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東京地方裁判所 平成7年(ワ)16132号 判決 1998年10月02日

原告

橋本産業株式会社

右代表者代表取締役

右訴訟代理人弁護士

岡田暢雄

今岡一男

山本正

被告

新日本冷熱工業株式会社

右代表者代表取締役

右訴訟代理人弁護士

田村護

被告

山大鉄商株式会社

右代表者代表取締役

右訴訟代理人弁護士

五木田茂

玉置敏樹

木村利栄

武中洋司

山本隆幸

右訴訟復代理人弁護士

三原正俊

主文

一  被告らは、原告に対し、連帯して二〇四〇万六六九六円及びこれに対する平成七年一一月一〇日から支払済みまで年六分の割合による金員を支払え。

二  被告らは、原告に対し、連帯して三一二万五八七〇円及びこれに対する平成七年一一月五日から支払済みまで年六分の割合による金員を支払え。

三  訴訟費用は、被告らの負担とする。

四  この判決は、仮に執行することができる。

事実及び理由

第一請求

主文同旨

第二事案の概要

一  事案の骨子

本件は、原告が、①被告新日本冷熱工業株式会社(以下「被告新日本冷熱」という。)に対しては、被告新日本冷熱との間で締結した商品売買契約に基づいて、商品売買の代金二〇四〇万六六九六円及びこれに対する平成七年一一月一〇日(訴状送達日の翌日)から支払済みまで商事法定利率年六分の割合による遅延損害金、並びに商品代金の支払のために振り出された約束手形金三一二万五八七〇円及びこれに対する平成七年一一月五日(満期日)から支払済みまで商事法定利率年六分の割合による遅延損害金の支払を求め、②被告山大鉄商株式会社(以下「被告山大鉄商」という。)に対しては、右商品売買契約によって生じる代金等の債務を保証するために被告山大鉄商との間で締結した連帯保証契約に基づいて、右と同一内容の保証債務の履行を求める、というものである。

なお、被告新日本冷熱は、「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。」との判決を求めたが、「請求原因事実はすべて認める。」と答弁して、特に抗弁等を提出していないから、原告の同被告に対する請求は、右の争いのない請求原因事実によって理由があり、本件の争点は、すべて原告と被告山大鉄商との間に関するものである。

二  争いのない事実及び証拠上容易に認められる事実

次の事実は、当事者間に争いのない事実か、又は証拠上容易に認められる事実(この場合には採用証拠を< >内に掲げた。)である。

1  原告は配管設備機械や冷暖房機器等の販売業務等を業とする株式会社であり、被告新日本冷熱は暖冷房及び管工事請負等を目的とする株式会社であり、被告山大鉄商は鉄鋼製品の販売等を目的とする株式会社である。<弁論の全趣旨>

2  原告と被告新日本冷熱とは、昭和五五年七月八日、原告から被告山大鉄商に対する換気扇等の商品を継続的に供給する旨の取引に関し、次のとおりの商品売買契約を締結した(以下「本件商品売買契約」という。)。<≪証拠省略≫、弁論の全趣旨>

代金決済方法 被告新日本冷熱は、毎月二〇日までに原告が発送した分の商品代金を翌月末日に現金で支払うか、又は右翌月末日に同日から起算して一二五日以内の日を満期とする約束手形を振り出して支払う。

期限の利益喪失 被告新日本冷熱が、支払期日に代金の支払をしないとき、原告に振り出した約束手形が不渡りになったとき、又は第三者に振り出した手形が不渡りないし支払停止になったときは、被告新日本冷熱は、期日未到来の約束手形や支払期日未到来の買掛債務を含む買掛債務全額を直ちに支払う。

3  原告は、被告新日本冷熱に対し、本件商品売買契約に基づき別紙取引一覧表≪省略≫の商品を売り渡した。<≪証拠省略≫、弁論の全趣旨>

4  被告新日本冷熱は、本件商品売買契約に基づき、代金支払いのため、別紙約束手形目録≪省略≫記載の約束手形八通を原告に振出した。

原告は、右約束手形八通を所持している。

原告は、右約束手形をそれぞれ支払呈示期間内に支払場所に呈示したが、別紙約束手形目録1については資金不足により、同目録2ないし8については取引停止処分を理由としてその支払を拒絶された。

<≪証拠省略≫、弁論の全趣旨>

三  争点

1  原告と被告山大鉄商との間で、本件商品売買契約についての連帯保証契約(以下「本件保証契約」という。)が成立したか否か。

2  本件保証契約が商法二六五条に違反して無効であるか否か。

3  本件保証契約が商法二六〇条二項二号に違反して無効であるか否か。

4  本件保証契約が身元保証に関する法律(以下「身元保証法」という。)の類推適用により終了しているか否か。

5  本件保証契約自体が時効により消滅しているか否か。

6  本件保証契約に基づく保証債務の履行請求が権利の濫用ないし信義則違反であるか否か。

7  本件保証契約に基づく被告山大鉄商の保証責任が信義則等によって制限されるか否か。

四  争点に関する当事者の主張

1  本件保証契約の成否について

(原告の主張)

被告山大鉄商は、昭和五五年七月八日、被告新日本冷熱の代表者であるB(以下「B」という。)を通じて、本件商品売買契約の契約書(以下「本件契約書」という。)を原告に対して提出し、被告新日本冷熱の原告に対する本件商品売買契約によって生ずる債務を連帯保証した。

(被告山大鉄商の主張)

被告山大鉄商は、本件商品売買契約による被告新日本冷熱の債務を連帯保証したことはない。このことは、左の事実から明らかである。

①被告山大鉄商には、本件保証契約の契約書はもちろん、これに関する書類は一切存在していない。②被告山大鉄商は、原告の社名すら、原告差出しにかかる平成七年七月一一日付書留内容証明郵便による「ご通知」と題する書面を受領して初めて知ったのであり、原告は、一五年以上もの間、被告山大鉄商に対し、通知・連絡・照会等を一切していなかった。また、③被告新日本冷熱からも、本件商品売買契約の内容及び本件保証契約の内容等について何らの説明も受けたことはなく、被告山大鉄商には、被告新日本冷熱の商品代金債務を連帯保証をしたという認識はなかった。

