東京地方裁判所 平成3年(ワ)17660号 判決 1992年12月16日
東京都文京区本郷三丁目一八番一五号
原告
アトム株式会社
右代表者代表取締役
松原一雄
右訴訟代理人弁護士
安江邦治
右輔佐人弁理士
松永宣行
アメリカ合衆国
ペンシルバニア州ハットボロ、ジャクソンビル・ロード三三〇
被告
エアー・シールズ・インコーポレイテッド
右代表者
ティー・エイチ・ティブル
右訴訟代理人弁護士
田中誠一
同
飯田秀郷
右訴訟副代理人弁護士
田中修司
同
赤堀文信
主文
一 被告は、特許第一三三五〇〇四号特許権に基づいて、原告が別紙目録記載の保育器を製造販売するについて差止請求権を有しないことを確認する。
二 訴訟費用は被告の負担とする。
事実及び理由
第一 請求
主文同旨。
第二 事案の概要
一 本件は、原告が、原告において別紙目録記載の保育器(原告製品)を製造販売することが、被告の有する特許第一三三五〇〇四号特許権(本件特許権)を侵害するものでないとして、差止請求権の不存在の確認を求めた事案である。
二 争いのない事実
1 被告が本件特許権を有していること。
2 原告が別紙目録記載の製品(原告製品)を業として製造販売していること。
3 本件発明の特許出願の願書に添付された明細書(本件明細書)の特許請求の範囲は、本判決添付の特許公報(本件公報)の特許請求の範囲の項に記載されたとおりであり、これを要件毎に分けると、次のとおりであること。
(一) 本件明細書の特許請求の範囲第一項(一項発明)について
(1) 新生児支持体と、開閉可能な出入口ドアを設けた前記支持体を囲繞するフードと、空気の温度、湿度などを調節する空気調節装置と、該空気調節装置によって調節された空気を常時前記フード内に循環させる空気循環装置とを有する保育器であること。
(2) 前記ドアの開口部またはその近傍に少なくとも開口部の大部分にわたるカーテン状の空気流を形成するための空気流噴き出し手段を有すること。
(3) 前記ドアの開閉に応答して該空気流噴き出し手段を自動的に制御する空気流制御手段を備えていること。
(4) 前記ドアの開放時にのみ前記調節された空気の一部又は全部を前記空気流噴き出し手段によって前記カーテン状の空気流として噴き出すように構成されていること。
(二) 本件明細書の特許請求の範囲第一項(二項発明)について
(1)' 前記第一項の要件(1)と同じ。
(2)' 同要件(2)と同じ。
(3)' 同要件(3)と同じ。
(4)' 前記ドアの開放時には前記調節された空気の一部又は全部を前記空気流噴き出し手段によって前記カーテン状の空気流として噴き出し、前記ドアの閉鎖時には開放時に噴き出す前記カーテン状の空気流の流量よりも少なく前記調節された空気を前記空気流噴き出し手段によって噴き出すこと。
4 原告製品が、本件発明の要件(1)を満たしていること。
三 争点
本件における争点は、原告製品が本件発明の技術的範囲に属するか否かであるが、具体的には、前記の本件発明の要件(2)、(3)、(4)及び(4)'に関してであり、これらの点についての原告及び被告の主張は、次のとおりである。
1 要件(2)に関して。
(一) 被告の主張
原告製品は、二個の溝条及び一個の四角形状の中床開口48(原告製品に関する番号は、別紙目録記載のものを指す。)を有する中床46と吹出上板の立上り部50を有する吹出上板44との間に空気室42を有し、空気室42から上方に連通するように吹出上板の立上り部50に沿って長手方向に設けられた空気室の開口54を有し、空気循環装置によって、空気室の開口54から噴出された空気が、吹出上板の立上り部50により誘導されて処置窓26の開口部又はその近傍に少なくとも前記処置窓26の開口部の大部分にわたるカーテン状の空気流として形成されるように構成されているから、この要件を満たしている。
原告は、原告製品には「空気流噴き出し手段」が存在しない旨主張するが、原告製品のカタログ(乙第六号証)には、「処置窓の開放時には、開口部は温められた空気の吹き出しにより、エアーカーテンを形成しますので、児の体温低下を抑えます。」「『エアーカーテン』処置窓の開放時にも、吹出口からは常に温められた空気が吹き出しており、開口部にエアーカーテンが形成されるので、器内温度の低下を2℃以内(外気温度25℃に於いて)に保ち、処置時や術中に児の体温が低下するのを抑えます。」と記載されていることから明白なとおり、調節された空気の全部又は一部を空気流噴き出し手段によってカーテン状の空気流として噴き出しているのである。
(二) 原告の主張
本件発明の要件(2)にいう「空気流噴き出し手段」は、「カーテン状の空気流」(本件公報第2図A及びBの空気流30。なお、本件発明に関する番号は、本件公報記載のものを指す。)を「前記ドアの開口部またはその近傍に少なくとも開口部の大部分にわた」って噴き出す手段であり、デッキ24の立上り部分の内側に沿って、新生児を包み込むように噴き出すような構成となっているものであるから、同手段の構成要素は、デッキ24の立上り部分の内側に存在する開口18と右立上り部の内側壁ということになる。
他方、原告製品においては、別紙目録の説明書三項2及び3並びに第6図及び第7図から明らかなとおり、本件発明のような「デッキ24の立上り部分の内側に沿って、新生児を包み込むような構成」は存在せず、吹出上板44の立上り部50の外側に存在する開口54から噴き出した空気流は、立上り部50の外壁側に沿って、外方に向かって放散されるようになっているから、原告製品には、「空気流噴き出し手段」は存在しない。
