東京地方裁判所 平成3年(特わ)1477号 判決 1992年4月14日
本店所在地
東京都中央区日本橋小舟町一一番七号
株式会社
松栄パック
(右代表者代表取締役 松井宏祐)
本籍
東京都新宿区高田馬場一丁目三〇二番地の三
住居
神奈川県中郡二宮町山西九〇三番地の一
会社役員
松井宏祐
昭和一五年一月九日生
右両名に対する各法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官北原一夫、弁護人小町谷一博(主任)、岡田良平、松井稔各出席のうえ審理し、次のとおり判決する。
主文
被告会社株式会社松栄パックを罰金三、六〇〇万円に、被告人松井宏祐を懲役一年二月にそれぞれ処する。
被告人松井宏祐に対し、この裁判確定の日から三年間その刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告会社株式会社松栄パック(以下、被告会社という)は、東京都中央区日本橋小舟町一一番七号(平成二年三月一二日以前は同都中央区日本橋小舟町一一番八号)に本店を置き、磁気テープ用ケース及びコーヒーの製造並びに販売を目的とする資本金三、〇〇〇万円の株式会社であり、被告人松井宏祐は、被告会社の代表取締役としてその業務全般を統括している者であるが、被告人松井宏祐は、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、架空仕入れを計上するなどの方法により所得を秘匿したうえ、
第一 昭和六一年六月一日から同六二年五月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が二億八、八一九万六、二一九円(別紙一の1修正損益計算書のとおり)であったのにかかわらず、同六二年七月三〇日、東京都中央区日本橋堀留町二丁目六番九号所轄日本橋税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が一億七、六七二万四、三九三円であり、これに対する法人税額が六、九六四万五、〇〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により、被告会社の右事業年度における正規の法人税額一億一、六四五万四、九〇〇円と右申告税額との差額四、六八〇万九、九〇〇円(別紙二の1脱税額計算書のとおり)を免れ
第二 昭和六二年六月一日から同六三年五月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が四億四、七四三万八、三六七円(別紙一の2修正損益計算書のとおり)であったのにかかわらず、同六三年七月三〇日、前記日本橋税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が二億九、四三七万二、三四二円であり、これに対する法人税額が一億一、九一〇万円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により、被告会社の右事業年度における正規の法人税額一億八、三三八万二、一〇〇円と右申告税額との差額六、四二八万二、一〇〇円(別紙二の2脱税額計算書のとおり)を免れ
第三 昭和六三年六月一日から平成元年五月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が四億五、一三九万〇、二九七円(別紙一の3修正損益計算書のとおり)であったのにかかわらず、平成元年七月三一日、前記日本橋税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が三億四、四一八万三、〇三一円であり、これに対する法人税額が一億四、一六八万六、八〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により、被告会社の右事業年度における正規の法人税額一億八、六七一万一、一〇〇円と右申告税額との差額四、五〇二万四、三〇〇円(別紙二の3脱税額計算書のとおり)を免れ
たものである。
(証拠の標目)
判示全事実につき
一 被告人松井宏祐の当公判廷における供述
一 被告人松井宏祐の検察官に対する各供述調書
一 河口茂、高橋譲、北谷満、多田晴彦、仲川雅治、福田昭利の検察官に対する各供述調書
一 大蔵事務官作成の売上高調査書(検甲一)
一 大蔵事務官作成の期首商品棚卸高調査書(検甲二)
一 大蔵事務官作成の当期商品仕入高調査書(検甲三)
一 大蔵事務官作成の期末商品棚卸高調査書(検甲四)
一 大蔵事務官作成の給料調査書(検甲五)
一 大蔵事務官作成の福利厚生費調査書(検甲六)
一 大蔵事務官作成の交際接待費調査書(検甲七)
一 大蔵事務官作成の公租公課調査書(検甲八)
一 大蔵事務官作成の振込等支払手数料調査書(検甲一〇)
一 大蔵事務官作成の受取利息調査書(検甲一三)
一 大蔵事務官作成の役員賞与の損金不算入額調査書(検甲二一)
一 大蔵事務官作成の交際費の損金不算入額調査書(検甲二二)
一 大蔵事務官作成の事業税認定損調査書(検甲二四)
一 大蔵事務官作成の領置てん末書(検甲三三)
一 登記官作成の登記簿謄本(検乙三)
一 登記官作成の閉鎖登記簿謄本(検乙四)
判示第一、第二の各事実につき
一 大蔵事務官作成の雑費調査書(検甲一二)
判示第一、第三の各事実につき
一 大蔵事務官作成の雑収入調査書(検甲一四)
一 大蔵事務官作成の雑損失調査書(検甲一六)
一 大蔵事務官作成の減価償却の償却超過額調査書(検甲一八)
判示第一の事実につき
一 大蔵事務官作成の車輛費調査書(検甲九)
一 大蔵事務官作成の退職金調査書(検甲一一)
一 押収してある法人税確定申告書(六二・五期)一袋(平成三年押第一一一七号の1)
判示第二、第三の各事実につき
一 本江謙次の検察官に対する供述調書
一 損金の額に算入した道府県民税利子割調査書(検甲一七)
一 減価償却超過額の当期認容額調査書(検甲一九)
判示第二の事実につき
一 大蔵事務官作成の益金算入事業税調査書(検甲二三)
一 押収してある法人税確定申告書(六三・五期)一袋(前同押号の2)
判示第三の事実につき
一 大蔵事務官作成の当期商品仕入高補正調査書(検甲三七)
一 大蔵事務官作成の売上高補正調査書(検甲三八)
一 大蔵事務官作成の有価証券売却益調査書(検甲一五)
一 大蔵事務官作成の貸倒引当金の繰入超過額調査書(検甲二〇)
一 押収してある法人税確定申告書(元・五期)一袋(前同押号の3)
(法令の適用)
被告人松井宏祐の判示各所為は、いずれも法人税法一五九条一項に、被告人松井宏祐の判示各所為は、被告会社の業務に関してなされたものであるから被告会社につきいずれも同法一六四条一項、一五九条一項にそれぞれ該当するところ、被告人松井宏祐につき各所定刑中いずれも懲役刑を選択し、被告会社につきいずれも情状により同法一五九条二項を適用し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、被告人松井宏祐につき同法四七条本文、一〇条により犯情の最も重い判示第二の罪の刑に法定の加重をし、被告会社につき同法四八条二項により各罪所定の罰金を合算することとし、被告人松井宏祐に対し加重した刑期の、被告会社に対し合算した金額の各範囲内で被告人松井宏祐を懲役一年二月に、被告会社を罰金三、六〇〇万円にそれぞれ処し、被告人松井宏祐に対し、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判の確定した日から三年間右刑の執行を猶予する。
よって、主文のとおり判決する。
(求刑・被告会社に対し罰金四、〇〇〇万円、被告人松井宏祐に対し懲役一年二月)
(裁判官 伊藤正髙)
別紙一の1
修正損益計算書
自 昭和61年6月1日
至 昭和62年5月31日
<省略>
別紙一の2
修正損益計算書
自 昭和62年6月1日
至 昭和63年5月31日
<省略>
別紙一の3
修正損益計算書
自 昭和63年6月1日
至 平成元年5月31日
<省略>
別紙 二
脱税額計算書
1 自 昭和61年6月1日
至 昭和62年5月31日
<省略>
2 自 昭和62年6月1日
至 昭和63年5月31日
<省略>
別紙 二
脱税額計算書
3 自 昭和63年6月1日
至 平成元年5月31日
<省略>