東京地方裁判所 平成6年(ワ)8866号 判決 1997年9月24日
原告
X
右代表者代表取締役
A
右訴訟代理人弁護士
水沼宏
被告
Y
右代表者代表取締役
B
右訴訟代理人弁護士
渡辺昇三
主文
一 被告は原告に対し、金七六三万二三〇〇円及び内金七四一万円に対する平成四年四月一七日から支払済みまで年六分の割合による金員を支払え。
二 訴訟費用は被告の負担とする。
三 この判決は仮に執行することができる。
事実及び理由
第一 請求
主文同旨
第二 事案の概要
一 本件に至る経緯
1 原告はコンピューターシステムの販売等を目的とする株式会社であり、被告は図書教材の販売等を目的とする有限会社である(争いがない。)。
2 被告が、従来から使用していたパソコンは、商品ごとの入金処理機能がなく、パソコンからプリントアウトされた請求書に、個別商品ごとの金額を手書きして対応していた(争いがない。)。
原告は、右問題点を改善するシステムの提案を行った(甲七ないし九)。
当初は、得意先六〇〇〇件、商品三〇〇〇件のデーターの登録作業を原告において費用八〇万円で行うとの提案をし、さらに得意先六〇〇〇件だけの登録作業を原告において費用五〇万円で行うとの提案をしたが(甲七、甲九)、いずれの提案も退けられた(争いがない。)。
3 平成二年一二月二七日、被告は原告に対し、別紙目録記載のコンピューターシステム一式(以下「本件システム」という。)について、代金七四一万円(消費税別途、消費税二二万二三〇〇円を加算すると七六三万二三〇〇円となる。)、支払条件リース、納入予定日平成三年三月、納入場所被告事務所、リース開始はマシン納入後とする注文書(乙一)を発行した(以下「本件発注」という。)。
4 本件システムは、被告代表者の要望により個別入金処理方式(個別消込み方式)とし、単式画面方式のもと売上明細一件ずつについて消込みが行われることになっていた(争いがない。)。
5 平成三年八月二七日、原告は、本件システムを被告事務所に搬入納品した(争いがない。)。
6 平成四年四月六日、原告は被告に対し、本件システムの代金を一〇日以内に支払うように催告したが、同月一六日を経過しても、被告は原告に対し本件システムの代金を支払わなかった(争いがない。)。
7 平成四年一〇月二〇日、被告は原告に対し、請求額と入金額が等しい場合には一括消込み、請求額と入金額が一致しない場合には担当者による個別消込みという方式に変更するように要求し、原告は、無償で複式画面切替方式に変更した(争いがない。)。
二 原告の主張
1 本件システムの売買契約
平成二年一二月二七日、原告と被告との間において、原告が被告に対し、本件システムを代金七四一万円(消費税別途)で売り渡す契約が成立した。
原告は被告に対し、本件システムの売買代金七四一万円及びこれに対する催告期限の翌日である平成四年四月一七日から支払済みまで商事法定利率年六分の割合による遅延損害金並びに右売買代金に対する消費税二二万二三〇〇円の支払いを求める。
2 被告の登録作業の遅滞
原告と被告との間において、本件発注に際し、本件システムへのデーターの登録作業については、被告が全部行うことになっていた。
平成三年五月、原告は登録プログラムを完成したので、被告に対し、再三にわたって登録作業の実施を促したが、被告は実行しなかった。
平成三年六月一八日、原告は被告に対し、新スケジュールとしてA案、B案を提示した。
A案は、平成三年六月一八日登録作業開始、同年八月一日テストラン開始、B案は、同年六月一八日登録作業開始、同年九月一日テストラン開始というものであった。
被告は原告に対し、繁忙のため登録作業はできない、A、B案とも実行は無理である、原告がスケジュールにこだわるなら原告が無償で行えと言って、作業を開始しなかった。
原告も、有償でなければ作業はできないとして、被告の要求に応じなかった。
結局、原告が有料で登録作業を行い、その登録作業の費用を伝票代として精算することになり、平成三年八月一日、原告は被告に対し、最終スケジュールとして同月二六日に本件システムを被告事務所に設置し、同月二七日テストラン開始という案を提示し、被告は了承した。
3 本件システムの処理方法の変更
本件システムにおいて原告が作成したソフト(以下「本件ソフト」という。)は、被告代表者の要望により個別入金処理方式(個別消込み方式)としてあり、平成三年八月二七日に本件システムを被告事務所に搬入納品した。