本件契約書には、限度額のない連帯保証条項が記載されており、右連帯保証も含めた商品売買の期間は一年とする旨の定めはあるものの、際限なく自動更新される旨記載されているので、本件保証契約は、保証限度額及び期間の定めのない包括根保証契約である。その場合、保証人の責任が重大となるので、債権者である原告としては、連帯保証人となるべき者に、直接その趣旨を説明して保証意思を確認し、また、更新をする際には、連帯保証契約を継続するか否かの意思確認をすべき義務がある。ところが、原告は、本件契約書によれば、一五回も契約が更新されたことになるにもかかわらず、被告山大鉄商に対し何ら通知・連絡・照会等を一切してなかったのであり、主債務者たる被告新日本冷熱が平成六年七月末日に売掛代金を遅滞したにもかかわらず、約一年もの間、被告山大鉄商に対し、連帯保証債務の履行を求めて来たこともなかったのであり、原告は、被告山大鉄商に対する保証意思確認義務を履行していない。

原告は、原告と被告新日本冷熱との間の取引の限度額につき、本件商品売買契約当時は五〇〇万円であったものを、二〇〇〇万円に増額したというのであるから、買主である被告新日本冷熱に対してはもちろん、連帯保証人である被告山大鉄商に対しても、与信限度枠を明らかにして、その保証限度額を通知して、その保証意思を確認すべきであったにもかかわらず、何ら通知・連絡・照会等を一切しなかった。

2  本件保証契約の商法二六五条違反について

(被告山大鉄商の主張)

本件保証契約の締結は、保証人である被告山大鉄商にとっては、商法二六五条の会社と取締役間の利益相反取引に該当し、被告山大鉄商の取締役会の承認を要するところ、右承認はされていないのであるから、本件保証契約は無効である。

本件保証契約が締結された昭和五五年七月八日当時、本件保証契約上の保証人である被告山大鉄商の取締役であったBは、主債務者である被告新日本冷熱の代表取締役を兼任していたのであるから、被告山大鉄商と取締役Bとの利益が相反する取引として、被告山大鉄商の取締役会において、承認を受ける必要があったのに、本件保証契約の締結について被告山大鉄商の取締役会の承認はなかった。

そして、原告は、被告新日本冷熱の代表者であったBが被告山大鉄商の取締役を兼任していたことを認識していたのであるから、被告山大鉄商が原告に対してした本件保証取引は、会社が取締役の利益のためになすことが定型的に予想され、しかも、相手方においてそのことを知り得るような類型の取引であったことは明らかであり、それにもかかわらず、原告が、被告山大鉄商及び被告新日本冷熱に対して本件保証契約の締結につき被告山大鉄商の取締役会の承認を得るよう求めたこともなく、右承認の有無について、現在に至るまで一切の問い合わせもしてきていないのであるから、右承認がないことを知っており、仮に知らなかったとしても、重大な過失があったというべきである。

なお、被告山大鉄商は、昭和五五年六月、その所有していた被告新日本冷熱の発行済株式一万株全部の一二パーセントに当たる一二〇〇株を被告新日本冷熱の社員に譲渡したので、本件保証契約締結当時は、被告新日本冷熱は被告山大鉄商の一〇〇パーセント子会社ではなかった。

(原告の主張)

本件保証契約時において、被告新日本冷熱は、被告山大鉄商の一〇〇パーセント子会社であった。したがって、被告山大鉄商と被告新日本冷熱との間に利益相反の可能性はなく、自己取引(利益相反取引)に該当しない。

原告は、本件保証締結当時、被告新日本冷熱の代表者であるBが被告山大鉄商の取締役であることすら知らず、取締役会の承認を受けていないことを知る由もない。

原告は、子会社である被告新日本冷熱を通じてその親会社被告山大鉄商の連帯保証をもらったが、原告としては親子会社の緊密な関係から、当然被告新日本冷熱から被告山大鉄商に対し、連帯保証について説明がされ、被告山大鉄商において適正な手続のもとに本件契約書が作成されたものと信じていた。

したがって、原告は、取締役会の承認を受けていないことを知らなかったし、知る由もなかった。

なお、昭和五六年商法改正前の昭和五五年当時、間接取引につき取締役会の承認を要するという明文の規定はなかった。

3  本件保証契約の商法二六〇条違反について

(被告山大鉄商の主張)

原告が、被告新日本冷熱との間の取引の限度額(与信枠)を、昭和五五年七月八日の本件保証契約の締結にあたり、五〇〇万円から二〇〇〇万円まで増額したとすれば、被告山大鉄商は、本件保証契約により、二〇〇〇万円にも上る債務を一方的に負担するという不利益を受ける可能性があったうえ、実際、その約一年後には、被告新日本冷熱が原告に対して負担する買掛金債務は、右限度額(与信枠)二〇〇〇万円に達したというのであるが、この二〇〇〇万円という金額は、当時の被告山大鉄商の資本金の二〇・八パーセント以上にも上るものであるから、本件保証契約の締結は、多額の借財(商法二六〇条二項二号)に該当する。

しかるに、本件保証契約について、被告山大鉄商の取締役会の承認決議がなかった。

また、原告は、被告山大鉄商に対して本件保証契約の締結につき取締役会の決議を得るよう求めたこともなく、右決議の有無について現在に至るまで一切問い合わせもしてきていないのであるから、原告は本件保証契約の締結について被告山大鉄商の取締役会の決議を経ていないことを知っており、仮に知らなかったとしても、取締役会の決議を経ていなかったことを知り得べきであった。

(原告の主張)