なお、被告は、乙第六号証に言及するが、同号証には被告が言及していない「アトム独自の空気循環システムは、処置窓の開放時にだけ温かい空気が噴き出す方式と異なり、頭部側の吹出口と同様に処置窓側の吹出口からも常に温かい空気が吹き出す」との記載があり、この記載からすれば、原告製品が、開口54から常時空気流を噴き出し、処置窓の開放時にのみ空気流を噴き出すものでないことは、明らかである。
2 要件(3)について
(一) 被告の主張
原告製品は、
<1> 処置窓26は、外板28と該外板28から間隔をおいて配置された内板からなり、処置窓26の上部及び下部にそれぞれ開口を有する二重壁構造を有し、処置窓26の下部に設けられた開口は、空気室42の開口54及び吹出上板の立上り部50の長手方向における長さとほぼ等しい長さを有するように構成されている。
<2> 処置窓26の閉鎖時、処置窓の内板30は、その下端部が吹出上板44の立上り部50の上端部に近接した位置を占め、処置窓26の下部に設けられた開口は、空気室の開口54及び吹出上板の立上り部50の上方において吹出上板の立上り部50に近接し、処置窓の外板28と吹出上板の立上り部50の上端とで立上り部50の先端の処置窓外板寄り空間が形成され、空気室の開口54から噴き出した空気流のほとんどは、右空間から処置窓26の二重壁の内部に誘導されるように構成されている。
<3> 処置窓26が開いた状態においては、空気室の開口54から調節された空気が噴き出すように構成されている。
から、処置窓26の開閉に応答して、空気室の開口54及び吹出上板の立上り部50とによって構成されている空気流噴き出し手段を自動的に制御する手段を有しており、要件(3)を満たしている。
すなわち、原告製品は、処置窓26自体が二重壁構造を有しており、処置窓26が閉じた状態では、空気室の開口54から噴き出した空気流のほとんどが、処置窓26の二重壁のすきま内に誘導され、処置窓26が開いた状態では、処置窓26の下部に設けられた開口が空気室の開口54の上方から移動するため、空気室の開口54から噴き出した空気流は、吹出上板の立上り部50により誘導されて斜め上方に噴出され、更に上方に向かってカーテン状の空気流として流れる。このような構成であるから、前記<1>ないし<3>の構成は、空気室の開口54から噴き出した空気を制御しており、これをもって処置窓26の開閉に応答して空気室の開口54及び噴出上板の立上り部50によって構成される空気流噴き出し手段を自動的に制御する空気流制御手段であるというべきである。
原告は、「空気流制御手段」によって空気流噴き出し手段を制御するためには、前提として、空気流噴き出し手段が制御しうるもの、すなわち、動かしうるものであるか、または、動かしうるものを含むものでなければならない、と主張する。しかしながら、「制御」とは、ある目的に適合するように、対象となっているものに所要の操作を加えることをいい、また、「機械や設備が目的にかなう動作をするように調節すること」をいうから、空気流噴き出し手段に対し、本件発明の要件(4)及び(4)'に記載の作用効果を目的として、これに適合するように所要の操作が加われば、「制御」であるというべきである。原告主張のような、可変部分を有することが必須の要件ではない。そして、本件発明において、空気流噴き出し手段を制御してドアの開放時にのみカーテン状の空気流として噴出するように構成する目的は、ドアの閉鎖時に、調節された空気が制御することなく噴き出した場合、比較的高温の空気が新生児の近傍に直接当たり、悪影響を及ぼす恐れがあるため、ドアの閉鎖時に高温の空気が胎児の近傍に直接噴き出さないようにするためであり、かかる目的を達成するために、原告製品は、空気流噴き出し手段からの空気流を新生児の近傍に直接噴き出さないように別の流路を設ける解決方法を採用している。すなわち、原告製品は、処置窓26自体が二重壁構造を有しており、処置窓26を閉じると、空気流噴き出し部分に処置窓の二重壁の隙間(処置窓26の下部に設けられた開口)が近接し、いわば処置窓の内板30と外板28とで、空気流噴き出し手段を上部から覆い、空気流が新生児の方向に流れないようにしているのであり、これは空気流噴き出し手段に所要の操作を加えて前記の作用効果を実現しているのであるから、空気流噴き出し手段を制御している以外のなにものでもない。
また、前記<1>ないし<3>の構成は、処置窓に付加された付属装置ともいうべきものであって、一般の保育器にあっては、このような構成を有する付属装置はないから、原告製品のこのような特殊な付属装置自体が、空気流制御手段であるともいえるのである。
(二) 原告の主張
原告製品は、ドアの開閉に対応して「該空気流噴き出し手段を自動的に制御する空気流制御手段」を備えておらず、ドアの開閉にかかわらず、空気流は常に一定量がコンスタントに流れるようになっているから、本要件を充足しない。
すなわち、立上り部50と開口54によって構成されるものが本件発明にいう「空気流噴き出し手段」に該当しないことは、前記のとおりであり、原告製品に右「空気流噴き出し手段」がない以上、これを制御する「空気流制御手段」がないことは明らかである。また、本件明細書に記載された実施例から明らかなとおり、複数の部材の組み合わせによって、「空気流噴き出し手段」を、ドアの開閉に連動してドア閉鎖時には閉鎖し、ドアの開放時には、開放するような手段として設けられている以上、可変のものと解釈するのが自然であるから、「空気流制御手段」によって空気流噴き出し手段を制御するためには、前提として、空気流噴き出し手段が制御しうるもの、すなわち、動かしうるものであるか、または、動かしうるものを含むものでなければならない。原告製品においては、関連するものの中に、動きうるものは処置窓26の他にはないから、空気流制御手段に相当する手段は存在しないというべきである。更に、「空気流制御手段」が空気流噴き出し手段をドアの開閉に応答して自動的に制御するためには、前提として、ドアの動きがあったとき、ドアの動きとは別の、しかし、ドアの動きを動機とする「空気流制御手段」を動かすための動きを生じるものがなければならないが、原告製品においては、ドアの動きを動機として動いて、空気流噴き出し手段を制御するものは何もないのである。
