東京地方裁判所 平成5年(行ウ)353号 判決
原告
清水君枝
被告
末木達男
同
田無市長
末木達男
被告ら訴訟代理人弁護士
中村護
同
西澤圭助
同
守屋典子
事実及び理由
第二 事案の概要
本件は、田無市の住民である原告が、田無市議会市政調査研究費(以下「本件研究費」という。)の支出が違法であるとして、被告末木に対し、地方自治法(以下「地自法」という。)二四二条の二第一項四号に基づき、既に支出された平成四年度及び平成五年度の本件研究費相当額であるとする一三〇〇万円の損害賠償を求め、被告市長に対し、同項一号に基づき、将来の本件研究費の支出の差止めを求めて提訴した住民訴訟事件である。
一 当事者間に争いのない事実等
1 原告は、田無市の住民であり、被告末木は、田無市の市長の地位にある者である。
2 田無市においては、平成三年五月一日から、田無市議会市政調査研究費の交付に関する規則(以下「本件規則」という。)及び田無市議会市政調査研究費経理要綱(以下「本件要綱」という。)が施行され、平成三年度から、被告市長が、各年度ごとに、田無市議会(以下「議会」という。)の各会派に対して、各会派の所属議員数に応じ、議員一人につき被告市長が算定した額の本件研究費の交付を行っている。
3 右の議員一人につき被告市長が算定した額は、平成四年度においては、議員一人当たり二〇万円とされ、平成五年度においては、議員一人当たり三〇万円とされ、平成四年度については総額五二〇万円、平成五年度については総額七八〇万円の交付決定がなされている(なお、被告らは、各会派に交付された本件研究費は、その未執行額が生じている場合には、各会派の代表者から、議長を経由して被告市長に対し、未執行額の返還報告書が提出され、精算が行われており、精算によって返還された額を除いた平成四年度の支出総額は、五一九万六六一五円であり、平成五年度の支出総額は確定していない旨主張している。)。
4 原告は、平成五年九月二九日、田無市監査委員に対し、本件規則及び本件要綱の廃止並びに本件研究費の交付による損害の回復を求める旨の監査請求を行ったところ、同監査委員は、同年一一月二六日付けで、右監査請求を棄却した。
〔中略〕
第三 争点に対する判断
一 〔証拠略〕によれば、以下の事実が認められる。
1 田無市においては、住民からの行政に対する要請が複雑かつ多様化し、右要請に応えるために議会の議員の市政に対する不断の調査研究活動が必要とされる状況の下で、これまで、そうした調査研究活動費に相当するものは、出張の必要の都度請求するものとされていた議会活動費の中の旅費のみであり、それでは不十分であるとの議会の各会派の代表者会議等からの要望があったこともあって、平成三年五月一日から本件規則及び本件要綱を施行し、地自法二三二条の二に基づく補助金として市政の調査研究活動に要する費用を議会の各会派に対して交付することとし、平成三年度から、被告市長が本件研究費の交付を行っている。
2 本件規則によれば、本件研究費は、議会の各会派の市政に関する調査研究に要する費用として(同規則一条)、議会の各会派に対して交付するものとされ、ただし、いずれの会派にも所属しない議員がある場合は、議長と被告市長とが協議して、当該議員を交付の対象とすることができるものとされている(同規則二条)。また、本件研究費は、各年度ごとに交付するものとされ、その額は、予算の範囲内において、各会派の所属議員数に応じ、議員一人につき被告市長が算定した額とするとされ(同規則三条)、各会派の代表者は、本件研究費の交付を受けようとするときは、市政調査研究費交付申請書により毎年五月末日までに議長を経由して被告市長に申請しなければならず、右交付申請書には、会派届を添付することとされており(同規則五条)、被告市長は、本件研究費の交付の申請があったときは、本件研究費の交付額を決定し、市政調査研究費交付決定通知書により、議長を経由して代表者に通知するものとされている(同規則六条)。
そして、本件研究費の経理に必要な事項を定める本件要綱においては、本件研究費の支出項目を、会派で行う委託調査に要する費用、会派で行う調査研究のための出張調査費、会派で行う調査研究のための会場借上料、会派で行う調査研究のための諸会議に要する食糧費、会派で行う調査研究に関する印刷物の作成に関する経費、会派で行う調査研究のため必要とする通信費、会派控室で使用する事務用備品購入に要する経費、会派で雇用するアルバイト賃金、その他会派で行う調査研究に必要な経費の九項目に限定した上で、本件研究費を右支出項目の経費に支出できるとし(本件要綱第2)、また、右委託費、出張調査費、備品購入費、アルバイトの雇用に関しては個別に詳細な支出基準等が定められており、議長等に対する事前の届出や報告等を要する場合が規定されている(同要綱第3)。
