東京地方裁判所 平成5年(ワ)1172号 判決
原告
甲野太郎(仮名)
右訴訟代理人弁護士
荒木昭彦
同
川口和子
被告
国
右代表者法務大臣
中村正三郎
右指定代理人
田中芳樹
同
松崎研丈
被告
東京都
右代表者知
青島幸男
右指定代理人
林勝美
同
石澤泰彦
同
前田守彦
同
大竹昌志
事実及び理由
第三 争点に対する判断
一 争点1(一)について
1 本件第一ないし第八捜索差押許可状の請求の経緯について
(一) 本件第一捜索差押許可状の請求について
前記第二、一1の争いのない事実等、〔証拠略〕によれば、次の事実が認められる。
(1) 警視庁高島平署では、平成元年四月ころから、東京都板橋区高島平一丁目を重点とするアパート、マンション対策を実施したが、平成元年五月ころ、東京都板橋区高島平一丁目七八番一〇号所在日神パレス第二の六一一号室に居住している者について、外出や帰宅の時間が不規則であること、警察官が巡回連絡カードを書いてもらうために訪問した際、在宅の様子が窺えるのにもかかわらず、応対に出てこなかったことなどの不審情報があったため、調査したところ、調査開始直後の同年六月ころ、同室居住者について住民登録がされ、住民登録に基づいて居住者を調査した結果、原告であることが判明した。
(2) そこで、高島平署が福島県警察、警視庁本部等に対して、原告に関する問合わせをしたところ、原告は、昭和六〇年一〇月二〇日、千葉県成田市三里塚第一公園で開催された三里塚芝山連合空港反対同盟主催の「二期工事阻止、不法収用法弾劾東峰十字路裁判闘争勝利、勤労千葉支援一〇・二〇全国総決起集会」に参加した後のデモにおいて、警察官に対し投石した等として公務執行妨害罪、凶器準備集合罪で現行犯逮捕されていたこと、昭和六一年二月二五日、「中核」と記載のあるヘルメット、「国鉄分割民営化阻止中核派」と記載のあるゼッケンを着装し、当時の国鉄福島機関区入り口においてビラを配布していたこと、同年五月一日、福島市にある中核派の活動拠点である荒川マンション三〇三、三〇四号室(同室に通ずる踊り場等には鉄製の扉等が設置され、ベランダには有刺鉄線が張られていたほか、常時防衛員を配置し、ヘルメット姿で双眼鏡により周辺を見張って監視を行っており、反対派集団構成員等が容易に出入りすることができないように要塞化している。)について捜索差押えを受けた際、同所に在所していた立会人となっていたこと、同月八日、当時の国鉄福島駅東口周辺において、中核派が発行した「ロケット弾でサミット砲撃」と題するビラを通行人に配布した後、中核派専門車両に乗車し、右荒川マンションに入ったこと、昭和六二年一月一八日及び二二日、「二期工事実力阻止成田用水粉砕現地集会」に白ヘルメット(前部に「中核」、後部に「菱田決戦行動隊」と記載のあるもの)を着装し、参加していたこと、同年三月二八日、三里塚芝山連合空港反対同盟主催の「成田二期工事阻止三・二九総決起集会」に参加するためのレンタカーを借りに行くために中核派専用車両を運転し、レンタカー業者に立ち寄りレンタカーを借りた後、右荒川マンションに入ったこと、同年五月一七日、三里塚芝山連合空港反対同盟主催の「成田二期工事阻止五・一七全国決起集会」に中核派活動家と共に参加していたこと、同年九月四日、当時の国鉄福島駅東口周辺において「皇居をロケット弾攻撃、動労カクマル幹部嶋田誠を徹底せん滅」と題する革命軍軍報(中核派の非公然組織が発行するテロ、ゲリラ活動等の犯行声明等を記載するビラ)を通行人に配布していたことなどの活動歴があるとの回答が得られた。
(3) 高島平署には、原告がこのように中核派と密接な関連があるにも関わらず、昭和六三年ころから集会や街頭活動などの公然活動に全く姿を見せなくなっていたとの回答も得られたが、高島平署田中警部は、原告がこれまで機密性の高い中核派の活動拠点である荒川マンションに出入りし、同マンションの捜索の際に立会人になっていたり、中核派専用車両を運転するほか、革命軍軍報を配布するほどの中核派の枢要な立場の人間が急に公然活動から姿を消したことに不審を抱いた。中核派の枢要な立場にある原告が中核派を離脱することは考え難いこと、中核派の公然活動をしていた者は、テロ、ゲリラ活動を実行する非公然活動家になる(いわゆる「地下に潜る」)場合が多いことから、原告も非公然活動家になった可能性が高く、依然として中核派組織に属していると判断した。
(4) 高島平署がさらに捜査を進めたところ、原告は、前記日神パレス第二の六一一号室に住民登録した平成元年六月ころから、間もない同年一一月に目黒区上目黒〔番地略〕(原告宅)に住民票を移動し、転居したことが判明した。過去に摘発した中核派のアジトはその機密性の確保から早期に移転する場合が多いことから、高島平署田中警部は、原告の過去の活動歴から考えて、右の転居はアジトを移転させた可能性が高いものと判断した。
なお、高島平署は、平成元年六月ころから、原告に対する尾行等の捜査をしたが、原告が中核派構成員と接触するというような不審な点を確認することができなかったが、原告が中核派から離脱しているとの事情も見当たらなかった。
(5) 平成二年三月一四日午前一時ころ、本件第一被疑事件が発生したが、同事件について、中核派が機関誌「前進(第一四七三号)」(〔証拠略〕)及び「前進(第一四七四号)」(〔証拠略〕)において犯行を認めたこと、及び同派が過去に敢行したゲリラ事件と酷似していることなどから、同事件は同派の組織的、計画的犯行と認められた。
(6) 本件第一被疑事件の所轄署である警視庁赤坂署は、平成二年九月ころ、高島平署を含む警視庁管下各警察署に対して、同事件について、捜索差押えをすべき場所、人物があれば、捜索差押えを実施して証拠物を押収してもらいたいという旨の捜査の協力要請を行った。
(7) 高島平署田中警部は、右(1)ないし(6)の事実のほか、中核派は、極めて中央集権制の強い組織であり、構成員は全て上部機関の指示命令に従い活動することが義務づけられていること、中核派がテルミット内蔵の時限式発火装置を利用してゲリラ事件を敢行する場合には、中核派は、ゲリラ事件を直接実行する非公然部門の者のほか、これと一致協力して調査活動、武器の保管、連絡活動、情報提供、資金や物資の援助、アジトの設定、犯行後の逃走の方法についての調査、証拠隠滅等を組織の総力を挙げて取り組んでおり、多くの中核派の構成員やシンパが加担しているのが通常であり、過去の事例から見ても、中核派がゲリラ事件を敢行する場合には武器の製造、貯蔵、運搬などのため、アジト、活動拠点、シンパ宅等を使用することが明らかであり、これらの場所には武器等の他にも通信、指令、調査報告等多くの証拠物が存在した例が多いことなどの事情を総合して、田中警部は、原告宅及び原告の身体などには本件第一被疑事件に関して押収すべき物の存在を認めるに足りる状況があると判断した。
