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東京地方裁判所 平成6年(ワ)21489号 判決 1995年10月31日

原告

株式会社かんそうしん

右代表者代表取締役

勝田秀二

右訴訟代理人弁護士

加藤長昭

被告

有限会社セイキョウ企画

右代表者清算人

澤千秋

被告

澤千秋

右両名訴訟代理人弁護士

駒場豊

主文

一  被告らは、原告に対し、連帯して金三五三九万九〇八二円及び内金一六九七万七四六四円に対する平成五年四月二九日から、内金一八四二万一六一八円に対する平成四年七月二九日からそれぞれ支払済みまで年18.25パーセントの割合による金員を支払え。

二  被告有限会社セイキョウ企画は、原告に対し、別紙ゴルフ会員権目録記載の各ゴルフ会員権の名義変更手続をせよ。

三  訴訟費用は被告らの負担とする。

四  この判決は第一項に限り仮に執行することができる。

事実

第一  当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

主文同旨

二  請求の趣旨に対する答弁

1  原告の請求を棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

第二  当事者の主張

一  請求原因

1  被告有限会社セイキョウ企画(被告会社)は、平成元年一〇月二日、株式会社北浦ゴルフ倶楽部から、別紙ゴルフ会員権目録記載の各ゴルフ会員権をそれぞれ代金二五〇〇万円で買い受け、同日、頭金として二五〇万円ずつを北浦ゴルフ倶楽部に支払った。

2  被告会社は、同日、原告との間で、各ゴルフ会員権の残代金について、それぞれ次のとおり立替払委託契約を締結した(以下、別紙ゴルフ会員権目録一の会員権についての契約を「第一契約」、同目録二の会員権についての契約を「第二契約」という。契約の内容は同一である)。

(一) 立替金 二二五〇万円

(二) 分割手数料

九五四万九〇〇〇円

(三) 支払総額

三二〇四万九〇〇〇円

(四) 支払方法 平成元年一〇月二八日に二七万六〇〇〇円を、同年一一月から平成一一年九月まで毎月二八日限り二六万七〇〇〇円ずつを支払う(一二〇回払い)。

(五) 遅延損害金 年18.25パーセント

(六) 期限の利益 分割金の支払を遅滞したときは、当然に期限の利益を喪失する。

3  被告会社は、平成元年一〇月二日、第一契約及び第二契約に基づく各立替金支払債務を担保するため、原告に対し、それぞれのゴルフ会員権に譲渡担保権を設定し、被告会社が期限の利益を失ったときは、ゴルフ会員権を原告が一般に適当と認められる方法、時期、価額で売却するか、原告自らが取得することを承諾した。

4  被告澤千秋は、平成元年一〇月二日、原告に対し、被告会社の第一契約及び第二契約に基づく各立替金支払債務について連帯保証した。

5  原告は、平成元年一〇月一一日、北浦ゴルフ倶楽部に対し、第一契約及び第二契約に基づいて、立替金二二五〇万円ずつを支払った。

6  被告会社は、この各立替金支払債務について、第一契約については平成五年四月分の、第二契約については平成四年七月分の分割金の支払を怠り、それぞれ期限の利益を喪失した。

7  よって、原告は、被告らに対し、立替払委託契約に基づき、未払分割金の合計額から未経過期間の分割手数料を控除した立替金残金合計三五三九万九〇八二円及び内金一六九七万七四六四円(第一契約)に対する平成五年四月二九日(期限の利益を喪失した日の翌日)から、内金一八四二万一六一八円(第二契約)に対する平成四年七月二九日(期限の利益を喪失した日の翌日)からそれぞれ支払済みまで約定の年18.25パーセントの割合による遅延損害金の支払を求めるとともに、被告会社に対し、譲渡担保権に基づき、各ゴルフ会員権の名義変更手続をすることを求める。