ところが、平成四年一〇月二〇日、被告は原告に対し、本件ソフトについて、請求額と入金額が等しい場合にはコンピューターによる一括消込み、請求額と入金額が等しくない場合には担当者による個別消込みという方式に変更するように要求した。
そこで、原告は、本件ソフトを無償で複式画面切替方式に変更した。
また、平成五年一月、被告は原告に対し、本件ソフトについて、請求額と入金額が等しくない場合にも、入金総額の範囲内で任意の個別請求の額または合計額が一致した場合には、入金自動処理を行えるようにするように要求した。
4 本件ソフト
コンピューターシステムは、ある業務処理を実施するため、ハードウェア(機器)とソフトウェア(プログラム)により構成され、マスターファイル(あらかじめ登録された情報)と日常発生するデーター(取引情報)を投入し、一定の業務処理のフローに基き動作を行い、その目的を達成するものである。
本件ソフトは、被告の要求に基いて作成された個別システムであるが、ソフトウェアの論理の組立方(プログラム)に従って、その使用方法にも一定のルールが必要であり、原告は、このため大量の資料(販売管理システム操作説明書、マスター登録説明書、コードブック表、メニュー画面の資料、画面レイアウトの資料、ファイルレイアウトの資料)を作成して被告に提供し、正常稼働のための初期指導を行うことを提案した。
しかし、被告は、その消極的態度から、初期指導に対しても関心を示さず、正常稼働のための初歩的ルールの知識を欠いているのに、原告に対し、無理難題を持ちかけた。
被告の主張する本件ソフトの瑕疵は左記のとおり理由のないものであり、被告の主張は、コンピューターに対する理解の不足によるものである。
(一) 被告は、伝票二枚の処理に約四分を要したことから全体の業務処理は実務的に困難との主張をする。
しかし、本来、コンピューターの特徴は、大量迅速処理にあり、業務の開始・終了に際しては伝票枚数に関係なく、その内部で所定の処理が実行されるのである。
具体的には、マスターファイル(あらかじめ登録された情報)の準備動作(専門的にはファイルオープン・ファイルクローズ)を行うが、本件の個別システムでは、コントロール、名称、得意先、仕入先、商品名、再編製機能等多数のマスターファイルがあり、これらの動作については、伝票枚数に関係なく、一定の時間を必要とし、これが完了すると大量のデーター(取引情報)が迅速に処理されるのである。
(二) 被告は、プルーフリストの処理内容の整合性がないと主張する。
しかし、被告が援用する入金伝票プルーフリスト(乙四)には、平成七年三月一五日の入金前の同月一一日に一〇〇〇円の入金が記録されている。
このようなことでは、原告が提示した正しい業務処理の流れ、日次処理が実施されていたか不明であり、かつ、三月一五日以前にどのような取引情報がインプットされ蓄積されていたかが不明であるので、被告の主張は論評のかぎりではない。
(三) 被告主張の得意先元帳と請求書の不整合については、もともと基準日が異なり(得意先元帳は毎月末締め、請求書は毎月二〇日締め)、取引条件にもよるが、本来、内容的に一致するものではない。
また、被告が援用する得意先元帳(乙五)によると、平成四年一二月の取引から平成七年三月の取引まで全く取引がなかったかのような記録となっているが、その間に正しい一連の業務処理がなされていたかどうか疑問であり、原告の初期指導を拒否し、被告が無手勝流で本件システムを操作した結果ではないかと思料される。
(四) 入金処理方式については、被告から単式画面から複式画面というように再三にわたる変更要求があり、その都度プログラムの修正を行ったが、被告主張のテストが、どのレベルのプログラムを実行させたものか不明である。
また、何よりも投入された取引情報と業務処理の完全性が明かでない以上、被告の主張は採用できない。
なお、日次処理は、一日の取引情報の投入を確認してから実施するものであり、通常のシステムでは中止する機能はない。
5 被告の債務承認
原告は、Zに会計監査を委託しており、その監査のために被告に対し、被告の原告に対する買掛金残高の確認を依頼したところ、被告は、平成三年九月二〇日の時点で右残高が八四八万九二六〇円であることを確認した。
三 被告の主張
1 本件システムのリース契約
本件システムについて原告と被告との間にリース契約が成立したことはあっても、売買契約は成立していない。
月額リース料は約一六万円であった。
2 原告の作業日程の遅滞
