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東京地方裁判所 平成6年(ワ)7138号 判決

原告 株式会社妙光建設

右代表者代表取締役 中村幸男

原告 高橋和夫

右両名訴訟代理人弁護士 桑原周成

同 大森浩一

被告 誠建設有限会社

右代表者代表取締役 西潟忠二

被告 安全処理工業株式会社

右代表者代表取締役 木下善春

被告 更生会社日本国土開発株式会社

管財人 坂上義次郎

管財人 大橋正春

右訴訟代理人弁護士 斎藤祐一

同 永沢徹

同 山本健司

同 岩崎晃

同 渡邊賢作

被告 千葉県

右代表者知事 沼田武

右訴訟代理人弁護士 吉原大吉

右指定代理人 浮嶋有造

同 川島利文

同 大木清

同 大野健一

同 吉田俊哉

同 秋庭良二

同 宇野英雄

補助参加人 株式会社江戸川集積センター

右代表者代表取締役 廣瀬且視

右訴訟代理人弁護士 福岡清

同 平田厚

同 川上俊宏

主文

一  被告誠建設有限会社及び被告安全処理工業株式会社は、原告高橋和夫に対し、被告更生会社日本国土開発株式会社管財人坂上義次郎及び同大橋正春と連帯して一〇〇〇万円及びこれに対する被告誠建設有限会社は平成六年四月二八日から、また、被告安全処理工業株式会社は同月二七日から、各支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告高橋和夫が、被告更生会社日本国土開発株式会社管財人坂上義次郎及び同大橋正春に対して、不法行為に基づく損害賠償金一〇〇〇万円の更生債権及び同額の議決権を有することを確認する。

三  原告高橋和夫のその余の請求を棄却する。

四  原告株式会社妙光建設の請求をいずれも棄却する。

五  訴訟費用は、これを六分し、うち一を被告誠建設有限会社、うち一を被告安全処理工業株式会社、うち一を被告更生会社日本国土開発株式会社管財人坂上義次郎及び大橋正春の負担とし、その余を原告妙光建設の負担とする。

六  この判決は、第一項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由

第一請求

一  被告誠建設有限会社(以下「被告誠建設」という。)及び被告安全処理工業株式会社(以下「被告安全処理工業」という。)は、原告両名に対し、被告更生会社日本国土開発株式会社管財人坂上義次郎及び同大橋正春(以下「被告日本国土開発」という。)と連帯して、一〇〇〇万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日(被告誠建設は平成六年四月二八日、被告安全処理工業は同月二七日)から各支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告両名が、被告日本国土開発に対して、不法行為に基づく損害賠償金一〇〇〇万円の更生債権及び同額の議決権を有することを確認する。

三  被告千葉県は、原告両名に対し、一〇〇万円及びこれに対する平成六年四月二七日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

本件は、原告高橋和夫(以下「原告高橋」という。)が所有し、原告株式会社妙光建設(以下「原告妙光建設」という。)が賃借している土地に、被告誠建設が、原告妙光建設との間で締結した残土受入契約に基づいて一般残土を搬入していたところ、平成四年八月ころから、被告日本国土開発の作業現場から排出され、同被告が被告安全処理工業に処分を委託した産業廃棄物(平成三年法第九五号による改正後の廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下「廃棄物処理法」という。)で規制対象とされている産業廃棄物。原告らは「ミルク残土」と称している。)を大量に不法投棄したと主張して、原告らが、1 被告誠建設及び被告安全処理工業に対しては不法行為に基づく損害賠償を、2 被告日本国土開発に対しては不法行為に基づく損害賠償の更生債権を有することの確定等を、3 被告千葉県に対しては廃棄物処理法に基づく改善命令ないし措置命令を行わなかったのは千葉県知事の裁量権を逸脱しているとして国家賠償法三条一項に基づく損害賠償を、それぞれ求めている事案である。

一  前提となる事実(証拠を掲記しない部分は当事者間に争いがない。)

1  当事者

原告妙光建設は、土木・建築工事の設計、施工及び監理、産業廃棄物の処理、再生利用及び販売、産業廃棄物の処理機械・設備の設計、製造、販売並びにリース業等を目的とする株式会社である(弁論の全趣旨)。

原告高橋和夫は、畑を耕作するなどして農業収入を得ている農業従事者である。

被告誠建設は、土木工事の請負及び産業廃棄物の処理等を目的とする有限会社である。

被告安全処理工業は、産業廃棄物の収集、運搬及び処理等を目的とする株式会社である。

被告日本国土開発は、土木、建築の設計及び請負に関する業務等を目的とする株式会社である。平成一〇年一二月一日東京地方裁判所に会社更生手続開始の申立てを行い(当庁平成一〇年(ミ)第一〇号)、同月三日に保全管理命令が、平成一一年一月一四日午後五時に更生手続開始決定がされている(弁論の全趣旨)。

補助参加人は、産業廃棄物(動植物性廃白土廃油)の収集、運搬、中間処理及び最終処分等を目的とする株式会社である(弁論の全趣旨)。

2  本件土地の賃貸借契約等

(一) 原告高橋は、平成三年一二月一日、原告妙光建設に対し、別紙物件目録記載の土地(以下「本件土地」という。)を、平成三年一二月一日から平成四年一二月一〇日まで賃貸した(甲四〇、原告妙光建設代表者、原告高橋本人)。

(二) その後、原告両名は、右賃貸の期間を平成五年一二月一〇日まで延長する旨の合意をした(原告妙光建設代表者、原告高橋本人)。

(三) 原告両名は、平成三年六月二五日、千葉県知事に対し、本件土地につき農地法五条の規定による一時転用許可の申請を行い(丁一九の1)、同年九月二〇日付けで千葉県知事より農地の一時転用を伴う使用貸借による権利設定の許可を受けた(甲四一の1)。

さらに、原告両名は、平成四年九月二五日、千葉県知事に対し、右同様の許可の申請を行い(丁一八の1)、同年一一月二〇日付けで千葉県知事より右同様の許可を受けた(甲四一の2)。

(四) 原告両名は、平成三年一二月二四日、富里町長に対し、一般残土による本件土地の埋立及び盛土造成事業について事業許可の申請を行い(丁一七の1)、平成四年一月二七日付けで富里町長より右事業の許可を受けた(甲四二)。

3  被告日本国土開発の現場から排出される産業廃棄物の処理委託契約 被告日本国土開発、被告安全処理工業、補助参加人らは、平成四年六月、委託者を日本国土・アイサワ建設共同企業体(以下「本件共同企業体」という。)、工事施工者を三信建設工業株式会社(以下「三信建設工業」という。)、収集運搬業者を被告安全処理工業、最終処分業者又は中間処理業者を補助参加人として、本件共同企業体の現場から排出される産業廃棄物の収集運搬を被告安全処理工業に、最終処分を補助参加人にそれぞれ委託する旨の産業廃棄物の処理及び収集運搬委託契約(以下、「本件委託契約」という。)を締結した(丙一)。

本件委託契約においては、被告安全処理工業は、三信建設工業から委託された廃棄物の収集運搬を他の第三者に再委託してはならない、ただし、あらかじめ書面による本件共同企業体の承諾を得た場合には、廃棄物の運搬に限り、被告安全処理工業の責任において第三者に再委託することができると定められていた(第七条)。また、右委託契約の対象となる工事(以下「本件工事」という。)については、工事名は平成三年度台場地区ミニ共同溝建設工事その一、工期は平成四年七月二五日から同年一〇月二四日まで、数量は七二〇〇立方メートルとすることが定められていた(丙一)。

二  主要な争点及びこれに対する当事者の主張

1  本件残土の本件土地への搬入経路

(原告らの主張)

被告日本国土開発の東京都江東区台場に所在する作業所(以下「台場作業所」という。)及び神奈川県川崎市浮島に所在する作業所(以下「浮島作業所」という。)のトンネル掘削工事現場から排出された建設汚泥(ミルク残土)のほとんどは、平成四年八月から平成五年一月ころまでの間、被告誠建設のダンプカーによって、補助参加人の中間処理場を経由することなく、右各作業所から直接本件土地に搬入された。

なお、被告誠建設及びその下請以外の業者が本件土地に右ミルク残土を搬入したことはなかった。

(被告誠建設の主張)

被告誠建設が本件土地に搬入したのは、小型マンション等の建設基礎工事に伴い生じたアースドリル残土と根切り残土であり、台場作業所及び浮島作業所から排出された建設汚泥を直接搬入したことはない。また、本件土地に残土を搬入していた業者は被告誠建設だけではなかった。

被告誠建設は、平成四年六月、原告妙光建設からその管理する土地に残土を搬入する際に必要となる整理券一二〇〇枚を購入していた。同被告は、同年七月から一二月までの間にそのうちの一〇三八枚を使用し、残りは他の業者に転売した。

(被告安全処理工業の主張)

被告安全処理工業は、台場作業所の現場において、残土積込みのオペレーターをしていた。すなわち、被告安全処理工業は、台場作業所の現場で発生する建設汚泥を三信建設工業が廃泥ピットに入れ、一定時間置いて固化させたものを、収集運搬に来るトラックに重機パワーショベルを用いてピットから積み込む作業及び補助参加人の中間処理場への収集運搬の委託を受けていた。そして、補助参加人が右建設汚泥について中間処理と最終処分を委託されており、また、産業廃棄物の収集運搬について許可を受けていたことから、補助参加人にその収集運搬をさせた。

なお、台場作業所に被告誠建設のトラックが右建設汚泥の引き取りに来たこともあった。しかしながら、被告安全処理工業は、補助参加人から右建設汚泥の搬入を受け入れたこと及びこれを処理した旨の伝票の提出を適宜受けていた。したがって、被告誠建設は、補助参加人の中間処理場に右建設汚泥を搬入し、補助参加人において中間処理と最終処分をしていたものと考えられる。

(被告日本国土開発の主張)

被告日本国土開発の台場作業所及び浮島作業所の現場においては、発生した廃泥物を一時廃泥ピットに仮置きし、固化させている。そのため、収集運搬される時点では、右廃泥物はパワーショベルでダンプトラックに積み込める状態まで固化されていた。

