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東京地方裁判所 平成3年(行ウ)148号 判決 1992年9月28日

原告

角山正之

外四二六名

右訴訟代理人弁護士

浅井利一

高池勝彦

武川襄

三堀清

被告

文部大臣

鳩山邦夫

右指定代理人

青野洋士

外八名

主文

一  本件訴えをいずれも却下する。

二  訴訟費用は原告らの負担とする。

事実及び理由

第一原告らの請求の趣旨及び被告の本案前の答弁

一原告らの請求の趣旨

1(主位的請求) 被告がいずれも昭和六一年三月三一日にした別紙教科書目録第一の目録番号一から五まで及び七の各図書に関する教科用図書の検定並びに被告が平成元年三月三一日にした同目録第一の目録番号六の図書に関する教科用図書の検定(ただし、別紙原告目録中番号一から七までのそれぞれの原告らに対応して、順次別紙教科書目録第一の目録番号一から七までの各図書に関するもの)が無効であることを確認する。

2(予備的請求) 右各教科用図書の検定(ただし、別紙原告目録中番号一から七までのそれぞれの原告らに対応して、順次別紙教科書目録第一の目録番号一から七までの各図書に関するもの)を取り消す。

二被告の本案前の答弁

主文同旨

第二事案の概要

一本件検定処分の存在

被告は、別紙教科書目録第一の目録番号一から五まで及び七の中学校用の各社会科用教科用図書についてはいずれも昭和六一年三月三一日に、同目録の目録番号六の中学校用の社会科用教科用図書(以下、これらの各教科用図書を「本件教科書」という。)については平成元年三月三一日に、それぞれ学校教育法四〇条及び二一条一項の規定による検定(以下「本件検定」という。)を行った。

本件教科書の歴史に関する記述の中には、いわゆる南京虐殺事件に関する別紙教科書目録第二の「指摘部分の記述」欄に掲げた記載(その目録番号は、別紙教科書目録第一の各教科用図書の目録番号に対応するものである。以下、これらの記述を「本件記述」という。)が含まれている。

二原告らの主張

原告らは、本訴において、いわゆる南京虐殺事件は事実無根であり、本件検定にはいずれも重大かつ明白な違法があると主張して、前記のとおり、主位的にその無効確認を、予備的にその取消しを求めているが、その主張の要旨は次のとおりである。

1  本件教科書の検定の基準となった義務教育諸学校教科用図書検定基準(昭和五二年文部省告示第一八三号、平成元年文部省告示第四三号により廃止、以下「検定基準」という。)によれば、社会科用教科書の検定においては、その図書の内容について、その取扱いが公正であること(取扱い方の公正)との基本条件に加えて、全体の扱いが調和がとれていて特定の事項を特別に強調しすぎているところがないこと(全体の調和)、誤りや不正確なところがないこと(正確性)、一面的な見解だけを十分な配慮なく取り上げていたり、未確定な時事的事象について断定的に記述していたりすることのないこと(非偏向性)等の項目に照らして、適切であるかどうかを審査すべきものとされていた。

2  本件教科書の本件記述は、概ね、日本軍が昭和一二年に当時の中華民国の首都南京を占領した際、婦女子や子供を含む多数の中国人を殺害し、これにより国際的非難を浴びたが、終戦まで国民には事件が知らされなかったというものである。

しかし、右のいわゆる南京虐殺事件については、極東軍事裁判における事実認定を基礎としてこれを実在の事実であるとする説を展開する者がある一方で、今日知り得る当時の客観的事実からしてこれを真実とする立場は矛盾に満ちているとする多くの研究成果が発表されており、むしろ研究者の間では、右のような虐殺の事実は存在しなかったとするのが通説的立場といってよい状況にある。

それにもかかわらず、本件教科書の本件記述は、この事件が虚構であるとする説を全く無視し、一方的に右事件が実在したとする等の不正確な内容のものとなっており、前記の検定基準の「全体の調和」、「正確性」及び「非偏向性」の各条件に照らして不適切なものであるばかりでなく、「取扱いの公正」の基本条件をも全く欠くものというべきである。