3 要件(4)に関して。
(一) 被告の主張
原告製品は、処置窓26が開いた状態においては、空気室の開口54から噴き出した空気流は右処置窓26の開口部を上方に向かって流れるように構成されているから、カーテン状の空気流として噴出しているといえるのであり、このことは、原告製品のカタログに、処置窓の開放時にエアーカーテンが形成されることが記載されていることからも明らかである。
また、原告製品は、右処置窓26が閉じた状態においては、『前記調節された空気の一部または全部を前記空気流噴き出し手段によって前記カーテン状の空気流として噴き出』していない。すなわち、『カーテン状の空気流』とは、いわゆるエアーカーテンを指称するものであり、エアーカーテンとは、圧縮空気を上から下に噴き出させ、下方に吸込口を配置して、空気の流れの幕を作って、外側と内側とを遮断することであるから、それは遮蔽のための気流である必要がある。しかしながら、原告製品の場合、処置窓26が閉じた状態においては、処置窓26の二重壁である内板30と外板28との間の空間にそって空気流が噴き出しているのであって、右空間は右両内外板によってすでに遮断されているのであるから、かかる空気流は、遮蔽のための空気流とはいえない。
(二) 被告の主張
原告製品においては、立上り部50に沿う開口54は、別紙目録第3図、第6図及び第7図から明らかなように、長くて狭い開口であり、しかも、いつも空気流を噴き出す開口であるから、開口54から空気流が噴き出している間、該開口は、長くて狭い開口を構成上の原因とし、この開口を介して空気が上方に流動することによって生ずる「カーテン状の空気流」を形成する。このことは、処置窓26の開閉状態とは何ら関わりがない。すなわち、右処置窓が閉じた状態においては、右「カーテン状の空気流」は、処置窓26の外板28と内板30との間を上昇する空気流として両板間を経過するが、その空気流がなお「カーテン状の空気流」であることにはなんら相違はないのである。このように、原告製品においては、空気流は、ドアの開閉にかかわりなく、常時、一定量のものがコンスタントに流れるようになっているから、要件(4)を満たさない。
4 要件(4)'について。
(一) 被告の主張
乙第八及び第九号証に記載された実験によれば、原告製品の場合、空気室の開口54から噴き出した空気流は、処置窓26が閉じた状態の場合の方が処置窓26が開いた状態の場合に比べて少量であるといえるから、要件(4)'を満たしている。
(二) 原告の主張
被告の主張する乙第八及び第九号証記載の実験は、原告製品の開口54から噴き出す、出入口ドア開放時の空気流量と出入口ドア閉鎖時の空気流量を比較したものではなく、開口54から離れた、開口とは無関係の場所での空気流を比較したものであるから、この実験によっては、開口54から離れた、開口とは無関係の場所でのことは別として、空気流を噴き出す開口54における「ドアが開いた状態での気流の流量は、ドアが閉じている場合の流量に比べて確実に増加していることを裏付けることができた」ということはできない。
第三 争点に対する判断
一 原告製品が、本件発明の「前記ドアの開閉に応答して該空気流噴き出し手段を自動的に制御する空気流制御手段を備えていること」との要件(3)を充足するか否かについて判断する。
1 まず「空気流噴き出し手段」について検討することとする。
「空気流噴き出し手段」は、本件明細書の特許請求の範囲においては、
「前記ドアの開口部またはその近傍に少なくとも開口部の大部分にわたるカーテン状の空気流を形成するための空気流噴き出し手段」と記載されており、そこでは、空気流噴き出し手段の果たす機能が明らかにされているのみで、その具体的構成は明らかにされていない。そこで、本件明細書の発明の詳細な説明をみると、実施例における「第3開口18よりカーテン状に噴出する調節された空気流により、保育器内は直接外気と接触することがなく」(本件公報6欄39ないし41行)と記載されているから、実施例における「開口18」が右「空気流噴き出し手段」に当たると考えることができ、その形状については、「この開口14、16および18は長くて狭い開口で、新生児支持体12の三つの側面に沿って延びており」(3欄40ないし42行)と記載されているから、本件発明にいう「空気流噴き出し手段」は、ドアの開口部又はその近傍にカーテン状の空気流を形成することができるような、長くて狭い開口部のようなものを指しているものと認められる。
そして、原告製品を示すものとして当事者間に争いのない別紙目録によると、「空気の入口は、中床46に設けられた中床開口48からなり、空気の出口は、吹出上板44の斜め上方に折り曲げられた立上り部50と中床46の側部52とによって規定された狭くて長い開口54からなる。」(原告製品説明書二項4)、「調和槽56を経た空気が、中床46に形成された吹出口58および空気室42の開口54から常時噴き出している。」(同三項1)、「処置窓の開放時、開口54から噴き出した空気流は、立上り部50に沿ってフード10の開口部16の全域にわたる空気流として上昇し」(同三項3)というのであるから、原告製品においては、形成される空気流がカーテン状のものであるかどうかはともかく、「開口54」が本件発明の「空気流噴き出し手段」に該当するものというべきである。