なお、原告らは、平成五年一月ころになって搬入されている土があまりに軟らかすぎるため、その主張に係る「ミルク残土」が搬入されていることに気付いたと主張している。しかし、台場作業所の現場の廃泥物は、数時間で固化し始め、一日も経てば完全に固結してしまう性質を持っている。また、いったん固化した廃泥物が運搬中に軟化することは、化学的にあり得ない。そして、右現場での地盤改良工事の工期は平成四年七月二五日から同年一〇月二四日までで、右工事は平成四年一二月で終了しており、その後は廃泥物は発生していない。こうしたことからしても、原告ら主張の「ミルク残土」は、右現場から発生したものではあり得ない。

(補助参加人の主張)

補助参加人は、平成四年六月、被告日本国土開発が参加していた日本国土・アイサワ建設共同企業体の「平成三年度台場地区ミニ共同溝建設工事その1」で発生する建設残土七二〇〇立方メートルの産業廃棄物の処理に関し、右共同企業体を委託者とし、被告安全処理工業を収集運搬業者とし、補助参加人を最終処分業者(中間処理業者)とする、処理及び収集運搬委託契約を締結した。

補助参加人は、右委託契約に従い、その中間処理施設において、右産業廃棄物を他の現場より受け入れた建設残土と混合し、また、他の現場より搬入された汚泥等に中間処理を加えたものと共にピットに保管し、含水率等の調査を経た上で、合計一万〇八五九立方メートルの建設残土の最終処分を被告誠建設に委託した。また、右共同企業体の工事で発生した建設残土については、補助参加人の自己処理等を含めて種々の処理を経ているのであって、具体的に右建設残土がどのような経過でどのように処理されたかを特定することは不可能である。補助参加人は、被告誠建設を信頼して処分方法を同被告に委ねたので、同被告の最終処分がどのようにされたかについては不明である。

2  本件残土の産業廃棄物該当性

(原告らの主張)

廃棄物処理法二条四項一号は、事業活動に伴って生じた廃棄物のうち、燃え殻、汚泥、廃油、廃酸、廃アルカリ、廃プラスチック類その他政令で定める廃棄物を産業廃棄物と定めている。

台場作業所及び浮島作業所のトンネル掘削工事現場においては、地盤改良工事をコラムジェットグラウト工法で行っていた。右工法により排出される排泥液は、セメントミルクと土粒子の混合物及びプラント洗浄水であり、数時間で固化し始めるため、早急に処理を必要とする産業廃棄物であるとされている。この排泥液を含む土(ミルク残土)が、右各作業所から直接本件土地に搬入されたのであるから、本件残土が産業廃棄物であることは明らかである。

(被告誠建設の主張)

厚生省の建設廃棄物処理ガイドライン(平成二年五月三一日付け)によれば、標準ダンプトラックに山積みできず、また、人がその上を歩けないものを産業廃棄物である汚泥として扱うとされているが、被告誠建設が本件土地に搬入した残土はそのような性状ではなかった。

また、被告誠建設は、原告妙光建設に対し、本件残土の試供品を提出し、承諾を得てから整理券を購入している。

(補助参加人の主張)

廃棄物処理法二条四項で規定されている汚泥とは、含水率八五パーセント以上のものであって(昭和四八年二月一七日環境庁告示第一三号「産業廃棄物に含まれる有害物質の検定方法」参照)、粒子の微細な泥状のものとされている。さらに、残土と汚泥の区分については、標準仕様ダンプトラックに山積みができず、また、その上を人が歩けない状態のものを汚泥とし、それを土の強度の指標で示すと、コーン指数がおおむね二以下、又は一軸圧縮強度がおおむね〇・五kg/cm以下とされている(平成二年五月三一日衛産第三七号「建設工事等から生ずる廃棄物の適正処理について」各都道府県・政令市産業廃棄物行政主管部(局)長あて厚生省生活衛生局水道環境部産業廃棄物対策室長通知)。

補助参加人が被告誠建設に処分を委託した残土は、含水率等からしても、また、ふたの付いていないダンプで運搬されていることからしても、明らかに汚泥に該当するものではなかった。仮に、原告らが主張するような建設汚泥であれば、バキュームカーや汚泥吸排車(ダンプ構造になっているバキュームカー)等でなければ運搬できないはずである。

3  被告誠建設の責任

(原告らの主張)

被告誠建設は、本件残土が産業廃棄物であることを認識しつつ、これを本件土地に搬入し不法投棄したのであるから(廃棄物処理法一六条参照)、不法行為に基づき、被告安全処理工業及び被告日本国土開発と連帯して原告らに対して右不法投棄によって生じた損害を賠償すべき責任を負う。

(被告誠建設の主張)

被告誠建設は、まず、原告妙光建設が発行する整理券を購入し、同被告のダンプカーの運転手にこれを持たせて、本件土地に残土を搬入する都度、待機している原告妙光建設の作業員にこれを渡し、その指示に従って搬入作業をするという方法で本件土地に残土を搬入していた。

原告妙光建設は、発行する整理券を青色と赤色とに区別し、赤色はセメントの混入により白っぽくなった残土(ミルク残土)用として青色より代金を高くして販売していた。

被告誠建設は、本訴が提起される前より、原告高橋に対し、桜の苗木を植えるのに適合する範囲で本件土地の復元工事を履行する旨申し入れているところである。それにもかかわらず、原告高橋は、自己の権利を回復するため何らの努力もせず、原告妙光建設の意のままにされているのであるから、原告らの請求は権利の濫用である。

4  被告安全処理工業の責任

(原告らの主張)

被告安全処理工業は、被告日本国土開発の台場作業所及び浮島作業所の現場から排出された建設汚泥の収集運搬が、補助参加人から被告誠建設に再々委託されていたこと、右建設汚泥が補助参加人の中間処理場へ搬入されていなかったこと、右建設汚泥が他の正規の中間処理場又は最終処分場へ搬入される可能性がなかったことを十分認識していた。

したがって、被告安全処理工業は、右建設汚泥が本件土地等の中間処理場でも最終処分場でもない場所へ不法投棄されることを認識していたか、あるいは認識し得たものというべきであり、故意又は過失により、被告誠建設をして産業廃棄物を本件土地へ不法投棄させたものというべく、不法行為に基づき、被告誠建設及び被告日本国土開発と連帯して原告らに対して右不法投棄によって生じた損害を賠償すべき責任を負う。

(被告安全処理工業の主張)

被告安全処理工業は、被告日本国土開発の工事現場から、そこで排出された廃棄物である土砂ないし残土を補助参加人の中間処理場まで収集運搬することの委託を受け、それを実行しただけであって、その後のことは関知しない。

5  被告日本国土開発の責任

(原告らの主張)

廃棄物処理法は、事業者は、その事業活動に伴って生じた廃棄物を自らの責任において適正に処理しなければならない(三条一項)、その産業廃棄物を自ら処理しなければならない(一〇条一項)とした上で、その産業廃棄物の運搬又は処分を他人に委託する場合には、政令で定める基準に従い、その運搬については一四条八項に規定する産業廃棄物収集運搬業者その他厚生省令で定める者に、その処分については同項に規定する産業廃棄物処分業者その他厚生省令に定める者にそれぞれ委託しなければならない(一二条三項)としている。

そして、被告日本国土開発は、その事業活動に伴って生じた産業廃棄物の不法投棄を防止するため、単に右廃棄物処理法上の規定を遵守するだけではなく、<1> 処理内容に見合う処理費用を支出する、<2> 排出事業者は収集運搬業者及び処分業者とそれぞれ委託契約をしなければならない、<3> 排出事業者は建設廃棄物の搬出時には必ず立ち会うとともにマニフェストを手渡す、<4> あらかじめ処分業者を訪問し処理施設の維持管理状況、能力等が適正処理に十分であるか確認する、また、運搬車両の登録台数、荷台の構造も確認する、<5> 委託した収集運搬業者が取りに来ているかどうか車両の登録番号や産業廃棄物収集運搬車証で確認するとの各義務を負っていた。しかるに、被告日本国土開発は、右の各義務をいずれも果たさなかった。

したがって、被告日本国土開発は、台場作業所及び浮島作業所の現場から排出された建設汚泥が中間処理場でも最終処分場でもない本件土地等の場所へ不法投棄されることを認識していたか、あるいは認識し得たものというべきであり、故意又は過失により、被告誠建設をして産業廃棄物を本件土地へ不法投棄させたものというべく、不法行為に基づき、被告誠建設及び被告安全処理工業と連帯して原告らに対して右不法投棄によって生じた損害を賠償すべき責任を負う。

(被告日本国土開発の主張)

被告日本国土開発の台場作業所と浮島作業所の現場は、開削工法によるトンネル構造新設工事に伴う地盤改良工事をコラムジェットグラウト工法により行うもので、これにより発生する廃泥物は、発生時の状態で建設汚泥に該当すると判断されたため、被告日本国土開発は、その収集運搬を被告安全処理工業に、処分を補助参加人に委託した。被告安全処理工業及び補助参加人は、いずれも廃棄物収集運搬若しくは処理の許可を受けた業者であり、被告日本国土開発の産業廃棄物処理は適法に行われている。

なお、被告日本国土開発が被告安全処理工業に委託したのは、廃棄物の収集運搬業務のみであり、その処分業務については、補助参加人、有限会社斉藤土建及び有限会社有坂牧場に委託している。したがって、被告安全処理工業が被告誠建設に対して産業廃棄物の処分を委託することは考えられない。

6  被告千葉県の責任

(原告らの主張)

廃棄物処理法は、都道府県知事又は市町村長が、同法の施行に必要な限度において、事業者、一般廃棄物若しくは産業廃棄物の収集、運搬若しくは処分を業とする者等に対し、廃棄物の保管、収集、運搬若しくは処分等に関し、必要な報告を求めることができると規定するとともに(一八条)、都道府県知事は、産業廃棄物処理基準又は産業廃棄物保管基準が適用される者により、当該基準に適合しない産業廃棄物の保管、収集、運搬又は処分が行われた場合において、当該産業廃棄物の適正な処理の実施を確保するため、当該保管、収集、運搬又は処分を行った者に対し、期限を定めて、当該廃棄物の保管、収集、運搬又は処分の方法の変更その他必要な措置を講ずべきことを命ずることができ(一九条の三第二号)、また、産業廃棄物処理基準に適合しない産業廃棄物の処分が行われた場合において、生活環境の保全上支障が生じ、又は生ずるおそれがあると認められるときは、必要な限度において、当該処分を行った者に対し、期限を定めて、その支障の除去又は発生の防止のために必要な措置を命ずることができる(一九条の四第一項二号)としている。