したがって、本件検定は、いずれも単に違法なものであるのみならず、明白かつ重大な瑕疵のある無効なものといわなければならない。

3  原告らは、平成三年四月五日以降に中学校に入学した未成年の子供とその親であり、右の子供である原告らは、別紙原告目録中番号一から七までにそれぞれ対応して、順次別紙教科書目録第一の目録番号一から七までの本件教科書によって社会科の授業を受けるべき立場にある。

ところが、右のような検定基準に適合しない、教科書としておよそ不適切な本件教科書を使用した授業を受けることによって、子供である原告らは、憲法一三条、二六条、教育基本法一条ないし三条、学校教育法一八条二号、三六条一号、四二条一号、四〇条及び二一条によって保障された、自ら正しい事実を学習する権利、正しく偏りのない教育を求める権利又は虚偽の事実を教育されることを拒否する権利を侵害されることになり、ひいては憲法一九条により保障された思想・信条の自由を侵害される。

また、親である原告らも、右各条(憲法一九条を除く。)によって保障された子供を教育する権利、自らの子供の教育内容及び方法を決定する権利を侵害されることになる。

さらに、子供は、とりわけ義務教育においては就学を義務付けられ、検定を経た教科書の使用を義務付けられているから、原告らは、教科書検定が適切になされることにつき、単なる反射的利益ではなく法律上保護された利益を有しているものであり、本件検定によってこの利益を侵害されることとなる。

したがって、原告らは、いずれも本件検定の無効確認又は取消しを求めるについて法律上の利益を有するものというべきである。

4  なお、本件検定は、前記のとおり昭和六一年三月三一日又は平成元年三月三一日に行われたものであるが、原告らにとっては、本件教科書が子供である原告らに配付されるまでその内容を確認する機会が全くなかったのである。したがって、原告らが本件検定があったことを知ったのは、いずれも平成三年四月五日以降になってからのことであるから、同年七月四日に提起された本件検定の取消しを求める予備的請求に係る訴えは、出訴期間の遵守の点で欠けるところはないものというべきである。

三被告の本案前の主張

被告は、次のような理由から、本件訴えはいずれも不適法であると主張している。

1  憲法二六条一項の保障する教育を受ける権利は、国が同項の趣旨に則って現実に教育に関する立法を行うことにより初めて個々の国民にとって個別具体的な内容をもったものとなるのであって、そのような法律の規定を離れて、同項の規定から直接個々の国民の個別具体的な権利が発生するものではない。したがって、右憲法の規定を根拠としては、本件訴えにおける原告らの原告適格を基礎付けることはできないものというべきである。そして、教育基本法一条ないし三条、学校教育法一八条二号、三六条一号、四二条一号、四〇条及び二一条によっても、原告らがその主張する各具体的権利を有しているということはできない。

また、憲法一九条により保障された思想・信条の自由は、内心における自由をいうものであるところ、本件検定に係る教科書により教育を受けることによって、内心の自由が制約を受けるということはないから、本件検定により原告らが思想・信条の自由を侵害されるということもできない。

そして、我が国における教科書検定制度の目的は、教育の中立、公正、機会均等等の確保、教育内容の一定水準の維持等の公共の利益の実現を目的とするものであり、この検定処分に関する教科用図書検定規則(昭和五二年文部省令第三三号、平成元年文部省令第二〇号により全文改正、以下「検定規則」という。)や検定基準の定めも、専ら右のような公共の利益の実現を目的としたものである。すなわち、これらの規定は、原告らの主張する正しく偏りのない教育を受けるという利益を原告らの個別具体的な利益として保障する規定ではなく、したがって、これらの利益を根拠として本件訴えにおける原告らの原告適格を基礎付けることもできないものというべきである。

したがって、原告らは、本件検定の無効確認又は取消しを求めるについて法律上の利益を有しているものとはいえず、本件訴えはいずれも不適法である。

2  行政処分の取消訴訟は処分の日から一年以内に提起しなければならない(行政事件訴訟法一四条三項)。ところが、原告らの本件検定の取消しを求める予備的請求に係る訴えが右の期間経過後に提起されたものであることは明らかであり、また、原告らについて、同項ただし書にいう正当な理由が認められないことも明らかである。

