東京地方裁判所 平成5年(ワ)11168号 判決 1995年7月18日
原告
越智美千江
被告
井之上靖子
主文
一 被告は、原告に対し、金一三二万七七二二円及びこれに対する平成三年五月一〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
二 原告のその余の請求を棄却する。
三 訴訟費用は、これを五分し、その一を被告の、その余を原告の各負担とする。
四 この判決は、第一項に限り、仮に執行することができる。
事実及び理由
第一原告の請求
一 被告は、原告に対し金七〇九万円七二八〇円及びこれに対する平成三年五月一〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
二 訴訟費用の被告の負担及び仮執行宣言
第二事案の概要
一 本件は、山手通りと一方通行路との交差点で、山手通りの横断歩道上を自転車に乗つて横断しようとした女性が一方通行路から左折してきた普通乗用自動車と接触したことから、同女性がその人損について賠償を求めた事案である。
二 争いのない事実
1 本件交通事故の発生
事故の日時 平成三年五月一〇日午後一時二〇分ころ
事故の場所 東京都渋谷区初台一丁目四番地先交差点
加害者 被告(加害車両を運転)
加害車両 普通乗用自動車(品川五三と七六〇)
被害者 原告。足踏自転車を運転
事故の態様 前示交差点は、山手通りと一方通行路との交差点であるところ、原告が山手通りの歩道上を自転車に乗つて中野坂上方面から目黒方面に向けて進行し、同交差点にさしかかつたところ、一方通行路から左折してきた加害車両と接触した。事故の詳細については、争いがある。
2 責任原因
被告は、加害車両の保有者である。
3 損害の填補(一部)
原告は、自賠責保険から少なくとも九万一〇六一円の填補を受けた。
三 本件の争点
本件の争点は、本件事故により受けた原告の傷害の程度及び損害の額である。
1 原告
原告は、本件事故の結果、左足を地面につけて踏ん張つたときに身体が捩じれ、このため、頸椎捻挫、腰椎捻挫、股関節傷害、左右顎関節症を含む頸肩腕症候群の傷害を受け、次のとおり各病院に通院した。
東京医科大学病院 平成三年五月一〇日から七月二日まで(実日数一〇日)
JR東京総合病院 同年七月一日から九月一〇日まで(実日数八日)
日本歯科大学歯学部附属病院 平成三年五月一七日から平成四年七月二七日まで(実日数三五日)
しかし、股関節障害及び同障害が起因する左右顎関節症等の後遺障害(後遺障害別等級表一二級一二号該当)を残し、このため、次の損害が生じた。
(1) 治療関係費
<1> 治療費 八万三一三五円
<2> 通院交通費 三万七一七〇円
(2) 休業損害 八三三万九七九一円
原告は、パリのデザイン学校等を卒業後、昭和五五年ころからスタイリストやデザイナーとして稼働し、年間四〇〇万三一〇〇円の収入を得ていたところ、昭和六二年六月二七日に他の交通事故に遇い、これを中断していた。本件事故は、前の事故による傷害の治癒後間もなくの事故であり、本件事故のため、二年一月休業したので、右年収を基礎に算定。
(3) 逸失利益 二一七万〇〇〇〇円
原告は、本件事故による後遺障害の結果労働能力が一四パーセント喪失したところ、これによる逸失利益は、二一七万円が相当である。
(4) 慰謝料 三四六万四六六六円
入通院(傷害)慰謝料として一〇六万四六六六円、後遺症慰謝料として二四〇万円が相当である。
(5) 物損(自転車) 三万〇〇〇〇円
(6) 弁護士費用 一四〇万三三七〇円
これらの合計金一五四三万七〇七一円のうち、七〇九万七二八〇円を請求する。
2 被告
本件事故は、軽度の接触事故であつて、原告主張の損害は生じない。特に、原告には左右顎関節症の既往症があり、本件事故が原因で左右顎関節症となつたものではない。また、後遺障害が発生していない。この点、原告は、診療記録の送付に同意せず、被告側の反証を妨げていることを考慮すべきである。