(8) そこで、田中警部は、平成二年一〇月九日、東京簡易裁判所裁判官に対して、本件第一被疑事件が中核派の犯行であることの捜査報告書、原告が中核派の非公然活動家であると疑うに足りる捜査報告書、原告の過去の活動経歴等の捜査報告書、中核派の発行する機関誌で本件第一被疑事件などを自認したものを疎明資料として、本件第一被疑事件につき、原告宅及び原告使用の郵便受並びに原告の身体及び所持品に対する捜索差押許可状を請求した。
(二) 本件第二捜索差押許可状の請求について
前記第二、一2の争いのない事実等〔証拠略〕によれば、次の事実が認められる。
(1) 平成二年三月一九日午前三時ころ、本件第二被疑事件が発生したが、同事件について、中核派が機関誌「前進(第一四七四号)」(〔証拠略〕)において犯行を認めたこと、及び同派が過去に敢行したゲリラ事件と酷似していることなどから、同事件は同派の組織的、計画的犯行と認められた。
(2) 目黒署狩野警部は、平成二年一〇月末ころ、高島平署田中警部から、原告が、高島平所管内から、目黒署管内の〔住所略〕に転居したこと、同室は中核派のアジトとして使用されていること、高島平署では、原告の住居を確認した際の状況や原告の過去の中核構成員としての活動歴等を検討の上、赤坂署管内で発生した本件第一被疑事件について、原告宅等などに対して捜索差押を実施したこと、その結果、原告宅等より複数の証拠物(本件第一押収物)が発見されたことなどの連絡を受けた。
(3) 目黒署は、その連絡を受けて、原告が同室に居住している事実については確認したが、原告は外出する際、辺りを見回すなどの点検活動が厳しかったため、動向把握までには至らなかった。
(4) 成城署は、平成三年一月上旬ころ、目黒署を含む警視庁管下各警察署に対して、本件第二被疑事件について、捜索差押えをすべき場所、人物があれば、捜索差押えを実施して証拠物を押収してもらいたいという旨の捜索の協力要請を行った。
(5) 目黒署狩野警部は、前記(一)(2)のとおり、原告が、公務執行妨害罪等で逮捕された前歴を有すること、中核派構成員として当時の国鉄福島駅において革命軍軍報を配布していたこと、中核派の活動拠点である荒川マンションの捜索では立会人になっていること、同派の専用車両を運転していたことなどの活動歴があり、さらに、右(2)のとおり原告宅から本件第一被疑事件についての証拠物(本件第一押収物)が複数発見されたこと、右(3)のとおり原告の点検活動が厳しく動向が把握できないことを総合的に検討した結果、原告宅は中核派のアジトとして使用されている可能性が高く、また、本件第二被疑事件は中核派の犯行と認められ、前記(一)(7)のとおり、本件のようなゲリラ事件では多くの中核派構成員が加担していることなどの特徴があることなどから、狩野警部は、原告宅には本件第二被疑事件に関して押収すべき物の存在を認めるに足りる状況があると判断した。
(6) そこで、狩野警部は、成城署の捜査本部にある資料、高島平署が令状請求する際に使用した捜査報告書、本件第一被疑事件で捜索した際の捜査資料及び独自に捜査した事項等から、本件第二被疑事件の事件の概要、同事件が中核派の犯行であること及び中核派の特質についての捜査報告書及び原告の過去の活動歴等に関する捜査報告書をそれぞれ作成し、これらの各捜査報告書及び本件犯行が中核派の犯行であるという声明を出した「前進」を疎明資料として、平成三年二月一日、東京簡易裁判所裁判官に対して、本件第二被疑事件につき、原告宅に対する捜索差押許可状を請求した。
(三) 本件第三捜索差押許可状の請求について
前記第二、一3の争いのない事実等、〔証拠略〕によれば、次の事実が認められる。
(1) 平成二年三月一九日午前三時ころ、本件第三被疑事件が発生したが、中核派は、犯行の翌日、同事件についての犯行声明を都内の報道機関に郵送したこと、中核派が機関誌「前進(第一四七四号)」(〔証拠略〕)において犯行を認めたこと、及び同事件の時限式発火装置のあった場所から中核派が過去に敢行したゲリラ事件に使用した組成物が発見され、中核派特有のものと認められたことなどから、同事件は同派の組織的、計画的犯行と認められた。
(2) 黒田警部は、平成三年四月一日、目黒署警備代理となり、狩野警部から、原告が、公務執行妨害罪等で逮捕された前歴を有すること、中核派構成員として当時の国鉄福島駅において革命軍軍報を配布していたこと、中核派の活動拠点である荒川マンションの捜索では立会人になっていること、同派の専用車両を運転していたことなどの活動歴があり、目黒署において原告の視察活動等を行ったが行動確認はとれていないこと、平成三年二月一三日、成城署管内で発生した本件第二被疑事件につき、原告宅に対して捜索差押を実施した際、中核派発行の機関誌等を所持しているのを発見し押収したこと、向島署から、平成三年三月上旬ころ、本件第三被疑事件について、捜索差押えをすべき場所、人物があれば、捜索差押えを実施して証拠物を押収してもらいたいという旨の捜索の協力要請を受けたことなどについて説明を受けた。
(3) 目黒署では、右協力要請があった後、原告についての視察活動等を行ったものの、原告は自室を出ると二階から道路を見下ろし左右を確認するなどの点検活動が厳しく、原告の行動を確認することはできなかった。
(4) 黒田警部は、原告には、前記(一)(1)や右(2)のとおりの活動歴があること、右(2)のとおり本件第二被疑事件につき捜索差押を実施した際に証拠物(本件第二押収物)が発見されていること、右(3)のとおり原告の点検活動が厳しく行動確認がとれなかったこと、中核派の敢行するゲリラ事件の場合、証拠物は保管場所を転々と変えて移転されることが多いことなどを総合的に検討した結果、原告宅は中核派のアジトとして使用されている可能性が高く、また、本件第三被疑事件は中核派の犯行と認められ、前記(一)(7)のとおり、本件のようなゲリラ事件では多くの中核派構成員が加担していることなどの特徴があることなどから、原告宅には本件第三被疑事件に関して押収すべき物の存在を認めるに足りる状況があると判断した。
(5) そこで、黒田警部は、向島署の捜査本部にある資料、目黒署が本件第二被疑事件についての令状を請求する際に使用した捜査報告書等から、事件の概要と本件第三被疑事件が中核派の犯行であることについての捜索報告書及び原告の過去の活動歴等に関する捜査報告書をそれぞれ作成し、これと本件犯行が中核派の犯行であるという声明を出した「前進」を疎明資料として、平成三年四月一〇日、東京簡易裁判所裁判官に対して、本件第三被疑事件につき、原告宅に対する捜索差押許可状を請求した。