二  請求原因に対する認否

1  請求原因1ないし4の事実は認める。

2  同5、6の事実は不知。

三  抗弁

1  被告らは、有限会社成伸舎の依頼により、成伸舎の代わりにゴルフ会員権を購入し、原告との間で立替払委託契約などを締結したのであり、契約の実質的当事者は成伸舎である。

原告は、契約の実質的当事者が成伸舎であることを認識していたか、認識し得た。

2  原告は、ゴルフ会員権の名義変更手続を求めることで譲渡担保権を実行しているのであるから、実行時のゴルフ会員権の時価で清算する義務があり、時価が債権額を上回るときは剰余金の交付と引換えに名義変更手続を求めるべきであるし、債権額が時価を下回るときは時価を控除した残額のみの支払を請求すべきである。

その場合の時価は、本件のゴルフ会員権が現在名義変更を停止しており、売買による時価が成立しない状況にあるから、預託金の償還時期における額面から公定歩合(年一パーセント)又は民法所定の年五分の割合による中間利息を控除して算出した譲渡担保権の実行時の金額とするべきである。

四  抗弁に対する認否

1  抗弁1の事実は否認する。

2  同2の事実は否認し、主張は争う。原告はゴルフ会員権を第三者に売却することによって譲渡担保権を実行しようとしているのであるから、その売却に至るまでは清算義務は生じないし、また、被告はあらかじめ第三者に売却する方法による譲渡担保権の実行を承諾しているのであるから、清算金との同時履行の抗弁を主張することは許されない。

第三  証拠

本件訴訟記録中の書証目録の記載を引用する。

理由

一  請求原因について

1  請求原因1ないし4の事実は、当事者間に争いがない。

2  証拠(甲一の1・2、二、三の1・2)によると、原告は、平成元年一〇月一一日、北浦ゴルフ倶楽部に対して立替金二二五〇万円ずつ合計四五〇〇万円を支払ったこと、被告会社は、この立替金支払債務について、第一契約については平成五年四月分の、第二契約については平成四年七月分の分割金の支払を怠り、それぞれ期限の利益を喪失したこと、未払分割金の合計額から未経過期間の分割手数料を控除した立替金残金は、第一契約が一六九七万七四六四円、第二契約が一八四二万一六一八円の合計三五三九万九〇八二円であることが認められる。

二  抗弁について

1  抗弁1の事実は、これを認めるに足りる証拠はない。

2 預託金会員組織のゴルフ会員権を目的として金融機関との間に締結される譲渡担保契約においては、譲渡担保権の実行方法は、ゴルフ会員権の市場価格が形成されていることや名義変更料が高額であることから、第三者に売却処分することによって清算する方法が原則的である。本件においても、原告はこのような処分清算を行おうとしているのであって、被告は、原告が譲渡担保権に基づきゴルフ会員権を第三者に売却することをあらかじめ承諾しており(争いがない)、その際に原告の要求があり次第、ゴルフ場に対する名義変更手続に協力することを約束している(甲一の1・2)。

このような場合、ゴルフ会員権は第三者への売却によって第三者に有効に移転し、売却の時に、被担保債権は換価額が債権額以上のときは全額につき、換価額が債権額に足りないときは換価額の限度で満足を得て譲渡担保関係が消滅し、被告は、換価額が原告の債権額を超えるときに、その超過額を原告から清算金として受領することができることになる。

したがって、第三者への売却の前に被担保債権が満足を得ることはないし、被告が第三者への売却のために名義変更手続に協力するよう求められた場合、清算金を支払うのと引換えにのみこの義務の履行に応じるとの抗弁を主張することも許されないから、抗弁2は理由がない。

三  結論

以上によれば、原告の請求はいずれも理由があるからこれを認容し、訴訟費用の負担について民事訴訟法八九条、九三条を、仮執行の宣言について同法一九六条をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官片山良廣 裁判官小野憲一 裁判官男澤聡子)

別紙ゴルフ会員権目録<省略>

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