと思い、花子の全身を調べたが、肘、尻、足等に倒れたときにできやすい傷がなかった。そのひげの男は、丁野太郎である。カルテには、患者は倒れて頭をぶつけ脳震とうを起こし傷ができた、と記載した。レントゲンを撮り、傷を二、三針縫い、薬の処方箋を書いた。所見は、事故による裂傷とした。所見について、倒れたときにできやすい他の傷がないなどおかしいと思ったが、もみ合ったときにできるような傷でもなかった。事故によるものでも殴られたものでも矛盾はなく、患者側がそういうので事故と書かざるを得なかった。カルテはロサンゼルス市警に提出した。花子の両親が事故後に訪ねてきて、カルテを書き直して欲しいと頼んだが、不可能と断った。
ウ 小山医師に対する取材
被告補助参加人の備前記者が、昭和六〇年六月七日及び同年七月一一日、電話で取材した。その際小山医師が話した内容は、以下のとおりである。
花子は、昭和五六年八月二一日、雪子と共に訪ねてきて抜糸していった。傷は、頭の真ん中に、頭頂部から後頭部に縦に約六センチメートルであり、六、七針縫ってあった。傷口から凶器を推定することは不可能であったが、切創ではなく、鈍器のようなものによる傷だと思った。日本の糸は白であるが糸が紺色だったので、どこでやったのかと質問すると、花子は、ハワイで路上を歩いていたら建築現場の上から物が落ちてきて頭に当たり、救急車で運ばれたと言った。警視庁が昭和六〇年五月になってから三回来て領収書を持って行き、同年六月六日に返却に来た(昭和六〇年六月七日の取材内容)。
花子は出産のときから来院してくれている顔なじみであるし、無料で治療してあげたものであったし、傷も抜糸すれば治ってしまう程度のものだったので、カルテは書かなかった(昭和六〇年七月一一日の取材内容)。
なお、<書証番号略>によれば、小山医師は、殴打事件に係る刑事事件の公判において、証人として、花子に関する右の事実関係についてマスコミの取材には一切応じていない旨供述しているが、右供述は、同医師に個別取材したのでなければそれほど具体的には記載し得ないと認められる<書証番号略>の記載内容及び証人野中憲の証言並びに同医師は右公判において原告を前にしてマスコミ取材に応じたことを率直には供述しにくい立場にあったことに照らして、信用することができない。
エ 丁野太郎(殴打事件当時原告と親しかった者。以下「丁野」という。)に対する取材
被告補助参加人の薗部記者が、昭和五九年二月一〇日、大阪において面会して取材した。その際丁野が話した内容は、以下のとおりである。
ある日、ホテルのコーヒーショップで、船会社の人二人と丁野と原告が話をしていたところ、ホテル内の放送があって原告を呼び出した。五分か一〇分くらい原告が中座した後戻ってくると、丁野に一緒に来てくれというので、部屋に駆けつけたら、花子がベッドに座っていた。血痕が付いていたので、「どうしたんですか。」と言うと、「トイレで転んだ。」とのことだった。実際、トイレとバスタブの間に血が二、三滴落ちていた。後日、この滞在中に、原告が「ある人ともみ合っているうちに転んだ。」と言うのを聞いて、「えっ、人がいたんですか。」とびっくりした。昭和五六年一一月に花子が襲撃された事件直後、花子の両親は病室で原告と言い合いになった。両親は、「女のことで色々あったようだが、あの花子を殴った中国女とは関係ないのか。」というようなことを言い、原告は、「あの女とは関係ない。丁野も知っている人だ。」と突然丁野の方を向いた。この時初めて、殴打事件の現場に中国系の女性がいたことを知った。
オ 捜査当局に対する取材
以上のような関連取材と並行して、被告補助参加人の警視庁捜査一課担当の三名の記者が、警視庁捜査員に対する取材を昭和六〇年七月ころから本格的に開始した。その中の捜査員に対するいわゆる夜回り取材で、備前記者は、警視庁捜査一課の責任ある担当者から、当時殴打事件について原告と共犯ではないかと目されていた丙野夏子が、既に警視庁に対して提出していた上申書に、「交際していた原告に旅行に誘われ、ホテルニューオータニで花子を殺せと凶器を渡された。迫力に負けて部屋に行ったものの、花子に対して『あなたは殺されるよ』と教えるつもりだった。ところが、花子に『あんたは誰』と怒鳴られ、夢中になって原告の『このままじゃ、生きて日本に帰さない』という言葉を思い出し、訳が分からないうちに凶器を振り回したら花子に当たってしまった。」と書いていることを聞き出し、さらに、右担当者は、備前記者に対し、「原告が事件後バスルームに血痕を塗りたくって偽装工作していた。後から現場に来た丁野は、原告が話したままを藤原医師に話した。」と述べた。
被告補助参加人は、捜査当局としては、小山医師の供述などから、原告が花子に対し本当のことを言うと保険金が下りなくなるなどと口止め工作をした可能性が濃厚であるとみていることも、取材により確認した。
カ 花子を被保険者とする保険についての取材
昭和五九年二月四日及び同月六日に、原告の代理人弁護士(当時)や保険会社に対して、花子を被保険者とする保険について以下の内容の取材がされた。