千葉県知事は、遅くとも平成五年九月までに、現地調査の結果等に照らして、本件土地に大量に搬入された物質が被告日本国土開発の台場作業所及び浮島作業所の現場から排出された建設汚泥であり、右汚泥は被告誠建設によって右現場から中間処理工程を経由せず直接本件土地に搬入された疑いが極めて濃厚であることを明確に認識していた。

ところが、千葉県知事は、被告誠建設に対して廃棄物処理法一八条の報告を求めたところこれを拒否されたことを理由に、被告誠建設らに対する同法一九条の三第二号に基づく改善命令や同法一九条の四第一項二号に基づく措置命令を発動しなかった。

廃棄物処理法一八条の報告の徴収については、同法二八条四号で報告をしなかった場合の罰則を定めている。また、被告誠建設が報告に応じなかったとしても、被告安全処理工業や被告日本国土開発に対する同法一八条の報告の徴収ができないわけではない。したがって、千葉県知事が同法一八条の報告の徴収を適正に運用していれば、本件の不法投棄が行われた経過は明確になっていたはずである。

このように、千葉県知事が廃棄物処理法上期待されている行政権限を適切に行使せず、本件の不法投棄を黙認、放置してその裁量権を逸脱したことにより、原告高橋の損害を拡大させたものというべきである。したがって、千葉県知事の給与負担者である被告千葉県は、国家賠償法三条一項に基づき原告らに生じた損害を賠償すべき責任を負う。

(被告千葉県の主張)

廃棄物処理法一九条の三による改善命令及び同法一九条の四による措置命令は、いずれも産業廃棄物の処分等が行われたことが前提となる。

ところで、産業廃棄物とは、事業活動に伴って生じた汚物又は不要物であって、固形状又は液状のものをいうのであり、その物件が有害、有毒であるか否かは、その物件を産業廃棄物である汚泥と認定するについて全く関係がない。また、廃棄物とは、占有者が自ら利用し、又は他人に有償で売却することができないために不要になったものをいい、これらに該当するか否かは占有者の意思、その性状等を総合的に勘案すべきものであって、排出された時点で客観的に廃棄物として観念できるものではない(昭和四六年一〇月二五日環整第四五号厚生省環境衛生局環境整備課長通知)。すなわち、埋め立てられたものが産業廃棄物であるか否かを判断するためには、<1> 排出事業者を特定し、<2> 当該埋立物が事業活動に伴って生じたものか、<3> 不要物であるか、<4> 占有者の意思、<5> 排出時における性状等を調査、確認する必要がある。

また、右措置命令を発するためには、生活環境の保全上支障が生じ、又は生ずるおそれがあると認められることが要件となるが、千葉県佐倉保健所が平成五年八月三〇日に採取した本件土地上の物件の検体からは重金属や毒物は検出されず、生活環境に支障が生ずる事態は発生しておらず、毒性のある物質が地下に浸透したり、大気中に飛散したりするなどして生活環境に支障が生ずるおそれも認められなかった。

千葉県佐倉保健所では、本件土地の物体が産業廃棄物かどうか確認するため、被告誠建設、被告日本国土開発、被告安全処理工業及び補助参加人江戸川集積センターに対し事情聴取を行い、更に被告誠建設及び補助参加人江戸川集積センターに対し、廃棄物処理法一八条に基づく報告を求めた。しかし、被告誠建設は、事情聴取に応じないばかりか、右報告の提出を拒否し、また、補助参加人江戸川集積センターは、報告を提出したものの報告内容に未記載等の不備があったため、再度報告を求めたが、提出しなかった。

このため、本件土地の物体の発生源、処理ルート、量を特定することができず、それが事業活動に伴って発生したものであるかどうかも確認できなかった。

したがって、千葉県知事及び知事から委任を受けた佐倉保健所長は、当時適正に権限を行使しているし、以後も必要な段階で必要な権限を行使してきたものである。

7  原告らの損害

(原告らの主張)

(一) 被告誠建設が台場作業所及び浮島作業所から本件土地に搬入した建設汚泥を最終処分するための費用は次のとおりである。

(1)  原告妙光建設が被告誠建設から回収した整理券によって集計したダンプカーの延べ台数は次のとおりである。

平成四年八月   五一台

平成四年九月  四六三台

平成四年一〇月 一五二台

平成四年七月ないし同年一〇月までの日付未記入分 五六五台

平成四年一一月  三四台

平成四年一二月 二二四台

平成五年一月  二九一台

平成五年二月  一八五台

平成五年四月   三二台

平成四年一一月ないし平成五年四月までの日付未記入分 三二五台

合計     二三二二台

(2)  被告誠建設のダンプカー一台当たりの搬入量を一五立方メートルとすると、三万四八三〇立方メートルとなるので、被告誠建設が本件土地に搬入した量は、少なくとも二万八〇〇〇立方メートルを超えている。そして、その量の建設汚泥を最終処分するための費用は二億八〇〇〇万円に達するものというべきである。

(二) 原告高橋は、本件土地の返還予定日である平成四年一二月一〇日を過ぎても被告らの不法行為のため本件土地において農業収入を上げることができなくなっている。

その得べかりし利益は年間一〇〇万円にのぼる。仮にこの点が認められないとしても、本件土地近辺の農地は、一反歩当たり月間八〇〇〇円ないし一万円で賃貸されていることからして、約三・六反歩である本件土地からは、少なくとも年間三四万五六〇〇円の賃料収入が得られたはずである。

(被告日本国土開発の主張)

本件土地上の残土は、その成分からみても、本件賃貸借契約の目的である盛土に沿ったものであり、これを除去しなければ農地として利用できないものではない。原告妙光建設において、本件賃貸借契約どおり本件土地を整備した上、農地利用できる黒土をもって覆土すれば本件賃貸借契約の目的は達せられ、原告らに損害が発生することはない。

第三当裁判所の判断

一  本件の経緯について

1  本件土地の賃貸借に至る経緯等

前記前提となる事実、証拠(甲四〇、四一の1、2、四二、四三、四六、丁一七の一ないし六、一八の1、2、一九の1、原告妙光建設代表者、原告高橋本人)及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。

(一) 原告高橋は、昭和四七年ころから、父からの相続により取得した一町五反の畑を耕作して専業で農業を営んでいたが、その農業経営は赤字の状態であった。本件土地の近隣では、農業経営の厳しさから、農業委員会の許可を得るなどして農地を資材置き場として他に賃貸することが少なくない状況であった。また、本件土地は一部に傾斜があり耕耘機等が使いにくいため、原告高橋は、これを平坦にしたいという希望を抱いていた。

(二) そうしたところ、原告高橋は、原告妙光建設代表者の中村幸男(以下「中村」という。)から、本件土地に土を入れて平坦にしてはどうかとの話を持ち掛けられた。原告高橋は、農地に土を入れるためには許可等が必要になることを聞いていたため、右許可等の手続を中村に任せることとした。

中村は、平成三年六月二五日、千葉県知事に対し、原告妙光建設を譲受人、原告高橋を譲渡人として、本件土地につき農地法五条の規定による一時転用許可の申請を行い、同年九月二〇日付けで千葉県知事より右許可を受けた。右許可には、用途は残土処分場用地とすること、平成四年九月三〇日までに許可地を農地に復元すること等の条件が付されていた。

さらに、中村は、同年一二月二四日、富里町長に対し、富里町土砂等による土地の埋立・盛土及びたい積の規制に関する条例に基づき、原告高橋を事業主、原告妙光建設を事業施行者として、平成五年一二月まで一般残土による本件土地の埋立及び盛土造成事業を行うことについて事業許可の申請を行い、平成四年一月二七日付けで富里町長より右許可を受けた。右申請では、一日の搬入量は一〇トン車三〇台(三〇〇立方メートル)、総土量は五〇〇〇立方メートルとされており、右申請に添付されていた土砂発生場所証明書(丁一七の3)では、排出期間は平成四年二月一〇日から同年六月一〇日まで、土砂排出量は四〇〇〇立方メートルとされていた。また、右許可には、条例に基づく施行基準を遵守する、土砂以外のものを埋め立てた場合には直ちに許可を取り消す旨の条件が付されていた。

(三) 原告高橋は、平成三年一二月一日、原告妙光建設との間で、本件土地を、平成三年一二月一日から平成四年一二月一〇日まで次の約定で賃貸する旨の契約を締結した(以下「本件賃貸借契約」という。)。

(1)  原告妙光建設は、本件土地に、一般残土又はアースドリル工法により発生した残土等を盛土する。

(2)  原告妙光建設は、右工事を平成三年一二月一日から平成四年一二月一〇日までの間に行う。

(3)  原告妙光建設は、原告高橋に対し、右工事期間中の農作物の補償をすることとし、両者間で話し合いの上決める。

(4)  原告妙光建設は、右工事完了後、本件土地を整備し、農地として使用できる黒土をもって高さ一・五メートルを基準に覆土をする。

(5)  万一、隣接の住民からの苦情、官公庁とのトラブル等が発生した場合には原告妙光建設が責任をもって処理し、原告高橋に迷惑をかけないように努める。

(四) 中村は、平成四年九月二五日、千葉県知事に対し、前記(一)と同様の農地法五条の規定による一時転用許可の申請を行い、同年一一月二〇日付けで千葉県知事より右同様の許可を受けた。右許可には、用途は残土処分場用地とすること、平成五年一一月三〇日までに許可地を農地に復元すること等の条件が付されていた。