本件システムについては、専門のオペレーターが必要なことから、平成二年一二月中旬ころ、被告は二名のオペレーターを採用した。
被告は、主要な取引先が夏休みに入る平成三年七月下旬ころから同年八月末ころにかけた時期が比較的閑なため、右の時期に本件システムを本稼働させ、二名のオペレーターに本件システムの操作を熟達させながら、従来から使用してきたパソコンと併用しつつ、平成四年四月から本件システムに切替える予定であった。
そこで、本件発注に際し、被告は原告に対し、左記の事項を特に強く要望した。
(一) 事務作業の効率化を図れるソフトを完成させる。
(二) 請求書の入金を商品ごとに個別にし、かつ、支払いが完了した分は表示されないものとする(個別入金処理方式、個別消込み方式)。
(三) 商品毎の入金明細を出せるようにする。
(四) 平成三年七月末ころまでに本稼働ができるようにソフトを完成させ、テストランを終えている。
ところが、原告はソフト作成のための被告との打ち合わせを怠り、平成三年八月二七日になって本件システムを納品した。
3 本件ソフトの処理方法の変更
(一) 個別入金処理方式(個別消込み方式)は作業手順が複雑であるうえに、画面表示字数の制約から多数回画面切替を必要とするものであり、事務作業の効率化にはほど遠いものであったにもかかわらず、原告は、本件ソフト作成作業において右説明を一切しなかった。
(二) また、のちに、被告が原告に対し、本件ソフトについて、請求額と入金額が等しくない場合にも、入金明細の指示がないときは、売上日付の古い順から自動的に入金処理ができるように要求したことはあるが、入金総額の範囲内で任意の個別請求の額または合計額が一致した場合には、入金自動処理を行えるようにするように要求したことはない。
4 本件ソフトの瑕疵
平成三年八月二七日に本件システムが納品されたとき、本件ソフトはテストランを経ておらず、左記のとおり不完全なものであった。
(一) 伝票枚数二枚、入力行数二行のみの例で、入力終了から日次更新終了まで約四分かかる。
右速度では、被告の得意先六〇〇〇件、取扱商品三〇〇〇件の入金処理、請求書発行等に対処することは困難である。
(二) 川東小四年生から、平成七年三月一五日、吉野モーニング数学一年外数件の売上に対し、一万円の入金があったとして入力した。
ところが、入金伝票プルーフリスト(乙四)には、平成七年三月一五日、一万円の入金表示はされているものの、明細消込入金額欄に一万一二〇〇円、八〇〇円の合計一万二〇〇〇円の入金表示となっており、整合性がない。
また、請求金額、請求残高欄に表示される金額が意味不明の金額となっている。
(三) 得意先元帳(乙五)に川東小四年生に対し、数件の売上があり、売上金額合計五万九二五〇円、繰越入金合計三万三五〇〇円及び平成七年三月二〇日現金一万円の入金があり、残高一万五七〇〇円と表示されている。
ところが、これに対する請求書(乙六)を作成してみると、先月請求額二万七五〇〇円、今月入金額一万円、請求金額一万五七五〇円と表示され、右入金額一万円に対応する明細消込みが、吉野モーニング数学一年の売上金一万一二〇〇円に対し、全額の一万一二〇〇円が、また、ポリチューブ絵の具(黒)の売上金一八〇〇円に対し、八〇〇円が消込まれ、入金額と消込み金額に整合性がない。
また、繰越入金額三万三五〇〇円に対応する消込み明細がなされておらず、請求額だけが正しい表示となっている。
(四) 本件ソフトは、入金伝票入力画面に表示される入金額と入金伝票プルーフリストに表示される明細消込みの入金額と連動性がなく、入金処理システムにおける最も重要な機能が欠落している。
また、本件ソフトには右整合性を確認するチェック機能がない。
本件ソフトは日次更新を途中で中止する機能を欠いているため、日次更新終了後、明細消込みの訂正をしなければならず、この場合には、翌日入金として処理せざるを得なくなる。
日次更新中止機能は必要不可欠なものである。
5 契約の解除(原告の債務不履行)
(一) 本件システムが納品された平成三年八月二七日の時点で本件ソフトは不完全なものであり、新学期を間近に控えた時節であるため本稼働の時期を失し、平成四年四月に従来から使用していたパソコンと切替えることは不可能であった。
また、個別入金処理方式(個別消込み方式)は、作業手順が複雑で事務作業の効率化にほど遠いものであった。
(二) 右(一)より、本件ソフトでは、本件システムのリース契約の目的を達成することができないため、平成三年一〇月中旬ころ、被告は原告に対し、本件システムのリース契約を解除する旨の意思表示をした。
