東京地方裁判所 平成5年(ヲ)2206号 決定 1993年3月24日
当事者 別紙当事者目録に記載のとおり
主文
1 買受人が代金を納付するまでの間、別紙物件目録記載の建物に対する相手方らの占有を解いて、東京地方裁判所執行官に保管を命じる。
2 執行官は、その保管にかかることを公示するため、適当な方法をとらなければならない。
理由
1申立ての内容等
本件は、売却のための保全処分(民事執行法五五条二項)として、主文記載の内容の命令を求める事件である。
2記録により認められる事実
(1) 平成五年一月二七日、当裁判所は、差押債権者である申立人の申立に基づき、相手方らに対し、以下の主文のとおり第一次の売却のための保全処分を発令した。
(第一次の保全処分の主文)
1 相手方らは、別紙物件目録記載の建物(以下本件建物という。)について、これを取り壊し、毀損し、汚損し、シャンデリアその他の建物に設置された物品を取り外し搬出してはならない。
2 相手方日本クリッシャン株式会社は、買受人が代金を納付するまでの間、本件建物について、その占有を他人に移転し、または占有名義を変更してはならない。
3 相手方株式会社コーキ、相手方有限会社丸本、相手方株式会社築地流通サービスは、これらの相手方に対する本決定の送達後三日以内に、本件建物から退去せよ。相手方株式会社コーキ、相手方有限会社丸本、相手方株式会社築地流通サービスは、相手方日本クリッシャン株式会社以外の者に、本件建物の占有を移転し、または占有名義を変更してはならない。
4 相手方日本クリッシャン株式会社は、相手方日本クリッシャン株式会社に対する本決定の送達後三日以内に、本件建物から相手方株式会社コーキ、相手方有限会社丸本及び相手方株式会社築地流通サービスを退去させよ。
5 執行官は、買受人が代金を納付するまでの間、主文第一項から第四項までの命令が発せられていることを公示しなければならない。
(2) 第一次の保全処分は、平成五年二月二二日(更生決定は二月二六日)相手方日本クリッシャン株式会社に、平成五年三月一〇日(更生決定とも)相手方株式会社築地流通サービス株式会社に送達された。
(3) 相手方株式会社コーキ、相手方有限会社丸本に対しては、平成二年二月一八日第一次の保全処分及びその更生決定を送達のため発送したが、本件建物の玄関に鍵がかかったままであったり、本件建物の外部にはポストがなく、建物内にあるポストに配達しようとするが、建物入口がオートロックにより閉鎖され建物内に入ることができず配達不能とされ還付された。そして、申立て人の再送達上申により平成五年三月四日再び送達のため発送したが、今度は、配達員の連絡票を建物外部に設けられたポストに投函したものの相手方両名が留置期間内に取りにいかなかったため、平成五年三月一三日返送された。
(4) しかし、上記第一次の保全処分の主文第五項の公示命令は、執行官によって、平成五年一月二九日本件建物内部において執行され、本件建物に公示書が掲げられており、これにより第一次保全処分の内容を了知した相手方株式会社コーキ、相手方有限会社丸本は、平成五年二月四日第一次の保全処分に対して執行抗告を提起している。
(5) そこで、当裁判所は、上記の執行抗告の代理人弁護士に対して、第一次の保全処分の受領を求めたが、拒絶された。
(6) 相手方株式会社コーキ、相手方有限会社丸本及び株式会社築地流通サービス株式会社は、上記第一次の保全処分で退去を命じられていることを承知しながら、未だに退去しないし、相手方日本クリッシャン株式会社はその他の相手方らを退去させていない。
3当裁判所の判断
(1) 相手方株式会社コーキ、相手方有限会社丸本は、第一次の保全処分の送達を受けていない。上記認定の事実関係から判断すると、相手方株式会社コーキ、相手方有限会社丸本は第一次の保全処分の内容を承知しながら、その送達を妨げるために妨害工作をしたものと考えられる。したがって、送達前であっても、民事執行法五五条二項に基づき、執行官保管を命じることが許されるものと判断する。
(2) 株式会社築地流通サービス株式会社及び相手方日本クリッシャン株式会社は、上記第一次の保全処分の送達を受けながら、これに従わない。よって、執行官保管を命じることとする。
(3) なお、本件建物には、相手方日本クリッシャン株式会社代表者大石恵津子及びその夫の大石清弘、相手方株式会社コーキ代表者小野幹雄及びその妻の小野貴子のほか、その関係者の八川某ほか数名の者が出入りしたり、あるいは泊まったりしているもののようであるが、それらの者の占有態様からすると、それらの者は、相手方らの手足として占有する者であって、そのように認められる限り、本件保全処分命令により、執行官保管の執行をすることができるのであるから、本命令では、それらの者を当事者として掲げない取扱をした。
(裁判官淺生重機)
別紙当事者目録
申立人 株式会社オールコーポレーション
代表者代表取締役 相良右章
右代理人弁護士 俵谷利幸
同 伴義聖
同 鈴木五十三
相手方 日本クリッシャン株式会社
代表者代表取締役 大石恵津子
相手方 株式会社コーキ
代表者代表取締役 小野幹雄
相手方 有限会社丸本
代表者代表取締役 谷部カズ子
相手方 株式会社築地流通サービス
代表者代表取締役 亀山公四郎
別紙物件目録
1所在 渋谷区千駄ヶ谷三丁目三番地二三
家屋番号 三番二三
種類 共同住宅
構造 鉄骨鉄筋コンクリート造陸屋根地下一階付五階建
床面積 一階 484.75平方メートル
二階 514.63平方メートル
三階 553.06平方メートル
四階 370.53平方メートル
五階 260.82平方メートル
地下一階 54.29平方メートル