(四) 本件第四捜索差押許可状の請求について
前記第二、一4の争いのない事実等、〔証拠略〕によれば、次の事実が認められる。
(1) 平成二年三月一九日午前三時ころ、本件第四被疑事件が発生したが、中核派は、犯行の翌日、同事件についての犯行声明を都内の報道機関に郵送したこと、中核派が機関誌「前進(第一四七四号)」(〔証拠略〕)において犯行を認めたこと、及び同事件の時限式発火装置のあった場所から中核が過去に敢行したゲリラ事件に使用した組成物が発見され、中核派特有のものと認められたことなどから、同事件は同派の組織的、計画的犯行と認められた。
(2) 目黒署は、野方署から、平成三年五月中旬ころ、本件第四被疑事件について、捜索差押えをすべき場所、人物があれば、捜索差押えを実施して証拠物を押収してもらいたいという旨の捜索の協力要請を受けた。
(3) 目黒署では、右協力要請があった後、原告についての視察活動等を行ったものの、点検活動が厳しく、原告の行動を確認することはできなかった。
(4) 黒田警部は、前記(三)(4)記載の事実に加えて、本件第三被疑事件について、平成三年四月二四日、原告宅の捜索差押を実施した際、中核派発行の機関誌等(本件第三押収物)を発見し押収していること、右(3)のとおり、原告の点検活動が厳しく行動確認がとれなかったこと、前記(三)(4)のとおり、証拠物は保管場所を転々と変えて移転されることが多いことなどの事実を総合的に検討した結果、原告宅には本件第四被疑事件に関して押収すべき物の存在を認めるに足りる状況があると判断した。
(5) そこで、黒田警部は、野方署の捜査本部にある資料、目黒署が本件第二被疑事件についての令状を請求する際に使用した捜査報告書等から、事件の概要と本件第四被疑事件が中核派の犯行であることについての捜索報告書及び原告の過去の活動歴等に関する捜査報告書をそれぞれ作成し、これと本件犯行が中核派の犯行であるという声明を出した「前進」を疎明資料として、平成三年六月一八日、東京簡易裁判所裁判官に対して、本件第四被疑事件につき、原告宅に対する捜索差押許可状を請求した。
(五) 本件第五捜索差押許可状の請求について
前記第二、一5の争いのない事実等、〔証拠略〕によれば、次の事実が認められる。
(1) 平成二年一一月一二日午後〇時四五分ころ、本件第五被疑事件が発生したが、中核派は、犯行当日、同事件についての犯行声明を都内の報道機関に郵送したこと、中核派が機関誌「前進(第一五〇六号)」(〔証拠略〕)において犯行を認めたこと、及び同事件の遺留品である追撃弾の構造が、平成二年一〇月一日に警視庁で摘発した中核派非公然軍事アジトから押収した新型追撃弾構造図と同一であり、証拠隠滅のために使用された時限式発火装置には中核派特有のテルミットが使用されていたことから、同事件は同派の組織的、計画的犯行と認められた。
(2) 目黒署は、月島署から、平成三年九月上旬ころ、本件第五被疑事件について、捜索差押えをすべき場所、人物があれば、捜索差押えを実施して証拠物を押収してもらいたいという旨の捜索の協力要請を受けた。
(3) 目黒署では、右協力要請があった後、原告についての視察活動等を行ったものの、点検活動が厳しく、原告の行動を確認することはできなかった。
(4) 黒田警部は、前記(三)(4)及び(四)(4)記載の事実に加えて、本件第四被疑事件について、平成三年七月九日、原告宅の捜索差押を実施した際、中核派発行の機関誌等(本件第四押収物)を発見し押収していること、その際は黒田警部自身も捜索差押えに加わり、原告宅がアジトである可能性が高いことを確認したこと、右(3)のとおり、原告の点検活動が厳しく行動確認がとれなかったことなどの事実を総合的に検討した結果、原告宅には本件第五被疑事件に関して押収すべき物の存在を認めるに足りる状況があると判断した。
(5) そこで、黒田警部は、月島署の捜査本部にある資料、目黒署が本件第二被疑事件についての令状を請求する際に使用した捜査報告書等から、事件の概要と本件第五被疑事件が中核派の犯行であることについての捜索報告書及び原告の過去の活動歴等に関する捜査報告書をそれぞれ作成し、これと本件犯行が中核派の犯行であるという声明を出した「前進」を疎明資料として、平成三年一〇月八日、東京簡易裁判所裁判官に対して、本件第五被疑事件につき、原告宅に対する捜索差押許可状を請求した。
(六) 本件第六捜索差押許可状の請求について
前記第二、一6の争いのない事実等、〔証拠略〕によれば、次の事実が認められる。
(1) 平成二年一一月一二日午後一時一分ころ、本件第六被疑事件が発生したが、中核派は、犯行当日、同事件についての犯行声明を都内の報道機関に郵送したこと、中核派が機関誌「前進(第一五〇六号)」(〔証拠略〕)において犯行を認めたこと、及び同事件の遺留品である追撃弾の構造が、平成二年一〇月一日に警視庁で摘発した中核派非公然軍事アジトから押収した新型追撃弾構造図と同一、であり、証拠隠滅のために使用された時限式発火装置には中核派特有のテルミットが使用されていたことから、同事件は同派の組織的、計画的犯行と認められた。
(2) 目黒署は、富坂署から、平成三年一一月中旬ころ、本件第六被疑事件について、捜索差押えをすべき場所、人物があれば、捜索差押えを実施して証拠物を押収してもらいたいという旨の捜索の協力要請を受けた。
(3) 目黒署では、右協力要請があった後、原告についての視察活動等を行ったものの、オートバイで外出するなど点検活動がより厳しくなり、原告の行動を確認することはできなかった。
(4) 黒田警部は、前記(三)(4)、(四)(4)及び(五)(4)記載の事実に加えて、本件第五被疑事件について、平成三年一〇月一五日、原告宅の捜索差押を実施した際、中核派発行の機関誌等(本件第五押収物)を発見し押収していること、右(3)のとおり、原告の点検活動が厳しく行動確認がとれなかったこと、前記(三)(4)のとおり、証拠物は保管場所を転々と変えて移転されることが多いことなどの事実を総合的に検討した結果、原告宅には本件第六被疑事件に関して押収すべき物の存在を認めるに足りる状況があると判断した。
