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東京地方裁判所 平成3年(特わ)2040号 判決 1992年3月24日

本店所在地

東京都八王子市中町八番五号

株式会社マルカワ

東京都八王子市小門町六番二二号

右代表者代表取締役

小川忠

本籍

神奈川県相模原市相原六丁目一二八番地

住居

東京都八王子市小門町六番二二号

元会社役員

小川時三

昭和五年二月五日生

右の者らに対する法人税法違反被告事件について、当裁判所は、次のとおり判決する。

検察官 西村逸夫 出席

主文

被告人株式会社マルカワを罰金六〇〇〇万円に、

被告人小川時三を懲役一年八月及び罰金一〇〇〇万円にそれぞれ処する。

被告人小川時三において右罰金を完納することができないときは、金二〇万円を一日に換算した期間同被告人を労役場に留置する。

被告人小川時三に対し、この裁判の確定した日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人株式会社マルカワは、東京都八王子市中町八番五号に本店を置き、紳士・婦人・子供服等の販売を目的とする資本金六〇〇〇万円の株式会社であり、被告人小川時三は、同会社の代表取締役としてその業務全般を統括していたものであるが、被告人小川時三は、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、売上を除外するなどの方法により所得を秘匿した上、

第一  昭和六一年九月一日から同六二年八月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が二億二九九四万八一九〇円(別紙1の修正損益計算書参照)であったにもかかわらず、同六二年一〇月三〇日、東京都八王子市子安町四丁目四番九号の所轄八王子税務署において、同税務署長に対し、所得金額が一億一八六七万一四五四円で、これに対する法人税額が四八一一万八五〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により、同会社の右事業年度における正規の法人税額九四八四万七〇〇〇円(別紙2の脱税額計算書参照)と右申告額との差額四六七二万八五〇〇円を免れ

第二  昭和六二年九月一日から同六三年八月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が四億五三八一万五四九円(別紙3の修正損益計算書参照)であったにもかかわらず、同六三年一〇月三一日、前記八王子税務署において、同税務署長に対し、所得金額が二億三七一四万五八一六円で、これに対する法人税額が九七七六万七三〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により、同会社の右事業年度における正規の法人税額一億八八七六万二七〇〇円(別紙4の脱税額計算書参照)と右申告額との差額九〇九九万五四〇〇円を免れ

第三  昭和六三年九月一日から平成元年年八月三一日までの事業年度における被告会社の実際金額が五億九五〇五万一八八円(別紙5の修正損益計算書参照)であったにもかかわらず、同元年一〇月三一日、前記八王子税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が三億四二六五万三一七五円で、これに対する法人税額が一億四〇四六万七六〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により、同会社の右事業年度における正規の法人税額二億四八〇四万九二〇〇円(別紙6の脱税額計算書参照)と右申告額との差額一億七五八万一六〇〇円を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示全部の事実について

一  被告人小川時三の当公判廷における供述

一  被告人小川時三の検察官に対する供述調書(六通)

一  米山知子、萩原連藏(二通)、西室清輝、小俣市樹、井上照明、判治勇の検察官に対する各供述調書

一  大蔵事務官作成の売上高調査書、期首商品製品棚卸高調査書、期末商品製品棚卸高調査書、給料調査書、福利厚生費調査書、接待交際費調査書、器具備品費調査書、修繕費調査書、調査費調査書、受取利息調査書、債券償還益調査書、交際費損金不算入額調査書、事業税認定損調査書、代表者勘定調査書

一  大蔵事務官作成の領置てん末書

一  登記官作成の登記簿謄本及び閉鎖登記簿謄本(二通)

判示第二、第三の事実について

一  大蔵事務官作成の雑費調査書、損金不算入住民税利子割調査書

判示第一の事実について

一  押収してある法人税確定申告書(六二年八月期)一袋(平成三年押第一二一三号の1)

判示第二の事実について

一  押収してある法人税確定申告書(六三年八月期)一袋(前同号の2)

判示第三の事実について

一  大蔵事務官作成の消耗品費調査書

一  押収してある法人税確定申告書(元年八月期)一袋(前同号の3)

(法令の適用)

一  罰条 被告会社の判示行為

法人税法一六四条一項、一五九条一項、二項

被告人小川時三の判示各行為

法人税法一五九条一項(懲役刑と罰金刑を併科)、二項、

一  併合罪の処理 被告会社関係

刑法四五条前段、四八条二項

被告人小川時三関係

刑法四五条前段、四七条本文、一〇条、四八条二項

一  換刑処分 被告人小川時三関係

刑法一八条

一  執行猶予 被告人小川時三関係

刑法二五条一項

(量刑の理由)

本件は、ジーンズ等の衣類の販売を目的とした会社の法人税脱税事犯であるが、脱税額は、昭和六二年八月期から平成元年八月期までの三年間で約二億四五〇〇万円に上っており、脱税の方法は、各店舗における売上を除外し期末商品棚卸高を縮小して、利益を少なく見せ掛けるというもので、それは計画的に行われ悪質であり、脱税の動機も、多額の利益がありながら税金を納めるのが惜しいとの被告人小川自身の誠に勝手な考えによるものであり、脱税によって留保された金員も、被告人小川やその家族のための資産として蓄えられるなどしており、本件脱税事犯は、その脱税額、ほ脱の態様、動機等からして悪質といわねばならない。特に、被告人小川については、本件以前にも脱税が発覚し追徴処分を受けているのに、またもや本件を犯したもので、その納税意識は低く、本件が敢行されるについては同被告人の意向が強く反映していると認められる。

一方、脱税した本税はもちろん重加算税等の附帯税関係についても、既に完納済であることや、被告人小川はいまでは脱税したことを深く反省し、被告会社の役員を辞して、その経営も同被告人の息子が行うこととなり、脱税が行われないような体制を整えられていることなど、被告会社及び被告人小川にとって有利な事情も存在する。

以上の各事情その他諸般の情状を勘案し、特に被告人小川については、本件脱税の敢行・継続、脱税による資産の留保などにおいて果たした役割は大きく、その責任は重いので、懲役刑の実刑を科するまでではないとしても、相当額の罰金刑をも併科することによって、責任に対する自覚を促す必要があると考え、主文のとおり量刑した。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 松浦繁)

別紙1

修正損益計算書

<省略>

別紙2

脱税額計算書

<省略>

別紙3

修正損益計算書

<省略>

別紙4

脱税額計算書

<省略>

別紙5

修正損益計算書

<省略>

別紙6

脱税額計算書

<省略>

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