なお、原告妙光建設は、本件土地について産業廃棄物処分施設としての許可は受けていない。

(五) 原告両名は、本件賃貸借契約で定められた工事が期間内に終了しなかったため、本件賃貸借契約で定められた期間を平成五年一二月一〇日まで延長する旨の合意をした。

なお、前記(三)(3) の補償については、一年目に一〇〇万円が支払われたのみで、その後は一切支払われていない。

2  本件土地への残土等の搬入の経緯

(一) 前記前提となる事実及び証拠(甲七、丙一)によれば、次の事実が認められる。

平成四年六月、前記前提となる事実3記載のとおり、被告日本国土開発、被告安全処理工業、補助参加人らの間において、産業廃棄物の処理及び収集運搬委託契約が締結された。

なお、本件委託契約が締結された当時、廃棄物処理法一四条一項又は四項の規定に基づき、被告安全処理工業は、建設基礎工事に係る汚泥等四種類の産業廃棄物の収集・運搬(保管・積換えを除く)業について(産廃第〇三七七八号)、補助参加人は、建設基礎工事に係る汚泥の収集・運搬(保管・積換えを除く)及び処分(脱水・薬注固化による中間処理)業について(産廃第〇四五〇七号)、東京都知事からそれぞれ許可を受けていた(丙一)。そして、補助参加人に対する右許可において、処理施設の一日当たりの処理能力は、脱水施設が二四〇立方メートル、薬注固化施設が四〇〇立方メートルとされていた(丙一)。

(二) 証拠(己一、証人澤山、被告安全処理工業代表者)及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。

本件工事は、本件共同企業体が東京臨海副都心建設株式会社から発注を受け、三信建設工業を下請業者として施工した地盤改良工事であり、発注者から指定されたコラムジェットグラウト工法により平成四年七月ころから一〇月初旬ころまでの間工事が行われ、同年八月から一〇月初旬ころまでの間にその工事に伴う汚泥が発生した。

右汚泥は、まず現場内に掘られた廃泥ピットまでサンドポンプで運ばれ、ここで乾燥、固化させた上、被告安全処理工業のオペレーターが深ボディーのダンプカーに積み込み、搬出するという方法でほとんど処理されていたが、ピットの容量が不足した時期に、泥状のままバキュームカーで搬出するという方法で処理されたことが若干あった(丁五)。

そして、被告日本国土開発は、被告安全処理工業が作成した処理伝票等を確認の上、委託代金を支払い、また、右処理伝票に基づいてマニフェストを作成していた。

(三) 証拠(丙三の1、2、戊一、証人有賀、被告安全処理工業代表者)及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。

被告安全処理工業は、ダンプカーを保有していなかったことから、補助参加人に対し、台場作業所の本件工事により発生する汚泥のうち固化したものの運搬を全て委託した。なお、被告安全処理工業は、この運搬の再委託に当たり、本件委託契約上定められている本件共同企業体の書面による承諾は得なかった。そして、補助参加人は、更に被告誠建設に対し右運搬の全てを再委託した。これを受けて、被告誠建設は、ダンプカーを台場作業所に派遣し、前記(二)のとおり本件工事により発生した建設汚泥のうち固化したものの全てについて、積み込みを受け、運搬した。

また、補助参加人は、平成四年九月ないし一〇月ころ、被告誠建設に対し、台場作業所から受け入れた建設汚泥を含む一万〇七五九立方メートルの建設汚泥について、その運搬及び処分を一括して委託した。

なお、補助参加人の提出に係る「産業廃棄物の収集運搬及び処分委託契約書」と題する文書(丙九)には、排出事業者を補助参加人、収集運搬業者を被告誠建設、中間処理業者又は最終処分業者を越後建設工業株式会社とする産業廃棄物処理に係る委託契約が締結された旨が記載されているが、同文書には、契約年月日、委託された産業廃棄物の種類及び最終処分地等の記載がされていない。したがって、右文書をもって、台場作業所から受け入れた建設汚泥の運搬ないし処分の委託に関して作成されたものと認めることはできない。

(四) 証拠(甲二三、二四、乙六、二八、原告妙光建設代表者、被告誠建設代表者)及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。

原告妙光建設は、平成四年六月ころ、被告誠建設に対し、うぐいす色の整理券一二〇〇枚を一枚につき一万円で販売した。右整理券は、被告誠建設が本件土地に残土を搬入する際に、ダンプカー一台ごとに一枚を原告妙光建設に交付することによって、残土の搬入が許されるという仕組みを前提とするものであった。

被告誠建設は、右整理券を使用して、ダンプカーで同年七月に二四二台、八月に一七五台、九月に四二七台、一〇月に一四一台、一一月に一〇台、一二月に四三台、以上合計一〇三八台分の残土を本件土地に搬入した。

さらに、原告妙光建設は、同年一二月ころ、被告誠建設に対し、青色の整理券二〇〇〇枚を一枚につき一万円で販売した。

被告誠建設は、右整理券を使用して、ダンプカーで平成四年一二月に一二五台、平成五年一月に三二五台、二月に三二一台、三月に二八一台、四月に一二四台、以上合計一一七六台の残土を千葉県八街市八街字立合松南は四一-七ほかに所在する処分場(以下「八街処分場」という。)に搬入した。

なお、中村の陳述書(甲四五)中には、被告誠建設のダンプカーが本件土地に搬入した残土の量について、平成四年八月に五一台、平成四年九月に四六三台、平成四年一〇月に一五二台、平成四年七月ないし同年一〇月までの日付未記入分五六五台、平成四年一一月に三四台、平成四年一二月に二二四台、平成五年一月に二九一台、平成五年二月に一八五台、平成五年四月に三二台、平成四年一一月ないし平成五年四月までの日付未記入分三二五台、合計二三二二台分である旨の記載がされている。しかしながら、右記載によれば、平成四年七月から一〇月までに使用されたとする整理券の枚数は合計一二三一枚に達するが、これは、当時原告妙光建設から被告誠建設に交付されていた整理券の枚数一二〇〇枚を上回っている。そして、右陳述書によれば、その後は同年一二月一五日に五〇〇枚、同月二六日に一五〇〇枚の整理券を交付したというのである。こうしたことにかんがみると、右陳述書中の記載はたやすく信用できない。

3  被告千葉県による行政指導等の経緯

証拠(丁一ないし一五、証人戸田)及び弁論の全趣旨によれば、千葉県環境部産業廃棄物課(以下「産業廃棄物課」という。)及び千葉県佐倉保健所(以下「佐倉保健所」という。)が、原告ら、相被告ら及び補助参加人に対して、行政指導等を実施した経緯について、次の事実が認められる。

平成五年五月二八日、東京都清掃局から産業廃棄物課に「中村から、都内で発生した産業廃棄物が富里町で処理されたので調査して排出事業者を指導して欲しいとの通報があったので、現場を調査する際には千葉県も協力してほしい。」との電話があった。また、同日、中村から産業廃棄物課に「富里町の自社残土処分場に白っぽいものが入っている。搬入者が搬入を認めたので撤去させたいが、排出事業者が分からないので、東京都に調査するよう話してある。」との電話があった。

同年六月初め、中村他一名が佐倉保健所を訪れ、富里町の同社残土処分場に、平成四年六月から同年一二月ころまで被告誠建設によって建設系汚泥が不法投棄された旨の苦情を申し出た。

平成五年六月一一日、東京都清掃局、産業廃棄物課及び佐倉保健所の各担当者は、廃棄物処理法一九条に基づき、本件土地の立入検査を行い、原告妙光建設が指摘する場所に残土様のものが堆積されていることを確認した。

同月二九日、中村から産業廃棄物課に電話があり、概略「東京都から産業廃棄物ではないとの連絡があった。千葉県に調査をやってもらいたい。」と要望された。また、同日、産業廃棄物課は、原告妙光建設に対し、電話により、処分場への搬入状況が分かる資料を提供するよう要請した。

同年八月五日、産業廃棄物課は、東京都から情報を入手した(丁四)。東京都の調査では、搬入されたものが残土であるか汚泥であるかは判断できなかったとのことであった。

同月六日、佐倉保健所は、原告妙光建設の伝票を確認した。

同月二三日、中村は、佐倉保健所を訪れ、本件土地付近の地下水を調査し、搬入者に撤去の指示を出すよう要求した。

同月三〇日、佐倉保健所は、本件土地の立入検査を実施し、七箇所でPH試験を実施したところ、PHの値は全て一一から一二であった。また、その際、本件土地上の土壌三検体を採取し、計量検査を依頼したところ、重金属類は検出されず、PHの値は一検体が一一・七、二検体が一一・八であった(丁九)。

同年九月六日、佐倉保健所は、被告日本国土開発の関係者と共に本件土地を確認し、その後、保健所内において被告日本国土開発の関係者に対し事情聴取を行った。翌七日、佐倉保健所は、被告日本国土開発に対し、工事概要をはじめ、産業廃棄物の処理実態について報告を依頼したが、同月九日、右報告はできないとの回答を受けた。そして、同月一〇日、被告日本国土開発から佐倉保健所に対し本件の廃棄物処理にかかる建設系廃棄物マニフェスト(丁五)が三枚のみ提出された。それらは、いずれも、被告安全処理工業がバキュームカーにより運搬した件に係るものであった。

同月一六日、佐倉保健所は、同所内において、補助参加人に対し事情聴取を行った。また、同日、佐倉保健所は、被告誠建設に対し、電話にて来所を要請し、同月二〇日にも再度要請したが、いずれも拒絶された。

同月二四日、佐倉保健所長は、補助参加人に対して廃棄物処理法一八条に基づく報告を求めた(丙二)。

同月二七日、佐倉保健所は、西船橋において被告誠建設の代表者西潟忠二(以下「西潟」という。)ほかから事情聴取を行った(丁六)。そして、同年一〇月四日、佐倉保健所長は、被告誠建設に対し、廃棄物処理法一八条に基づく報告を求めた(丁八)が、被告誠建設は事情聴取に応じないばかりか、一八条報告の提出を拒否した。そこで、佐倉保健所は、その後も再三にわたり報告を督促したが、被告誠建設は応じなかった。

