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東京地方裁判所 平成3年(特わ)1955号 判決 1992年3月05日

本籍

東京都新宿区戸山一丁目一番地

住居

同区大久保二丁目二番一五号

GSハイム二〇一号

会社役員

池田豊子

昭和八年五月九日生

右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官西村逸夫出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役一〇月及び罰金一、六〇〇万円に処す。

右罰金を完納することができないときは、金一〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

この裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、東京都新宿区大久保二丁目二番一五号GSハイム二〇一号に居住し、同区新宿三丁目一二番四号永谷タウンプラザ五〇六号において「新栄ゴルフ株式会社」等の名称でゴルフ会員権の販売業を営んでいた者であるが、自己の所得税を免れようと企みて

第一  昭和六一年分の実際の総所得金額が一三六一万五二四九円であった(別紙1修正損益計算書参照)のにかかわらず、同六二年三月一六日、同区北新宿一丁目一九番三号所轄淀橋税務署(名称の変更により同年七月一日から新宿税務署)において、同税務署長に対し、昭和六一年分の総所得金額が二一四万九八二二円で、これに対する所得税額が二万三〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書(平成三年押第一二八八号の1)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により、昭和六一年分の正規の所得税額三二二万五三〇〇円、と右申告税額との差額三二〇万五〇〇〇円(別紙2脱税額計算書参照)を免れ

第二  昭和六二年分の実際総所得金額が九四四七万三五八五円であった(別紙3修正損益計算書参照)のにかかわらず、同六三年三月一五日、前記新宿税務署において、同税務署長に対し、昭和六二年分の総所得金額が三二〇万六四六五円で、これに対する所得税額が二三万一九〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書(平成三年押第一二八八号の3)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により、昭和六二年分の正規の所得税額四九一八万五五〇〇円と右申告税額との差額四八九五万三六〇〇円(別紙4脱税額計算書参照)を免れ

第三  昭和六三年分の実際総所得金額が五〇九九万五三九七円であった(別紙5修正損益計算書参照)のにかかわらず、平成元年三月一五日、前記新宿税務署において、同税務署長に対し昭和六三年分の総所得金額が二四六三万七五五円で、これに対する所得税額が七七一万五五〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書(平成三年押第一二八八号の5)を提出し、そのまま、法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により、昭和六三年分の正規の所得税額二〇八九万八〇〇〇円と右申告税額との差額一三一八万二五〇〇円(別紙6脱税額計算書参照)を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示全部の事実について

一  被告人の当公判廷における供述

一  被告人の検察官に対する供述調書(八通)

一  桑田正和の検察官に対する供述調書

一  収税官吏作成の販売手数料調査書、会員権売上調査書、期首商品棚卸高調査書、仕入調査書、期末商品棚卸高調査書、支払手数料調査書、通信費調査書、お礼手みやげ贈答品(1)調査書、値引分調査書、雑費調査書、雑費補正調査書

一  検察事務官作成の平成三年九月一八日付捜査報告書(経費実際額等に関するもの)

一  収税官吏作成の領置てん末書

判示第一及び第二の事実について

一  収税官吏作成の接待交際費(1)調査書、専従者控除(1)調査書

一  検察官作成の平成三年九月十七日付の捜査報告書(扶養控除に関するもの)

判示第一及び第三の事実について

一  収税官吏作成の貸付金利息調査書、印刷物(1)調査書

判示第二及び第三の事実について

一  収税官吏作成のパンフレット売上調査書、地代家賃(1)調査書

判示第一の事実について

一  収税官吏作成の電話料金調査書、ガソリン高速代調査書

一  検察事務官作成の平成三年一二月一〇日付捜査報告書(税務署の名称変更に関するもの)

一  押収してある被告人の昭和六一年度分の所得税確定申告書一袋(平成三年押第一二八八号の1)及び収支内訳書一袋(同押号の2)

判示第二の事実について

一  収税官吏作成の手数料調査書

一  検察事務官作成の平成三年九月一七日付捜査報告書(医療費控除に関するもの)