また、本件規則及び本件要綱によれば、本件研究費交付後の手続についても、会派は、交付を受けた本件研究費の経理を行い、常にその収支を明確にしておかなければならず(本件規則九条一項)、会派においては、代表者が支出決定者として支出を決定し、本件研究費の適正な執行に努めなければならないとされ(本件要綱第4(1))、会派は、構成議員のうちから経理責任者一名を定め、経理責任者は、本件研究費の出納を掌握し、領収書等の証拠書類を整理保管しなければならず(同要綱第4(2))、会派は、預金口座を設け、経理帳簿を備えなければならないとされ(同要綱第4(5))、経理責任者は、支出決定者の決定を経て経費を支出し、支出に当たっては、領収書を徴するものとされている(同要綱第4(3))。さらに、代表者は、交付に係る会計年度が終了したとき、又は会派を解散したときは、三〇日以内に実績報告書を議長を経由して被告市長に提出しなければならないとされ、実績報告書においては、調査研究費支出調書を添付することとされ(本件規則九条二項)、支出の内訳の記載がされることとなっている。
実績報告書及び調査研究費支出調書は、まず、議会事務局に提出され、議会事務局において、その内容を確認、点検した上で議長を経由し、最終的には被告市長が確認の上で決裁を行うこととなっているが、加えて、田無市においては、実際に、実績報告書提出の際に、各会派に領収書も提出させており、議会事務局において、その支出項目等が本件要綱に適合しているか否かも含めて、支出金額の内容を確認、点検した後、領収書を各会派に返却している。また、出張調査費に関しては、各出張先に議員の活動状況を確認する等の事後的なチェックも議会事務局によって行われている。なお、議会事務局による確認、点検の結果、支出内容に問題があるような場合は、最終的には被告市長が確認し、必要と判断されれば、実態調査や返還を命ずる等の措置を講ずることもあり得るものとされている。
そして、実績報告書が提出され、その内容の確認、点検の結果、交付された本件研究費に未執行額が生じている場合には、各会派の代表者から議長を経由し、被告市長に対して未執行額の返還報告書が提出され、未執行額の返還、精算が行われることになる。
3 右のように、本件研究費が議会の会派に対して交付することとされたのは、個々の議員が、個別に所要の資料等を集め、調査研究活動を行うことは非能率的であり、また、議員は、平素、思想や政治的立場を同じくする議員と会派を結成して、議会活動を行っており、議会運営も議会の会派を基礎としていることから、市政に対する調査研究活動も議会の会派ごとに行われることが適切かつ能率的であるとされたためである。
また、市政に対する調査研究活動という性格上、柔軟かつ臨機の対応が必要であり、事前に個別具体的な活動計画やその費用等を明らかにすることが困難であることから、補助金等交付規則の特則として本件規則を制定して、各年度ごとに定額の費用を交付することとし、本件要綱により、その支出項目、支出基準等を具体的に定めて使途を限定し、目的どおりの使用がなされているか否かを事後的に検査する制度としたものである。
本件研究費の交付額は、会派の所属議員数が多くなることにより、調査研究活動の費用も増加することを考慮して、会派の所属議員数に応じ、議員一人につき市長が算定する額を交付することとし、交付額の基準となる議員一人当たりの額については、従来の議会活動費の中の会派調査旅費が議員一人当たり一五万円として予算に計上されており、本件研究費には、調査旅費以外の項目も含まれること、各会派の要望があったこと等を勘案して、当初は議員一人当たり二〇万円とされたが、平成五年度においては、各会派から本件研究費の増額の要請があり、市政調査研究費等を制度化している近隣の他の自治体の交付額等を勘案し(なお、東京都内において、同種の調査研究費の交付を制度化している二二市の交付額の議員一人当たりの年額は、平均で二八万円程度であった。)、議員一人当たり三〇万円への増額が予算案に計上され、予算審議の上、議決された。
そして、本件規則の制定の準備は、議会事務局において進められ、議会事務局が本件規則案を作成した上、企画部長を通じて幹部会議に付議され、平成三年四月二五日にその承認を得て、同年五月一日から本件規則が公布、施行された。
