東京地方裁判所 平成5年(ワ)18356号 判決 1994年8月30日
原告
大橋鐵男
ほか五名
被告
長島貞吉
ほか一名
主文
一 被告らは連帯して、原告大橋鐵男に対し、金六七七万四六二〇円、同大橋勲、同大橋亨、同大橋清、同本多幸惠、同大橋孝に対し、それぞれ金一〇九万四九二四円及びこれらに対する平成五年一〇月一〇日から支払済まで年五分の割合による金員を支払え。
二 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。
三 訴訟費用は、これを四分し、その一を原告大橋鐵男の、その一をその余の原告らの、その余を被告らの負担とする。
四 この判決は、第一、三項に限り、仮に執行することができる。
事実及び理由
第一請求
被告らは連帯して、原告大橋鐵男に対し、金一三六九万六四三九円、同大橋勲、同大橋亨、同大橋清、同本多幸惠、同大橋孝に対し、それぞれ金一六四万四九二四円及びこれらに対する平成五年一〇月一〇日から支払済まで年五分の割合による金員を支払え。
第二事案の概要
当事者間に争いのない事実は次のとおりである。
一 本件事故の発生
1 日時 平成四年九月一日午後三時四五分ころ
2 場所 東京都北区十条仲原二丁目二番三号先路上(以下「本件道路」という。)
3 態様 被告佐藤敦(以下「被告佐藤」という。)は、本件道路を、新聞配達のため前部荷台に新聞を満載して自転車を運転してきたところ、前方から歩行してきた訴外大橋澄子(大正七年五月五日生、以下「亡澄子」という。)に、右自転車の前部を衝突させた。
その結果、亡澄子は、頭蓋内損傷の傷害を負い、死亡した。
二 責任
1 被告佐藤は、自転車を運転するに際し、前方を注視して進行すべき注意義務があるのに、これを怠り漫然進行した過失により本件事故を発生させたものであるから、民法七〇九条に基づき、亡澄子の死亡による損害を賠償する義務がある。
2 新聞販売店を経営する被告長島貞吉は、被告佐藤の使用者として、被告佐藤を新聞配達の業務に従事させていたものであるから、民法七一五条に基づき、亡澄子の死亡による損害を賠償する義務がある。
三 相続
原告大橋鐵男(以下「原告鐵男」という。)は、亡澄子の夫、同大橋勲、同大橋亨、同大橋清、同本多幸惠及び同大橋孝は、いずれも亡澄子の子であり、平成四年九月三日、亡澄子の死亡により、その権利を相続した。
四 損害の填補
被告らから、原告鐵男は七五〇万円、その余の原告らは各一五〇万円を受領している。
第三判断(損害について)
一 亡澄子の損害 二四九四万九二四一円
1 逸失利益 九九四万九二四一円
亡澄子は、死亡時七四歳の主婦であること、平成二年生命簡易表によれば、七四歳女子の平均余命は一二・六八年とされていることなどを考慮すると、本件事故に遭わなければ、その後少なくとも六年間にわたり就労が可能であり、その間賃金センサス平成二年第一巻第一表・産業計・企業規模計・女子労働者・学歴計の全年齢平均の年収額二八〇万〇三〇〇円を下らない収入を得ることができ、その生前の生活状況から、生活費控除率は三〇パーセントとし、中間利息の控除はライプニツツ方式(六年に相当する係数は五・〇七五六である。)によるのが相当であると判断されることから、これによつて亡澄子の本件事故時における逸失利益の現価を算定すると、次のとおりとなる(円未満切捨て)。
2,800,300×(1-0.3)×5.0756=9,949,241
2 慰謝料 一五〇〇万〇〇〇〇円
亡澄子の生前の生活状況、家族関係、年齢等、その他一切の事情を考慮すれば、慰謝料として右金額が相当である。
二 相続後の金額
原告らの相続分は、原告鐵男が二分の一、その余の原告らが各一〇分の一であり、亡澄子の損害は、右一のとおり二四九四万九二四一円であるから、各原告の相続による取得額(円未満切捨て)は、次のとおりとなる。
1 原告鐵男 一二四七万四六二〇円
2 その余の原告ら 各二四九万四九二四円
三 既払控除後の金額
右二の各金額から、原告鐵男につき七五〇万円、その余の原告らにつき各一五〇万円を控除すると、その残金は次のとおりとなる。
1 原告鐡男 四九七万四六二〇円
2 その余の原告ら 各九九万四九二四円
四 原告鐵男の固有の損害 一二〇万〇〇〇〇円
亡澄子のために要した葬儀費用(甲三)のうち、被告らにおいて賠償すべき金額としては右金額が相当である。
五 弁護士費用
本件訴訟の経緯に鑑み、弁護士費用としては、次の金額が相当である。
1 原告鐵男 六〇万〇〇〇〇円
2 その余の原告ら 各一〇万〇〇〇〇円
六 合計
1 原告鐵男 六七七万四六二〇円
右三1の金額四九七万四六二〇円、右四の金額一二〇万円及び右五1の金額六〇万円の合計である。
2 その余の原告ら 各一〇九万四九二四円
右三2の金額九九万四九二四円及び右五2の金額一〇万円の合計である。
七 以上によれば、原告らの本訴請求は、右六記載の各金額及びこれらに対する訴状送達の日の翌日である平成五年一〇月一〇日から各支払済まで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める限度で理由があるからこれを認容し、その余の請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条、九二条本文、九三条一項本文を、仮執行の宣言につき同法一九六条一項をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官 松井千鶴子)