同月五日、佐倉保健所は、同所内において、被告安全処理工業に対し事情聴取を行った(丁七)。

同日、佐倉保健所長は、原告妙光建設に対し搬入物件についての報告を依頼し(甲一五の1)、翌六日、その報告書の提出を受けた(甲一五の2)。

同月六日、補助参加人から佐倉保健所長あて右廃棄物処理法一八条に基づく報告文書が郵送により提出された(丙三の1、2)。そこで、同月一三日、佐倉保健所は、同所内において、補助参加人に対し事情聴取を行った(丁二)。また、同年一一月四日、佐倉保健所長は補助参加人からの右報告文書中の未記載等の不備について、廃棄物処理法一八条の規定に基づき、再度文書で報告を求めた(丁三)。なお、原告は、「(株)江戸川集積センターとの打ち合わせ」と題する書面(甲一八)を提出し、同書面は原告は同年一〇月当時佐倉保健所の副主査であった戸田敏充(以下「戸田」という。)から交付された旨主張しているが、被告千葉県は右書面を作成したことはない旨主張し、戸田もこれに沿う陳述をしていること(丁一五)、被告千葉県作成に係る同種の書面(丁一、二、六)と書式等において異なっていること等にかんがみると、右書面が被告千葉県によって作成されたものと認めることはできず、右書面の内容は信用できないというべきである。

同年一一月八日、被告誠建設は、佐倉保健所長に対し廃棄物処理法一八条の報告の徴収を不服とする異議申立てをした。なお、佐倉保健所は同年一〇月四日以降再三にわたり被告誠建設に対し報告の催告をしたが、被告誠建設はこれに応じなかった。

同年一一月九日、産業廃棄物課及び佐倉保健所が補助参加人に対し事情聴取を行った。

同月一二日、佐倉保健所は、本件土地の立入検査を実施し、四箇所でPH試験を実施したところ、PHの値は二箇所の土壌が一〇ないし一一、一箇所の土壌及び一箇所の水が七ないし八であった。また、その際、本件土地上の土壌三検体及び本件土地の隣接地の地下水一検体を採取し、計量検査を依頼したところ、重金属類は検出されず、PHの値は土壌がそれぞれ一〇・〇、九・九、八・八、地下水が八・一であった(丁一〇、一一)。

同月一八日、佐倉保健所は、本件土地に近接する家から井戸水二検体を採取し、水質検査を依頼したところ、うち一検体で水質基準を超える硝酸・亜硝酸性窒素が検出されたのを除いて重金属類は検出されず、PHの値はそれぞれ八・〇及び七・六であった(丁一三、一四)。

なお、中村は、平成五年六月初めに佐倉保健所を訪れて以降、しばしば同所に出向き、同年八月以降も、同月二三日、同月二七日、同年九月一〇日、同月一四日、同月一六日、同月二〇日、同月二一日、同月二二日、同月二七日、同月二八日、同年一〇月一日、同月四日、同月八日、同月一二日、同月一三日、同年一一月一二日、同月一八日、同月二九日、同年一二月三日、同月七日、同月一四日、同月一五日、同月一六日、平成六年一月一一日、同月三一日、同年二月一五日、同年三月一日、同月九日、同月一七日、同月二九日に佐倉保健所を訪問し、本件残土の撤去を指示するよう強く要請するなどした(甲一〇)。さらに、原告妙光建設は、平成五年一〇月一五日、同月一八日、同月二一日付けで、千葉県知事ないし佐倉保健所長あてに、上申書、申立書、再申立書と題する書面を提出した。

なお、原告妙光建設は、この間の平成五年一〇月一八日付けで、八街市長から「八街市土砂等による土地の埋立て、盛土及びたい積の規制に関する条例」一三条の規定に違反しているとして、「埋め立て(盛土、たい積)事業中止命令」を受けている。

二  本件残土の本件土地への搬入経路について

1  原告らは、本件残土は、被告日本国土開発の台場作業所及び浮島作業所の現場から排出された建設汚泥が右現場から補助参加人の中間処理場を経由することなく被告誠建設のダンプカーによって直接本件土地に搬入された旨主張しているので、まず、この点について検討する。

(一) 前記一2(一)ないし(三)で説示したとおり、本件共同企業体は、平成四年六月、台場作業所の本件工事により排出される産業廃棄物の収集運搬を被告安全処理工業、中間処理を補助参加人にそれぞれ委託したが、その後、被告安全処理工業は、補助参加人に対し、本件工事により発生する汚泥のうち固化したものの運搬を全て再委託し、さらに、補助参加人は、被告誠建設に対し、右運搬を全て再々委託し、結局、被告誠建設がダンプカーを台場作業所に派遣し、本件工事により発生した建設汚泥のうち固化したものの全てについて積み込みを受けて運搬したというのである。

さらに、前記一2(三)で説示したとおり、補助参加人は、平成四年九月ないし一〇月ころ、被告誠建設に対し、台場作業所から受け入れたものを含む建設汚泥の運搬を委託し、その際、右建設汚泥の処分についても、被告誠建設に一括して委託したというのである。

なお、証人有賀は、被告誠建設が右中間処理場で固形状汚泥の積降ろしと積込みを行い、右積込みの際に補助参加人から被告誠建設の作業伝票にサインを受けなければ運搬代金の支払が行われない仕組みになっていたので、被告誠建設が右中間処理場を経由せずに固形状となった汚泥を本件土地へ直接搬入することはあり得ない旨供述している。しかし、証人有賀の供述によっても、固形状となった汚泥については、補助参加人の中間処理場に搬入されたとしても、その後の処理としては、いったんピットに降ろし、さらにストックヤードに積んで搬出するのみであるというのであるから、右のとおり台場作業所からの固形状汚泥の運搬と右中間処理場からの固形状汚泥の運搬の双方を被告誠建設に委託している状況下において、被告誠建設がわざわざ右中間処理場に赴いて固形状汚泥の積降ろしと積込みを行うということは、通常は考え難いところである。そうすると、証人有賀が供述する右のような仕組みは、特段の事情の存在しない限り採られないものというべく、本件においては、そのような事情はうかがわれないところである。したがって、右証言はにわかに信用し難い。

(二) また、被告誠建設又はその下請等が使用したことがその裏面の記載からうかがわれるうぐいす色の整理券一〇一枚(甲二三の1ないし81、二四の1ないし16、三五の1ないし3、報告書(甲一五の2)に添付された整理券裏面の写し右段上から三番目)のうち八九枚については、その裏面に平成四年八月二八日から同年一〇月一四日までの間の日付が記入されており、中でも、裏面に「9/30」と記載されている一枚(甲三五の2)及び裏面に「10/5」と記載されている二枚(甲三五の3、報告書(甲一五の2)に添付された整理券裏面の写し右段上から三番目)については、いずれも裏面に「台場」と記入されていることが認められる。

(三) 被告誠建設のダンプカーの運転手をしている渡辺忠行(以下「渡辺」という。)と原告妙光建設代表者中村との間の会話を反訳した文書(甲二五)によれば、渡辺は、平成七年一二月六日、中村との会話の中で、被告日本国土開発の台場作業所及び浮島作業所の現場から補助参加人の中間処理場を経由せず直接本件土地に建設残土を搬入した、台場作業所の現場ではピットからまだ固まっていない軟らかい残土を直接積み込んだこともあった、浮島作業所の現場では固い残土を積み込んだという趣旨の発言をしたことが認められる。

また、被告誠建設の下請としてダンプカーの運転手をしていた柏木吾八郎(以下「柏木」という。)と右中村との間の会話を反訳した文書(甲二六)によれば、柏木は、平成七年一二月一四日、中村との会話の中で、被告日本国土開発の台場作業所の現場から補助参加人の中間処理場を経由せず直接本件土地に建設残土を搬入したという趣旨の発言をしたことが認められる。

この点について、証人渡辺は、その証人尋問において、被告日本国土開発の台場作業所及び浮島作業所の現場には行ったことがない、平成七年一二月六日に中村に対してした発言は、仕事帰りに飲酒した後で疲れていたため、早く中村と別れようとして被告誠建設で聞いていた話をしただけである、本件土地に搬入したのは全て別の現場から排出されたアースドリル残土である旨供述している。しかしながら、右同日の中村との会話の内容(甲二五)を全体的にみれば、単に他人から聞いていた話をしたというのではなく、自らの経験に基づいて話をしたとみるのが自然であることに、証人渡辺の供述態度をも併せ考慮すれば、右供述は信用できない。また、渡辺の陳述書(乙二六)中には、右同日の会話の反訳書(甲二五)について、中村がしつこいので適当に答えた、アースドリル残土以外のものを運搬した記憶はない旨記載されているが、右陳述書は後述する柏木の陳述書(乙二七)と氏名以外の文面及び体裁が全く同じであり、このことに、以上説示したところを併せ考慮すれば、乙二六の陳述書中の記載内容は信用できない。

また、証人柏木は、その証人尋問において、被告日本国土開発の台場作業所の現場に行ったことはない、平成七年一二月一四日に中村と会話した際の発言は、他のアースドリルの現場について話をしたにすぎない、本件土地に搬入したのは全て別の現場から排出されたアースドリル残土である旨供述している。しかしながら、証人柏木は、その証人尋問中において、アースの現場から行っている場合も他の現場から行っている場合もあると供述するなど、その供述内容に不自然な変遷があること、平成七年一二月一四日に中村と会話した際の発言内容(甲二六)を全体的にみれば、被告日本国土開発の台場作業所の現場について話をしたとみるのが自然であることを考慮すると、証人柏木の右証言は信用できない。また、柏木の陳述書(乙二七)中には、前述した渡辺の陳述書(乙二六)と同趣旨の記載がされているが、証人柏木は、右陳述書について、記憶がない、甲二六を読んだことはない旨証言しており、こうしたことに、右陳述書は渡辺の陳述書(乙二六)と氏名以外の文面及び体裁が全く同じであることをも併せ考慮すると、右陳述書中の記載内容は信用できない。

したがって、渡辺及び柏木の平成七年一二月六日及び同月一四日における中村との会話中の各発言(甲二五、二六)は、信用に値するものというべきである。そして、右各発言は前記(一)及び(二)の認定に沿うものといえる。

