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東京地方裁判所 平成6年(行ク)69号 決定 1994年12月16日

主文

本件申立てを却下する。

申立費用は申立人の負担とする。

理由

一  申立の趣旨

申立人を中央労働委員会、被申立人をエヌエス精工株式会社とする当裁判所平成六年(行ク)第三一号緊急命令申立事件について当裁判所が平成六年八月八日付けでした決定はこれを取り消す。

二  事案の概要

申立人は、平成五年二月四日新潟県地方労働委員会から救済命令を受け(新労委平成四年(不)第一号不当労働行為救済申立事件)、被申立人に再審査の申立をしたが、平成六年三月二日被申立人から右申立を棄却され(平成五年(不再)第六号事件)、当裁判所に被申立人を被告として右命令の取消請求事件を提起したが(平成六年(行ウ)第一〇一号不当労働行為救済命令取消請求事件。以下、これを「本件本案事件」という。)、被申立人は申立人を相手方として当裁判所に緊急命令の申立をし、緊急命令(以下「本件緊急命令」という。)が発せられた。

しかるに、本件緊急命令発令後の平成六年九月六日をもつて右救済申立事件の申立人である全国機械金属労働組合新潟地方本部エヌエス精工支部(以下「組合」という。)が解散したため、申立人は、同年一一月九日の本件本案事件の口頭弁論期日において右事件の訴えを取り下げ、同日被申立人がこれに同意したことにより本件本案事件は終了した。

そこで、申立人は、本件緊急命令の発令の理由とされている組合の団結権及び団体交渉権の侵害は組合が解散したことによつてもはやあり得ないこととなり、また、本件本案事件も取り下げによつて終了したため、本件緊急命令は履行不能に陥り、かつその効力を失つたものであると主張して、事情変更に基づき本件緊急命令の取消を求めた。

三  当裁判所の判断

そもそも、緊急命令は、救済命令を受けた使用者が右命令又はこれに対する再審査申立棄却命令の取消訴訟を提起し、その訴訟が裁判所に係属する間に限つてのみ効力を有する命令であることは労働組合法二七条八項、二八条、三二条の規定に照らして明らかであり、したがつて、右取消訴訟が取り下げによつて終了した場合には、緊急命令は当然にその効力を失うと解すべきである。

そうであるから、本件本案事件は取り下げによつて終了したので、本件緊急命令も当然に失効したことになり、改めてこれを取り消す必要はない。

四  よつて、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 林 豊 裁判官 小佐田潔 裁判官 蓮井俊治)

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