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東京地方裁判所 平成7年(ワ)118号 判決 1995年7月14日

千葉市稲毛区天台一丁目二五番八号

原告

篠塚賢二

東京都大田区中馬込一丁目三番六号

被告

株式会社リコー

右代表者代表取締役

浜田広

右訴訟代理人弁護士

野上邦五郎

杉本進介

右訴訟復代理人弁護士

冨永博之

主文

一  本件訴えを却下する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

第一  原告の請求

被告は、原告に対し、金一八三万四〇〇〇円及びこれに対する昭和五六年六月一四日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第二  事案の概要

一  本件は、別紙実用新案権目録記載の実用新案権(以下「本件実用新案権」という。)を有していた原告が、別紙目録(一)の製品(商品名「リコーPPC九〇〇及びB・Aチェンジャー」。以下「イ号製品」という。なお、同目録中、「ロール紙」を「巻回テープ類であるロール紙」としている点及び被告の製品を「カッター装置付きテープホルダー」の構造となっているとする点については当事者間に争いがある。以下同じ。)、同目録(二)記載の製品(商品名「リコーPPC九〇〇及びセンタースリッター」。以下「ロ号製品」という。)及び同目録(三)記載の製品(商品名「リコピーPL五〇〇〇オート」。以下「ハ号製品」という。なお、全製品を総称して「被告製品」という。)をそれぞれ製造販売した被告に対し、右行為が本件実用新案権を侵害するものであると主張して、主位的に不法行為による損害賠償請求権に基づき、予備的に不当利得返還請求権に基づき、各実施料相当合計額の支払いを求めた事案である。

原告は、イ号製品については、昭和五三年一月から昭和五六年六月一三日までの間に合計九万台が製造販売されたとして、そのうち当初の一万八〇〇五台を除いたその後の五台に係る実施料相当額二六万七〇〇〇円の、ロ号製品については、右同期間に合計二万台が製造販売されたとして、そのうち当初の四〇〇五台を除いたその後の五台に係る実施料相当額二六万七〇〇〇円の、ハ号製品については、昭和五三年八月一五日から昭和五六年六月一三日までの間に合計四万台が製造販売されたとして、そのうち当初の八〇〇五台を除いたその後の五台に係る実施料相当額一三〇万円の各支払いを求めている。

二  争いのない事実及び証拠によって認められる基礎となる事実

1  原告は、本件実用新案権を有していた。

2  被告は、業として、昭和五三年一月から昭和五六年六月一三日までの間にイ号及びロ号製品を、また、昭和五三年八月一五日から昭和五六年六月一三日までの間にハ号製品をそれぞれ製造販売した。

3  本件実用新案権に係る考案の実用新案登録出願の願書に添付した明細書の実用新案登録請求の範囲は、別紙実用新案公報写の該当欄記載のとおりである。

4  原告は、本件訴訟を提起する以前に、被告に対し、被告が昭和五三年一月から昭和五六年六月一三日までの間にイ号及びロ号製品を、また、同五三年八月一五日から同五六年六月一三日までの間にハ号製品を、それぞれ製造販売したことにより本件実用新案権を侵害したとして、別紙係属事件一覧表(乙)(以下「別表(乙)」という。)のとおり、これによる金銭請求を一定の台数分についての一部請求に細分化して一二回にわたり当裁判所へ訴訟を提起した。

これらの訴訟では、別表(乙)中1事件の一審判決が消滅時効を理由として請求を棄却した以外は、いずれも被告製品は本件実用新案権を侵害しないとして原告の請求は棄却され、別表(乙)中10事件は地裁判決に対する控訴がなく確定し、その余の事件は上訴審においても地裁判決が維持され、すべて原告の請求を棄却した判決が確定している(乙一ないし二四及び弁論の全趣旨)。

5  また、原告は、本件訴訟の提起とほぼ同時に、本件とは製造販売時期こそ異にしてはいるが、同じ被告製品の製造販売が本件実用新案権を侵害するとして被告に対し実施料相当額の支払いを求めており(平成七年(ワ)第一一五号、以下「別件訴訟」という。)、当該訴訟では、イ号及びロ号製品については、昭和四七年三月から昭和五二年一二月までの間にそれぞれ合計七万一二〇〇台が製造販売されたとして、そのうち当初の一万四二四五台を除いたその後の五台に係る各実施料相当額の、ハ号製品については、昭和四七年二月から昭和五三年七月までの間に合計六万四八〇〇台が製造販売されたとして、そのうち当初の一万二九六五台を除いたその後の五台に係る実施料相当額を請求している(当裁判所に顕著である。)。