また、本件規則の実施に当たっては、本件研究費の支出項目、支出基準、支出手続等の経理に必要な事項が本件要綱によって定められることとなり、本件要綱案の作成も議会事務局によって行われたが、会派の調査研究活動は、その性質上、被告市長を初めとする執行機関からの干渉を受けることなく、議員によって自主的に行われるべきものであることを考慮し、本件規則の執行基準や手続等は、執行機関からの干渉を排して、議会側が自主的に定めることが望ましく、本件要綱は、むしろ議長がこれを定めるのが合理的であるとされて、本件要綱案は幹部会議に付議されることなく、同年四月二六日に議長がこれを決裁し、同年五月一日から本件要綱が施行された。
以上の事実が認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。
二 原告は、本件規則及び本件要綱が、憲法、地自法、田無市条例等に違反し、本件規則及び本件要綱に基づく本件研究費の交付が違法である旨主張する。そこで、以下、原告の主張する点について順次検討する。
1 地自法二〇四条の二違反の点について
原告は、本件研究費は議員に対する給付にほかならず、法律上の根拠なくこれを交付することは、地自法二〇四条の二に違反する旨主張するが、同条は、法律又は条例に基づかない議員に対する給与その他の給付の支給を禁止するものであり、前記のとおり、本件研究費は議会の会派に対して交付されるものであり、議員に対して交付されるものでないから、これに同条の適用があるとはいえないというべきである。
なるほど、本件規則によれば、本件研究費の交付額は、各会派の所属議員数に応じて算定されることとされており、また、いずれの会派にも所属しない議員に対しても交付することができることとされている。しかしながら、前記認定のとおり、各会派の所属議員数に応じて交付額を算定することは、交付額を合理的に算定するための手段にすぎず、本件研究費の交付及びその支出に関して会派が関与する程度、支出項目の限定、本件研究費交付後の検査体制等からみても、本件研究費は会派が行う調査研究活動の費用として交付されるものであり、本件研究費が会派に交付された後に個々の議員に分配される等の実質的に議員に対して交付されるものと認められるような事情もなく、交付の対象者はあくまで会派であるというべきである。また、いずれの会派にも所属しない議員に対する交付ができることとされているのも、他の議員と会派を結成して議会活動を行うか否かは本来自由であるし、所属議員が一人の会派が生ずることはあり得ることであり、また、その一人会派も固定的なものではなく、選挙や議員の移動等の結果によっては、所属議員が複数になることもあり得るのであるから、いずれの会派にも所属しない議員を一人会派とみて、これを交付の対象とすることがあったとしても、直ちには不合理とはいえず、これをもって、本件研究費が議員個人に対する給付であるということはできないというべきである。
したがって、原告の右主張は理由がない。
2 地自法二三二条の二、憲法一四条等違反の点について
原告は、補助金等交付規則の特則として本件規則及び本件要綱を定め、補助金交付の対象、目的等を個別に審査等することなく、本件研究費を交付することは、補助金等交付規則及び地自法二三二条の二に違反し、そうした特則を定めることは、議員を厚遇し、憲法一四条に違反する旨、また、本件研究費の目的、使途等を定めずに交付することは違法である旨主張する。
しかしながら、前記認定のとおり、本件研究費が必要のたびごとの個別的な交付申請と審査によることなく、各年度ごとに定額を交付することとされた理由は、市政の調査研究活動の性格上、柔軟かつ臨機の対応が必要であり、事前に個別具体的な活動計画やその費用等を明らかにすることが困難であるとされたことによるものであり、前記認定のとおり、支出項目や支出基準等の限定がされ、事後的な検査手続が定められ、精算手続が行われていることを勘案すれば、そのような交付の方法をとることが不合理なものとはいえないというべきである。また、補助金等交付規則は、その四条が「補助金等に関しては、他に特別の定めのあるものを除くほか、この規則の定めるところによる。」と規定していることからも明らかなように、補助金等に関する特別の定めを設けることを否定しているものではなく、本件規則を補助金等交付規則の特則として定めることは、補助金等交付規則と矛盾するものでないことは明らかである。さらに、補助金等交付規則の特則として、本件規則を定めることが不合理とはいえないことは前記のとおりであり、本件研究費につき他の補助金等と異なる取扱いをすることが、憲法一四条一項の禁止する合理的な理由のない差別に当たらないことは明らかであるから、この点についての原告の主張も理由がない。