(5) そこで、黒田警部は、富坂署の捜査本部にある資料、目黒署が本件第二被疑事件についての令状を請求する際に使用した捜査報告書等から、事件の概要と本件第六被疑事件が中核派の犯行であることについての捜索報告書及び原告の過去の活動歴等に関する捜査報告書をそれぞれ作成し、これと本件犯行が中核派の犯行であるという声明を出した「前進」を疎明資料として、平成三年一二月一七日、東京簡易裁判所裁判官に対して、本件第六被疑事件につき、原告宅に対する捜索差押許可状を請求した。
(七) 本件第七捜索差押許可状の請求について
前記第二、一7の争いのない事実等、〔証拠略〕によれば、次の事実が認められる。
(1) 平成三年七月二一日午前五時ころ、本件第七被疑事件が発生したが、中核派は、犯行の翌日、同事件についての犯行声明を都内の報道機関に郵送したこと、中核派が機関誌「前進(第一五四〇号)」(〔証拠略〕)において犯行を認めたこと、及び同事件の遺留品である追撃弾の構造が、平成二年八月一五日に発生した代々木署管内爆発物発射事件で使用された追撃弾と同一の構造であり、証拠隠滅のために使用された時限式発火装置には中核派特有のテルミットが使用されていたことから、同事件は同派の組織的、計画的犯行と認められた。
(2) 目黒署は、麻布署から、平成四年三月下旬ころ、本件第七被疑事件について、捜索差押えをすべき場所、人物があれば、捜索差押えを実施して証拠物を押収してもらいたいという旨の捜索の協力要請を受けた。
(3) 目黒署では、右協力要請があった後、原告についての視察活動等を行ったものの、点検活動が厳しく、原告の行動を確認することはできなかったが、原告が本件第七被疑事件発生前に防衛庁に隣接する港区六本木四丁目一二番所在のレストランに勤務していたという情報を、平成四年初めころに得ていた。
(4) 黒田警部は、前記(三)(4)、(四)(4)、(五)(4)及び(六)(4)記載の事実に加えて、原告が本件第七被疑事件の現場付近のレストランで勤務していたこと、本件第六被疑事件について、平成四年一月六日、原告宅の捜索差押を実施した際、中核派発行の機関誌等(本件第六押収物)を発見し押収していること、右(3)のとおり、原告の点検活動が厳しく行動確認がとれなかったことなどの事実を総合的に検討した結果、原告宅には本件第七被疑事件に関して押収すべき物の存在を認めるに足りる状況があると判断した。
(5) そこで、黒田警部は、麻布署の捜査本部にある資料、目黒署が本件第二被疑事件についての令状を請求する際に使用した捜査報告書等から、事件の概要と本件第七被疑事件が中核派の犯行であることについての捜索報告書及び原告の過去の活動歴等に関する捜査報告書をそれぞれ作成し、これと本件犯行が中核派の犯行であるという声明を出した「前進」を疎明資料として、平成四年四月二一日、東京簡易裁判所裁判官に対して、本件第七被疑事件につき、原告宅に対する捜索差押許可状を請求した。
(八) 本件第八捜索差押許可状の請求について
前記第二、一8の争いのない事実等、〔証拠略〕によれば、次の事実が認められる。
(1) 平成三年一〇月一日午前四時一五分ころ、本件第八被疑事件が発生したが、中核派は、犯行の二日後、同事件についての犯行声明を都内の報道機関に郵送したこと、中核派が機関誌「前進(第一五四八号)」(〔証拠略〕)において犯行を認めたこと、及び同事件の遺留品である時限式発火装置の構造は中核派が一〇〇件以上のゲリラ事件に使用したものと同一であり、証拠隠滅のために使用された時限式発火装置の組成物には中核派特有のテルミットが使用されていたことから、同事件は同派の組織的、計画的犯行と認められた。
(2) 目黒署は、青梅署から、平成四年九月上旬ころ、本件第八被疑事件について、捜索差押すべき場所、人物があれば、捜索差押を実施して証拠物を押収してもらいたいという旨の捜索の協力要請を受けた。
(3) 目黒署では、右協力要請があった後、原告についての視察活動等を行ったものの、点検活動が厳しく、原告の行動を確認することはできなかった。
(4) 黒田警部は、前記(三)(4)、(四)(4)、(五)(4)、(六)(4)及び(七)(4)記載の事実に加えて、本件第七被疑事件について、平成四年五月一四日、原告宅の捜索差押を実施した際、中核派発行の機関誌等(本件第七押収物)を発見し押収し、かつその捜索の際、原告はなかなかドアを開けようとしなかったこと、右(3)のとおり、原告の点検活動が厳しく行動確認がとれなかったことなどの事実を総合的に検討した結果、原告宅には本件第八被疑事件に関して押収すべき物の存在を認めるに足りる状況があると判断した。
(5) そこで、黒田警部は、青梅署の捜査本部にある資料、目黒署が本件第二被疑事件についての令状を請求する際に使用した捜査報告書等から、事件の概要と本件第七被疑事件が中核派の犯行であることについての捜索報告書及び原告の過去の活動歴等に関する捜査報告書をそれぞれ作成し、これと本件犯行が中核派の犯行であるという声明を出した「前進」を疎明資料として、平成四年一〇月六日、東京簡易裁判所裁判官に対して、本件第八被疑事件につき、原告宅に対する捜索差押許可状を請求した。
2 本件各捜索差押許可状の請求に際し、捜索すべき場所である原告宅等に押収すべき物の存在を認めるに足りる状況があったかどうか。
(一) 本件各捜索差押許可状の各請求は、司法警察員が捜索すべき場所を被疑者以外の住居、身体等として行っているところ、被疑者以外の住居、身体等に対する捜索差押許可状を請求するには、犯罪の嫌疑が存在し、当該住居や身体等に対する捜索差押えの必要があり、かつ、そこに押収すべき物の存在を認めるに足りる状況があることを要する(刑事訴訟法二一八条一項、同規則一五六条、同法二二二条一項、同一〇二条二項)が、司法警察員が、その請求時において、現に収集した証拠資料及び通常要求される捜査を遂行すれば収集し得た証拠資料を総合勘案して、合理的な判断過程によって右各要件があると判断される場合には、その捜索差押許可状の請求は、違法性を欠くというべきである。
前記1の認定事実によれば、本件各被疑事件につき、いずれも犯罪の嫌疑が存在し、かつ、押収すべき物の存在を認めるに足りる状況がある場所について捜索差押えの必要があったことは明らかであるから、本件各捜索差押令状を請求した捜査官の原告宅等に押収すべき物の存在を認めるに足りる状況があるとの前記各判断が、その請求時において、合理的なものということができるかについて検討する。
(二) 本件第一捜索差押許可状の請求について