(四) 以上(一)ないし(三)で説示したことを総合すれば、被告誠建設は、補助参加人から、被告日本国土開発の台場作業所の本件工事により発生した建設汚泥ないしこれを固化したものの運搬及び処分を委託され、平成四年九月から一〇月ころの間、台場作業所にダンプカーを派遣して本件工事により発生した建設汚泥のうち固化したものの全ての積込みを被告安全処理工業のオペレーターから受けて、補助参加人の中間処理場を経由せずに直接本件土地に搬入したものと推認するのが相当である。また、被告誠建設は、このほかに、補助参加人の中間処理場にダンプカーを派遣して、被告安全処理工業がそのバキュームカーで補助参加人の中間処理場に搬入した汚泥を補助参加人において脱水して固化したものについても、補助参加人の中間処理場においてその積込みを受けて、本件土地に搬入したものと推認される。

(五) なお、原告らは、株式会社中研コンサルタント作成に係る「建設残土の化学分析結果報告書」(甲二二)に基づいて、台場作業所の現場に残されていた建設汚泥と本件土地上に残されていた建設汚泥を採取して分析した結果、右二種類の建設汚泥の砂分の分析値は全ての成分において非常に近い値を示し、これらの建設汚泥が同一のものであることが明らかになった旨主張しているので、この点について付言する。

確かに、右報告書中には、右二種類の建設残土の砂分の分析値が全ての成分において非常に近い値を示していることから右二箇所で使用された砂は同一と思われるとの記載がある。しかしながら、右報告書中には、台場作業所の現場及び本件土地から採取した残土を比較すると、台場作業所の現場から採取した残土の方が約一・四倍砂分の含有率が高い、本件土地から採取した残土の方が約一・四倍固化材の主成分の含有率が高い旨の記載がされており、右両者の残土自体の同一性については疑問の余地がある。また、右報告書や中村作成に係る「採取現場拡大見取図」と題する書面等(甲二八)によれば、右分析に当たり残土を採取した時期は平成七年八月三日とされているところ、報告書等(己二の1ないし3)により認められる本件工事以降右残土の採取日に至るまでの間の右採取現場の状況の変動の実情にかんがみると、右採取日に右現場で採取された残土が、本件工事で発生したものと同一の性状であると認めることは困難というべきである。そうだとすると、原告らの右主張は、直ちには採用できない。

2  そこで、進んで、被告誠建設が本件土地に搬入した建設汚泥の量について検討する。

前記前提となる事実3で説示したところによれば、台場作業所の現場から発生する産業廃棄物のうち、本件委託契約により被告安全処理工業及び補助参加人に対して処理が委託された産業廃棄物の量は七二〇〇立方メートルであることが認められる。また、証拠(丁一、五、一五、証人有賀、澤山、被告安全処理代表者)上、台場作業所の現場から搬出された建設汚泥の量は約七〇〇〇ないし八〇〇〇立方メートルであったとされているところである。そして、前記一2(二)で説示したとおり、台場作業所の本件工事により発生した建設汚泥については、まず現場内に掘られた廃泥ピットまでサンドポンプで運ばれ、ここで乾燥、固化させた上、被告安全処理工業のオペレーターが深ボディーのダンプカーに積み込み、搬出するという方法でほとんど処理されていたが、ピットの容量が不足した時期に、泥状のままバキュームカーで搬出するという方法で処理されたことが若干あったというのである。こうしたことを総合考慮すると、被告誠建設が台場作業所において積込みを受けて補助参加人の中間処理場を経由せずに直接本件土地に搬入した本件工事により発生した建設汚泥の量は概ね七〇〇〇立方メートルであると推認するのが相当である。

3  なお、原告らは、浮島作業所の現場から発生した建設汚泥についても被告誠建設によって本件土地に直接搬入された旨主張している。しかしながら、この点については、未だ十分に立証が尽くされていないといわざるを得ず、右原告らの主張は、採用できない。

三  本件残土の産業廃棄物該当性

1  本件工事は、前記一2(二)で説示したとおり、コラムジェットグラウト工法による地盤改良工事であったことが認められる。

また、証拠(甲一二ないし一四)によれば、次の事実が認められる。

ジェットグラウト工法は、多重管ロッドの先端に装着したモニターから超高圧の水もしくはセメント系硬化材を圧縮空気と同時に横方向に噴射、回転、引き上げをすることにより、地盤中に直径平均二メートルの円柱状固結体を造成する工法であり、さらにJSG工法とコラムジェットグラウト工法の二種頻に分類される。このうち、コラムジェットグラウト工法は、空気を伴った超高圧水を地盤中に回転して噴射させて地盤を切削し、その際に生じる掘り屑(スライム)を地表に排出させることによって人為的に空間を造り、その中に硬化剤を同時填充させ円柱状の固結体を造成する工法である(甲一二、一三)。

右工法によって排出されるスライムはセメント分を含んでいるため一昼夜程度で固結する。したがって、現場にスライムを貯留するピットを設ける用地を確保できる場合には、ピットにこれを投入して固結させ、油圧ショベル等の掘削機を使って掘削し、ダンプカーで搬出する。固結土になっても産業廃棄物であるから、指定の処分地で処分する必要がある。また、ピット用地が確保できない場合には、直接バキューム車もしくはタンク車に投入し、指定の処理場へ搬出する(甲一三)。右工法によって発生する排泥液は、セメントミルクと土粒子の混合物及びプラント洗浄水であり、数時間で固化し始めるため、早急に処理を必要とする産業廃棄物である(甲一四)ため、その運搬、処理に当たっては、産業廃棄物処理業の許可を受けた業者を使う必要がある(甲一三)。

以上説示したところによれば、被告日本国土開発の事業活動である本件工事に伴って生じた汚泥は、廃棄物処理法二条四項にいう産業廃棄物に該当し、また、ピット等で固結した後の土も産業廃棄物に該当するものというべきである。

2  なお、「建設工事等から生ずる廃棄物の適正処理について」(平成二年五月三一日衛産第三七号各都道府県・政令市産業廃棄物行政主管部(局)長あて厚生省生活衛生局水道環境部産業廃棄物対策室長通知)は、残土と汚泥の区分について、標準仕様ダンプトラックに山積みができず、また、その上を人が歩けない状態のものを汚泥と規定し(甲八)、環境庁企画調整局環境保全活動推進室監修の「リサイクル環境保全ハンドブック」(甲八)中には、泥水工法(建物建設時の基礎工事で基礎杭を打つ場合に、穴に泥水を流し込みその圧力を利用しながら穴が崩落しないように掘削する方法)で分離されたズリ(泥水工法等で掘削した後、掘削土と混合した泥水を回収して沈殿槽で固液分離した後に沈殿した土砂)で水切りが行われれば流動性のないものは残土として扱われるとの記載があるが、これらはセメントミルクが含まれている汚泥については当てはまらないというべきであり、右1の認定を左右するものではない。

四  被告誠建設の責任

前記一ないし三で説示したところによれば、本件土地は廃棄物処理法一五条一項で定める産業廃棄物処理施設としての許可を受けていない土地であるところ、被告誠建設は、補助参加人から被告日本国土開発の台場作業所の本件工事により発生した産業廃棄物である汚泥を固化したものの運搬及び処分を委託され、平成四年九月から一〇月ころの間、台場作業所にダンプカーを派遣して右作業所で発生した汚泥の積込みを被告安全処理工業のオペレーターから受けて、補助参加人の中間処理場を経由せずに直接本件土地に搬入したことが認められる。このことに、被告誠建設の代表者西潟は、長年にわたり建設汚泥の収集・運搬業に従事しており、当時被告誠建設は右収集・運搬業について東京都知事及び千葉県知事から許可を受けていたこと(甲一一、丁四)、被告誠建設の代表者西潟が、その本人尋問において、「白っぽい」残土を運搬したと供述していること、また、搬入する物件の試供品を提出して原告妙光建設の承諾を得た旨供述していること、更には前記一ないし三で説示したところを総合考慮すれば、被告誠建設の代表者西潟は、本件土地に搬入したものが産業廃棄物に該当するものであること、そして、被告誠建設は、本件土地が産業廃棄物処理施設としての許可を受けていない土地であることを認識していたものと推認するのが相当である。

そうすると、被告誠建設は、補助参加人から運搬及び処分を委託された産業廃棄物を本件土地に搬入し、産業廃棄物処理施設ではない本件土地にみだりに産業廃棄物を捨てたものというべく、廃棄物処理法の諸規定にかんがみると、同被告の右行為は不法行為を構成するものと判断される。

したがって、被告誠建設は、右不法行為によって生じた損害について賠償責任を免れない。

五  被告安全処理工業の責任

産業廃棄物運搬業者は、産業廃棄物の収集若しくは運搬を他人に委託してはならないとされている(廃棄物処理法一四条九項本文)。ただし、事業者から委託を受けた産業廃棄物の収集若しくは運搬を政令で定める基準に従って委託する場合その他厚生省令で定める場合には、委託することも許される(廃棄物処理法一四条九項ただし書)とされており、平成四年政令第二一八号による改正後の廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令上、その六条の八において、委託契約は書面により行い、当該委託契約書には、委託する産業廃棄物の種類及び数量、運搬の最終目的地の所在地等についての条項が含まれていること、他人の産業廃棄物の運搬を業として行うことができる者であって、委託しようとする産業廃棄物の運搬がその事業の範囲に含まれる者に委託すること等の基準が掲げられている。同法がこのような規制を行っている趣旨は、産業廃棄物処理業の許可を受けた者が委託を受けた産業廃棄物の処理を更に他人に委託することによって、その処理についての責任の所在が不明確となり、不法投棄等の不適正処理を誘発するおそれがあるため、これを防止することにあるものと解される。

これを本件についてみると、本件委託契約においては、前記前提となる事実3のとおり、被告安全処理工業は、三信建設工業から委託された廃棄物の収集運搬を他の第三者に再委託してはならない、ただし、あらかじめ書面による本件共同企業体の承諾を得た場合には、廃棄物の運搬に限り、被告安全処理工業の責任において第三者に再委託することができると定められていた。