また、同様の理由により、平成六年六月二二日の本件第一回口頭弁論期日において、被告は原告に対し、本件システムのリース契約を解除する旨の意思表示をした。
四 争点
1 本件システムについての原告と被告との契約は売買契約であるのか、リース契約であるのか。
2 本件システムへのデーター登録作業は原告が行うことになっていたのか、被告が行うことになっていたのか。
3 原告の作業日程の遅滞の有無
4 個別入金処理方式(個別消込み方式)は、作業手順が複雑で事務作業の効率化にほど遠いものか。
5 本件ソフトに瑕疵があったといえるか。
6 被告は、原告の債務不履行を理由として本件システムについての契約を解除することができるか。
第三 当裁判所の判断
一 本件システムについての原告と被告との契約内容について
被告は、本件システムについて原告と被告との間にリース契約が成立したことはあっても、売買契約が成立したことはない旨主張する。
たしかに、本件システムの注文書(乙一)には、支払条件はリースとの記載があるものの、具体的なリース契約の内容についての合意がなされた事実が認められず、前記第二(事案の概要)の一(本件に至る経緯)で述べたとおり、被告は原告に対し、本件システムを代金七六三万二三〇〇円(消費税込)で注文し、原告が本件システムを被告に納品している以上、本件システムについての原告と被告との契約内容は売買契約と解するのが合理的である。
二 本件システムへのデーター登録作業はだれが行うことになっていたのかについて
後掲各証拠及び証人杉本健三の証言によれば、本件システムの平成二年四月の見積もり(甲七)においては、右登録のための費用は八〇万円と見積もられていたが、同年一二月の見積もり(甲九)では、右登録は、被告の顧客約六〇〇〇件のみとなり、その費用は五〇万円と見積もられ、最終的には、右登録は被告が行うこととなり、本件システムの代金七六三万二三〇〇円(消費税込)の中には右登録費用は含まれていない(乙一)ことが認められる。
したがって、本件システムへのデーター登録作業は被告が行うことになっていたものといえる。
三 作業日程の遅滞について
1 証拠(後掲各証拠、証人杉本健三、被告代表者本人)及び弁論の全趣旨によれば以下の事実が認められる。
(一) ソフトも含めた本件システムの被告への納入予定日は、平成三年三月であった(甲九、乙一)。
そのため、原告と被告との間では、平成三年一月から二月にかけてプログラム作成のための打ち合わせを行い、三月から五月にかけて登録作業、五月から六月にかけてテストラン等を行って、六月下旬ころから、本件システムを本稼働させることとなっていた(甲八)。
(二) しかし、原告は、被告に対して、プログラム作成のための打ち合わせをせず、本件システムのソフトについての打ち合わせが行われたのが、平成三年三月二九日であった(甲一)。
その際、原告は被告に対し、プログラム作成の打ち合わせを四月一五日までに終え、その後六月末にかけてプログラム作成を行い、並行して五月二〇日から六月末にかけて登録作業も行い、七月からテストラン等を行って、八月から、本件システムを本稼働させることを提案した(甲九)
しかしながら、四月は、新学期のため、教材会社の被告がもっとも多忙な時期であり、プログラム作成の打ち合わせを四月一五日までに終えるのは無理なため、被告代表者は右提案を受入れなかった。
(三) 原告は、平成三年四月中旬ころ、本件システムのマシンをIBMから入荷し、同年八月二七日に被告事務所に納品するまでの間、ソフト(プログラム)開発のために原告の新潟営業所に右マシンを置いていた。
このころ、被告代表者が原告社員に対し、感情的な態度を採ったため、被告代表者を怖れた原告社員は、被告代表者をことさらに避けて、被告社員との間で、プログラム作成のための打ち合わせを行い、平成三年六月中旬ころまでに、不完全ながらも一応のプログラムを完成した。
(四) 平成三年六月一八日、原告は、被告に対し、被告のデーター登録作業、原告による本件システムのテストランのスケジュール案としてA案、B案を提示した(甲一〇)。
A案は、平成三年六月中旬ころから登録項目の準備、同年七月初めから登録作業開始、同年八月一日テストラン開始、B案は、同年六月下旬ころから登録項目の準備、同年七月下旬、登録作業開始、同年九月一日テストラン開始というものであった。