前記1(一)で認定した事実によれば、本件第一被疑事件は、中核派による犯行であると認められたこと、当時の捜査結果によれば、原告は、昭和六〇年に千葉県成田市三里塚において、公務執行妨害罪等により逮捕されたという逮捕歴があり、昭和六一年二月から昭和六二年九月まで中核派のビラを配布したり、デモに参加しており、特に、原告は、昭和六一年五月から昭和六二年三月にかけて中核派の活動拠点であり、要塞化された荒川マンションにおいて、同所の捜索差押えの際に立会人となったり、中核派専用車両を運転して中核派の組織的な活動に参加したほか、中核派の非公然組織が発行するテロ活動の犯行声明等を記載した革命軍軍報を配布するなど、中核派の枢要な地位にある構成員でなければ通常とらない行動をしていたこと、原告は、昭和六二年九月を最後に公然活動に姿を見せなくなったが、中核派では、公然活動をしていた者がゲリラ活動等を行う非公然活動に転ずる場合が多い上、中核派がゲリラ事件を敢行する場合には、犯行の場所や逃走経路の調査、連結、武器等の保管や運搬などに関し中核派の多数の構成員や同調者が加担するのが通常であり、原告の右のような活動歴等からすると、原告が非公然活動家になった可能性があったほか、中核派が敢行するゲリラ活動等を支援するため、右の調査、連絡、保管等に関わり、本件第一被疑事件に関する証拠物を原告宅等に保管するという状況があったことを認めることができる。しかも、前記1(一)(8)のとおり、田中警部は、捜索差押許可状の請求の際に、本件第一被疑事件が中核派の犯行であることや原告が中核派の非公然活動家であると疑うに足りることなどについての各捜査報告書及び本件第一被疑事件などを自認する機関誌を疎明資料として添付しており、捜索差押えが捜査の初期の段階で行われる場合が多いこと、捜査には密行性、迅速性などが要求されることなどを考慮すると、通常要求される程度の捜査は行われているといえる。
これらの諸事情、前認定の本件第一被疑事件の性質及び中核派の特質等に照らして考えれば、高島平署が平成元年五月ころから原告に対して尾行等の捜査をしたが、原告が中核派の構成員と接触する等の不審な点を認めることはできなかったことを考慮しても、田中警部が原告宅等に押収すべき物の存在を認めるに足りる状況があるという判断をしたのは、合理的なものということができる。
(三) 本件第二捜索差押許可状の請求について
前記1(二)で認定した事実によれば、本件第二被疑事件は、中核派による犯行であると認められたこと、当時の捜査結果により判明していた原告の活動歴、中核派による犯行の態様、原告宅等に本件第一押収物があったこと等からすると、原告が中核派の非公然活動家になった可能性があったほか、中核派の敢行するゲリラ活動等を支援するため、犯行場所や逃走経路等の調査、連絡、武器等の保管等に関わり、本件第二被疑事件に関する証拠物を原告宅に保管するという状況があったことを認めることができる。しかも、狩野警部は、捜索差押許可状の請求の際に、本件第二被疑事件が中核派の犯行であることや原告の活動歴等に関する各捜査報告書及び本件第二被疑事件などを自認する機関誌を疎明資料として添付しており、また、その前提として、高島平署からの情報のみならず、目黒署独自でも原告の動向把握等の捜査を行っており、通常要求される程度の捜査は行われているといえる。
これらの諸事情、前認定の本件第二被疑事件の性質及び中核派の特質等に照らして考えれば、狩野警部が原告宅に押収すべき物の存在を認めるに足りる状況があるという判断をしたのは、合理的なものということができる。
(四) 本件第三ないし第八捜索差押許可状の請求について
前記1(三)ないし(八)で認定した事実によれば、本件第三ないし第八被疑事件は、中核派による犯行であると認められたこと、当時の捜査結果により判明していた原告の活動歴、中核派による犯行の態様、原告宅等に本件第一及び第二押収物(本件第三捜索差押許可状の請求の場合であるが、その後の捜索差押許可状の請求については更に順次本件第三ないし第七押収物がそれぞれ付加される。)があったこと、本件第三第四及び第六捜索差押許可状の各請求については、中核派の敢行するゲリラ事件では、その証拠物は、保管場所を転々と変えて移動されることが多いこと等からすると、原告が中核派の非公然活動家になった可能性があったほか、中核派の敢行するゲリラ活動等を支援するため、犯行場所や逃走経路等の調査、連絡、武器等の保管等に関わり、本件第三ないし第八の各捜索差押許可状の請求に際し、本件第五ないし第八の各被疑事件に関する証拠物を原告宅に保管するという状況があったことを認めることができる。しかも、黒田警部は、捜索差押許可状の請求の際に、本件第三ないし第八の各被疑事件が中核派の犯行であることや原告の活動歴等に関する各捜査報告書及び本件第三ないし第八の被疑事件などを自認する機関誌を疎明資料として添付しており、また、その前提として、原告の動向把握等の捜査を行っており、通常要求される程度の捜査は行われているといえる。
これらの諸事情、前認定の本件第三ないし第八被疑事件の性質及び中核派の特質等に照らして考えれば、黒田警部が右本件各被疑事件につき原告宅に押収すべき物の存在を認めるに足りる状況があるという判断をしたのは、合理的なものということができる。
(五) 原告は、昭和六二年九月四日、当時の国鉄福島駅において革命軍軍報を配布したことはない旨主張し、その裏付け資料として〔証拠略〕(原告名義の預金通帳)を提出するが、令状の請求が違法な行為であるかどうかの判断資料は、前記(一)のとおり、当該令状の請求時に収集し得た証拠資料に限られるものであるところ、原告名義の右預金通帳については、前認定1の事実に照らして考えると、捜査官がその請求時にこれを捜査資料として入手することができなかったことは明らかであるから、本件訴訟において右預金通帳により捜索差押令状の請求が違法な行為であるかどうかを判断することは許されないというべきであり、また、前認定1の事実及び前掲証拠によれば、当時の捜査資料からすると、原告が、昭和六二年九月四日、当時の国鉄福島駅において革命軍軍報を配布したとの捜査官の認定判断は、合理的なものと認めることができるから、原告の右主張は、採用することができない。
また、原告は、同時多発ゲリラ事件の一つを被疑事件として既に捜索差押えが実施された場合には、同一の場所に他の被疑事実についての押収すべき物の存在を認めるに足りる状況はないというべきであると主張する。
