東京地方裁判所 平成3年(特わ)2716号 判決 1992年5月12日
本店所在地
東京都江東区東砂四丁目一二番九号
有限会社
中村鉄筋
(右代表者代表取締役 中村良久)
本籍
新潟県三条市下坂井一七九番地
住居
東京都江東区東砂四丁目五番九号
会社役員
中村良久
昭和一三年一月三日生
右両名に対する各法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官立澤正人、弁護人塩川哲穂出席のうえ審理し、次のとおり判決する。
主文
被告会社有限会社中村鉄筋を罰金一、六〇〇万円に、被告人中村良久を懲役一〇月にそれぞれ処する。
被告人中村良久に対し、この裁判の確定した日から三年間右刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告会社有限会社中村鉄筋(以下、被告会社という)は、東京都江東区東砂四丁目一二番九号(平成三年一一月一九日以前は、同都江東区東砂四丁目五番九号)に本店を置き、建築工事にかかる鉄筋の取付施工等の請負を目的とする資本金二〇〇万円の有限会社であり、被告人中村良久は、被告会社の代表取締役として、被告会社の業務全般を統括しているものであるが、被告人中村良久は、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、売上の一部を除外するなどの方法により所得を秘匿した上
第一 昭和六三年五月一日から平成元年四月三〇日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が五、三三七万四、八七五円(別紙一の1修正損益計算書のとおり)であったのにかかわらず、右法人税の納期限である平成元年六月三〇日までに東京都江東区亀戸二丁目一七番八号所轄江東東税務署税務署長に対し、法人税確定申告書を提出しないで、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により、被告会社の右事業年度における法人税額二、一四五万七、〇〇〇円(別紙二の1脱税額計算書のとおり)を免れ
第二 平成元年五月一日から同二年四月三〇日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が一億二、〇一七万七、七三二円(別紙一の2修正損益計算書のとおり)であったのにかかわらず、同二年六月二九日、前記江東東税務署において、同税務署長に対し、その欠損金額が一四二万九、五七八円で、納付すべき法人税額はない旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により、被告会社の右事業年度における正規の法人税額四、七一七万六、三〇〇円(別紙二の2脱税額計算書のとおり)を免れ
たものである。
(証拠の標目)
判示全事実につき
一 被告人中村良久の当公判廷における供述
一 被告人中村良久の検察官に対する各供述調書
一 物江ヒサ子の検察官に対する各供述調書
一 大蔵事務官作成の売上高調査書(検甲一)
一 大蔵事務官作成の材料仕入高調査書(検甲二)
一 大蔵事務官作成の賃金調査書(検甲三)
一 大蔵事務官作成の賞与調査書(検甲四)
一 大蔵事務官作成の雑給調査書(検甲五)
一 大蔵事務官作成の賄費調査書(検甲六)
一 大蔵事務官作成の厚生費調査書(検甲七)
一 大蔵事務官作成の外注加工費調査書(検甲八)
一 大蔵事務官作成の車両関連費調査書(検甲九)
一 大蔵事務官作成の賃借料調査書(検甲一三)
一 大蔵事務官作成の広告宣伝費調査書(検甲一四)
一 大蔵事務官作成の租税公課調査書(検甲二〇)
一 大蔵事務官作成の接待交際費調査書(検甲二一)
一 大蔵事務官作成の雑費調査書(検甲二六)
一 大蔵事務官作成の受取利息割引料調査書(検甲二七)
一 大蔵事務官作成の有価証券利息調査書(検甲二八)
一 大蔵事務官作成の雑収入調査書(検甲二九)
一 大蔵事務官作成の雑損失調査書(検甲三一)
一 大蔵事務官作成の事業税認定損調査書(検甲三四)
一 大蔵事務官作成の損金の額に算入した道府県民税利子割調査書(検甲三七)
一 大蔵事務官作成の領置てん末書(検甲四五)
一 登記官作成の履歴事項全部証明書(検乙六)
判示第一の事実につき
一 大蔵事務官作成のリース料調査書(検甲一〇)
一 大蔵事務官作成の減価償却費調査書(検甲一一)
一 大蔵事務官作成の修繕費調査書(検甲一二)
一 大蔵事務官作成の役員報酬調査書(検甲一六)
一 大蔵事務官作成の減価償却費調査書(検一七)
一 大蔵事務官作成の通信交通費調査書(検甲一八)
一 大蔵事務官作成の水道光熱費調査書(検甲一九)
一 大蔵事務官作成の保険料調査書(検甲二二)
一 大蔵事務官作成の備品消耗品費調査書(検甲二三)
一 大蔵事務官作成の管理諸費調査書(検甲二四)
一 大蔵事務官作成の会議費調査書(検甲二五)
一 大蔵事務官作成の支払利息割引料調査書(検甲三〇)
一 大蔵事務官作成の法人税等充当額調査書(検甲三三)
一 大蔵事務官作成の損金に算入した法人税調査書(検甲三五)
一 大蔵事務官作成の損金の額に算入した道府県民税調査書(検甲三六)
一 大蔵事務官作成の損金の額に算入した納税充当金調査書(検甲三八)
一 大蔵事務官作成の損金の額に算入した附帯税及び過怠税調査書(検甲三九)
判示第二の事実につき
一 大蔵事務官作成の貸倒引当金繰入調査書(検甲一五)
一 大蔵事務官作成の賞与引当金戻入調査書(検甲三二)
一 大蔵事務官作成の申告欠損金調査書(検甲四〇)
一 検察事務官作成の報告書(検甲四一)
一 押収してある法人税確定申告書(二・四期)一袋(平成四年押第二八一号の1)
(法令の適用)
被告人中村良久の判示各所為は、いずれも法人税法一五九条一項に、被告人中村良久の判示各所為は、いずれも被告会社の業務に関してなされたものであるから被告会社については、いずれも、同法一六四条一項、一五九条一項にそれぞれ該当するところ、被告人中村良久について各所定刑中いずれも懲役刑を選択し、被告会社についていずれも情状により同条二項を適用し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、被告人中村良久について同法四七条本文、一〇条により犯情の最も重い判示第一の罪の刑に法定の加重をし、被告会社について同法四八条二項により各罪所定の罰金を合算し、被告人中村良久について加重した刑期の、被告会社について合算した金額の各範囲内で被告人中村良久を懲役一〇月に、被告会社を罰金一、六〇〇万円にそれぞれ処し、被告人中村良久に対し、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判の確定した日から三年間右刑の執行を猶予する。
よって、主文のとおり判決する。
(求刑・被告会社に対し罰金二、〇〇〇万円、被告人中村良久に対し懲役一〇月)
(裁判官 伊藤正髙)
別紙一の1
修正損益計算書
自 昭和63年5月1日
至 平成元年4月30日
<省略>
別紙一の2
修正損益計算書
自 平成元年5月1日
至 平成2年4月30日
<省略>
別紙二の1
脱税額計算書
自 昭和63年5月1日
至 平成元年4月30日
<省略>
別紙二の2
脱税額計算書
自 平成元年5月1日
至 平成2年4月30日
<省略>