そもそも取締役会の決議を必要とする他の明確な根拠もなく改正法の適用を前提とする被告の主張は、主張自体失当である。

また、多額の借財か否かは、その趣旨からいって、当該借財の額、その会社の総資産及び経常利益等に占める割合、当該借財の目的及び会社における従来の取扱い等の事情を総合して判断すべきである。したがって、被告山大鉄商の主張は、要件を欠き失当である。

なお、被告新日本冷熱を子会社にもてるような被告山大鉄商の規模の会社にとって、二〇〇〇万円前後の借財は多額の借財に該当しない。

4  本件保証契約の身元保証法の類推適用による終了について

(被告山大鉄商の主張)

1  本件保証契約は、保証限度額及び期間の定めのない包括根保証契約であって、継続的な保証責任を負担させる点で身元保証契約に類するものであるから、継続的保証全般の指導原則である身元保証法が類推適用されるべきである。

しかも、本件契約書によると、売買の対象となる商品については、何ら限定がされておらず、また、商品の修理その他のサービスに関する料金、賃貸料及び工事代金についても、右売買契約の各条項が適用され(本件契約書1)、保証人は、右売買契約によって生ずる被告新日本冷熱の一切の責任について保証する旨規定されているから(本件契約書8)、保証すべき範囲は極めて広く、身元保証的性格はよりいっそう強い。

かかる点からしても、身元保証法が類推適用されるべきである。

従って、保証期間を五年に制限し、更新しても最長一〇年までの間しか契約の効力を認めない、身元保証法二条二項の趣旨からしても、本件契約書作成から一五年近くも経過した後である平成七年五月以降に、原告と被告新日本冷熱との間で、別表記載の商品取引及び別紙約束手形目録記載の手形振出がされたとしても、その時点においては、本件保証契約は、既に終了していた。

2  身元保証においては、具体的保証債務の発生が未必的、不確定的であるため、具体的保証債務の不発生を軽信し、軽率に身元保証を引き受けることが多いことなどから、保証人が契約期間満了の時期を失念していることが多いことは、容易に推測されることである。そこで、期間満了の三か月前までに、身元保証人が更新しない意思表示をしなかったときは、期間満了と同時に当然に更新の効力が生じるという特約は無効とされ(札幌高等裁判所昭和五二年八月二四日判決・判例タイムズ三六一号二六五頁)、また、保証期間満了の際、別段の申出がないときは、更に保証期間が更新される旨の約定は、右約定による更新の結果、保証期間が通算で五年を超える場合には、保証人に対し、契約期間満了前の相当期間内に、契約期間満了時期を通知し、更新拒絶すべきか否かを判断する機会を実際に得させた場合においてのみ、契約更新の効果を生じさせるという限度において効力を有すると解されており(東京地方裁判所昭和四五年二月三日判決・判例タイムズ二四七号二八〇頁)、右約定について、その文言どおりに、有効と解したり、保証人に契約の更新を拒絶するか否かを実際に判断することがないまま契約更新の効果を生じさせることは、保証期間を最長でも五年に制限する身元保証法二条、さらには六条の趣旨に反する。

そして、本件契約書によると、商品売買の期間は一年とされ、期間満了の一か月前に、原告と被告新日本冷熱が協議して文書でこれを改訂するか、または、とりやめる合意をしない限り、更に一年間更新され、その後も同様とする旨定められ、被告山大鉄商は、これを承諾するとされており(右契約書10)、被告山大鉄商は、本件保証契約の更新につき協議に加わることすらできないという極めて不利な内容となっている。

しかも、原告は、被告山大鉄商に対し、本件契約書の原本又は写しを交付したこともなく、これを示したことすらなく、右契約締結後、一五年以上もの間、これについての通知・連絡・照会等を一切しておらず、被告山大鉄商に対し本件保証契約の更新を拒絶すべきか否かを判断する機会を与えていない。

したがって、身元保証法二条、六条の趣旨からすれば、少なくとも、本件保証契約の期間が右契約条項により更新を重ね、通算して五年に達した後は、右の定めによる契約更新の効果は生じない。よって、遅くとも、本件契約書作成から五年を経過した昭和六〇年七月八日をもって、本件保証契約は終了している。

5  本件保証債務自体の消滅時効の成否について

(被告山大鉄商の主張)

平成二年七月八日、本件保証契約の締結のときから、五年又は一〇年が経過したので、保証債務の時効が完成しており、被告山大鉄商は、平成一〇年六月二日の本件第二三回口頭弁論期日において、右消滅時効を援用する旨の意思表示をした。

(原告の主張)

連帯保証債務が主債務と独立して時効により消滅することはあり得ない。ことに本件の場合には、連帯保証を前提として取引がされ、継続していたのであり、またその取引については決済条件に従い正常に請求し支払われていた状況にあり、そもそも連帯保証債務の時効が成立する余地はない。

6  本件保証契約に基づく請求の権利濫用等の有無について

(被告山大鉄商の主張)

(一) 本件保証契約のような保証限度額及び期間の定めのない包括根保証契約においては、保証人に対し、契約締結後相当の期間が経過した後に発生する、いわゆる通常解約権と、契約締結後に保証人の予期しえなかった事情の変化の生じた場合に発生する、いわゆる特別解約権が認められている。

そして、保証人に解約権が発生している場合には、債権者は保証人に対し保証継続の意思の有無つまり解約権を行使するか否かを確認する必要があり、債権者がこれを怠ったため、保証人が当然になしえたはずの保証契約の解約権行使の機会を失わせた場合には、債権者は、保証人の責任を追及することはできない(特別解約権の行使の機会を失わせた場合につき、大阪地方裁判所昭和五九年一二月四日判決・判例時報一一六七号七三頁)。

つまり、連帯保証人は、一般に保証当時における主債務者の資産、信用と相互の信頼関係を基礎として保証するものであることは、債権者も了解していると認めるべきであること、また、保証人に解約権が発生しているにもかかわらず、その行使がないのは、必ずしもこれを知りながらその保証の責に任じようとの意思に基づくものとは限らず、むしろ右解約権発生の事実を知らないからと考えるのが相当であるので、継続的保証において相当期間が経過した後は、保証人の保証継続の意思を確認すべき信義則上の義務があるというべきである。