なお、議会の会派が市政の調査研究活動を行うことは公益に合致するものであり、そのための補助金が地自法二三二条の二にいう公益上必要がある補助金であること自体は明らかである。もとより、本件研究費が公益上必要がある補助金に当たるといい得るためには、本件研究費が市政の調査研究活動という目的にそって使用されることが必要であり、原告が、本件研究費の目的、使途等を定めずに交付することが違法であると主張する趣旨も、このような観点からの公益上の必要性の欠如をいう趣旨と解し得るところである。しかしながら、前記認定のとおり、本件研究費は、会派の市政に関する調査研究活動に要する費用として交付されるものであり、本件要綱により、その具体的な支出項目、支出基準等が定められ、その公正な経理が行われるよう支出の手続が定められていること、さらに、事後的な検査体制として、実績報告書の提出が義務づけられ、実際には、議会事務局において領収書を提出させた上でその検査が行われていること等からすれば、本件研究費の使途は限定されており、公益上必要がある補助金に当たるということができる。
3 憲法八九条違反の点について
原告は、議会の会派に本件研究費を交付することとした本件規則及び本件要綱は、憲法八九条に違反する旨主張する。
しかしながら、議会の会派は、同条にいう宗教上の組織、団体でもなく、慈善、教育、博愛の事業を行う団体でもないから、これに本件研究費を交付しても同条に違反するものでないことは明らかである。
4 政治資金規正法八条違反の点について
原告は、議会の会派は、政治資金規正法の政治団体に当たるところ、政治団体届出をしていない会派に金員を交付することは、政治資金規正法八条に違反する旨主張する。
しかしながら、同法は、議会制民主政治の下における政党その他の政治団体の機能にかんがみ、政治団体及び公職の候補者により行われる政治活動が国民の不断の監視と批判の下に行われるようにするため、政治団体の届出並びに政治団体及び公職の候補者に係る政治資金の収支の公開及び授受の規正その他の措置を講ずることにより、政治活動の公明と公正を確保し、もって民主政治の健全な発達に寄与することを目的とするものであり(同法一条)、同法八条が政治団体としての届出前の寄附の受領を禁止した趣旨は、届出前に寄附等がなされることにより、政治資金が隠密裡に流通することを防止して、政治活動の公明と公正を確保しようとするものであるところ、本件研究費は、会派の調査研究活動に対する地方公共団体の補助金として交付されるものであり、その交付申請に当たっては、会派届を添付した申請書を提出するものとされており、その交付も予算に基づいてなされるものであるから、本件研究費の交付は同法八条の趣旨に反するものといえないことは明らかである。
したがって、原告の右主張は理由がない。
5 交付額増額の違法について
原告は、平成五年度からの本件研究費の増額については、一切審議がなされておらず、右増額は違法である旨主張する。
しかしながら、前記認定のとおり、右増額については、本件研究費の交付額が必ずしも十分なものではないことから、近隣の市の同種の調査研究費の交付額等を参考にして決定された上、予算審議を経て議決されたものであり、増額後の金額が特段に高額であるような事情も認められないから、右主張は理由がない。
6 地自法一一七条違反の点について
原告は、本件研究費の交付のための予算、決算に関する議事に、本件研究費の交付を受ける議員が参加することは地自法一一七条に違反する旨主張する。
しかしながら、同条により議長及び議員が議事から除斥されるのは、特定個人にとって直接的かつ具体的に利害関係のある事件に限られるというべきところ、本件研究費の交付を直接受けるのは、原則として会派であり、個々の議員は必ずしも直接的な利害関係があるとはいえない上、議員報酬や費用弁償等のように特定の議員ではなく議員全体に係る一般的な事項については、仮に直接的な利害関係があるとしても、同条の適用はないというべきであるし、予算の一体性からすれば、予算の個々の費目中に、個別具体的利害関係がある事項が含まれているとしても、その議員が予算審議から除斥されることはないというべきである。