2 次に、「空気流制御手段」について検討する。
本件明細書の特許請求の範囲には、この要件(3)又は(3)'の後に、「前記ドアの開放時にのみ前記調節された空気の一部又は全部を前記空気流噴き出し手段によって前記カーテン状の空気流として噴き出すように構成した」(一項発明)、又は「前記ドアの開放時には前記調節された空気の一部又は全部を前記空気流噴き出し手段によって前記カーテン状の空気流として噴き出し、前記ドアの閉鎖時には開放時に噴き出す前記カーテン状の空気流の流量よりも少なく前記調節された空気を前記空気流噴き出し手段によって噴き出すように構成した」(二項発明)と続いているから、「空気流制御手段」は、温度等が調節された空気をカーテン状の空気流として、出入口ドアの開放時にのみ噴き出し、閉鎖時には噴き出さないように(一項発明)、あるいは、出入口ドアの閉鎖時には開放時に噴き出す量よりも少ない量の空気流を噴き出すように(二項発明)する機能を有するものであり、そのために「ドアの開閉に応答して」「空気流噴き出し手段」を制御するとの構成を採用していることが明らかである。
そして、この点に関する発明の詳細な説明をみると、実施例においては、「出入口ドア22が第1図AおよびBに示される閉鎖位置にある時、開口18を閉鎖すると共に、このドア22が第2図AおよびBに示される開放位置にある時は、開口18を開放するための、出入口ドア22の移動に応答して自動的に制御する手段を備えている。」(4欄39ないし44行)、「開口18を通る空気流は長ストリップ28により制御され、このストリップ28は開口18を選択的に解放および閉鎖するよう移動でき、またストリップ28と出入口ドア22との間には、リンク機構が装着されている。」(5欄8ないし12行)と記載されているから、実施例における「ストリップ28」が右「空気流制御手段」に当たると考えることができ、出入口ドアの開閉に応答するように、これとの間にリンク機構が装着された「空気流制御手段」であるストリップ28により、「空気流噴き出し手段」である開口18が開閉されるようになっていることが認められ、前記のような特許請求の範囲に記載された内容を確認することができる。
右のとおり、本件発明においては、出入口ドアの開放時にのみ、温度等が調節された空気をカーテン状の空気流として噴き出し(一項発明)、あるいは、出入口ドアの閉鎖時には開放時に噴き出す量よりも少ない量の空気流を噴き出すように構成されている(二項発明)から、出入口ドアの開閉に応じて空気流噴き出し手段によって噴き出す空気流の流量が調節されているものということができ、したがって、本件発明の要件(3)にいう「空気流制御手段」は、「噴き出す空気流の流量」を制御する手段と考えるのが相当である。また、その構成が空気噴き出し手段を制御するものでなければならないこともいうまでもない。
これを原告製品について見ると、原告製品を示すものとして当事者間に争いのない別紙目録によると、原告製品においては、本件発明にいう「空気流制御手段」に相応する構造を見い出すことはできない。
被告は、原告製品の処置窓26の二重壁(外板28・内板30)構造を中心とする争点2(一)の<1>ないし<3>の構成が本件発明の「空気流制御手段」に該当する旨主張するが、別紙目録によると、原告製品においては、処置窓26の開放時および閉鎖時を問わず、調和槽56を経た空気は開口54から原告製品である保育器内に常時噴き出しており、二重壁構造を中心とする右構成が噴き出される空気流の流量を制御しているものと認めることはできないし、また二重壁構造を中心とする右構成が空気流そのものを何らかの形で制御しているとしても、本件発明の「空気噴き出し手段」に該当する開口54を制御するものであるとは到底認められないから、被告の右主張は理由がない。
3 右のとおり、原告製品は本件発明の要件(3)を充足しない。
二 原告製品が、本件発明の「前記ドアの開放時にのみ前記調節された空気の一部又は全部を前記空気流噴き出し手段によって前記カーテン状の空気流として噴き出すように構成されていること」との要件(4)を充足するか否かについて判断する。
本件発明の要件(4)にいう「カーテン状の空気流」とは、カーテンの形状をした空気の流れを意味するものと解されるところ、原告製品を示すものとして当事者間に争いのない別紙目録によれば、原告製品においては、処置窓26の閉鎖時には、空気流噴き出し手段たる開口54から噴き出した空気流は、立上り部50に沿って上昇し、処置窓の外板28と内板30との間に流入し、両板間を通って上昇するものと認められるから、前記処置窓26の閉鎖時にその外板28と内板30との間を通って上昇する空気流は、まさしく「カーテン状の空気流」ということができる。したがって、原告製品は、処置窓の閉鎖時においても「カーテン状の空気流」が噴き出しているから、本件発明の要件(4)を充足しないというべきである。