ところで、被告安全処理工業は、前記一2(三)のとおり、台場作業所の本件工事により排出され固化した汚泥の全ての運搬を補助参加人に対して委託しているところである。そして、本件においては、右委託が書面により行われた事実を証する証拠は存在しない。この点について、被告安全処理工業代表者は、右委託に際しては、書面による承諾を受けた旨供述しているが、これを裏付けるに足りる証拠はない。

そうすると、被告安全処理工業が補助参加人に対し本件産業廃棄物の運搬を再委託した行為は、廃棄物処理法一四条九項本文に違反するものであり、同項ただし書に定められた基準を満たすものでもないといわざるを得ない。

以上によれば、被告安全処理工業は、本件委託契約に定められた廃棄物の運搬を補助参加人に再委託するに当たって、廃棄物処理法及び同法施行令に定められた委託基準等にのっとって委託すべき義務があったにもかかわらず、これを怠り、その結果、被告誠建設による本件土地への建設汚泥の搬入を招来したものといわざるを得ない。

したがって、被告安全処理工業は、右建設汚泥が本件土地に搬入されたことにより発生した損害について、不法行為に基づく賠償責任を免れない。

六  被告日本国土開発の責任

1  廃棄物処理法一〇条一項は、事業者はその産業廃棄物を自ら処理しなければならないと定めるとともに、同法一二条三項は、事業者は、政令で定める基準、すなわち、前記五の<1>及び<2>等の基準に従い、同法一四条八項に規定する産業廃棄物収集運搬業者その他厚生省令で定める者に、その産業廃棄物の運搬又は処分を委託することができる旨定めている。

ところで、「産業廃棄物処理におけるマニフェストシステム(積荷目録制)の実施について」(平成二年三月二六日衛産第一八号各都道府県知事・政令市長宛厚生省生活衛生局水道環境部長通知)は、産業廃棄物の排出事業者がその処理を委託する場合について、産業廃棄物の処理の流れを自ら把握するとともに、産業廃棄物の性状等に関する情報を正確に伝達することによって、産業廃棄物の移動に関する管理体制を強化し、もって、生活環境の保全、公衆衛生の向上を図ることを目的として、産業廃棄物の性状、取扱い上の注意事項等を記載した積荷目録(マニフェスト)を産業廃棄物の処理の流れの中に組み込み、管理するいわゆるマニフェストシステムを平成二年四月一日から実施するために、その実施要綱を定めるとともに、このマニフェストシステムの普及を図るために、建設業から排出される産業廃棄物を平成二年度において重点的に指導すべきものとして掲げている。そして、右実施要綱は、排出事業者に対し次の手続を履践することを求めている。<1> 排出事業者は、産業廃棄物の処理を委託しようとするときは、委託しようとする産業廃棄物の引渡しごとに、積荷目録の各票の検印欄、受領済印欄及び処理完了印欄以外の欄に必要な事項の記入を自ら行い、その産業廃棄物を収集・運搬業者に引き渡すときに当該積荷目録の各票を当該収集・運搬業者に交付しなければならない、また、<2> 委託した産業廃棄物について処分業者から交付されたD票の記載事項と収集・運搬業者から交付されたA票の記載事項を照合し、排出事業者の指示のとおり産業廃棄物の処理が行われたか否かを確認しなければならない、そして、<3> 収集・運搬業者に産業廃棄物を引き渡した日から一か月以内に処分業者からD票が交付されない場合、又は、委託した産業廃棄物が不適正に処理されたおそれがある場合は、収集・運搬業者又は処分業者に対し、いかなる処理を行ったか等必要な事項について確認する等必要な措置を講じなければならないとしている(以上、甲二七)。

以上説示したところによれば、排出事業者である被告日本国土開発は、その事業活動に伴って生じる産業廃棄物たる建設汚泥等の処理を被告安全処理工業及び補助参加人に委託するに当たっては、その適正な処理を期して、委託先の選定を慎重に行うとともに、処理を委託した産業廃棄物の流れを的確に把握し、不適正に処理されるおそれがある場合は、収集・運搬業者又は処分業者に対し、いかなる処理を行ったか等について報告を求めたり、追跡調査を行うなどして、本件委託契約どおり処理されているかどうかを確認すべき義務があったものというべきである。

2  そこで、被告日本国土開発が右義務を尽くしたかどうかについて、以下検討する。

まず、前記一2(二)で説示したとおり、本件工事により発生した汚泥は、現場内に掘られた廃泥ピットまでサンドポンプで運ばれ、ここで乾燥、固化させた上で、ダンプカーに積み込み、搬出するという方法でほとんど処理されていたというのであるが、右処理方法は、前記三1で説示したとおり、本件工事で採用されたコラムジェットグラウト工法により発生した汚泥の一般的な処理方法であり、本件委託契約を締結した時点において、右処理方法が採用されることは予定されていたものと推認される。ところが、前記一2(三)で説示したとおり、被告安全処理工業は、本件委託契約が締結された当時、ダンプカーを保有していなかったのであり、右処理方法を採用する以上、被告安全処理工業としては、ダンプカーを保有する他の運搬業者等に固化した汚泥の運搬を再委託せざるを得ない状況であったことが認められる。そして、被告日本国土開発の台場作業所の当時の所長であった澤山幸孝は、その証人尋問において、被告安全処理工業がダンプカーを保有しているかどうかを確認しなかった旨供述しているところである。こうしたところからすると、被告日本国土開発には、委託先の選定に当たり適切な配慮に欠ける点があったといわざるを得ない。

次に、証拠(己一、証人澤山)によれば、被告日本国土開発は、台場作業所の現場で発生した建設汚泥等の処理を委託するに当たり、マニフェストを作成していたというのであるが、これは、被告安全処理工業が作成した作業伝票をもとに被告日本国土開発が三信建設工業に指示して事後的に作成させたものであり、産業廃棄物と共に被告安全処理工業に引き渡されたものではないというのである。こうしたところからすると、本件においては、マニフェストが作成されていたことがうかがわれるものの、前記マニフェストシステムが企図している実質的な趣旨には即していなかったものといわざるを得ない。そして、証人澤山の証言によれば、実際に収集に来ている車が被告安全処理工業の車であるかどうかについて十分には確認しておらず、また、被告安全処理工業がダンプカーを運転手付きで借りてくるということも当然あり得ると認識していたというのである。こうしたところからすると、被告日本国土開発には、処理を委託した産業廃棄物の流れを的確に把握し、それが適正に処理されているか否かを確認すべき義務の履行においても、欠ける点があったといわざるを得ない。

この点について、証人澤山は、実際に本件委託契約で定められているとおり運搬されているかについて追跡調査を何回か行った旨供述しているが、その回数や時期は明確ではなく、右供述のみをもって、被告日本国土開発が右汚泥等が本件委託契約どおりに処理されているかどうかについて確認義務を尽くしたということはできない。

3  以上によれば、被告日本国土開発は、台場作業所の本件工事により発生した産業廃棄物の処理を委託するに当たり、その適正な処理を期して、委託先の選定を慎重に行うとともに、処理を委託した産業廃棄物の流れを的確に把握し、不適正に処理されるおそれがある場合は、収集・運搬業者又は処分業者に対し、いかなる処理を行ったか等について報告を求めたり、追跡調査を行うなどして、本件委託契約どおり処理されているかどうかを確認すべき義務があったにもかかわらず、これを怠り、その結果、被告誠建設による本件土地への建設汚泥の搬入を招来したものといわざるを得ない。

したがって、被告日本国土開発は、右建設汚泥が本件土地に搬入されたことにより発生した損害について、不法行為に基づく賠償責任を免れない。

七  被告千葉県の責任

1  原告らは、千葉県知事が廃棄物処理法上期待されている行政権限、すなわち、同法一八条の報告の徴収、同法一九条の三第二号による改善命令及び同法一九条の四第一項二号による措置命令の権限を適切に行使せず、本件の不法投棄を黙認、放置してその裁量権を逸脱したことにより、原告高橋の損害を拡大させた旨主張している。

2  そこで、まず、廃棄物処理法一八条の報告の徴収について検討する。

前記一3で認定、説示したところによれば、佐倉保健所長は、原告妙光建設、被告誠建設及び補助参加人に対して右報告の徴収を行い、また、被告安全処理工業及び被告日本国土開発に対しては、報告の徴収に代わる事情聴取を行い、それぞれ回答を得ているのである。こうしたことに、後記3で説示することを併せ考慮すると、千葉県知事が報告の徴収の権限を適切に行使しなかった旨の原告らの主張は採用できない。

3  次に、廃棄物処理法一九条の三第二号による改善命令及び同法一九条の四第一項二号による措置命令について検討する。

廃棄物処理法上、産業廃棄物の適正な処理を確保するため都道府県知事に与えられている右改善命令及び措置命令の権限は、産業廃棄物処理基準に適合しない産業廃棄物の処分等が行われた場合に行使することができることとされている(一九条の三第二号、一九条の四第一項二号)。

ところで、廃棄物処理法上、産業廃棄物とは、事業活動に伴って生じた廃棄物のうち、燃えがら、汚でい、廃油、廃酸、廃アルカリ、廃プラスチック類その他政令で定める廃棄物とされている(二条四項)。したがって、ある土地に埋め立てられた物質が産業廃棄物に該当するかどうかを判断するに当たっては、当該物質がその客観的な状態から見て産業廃棄物に該当すると判断し得る場合を除いては、当該物質の搬入経路及び排出事業者を特定した上で、当該物質が排出事業者の事業活動に伴って生じた汚物又は不要物であるか、燃えがら、汚でい、廃油、廃酸、廃アルカリ、廃プラスチック類その他政令で定める廃棄物であるか否かを検討しなければならない。

これを本件についてみると、本件土地に搬入された物質は、前記二で判示したとおり、汚泥が固化した状態のものであり、また、本件土地には他の工事現場で発生したアースドリル残土や石灰も搬入され、混合されており(甲一、乙一三、一八の2)、現地調査によっても残土であるか産業廃棄物であるか判断することが困難であった(丁四)というのである。こうしたことにかんがみると、当該物質がその客観的な状態から見て産業廃棄物に該当すると判断し得るものではなかったというべきである。

