大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京地方裁判所 平成6年(ワ)4720号 判決 1995年1月11日

主文

一  本訴事件について

本訴被告は本訴原告に対し、金三〇二五万九九〇〇円及びこれに対する平成五 年二月二八日から支払済みまで年六分の割合による金員を支払え。

二  反訴事件について

1  反訴被告は反訴原告に対し、金九六五万七九〇〇円及びこれに対する平成  六年四月一二日から支払済みまで年六分の割合による金員を支払え。

2  反訴原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用について

訴訟費用は、本訴及び反訴を通じて、本訴原告・反訴被告に生じた費用の二分 の一を本訴被告・反訴原告の負担とし、その余は各自の負担とする。

理由

【事実及び理由】

第一  請求の趣旨

一  本訴事件

主文第一項と同旨

二  反訴事件

反訴被告は反訴原告に対し、金三五〇〇万円及びこれに対する平成四年五月三一日から支払済みまで年六分の割合による金員を支払え。

第二  事案の概要

(以下、本訴原告・反訴被告を「原告」と、本訴被告・反訴原告を「被告」と略称する。)

一  判断の基礎となる事実

1 原告は、建築工事請負、不動産販売等を主な営業内容とする会社である。

2 被告は、平成三年四月ころ、東京都中野区本町一丁目二三番地九号所在の土地にオフィスビルを建築することを計画し、当初は他の会社と交渉を始めていたが、同年五月ころ、知人から三井不動産株式会社の紹介を受けた。しかし、三井不動産株式会社では、被告の計画するオフィスビルは同会社としては規模が小さすぎるとして、被告の計画する程度のオフィスビルを営業の対象としている原告を紹介した。このような経過を経て、原告と被告がオフィスビルの建築について交渉することとなった。

3 原告と被告は、平成三年九月二九日、被告を委託者、原告を受託者として、次の約定により、被告のオフィスビル(通称安仲ビル)新築工事に関する設計業務委託契約を締結した(以下「本件設計契約」という。)。

(一) 報酬額 二八九七万三九〇〇円(消費税八四万三九〇〇円を含む)。

(二) 支払方法 契約締結時 一〇〇万円

設計業務完了時

残金全額

(三) 収入印紙代 二万円(支払時期・契約締結時)

4 原告は、平成四年四月一三日、本件設計契約に基づく設計業務を完了し、建築確認を得た。その後、設計図書の引渡しも終えている。

5 ところで、本件設計契約締結に際し、原告から被告に対し、賃料保証書と題する書面が差し入れられている。この書面には、安仲ビル完成後の賃料に関し、次のような記載がある(以下、この保証書に基づく賃料保証を「本件賃料保証契約」という。)。

(一) 賃貸料 月額(坪当たり保証料)

二万一〇〇〇円

保証金(坪当たり額)

三五万七〇〇〇円

(二) 賃料増額率 二年毎六パーセント増額

(三) 賃貸料保証期間 一五年とし、原告と被告の合意の上、年間の自動更新、継続を行う。

(四) 建物の管理 テナント斡旋、運営、管理は原告が行なう。

(五) 原告が建物の建築を請け負い、設計契約後に決定する専有面積に対して右の賃料の保証をするものとする。

6 原告と被告は、平成三年一二月一五日、被告を注文者、原告を請負人として、次の約定により、安仲ビル新築工事に伴う既存建物の解体工事及び鋤取工事の請負契約を締結した(以下、この契約を「本件解体・鋤取契約」という。)。

(一) 報酬額 一一一七万五五〇〇円(消費税三二万五五〇〇円を含む。)

(二) 支払方法 契約締結時 五〇〇万円

設計業務完了時

残金全額

(三) 収入印紙代 二万円(支払時期・契約締結時)