被告は、「カーテン状の空気流」とは、いわゆる「エアーカーテン」を指称するものであり、エアーカーテンは外側と内側とを遮断するための空気流である必要があるが、原告製品においては、処置窓26の閉鎖時に空気流が上昇する処置窓の外板28と内板30との間の空間は、該両内外板によってすでに遮断されているから、右空気流は、遮断のための空気流とはいえず、よって、エアーカーテンたる「カーテン状の空気流」とはいえないから、処置窓の閉鎖時にはカーテン状の空気流は噴き出していない旨主張する。しかしながら、カーテン状の空気流が「エアーカーテン」を指称するものである旨の被告の主張を認むるに足る証拠はなく、前述のようにカーテンの形状をした空気の流れでありさえすれば、外側と内側とを遮断する作用を有するか否かにかかわりなく、「カーテン状の空気流」であると解すべきであるから、原告製品において処置窓26の閉鎖時にその外板28と内板30との間の二重壁内を流れる空気流も「カーテン状の空気流」に当たるというべきであり、被告の右主張は理由がない。
三 原告製品が、本件発明の要件(4)'を充足するか否かについて判断する。
被告は、原告製品において、処置窓の閉鎖時には、開放時に比べて、カーテン状の空気流の流量が約5パーセント少なくなるから、要件(4)'を充足する旨主張し、乙第八及び第九号証には、これに沿う実験結果が記載されていることが認められる。
そこで、要件(4)'にいう「少なく」の意義について、検討すると、本件発明において、空気流噴き出し手段を制御してドアの開放時にのみカーテン状の空気流として噴出するように構成する目的が、ドアの閉鎖時に調節された空気が制御されることなく噴き出した場合には比較的高温の空気が新生児の近傍に直接当たり、悪影響を及ぼす恐れがあるため、ドアの閉鎖時に高温の空気が胎児の近傍に直接噴き出さないようにすることにあることは、被告の自認するところであるが、そうであるとすると、要件(4)'にいう「少なく」は、単に数値の上での少なさではなく、閉鎖時に噴き出すカーテン状の空気流が新生児に悪影響を及ぼさない程度に少ないことを要するというべきであり、またこの点を立証することを要するというべきである。
原告製品の場合、仮に、前掲乙号各証に記載されているとおり、処置窓26の閉鎖時に開口54から噴き出した空気流の流量が、開放時に比べて約5パーセント程度減少しているとしても、この約5パーセントの減少によって新生児に悪影響が及ばなくなるものであるかどうかは明らかではなく、結局「少なく」の点を充足するものとは認められない。
右のとおり、原告製品は、本件発明の要件(4)'を充足しない。
四 以上のとおり、原告製品は、一項発明の要件(3)及び(4)を、二項発明の要件(3)'及び(4)'をそれぞれ充足しないから、差止請求権不存在確認を求める原告の本訴請求は理由がある。
(裁判長裁判官 一宮和夫 裁判官 足立謙三 裁判官 前川高範)
(別紙) 目録
別紙図面および原告製品説明書に示すとおりの保育器(商品名「V-850Wアトム保育器」)
原告製品説明書
一 別紙図面の説明
(一) 第1図は保育器の正面図、第2図は右側面図、第3図はフードを取り外した状態で示す保育器の分解斜視図、第4図は処置窓の正面図、第5図は第4図の切断線5-5に沿って見た処置窓の横断面図、第6図は処置窓を閉鎖した状態で示す保育器の横断面図、第7図は処置窓を開放した状態で示す保育器の横断面図である。
(二) 各図における参照番号は、それぞれ、イ号物件の次の部材を示す。
10 ・・・・・ フード
12 ・・・・・ 基台
14 ・・・・・ 支持体
16 ・・・・・ フードの開口部
18 ・・・・・ 外フード部
20、21・・・・・ 内フード部
22 ・・・・・ フード側のブラケット
24 ・・・・・ 連結ピン
26 ・・・・・ 処置窓
28 ・・・・・ 処置窓の外板
30 ・・・・・ 処置窓の内板
32 ・・・・・ 手入れ窓
34 ・・・・・ 連結ピンを受け入れる孔
36 ・・・・・ 処置窓側のブラケット
38 ・・・・・ パッキング
40 ・・・・・ 開閉ノブ
42 ・・・・・ 空気室
44 ・・・・・ 吹出上板
46 ・・・・・ 中床
48 ・・・・・ 中床開口
50 ・・・・・ 吹出上板の立上り部
52 ・・・・・ 中床の側部
54 ・・・・・ 空気室の開口
56 ・・・・・ 調和槽
58 ・・・・・ 吹出口
60 ・・・・・ 吸込口
二 構造
1 V-850Wアトム保育器(以下「保育器」という。)は、全体に、フード10と、基台12とからなる。
基台12には、フード10により覆われる新生児を載せる支持体14が配置されているほか、空気の温度および湿度を調節する空気調節装置(図示せず)、この空気調節装置により調節された空気を常時フード内に循環させる空気循環装置(図示せず)が配置されている。
2 フード10は、前部に矩形の開口部16を有する外フード部18と、開口部16近傍から頂部および後部にわたって外フード部18から一定の間隔をおいて断続的に配置された内フード部20、21とからなる。フード10は、その外フード部18に設けられたブラケット22に連結ピン24を介して枢着され、開口部16を閉鎖し、開放する処置窓26を備える。
3 処置窓26は、外板28と、該外板から間隔をおいて配置された内板30と、これらを貫く左右一対の手入れ窓32と、下部側両端にあって連結ピン24を受け入れる孔34を有するブラケット36と、下部側を除く周囲に配置されたパッキング38と、上部側左右一対の開閉ノブ40とを備える。
4 基台12は、支持体14の下方に、空気の入口および出口を有する空気室42を備える。空気室42は、支持体14の下側の吹出上板44と、該吹出上板から一定の間隔がおかれた中床46とにより形成されている。空気の入口は、中床46に設けられた中床開口48からなり、空気の出口は、吹出上板44の斜め上方に折り曲げられた立上り部50と中床46の側部52とによって規定された狭くて長い開口54からなる。