6  原告は、別件訴訟を提起する以前に、被告に対し、別紙係属事件一覧表(甲)(以下「別表(甲)」という。)のとおり、被告が昭和四七年三月から昭和五二年一二月までの間にイ号及びロ号製品を、また、昭和四七年二月から昭和五三年七月までの間にハ号製品を、それぞれ製造販売したことにより本件実用新案権を侵害したとして、これによる金銭請求を、内金請求あるいは一定の台数分についての一部請求に細分化して、一四回にわたり当裁判所へ訴訟を提起した。これらの訴訟でも、別表(甲)中2事件の判決が、前訴である同表1事件の既判力を理由に原告の請求を棄却した外は、いずれも被告製品は本件実用新案権を侵害しないとして、原告の請求を棄却した判決が確定している(別件訴訟の審理を通じて当裁判所に顕著である。)。

三  争点(被告の主張)

被告は、(一)原告の本件訴訟は訴権を濫用するものであるとして訴え却下の判決を求めるとともに、(二)本件訴訟は一連の前訴の既判力により遮断される、(三)原告の主張する損害賠償請求権及び不当利得返還請求権はすでに時効により消滅している、(四)被告製品は本件実用新案権を侵害するものではないと主張する。

第三  当裁判所の判断

一  一般に、民事訴訟手続においては、原告は、数量的に可分な債権の一部のみを被告に対して請求することができ、このような請求であることを明示した場合には、当該判決の既判力は残部の請求には及ばないと解されるから、一部請求を申し立てた原告が、後に残部の支払いを求めて再度裁判所に訴えを提起することが直ちに不適法となる訳ではない。

しかしながら、私人間の紛争の解決を裁判所に求める国民の権能(訴権)が、裁判を受ける権利として憲法上保障されたものであるとはいっても、その濫用的行使まで許されるものではないことは明らかであり、諸般の事情から一部請求後の残額請求が訴権の濫用と認められる場合には、もはや訴えの利益を欠き、訴えは不適法なものとして却下されるべきである。

二  本件における原告の請求は、第二、一のとおりであるが、原告は、前記第二、二4及び6のとおり、本件と同じく被告製品の製造販売がいずれも本件実用新案権を侵害するとして、過去一七年余りの間に、対象とする被告製品の製造販売の期間が本件訴訟と同じものだけで別表(乙)のとおり一二回、その他に、被告製品の製造販売期間が本件と連続する別の期間であるものについて別表(甲)のとおり一四回と、合計二六回にわたり被告に対し訴えを提起しており、別表(乙)中1事件の一審判決が消滅時効を理由として、別表(甲)中2事件の判決が前訴である別表(甲)1事件の既判力を理由として請求を棄却した外、その余の事件では、いずれも被告製品は本件実用新案権を侵害しないという理由で原告の請求は棄却されている。しかも、別表(乙)記載の事件及び本件訴訟において、原告は、前記のとおり、イ号製品については九万台、ロ号製品については二万台、ハ号製品については四万台が各期間内に製造販売されたとしながら、使用料相当額算定の対象物件をそのうちの五台分ないし一〇台分と極めて細分化して一部請求を繰り返しているもので、右製造販売期間に連続する別の期間の被告製品の製造販売についても、別表(甲)のとおり細分化した一部請求訴訟を繰り返して提起してきた。さらに、本件実用新案権は昭和五六年六月一三日限り存続期間が満了し、原告が主張する被告の製造販売期間の終期から既に約一四年が経過している。

右認定事実に鑑みると、本件訴えは一部請求の名のもとにいたずらに別表(乙)及び別表(甲)記載の各訴訟と同一の訴訟を蒸し返すものであり、これまで繰り返し理由がないとする裁判所の確定した判断を受けている請求と実質的に同じ請求をするものであって、被告の地位を不当に長く不安定な状態におき、ことさらに被告に応訴のための負担を強いることを意に介さず、民事訴訟制度を悪用したものであるとの評価は免れない。