したがって、いずれにしても、原告の右主張は理由がない。
7 議長等の関与の違法について
原告は、本件規則において、議長及び議会事務局が本件研究費の申請、交付手続に関与することとされているが、議長等の関与には法的根拠がなく、本件研究費は議会に対する交付であり、違法である旨主張する。
しかしながら、前記認定のとおり、本件研究費は議会の会派に対して交付されるものであり、議長が関与することとされている交付申請、交付決定の通知、実績報告、精算の手続は、議会の事務といい得るものであり、議長が地自法一〇四条により議会の事務を統理する権限を有する以上、議長の関与に法的根拠がないとはいえないし、また、右各手続に議会事務局が実質的に関与しているとしても、乙四号証によれば、議会事務局長は、本件補助執行等規則により、被告市長の権限に属する事務のうち、負担金、補助金及び交付金の交付申請並びに請求に関して補助執行をすることができるから、議会事務局の関与に法的根拠がないともいえない。そして、右のような議長及び議会事務局の関与は、議会の会派の調査研究活動についての執行機関の干渉をできる限り排除し、議会側の独立性を保つための内部的な検査体制を重視するという趣旨によるものというべきであり、これをもって、本件研究費が実質的に議会に対して交付されているものということができないことも明らかであるから、原告の右主張は理由がない。
8 制定手続等の違法について
原告は、本件規則の制定手続が組織条例及び設置運営規則に違反し、また、本件要綱の議長による施行が本件規則自体に違反している旨主張する。
前記認定のとおり、本件規則の制定の準備は、議会事務局において進められ、議会事務局が本件規則案を作成した上、企画部長を通じて幹部会議に付議されて、その承認を得たものであるところ、〔証拠略〕によれば、組織条例二条には、総務部の事務分掌として「議会、文書、条例の立案及び法規に関すること」が規定されているが、ここにいう「議会に関すること」とは、執行機関として議会にかかわる部分の事務を意味するとされているところ、本件規則は議会の会派による調査研究活動という議会内部に関する事項であるとされたため、その規則案の作成は、議会事務局が被告市長の権限に属する事務の補助執行機関として行ったこと、設置運営規則一〇条及び一二条二項(3)によれば、規則の制定に関する事項は、幹部会議に付議すべきものとされており、同規則一四条一項は、「部長は、所管事項中幹部会議に付議すべき事案があるときは、決定事項については資料等を添えて、幹部会議に直接付議すべきものとする。」とし、同条二項は、「企画部長は、部に属しない課長の所管事項中幹部会議に付議すべき事案があるときは、部に属しない課長に代わって、前項の例により幹部会議に付議すべきものとする。」と規定していること、本件規則については、幹部会議への付議手続の名義人は議会事務局長であるが、議会事務局長が幹部会議のメンバーではないため、設置運営規則一四条二項により、企画部長が実際に幹部会議に付議したことが認められ、右のような本件規則の制定手続に組織条例及び設置運営規則に違反する不合理な点はないというべきである。
また、本件要綱は、議長によって制定、施行されたものであるが、議長による制定、施行がなされたのは、前記認定のとおり、会派の調査研究活動がその性質上被告市長を初めとする執行機関からの干渉を受けることなく議員によって自主的に行われるべきものであることを考慮して、本件研究費の支出項目、支出基準、支出手続等の経理に必要な事項を議会側が自主的に定めることが望ましく、むしろ議長がこれを定めるのが合理的であるとされたことによるものであり、本件規則一〇条が、本件規則の施行について、必要な事項は被告市長が別に定める旨規定していることを勘案しても、議長による本件要綱の制定、施行が特段不合理であるというような事情は存在せず、これをもって、直ちに本件要綱自体が違法、無効であるということはできないから、本件研究費の交付が違法となるということもできないというべきである。
したがって、これらの点についての原告の主張も理由がない。
三 以上によれば、本件研究費の交付が違法であるとして、既に交付された本件研究費相当額の損害賠償及び将来の支出の差止めを求める原告の請求は、いずれも理由がないからこれを棄却することとする。
(裁判長裁判官 秋山壽延 裁判官 竹田光広 森田浩美)