そして、本件契約書10によると、右契約の期間は一年とされ、以後、一年毎に更新される旨定められているのであるから、被告山大鉄商は、本件保証契約締結後一年が経過した昭和五六年七月八日の時点で、本件保証契約につき、いわゆる通常解約権を取得するに至ったというべきであり、仮にそうでないとしても、前述した身元保証法二条の趣旨からすれば、遅くとも五年を経過した、昭和六〇年七月八日の時点で、右解約権を取得したというべきである。

しかし、本件契約書は一通しか作成されず、原告は、被告山大鉄商に対しては、本件契約書の原本はもちろんのこと写しすらも交付していなかったこと、また、右契約書10には、原告と被告新日本冷熱が協議してこれを改訂するか、とりやめる合意をしない限り、契約は更に更新される旨定められ、保証人である被告山大鉄商は更新するか否かの協議に加わる機会すら与えられていなかったこと、更に、原告は、被告山大鉄商に対し、本件保証契約締結後、一五年以上もの間、被告山大鉄商に対して通知・連絡・照会等を一切していないことからして、原告は、期間の定めもなく、保証限度額の定めもない本件保証契約において、相当期間が経過したにもかかわらず、保証人である被告山大鉄商が行使し得る、いわゆる通常解約権の行使の機会を失わせた。

(二) さらに、本件契約締結後に生じた、左の事情変更をも考慮すれば、本件請求が権利濫用として許されないことはより一層明らかである。

(1) 被告新日本冷熱の株式について

被告新日本冷熱の発行済株式に占める被告山大鉄商の所有株式の割合は、昭和五五年六月は八八パーセントに減少し、昭和六一年一二月二〇日には九四パーセントとなったが、昭和六二年七月二八日に四七パーセント、昭和六三年一月二二日には二三・五パーセント、さらに、同年一一月にはその所有株式全部をBに譲渡したので持株は零となった。このように、本件保証契約書の作成日付直前の昭和五五年六月から昭和六三年一一月にかけて、被告山大鉄商と被告新日本冷熱との間の資本関係には重大な変更が生じた。

(2) 役員構成について

被告山大鉄商と被告新日本冷熱の代表取締役を兼任していたDが、本件保証契約締結日である昭和五五年七月八日を挟んで、昭和五四年一二月には被告新日本冷熱の代表取締役を辞任し、昭和五七年三月一日に弟Eと被告山大鉄商の代表取締役を交代し、昭和六二年一二月二〇日には被告山大鉄商の取締役、代表取締役を共に辞任して、以後被告山大鉄商の経営に一切関与しなくなったことは、両会社の関係にとって重大な事情変更である。

(3) 融資関係について

被告新日本冷熱は、被告山大鉄商から融資を受けていたのであるが、昭和六三年一〇月、Bが被告山大鉄商の取締役を辞任し、被告新日本冷熱の代表取締役に専任するようになったことから、被告新日本冷熱の被告山大鉄商からの借入金は、すべてB個人の借入金に切り替え、以後、被告新日本冷熱は被告山大鉄商からは全く融資を受けておらず、被告山大鉄商が被告新日本冷熱に直接の資金援助をするという関係はなくなった。

したがって、被告山大鉄商とすれば、以上のような事情変更があったことから、仮に本件保証契約が存在していた場合、これについて原告から保証意思の確認等の通知がなされて、本件保証契約の存在を知れば、その時点において、直ちにこれを解約する旨の意思表示をしていたのであるが、原告は、本件保証契約の締結日である昭和五五年七月八日以降一五年以上もの間、被告山大鉄商に対し、保証意思の確認及び取引内容の説明を含め、何の連絡もせず、被告山大鉄商が本件保証契約の存在を知れば当然したはずの解約権行使の機会を失わせた。

よって、原告は、事情変更後、すなわち、遅くとも被告山大鉄商がBに対し、被告新日本冷熱の株式全部を譲渡した昭和六三年一一月以降に被告新日本冷熱が負担した債務については、信義則上、被告山大鉄商に対して保証人としての責任を追及できないのであり、原告が本件訴訟において主張する被告新日本冷熱の債務はすべて前同日以降に発生したものであるので、原告の被告山大鉄商に対する保証債務の履行請求は、いずれも信義則に反し、権利の濫用であって許されない。

なお、被告山大鉄商の社員であるFは、被告新日本冷熱の名目上の監査役にすぎないこと、被告山大鉄商はその取得した建物を被告新日本冷熱に賃貸しているが、所有建物の賃借人であるからといって、その経営状況を把握しうるものではないこと、Bが、昭和六三年一〇月、被告新日本冷熱の代表取締役に専任するようになってからは、被告山大鉄商に対し、決算書を提出していないこと、被告山大鉄商が、平成六年九月に、Bから同人及び被告新日本冷熱が被告山大鉄商に対して負担している債務等の報告を受けた際、当時被告新日本冷熱が新菱冷熱、小泉機器及び東海銀行に対して負担していた債務についての説明は受けたが、原告に対する債務については、説明がなく、右説明に際し、Bは、被告新日本冷熱の仕事の受注状況からして、同社の経営に不安はない旨説明し、同社の倒産を前提にして話していないこと等からすると、被告山大鉄商が被告新日本冷熱の状況を十分把握できる立場にあったとはいえない。そもそも、被告山大鉄商には、本件保証契約を締結したという認識もなかったことは、前述したとおりである。

(原告の主張)

(一) 本件保証契約は、当初から契約期間が継続して長期にわたることが当然の前提とされ、更新条項によって更新を経ており、本件商品売買契約を締結したのは、被告新日本冷熱との取引が拡大する見込みとなったためであり、同時に連帯保証という担保も付されたのであり、その当時、当事者は、取引の拡大を当然予測しており、その後の主債務の額も、当初の予測の範囲内にある以上契約締結後に保証人の予期し得なかった事情の変化は生じていないのであるから、被告山大鉄商には、本件保証契約について、通常解約権も特別解約権も発生していない。