三  したがって、本件訴えは、訴権の濫用にあたるものであって、訴えの利益を欠き不適法であり、しかもその点を補正することができないものであるといわざるを得ない。

四  よって、原告の本件訴えは不適法であるからこれを却下する。

(裁判長裁判官 西田美昭 裁判官 高部眞規子 裁判官 池田信彦)

実用新案権目録

登録番号 第九七八六〇二号

考案の名称 カッター装置付きテープホルダー

出願日 昭和四一年六月一三日

出願公告日 昭和四七年一月二二日

登録日 昭和四七年九月二九日

存続期間満了日 昭和五六年六月一三日

目録(一)

一 図面の簡単な説明

第1図は、全体的部材位置を示す正面配置図である。

第2図-Cは、ロール紙cの長さ切断用カッター部分fの作動機構を示す正面図である(下部表示参照)。なお、上部表示のものは、下部表示の正面図における長さ切断用カツターの側面を示す。

第4図は、ロール紙cの幅截断用カッター部分bの詳細な断面図である。

第5図は、ロール紙cの幅截断用カッター部分bの中央断面図である。

二 図面符号の説明

a 幅截断用カッター部分bの本体eと一体をなす長さ切断用カッター部分fの本体

b 幅截断用カッター部分

c ロール紙。巻回テープ類であるロール紙cは、本体a+eのロール紙cが支持されている定位置から引き出されて順次切断された後、本体a+eから外出する。

e 幅截断用カッター部分bの本体

f 長さ切断用カッター部分

20 ローラ

21 固定刃

22 回転刃。回転刃22は軸61に装着されている。なお、左右に突出した軸61の部分の長さを除く回転刃22自体の部分の長さは、ロール紙cの幅よりも長い(第2図-cの上部表示のもの参照)。

23 ローラ

27 ソレノイド

28 リンク機構

32 ローラ

40 幅截断用カッターの回動式ツマミ

41 カム

42 モータ

43 カム41、50の紬

44 下回転刃48を装着した軸

45 上回転刃49を装着した軸

46 案内板

47 軸44の軸受

47' 軸45の軸受

48 下回転刃

49 上回転刃

50 カム

51 スライド板

51a スライド板の突起

51b スライド板の突起

52 調整ネジ

53 長穴

54 スプリング

55 搬送用下ローラ

56 搬送用上ローラ

57 側板本体

58 受板

59 ネジ

60 固定刃21と回転刃22の間隙部

61 回転刃22を装着した軸

三 構造の説明

本製品は、本体a+eのロール紙cが支持されている定位置から引き出されて順次切断されるロール紙cのローラ56・55が介在関連する「(点で交わる)縦方向と横方向に直角切断」することが可能な各別作動の切断関連位置(右「直角切断」が不可能な左右に横並びの各切断位置でなく、右「直角切断」が可能な前後に縦並びの各切断位置)を保つ構成に係る長さ切断用カツター部分の構成(固定刃21とともに形成された間隙部60において、引き出したロール紙cを横方向に剪断する、軸61に装着されるという方法によつて、回転自在に設けられている回転刃22の構成)及び幅截断用カツター部分の構成(ツマミ40を回すことによつて操作される、引き出すロール紙cを縦方向に截断する軸45、44に各装着されている上回転刃49、下回転刃48の構成)を、本体a+eに施した構成をもつて一体となつたカツター装置付きテープホルダーの構造となつてしる

四 作動の説明

(一) 本製品は、スイッチ(図示せず)オン・オフにより作動状態・不作動状態となる。

(二) その先端を固定刃21の直後に有し、ローラ20に銜えられた状態で待機しているロール紙cは、信号を受けると、ローラ20がクラッチ(図示せず)により一回転し、これによりロール紙cの先端が常時回転しているローラ23に銜え込まれて前進していく。

そして、予め選択された長さだけ引き出されると、ソレイド27が作動し、リンク機構28の作用により回転刃22が矢印×方向に回転し固定刃21と協働してロール紙cを横方向に剪断する(第2図-c参照)。切断されたロール紙cは更に搬送され、ローラ32を経て、ロール紙cの幅截断用カッター部分bへと送り込まれる(第1図参照)。