基台12は、また、空気室42の下方に調和槽56を備える。この調和槽56の内部には、空気の温度および湿度を調節し、調節された空気を中床開口48を経て空気室42に送ると共に、これとは別に、空気を中床46に設けられた吹出口58を経てフード10内に送り、さらに、中床46に設けられた吸込口60を経て戻すための、前記空気調節装置および前記空気循環装置の一部が配置されている。
5 処置窓26の閉鎖時、第6図に示すように、処置窓の内板30は、その下端部が吹出上板44の立上り部50の上端部に近接した位置を占め、その上端部が内フード部20の下端部近傍の位置を占める。
他方、処置窓26の開放時、第7図に示すように、該処置窓は、フード側のブラケット22と処置窓側のブラケット36とを連結する連結ピン24の回りに回転してフード10の開口部16を開放し、処置窓の内板30は、フード外の位置を占める。
三 作動態様
1 保育器が作動している時、処置窓26の開放時および閉鎖時を問わず、調和槽56を経た空気が、中床46に形成された吹出口58および空気室42の開口54から常時噴き出している。吹出口58から噴き出した空気は、中床46に形成された吸込口60を経てフード10から基台12の調和槽56に流出する。
2 開口54から噴き出した空気流は、処置窓26の閉鎖時、立上り部50に沿って上昇し、処置窓の外板28と内板30との間に流入し、両板間を通って上昇し、一部は処置窓の内板30の上端部と内フード部20の下端部との間から内フード部内に流入し、他の一部は外フード部18と内フード部20との間に流入し、いずれも、最終的には、中床46に形成された吸込口60を経てフード10から基台12の調和槽56に流出する。
3 処置窓の開放時、開口54から噴き出した空気流は、立上り部50に沿ってフード10の開口部16の全域にわたる空気流として上昇し、一部はフード外に流出し、他の一部はフード10内を流動し、吸込口60を経てフード10から基台12の調和槽56に流出する。
別紙図面
<省略>
<省略>
<省略>
<19>日本国特許庁(JP) <11>特許出願公告
<12>特許公報(B2) 昭58-47180
<51>Int.Cl.3A 61 G 11/00 識別記号 庁内整理番号 6807-4C <24><44>公告 昭和58年(1983)10月20日
発明の数 2
<54>保育器
<21>特願 昭56-3695
<22>出願 昭56(1981)1月13日
<65>公開 昭56-151041
<43>昭56(1981)11月21日
優先権主張 <32>1980年1月14日<33>米国(US)<31>112008
<72>発明者 ジエームス・アール・グロシヨルツ
アメリカ合衆国ペンシルバニア18963ソルベリ・チヤプル・ロード69
<71>出願人 エアー.シールズ.インコーボレーテツド
アメリカ合衆国ペンシルバニア19040ハツトボロ・ジヤクソンビル・ロード330
<74>代理人 弁理士 米屋武志
<57>特許請求の範囲
1 新生児支持体と、開閉可能な出入口ドアを設けた前記支持体を囲繞するフードと、空気の温度、湿度などを調節する空気調節装置と、該空気調節装置によつて調節された空気を常時前記フード内に循環させる空気循環装置とを有する保育器において、前記ドアの開口部またはその近傍に少なくとも開口部の大部分にわたるカーテン状の空気流を形成するための空気流噴き出し手段と、前記ドアの開閉に応答して該空気流噴き出し手段を自動的に制御する空気流制御手段とを備え、前記ドアの開放時にのみ前記調節された空気の一部又は全部を前記空気流噴き出し手段によつて前記カーテン状の空気流として噴き出すように構成したことを特徴とする保育器。
2 新生児支持体と、開閉可能な出入口ドアを設けた前記支持体を囲繞するフードと、空気の温度、湿度などを調節する空気調節装置と、該空気調節装置によつて調節された空気を常時前記フード内に循環させる空気循環装置とを有する保育器において、前記ドアの開口部またはその近傍に少なくとも開口部の大部分にわたるカーテン状の空気流を形成するための空気流噴き出し手段と、前記ドアの開閉に応答して該空気流噴き出し手段を自動的に制御する空気流制御手段とを備え、前記ドアの開放時には前記調節された空気の一部又は全部を前記空気流噴き出し手段によつて前記カーテン状の空気流として噴き出し、前記ドアの閉鎖時には開放時に噴き出す前記カーテン状の空気流の流量よりも少なく前記調節された空気を前記空気流噴き出し手段によつて噴き出すように構成したことを特徴とする保育器。
発明の詳細な説明
本発明は保育器に関し、特に新生児をフード内に収容し外気から隔離した状態で保育する保育器において、そのフードに設けた出入口ドアを開放した際にこの開放による新生児に対する影響をなくすようにした保育器の改良に関するものである。
この種保育器は、早産児または虚弱あるいは病弱な新生児に対して、制御された環境を提供する医療ユニツトであり、新生児を、伝染病源となるおそれがあるか、あるいは新生児自身が困難を克服するのを援助する上で、不適当な外気から隔離するために使用されている。
そして多くの保育器には、新生児に対して保育器内で助けを与え、かつ注意を注ぐことができるように、新生児に接触できるようにするための装置が設けられている。
このための代表的な装置としては、新生児の看護者が新生児に接触するために、手および腕を保育器内に挿入できる腕用開口または出入口ポートが保育器のフードの一つまたはそれ以上の側壁に備えられているものがある。