(二) 本件両被告が以下のような緊密な関係にあったことからすると、原告の連帯保証債務の履行請求が許されないことにはならない。

被告新日本冷熱と被告山大鉄商は、少なくとも昭和五四年一〇月には一〇〇パーセント親子会社の関係にあった。また、本件商品売買契約及び本件保証契約が締結された昭和五五年七月当時も被告山大鉄商が被告新日本冷熱の株式を全株所有していた。

また、本件保証契約締結の当時、子会社である被告新日本冷熱の取締役、監査役及び従業員には、親会社から出向・派遣された者がおり、その関係は継続し、平成七年当時の監査役も被告山大鉄商の従業員であった。被告新日本冷熱は、被告山大鉄商所有ビルを賃借し、本社を置いていた。

被告山大鉄商は、被告新日本冷熱のために、被告新日本冷熱の取引銀行であるあさひ銀行に対する保証、被告新日本冷熱の取引先である新菱冷熱及び小泉機器に対する保証をしていた。

このように、連帯保証契約締結時において、連帯保証人が主債務者の親会社であり、かつ、親会社から人的派遣も行われた等の緊密な関係にある場合は、親会社は、主債務の内容、状況を十分覚知し得るし、保証の限度額が記載されていないとしても全く問題は生じない。

なお、本件保証契約締結後において、株式の変動があり、親子関係がなくなったとしても、その関係を原告を含む第三者に告知したわけでもなく、原告から本件保証に関する問い合わせをしなくてはならない理由はなく、また、被告山大鉄商は、被告新日本冷熱に対し、継続して資金援助を行い、同被告の代表者であるBから、平成七年に至るまで資金繰りの相談を受けており、また、被告新日本冷熱の倒産時まで監査役の派遣もしていた等、被告新日本冷熱と緊密な関係は継続していたから、原告の請求が権利の濫用ないし信義則違反と評価されることはない。

(三) 契約の存続について、連帯保証人である被告山大鉄商が失念していたとしても、そのために本件保証契約の効力に影響は及ばない。それは、連帯保証人自身の問題にすぎないし、本件では主債務者である被告新日本冷熱の取引担当取締役が連帯保証の存在を知っており、被告新日本冷熱と緊密な関係のあった被告山大鉄商も当然知り得る立場にあった。

以上の、原被告の関係、状況に照らせば、原告の請求が権利の濫用ないし信義則違反に該当する事情は存在しない。

7  被告山大鉄商の保証責任の信義則等による制限について

(被告山大鉄商の主張)

本件保証契約は、保証限度額及び期間の定めのない包括根保証であり、かかる包括根保証契約においては、保証契約に至った事情、当該取引の業界における一般的慣行、債権者と主たる債務者との取引の具体的態様・経過、債権者が取引にあたって債権確保に用いた注意の程度(主たる債務者の資力、信用状態の把握)、保証人の認識の程度、その他一切の事情を斟酌し、信義則に照らして合理的な範囲に保証人の責任を制限すべきである。

(一) 包括根保証契約は、債権者と主債務者との間の取引によって生ずる現在及び将来の一切の債務について保証期間及び保証限度額を定めずに包括的に保証するものであり、保証人の責任が無限に拡大する可能性があるのであるから、信義則上、債権者は、保証人に対し、保証意思の確認をするとともに、主債務者との取引契約及び保証契約の内容を説明すべき義務を負い、債務者が右保証意思の確認及び保証契約の内容等の説明を怠った場合には、保証責任は制限されるべきである。

しかるに、原告は、被告山大鉄商に対して、本件保証契約締結時はもちろんのこと、その後一五回にわたる契約更新時にも、保証意思の確認をしていないのみならず、被告新日本冷熱との間の取引契約及び保証契約の内容も説明していない。

また、被告山大鉄商には、本件保証契約の契約書の原本はもちろんのこと、契約書の写しやこれに関する書類は一切存在しなかったことに加え、本件契約書には末尾に契約当事者各自が一通宛保有する旨の記載がなく、訂正個所には被告新日本冷熱の訂正印しか押印されていないことからして、同契約書は一通しか存在せず、被告山大鉄商には右契約書は交付されていないのであるから、より一層保証責任は限定されるべきである。

(二) さらに、債権者が、主債務者に対する債権の保全について不安を抱き、保証人との間の保証契約による担保力を評価したうえ、主債務者との間で取引を継続する場合には、通常の包括根保証に比べ、さらに保証人の責任が不当に拡大する危険性が大きいのであるから、債権者は、保証人に対する保証意思の確認を事前のみならず事後的にも慎重に行うとともに、主債務者との間の取引内容の説明を詳細に行うべきであり、債権者がこれを怠った場合には、保証責任は制限されるべきである。

そして、原告は、被告新日本冷熱の代表取締役の交代により、当時の原告と被告新日本冷熱との取引限度額五〇〇万円の範囲内であっても、同被告に対する債権の保全に不安を抱いたため、同被告に対して被告山大鉄商に本件保証契約の締結をしてもらうよう執拗に要求した結果、被告山大鉄商との間の保証契約による担保力を重視して、被告新日本冷熱との間で新たに商品売買契約を締結した。

しかるに、原告は、本件保証契約が締結された昭和五五年七月八日以降一五年以上もの間、被告山大鉄商に対し、保証意思の確認及び取引内容の説明を含め何らの連絡もしていない。

(三) なお、債権者と主債務者との間の取引額が増大したとき、または、債権者の主債務者に対する債権額が増大したときは、通常の包括根保証に比べ、さらに保証人の責任が不当に拡大する危険性が大きいのであるから、債権者は、保証人に対し、主債務者との間の取引内容の説明を詳細に行うべきであり、債権者がこれを怠った場合には、保証責任は制限されるべきである。