(三) 幅截断用カッター部分bの幅截断用カッターはツマミ40を回動することにより作動又は不作動状態となる。

ツマミ40を右に回すと、ツマミ40の軸43に軸支されたカム41が回転し、軸受47を押し上げることにより、下回転刃48を支持する軸44が上昇し、これと同時に下回転刃48も上昇して上回転刃49と噛み合う。

一方、軸43の回転によりカム50が回動し、スライド板51の突起51aと係合が外れ、これによってスプリング54により下回転刃48は上回転刃49と噛み合う方向へ移動すると同時にこのスプリング54によって押圧される。この時、スライド板51と突起51bが下回転刃48と係合していることにより、長穴53の中を下回転刃48と同方向に移動する。

この状態で案内板46及び複数個の搬送用下ローラ55ないし上ローラ56を経由して、ロール紙cは、下回転刃48と上回転刃49とにより所定の幅に截断されつつ排出される。

反対に、ツマミ40を左に回して元に戻すと、軸43が前述と逆方向に回動して、軸受47を介して軸44を下降させ、同時にカム50が同様に逆方向に回動し、スライド板51の突起51aと係合する。

これによりスライド板51はやはり前述と逆方向に長穴53を介して移動し、突起51bと係合する下回転刃48を上回転刃49と離反する方向へ移動させる。その結果、上回転刃49と下回転刃48は噛み合わず幅截断を行わなくなる。

(四) 前記のとおり、ツマミ40を適宜作動又は不作動状態にすることによって、ロール紙cの幅截断を必要に応じて行うことができる(第4図及び第5図参照)。

五 作用効果の説明

本製品は、本体a+eにおいて、長さ切断用カツター部分の長さ切断用カツター(固定刃21、回転刃22)によって、引き出したロール紙cを横方向に切断することができるとともに、幅截断用カツター部分の幅截断用カツター(上・下回転刃49・48)によって引き出すロール紙cを縦方向に切断することができる(右可能な切断は、「(点で交わる)直角切断」である。)。

第1図

<省略>

第2図-C

<省略>

第4図

<省略>

第5図

<省略>

目録(二)

左に指摘する他は、構造及び作動等とも、目録(一)に記載の構造及び作動等とすべて同一であるので、同目録記載の説明及び同目録添付図面を援用する。

一 目録(一)記載の製品は、B列幅のロール紙cをA列幅に截断するものであり、本目録記載の製品は、ロール紙cの中央を截断してその幅を二分するものである。よって、目録(一)記載の製品では、幅截断用カッターである下回転刃48、上回転刃49がロール紙cの最大幅(B列幅)の中心基準側からA列幅に配置されている。これに対し、本目録の製品の幅截断用カッターは、中央部に配置されている。

二 この幅截断用カッターの配置の違いから、ロール紙c、搬送用下ローラ55及び搬送用上ローラ56の配設位置が異なり、これに伴って、ロール紙cの案内板46の形状が異なっている。

目録(三)