7 原告は、本件解体・鋤取契約に基づき、平成四年一月三一日、既存建物の解体工事を完了した。しかし、鋤取工事については、着手するには到らなかった。

(以上の事実は当事者間に争いがない)。

二  原告の本訴請求に係る主張

1 被告は、本件設計契約についての請負代金のうち、契約締結日に支払うべき一〇〇万円及び印紙代二万円を支払ったのみで、その余の支払をしない。

2 また、原告と被告は、本件解体・鋤取契約に係る工事のうち、まず解体工事に着手することを合意し、原告が右合意に基づき前記一の7のとおりこれを完了したのに、その請負代金の支払をしない。右解体工事費用の見積額は二二六万六〇〇〇円が相当である。したがって、原告は右契約に基づき、右見積額相当の報酬請求権を有する。

なお、仮に本件解体・鋤取契約に基づく解体工事について、解体工事部分に関する代金の約定がない等の理由により契約上の報酬請求権が認められないとしても、原告は被告との契約に基づき解体工事を完了したのであるから、原告はその出来高に応じた金額の相当報酬請求権、不当利得返還請求権又は損害賠償請求権を有するところ、右解体工事費用の見積額がその出来高となる。

3 よって、原告は被告に対し、本件設計契約の請負残代金二七九七万三九〇〇円及び解体工事代金債権二二六万六〇〇〇円の合計三〇二五万九九〇〇円及び右各支払期日後である平成五年二月二八日から支払済みまで商事法定利率年六分の割合による金員の支払を求める。

三  被告の反訴請求に係る主張

1 原告と被告との間で締結された本件設計契約は、本件賃料保証契約と不可分一体のものである。現に、本件設計契約と本件賃料保証契約は同じ日に契約がなされている。

2 ところが、平成四年四月初旬、原告は被告の次男で本件設計契約の交渉にあたっていた安仲峰敏(以下「峰敏」という。)に対し、坪あたり二万一〇〇〇円の賃料保証はできなくなった、保証額を坪あたり一万六〇〇〇円とする契約変更に応じてもらいたいとの申入れをしてきた。この賃料保証の一方的減額は、何の前触れもなく、突然、新宿三井ビルの原告の事務所に峰敏を呼び出して言い渡されたものである。峰敏は、それでは約束が違う、四分の一近くも賃料保証をカットされたのではとても採算が合わないということで、即時その場で右申出の撤回を求め、もし撤回されないなら本件設計契約を白紙に戻すしかない旨原告に伝えた。

3 その後も、被告は原告に対し、本件賃料保証契約の履行を求めたが、原告は歩み寄りの態度を示さないので、平成四年五月、被告は峰敏を介して原告に対し、本件設計契約を白紙に戻す旨口頭で伝え、右契約解除の意思表示をした。

4 被告は、原告の右債務不履行により、次のとおり損害を被った。

被告及び安仲フミ所有の土地のうち、道路に面する部分三四坪は、都営地下鉄の乗り入れ及び都市開発に伴う道路拡張のために東京都によって買い取りないし収用が予定されていた。そして、東京都による土地の買い入れは、東京都の予算上、ビル建築等を予定しているものを後回しにし、買い取りを希望する者の中から個別事情を考慮しながら優先的に行われている。被告も、原告との間でビル建築をして保証賃料を受け取るという話をしていなければ、早期に道路拡張部分を東京都に買い取ってもらっていたところであった。その場合、収用時期は平成四年六月で、収用価格は坪あたり一九〇〇万円程度のはずであった。

ところが、被告が原告と本件設計契約を締結し、原告が契約を守ってくれると信じたことにより、被告は道路拡張部分を東京都に売却する時期を失してしまい、平成六年二月九日には、収用価格坪あたり一四三四万六〇〇〇円と通告された。

右三四坪のうち、原告所有部分は三〇・七坪(一〇一・三五平方メートル)であるから、収用の遅れにより、被告は、一億四二八七万七八〇〇円(一九〇〇万円と一四三四万六〇〇〇円の差額×三〇・七坪)の利益を喪失したことになる。