本件では、原告と被告新日本冷熱との間の取引額は、当初は四〇〇万円程度であったものの、被告山大鉄商の保証の押印を取得してから約一年後には、当初の五倍にも上る二〇〇〇万円程度にまで拡大したのであるから、原告は、被告山大鉄商に対し、被告新日本冷熱との間の取引額が増大する都度、取引額の増大を含め、何らかの通知・連絡・照会等をすべきであったにもかかわらず、一切していなかった。

(四) また、保証責任の範囲を定める際には、前記のとおり、保証人の認識の程度も考慮されるべきであり、保証人が、債権者のみならず主債務者からも、債権者と主債務者との間の取引契約及び保証契約の内容等の説明を受けなかった場合にも、保証責任は制限されるべきである。

そして、被告新日本冷熱にも、本件保証契約に関する原本・写しは保管されておらず、同被告の代表者であったBも本件契約が存在するとの認識がなかったので、原告だけでなく、主債務者である被告新日本冷熱も、被告山大鉄商に対し、原告と被告新日本冷熱との間の継続的商品売買契約の内容及び保証契約の内容等について何らの説明もしていなかった。

(五) 以上のとおり、原告は、被告山大鉄商に対し、保証意思の確認、取引額の増大の通知等を含めて、本件保証契約につき、通知・連絡・照会等一切をしておらず、本件契約書に被告山大鉄商の押印を得ただけで、その後も保証契約の管理を全くしていない。したがって、原告は、被告新日本冷熱の倒産により売掛債権の回収に窮したことから、一五年以上も前の本件契約書に基づき被告山大鉄商に対し、本件保証契約が存在する旨主張して、本訴を提起しており、誠実な債権者とはいえない。

以上の各事情を考慮すれば、仮に本件保証契約が存在したとしても、被告山大鉄商の保証責任は、信義則上、合理的な範囲に制限されるべきである。右(一)ないし(五)の事情を考慮すれば、被告山大鉄商の保証責任が認められたとしても、右取引限度額五〇〇万円を超えることはない。

さらに、本件では、原告は、被告山大鉄商に対し、契約書も交付せず、約一五年以上もの間、本件保証契約について、何らの通知・連絡・照会等もしなかったという事情を考慮すれば、原告には、本件保証契約により債権保全を図ろうという態度がないので、被告山大鉄商の責任は、右五〇〇万円の二分の一以下に制限されるべきであり、東京地方裁判所昭和五九年四月一九日判決(判例時報一一四七号一一一頁)が、保証人の責任を、債権者と主債務者との間の取引高が増大する前の取引高の二か月分に相当する金額とすることからすれば、被告山大鉄商は、本件保証契約締結により取引高が増大する前の原告と被告新日本冷熱との間の一か月の取引額一〇〇万円の二か月分に相当する二〇〇万円以下に制限されるべきである。

(原告の主張)

本件の事実においては、保証責任が制限されることはない。

(一) 被告山大鉄商と被告新日本冷熱との関係

被告山大鉄商と被告新日本冷熱との関係からみて、本件の連帯保証責任を制限する余地はない。

昭和五五年七月八日の本件保証契約当時、被告山大鉄商と被告新日本冷熱は一〇〇パーセントの親子会社の関係にあった。

また、被告新日本冷熱の取締役・監査役等の役員は、被告山大鉄商から同社の役員や従業員が派遣されていたこと、被告山大鉄商は、被告新日本冷熱の取引銀行及び原告を含む取引先に対し、被告新日本冷熱のために連帯保証を行っていたこと、被告新日本冷熱の決算書は、毎年被告山大鉄商に提出され、また監査役を通じて情報を入手できる状況にあったこと、及び被告新日本冷熱の代表者のBは、昭和五五年七月八日当時被告山大鉄商の業務と被告新日本冷熱の業務とを兼務しており、被告山大鉄商の業務に約七〇パーセントの比重がかかっていたことにみられるように、被告山大鉄商と被告新日本冷熱との関係は密接であった。

以上のように、被告山大鉄商と被告新日本冷熱とが緊密な関係を有している場合には連帯保証人の責任制限が問題になることはない。

(二) 本件保証契約の締結の事情、原告と被告新日本冷熱との取引の規模、過程及び態様、連帯保証人の認識の程度からみても、本件の事実関係からみて、連帯保証責任を制限すべき事情はない。

(1) 本件保証契約締結の事情

原告と被告新日本冷熱との間では、昭和五五年当時、新たな現場の取引が見込めるなどその取引拡大の可能性があったが、そのためには被告新日本冷熱から何らかの担保をとらなければ取引を拡大することはできなかった。そして、親会社である被告山大鉄商の連帯保証があれば被告新日本冷熱に対してそれ相応の与信が与えられ、取引を拡大しても安心できる状況にあった。そこで本件保証契約を締結し、これを前提に原告と被告新日本冷熱とは取引を拡大した。被告山大鉄商は、右状況を理解して本件保証契約を締結した。

(2) 原告と被告新日本冷熱の取引

原告と被告新日本冷熱との取引は、本件契約書の締結を契機として、その取引残高が増大した。そして、契約締結時において、取引が拡大されることは、被告新日本冷熱のB社長及びG常務ともに認識しており、当然被告山大鉄商も知っていた。

また、被告新日本冷熱と原告との取引は支払が滞ることもなく、取引残高も当初の当事者間の予測の範囲内の額であったのであるから、保証責任の制限は問題とならない。

(3) 原告が本件にあたって債権確保に用いた注意

原告は、親会社の連帯保証があることを前提として、被告新日本冷熱との取引を継続していたが、その取引の経緯において支払遅延や延期の申出などなく、特に被告新日本冷熱の信用状況を調査する必要はなかった。他方、被告山大鉄商は、原告よりもはるかに被告新日本冷熱の信用状況を知り得る立場にあった。

(4) 連帯保証人たる被告山大鉄商の認識

被告山大鉄商は、本件保証契約締結において、取引を拡大するために保証をするということを理解しており、契約によれば原告と被告新日本冷熱との間の商取引について限度額なく保証する内容であることを理解していた。そして、被告山大鉄商は、被告新日本冷熱の経理を知り得る状態にあり、原告と被告新日本冷熱の取引の状況及び被告新日本冷熱自体の資力及び信用状態を把握していた。