一 図面の簡単な説明

第1図は、全体的部材位置を示す側断面図である。

第3図は、ロール紙1の幅截断用カッター部分の細部を示す詳細図である。

二 図面符号の説明

1 ロール紙。巻回テープ類であるロール紙1は、本体57のロール紙1が支持されている定位置から引き出されて順次切断された後、本体57から外出する。

2 固定刃

3 回転刃。回転刃3は軸59に装着されている。なお、左右に突出した軸59の部分の長さを除く回転刃3自体の部分の長さは、ロール紙1の幅よりも長い。

4 下回転刃

5 上回転刃

20 幅截断用カツターの回動式ツマミ

21 ツマミ軸

22 切換爪

23 切換連結レバー

24 切換連結軸

25 切換連結アーム

26 ピン

27 切換連結板

28 ピン

29 切換アーム

30 カム軸

31 下回転刃駆動スプロケット

32 上回転刃駆動スプロケット

36 チェーン

40 右側板

41・42 上回転刃軸45の軸受

43・44 下回転刃軸46の軸受

45 上回転刃5を装着した軸

46 下回転刃4を装着した軸

47 下回転刃上下移動カム

48 下回転刃左右移動カム

49 スライド板

49aスライド板の突起部

49bスライド板の突起部

50 下回転刃保持部材

51 スプリング保持板

52 スプリング

53 ガイド板

55 搬送ローラ対

57 本体

58 固定刃2と回転刃3の間隙部

59 回転刃3を装着した軸

三 構造の説明

本製品は、本体57のロール紙1が支持されている定位置から引き出されて順次切断されるロール紙1のローラ対55が介在関連する「(点で交わる)縦方向と横方向に直角切断」することが可能な各別作動の切断関連位置(右「直角切断」が不可能な左右に横並びの各切断位置でなく、右「直角切断」が可能な前後に縦並びの各切断位置)を保つ構成に係る長さ切断用カツター部分の構成(固定刃2とともに形成された間隙部58において、引き出したロール紙1を横方向に剪断する、軸59に装着されるという方法によって、回転自在に設けられている回転刃3の構成)及び幅截断用カツター部分の構成(ツマミ20を回すことによって操作される、引き出すロール紙1を縦方向に截断する軸45、46に各装着されている上回転刃5、下回転刃4の構成)を、本体57に施した構成をもって一体となったカツター装置付きテープホルダーの構造となっている。

四 作動の説明

(一) 本製品は、スイッチ(図示せず)オン・オフにより作動伏態・不作動状態となる。

(二) 長さ切断用カッター部分においては、回転刃3が時計方向に回転し固定刃2と協働してロール紙1を横方向に剪断する。必要量が引き出されて切断されたロール紙1は、ローラ対55を介して幅截断用カッター部分へと導かれる(第1図参照)。

(三) 幅截断用カッター部分の幅截断用カッターはツマミ20を回動することにより作動又は不作動状態となる。

幅截断用カッターを噛み合い協働させるためにツマミ20を回すと矢印aの方向に回転するカム軸30には、下回転刃左右移動カム48が設けられているため、該カムの回転によりスライド板49の突起部分49aが押され、スライド板は左方向へ移動することになり、その結果、他方の突起部49bが下回転刃保持部材50をスプリング52に抗して左方へ動かすことになる。

一方、カム紬30には他端に下回転刃上下移動カム47が設けられているため、カム軸30の回転により軸受44を押し上げ下回転刃軸46を軸受43側を支点として押し上げる。

ツマミ軸21の回転は下回転刃左右移動カム48をカムの最小位置から最大位置まで回転させると左方へ移動されるスライド板49はカムの最大位置を過ぎた時点でスプリング52のカムより元の位置へ復帰させられる。

この時、下回転刃上下移動カム47は最大位置をとる。すなわち、ツマミ軸21を一杯に回すことにより下回転刃4は上昇しながら左方向から上回転刃5に圧接し、破線で示す位置に固定される。

下回転刃4及び上回転刃5は駆動源(図示しない)なりそれぞれの駆動スプロケット31、32に回転が伝達され、両刃の噛み合い点で送られてくるロール紙1の中央位置を截断することになる。

反対に、ロール紙1の幅截断用カッターを作動させない場合は、ツマミ軸21を元に戻すことによりカム軸30が前述と逆方向に回転して軸受44を介して下回転刃軸46を下降させ、同時に下回転刃左右移動カム48が逆方向に回転し、スライド板49を左方向へ移動させ、元位置へ復帰させる。その結果、上回転刃5と下回転刃4との噛み合いがはずれ、ロール紙1の幅截断は行われなくなる(第3図参照)。

五 作用効果の説明

本製品は、本体57において、長さ切断用カツター部分の長さ切断用カツター(固定刃2、回転刃3)によって、引き出したロール紙1を横方向に切断することができるとともに、幅截断用カツター部分の幅截断用カツター(上・下回転刃5、4)によって引き出すロール紙1を縦方向に切断することができる(右可能な切断は、「(点で交わる)直角切断」である。)。