また、被告はビル建築予定地のうち道路拡張部分を除いた分を平成五年六月に売却し、売買代金から既存借入金の支払をしたが、その間の金利月額八〇万円も、もし被告が原告と契約を締結しなければ、被告が支払わなくて済んだ損害である。この総額は九六〇万円(八〇万円×平成四年六月から平成五年六月まで一二か月)に及ぶ。

さらに、平成四年六月に東京都に売り渡していれば、その代価を一年間にわたり運用できたのであり、その額は年四パーセントの利率としても、二五八四万円に及ぶ。

以上の合計額は一億七八三一万七八〇〇円となる。

5 被告は、本件設計契約解除に基づく原状回復として、原告に対し、既払の手付金一〇〇万円及び印紙代二万円の返還請求権を有する。

6 原告と被告は本件解体・鋤取契約を締結したが、その中に含まれていた既存建物の解体について、契約時点では工事がいつ始まるのか明確ではなかった。このような場合、原告としては、解体工事に着手する時期が具体的になった時点で、その旨を被告に通知すべきであったのにこれを怠り、平成四年一月末ころ解体工事に着手し、そのために被告の同族会社である衣盛社のスポンサー預かりの印刷物を滅失してしまった。そこで、被告は再度の印刷費用として六〇万円を賠償したので、右金額を原告の右債務不履行に基づく損害として請求する。

四  争点

1 本件解体・鋤取契約に基づく解体工事の完了により原告が取得する請求権の内容及び額

2 本件賃料保証契約の趣旨及び賃料保証を拒んだ原告に債務不履行があったといえるか。

3 仮に原告に右2の債務不履行があるとした場合、本件設計契約は被告の契約解除の意思表示により解除されたものといえるか。

4 仮に原告に右2の債務不履行があるとした場合、被告にどのような損害が生じたか。

5 原告に解体工事に着手する時期の通知を怠った過失があるといえるか。あるといえる場合、これによって被告にどのような損害が生じたか。

第三  争点に対する判断

一  本件設計契約の履行により原告が被告に対して有する請負代金債権の額

原告が本件設計契約に基づき安仲ビルの設計業務を完了し、建築確認を得た後、設計図書を引き渡したことは、当事者間に争いがない。したがって、被告は原告に対し、右請負代金として二八九九万三九〇〇円の支払義務があるところ、被告はそのうち一〇二万円を支払ったのみであるから、被告は原告に対し、残代金二七九七万三九〇〇円を支払う義務がある。

二  本件解体・鋤取契約に基づく解体工事の完了により原告が取得する請求権の内容及び額

原告が本件解体・鋤取契約に基づき解体工事を完了したことは、当事者間に争いがない。

ところで、右解体工事についての請負代金の額について、原告と被告の間に合意があったことを認めるに足りる証拠はない。しかし、原告は建築工事請負等を業とする会社であり、その営業の範囲内で右解体工事を行ったことが明らかであるから、原告は被告に対し、商法五一二条に定める報酬請求権を有するところ、原告は右解体工事を下請けに出し、右工事を実施した戸田建設株式会社に対し一八五万四〇〇〇円を支払っていること、右解体工事についての原告の見積額は二二六万六〇〇〇円であること、本件解体・鋤取契約締結の際に原告は収入印紙代二万円を支出していること(争いがない)が認められる。

右認定事実によれば、原告が右解体工事を実施したことによる相当報酬は、二二八万六〇〇〇円であると認めるのが相当である。

三  本件賃料保証契約の趣旨及び賃料保証を拒んだ原告に債務不履行があったといえるか。

1 本件賃料保証契約は、《証拠略》から明らかなとおり、原告が請負人となって安仲ビルの建築工事を完了した場合において、その賃貸面積に対し、入居可能日より九〇日を経過した日の翌日から収受しうる賃料の最低額を保証したものである。