一  押収してある被告人の昭和六二年分の所得税確定申告書一袋(前同押号の3)および収支内訳書一袋(前同押号の4)

判示第三の事実について

一  収税官吏作成の貸倒調査書、損金調査書、資料購入調査書、減価償却(1)調査書、送料調査書

一  押収してある被告人の昭和六三年分の所得税確定申告書一袋(前同押号の5)及び収支内訳書一袋(前同押号の6)

(法令の適用)

一  罰条 判示各所為につき、いずれも所得税法二三八条一項、二項

二  刑種の選択 いずれも懲役刑と罰金刑の併料

三  併合罪の加重 刑法四五条前段、懲役刑につき同法四七条本文、一〇条(犯情の最も重い判示第二の罪の刑に加重)、罰金刑につき同法四八条二項

四  労役場留置 刑法一八条

五  刑の執行猶予 懲役刑につき、刑法二五条一項

(量刑の理由)

本件は ゴルフ会員権の販売業を営んでいた被告人が三年度にわたり、右事業による所得につき、合計六五三四万円余を脱税したという事案であり、一般の勤労者の所得水準からして脱税額は少なくなく、脱税率も八九パーセントと高率である。被告人は、普段から全く帳簿をつけずに杜撰な経理の下に営業を行い、昭和六一年分と同六二年分については、実際よりもはるかに少ない額であることを認識しながら、根拠もなしに決めたいい加減な所得金額及び税額で、虚偽過少申告をし、さらに同六三年分については、取引先会社が国税局の調査を受けたことから、調査で容易に判明する、同社外一社からの銀行振り込みによる販売手数料収入だけを申告することとし、実際よりも相当少ない額であることを認識しながら、同じく虚偽過少申告に及んだものである(なお、本件訴因には、「販売手数料収入の一部を除外するなどの方法により、所得を秘匿した上」との記載があるが、前掲関係各証拠によれば、被告人はそもそも帳簿をつけていなかったので、右手数料収入等をことさら帳簿に記載しないなどの収入除外というべき所得秘匿工作は存在せず、また、脱税の目的で仮名預金口座を設定したとは、必ずしも断定できない。したがって、右記載部分はこれを認定しないこととした)。その動機をみると、被告人が少しでも多く利益を留保しようとの意思から犯行に及んだことは、否定できない。この点につき、被告人は公判廷において、多忙であったため帳簿をつける余裕がなく、申告時に正確な所得を把握できなかったため、適当な額で申告せざるを得なかった旨弁解するが、確かに被告人は多忙であったものの、概算でも、できるだけ実際の所得金額を把握しようと努力することなく、それとはかけはなれた金額で申告したこと、昭和六三年分については、国税局に把握されやすい銀行振込による販売手数料収入のみを申告したこと、申告に際し、パンフレットの仕入については、経費として計上しながら、その売上は収入から除外したこと等に照らせば、被告人の弁解は採用できない。被告人が日頃から帳簿をつけず、杜撰な経理処理をした上、このような申告をしたことからすれば、被告人には誠実な納税の意欲が欠けていたといわざるを得ない。そうすると、被告人の責任は決してこれを軽視できない。

しかし、他方、被告人は修正申告の上、ほ脱にかかる本税・附帯税を完納したこと、現在では法人組織にして、同様の営業をしているところ、経理全般及び税務について、税理士の指導を受ける態勢としたこと、前科はなく、反省の情を示していること、家庭及び経営する会社の状況、健康状態等、被告人のために酌むべき事情がある。

そこで、これらの諸事情を総合して考慮し、主文のとおり量刑とした。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 西田眞基)

別紙1

修正損益計算書

<省略>

別紙2

脱税額計算書

<省略>

別紙3

修正損益計算書

<省略>

別紙4

脱税額計算書

<省略>

別紙5

修正損益計算書

<省略>

別紙6

脱税額計算書

<省略>

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