しかし、捜索差押えは、事件(被疑事実)ごとに行われるものであって、同時多発ゲリラ事件であるからといって同一の事件(被疑事実)であるということはできず、本件第二ないし第四の各被疑事件、本件第五及び第六の被疑事件は、それぞれ別個の事件であり、右各被疑事件につき、捜索差押えをすべき場所に押収すべき物の存在を認めるに足りる状況があることが必要であるが、そのような状況があれば足りると解されるところ、中核派の敢行するゲリラ事件にあっては、その証拠物は、保管場所を転々と変えて移動されることが多いこと等の前認定(四)の諸事情に加え、前記各被疑事件は、それぞれ別々の警察署管内で発生し、異なる警察署においてそれぞれ別個の捜査本部が設けられて捜査が行われており、各警察署から捜査協力の要請があった時期が異なるため、各捜索差押許可状を請求する時期が異なったこと(〔証拠略〕)に照らして考えれば、本件第二及び第四被疑事件について既に原告宅に対する捜索差押えを実施したことをもって、直ちに本件第三、第四、第六の各捜索差押許可状の請求に際して本件第三、第四、第六の各被疑事件に関する証拠物が原告宅に保管されているという状況があったとの前記認定を覆すに足りないというべきであり、原告の右主張も、採用することができない。そして、他に、本件各被疑事件につき原告宅等に押収すべき物の存在を認めるに足りる状況があるとの捜査官の判断が合理的なものであるとの前記認定を覆すに足りる証拠はない。
二 争点2(一)について
1 本件各捜索の経緯について
前記第二、一の争いのない事実等及び〔証拠略〕によれば、赤城警部補は、上司である田中警部の指示により本件第一捜索を実施したこと、松本警部補は、上司である狩野警部の指示により本件第二捜索を実施したこと、高橋警部補及び中島巡査部長は、上司である黒田警部の指示により本件第三、第五及び第六捜索を実施したこと、黒田警部は、高橋警部補及び中島巡査部長と共に本件第四捜索を実施したこと、鳥居警部補及び中島巡査部長は、上司である黒田警部の指示により本件第七及び第八捜索を実施したこと、本件各捜索を指示し、又は実施した捜査官(田中警部、狩野警部、黒田警部、赤城警部補、松本警部補、高橋警部補、中島巡査部長及び鳥居警部補)は、本件各捜索に際し、原告宅等に押収すべき物の存在を認めるに足りる状況があると判断して、本件各捜索を指示し、又は実施したことが認められる。
2 原告宅等に押収すべき物の存在を認めるに足りる状況があるとの捜査官の判断の合理性について
前記一で認定した諸事情に照らせば、本件各捜索を指示し、又は実施した前記各捜査官の原告宅等に押収すべき物の存在を認めるに足りる状況があったとの前記各判断は、合理的なものと認められ、右認定を左右するに足りる証拠はない。
三 争点1及び2各(二)について
原告は、本件各捜索差押許可状を請求し、本件各捜索差押えを実施した捜査官は、将来発生するゲリラ事件等の原材料を未然に押収するという専ら公安警備の目的でその請求や捜索差押えを実施した旨主張し、前記第二、一の争いのない事実等及び〔証拠略〕によれば、本件各捜索差押えは、中核派等によりその行事を粉砕すべきものとの主張がされ、警備の要求される行事の近接した時期に実施されたことが認められる。
しかし、前認定一及び二のとおり、本件各捜索差押許可状は、犯罪の嫌疑が存在する本件各被疑事件につき、その捜査の必要があることから、証拠物の存在を認めるに足りる状況がある原告宅等を捜索すべき場所として請求されたものであるし、また、本件各捜索差押えも、本件各捜索差押許可状により同様の趣旨で実施されたことが認められる上、本件各捜索差押えは、本件各被疑事件の捜査のために行ったとの証人田中、同狩野及び同黒田の各証言に照らして考えると、前認定の本件各捜索差押えが警備の要求される行事の近接した時期に実施されたことをもって、直ちに本件各捜索差押許可状の請求や本件各捜索差押えの実施が原告主張のような専ら公安警備の目的であったと認めるに足りないし、他にこれを認めるに足りる証拠はないから、原告の前記主張は失当というべきである。
四 争点3について
1 本件各差押えについて
(一) 本件第一差押えについて
前記第二、一1の争いのない事実等のとおり、本件第一差押えで差し押さえられたのは、本件第一押収物(〔証拠略〕)であるが、ビラ(〔証拠略〕)には「新天皇即位儀式を粉砕しよう」などの見出しがあり、機関誌「前進」(第一五〇〇号。〔証拠略〕)には一面に「一一月天皇決戦の大爆発かちとれ」、「即位式粉砕のゼネストへ」、「一〇・一四 三里塚に総結集を」などの見出しがあり、機関誌「武装」(〔証拠略〕)には、巻頭言に「歴史変える軍事的蜂起へ」との見出しのある記事があり、その記事の結びで「無制限・無制約のゲリラ戦争で天皇即位儀式を完全粉砕せよ」などのスローガンが掲げられており、機関誌「前進」(〔証拠略〕)には一面に「一一・一二首都に全国結集を」、「天皇即位儀式粉砕」などの見出しがあり、機関誌「共産主義者」(〔証拠略〕)には表紙に「天皇制打倒・日帝打倒の蜂起戦へ」という見出しがある。
そして、〔証拠略〕によれば、中核派は、本件第一被疑事件について前進(〔証拠略〕)で犯行を認めているが、その犯行の意義について、右前進において、成田空港二期工事攻撃への反撃及び天皇即位儀式(即位の礼、大嘗祭)の爆砕と位置づけていること、中核派の機関誌については中核派構成員において読むことが義務づけられており、中核派の方針等を伝達する指令書的な文書であり、中核派では重要視されているものであること、中核派は極めて中央集権制の高い組織であり、上部の命令に従い組織的に活動する集団であること、中核派は構成員に対して秘密の保持を義務づけるなど保秘性の高い集団であること、中核派の敢行するゲリラ事件は組織的、計画的かつ密行性の高い犯罪であり、その真相を解明するには、ゲリラ事件に直接使用された装置等を押収する必要があることはもちろんのこと、組織編成に関する文書などを押収して中核派の考え方、方針、組織、犯行の動機、事件の背景事情等を明らかにしなければならないこと、機関誌「前進」は中核派の発行する機関誌の中で最も中心的な役割を担う機関誌であり、闘争方針や活動状況が掲載されていること、機関誌「武装」は、中核派の発行する機関誌であり、同派の主義主張に関する記事やゲリラ闘争を誇示する内容の記事が掲載されていること、機関誌「共産主義者」は中核派の季刊発行される政治機関誌で、同派の主義主張に関する記事やゲリラ闘争を誇示する内容の記事が記載されているもので、研究論文等も寄稿されていることがそれぞれ認められる。
(二) 本件第二差押えについて