昭和五四年一二月四日、花子を被保険者、原告を受取人として、災害死亡時倍額特約付き生命保険の加入申込みが第一生命保険相互会社に対してされ、昭和五七年三月一一日、原告が、死亡保険金一五〇〇万円の倍額三〇〇〇万円を受領している。
昭和五六年二月一日、花子を被保険者、原告を受取人として、災害死亡時倍額特約付き生命保険の加入申込みが千代田生命保険相互会社に対してされ、昭和五七年三月二四日、原告が、死亡保険金二五〇〇万円の倍額五〇〇〇万円を受領している。
昭和五六年八月、花子を被保険者、花子の法定相続人を受取人として、海外旅行傷害保険の加入申込みがアメリカンホーム保険会社に対してされ、昭和五七年六月、原告が、死亡保険金七五〇〇万円を受領している。
キ 被告補助参加人の遊軍記者は、これまでの取材内容を確認すべく再三原告に対しても取材の申込みをしたが、応じてもらえなかった。
(2) 原告が昭和六〇年九月一二日に殴打事件の容疑で逮捕された後、警視庁は、特別捜査本部を設置して本格的な捜査に入った。
一方、当時の被告補助参加人の取材体制は、遊軍デスクが山下嘉久及び宮島光男、遊軍記者が江畑忠彦、薗部英一ら約一〇名、警視庁キャップが野中憲、警視庁サブキャップが石井克彦、警視庁捜査一課担当が備前猛美、上松憲一ら三名であった。
同月一三日には、朝日新聞夕刊が、「日米医師証言に違い」と題して、社会面トップで、花子の頭部の受傷原因について、藤原医師と小山医師の証言内容が大きく違っていることを報じた。
(3) 被告補助参加人は、朝日新聞の右記事を受けて、小山医師に電話で再取材し、捜査当局にも夜回りなどで再取材した結果、前記(1)の各取材結果の確認が得られたので、これらを基に、前記備前記者が本件記事本文とほぼ同内容の記事を執筆した上、昭和六〇年九月一八日午前八時五分に、右記事に「甲野、花子さんに偽装工作を指示か」との見出しを付けた本件配信記事を関係各報道機関に配信した。
そして、被告は、本件配信記事に基づき、本件記事を掲載した。
(三) 以上認定した事実に基づいて検討すると、本件記事について真実性の証明の対象となる前記(一)の①ないし③の事実のうち、まず、①の花子が抜糸をした小山医師に殴打事件で受けた頭の傷の原因について虚偽の説明をしていたことが同医師の供述から明らかになったという事実については、前記(二)(1)のアないしウの取材結果から、花子が頭の負傷原因について小山医師に虚偽の説明をしたことは明らかであるから、真実であると認められる(なお、右取材結果の正しさは、<書証番号略>によっても裏付けられる。)。
次に、②の捜査当局が小山医師の供述に基づいて原告が花子に対して偽装工作を指示したのではないかとの見方をしていたという事実及び③の原告には捜査当局の見方のように花子に対して偽装工作を指示した疑いがあるという事実については、前記(二)(1)のアないしエの取材結果によれば、花子の頭の負傷原因について花子が雪子及び小山医師に行った説明及び丁野が藤原医師に行ったのを花子が黙認した説明は、ルームサービスのメイドが襲ってきたというもの、チャイナドレスの仮縫いに来たという中国人女性にミシンの部品のようなもので頭を殴られたというもの、バスルームで倒れて打ったというもの、ハワイで道を歩いていたら建築現場から物が落ちてきて頭に当たったというものと変転を重ねていることになる。そして、花子自身が自発的にこのように説明を変転させなければならない合理的な理由は、にわかに見いだし難いところである。
これに加えて、前記(二)(1)のア、オ、カの取材結果によれば、雪子が、花子から、雪子に対する右のような説明の変転は原告に言い含められたからであると聞いた旨供述していること、捜査当局の担当責任者は、小山医師の供述などから、原告が殴打事件について偽装工作をしたと見ている旨述べ、捜査当局でも、原告が花子に対し口止め工作をした可能性が高いと見ていたこと、原告を受取人としてかなり高額な保険金が殴打事件に近接した時期に花子についてかけられていたこと等の事実が、本件記事の報道に至るまでに明らかになっていたということができる。
そこで、これらの事実を総合した上、本件記事の報道前に原告は既に殴打事件の容疑で逮捕されており、殴打事件そのものについては原告について罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があることが客観的に明らかであったことを踏まえて判断すると、小山医師の供述に基づいて、捜査当局が、原告が花子に対して偽装工作を指示したのではないかとの見方をしていたこと及びそのような偽装工作の指示が行われた疑いが本件記事の報道当時に存在したことを優に認定することができ、かつ、右のような疑いには合理的な理由が存したものというべきである。
そうすると、本件記事の主要な内容は真実であると認められるから、本件記事の報道行為は、結局、違法性を欠くことになる。
第四結論
よって、原告の請求は、その余の争点について判断するまでもなく理由がないので、これを棄却することとし、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官横山匡輝 裁判官江口とし子 裁判官沖中康人)