仮に、何らかの後遺障害があるとしても、前の事故に基づくもの若しくは心因的なもの又は原告が整形外科による適切な治療を受けないことによるものであり、本件事故と因果関係を欠く。
したがつて、原告の損害は、次に限られる。
(1) 治療関係費
<1> 治療費 六万二一六二円
平成三年五月一〇日から九月一〇日までの実日数二〇日分
被告は、それ以外に二万八八九九円を支払つているが因果関係を欠く。
<2> 通院交通費等 一万六二三八円
(2) 休業損害 無職 なし
(3) 逸失利益 後遺障害はない なし
(4) 慰謝料 二四万〇〇〇〇円
入通院(傷害)慰謝料として。後遺症慰謝料はなし。
右合計は三一万八四〇〇円であるが、一割の過失相殺と既払金一〇万七二九九円を控除すると、残額は一七万九二六一円である。
第三争点に対する判断
一 本件事故の態様について
甲一の1ないし5、六に前示争いのない事実を総合すれば、次の事実が認められる。
(1) 本件交差点は、幹線道路である山手通りと一方通行路との交差点である。一方通行路は、山手通りに向かつて下り坂となり、本件交差点手前に一時停止の標識があり、また、道路上には「とまれ」の表示がされている。山手通りの歩道は、本件交差点上は、横断歩道により連続している。一方通行路から中野坂上方面に向かい山手通りを左折するに当たつては、大谷石のブロツクのため視界が遮られ、山手通りの横断歩道上の交通状態を予め知ることができない。
(2) 原告は、山手通りの横断歩道上を中野坂上方面から目黒方面に向かつて自転車に乗つて横断しようとしたところ、一方通行路から左側寄り(原告寄り)の進路をとつて左折してきた加害車両と衝突した。衝突の態様は、原告の自転車の前輪が加害車両の左前輪の後部タイヤハウスに嵌まり込み、このため、原告の自転車が加害車両が停止するまで数十センチメートル程左側に斜めになりながら引きずられたというものである。原告は、衝突前に急ブレーキをかけ、また、自転車が引きずられる間、左足を地面につけて踏ん張つて身体を支えたため、左側大腿部に力が加わつた。なお、加害車両は、停車後、自転車を取り除くために後進したが、そのときに自転車の前輪を轢き、これらの衝撃のため、前輪のスポークが数本曲がつた。
二 原告の傷害の状況
1 甲九ないし一七、二〇、二三、乙二によれば、次の事実が認められる。
(1) 原告は、本件事故の後、頸椎捻挫、腰椎捻挫の傷病名で、東京医科大学病院の整形外科及び脳神経外科に、平成三年五月一〇日から七月二日まで通院したが(実日数一〇日)、検査所見によれば特記すべき異常はないと診断された。
また、同一の傷病名で、JR東京総合病院の整形外科に同年七月一日から九月一〇日まで通院したところ(実日数八日)、自覚症状としては、舌が喉に落ち込む感じ、頭痛、顔が捩じれる、腰が痛い等の不定愁訴があつたが、頸椎及び腰椎のX線撮影上著変が認められず、左肩部に圧痛、ラセグテスト九〇度で下肢に痛みを感じるとの所見の他は、検査所見も特記すべき異常はなかつた。理学療法、外用投与、腰椎体操の指導にもかかわらず、自覚症状に変化がみられず、また、診察時及び待合室で常に立つて足踏みをしたり、顎を開けたり歯をガチガチさせる等の異常な行動と思われる状態が認められたため、同病院の松本悟医師は、同日症状固定とし、自覚症状の改善がないことから、後遺障害は「あり」とする後遺障害診断書を作成した。