前期第二、一2の争いのない事実等のとおり、本件第二差押えで差し押さえられたのは本件第二押収物(〔証拠略〕)であるが、機関誌「前進」(第一五〇二号。〔証拠略〕)には一面に「一一・一二総力で皇居突入を」、「即位式粉砕への出撃だ」などの見出しがあり、機関誌「前進」(第一五一一号。〔証拠略〕)には一面に「九〇年決戦勝利の力を打ち固め九一年 三里塚二期決戦の歴史的大勝利を」との見出しがあり、その記事の中で「三・一九 都内三神社を全焼させた戦い」との本件第二被疑事件を認める旨の記載があり、機関誌「前進」(第一五一一号第二部。〔証拠略〕)には一面に「九一年は三里塚決戦の年」、「即位祝賀式を中止せよ」などの見出しがあり、一三頁には「三・一九東京都内三神社にたいし同時火炎攻撃、各本殿全焼 神明神社(世田谷区船橋)」との本件第二被疑事件を認める旨の記載があり、機関誌「前進」(第一五一五号。〔証拠略〕)には一面に「二・一一大行動、二・二三(「立太子礼」)」、「二・二四三里塚闘争に立て」などの見出しがあり、機関誌「週間三里塚」(第三三四号。〔証拠略〕)には一面に「治安法の強権にうち勝つ」、「天皇儀式粉砕の蜂起と合流し革命的内戦の砦守り抜く」などの記載があり、機関誌「共産主義者」(第八三号。〔証拠略〕)には「革命軍先頭に空港を徹底破壊せよ」、「九〇年天皇・三里塚決戦に勝利し日本革命の戦略的展望かちとれ!」などの見出しのある論文があり、機関誌「共産主義者」(第八四号。〔証拠略〕)には表紙に「天皇即位儀式を爆砕へ」との見出しがあり、巻頭には「天皇即位儀式爆砕へ」との見出しと共にゲリラ事件を誇示する写真が載せられている。
そして、〔証拠略〕によれば、中核派は、本件第二被疑事件について前進(〔証拠略〕)で犯行を認めているが、その犯行の意義について、右前進において、天皇即位儀式の粉砕、三里塚二期工事阻止闘争と位置づけていること、機関誌「週間三里塚」は、中核派及び同派の学生組織である全学連三里塚現地闘争本部が、三里塚闘争(三里塚闘争とは、中核派が成田空港二期工事阻止のために掲げている闘争方針である。)のため発行している機関誌であることが認められる。
(三) 本件第三差押えについて
前期第二、一3の争いのない事実等のとおり、本件第三差押えで差し押さえられたのは本件第三押収物(〔証拠略〕)であるが、機関誌「前進」(第一五二二号。〔証拠略〕)には二面に「公開シンポ(三里塚破壊策動と位置づけているもの)の学識経験者六人に三里塚破壊の責任を問う」などの見出しがあり、機関誌「前進」(第一五二三号。〔証拠略〕)には「公開シンポを許さぬと敷地内デモ三・二四 三里塚」、「二期絶対阻止の意気高く」などの見出しがあり、機関誌「前進」(第一五二四号。〔証拠略〕)には「公開シンポ(三里塚での敗勢をまきかえすために策動された反革命的陰謀と位置づけているもの)を粉砕せよ」などの見出しがあり、機関誌「前進」(第一五二五号。〔証拠略〕)には一面に「公開シンポジウム(「日帝の三里塚闘争破壊攻撃」と位置づけられているもの)粉砕を」などの見出しがあり、機関誌「共産主義者」(第八八号。〔証拠略〕)には「革命軍の防衛・強化をかちとり九一年天皇・三里塚決戦に進撃せよ」との見出しの論文が掲載されている。
そして、〔証拠略〕によれば、中核派は、本件第三被疑事件について前進(〔証拠略〕)で犯行を認めているが、その犯行の意義について、右前進において、天皇即位儀式の粉砕、成田二期工事阻止闘争と位置づけていることが認められる。
(四) 本件第四差押えについて
前期第二、一4の争いのない事実等のとおり、本件第四差押で差し押さえられたのは本件第四押収物(〔証拠略〕)であるが、機関誌「武装」(〔証拠略〕)には「即位儀式を粉砕した三週間」との見出しの論文が掲載されている。
そして、〔証拠略〕によれば、中核派は、本件第三被疑事件について前進(〔証拠略〕)で犯行を認めているが、その犯行の意義について、右前進において、天皇即位儀式の粉砕、成田二期工事阻止闘争と位置づけていることが認められる。
(五) 本件第五差押えについて
前期第二、一5の争いのない事実等のとおり、本件第五差押えで差し押さえられたのは本件第五押収物(〔証拠略〕)であるが、月刊誌「月刊交流センター」(〔証拠略〕)には、表紙に「中東侵略弾劾、自衛隊海外派兵・九〇億ドル支援許すな 三・一〇都心に怒りの反戦デモ」との見出しがあり、小冊子「破防法研究」(〔証拠略〕)には表紙に「PKOと反戦闘争」と書かれており、四頁からは「歴史の大転換と反戦運動」との見出しがあり、八頁には「自衛隊の海外派兵に反対し、二度と侵略戦争を許さない共同行動委員会への賛同と六・二三全国反戦統一行動、東京集会への参加の訴え」との見出しがあり、機関誌「前進」(第一五四二号。〔証拠略〕)には一面に「PKO法案強行の非常事態切迫に全人民の総力決起を」との見出しがあり、機関誌「前進」(第一五四四号。〔証拠略〕には一面に「派兵・天皇 三里塚 一斉ゲリラ敢行」、「天皇・自衛隊をアジアに行かすな」との見出しがあり、機関誌「前進」(第一五四五号。〔証拠略〕)には一面に「PKO・小選挙区制法案を大衆的総決起で粉砕せよ」との見出しがある。
そして、〔証拠略〕によれば、中核派は、本件第五被疑事件について前進(〔証拠略〕)で犯行を認めているが、その犯行の意義について、右前進において、天皇即位儀式の粉砕、自衛隊海外派兵阻止闘争と位置づけていること、月刊誌「月刊交流センター」や小冊子「破防法研究」は中核派傘下の団体等の組織上の主義、主張、方針並びにこれらをあおる機関誌であることが認められる。
(六) 本件第六差押えについて
前期第二、一6の争いのない事実等のとおり、本件第六差押えで差し押さえられたのは本件第六押収物(〔証拠略〕)であるが、機関誌「前進」(第一五五九号。〔証拠略〕)には一面に「派兵阻止、反戦反軍闘争の大爆発へ」などの見出しがあり、機関誌「前進」(第一五五九号第二部。〔証拠略〕)には一面に「侵略阻止は労働者の使命」、「三里塚とPKO闘争の結合を」などの見出しがある。
そして、〔証拠略〕によれば、中核派は、本件第六被疑事件について前進(〔証拠略〕)で犯行を認めているが、その犯行の意義について、右前進において、天皇即位儀式の粉砕、自衛隊海外派兵阻止闘争と位置づけていることが認められる。
(七) 本件第七差押えについて
前期第二、一7の争いのない事実等のとおり、本件第七差押えで差し押さえられたのは本件第七押収物(〔証拠略〕)であるが、機関誌「前進」(第一五七三号。〔証拠略〕)には一面に「PKO法案阻止」などの見出しがあり、機関誌「前進」(第一五七四号。〔証拠略〕)には一面に「四・二八―二九反戦反天皇闘争へ」、「PKO派兵法案―カンボジア侵略戦争突入攻撃を総力で粉砕せよ」などの見出しがあり、機関誌「前進」(第一五七五号。〔証拠略〕)には一面に「PKO法案絶対粉砕」などの見出しがあり、機関誌「前進」(第一五七六号。〔証拠略〕)には一面に「PKO、三里塚で連続ゲリラ」などの見出しがあり、機関誌「共産主義者」(第九〇号。〔証拠略〕)には表紙に「アジア侵略戦争と対決する労働運動を」という見出しがあり、巻頭には「天皇の軍隊復活許すな」との見出しとともにゲリラ事件の写真が掲載されており、機関誌「武装」(〔証拠略〕)には表紙に「特集PKOとカンボジア派兵」などの見出しがあり、「闘う全学連」(〔証拠略〕)には、目次に「アピール 三里塚芝山連合空港反対同盟」、「革命的共産主義者同盟」などの記載があり、一〇二頁から一〇九頁までに「日帝の軍事大国化・ボナパルティズム化(天皇制的国家主義的強権支配化(七五頁))攻撃粉砕」の見出しの下に海外派兵の弾劾や反天皇制闘争等の記載がある。