非常に危険な病気の新生児を看護するような場合は、腕用開口を備えた型式の出入口ポートを利用することよりも、完全化を図るために新生児に対する出入口を設けることの方が望ましい。
これはフードに出入口ドアを設けることにより達成される。
しかしフード内は、温度、湿度および酸素濃度などが空気調節装置によつて調節され、収容される個々の新生児にとつて最適な環境雰囲気が作りだされている。
したがつて、出入口ドアの開放時間が比較的短い場合は新生児に対して惡影響を与えることは少ないが、新生児に対する繰作時間が長くなりドアの開放時問が長くなると、外気がフード内に流入し、調節されていたフード内の環境が乱され、新生児に対して重大な生理学的な惡影響を与えてしまう。
本発明の目的は、上記に諾み保育器のフードに設けた出入口ドアを開放しても、この開放による新生児に対する惡影響を完全に除去するようにした新規な保育器を提供することにある。
以下、図示の実施例に基づいて本発明を詳細に説明する。
第1図A、Bおよび第2図A、Bにおいて、この発明によつて構成された保育器は、新生児支持体12と、この支持体12の下方の空間と上方の空間との間に、空気を流通させることができる三つの空気流通通路を設けた基体10とを備えている。
この基体10には保育器内に所望の環境をもたらすための種々のユニツトが具備されている。
上記、新生児支持体12はマツトレス支持体と、新生児がその上に載せられるマツトレスとから成つている。
空気流動通路は、基体10および新生児支持体12の頭端部および脚端部に配置された第1開口14および第2開口16と、基体10および新生児支持体12の正面側に設けられた第3開口18(第2図Bに明瞭に示されている)とを備えている。
この開口14、16および18は長くて狭い開口で、新生児支持体12の三つの側面に沿つて延びており、また、この開口14、16および18により新生児支持体12の上下に、しかも相互に自由に連通する空間が区画され、したがつてこれらの空間の間に空気の流動が可能になるよう構成されている。
この発明の保育器はさらに、基体10の上方を うと共に、新生児支持体12に載せられた新生児を包囲するフード20を備えている。
このフード20は図示のように水平断面が四角形に形成されている。
フード20の前壁部には、第1図AおよびBに示す閉鎖位置と、第2図AおよびBに示す開放位置との間を移動可能な出入口ドア22が備えられている。
特に、この出入口ドア22は水平軸の回りに旋動できるように取付けられており、この出入口ドア22は開放時は下方へ、閉鎖時は上方へ夫々動される。
上記フード20は、これが基体10の後壁の頂部に沿つて延びるヒンジの回りの旋回動作によつて全体として上昇されるように、基体10に取付けられる。
この発明の保育器はさらに、基体10と新生児支持体12の下方に、調節された空気を供給するための空気調節装置を備えている。
簡単に言うと、この装置は流入口、フイルター、加熱器、酸素供給源、給湿機、および適当な温度、酸素含量および湿度を有する調節された空気を生じさせる別の構成要素を具備している。
第1図の保育器はさらに、調節された空気を新生児支持体12の下方からフード20内へ、そして開口14、16を介して再び新生児支持体12の下方へ循環させるための空気循環装置を備えいる。
この装置は、適当な送風機、ダクト装置類を備えており、したがつて調節された空気が第1図Aおよび第2図Aにおいて矢印21で示されるように、開口14を介してフード20内へ、そして開口16を介して基体10内へ強制流動される。
さらに、調節された空気は第2図Bに示されるように、開口18の方向へも送られる。
この発明の保育器はさらに、出入口ドア22が第1図AおよびBに示される閉鎖位置にある時、開口18を閉鎖すると共に、このドア22が第2図AおよびBに示される開放位置にある時は、開口18を開放するための、出入口ドア22の移動に応答して自動的に制御する手段を備えている。
第3図、第4図および第5図は、調節された空気が開口18へ配送される状態と、この開口18を閉鎖および開放するための手段を詳細に示している。
調節された空気はデツキ24に設けた複数のスロツト23を介して、新生児支持体12の下方の室26内へ強制流入される。
開口18を通る空気流は長ストリツプ28により制御され、このストリツプ28は開口18を選択的に解放および閉鎖するよう移動でき、またストリツプ28と出入口ドア22の間には、リンク機構が装着されている。
特に、開口18にほぼ等しい形状と寸法の長ストリツプ28は、新生児支持体12の前面に沿つて延び、かつその長手方向の端面に沿つて旋動自在となるように、開口18の長手方向の端部に取付けられている。
ストリツプ28が第4図に示される位置、および第5図に実線で示される位置にある場合は、室26の流出口における開口18は閉鎖され、室26内の調節された空気は開口18を通して流動することが遮断され、あるいは小さな流量しか流れなくなる。
ストリツプ28が第5図に一点鎖線で示される位置に移動すると、開口18は解放され、調節された空気が室26から、第2図A、Bおよび第5図に矢印30で示されるように、開口18を通つて流動される。
同時に、調節された空気は第2図Aに示されるように、開口14および16を介して基体10とフード20の間の循環を継続している。
ストリツプ28は、新生児支持体12と出入口ドア22の間に連結されており、また出入口ドア22により作動される機構により制御されている。
特に、出入口ドア22が閉鎖位置にある時、このドア22が固定されているドアヒンジ34上のブラケツト32は、スプリング部材36に係合して、スプリング部材36を下方へ移動させ、このスプリング部材36を第4図および第5図に実線で示す位置に維持する。