(2) 原告は、本件事故前にも昭和六二年六月二七日に交通事故に遇い、このための治療の目的で平成元年三月二〇日から頸肩腕症候群(特に、左右顎関節症)の傷病名で日本歯科大学歯学部附属病院において治療を受けていたが、本件事故の後、平成三年五月一七日から平成四年七月二七日まで同病院に通院した(実日数三五日)。五月一七日の通院時には、頭位の不安定が著しく、顆頭の運動制限より開口障害が認められ、同病院の丸茂義二医師は、本件事故直前の平成三年四月一六日には前の事故による症状は臨床的にほぼ消失し治癒したものと思われていたのに、顎運動障害及び顎口腔系の疼痛が以前より悪化したと判断し、床副子の使用、咬合調整等による治療を行つた。しかし、原告は、硬い物の摂取が不可能であり、下顎の不安定に由来する発音障害を残したことから、同医師は、これらの後遺障害を残して平成四年七月二七日に症状が固定したと診断をした。
(3) 原告は、平成五年一一月二九日に雙立病院で脊椎のX線撮影をしたところ、脊柱側弯症であることが指摘された。
2 甲二、三、五、七、八、一八、二一(各枝番を含む)、証人丸茂義二によれば、次の事実が認められる。
(1) 顎関節症は、頸肩腕症候群に内包される一つの範囲の症状であり、開口障害、関節雑音、疼痛、咬合違和感の出現の症候が見られ、歯科領域では、床副子の使用、咬合調整などの保存的治療が行われる。歯科医である前示丸茂医師は、三四〇〇例に上る症例の実見や各種文献の調査の結果による一般論として、顎関節症となる原因は複数考えられ、このうちには、転倒や交通事故等による衝撃、姿勢の悪さに基づく骨盤内部の接合面の位置的な異常、股関節脱臼に起因するものも相当あり、これらの場合は、その原因となつた部分の治療をすることにより顎関節症が消失することも多いとの見解を有している。このため、同医師は、顎関節症の治療に当たつては、患者の椎骨の異常配列や腰部骨盤の歪曲性偏位の存否を確認し、頸部の冷却、歩行方法や座法等の改善を行う等をしてきた。
(2) 原告が平成元年三月二〇日に従前の交通事故による顎関節症の症状を主訴として日本歯科大学歯学部附属病院に来院した時は、顎部のみならず肩部にも強い症状が見られ、同医師は、原告が頸肩腕症候群となつていることを認めた。そして、片足で立つことができない等、全身の状況がひどいため、下半身の強化と正常化に重点を置き、原告に対し歩行方法や座法等の改善等を指導し、顎関節症状の改善を図つたところ、平成三年四月一六日には、頸椎の配列も良く、自覚症状も殆ど消失したことから、同医師は、原告が、復職が可能の状態まで改善したと判断した。
しかし、本件事故の後の同年五月一七日の診察において、同医師は、原告に以前以上の症状が発現し、歩行を中心とした運動系に破壊が著しく、身体の平衡が損なわれ、顎関節の位置的な変動等が見られると診断し、このため、同医師は相当の落胆をした。なお、左足を後ろに引つ張られるようにして捩じれたときは、股関節障害の結果顎関節症となるのと同様の状態となることから、同医師は、本件事故により原告の症状が発生したものと理解することも可能であるとの意見である。同医師の診断によれば、同年七月一〇日の原告の頸部X線撮影上、頸椎の配列や回転性の異常が認められ、これに基づく原告の顎関節症状は当然の結果であると評価し得るとする。また、平成五年四月二三日の左顎のX線撮影によれば、顎関節部に変形が生じていることが判明するとし、これが下顎部痛の原因となつていると判断している。
右認定に反する証拠はない。なお、丸茂医師は、平成元年四月五日の頸部X線撮影の結果については、甲二一では異常がないとし、当法廷における供述では、主尋問において、第二、第三頸椎にS状湾曲があり、これが顎関節症の原因となつているとするが、反対尋問では、X線撮影上異常がないとする。
3 甲二ないし五(各枝番を含む)、乙二によれば、前示松本医師は、平成三年七月一日撮影のX線撮影上、原告の開口が左右不対称であること及び平成四年六月三〇日の胸部X線撮影上、原告の胸椎に姿勢によると思われる側弯が認められることを除き、X線撮影上、いずれも原告に著変はないとする。そして、原告に性格テストを実施した結果、長期化した頸椎捻挫患者に多く見られる循環性気質であることが判明したことや、他覚的所見及び解剖学的所見と一致しない不定愁訴があり、器質的傷害に強くこだわり、また、心理的影響に左右されやすいことから、原告の症状は、心因性によると思われると判断している。