したがって、原告らの本件検定の取消しを求める訴えは、いずれも出訴期間経過後に提起されたものであり、この点からしても不適法である。

第三当裁判所の判断

一検定の無効確認又は取消しを求める原告適格の意義

原告らの本件検定の無効確認又は取消しを求める訴えが適法とされるためには、まず、原告らが本件検定の無効確認等を求めるについて法律上の利益を有する者であることが必要であり、そのためには、原告らが、本件検定によって自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され、又は必然的に侵害されるおそれのある者であることが必要というべきである。そして、右の法律上保護された利益とは、検定制度に係る行政法規が私人等権利主体の個人的利益を保護することを目的として検定権の行使に制約を課していることにより保障されている利益をいうものであって、それは、行政法規が他の目的、特に公益の実現を目的として検定権の行使に制約を課している結果たまたま一定の者が受けることとなるいわゆる反射的利益ないしは事実上の利益とは区別されるべきものである。

二子供である原告らについて

1  子供である原告らは、憲法一三条、二六条一項、教育基本法一条ないし三条、学校教育法一八条二号、三六条一号、四二条一号、四〇条及び二一条によって、自ら正しい事実を学習する権利、正しく偏りのない教育を求める権利及び虚偽の事実を教育されることを拒否する権利を有するほか、検定制度により法律上保護された利益を有しているところ、本件検定によって、この検定を経た教科書を使用して教育を受けることとなり、右の権利及び利益を侵害されると主張する。そこで、子供である原告らが右の各権利を有しているか否かについての判断はさておき、教科書検定制度に関する行政法規が、本件検定により原告らの主張する右各権利若しくは利益が侵害され、又は必然的に侵害されるおそれがあるものとして規定しているか否か、換言すれば、本件検定の法的効果として右原告らの各権利又は利益に変動をもたらすものとして規定しているか否か、教科書検定制度に関する行政法規が右原告らの主張する権利又は利益を保護することを目的として検定権の行使に制約を加えているものであるか否かについて検討することとする。

2 一般に、当該行政処分を定めた法規が、個々人の具体的権利又は利益に変動をもたらすものとして規定していると解し得るか否か、個々人の権利を保護し、あるいは不特定多数の利益を専ら一般的公益の中に吸収解消させるにとどめず、それが帰属する個々人の個別的利益としてもこれを保護すべきものとする趣旨を含むと解し得るか否かは、当該行政法規及びそれと目的を共通にする関連法規の関係規定によって形成される法体系の中において、当該処分の根拠規定が、当該処分を通して個々人の個別的権利又は利益をも保護すべきものとして位置付けられているとみることができるかどうかによって決せられるべきものである。

そこで考察するに、まず、教育の基本理念及び教育制度の根本を定めた教育基本法は、その一条において、教育の目的として、「教育は、人格の完成をめざし、平和的な国家及び社会の形成者として、真理と正義を愛し、個人の価値をたっとび、勤労と責任を重んじ、自主的精神に充ちた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない」と定めている。そして、この目的は、学校教育については学校教育法によって具体化されている。すなわち、同法は、その一七条において、小学校の目的として、「小学校は、心身の発達に応じて、初等普通教育を施すことを目的とする」と定め、また一八条二号においては、右の目的を実現するために達成すべき目標として、「郷土及び国家の現状と伝統について、正しい理解に導き、進んで国際協調の精神を養うこと」と定めており、さらに、三五条において、中学校の目的として、「中学校は、小学校における教育の基礎の上に、心身の発達に応じて、中等普通教育を施すことを目的とする」と定め、三六条一号においては、右の目的を実現するために達成すべき目標として、「小学校における教育の目標をなお十分に達成して、国家及び社会の形成者として必要な資質を養うこと」と定めている。

中学校についての教科書検定制度は、学校教育法四〇条により準用される同法二一条を根拠としており、その具体的な基準は、同法八八条に基づき制定された検定規則、同規則三条に基づき告示された検定基準の各規定により定められているが、この制度は、右に挙げた目的及び目標の実現に資するためのものであることは明らかである。そして、検定基準は、社会科の必要条件として、検定に係る教科書の内容について、その取扱いが公正であること(取扱い方の公正)を基本条件として挙げ、これに加えて、全体の扱いが調和がとれていて特定の事項を特別に強調しすぎているところがないこと(全体の調和)、誤りや不正確なところがないこと(正確性)、一面的な見解だけを十分配慮なく取り上げていたり、未確定な時事的事象について断定的に記述していたりすることのないこと(非偏向性)等を規定し、これらに照らして当該教科書が適切であるかどうかを審査すべきものとしている。したがって、検定が適切になされることにより、当該教科書を使用して社会科の教育を受ける生徒は、公正で、偏りや誤りのない内容の教育を受け得る結果となるから、この意味において、教科書検定は、生徒個人の育成の趣旨も含んだ意味での前記の目標や目的に資するため、当該教科書により教育を受ける生徒が公正で、偏りや誤りにない内容の教育を受け得るようにすることをも目的として、その検定という行政権の行使に制約を加えている制度であるということができる。

