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東京地方裁判所 平成5年(ワ)8712号 判決

東京都目黒区目黒一丁目五番一八号

原告

株式会社オリオン企画

右代表者代表取締役

山川誠司

右訴訟代理人弁護士

鈴木勝利

宮崎県日向市上町三番三号

被告

有限会社ナショナル興産

右代表者代表取締役

山本進

名古屋市中区金山一丁目七番二号

ゴールドマインビル七〇一号

被告

山本進

右両名訴訟代理人弁護士

井口浩治

主文

一  被告らは、原告に対し、連帯して金二五〇〇万円及びこれに対する平成四年八月二七日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  被告有限会社ナショナル興産は、原告に対し、金二九六〇万八〇七四円及びこれに対する平成五年七月一日から支払済みまで年六分の割合による金員を支払え。

三  訴訟費用は被告らの負担とする。

四  本判決は仮に執行することができる。

事実及び理由

第一  請求

主文同旨

第二  事案の概要

本件は、第一に、原告が被告有限会社ナショナル興産(以下「被告会社」という。)との間で、被告会社が開発考案したパチンコ玉の安定発射装置(商品名「ペガサス・スキーマ」。以下「本件装置」といい、右装置にかかる考案を「本件考案」という。)について、特許又は実用新案登録を受ける権利及び本件装置を製造販売する権利を五〇〇〇万円で譲り受ける旨の契約を締結し、被告会社に対し内金二五〇〇万円を支払ったところ、後日、被告会社及び被告会社代表者である被告山本が、本件考案が被告会社の考案ではなく、特許又は実用新案登録を受けることができないものであるのに、原告に対しその旨を偽って原告をして本件契約を締結させ右代金を支払わせたものであることが判明したとして、原告が被告らに対し、詐欺による共同不法行為に基づき右二五〇〇万円の損害賠償を求め、また、被告会社に対しては、選択的に錯誤による本件契約の無効、予備的に本件契約の債務不履行解除を理由として右二五〇〇万円の返還を求めるものであり、第二に、原告が被告会社に売り渡した本件装置の売買残代金二九六〇万八〇七四円の支払を求めるものである。

一  前提となる事実(証拠を掲げた部分以外は、当事者間に争いがない。)

1  原告は、不動産の売買、建物の建築などを業とする会社であり、被告会社は、建物の建築、不動産取引を業とする会社であり、被告山本は、その代表取締役である。

2  原告は、平成三年一一月二六日、被告会社との間で、原告が本件装置を製造・販売する権利(権利の性質、内容については争いがある。)を五〇〇〇万円で譲り受ける旨の契約(以下「本件契約」という。)を締結し、同四年八月二七日までに、その代金五〇〇〇万円の内金二五〇〇万円を被告会社に対し支払った。

3  原告は、平成三年一二月二〇日、本件考案について実用新案登録出願をした。(甲八)

4  原告は、平成四年一二月二四日から同五年四月五日までの間に、被告会社に対し、毎月二〇日締め翌々月末日払いの約定で(乙八)、本件装置二四七台を代金合計四四四四万九六五〇円で売り渡し、被告会社は、右代金のうち一四八四万一五七六円を支払った。

5  被告会社は、平成五年四月一日ころ、原告に対し、本件契約の残代金二五〇〇万円を自働債権として、右4の売買の残代金債権二九六〇万八〇七四円と対当額で相殺する旨の意思表示をした。(乙九の1・2)

6  原告は、平成五年四月八日ころ、他社が昭和六二年ころから本件装置を製造販売しており、本件考案については特許ないし実用新案登録を取得できないことが判明したため、被告会社に対し、本件契約を詐欺により取り消す旨の意思表示をした。(乙一〇)

7  本件考案は、被告会社の考案にかかるものではなく、名古屋市中区に本社を有する西武通商株式会社(以下「西武通商」という。)の考案にかかるものであるところ(甲三ないし七)、原告は、平成五年五月八日、西武通商から「本件装置は、西武通商が独自に考案し、製造販売していたものであるから、本件装置の製造販売の中止を求める」旨の抗議文を受領し(甲五)、本件装置の製造販売を中止した。

二  争点

被告らは、原告が、本件考案が被告会社の開発考案にかかるものではないことを知りながら、本件装置を製造販売すれば多額の利益を得られるとの判断のもとに、本件契約を締結したものである旨主張して、原告の詐欺の主張を争っている。