なお、平成五年一一月二九日に雙立病院で脊椎のX線撮影につき、松本医師は、側弯症は否定的であると判断しているが、丸茂医師は、側弯は認められるが、側弯には各種の原因が考えられ、どのような原因による側弯かは特定することができないとする。
4 以上の各認定事実に基づき、原告の本件事故による傷害の程度等を検討することとするが、前示各病院の診療録については、原告が取寄せに同意しないため、本件の証拠とすることができず、このため、被告は、特に、丸茂証人の供述につき、客観的な資料に乏しく信用性を担保しえないとする。この点も斟酌して検討する。
(1) まず、前認定の事実によれば、本件事故と、原告が頸椎捻挫、腰椎捻挫の傷病名で平成三年五月一〇日から九月一〇日まで東京医科大学病院(実日数一〇日)及びJR東京総合病院(実日数八日)に通院したこととの間に因果関係のあることは肯認することができる。この点は、被告も特に争わない。
(2) 次に、前認定の事実によれば、本件事故後においても原告に左右顎関節症が存在すること自体は明らかであるところ、本件事故との因果関係については、前示丸茂医師の意見によれば肯定される。同意見のうち、一般論については、これを否定する証拠もなく、また、論理的に矛盾するものでもないから、採用することができる。原告の症状に関する部分については、被告の右意見もあるが、同医師の診断書(甲九、一〇、一二ないし一四)と矛盾するものではない。そして、松本医師もこれを明白には否定しておらず、かつ、同医師は、平成三年四月一六日の顔面のX線撮影の所見上顎関節に著名な変化は認められないとしつつ、平成三年七月一日撮影のX線撮影上、原告の開口が左右不対称であることを認めているのであつて(乙二)、このように、事故の前後において原告の顔面に変化があることが客観的に認められることから、左右顎関節症と本件事故との間の因果関係も認めるのが相当である。
(3) 左右顎関節症による後遺障害について検討すると、丸茂医師は、原告が硬い物の摂取が不可能であることや、下顎の不安定に由来する発音障害を残して平成四年七月二七日に症状が固定したと診断しているところ、これを否定すべき証拠はない。もつとも、原告の拒否による診療録提出不能のため、その後の状況や後遺障害の程度を客観的に知る証拠がないことから、後遺障害別等級表に記載された障害の程度にまで達していると認めることができず、したがつて、労働能力喪失も認められない。なお、原告は、顎関節症以外に股関節障害を残したと主張するところ、これを認めるに足りる証拠はない。
(4) ところで、松本医師によれば、原告には異常な行動と思われる症状があつたり、他覚的所見等と一致しない不定愁訴があり、また、心理的影響に左右されやすいのであつて、原告の症状は、心因性にも起因することが明らかである(丸茂医師は、甲二一において、同医師の施す理学療法により原告は回復したことを理由にこの点を否定するが、同医師による治療内容自体が証拠上明確でなく、右認定の妨げとはならない)。また、丸茂医師は、前の事故による症状が二割程度まで影響している可能性があることを認めている(丸茂証言)。さらに、顎関節症の治療に当たつては、整形外科医による適切な治療が必要であるにもかかわらず(甲一〇)、原告は、これを一切行つていないどころか、松本医師による治療に疑いをもつてこれを拒否しているのであり(甲一九)、原告の治療態度が治癒を妨げているものと考えられる。そして、前示の本件事故の態様によれば、原告は、転倒したわけではなく、左足で身体を支えたときに腰部が捩じれたに過ぎないものであり、事故による衝撃はさほど加えられたものではないことに鑑みれば、顎関節症に起因する損害に限つては、これら原告の心因的素因、前の事故による影響、原告の治療態度などを総合すると、原告に生じたものを被告に全額負担させるのは著しく不当というべきであるから、民法七二二条二項の規定を類推適用して、同損害のうち四割を控除して、六割を被告に負担させることとする。