そして、〔証拠略〕によれば、中核派は、本件第七被疑事件について前進(〔証拠略〕)で犯行を認めているが、その犯行の意義について、右前進において、天皇制打倒、自衛隊海外派兵阻止闘争、三里塚闘争と位置づけていること、「闘う全学連」は第四八回全学連定期全国大会の報告、決定集であり、三里塚問題、海外派兵や天皇制の反対等についての闘争方針等が記載されているものであって、中核派傘下の学生団体の方針等を記載した機関誌であることが認められる。
(八) 本件第八差押えについて
前期第二、一8の争いのない事実等のとおり、本件第八差押えで差し押さえられたのは本件第八押収物(〔証拠略〕)であるが、機関誌「前進」(第一五九二号。〔証拠略〕)には一面に「九月出兵阻止に連続決起を」などの見出しがあり、機関誌「前進」(第一五九四号。〔証拠略〕)には一面に「出兵第一陣に怒り爆発」などの見出しがあり、機関誌「共産主義者」(第九三号。〔証拠略〕)には、表紙に「アジア侵略戦争開始にたいする戦闘アピール 日帝のカンボジアPKO派兵を反戦反軍闘争の爆発で粉砕せよ」などの見出しがある。
そして、〔証拠略〕によれば、中核派は、本件第八被疑事件について前進(〔証拠略〕)で犯行を認めているが、その犯行の意義について、右前進において、自衛隊海外派兵阻止闘争と位置づけていることが認められる。
2 争点3(一)について
原告は、本件各押収物は、本件各被疑事実と関連性を有しないと主張するが、右認定1の事実によれば、本件各押収物は、本件各捜査差押許可状に記載された「革命的共産主義者同盟全国委員会(革共同前進派=中核派)及び同派傘下の各団体等の組織上の主義、主張、方針並びにこれをあおる機関紙(誌)、ビラ類の文書」に該当するものであるところ、本件各被疑事実の態様(組織的なゲリラ事件)、中核派がその機関紙により犯行を表明した本件各被疑事件の意義ないし目的、中核派の組織の特質、中核派が敢行するゲリラ事件の特徴、中核派及び傘下の各団体の機関紙(誌)やビラの発行の目的及び内容に照らして考えると、被疑事実との関連性は、本件各被疑事実を敢行した組織の構成や組織上の主義、主張、方針を含めた事件の全貌を解明するための証拠資料に及ぶものであって、前期1の認定事実によれば、本件各押収物には、本件各被疑事実を敢行した中核派の犯行の意義、目的、動機、背景に関する記載や、その意義等に関する中核派ないしその傘下の団体の組織上の主義、主張、方針に関する記載があることが認められるから、本件各押収物は、本件各被疑事実と関連性を有するものということができるので、本件各押収物と本件被疑事実との関連性がないとの原告の主張は、採用することができない。
3 争点3(二)について
原告は、本件各押収物が公刊物であること、本件各差押えは専ら公安警備目的のために二年間にわたって続けられたこと、原告が店長を務める飲食店の従業員が原告宅にいる際に捜索差押えを受けたこともあって不利益を受けたことなどから、本件各差押えはその必要性を欠くと主張する。
しかし、本件各差押えが公安警備の目的でされたと認めることができないことは前期三に説示したとおりである。また、〔証拠略〕によれば、本件第七差押え又は本件第八差押えの際に、原告の勤務先の同僚が原告宅に在宅していたことが認められるが、本件各被疑事件態様、中核派の組織の特徴、中核派が敢行するゲリラ事件の特徴(前記一)などに鑑みれば、強制捜査によらなければ証拠資料が隠滅される可能性は大きく、逆に原告が証拠資料を任意に提出する可能性は乏しいと考えられるほか、前記2のとおり、本件各被疑事実を敢行した中核派ないしその傘下の団体の組織上の主義、主張、方針等を記載したビラや機関誌等の文書は本件各被疑事件の全貌を解明するための証拠として重要性を有しているのであるから、右の原告の受ける不利益を考慮しても、強制処分である本件各差押えを実施しなければ捜査の目的を達することができないということができる。
よって、本件各差押えは明らかにその必要がないとはいうことができず、原告の右主張も採用することができない。
五 争点4について
原告は、裁判官が本件各捜索差押許可状を発付したことをもって裁判官に違法な行為があったと主張するが、令状発付の裁判を含め、裁判官がその権限の行使としてする判断は、常に同じ結論に達することが保障される性質のものではなく、そのため上訴による救済の手続が設けられているのであって、ある裁判官による判断が後に他の裁判官により不当であると判断された場合であったとしても、先の判断がそれだけで違法であるということはできず、当該裁判官が違法又は不当な目的をもって裁判をしたなど、裁判官がその付与された権限の趣旨に明らかに背いてこれを行使したものと認めうるような特別な事情がある場合でなければ、その判断を違法ということはできない。原告は、裁判官のした判断が違法であるというために右の特別の事情があることを要するのは、争訟の裁判に限られる旨主張するが、右の理は、裁判制度や裁判官の職務行為の独立性に由来するものであるから、裁判官の行う裁判一般に妥当すべきものであって、訴訟に関する裁判に限定する合理的な理由はないというべきである。
そこで、本件各捜索差押許可状の発付についてみるに、前認定のとおり、本件各捜索差押許可状の発付については上訴により救済されるべき瑕疵がないことが認められる上、本件全証拠によるも、本件各捜索差押許可状を発付した裁判官が違法又は不当な目的をもって裁判をしたなど、裁判官がその付与された権限の趣旨に明らかに背いてこれを行使したものと認めうるような特別の事情があることを認めるに足りる証拠もないから、本件各捜索差押許可状の発付に違法があるとの原告の前記主張は採用することができない。
六 結論
以上によれば、原告の被告らに対する本訴請求はいずれも理由がないから、これを棄却することとし、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 下田文男 裁判官 檜山聡 田代雅彦)