第三争点についての判断

一  本件保証契約の成否について

≪証拠省略≫の商品売買契約書の成立についてみるに、同契約書の被告山大鉄商名下の印影が同被告会社の代表者の登録印章によるものであることは当事者間に争いがなく、かつ、被告山大鉄商の代表者の登録印章が冒用されたとの点について同被告は特段の立証をしていないことに鑑みるならば、右の印影は同被告の代表者の意思に基づいて顕出されたものと認められるから、同契約書はその全体が真正に成立したものというべきである。≪証拠省略≫、証人G、証人Hの各証言、被告新日本冷熱の代表者Bの供述及び弁論の全趣旨によれば、原告から、被告山大鉄商に保証してもらうよう要求された被告新日本冷熱の代表者であるBが被告山大鉄商の当時の代表者であったDに対し保証を依頼し、右Dが本件契約書に被告山大鉄商の代表者としての記名押印をしたうえ、これをBに渡し、Bが原告に差し入れたことが認められるから、本件保証契約は原告と被告山大鉄商との間で成立したということができる。

そして、≪証拠省略≫によると、本件保証契約の対象とされる本件商品売買契約の期間が契約締結の日から一年とされていること、期間満了の一か月前に原告と被告新日本冷熱とが協議して文書でこれを改訂するか、またはとりやめる合意をしない限り、その後一年継続し、その後も同様とする旨の合意がされていることが認められる。右事実からすれば、本件商品売買契約には自動更新の合意があるものの、一応は期間の定めがあるのに対し、本件保証契約については保証期間の定めがないものということができる。しかし、右自動更新の合意については、そのような自動更新の合意された本件商品売買契約について保証することが本件保証契約の内容となっており、その旨が、本件契約書に明記されているのであるから、保証人である被告山大鉄商もそのような内容を有する保証をしているというべきである。そうである以上、更新の度に原告が被告山大鉄商の保証意思を確認すべき義務があるともいえない。

また、≪証拠省略≫及び証人Hの証言によれば、本件保証契約については保証限度額の定めがないこと、本件商品売買契約についても限度額の定めがないこと、原告の被告新日本冷熱に対する与信限度額があったこと、右与信限度額は本件商品売買契約・保証契約の前にはおおむね五〇〇万円であったが、右各契約の後にはおおむね二〇〇〇万円となったこと、右与信限度額は原告の社内の取決めであったことが認められ、右認定事実によれば、被告山大鉄商としても本件保証契約につき限度額の定めがないことは十分に認識していたといえ、また、原告の側で被告新日本冷熱に対する与信限度額を決めていたとしても、それは原告の会社内部の取扱いにすぎず、その性質上取引先なし保証先に対して公表するものとはいえない以上、右与信限度額の引き上げが原告側でされたとしても、そのことを被告山大鉄商に対して事前に通知したうえ承諾をとるか、通知・連絡・照会等をする義務が原告にあるということはできない。

二  本件保証契約の商法二六五条違反について

≪証拠省略≫、被告新日本冷熱の代表者Bの供述によれば、本件保証契約の締結当時にBが被告新日本冷熱の代表取締役の地位にあると同時に、被告山大鉄商の取締役の地位にあったこと、したがって、本件保証契約は、被告山大鉄商が、その取締役が代表取締役を務めている被告新日本冷熱が負担する債務につき締結されたものであることが認められ、本件保証契約の締結は、被告山大鉄商にとって、その外形においては、会社とその取締役との利益が相反する取引であるといえる。

しかし、他方、≪証拠省略≫、被告新日本冷熱の代表者Bの供述、弁論の全趣旨によれば、昭和五四年一〇月ころには被告山大鉄商は、被告新日本冷熱の発行済株式一万株全部を所有していたことが認められ、≪証拠省略≫、弁論の全趣旨によれば、昭和五五年一〇月三一日現在では被告山大鉄商の右持株は八八〇〇株となったこと、一二〇〇株の持株の減少は、同年六月ころに被告新日本冷熱の社員に対して有償で譲渡されたことによることが認められ、右認定事実によれば、本件保証契約締結当時、被告新日本冷熱は被告山大鉄商の一〇〇パーセント子会社ではなかったものの、その発行済株式総数の八八パーセントにのぼる株式が被告山大鉄商によって所有されていたという意味では被告山大鉄商の子会社であったということができ、しかも、残り一二パーセントの株式についても全くの第三者ではなく被告新日本冷熱の社員が保有していたというのであるから、実質的にみれば、被告新日本冷熱は、本件保証契約当時においては被告山大鉄商のほぼ一〇〇パーセント子会社といっても過言ではない状況にあったということができる。そして、Bは被告山大鉄商の取締役と被告新日本冷熱の代表取締役を兼任していた事実、及び、≪証拠省略≫、被告新日本冷熱の代表者Bの供述によって認められる、昭和六三年までは被告新日本冷熱は被告山大鉄商に毎決算期に決算書を提出していた事実をも考慮すれば、被告新日本冷熱の被告山大鉄商に対する従属的関係はより一層明確であったというべきである。

そうであるとすれば、本件保証契約について、前記判示の利益相反関係が外形において認められるとしても、その実質においては、利益相反の関係はなかったというべきであり、昭和五六年改正前の商法の解釈上も取締役会の承認が必要であったということはできない。