また、前記一3で認定したとおり、佐倉保健所は、本件土地上の物質が産業廃棄物であるかどうか確認するため、被告誠建設、補助参加人、被告安全処理工業及び被告日本国土開発に対して事情聴取を行うとともに、被告誠建設及び補助参加人に対し、廃棄物処理法一八条に基づき報告を求めた、しかるに、被告誠建設は、事情聴取に一度だけ応じたものの、その後は一切応じず、右報告も拒否した、また、補助参加人は、右報告を提出したものの、報告内容に不備があったため再度報告を求めたが、その後報告されなかったというのである。

加えて、前記一3で説示したところ、証拠(丁一、六、七、一五、証人戸田)及び弁論の全趣旨によれば、佐倉保健所の調査について、次の事実が認められる。すなわち、被告誠建設との関係では、事情聴取を行った際、被告誠建設が補助参加人の中間処理場から本件土地に搬入するについては、一立方メートル当たり五三〇〇円の適正料金を支払っており、公正な商取引である、また、他にも本件土地に搬入した業者がいる旨の説明を受けたため、更に調査が必要となったが、その他の回答は一切拒否され、本件土地に搬入した量についても明らかにされなかった。被告日本国土開発との関係では、事情聴取を行った際、台場作業所から発生した産業廃棄物の処理契約や工事期間等について説明を受けたが、その際、台場作業所から発生した汚泥のうち被告安全処理工業に運搬を委託したものについては、補助参加人の中間処理場に搬入された旨の回答があり、その後、産業廃棄物の処理実態を明らかにするよう被告日本国土開発に協力を要請したところ、応じられないとの回答があり、建設系廃棄物マニフェストが三枚のみ提出された(丁五)。また、補助参加人に対して事情聴取を行った際には、被告誠建設が台場作業所から本件土地に直接搬入したことはない旨の説明を受けた、被告安全処理工業に対して事情聴取を行った際にも、右と同様の説明を受けたのである。

また、前記一3のとおり、被告千葉県は、平成五年八月三〇日、同年一一月一二日、同月一八日の三回にわたって、本件土地やその隣接地から土壌や地下水等の検体を採取し、計量検査ないし水質検査を依頼したが、重金属類がほとんど検出されなかったというのである。こうしたことからすると、本件土地は、右検査当時、生活環境の保全上支障が生じ、又は生ずるおそれがあると判断できる状況にはなかったものというべきである。

このような佐倉保健所による調査の経過にかんがみれば、当時、佐倉保健所において、本件土地に搬入された物質が被告日本国土開発の台場作業所から発生した産業廃棄物であり、その後中間処理場を経由せずに本件土地に直接搬入されたものであると判断することは困難であったというべきである。

以上のところに、前記一3で説示した被告千葉県による行政指導等の経緯をも併せ考慮すると、千葉県知事が改善命令及び措置命令の権限を適切に行使しなかった旨の原告らの主張は採用できない。

4  したがって、原告らの前記1の主張は採用できないから、原告らの被告千葉県に対する請求は理由がない。

八  原告高橋の損害賠償請求について

そこで、進んで、原告高橋の損害賠償請求について判断する。

前記二2で説示したとおり、被告誠建設は、台場作業所の本件工事により発生した産業廃棄物である建設汚泥のうち概ね七〇〇〇立方メートルを本件土地に搬入したというのである。

そうすると、原告高橋は、少なくとも右同量の産業廃棄物の運搬及び処分に要する費用に相当する額の損害を被ったものというべきである。そして、右運搬及び処分に要する費用としては、被告日本国土開発が被告安全処理工業に支払ったと同額である一立方メートル当たり七〇〇〇円をもって相当と判断される(証拠(証人澤山、被告安全処理代表者)及び弁論の全趣旨によれば、右七〇〇〇円は被告日本国土開発が運搬及び処分を委託した際の相場であったことが認められる。)。

以上のところによれば、被告誠建設の不法行為と因果関係のある原告高橋の損害は概ね四九〇〇万円となり、本件において同原告が請求している一〇〇〇万円を上回ることが明らかである。

よって、被告千葉県を除く被告らは、原告高橋に対し一〇〇〇万円の損害賠償義務を免れない(右被告らの債務は不真正連帯債務と判断される。)。

九  原告妙光建設の損害賠償請求について

次に、原告妙光建設の損害賠償請求について判断する。

1  原告妙光建設は、平成五年一月の時点で初めて被告誠建設が本件土地に搬入していたものがミルク残土であると気付き、同被告に対して投棄済みの残土の除去を求めた旨主張する。しかしながら、この主張は、次のとおり採用できない。

すなわち、原告妙光建設は、前記一1のとおり、平成三年一二月二四日、富里町長に対し、富里町の条例に基づき事業施行者として本件土地の埋立及び盛土造成事業を行うことについて事業許可の申請を行っているが、右申請では、一日の搬入量を三〇〇立方メートル、総土量を五〇〇〇立方メートルとし、右申請に添付していた土砂発生場所証明書では、土砂排出量は四〇〇〇立方メートルとしていたにもかかわらず、三井建設株式会社の現場で発生したアース残土を搬入した後も、他の現場からの残土の受入れを続け、本件工事関係だけでも右申請における総土量を著しく超える概ね七〇〇〇立方メートルの残土を受け入れたというのである(原告妙高建設代表者、前記二2)。

また、原告妙光建設は、本件土地にその従業員三人から四人程度を常駐させ、整地や投棄場所の指定等の作業を行わせるとともに、本件土地の入口に門扉を設け、業務終了後は錠をかけるなどして管理していた、中村も一か月に数回程度本件土地を見回りのため訪問していたことが認められる(原告妙光建設代表者、被告誠建設代表者)。

さらに、中村は、昭和五四年四月に中村の管理する産業廃棄物処理場の堰堤が決壊してベントナイト汚泥が流出し生後七か月の乳児が死亡した事故について、昭和五七年一一月一日に東京高等裁判所において業務上過失致死、廃棄物処理法違反被告事件で懲役一年六月の判決を受けるとともに、平成二年三月二八日には千葉地方裁判所で右事故の遺族等から提起された損害賠償請求事件につき請求を一部認容する判決を受けている(丁二二、二三。なお、右損害賠償請求事件では本件の被告千葉県も中村とともに被告として請求を一部認容されている。)。また、平成四年当時、原告妙光建設は、東京都及び千葉県から産業廃棄物(建設汚泥)の収集運搬業について許可を受けていた(甲一一、丁四)。こうしたことに、中村は産業廃棄物処理の専門家である旨自ら供述していることをも併せ考慮すれば、原告妙光建設及びその代表者である中村は、平成四年当時、産業廃棄物の処理について相当の知識を有していたものというべきである。

加えて、台場作業所から排出された汚泥は、セメントミルクが混入した汚泥が固化したものであり、被告誠建設代表者の供述するところからしても、一見して白っぽいものであったというのである。また、原告妙光建設は、同原告の被告誠建設に対する平成五年二月二六日、三月三一日及び四月一二日付け請求書(乙五の1ないし3)において、被告誠建設に対し、平成五年二月から四月の間に受け入れた残土のうち、白い残土をいわゆるミルク残土と称し、これについてはダンプ一台につき三〇〇〇円の差額分を請求している。こうしたことからすると、原告妙光建設は、当時、産業廃棄物たる汚泥と一般残土とを判別できたことがうかがわれ、また、その判別を前提に、被告誠建設の本件土地への搬入を許容していたものと判断される。

以上説示したところに、前記一2(四)で認定した原告妙光建設と被告誠建設との関係、前記一3で認定、説示した原告妙光建設の採った行動をも併せ考慮すると、原告妙光建設は、本件土地に被告誠建設が搬入していた物質が産業廃棄物に該当することを知りつつ、ダンプカー一台につき一万円という搬入代金を徴収の上、本件土地への搬入を許容していたものと推認される。

そうすると、原告妙光建設は、平成五年一月の時点で初めて被告誠建設が本件土地に搬入していたものがミルク残土であると気付いた旨主張するが、この主張は採用できない。

2  ところで、本件において原告妙光建設が賠償を請求している損害は、その内容について見ると、被告誠建設が本件土地に搬入した建設汚泥を除去するに要する費用及び本件土地の返還予定日以降の本件土地からの原告高橋の得べかりし収入の喪失により生じたものというのであるが、これらは、いずれも、原告妙光建設が、原告高橋から本件土地を賃借していることに伴い、その賃借人として、原告高橋に対し本件土地を原状に回復して返還すべき義務を負っていることがその前提になっているものである。

しかるに、本件においては、原告妙光建設は、以上説示したとおり、本件土地に被告誠建設が搬入していた物質が産業廃棄物であることを知りつつ、ダンプカー一台について一万円という搬入代金を徴収の上、その搬入を許容していたというのであるから、賃借人として高橋に対し右原状回復義務を負うべきことを承知の上で、敢えて右のような行為に出たものであり、原告妙光建設主張に係る損害は、もともと同人が負担すべきことを織り込んだ上で行動した結果生じたものというべきである。

3  以上1及び2で説示したところに、前記一3で認定、説示した原告妙光建設が平成五年五月以降採った行動をも併せ考慮すると、原告妙光建設は、自ら管理する本件土地に被告誠建設が産業廃棄物を搬入することを知りつつ、ダンプカー一台につき一万円という代金を徴収の上、それを許容していた者として、原告高橋に対し損害賠償責任を免れないというべく、このような妙光建設との関係では、以上四ないし六で説示した被告らの行為が不法行為を構成するということはできないというべきである。

そうすると、原告妙光建設の被告らに対する不法行為に基づく損害賠債請求は理由がないというべく、かえって、原告高橋に対し損害賠償義務を免れない立場にあるものというべきである。

第四結論

よって、原告高橋の被告誠建設、被告安全処理工業及び被告日本国土開発に対する請求はいずれも理由があるからこれを認容することとし、原告高橋の被告千葉県に対する請求及び原告妙光建設の請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとし、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 金井康雄 裁判官 藤田広美 裁判官大森直哉は差し支えのため署名押印することができない。裁判長裁判官 金井康雄)

別紙<省略>

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