第1図

<省略>

第3図

<省略>

<51>lnt.Cl. B 65 d <52>日本分類 134 C 102.12 日本国特許庁 <11>実用新案出願公告

昭47-1919

<10>実用新案公報

<11>公告 昭和47年(1972)1月22日

<54>カツター装置付きテープホルダー

<21>実願 昭41-55589

<22>出願 昭41(1966)6月13日

<72>考案者 佐藤和男

国分寺市新町3の412の20

<71>出願人 篠塚賢二

東京都品川区旗の台6の5の46

代理人 弁理七 丹生藤吉 外2名

図面の簡単な説明

第1図は本考案に係るカツター装置付きテープホルダーの縦断側面図、第2図はカツター機構の斜視図、第3図はカツター作動機構の側面図である。

考案の詳細な説明

本考案は接着テープ類を切断するカツター装置を施したホルダーに関するものである。

而して本考案は巻回テープ類を保持する本体1に固定刃2を有する引出口3を形成し、該引出口3には固定刃2と共に、引出したテープT類を剪断する可動刃4を回動自在に設けたカツター装置付テープホルダーにおいて、操作摘み9を有する可動刃4の緩挿軸8に幅截断用切刃7を固着し、軸8と引出口3の間に一対の案内ロール5、6を装架した構造を要旨とするものである。尚図中10は軸8に遊挿した可動刃4の作動レバーを示す

本考案は前記の構成であるから、テープを必要最引出し、レバー10を操作して可動刃4を作動させることにより、可動刃4と固定刃にまり前記のテープ類を剪断することができるのであつて、特に本案のものは摘み9を回わして幅截断用切刃7を回わして引出すテープを長手方向に沿つて截断できる効果を奏し、実益のある考案である。

実用新案登録請求の範囲

巻回テープ類を保持する本体1に固定刃2を有する引出口3を形成し、該引出口3には固定刃2と共に、引出したテープT類を剪断する可動刃4を回動自在に設けたカツター装置付テープホルダーにおいて、操作摘み9を有する可動刃4の緩挿軸8に幅截断用切刃7を固着し、軸8と引出口3の間に一対の案内ロール5、6を装架した構造。

引用文献

実公 昭40-2558

実公 昭15-13714

実公 昭33-10688

第1図

<省略>

第2図

<省略>

第3図

<省略>

別紙 係属事件一覧表 (乙)

番号 事件番号 いずれも 東京地方裁判所 判決日 法的根拠(本件実用新案権侵害による) 対象となった被告製品及び請求額 上訴関係

昭和53年1月から同56年6月13日の間に製造販売された イ号製品 ロ号製品 昭和53年8月15日から同56年6月13日の間に製造販売された ハ号製品

1 昭和60年(ワ) 15790号 昭和61年12月19日 不法行為 不当利得(予備的請求。控訴審で追加) イ号・ロ号の合計11万台のうち当初の10台 (53万4000円)……控訴審で減縮したもの (一審では、当初の200台に係る534万円) 4万台のうち当初の5台 (130万円)……控訴審で減縮したもの (一審では、当初の100台に係る1300万円) 昭和61年(ネ)3736号 昭和62年(オ)914号

2 昭和62年(ワ) 16779号 昭和63年9月28日 不法行為 不当利得(予備的請求) 9万台のうち当初の905台を除いたその後の5台 (26万7000円)……控訴審で減縮したもの 一審では当初の510台を除いたその後の400台(2136万円) 2万台のうち当初の705台を除いたその後の5台 (36万7000円)……控訴審で減縮したもの 一審では当初の510台を除いたその後の200台(1068万円) 4万台のうち当初の1000台を除いたその後の5台 (130万円)……控訴審で減縮したもの 一審では当初の505台を除いたその後の500台 (1億3000万円) 昭和63年(ネ)3014号

3 昭和63年(ワ) 7703号 昭和63年11月18日 同上 9万台のうち当初の910台を除いたその後の5台 (26万7000円) 2万台のうち当初の710台を除いたその後の5台 (26万7000円) 4万台のうち当初の1005台を除いたその後の5台 (130万円) 昭和63年(ネ)3672号

4 昭和63年(ワ) 10921号 平成元年10月7日 同上 9万台のうち当初の915台を除いたその後の5台 (26万7000円) 2万台のうち当初の715台を除いたその後の5台 (26万7000円) 4万台のうち当初の1010台を除いたその後の5台 (130万円) 平成元年(ネ)3649号