右のような賃料保証は、建物建築工事の請負業者が建物建築の発注を受けるために注文主に対して行うものであるが、かつては、不動産の賃料は毎年上昇するものと見込まれていたため、賃料保証をした後、賃料水準が著しく低下し、賃料保証をした時点とは事情が異なってきた場合の対処の方法につき、契約書上特に規定がないことが多く、昨今のように賃料水準が急激に低下したような場合には、その解釈をめぐって紛議が生じうる。本件賃料保証契約の契約書である乙第一号証にも、賃料水準が著しく低下した場合のことを規定した条項はなく、右契約成立時の事情等を考慮して、当事者の合理的意思を解釈によって補充することにより対処するほかない。

2 建物建築の注文主と建物建築工事の請負業者との間で、当該業者が請負人となって建物建築工事を完了することを停止条件として、工事完了後の一定の日以降の賃貸部分の賃料を工事請負業者が保証する旨の契約が締結された場合、工事請負業者は、その後通常の経過により、建物設計業務及び工事請負契約締結の準備行為が行われ、工事請負契約が締結され、請負工事が実行された場合には、仮にその間に賃料水準の低下が生じたとしても、右契約を維持させることが信義に反するような特別な事情のない限り、当初保証したとおり額の賃料を保証すべき義務を負うものというべきである。そこに見込み違いがあったとしても、営業活動を行う業者が賃料保証の契約を締結した以上、契約どおりの履行を迫られるのは当然である。

しかし、設計業務の遂行過程ないし建築工事請負契約の締結・履行過程において、賃料保証をした当初においては予想できなかったような著しい遅滞その他の事態が生じた場合には、当事者は、一般の債務不履行の規定に則り、一定期間内に一定の行為をするよう催告した上、右期間内に予想外の事態についての適切な修復がなされない限り、賃料保証についての契約を解除することができるものと解するのが相当である。

もっとも、右予想外の事態の発生が、当事者の責めに帰すべき事由によらない場合には、右契約解除権は発生しない。この場合には、一般の事情変更の原則の適用により契約が無効となったものといえるかどうかの検討が残るのみである。

3 このような観点から、原告の被告に対する賃料保証額の減額の申入れを法律上どのように評価すべきかについて考える。

本件賃料保証契約が締結されたのは平成三年九月二九日であり、その当時は、平成四年一月ころまでに建物建築の基本設計及び実施設計を終え、同年二月内に建物建築工事請負契約を締結し、同年三月に工事に着工し、平成五年三月末に工事を完了させることが予定されていた。しかし、平成三年一二月下旬ころから被告の親族間の意見の不一致が表面化し、平成四年一月初旬以降多数回にわたり、被告の親族の一部が安仲ビルの建築を中止するよう要請する内容証明郵便を原告に送付する等の行為に及んだため、安仲ビル建築請負契約締結の準備行為としての資金調達の準備作業、既存建物の解体・鋤取り作業等に遅滞が生じ、同年三月の着工が不可能となった。一方、その間に賃貸ビルの賃料水準は低下し、平成四年二月半ばには、原告内部で、既に賃料保証をしているものについては竣工を急ぐべきであるとの方針が出され、この方針に沿って作業が進められたが、被告については、前記のような親族の意見の対立から予定したとおりにことが運ばなかった。

このような事態に対する対処の方法として、原告は、平成四年四月一五日、被告代理人としての峰敏に対し、坪あたりの賃料保証の額を月二万一〇〇〇円から一万六〇〇〇円に減額する旨の提案をし、ここにおいて、月二万一〇〇〇円の賃料保証の履行をすることを拒絶した。

右のような経過に基づいて原告が行った本件賃料保証契約の履行の拒絶は、一定の期日までに契約請負契約締結のための一定の準備行為をすべき旨の催告を経ておらず、また、事情変更の原則を適用するほどの著しい賃料情勢の変動が本件賃料保証契約締結後に生じたことを肯認させるに足りる証拠もないから、本件賃料保証契約の解除又は事情変更の原則に基づく適法な契約履行の拒絶とはいえず、違法性を帯びた契約履行の拒絶であるといわざるをえない。