スプリング部材36はその他端において、新生児支持体12の下側38に固定されている。
スプリング部材36は、ストリツプ28の係止片42に係合するフツク40を備えている。
そしてスプリング部材36が第4図に示される位置に保持される場合は、ストリツプ28は開口18を閉鎖する位置にある。
出入口ドア22が開放され、ドアヒンジ34が第5図に一点鎖線で示される位置へ移動すると、ブラケツト32はもはやスプリング部材36には係合しないから、スプリング部材36は第5図に一点鎖線で示される位置へ移動できる。
この移動により、スプリング部材36のフツク40はストリツプ28の係止片42の下面に当接し、ストリツプ28をヒンジ44を中心にして、第5図に一点鎖線で示す位置まで旋動される。
これにより調節された空気は室26から開口18を介して上方に流動し、ドア開口部を横切る調節された空気からなるカーテンが形成される。
開口18を介して上方へ流動する調節された空気のある量は、第2図Bに示されるように保育器の外へ流出するが、保育器内に存する残留部分は、開口14を介して上方へ、そして開口16を介して下方へ循環する主流へ流入する。
出入口ドア22が閉鎖位置へ移動されると、ドアヒンジ34のブラケツト32がスプリング部材36に係合して、スプリング部材36を第4図に示される位置へ戻す。
スプリング部材36が下方へ移動すると、フツク40は下方へ引かれる。そうするとフツク40はストリツプ28の係止片42を下方へ引き、ストリツプ28を開口18が閉鎖される位置へ移動させる。
ストリツプ28の適当な移動点において、フツク40および係止片42は離脱され、ストリツプ28は重力作用により、閉鎖位置へ移動する。
これまでこの発明の好ましい実施例を説明してきたが、この発明の範囲内で種々の変更および修正が可能であることは明らかであろう。
この発明は上記のような構成であるので、出入口ドア22を開放して保育器内の新生児に対して治療等を施す際、この出入口ドア22の開放時間が長くなつても、第3開口18よりカーテン状に噴出する調節された空気流により、保育器内は直接外気と接触することがなく、従つて、出入口ドア22を開放することによる新生児に対する影響は減少し、新生児に重大な生理学的影響を与えることはないといつた諸効果がある。
図面の簡単な説明
図面は本発明の一実施例であり、第1図は出入口ドアが閉鎖状態にある場合を示し、同図Aは正面図、同図Bは側面図、第2図は出入口ドアが開放状態にある場合を示し、同図Aは正面図、同図Bは側面図、第3図は第1図Bの3-3線断面図、第4図は部分垂直断面図、第5図は第4図の要部拡大図である。
10……基体、12……新生児支持体、14、16、18……開口(空気流動通路)、20……フード、22……出入口ドア、26……室、28……ストリツプ、32……ブラケツト、36……スプリング部材、40……フツク、42……係止片。
第1図
<省略>
第2図
<省略>
第3図
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第4図
<省略>
第5図
<省略>
第1部門(2) 特許法第64条の規定による補正の掲載 昭62.1.9発行
昭和56年特許願第3695号(特公昭58-47180号、昭58.10.20発行の特許公報1(2)-39〔220〕号掲載)については特許法第64条の規定による補正があつたので下記のとおり掲載する。
特許第1335004号
Int.Cl.4A 61 G 11/00 識別記号 庁内整理番号 6779-4C
記
1 第3欄36行「第1開口16と、」を「第2開口16と、」と補正する。
昭和56年特許願第145920号(特公昭59-40441号、昭59.10.1発行の特許公報1(2)-37〔265〕号掲載)については特許法第64条の規定による補正があつたので下記のとおり掲載する。
特許第1335010号
Int.Cl.4A 44 C 5/10 識別記号 庁内整理番号 8307-3B
記
1 第2欄20~24行「本発明……ある。」を「本発明は、以上の欠点に鑑みなされたもので、高級腕時計用メツシユバンドとして杉綾のコイルの優美さを保ち、製造が容易なバンドの提供を目的としたものである。」と補正する。
昭和54年特許願第87169号(特公昭59-10227号、昭59.3.7発行の特許公報1(2)-8〔236〕号掲載)については特許法第64条の規定による補正があつたので下記のとおり掲載る。
特許第1335162号
Int.Cl.4A 61 M 1/34 識別記号 庁内整理番号 7720-4C
記
1「特許請求の範囲」の項を「1 血液透析器とこの血液透析器に透析液を供給させる流入回路と、上記血液透析器から透析液を排出する流出回路と、この流入回路に流れる透析液の流入量と流出回路に流れる透析液の流出量を交互に測定する同一の流量計と、この流量計を上記流入回路と流出回路の途中に交互に介挿させる切換え回路と、上記流量計の出力を受け、さらに、前記切換え回路の切換え動作に連動し、上記流量計の流入量と流出量との各測定時期の出力信号の状態を反転する入力状態切換え器と、
この入力状態切換え器を通して得る出力信号を演算し血液透析器の限外〓過量を知る手段とからなることを特徴とする限外〓過量測定装置。」と補正する。
2 第2欄32行~第3欄13行「本発明……説明する。」を「本発明は、上記事情に着目してなされ
訂 1
特許公報
<省略>
<省略>
<省略>