5 平成元年(ワ) 11017号 平成2年3月12日 同上 9万台のうち当初の920台を除いたその後の5台 (26万7000円)……控訴審で減縮したもの 一審では当初の920台を除いたその後の550台(2937万円) 2万台のうち当初の720台を除いたその後の5台 (26万7000円) ……控訴審で減縮したもの 一審では当初の720台を除いたその後の500台(2670万円) 4万台のうち当初の1015台を除いたその後の5台 (130万円) 平成2年(ネ)1001号

6 平成元年(ワ) 15648号 平成2年10月15日 同上 9万台のうち当初の1470台を除いたその後の10台 (53万4000円) 2万台のうち当初の1220台を除いたその後の10台 (53万4000円) 4万台のうち当初の1020台を除いたその後の10台 (260万円) 平成2年(ネ)3650号

7 平成3年(ワ) 4286号 平成3年6月28日 同上 9万台のうち当初の1480台を除いたその後の5台 (26万7000円) 2万台のうち当初の1230台を除いたその後の5台 (26万7000円) 4万台のうち当初の1030台を除いたその後の5台 (130万円) 平成3年(ネ)2267号

8 平成3年(ワ) 15000号 平成4年1月24日 同上 9万台のうち当初の1485台を除いたその後の15台 (80万1000円) 2万台のうち当初の1235台を除いたその後の15台 (80万1000円) 4万台のうち当初の1035台を除いたその後の15台 (390万円) 平成4年(ネ)341号

9 平成4年(ワ) 23205号 平成5年3月19日 同上 9万台のうち当初の1490台を除いたその後の5台 (26万7000円) 2万台のうち当初の1240台を除いたその後の5台 (26万7000円) 4万台のうち当初の1040台を除いたその後の5台 (130万円) 平成5年(ネ)1153号

10 平成5年(ワ) 5643号 平成5年7月2日 同上 9万台のうち当初の1495台を除いたその後の5台 (26万7000円) 2万台のうち当初の1245台を除いたその後の5台 (26万7000円) 4万台のうち当初の1045台を除いたその後の5台 (130万円) 上訴なし

11 平成5年(ワ) 20824号 平成5年12月20日 同上 9万台のうち当初の1500台を除いたその後の5台 (26万7000円) 2万台のうち当初の1250台を除いたその後の5台 (26万7000円) 4万台のうち当初の1050台を除いたその後の5台 (130万円) 平成5年(ネ)5227号

12 平成6年(ワ) 8032号 平成6年7月20日 同上 9万台のうち当初の1万8000台を除いたその後の5台 (26万7000円) 2万台のうち当初の4000台を除いたその後の5台 (26万7000円) 4万台のうち当初の8000台を除いたその後の5台 (130万円) 平成6年(ネ)3091号

別紙 係属事件一覧表 (甲)

番号 事件番号 いずれも 東京地方裁判所 判決日 法的根拠(本件実用新案権侵害による) 対象となった被告製品及び請求額 上訴関係

昭和47年3月から同52年12月の間に製造販売された イ号製品 ロ号製品 昭和47年2月から同53年7月の間に製造販売された (特に記載されたものを除く) ハ号製品

1 昭和53年(ワ) 7940号 昭和55年11月28日 不法行為 イ号・ロ号の合計10万台(26億7000万円)、合計28億円の損害金の内金5000万円 昭和55年(ネ) 昭和44年10月から昭和53年8月14日の間に製造販売された ハ号1000台(1億3000万円)2851号 昭和57年(オ)1379号

2 昭和60年(ワ) 5132号 昭和61年1月24日 不法行為 イ号・ロ号の合計14万2400台のうち当初の50台(267万円)……控訴審で減縮したもの (一審ではイ号・ロ号合計10万台のうち当初の1000台(2670万円)) 6万4800台のうち当初の25台(650万円)……控訴審で減縮したもの 一審では昭和44年10月から昭和53年8月14日の間に製造販売された4万台のうち当初の500台(6500万円) 昭和61年(ネ)266号

3 昭和62年(ワ) 534号 昭和63年12月23日 不当利得 7万1200台のうち当初の10台を除いたその後の500台(2670万円) 7万五200台のうち当初の10台を除いたその後の500台(2670万円) 6万4800台のうち当初の5台を除いたその後の500台(1億3000万円) 上訴なし