したがって、原告には、本件賃料保証契約の履行に際し、債務の不履行があったものというべきである。

四  本件設計契約は原告の本件賃料保証契約の不履行により解除されたものといえるか。

被告は、原告が本件賃料保証契約を履行することを拒んだので、右契約と一体となった本件設計契約を解除する旨の意思表示をし、これによって本件設計契約は解除された旨主張する。そこで検討するのに、原告に本件賃料保証契約の履行に際し債務の不履行があったことは前記三認定のとおりである。

ところで、前記三認定のとおり、被告には親族間の意見の不一致があり、これによって、安仲ビル建築請負契約締結の準備行為としての資金調達の準備作業、既存建物の解体・鋤取り作業等に遅滞が生じ、本件賃料保証契約締結当時に予定されていた平成四年三月建築工事着工の手順の遂行は不可能となったことが認められる。

一方、前記三認定のとおり、本件賃料保証契約は、ビル建築請負契約と不可分一体のものであり、一定期間内にビル建築請負契約が締結されることを前提とするものであるところ、右のように被告の親族間の意見調整の不良という被告の責めに帰すべき事由によりビル建築工事の請負契約の準備行為が遅滞しており、いまだ賃料保証の前提となる請負契約が予定どおり締結される見通しが立っていない場合には、被告において、新たな手順を立てて原告の了解を得るなどして、その遅滞を解消しない限り、原告に対し、本件賃料保証契約について将来にわたる履行の確約を求め、それが受け入れられなければ本件設計契約を解除するとの挙に出ることは許されないものというべきである。

したがって、被告主張のように本件設計契約が原告の本件賃料保証契約の不履行により解除されたものと解することはできない。

五  原告の債務不履行により被告に損害が生じたか。

原告に本件賃料保証契約の履行に際し債務の不履行があったことは前記三認定のとおりである。そこで、右債務不履行により、被告に損害が生じたかどうかについて検討する。

右債務不履行の内容は、要するに、本件賃料保証契約の履行を直ちに拒むまでの事由がないのに、被告に対しビル建築請負契約締結の準備作業の遅れの解消の機会を与えることなく本件賃料保証契約の履行を拒絶する意思を表明したことであり、これによる損害とは、被告がビル建築工事遂行の意欲を右の時点で失ったことによって生じた損害である。

右損害を金銭に換算するのは困難なことであるが、その算定の要素の中で最も重要なのは、被告がビル建築工事遂行の意欲を失ったことにより、本件設計契約の履行によって得られた設計図書が無意味なものとなったことである。この事実に、原告の債務不履行の態様、被告の責めに帰すべき事由によりビル建築請負契約締結の準備作業が遅滞していたこと等の事情を総合勘案すると、被告が原告に対し賠償の請求をしうる損害の額は、本件設計契約に基づく報酬額の三分の一である九六五万七九〇〇円と認めるのが相当である。

なお、被告は、反訴において、原告による本件賃料保証契約の履行拒絶により本件設計契約が解除されたことを前提とする損害の賠償を求めているが、右契約解除の要件は存しないのであるから、被告が主張する右損害と当裁判所が前記三において認定した原告の債務不履行との間には因果関係がないものというべきである。

六  原告に解体工事に着手する時期の通知を怠った過失があるといえるか。

被告は、原告に既存建物解体工事に着手する時期の通知を怠った過失があると主張するが、証人吉原賢二の証言によれば、原告は峰敏の兄に対し、解体工事に着手する約二週間前に、解体工事に着手する時期を通知しており、右通知は、被告に対する相当な方法による通知であると認められる。

したがって、被告の右主張は理由がない。

七  結論

以上のとおりであるから、原告の被告に対する本訴請求は理由があるから認容し、被告の原告に対する反訴請求は、主文第二項の1の限度で理由があるから認容し(遅延損害金の起算日は、反訴請求の日である反訴状陳述の日の翌日である。)、その余は理由がないから棄却し、本訴及び反訴の各勝訴部分について仮執行の宣言を付するのは相当でないから、これを付さないこととして、主文のとおり判決する。

(裁判官 園尾隆司)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例