しかし、検定制度は、教科書に学校教育において使用される資格を賦与する制度であるにすぎず、関係法令等の中には、検定が個々の生徒の権利又は利益に変動をもたらす旨の明文の規定は見当たらない。加うるに、検定制度は、個々の生徒の有する能力の違いや、教育環境を基礎付ける諸条件等に対応して、公正で、偏りや誤りのない内容の教育を受けさせることを個別的に図る仕組みにはなっておらず、検定を経た教科書を使用して教育を受けることになる者は、全国の同学年の生徒全員という極めて広範囲の者となっている。このことからすれば、右に判示した、検定制度により、教育を受ける生徒が公正で、偏りや誤りのない内容の教育を受け得るというのは、生徒である各人が他の生徒と全く同様に共通して有する抽象的、平均的、一般的な利益というべきである。さらに、教科書検定制度に係る諸法令には、当該教科書により教育を受ける個々の生徒に対する聴問手続や、個々の生徒からの不服申立て手続等、生徒個人の権利又は利益を保障する手続は何ら規定されていない。

以上からすれば、教科書検定制度によって生徒について法的に保護されているのは、集団として捉えた不特定多数の生徒の抽象的利益であり、換言すれば、それは教育の中立・公正という公益の生徒側に対する投影であって、究極においては公益の中に吸収解消されるものである。つまり、それは、教育を受ける個々の生徒の具体的権利又は利益であるとはいい難いものというべきであり、検定処分の根拠規定は、関係規定により形成される法体系の中において、当該処分を通して個々人の個別的権利又は利益をも保護すべきものとして位置づけられているとみることはできない。したがって、教科書検定制度に関する行政法規が、本件検定の法的効果として、子供である原告らの主張する原告らの各権利又は利益に変動をもたらすものとして規定しているということはできず、右原告らの主張する権利又は利益を保護することを目的として検定権の行使に制約を加えているものということもできない。

3 そうすると、仮に本件検定が違法になされたからといって、子供である原告らが具体的権利を侵害され、又は必然的に侵害されるおそれがあるということにはならないし、同原告らが公正で偏りや誤りのない内容の教育を受けるという利益を逸するとしても、それは学校教育法の目的である前記のような公益の保護の結果として生ずる反射的な利益ないし事実上の利益というべきであって、本件検定によって同原告らが法律上保護された利益を侵害され、又は必然的に侵害されるおそれがあるともいえないものというベきである。

4 なお、子供である原告らは、本件検定を経た教科書を使用して教育を受けことにより、思想・信条の自由を侵害されるとも主張するけれども、憲法一九条にいう思想・信条の自由は内心における自由をいうものであるところ、本件教科書に基づいて教育を受けたからといって、内心における自由が制約を受けるとは到底いえないから、原告らのこの主張も失当である。

5  したがって、子供である原告らは、本件検定の無効確認又は取消しを求めるについて法律上の利益を有しているものとはいえないと解さざるを得ない。

三親である原告らについて

1  親である原告らも、前掲記の憲法(一九条を除く。)、教育基本法及び学校教育法の各条項によって、子供を教育する権利、自らの子供の教育内容及び方法を決定する権利が保障されているほか、検定制度により法律上保護された利益も有しており、本件検定によってこの権利又は利益を侵害されることになると主張する。

2 しかし、教科書検定制度の趣旨は前記二2において判示したとおりであって、右制度は、検定済の教科書を使用して教育を受ける子供の親についても、その個人の具体的権利又は利益を保護することを目的として検定権の行使に制約を加えているものとはいえない。したがって、教科書検定が生徒の親個人の具体的権利に変動をもたらすとは解されないし、生徒の親が何らかの利益を逸するとしても、それは反射的な利益ないし事実上の利益というべきであって、仮に本件検定が違法になされたとしても、親である原告らが具体的権利又は、法律上保護された利益を侵害され、又はそのおそれがあるということにはならないというべきである。