被告代表者は原告に対し、繁忙のため登録作業はできない、A、B案とも実行は無理である、原告がスケジュールにこだわるなら原告が無償で行えと言って、登録作業を開始しなかった。
そこで、原告が、右登録作業を行い、そのための費用を被告から伝票代の名目で受取った。
2 おもうに、原告は、コンピューター関係の専門企業として、顧客である被告から提供された資料及び聴取等の結果に基き、本件システムの導入目的に適合したプログラムを作成すべき信義則上の義務を負担するものといえる。
ところが、右1で認定した事実によれば、四月が教材会社である被告にとって最も多忙な時期であるため、プログラム作成のための打ち合わせをそれまでに終了させておくべき必要性があったにもかかわらず、これを行わなかった原告には非があるものといえる。
しかしながら、被告の主張どおり、平成四年四月に旧システムから本件システムへの切り替えが予定されていたとするならば、被告も一つの企業体として事業を行い、その事業のために本件システムを導入する以上、自らも、積極的に原告との打ち合わせに応じ、平成四年四月の本件システムへの切り替えにむけて原告に協力すべき信義則上の義務を負担しているものといえる。
にもかかわらず、右1で認定した事実によれば、平成三年四月以降の被告代表者の原告に対する対応(特に、登録作業の不実施)は、必ずしも好ましいものとはいえず、このことが、本件システムの本稼働へむけてのスケジュールを遅滞させた一因となっていることは否定できないのであるから、仮に、被告が主張するように、平成四年四月の本件システムへの切り替えが不可能な事態となっていたとしても、そのことを理由として本件システムについての契約を解除することは認められないものといえる。
四 個別入金処理方式(個別消込み方式)について
証人松川重昭の証言及び弁論の全趣旨によれば、個別入金処理方式(個別消込み方式)は、教材関係の業界では特殊なものではなく、通常のものであることが認められ、他に右方式が事務作業の効率化の妨げになるようなものであることを認めるに足りる証拠がない。
このように、個別入金処理方式(個別消込み方式)が、不合理な方式であることを認めることができない以上、右方式を採用したことを理由に本件システムについての契約を解除することは認められないものといえる。
五 本件ソフトの瑕疵の有無について
1 たしかに、証拠(乙四ないし九、証人松川重昭)及び弁論の全趣旨によれば、本件システムに登録されたソフトについて、①業務ソフトにつき伝票条件入力処理に際して正当な日付を登録しても日付エラーによりはじかれてしまう、②入金伝票入力につき、入金総額を誤って過大に入力し、画面に表示されている金額との整合性がなくなった場合でも、これをチェックする機能が存在しない、③入力情報の訂正作業を行って数字を書き換えても、再計算がなされず、訂正前の数字のままで計算されてしまう、④入金伝票プルーフリストについて、意味不明の日付が表示される、⑤得意先管理表について、日次更新をして、当日の締め業務を行い、得意先別の売上を出しても、合算されないものが出てくる、⑥日次更新処理機能について、業務中断のために、画面上の操作説明に従ってキーを押しても、中断されず、続行されてしまう等の不具合が存在することが認められる。
2 しかしながら、証人松川重昭の証言によれば、本件システムのソフトは、作成途上のものであるものの、右1の不具合を解消するのには、約二週間程度を要することが認められ、比較的容易に修復可能な不具合といえることから、右不具合をもって本件システムについての契約を解除することはできないものといえる。
六 本件システムについての契約は被告によって解除されたものといえるか。
以上のことから、被告は、原告の債務不履行を理由として本件システムについての契約を解除することはできないものといえる。
七 よって、原告の請求は理由があるから、これを認容する。
(裁判官小林元二)
別紙目録
一 マシン
9402―Y10 オフコン装置AS/400―Y10(160MB)
2675 高密度磁気テープ機構(120MB)
3477―J02 オフコン専用端末
3479―JA2 JA2型キーボード
3474―JDM 表示画面
― ― 端末ケーブル
M2158 2158印刷装置
― ― 印刷装置ケーブル
<基本ソフト>
5727―SS6 SSP
6144 テープサポート
二 業務ソフト
教材販売システム
三 初期指導料・他
初期指導料・教材販売システム