第三  判断

一  前記第二、一認定の事実並びに証拠(甲九、原告代表者及び後記括弧内の各証拠)によれば、次の事実が認められる。

1  原告代表者は、従前、冷蔵庫自動管理装置の製造、販売業に携わっていたときに、被告山本と知合った。

2  被告山本は、平成三年一一月に、原告代表者に会い、本件装置の試作品を示したうえで、本件装置は被告会社関連の頭脳集団が開発した新製品であり、その装置の製造販売により多額の利益をあげ得ること、本件考案については特許ないし実用新案登録を受けることができることなどの説明をし、その旨記載された事業企画書を原告代表者に渡している(乙一)。原告代表者は、本件装置については試作品だけで図面、回路図等がなかったため、同月中旬ころ、原告の技術担当者に本件装置の試作品の調査をさせたうえで、本件考案について実用新案登録を受け得るとの判断に至り、同月二六日、その前文において被告会社が本件装置を企画開発したものであることが明記された協定書に相互に署名押印して(甲一)、被告会社と本件契約を締結した。原告は、本件契約によって、本件考案について特許又は実用新案登録を受ける権利及び本件装置を製造販売する権利を被告会社から五〇〇〇万円で買い受け(甲一)、本件装置の試作品一台を被告会社から受領し、後日、右五〇〇〇万円の内金二五〇〇万円を被告会社に対し支払った。

3  原告は、平成四年四月二〇日、被告会社との間で、本件装置を一台当たり二二万五〇〇〇円で被告会社に売り渡し、被告会社がこれを原則として一台当たり三〇万円で業者に販売する旨の覚書(売買基本契約)を締結し(乙八)、その後前記第二、一のとおり、本件装置二四七台を代金合計四四四四万九六五〇円で売り渡した。

4  被告会社が作成した前記3の覚書の前文及び被告会社代理人が平成五年四月一日に原告に対し発送した内容証明郵便には、被告会社が本件装置を企画開発したものであることが明記されている(乙八、九の1)。

二  前記第二、一及び右一認定の事実によれば、本件契約締結の際に原告が被告会社から受領したものは本件装置の試作品であり、その図面、回路図等はなかったものの、原告は、被告らから本件装置は被告会社に関連する者が開発考案したものであること、本件装置の製造販売により多額の利益が期待できること等の説明を受け、その後の原告の技術担当者による本件装置の試作品の調査を経たうえで、被告会社との間で本件契約を締結し、本件考案について特許ないし実用新案登録を受ける権利及び本件装置を製造販売する権利を五〇〇〇万円で被告会社から買い受けたものであること、原告は、その後西武通商が本件装置を考案したものであることが判明し、かつ、同社から本件装置の製造販売の中止を求められたため、本件装置の製造販売を中止したこと、以上の事実が認められる。そして、原告が本件考案を譲り受けることの対価として五〇〇〇万円という高額の契約金を被告会社に支払う旨約束をし、内金二五〇〇万円を既に支払っていること、本件契約の際に作成された協定書、被告らの本件考案に関する事業企画書並びに前記一4の覚書及び被告会社代理人作成の内容証明郵便の中に、被告会社ないし被告会社に関連する者が本件装置を開発考案した旨が各明記されていること、並びに、弁論の全趣旨(被告らが本訴訟において当初は被告会社が本件装置を考案していた旨の主張をしていたこと)などからして、原告が本件考案が被告会社の開発考案にかかるものではないことを知りながら、本件契約を締結して、二五〇〇万円を被告会社に支払ったとの被告ら主張事実については、到底これを認めることはできず、被告山本(被告会社代表者)の右主張に沿う供述ないし乙一二(同人の陳述書)も到底信用することはできない。

三  以上によれば、被告会社代表者である被告山本は、原告代表者に対し、本件装置は第三者が開発考案した装置であり、被告会社が開発考案したものではないのに、被告会社が本件装置を開発考案したものであり、本件考案について特許ないし実用新案登録を受けることができるものであるかのように偽って、原告代表者をしてその旨誤信させて本件契約を締結させ、原告をしてその代金の内金二五〇〇万円を支払わせたものと認められ、したがって、被告会社及びその代表者である被告山本は、原告に対する右詐欺行為により原告が被った損害として右二五〇〇万円を賠償すべき義務を負うものである。

また、被告らは、原告の本件装置の売買残代金の請求について、前記第二、一5のとおり相殺の抗弁を主張するが、本件契約は、右認定のとおり、被告らの詐欺行為により締結されたものであり、かつ、本件契約は、原告の前記第二、一6の取消の意思表示により取り消されたものであるから、被告らの右相殺の抗弁も理由がない。

四  よって、被告らは、原告に対し、連帯して詐欺の不法行為による損害賠償金二五〇〇万円及びこれに対する最終の不法行為の日である平成四年八月二七日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金を支払う義務があり、被告会社は、原告に対し、本件装置の売買残代金二九六〇万八〇七四円及びこれに対する最も遅い支払期日の翌日である平成五年七月一日から支払済みまで商事法定利率年六分の割合による遅延損害金を支払う義務がある。

(裁判長裁判官 設樂隆一 裁判官 橋本英史 裁判官 長谷川恭弘)

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