3  したがって、親である原告らも、本件検定の無効確認又は取消しを求めるについて法律上の利益を有しているものということはできない。

四結論

以上によれば、原告らは、本件各請求についていずれも原告適格を有しないこととなり、本件訴えはいずれも不適法ということになる。

(裁判長裁判官秋山壽延 裁判官原啓一郎 裁判官近田正晴)

別紙

教科書目録 第一

目録番号

図書番号

図書名

出版会社

改定検定日

検定日

二東書

歴史 七三六

新訂

新しい社会 歴史

東京書籍株式会社

平成元年

三月三一日

昭和六一年三月三一日

三大書

歴史 七三七

中学社会

歴史的分野

大阪書籍株式会社

平成元年

三月三一日

昭和六一年三月三一日

一日書

歴史 七三五

中学社会

歴史的分野

日本書籍株式会社

平成元年

三月三一日

昭和六一年三月三一日

一七教出

歴史 七四〇

改訂

中学社会 歴史

教育出版株式会社

平成元年

三月三一日

昭和六一年三月三一日

五中教

歴史 七三八

中学生の社会科

日本の歩みと世界 歴史

中教出版株式会社

平成元年

三月三一日

昭和六一年三月三一日

四六帝国

歴史 七四二

社会科中学新歴史

日本のあゆみと世界の動き 最新版

株式会社帝国書院

平成元年三月三一日

三五清水

歴史 七四一

日本の歴史と世界 最新版

株式会社清水書院

平成元年

三月三一日

昭和六一年三月三一日

別紙

教科書目録 第二

目録番号

指摘部分の記述

指摘箇所

このとき、日本軍は、婦女子や子供をふくむ、おびただしい数の中国人を殺害し、ナンキン大虐殺として諸外国から非難を浴びた。しかし、日本のいっぱんの国民は、その事実を知らされなかった。

二七九―二

その死者の数は、数週間の間に、市街地の内外で、婦女子・子供をふくむいっぱん市民で七―八万、武器を捨てた兵士をふくめると、二〇万にもおよぶといわれる。

二七九―脚注

日本軍は、(中略)国民政府の首都南京では、占領後のわずか数週間に、捕虜のほか、婦女や子供をふくむ多数の民衆を虐殺しました。

二六〇―一一

日本軍は、南京の住民七―八万人、武器をすてた中国軍兵士をふくめると、二〇万人ともいわれる人々を殺害し、南京虐殺事件として諸外国から非難されました。

二六〇―脚注

日本軍は、(中略)首都ナンキン(南京)を占領し、各地で多くの中国民衆の生命をうばい、その生活を破壊した。

二五八―一二

また、ナンキン占領前後から翌年二月半ばまでに、女性・子ども・ほりょをふくむ少なくとも十数万人の中国人を虐殺したといわれる。こうした事実を日本国民は知らされなかった。

二五八―脚注

日本軍は、(中略)首都ナンキン(南京)を占領し、多数の中国国民の生命をうばい、大きな損害をあたえた。ナンキン占領のさいには、日本軍は、武器をすてた兵士や、子ども、婦女をふくむ住民を大量に殺害し、略奪や暴行を行った(ナンキン虐殺事件)。

二六六―一七

この事件の犠牲者は二〇万人といわれているが、中国では戦死者とあわせ三〇万人以上としている。こうした日本軍の行為は、世界から強い非難をあびたが、一般の日本国民は、敗戦後になってはじめてこの事件を知った。

二六八―脚注

このとき多数の中国民衆が殺されたが(南京大虐殺事件)、日本の国民には知らされなかった。

二四九―一三

この事件での犠牲者の数は、捕虜や一般市民をあわせて一〇数万人と推測されている。

二四九―脚注

南京では女性や子供をふくむ多数の中国人を殺害し、諸外国から「日本軍の蛮行」と非難されました(南京大虐殺)。

二四八―一二

ナンキン占領に際して武器を捨てた兵士や女性・子どもまでふくめた民衆を殺害した。このナンキン虐殺事件で十数万人以上もが殺されたと伝えられ、諸外国も強い非難を行った。

二七七―一

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