大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京地方裁判所 平成3年(特わ)2385号 判決 1993年4月16日

本店所在地

東京都新宿区西新宿七丁目三番五号

ピアット・ワンビル

瀬戸内興産株式会社

(右代表者代表取締役 植村文雄)

本籍

東京都日野市大字宮三七六番地

住居

東京都新宿区弁天町一五二番地

会社役員

植村文雄

昭和二〇年二月一四日生

右の者らに対する法人税法違反被告事件について、当裁判所は、次のとおり判決する。

検察官 今村隆 弁護人 大西英敏 各出席

主文

被告会社瀬戸内興産株式会社を罰金七〇〇〇万円に、

被告人植村文雄を懲役一年三月にそれぞれ処する。

訴訟費用は被告会社及び被告人植村の連帯負担とする。

理由

(犯罪事実)

被告会社瀬戸内興産株式会社は、東京都新宿区西新宿七丁目三番五号ピアット・ワンビル(昭和六一年七月二四日以前は、同区西新宿七丁目五番五号)に本店を置き、不動産の売買及び仲介等を目的とする資本金二〇〇〇万円(昭和六二年七月一三日以前は一二〇〇万円、同年六月二二日以前は三〇〇万円)の株式会社であり、被告人植村文雄は、被告会社の代表取締役としてその業務全般を統括していた者であるが、被告人植村は、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、不動産売買を行うに当たって第三者名義で取引し売上げを除外するなどの方法により、所得を秘匿した上、

第一  昭和六一年四月一日から同六二年三月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が一億四四八〇万五一七三円(別紙1の修正損益計算書参照)であったにもかかわらず、同六二年五月二九日、東京都新宿区北新宿一丁目一九番三号の所轄淀橋税務署(同年七月一日名称変更により新宿税務署)において、同税務署長に対し、その所得金額が一五〇七万三七五五円で、これに対する法人税額が五四二万八〇〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(平成四年押第二二七号の1)を提出し、もって不正の行為により、被告会社の右事業年度における正規の法人税額六一六〇万二〇〇〇円と右申告額との差額五六一七万四〇〇〇円(別紙2の脱税額計算書参照)を免れ、

第二  昭和六二年四月一日から同六三年三月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が四億二六七八万八〇一九円、課税土地譲渡利益金額が三億七三六九万九〇〇〇円(別紙3の修正損益計算書参照)であったにもかかわらず、同六三年五月二四日、前記新宿税務署において、同税務署長に対し、所得金額が九八万四五六九円、課税土地譲渡利益金額が一七二万一〇〇〇円で、これに対する法人税額が四三四万一八〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(前同号の2)を提出し、もって不正の行為により、被告会社の右事業年度における正規の法人税額二億六二五四万七〇〇〇円と右申告額との差額二億五八二〇万五二〇〇円(別紙4の脱税額計算書参照)を免れ

たものである。

(証拠)

判示全部の事実について

一  被告人植村の当公判廷における供述

一  被告人植村の検察官に対する供述調書(平成三年一一月五日付、同月八日付《本文一九丁のもの》、同月一〇日付《本分六丁のもの》、一四日付、同月一五日付)

一  大谷敏明、有馬保男の検察官に対する各供述調書

一  原芙美子の大蔵事務官に対する質問てん末書(平成二年九月二一日付)

一  大蔵事務官作成の売上高調査書、仲介料収入調査書、商品仕入高調査書、支払手数料調査書、雑収入調査書、受取利息割引料調査書、租税公課調査書、事業税認定損調査書、土地の譲渡等に係る譲渡利益金額調査書、取引形態調査書

一  検察事務官作成の捜査報告書(三通)

一  大蔵事務官作成の領置てん末書

一  検察事務官作成の電話聴取書

一  登記官作成の登記簿謄本及び閉鎖登記簿謄本(二通)

判示第一の事実について

一  被告人植村の検察官に対する供述調書(平成三年一一月八日付《本文八丁のもの》、同月九日付《本文四丁のもの》)

一  小黒健次の検察官に対する供述調書

一  押収してある法人税確定申告書一袋(六二年三月期)(平成四年押第二二七号の1)

判示第二の事実について

一  被告人植村の検察官に対する供述調書(平成三年一一月九日付《本文六丁のもの》、同月一〇日付《本文八丁のもの》)

一  北篠勝雄、岩川昭三郎の検察官に対する各供述調書

一  原芙美子の大蔵事務官に対する質問てん末書(平成三年四月九日付)

一  押収してある法人税確定申告書一袋(六三年三月期)(前同押号の2)

(適用法令)

罰条 被告会社関係

判示第一、第二の両事実について

法人税法一六四条一項、一五九条一項、二項(情状による)

被告人植村関係

判示第一、第二の両事実について

法人税法一五九条一項(懲役刑選択)

併合罰処理 被告会社関係 刑法四五条前段、四八条二項

被告人植村関係 刑法四五条前段、四七条本文一〇条

訴訟費用 被告会社及び被告人植村関係

刑事訴訟法一八一条一項本文、一八二条

(量刑の理由)

本件は、不動産会社の脱税事案であるが、脱税額が二年度分で合計約三億一四〇〇万円と多額であり、しかも脱税率も通算して九五パーセントを越えており、脱税の手段も、ダミー会社や架空領収証を使って売上げを除外したり、収入を除外したり、商品仕入高を水増しするなど、計画的かつ巧妙であって悪質であり、脱税の動機に酌むべきものはなく、犯情はよくない。

してみると、被告人植村において今回の脱税を反省し、鋭意脱税した本税の納付について努力してきていることなどを考慮しても、いまだ脱税額の九割以上が未納付であることを考えれば、被告人植村に対しては懲役刑の実刑に処するのもやむを得ない。

よって、主文のとおり判決する。

(求刑 被告会社・一億円 被告人植村・懲役二年)

(裁判官 松浦繁)

別紙1

修正損益計算書

<省略>

別紙2

脱税額計算書

<省略>

別紙3

修正損益計算書

<省略>

別紙4

脱税額計算書

<省略>

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例