4 昭和62年(ワ) 17967号 昭和63年9月28日 不法行為 不当利得(予備的請求) 7万1200台のうち当初の910台を除いたその後の5台(26万7000円) 7万1200台のうち当初の710台を除いたその後の5台(26万7000円) 6万4800台のうち当初の1005台を除いたその後の10台(260万円) 昭和63年(ネ)3015号

5 昭和63年(ワ) 8706号 昭和63年11月18日 同上 7万1200台のうち当初の915台を除いたその後の15台(80万1000円) 7万1200台のうち当初の715台を除いたその後の15台(80万1000円) 6万4800台のうち当初の1015台を除いたその後の15台(390万円) 昭和63年(ネ)3671号

6 昭和63年(ワ) 10627号 平成元年10月27日 同上 7万1200台のうち当初の930台を除いたその後の5台(26万7000円) 7万1200台のうち当初の730台を除いたその後の5台(26万7000円) 6万4800台のうち当初の1030台を除いたその後の5台(130万円) 平成元年(ネ)3648号

7 平成元年(ワ) 11016号 平成2年3月12日 同上 7万1200台のうち当初の935台を除いたその後の5台(26万7000円)……控訴審で減縮したもの 一審では7万1200台のうち当初の935台を除いたその後の900台(4806万円) 7万1200台のうち当初の735台を除いたその後の5台(26万7000円)……控訴審で減縮したもの 一審では7万1200台のうち当初の735台を除いたその後の500台(2670万円) 6万4800台のうち当初の1035台を除いたその後の5台 (130万円) 平成2年(ネ)1000号

8 平成元年(ワ) 15646号 平成2年8月31日 同上 7万1200台のうち当初の1835台を除いたその後の5台(26万7000円)……控訴審で減縮したもの 一審では7万1200台のうち当初の1835台を除いたその後の1100台(5874万円) 7万1200台のうち当初の1235台を除いたその後の5台(26万7000円)……控訴審で減縮したもの 一審では7万1200台のうち当初の1235台を除いたその後の1100台(5874万円) 6万4800台のうち当初の1040台を除いたその後の5台(130万円)……控訴審で減縮したもの 一審では6万4800台のうち当初の1040台を除いたその後の10台(260万円) 平成2年(ネ)3095号

9 平成3年(ワ) 4285号 平成3年6月28日 同上 7万1200台のうち当初の2935台を除いたその後の5台(26万7000円) 7万1200台のうち当初の2335台を除いたその後の5台(26万7000円) 6万4800台のうち当初の1050台を除いたその後の5台(130万円) 平成3年(ネ)2266号

10 平成4年(ワ) 3033号 平成4年5月27日 同上 7万1200台のうち当初の2940台を除いたその後の15台(80万1000円) 7万1200台のうち当初の2340台を除いたその後の15台(80万1000円) 6万4800台のうち当初の1055台を除いたその後の15台(390万円) 平成4年(ネ)2044号

11 平成4年(ワ) 23298号 平成5年3月19日 同上 7万1200台のうち当初の2955台を除いたその後の5台(26万7000円) 7万1200台のうち当初の2355台を除いたその後の5台(26万7000円) 6万4800台のうち当初の1070台を除いたその後の5台(130万円) 平成5年(ネ)1152号

12 平成5年(ワ) 5644号 平成5年7月2日 同上 7万1200台のうち当初の2960台を除いたその後の5台(26万7000円) 7万1200台のうち当初の2360台を除いたその後の5台(26万7000円) 6万4800台のうち当初の1075台を除いたその後の5台(130万円) 上訴なし

13 平成5年(ワ) 20823号 平成5年12月20日 同上 7万1200台のうち当初の2965台を除いたその後の5台(26万7000円) 7万1200台のうち当初の2365台を除いたその後の5台(26万7000円) 6万4800台のうち当初の1080台を除いたその後の5台(130万円) 平成5年(ネ)5226号

14 平成6年(ワ) 8031号 平成6年7月20日 同上 7万1200台のうち当初の1万4240台を除いたその後の5台(26万7000円) 7万1200台のうち当初の1万4240台を除いたその後の5台(26万7000円) 6万4800台のうち当初の1万2960台を除いたその後の5台(130万円) 平成6年(ネ)3090号

実用新案公報

<省略>

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