三 原告の損害額
1 治療費関係 九万五七三九円
(1) 治療費
被告は、治療費として九万一〇六一円(このうち二万八八九九円については日本歯科大学歯学部附属病院分)を支払つたことを自認しているから、六万二一六二円及び二万八八九九円の六割である一万七三三九円の合計七万九五〇一円について認められる。その余の分はこれを認めるに足りる証拠はない。
(2) 通院交通費等
被告は、原告が通院交通費等のため通院費八八四〇円、雑費七三九八円の合計一万六二三八円を要したことを自認しているところ、これを超えて通院交通費等を要したことを認めるに足りる証拠はない。
2 休業損害 二五万三〇四四円
原告は、昭和五五年ころからスタイリストやデザイナーとして年間四〇〇万三一〇〇円の収入を得ていたと主張するが、仮にその事実が認められたとしても、昭和六二年六月二七日に前の交通事故に遇つて以来本件事故に遇うまでは無職であつたことを自認しているのであり、また、前の交通事故から相当月日も経つていることに鑑み、これを基礎として休業損害を算定することができない。もつとも、丸茂医師は、本件事故直前の平成三年四月一六日には原告が就労可能の程度まで右の事故に起因する障害を回復したと判断しており、また、原告も就職情報誌を購入し、就職活動をしていた矢先に本件事故に遇つたのであり(甲一九により認める。)、就労意欲も窺うことができることから、平成三年度女子全年齢の賃金センサスによる年収二九六万〇三〇〇円の八割である二三六万八二四〇円を基礎として、休業損害を認めるのが相当である。
ところで、前示のとおり関係病院の診療録が証拠に出されないため、本件事故によりどの程度就業が不能であるかを的確に判断する証拠がない。そこで、前示各病院の実通院日数を基本にして、休業損害を算定するほかはなく、次の計算どおり、休業損害は、二五万三〇四四円となる。
236万8240÷365×(18+35×0.6)=25万3044
3 逸失利益 なし
前認定判断のとおり労働能力喪失が認められないから、逸失利益も認められない。
4 慰謝料 九五万円
前示の症状固定までの治療の経過、後遺障害の程度、内容、左右顎関節症に起因する損害については四割を控除すべきこと、その他本件に顕れた諸般の事情を斟酌すると、原告の入院(傷害)慰謝料として六〇万円を、また、後遺症慰謝料として三五万円を認めるのが相当である。
5 物損 なし
前認定の事実によれば、原告の自転車は、本件事故により前輪部分のみ破損したのであるが、その修理費用を認めるに足りる証拠はない。
6 以上合計は、一二九万八七八三円である。
四 損害の填補等
被告は、過失相殺を主張するが、前示の事故による態様では、明らかに原告にも過失があつたとは認め難い。そして、原告が自賠責保険から少なくとも九万一〇六一円の填補を受けたことは当事者に争いがないから(被告は、一〇万七二九九円填補したと主張するが、右九万一〇六一円を超えて填補があつたことを認めるに足りる証拠はない。)、右填補後の原告の損害額は、一二〇万七七二二円となる。
五 弁護士費用
本件の事案の内容、審理経過及び認容額等の諸事情に鑑み、原告の本件訴訟追行に要した弁護士費用は、金一二万円をもつて相当と認める。
第四結論
以上の次第であるから、原告の本件請求は、被告に対し、一三二万七七二二円及びこれに対する本件事故の日である平成三年五月一〇日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める限度で理由があるが、その余の請求は理由がないから棄却すべきである。
(裁判官 南敏文)