したがって、本件保証契約が商法二六五条に違反して無効であるということはできない。

三  本件保証契約の商法二六五条違反について

≪証拠省略≫によれば、被告山大鉄商は昭和五四年七月に増資をし、その結果、資本金の額が九六〇〇万円となり、本件保証契約時も資本金は同額であったことが認められ、これと、前記認定の本件保証契約を契機として原告の被告新日本冷熱に対する与信限度額が二〇〇〇万円とされたことを比較すれば、右与信限度額の二〇〇〇万円は、計算上、当時の被告山大鉄商の資本金の二〇・八パーセントに相当する。しかしながら、商法二六五条二項二号の多額の借財といえるか否かの判断は、会社の規模・状況、当該借財の額、その会社の総資産及び経常利益等に占める割合、当該借財の目的、当該会社における従来の取扱い等の事情を総合考慮して判断されるべきものであって、会社の実体を必ずしも正確に反映していない資本金の額だけを借入金等の額と比較することによって判断できるものではない。のみならず、前記認定のように右与信限度額は原告の内部の基準であって、被告山大鉄商としてはその具体的な額を知る由もないのであるから、被告山大鉄商としては本件契約締結当時において、右与信限度額を多額の借財か否かの判断基準とすることはできない。しかも、前記認定の事実によれば、被告新日本冷熱は、本件保証契約締結当時被告山大鉄商のほぼ一〇〇パーセント子会社であり、被告新日本冷熱は被告山大鉄商からみて健全な財務状態にあったのであるから、保証債務が即借財となる合理的可能性は低く、この点からしても、多額の借財であったということはできないから、被告の主張を認めることはできない。

四  本件保証契約の身元保証法の類推適用による終了について

≪証拠省略≫によれば、本件保証契約の対象となる商品売買契約については、売買の対象となる商品については、何ら限定がされておらず、また、商品の修理その他のサービスに関する料金、賃貸料及び工事代金についても、右売買契約の各条項が適用され(本件契約書1)、保証人は、右売買契約によって生ずる被告新日本冷熱の一切の債務について保証する旨規定されていること(本件契約書8)、商品売買の期間は一年とされ、期間満了の一か月前に、原告と被告新日本冷熱が協議して文書でこれを改訂するか、または、とりやめる合意をしない限り、さらに一年間更新され、その後も同様とする旨定められ、保証人である被告山大鉄商は、これを承諾するとされていること(右契約書10)、及び保証限度額の定めがないことが認められる。そして、右認定事実によれば、被告山大鉄商の保証すべき債務の範囲は広く、また、被告山大鉄商は、本件保証契約の更新につき協議に加わることができない点で、本件保証契約による拘束の度合いが強く、被告山大鉄商の保証責任は決して軽くはないということができる。しかし、保証の対象は、原告と被告新日本冷熱との間の本件商品売買契約に基づく商取引によって生ずる債務であって、原告が営業として販売する商品の代金に自ら限定され、商品の修理その他のサービスに関する料金、賃貸料及び工事代金といっても、その商品に関する料金・賃貸料であり、工事代金についても、その商品に関連する工事の代金なのであるから、債務の発生には、一定の規則性があり、予測性があり、際限なく拡大するものではない。この点について、身元保証契約は、具体的保証債務の発生が不規則かつ偶発的であり、その額も予測性がなく、両者は異質であり、確かに両者とも、断続的保証契約であるという点において大きな共通性があり、信義則が強く要請される性質を有するものであるということはできるものの、身元保証法の具体的な法条を直接類推適用するまでの共通性は見出し難い。

したがって、本件保証契約に身元保証法の具体的な法条を類推適用すべきであるとの被告山大鉄商の主張は採用することができない。

五  本件保証債務自体の時効消滅について

保証債務は、主債務を担保するものであり、主債務に附従するとはいえ、主債務とは別個独立の債務であるから、主債務と独立して時効により消滅することがありえないわけではない。民法四五七条一項は主債務に対する時効中断の効力が保証債務に及ぶと規定しているが、右規定は、債権者を保護するために、特に、債権者が主債務について時効中断の措置をしている限り、保証人に対して、主債務の時効中断の効力が及ぶことを定めただけではなく、主債務が時効中断されている限り、保証債務自体もまた同時に時効中断することを定めたものと解すべきである。したがって、主債務の時効期間よりも保証債務の時効期間が短期間のときなどは、保証債務についてだけ、時効が完成することがあることになる。

これを本件についてみるに、弁論の全趣旨によれば、本件商品売買契約に基づいて、原告は、被告新日本冷熱に対し毎月数回に及ぶ商品の販売及びサービスの提供を行い、毎月支払期日に代金等の決済を行っていたもので、そうした継続的な取引は被告新日本冷熱が原告に対する売掛代金の支払を遅滞した平成六年七月ころまでさしたる問題もなく行われ、平成七年七月に被告新日本冷熱が手形の不渡りを出して倒産する直前ころまで継続していたことが認められるから、右いずれの時点を起算点としても、主債務についてはもちろんのこと、保証債務についても、消滅時効は完成していないといわざるを得ない。

したがって、被告山大鉄商の保証債務についての消滅時効の主張もまた採用することができない。

六  本件保証契約に基づく請求の権利の濫用等の有無について

1  期間の定めがない保証契約について、保証人に何らかの解約権(通常解約権・特別解約権)が発生することがあり得るのは、被告山大鉄商の主張するとおりであるが、右解約権が発生している場合には、原則として、債権者は、保証人に対し保証継続の意思の有無、つまり解約権を行使するか否かを確認し、その行使の機会を与える保証契約上の義務を負い、これを履行しない限り、保証債務の履行を請求することができない、ということはできない。このことは、期間の定めがないことに加え、保証限度額の定めもない場合であっても、同様である。なぜなら、右解約権の発生が認められるのは保証契約に期間や保証限度額の定めがない結果、保証人の責任が半永久的・無限のものとなることを防止するためであるところ、保証人に解約権が与えられれば、右の不利益は十分に回避できるのであり、それ以上に解約権行使の機会を与える必要性は存しないからである。この点について、原告は、大阪地方裁判所昭和五九年一二月四日判決を引用するが、右判決は無条件に債権者に右の義務を課しているわけではなく、主債務者の資産状態が危殆に瀕する等の事情変更があったのに、債権者が主債務者に対して新たな融資をするような場合に右の義務が債権者に発生すると判示しているのであり、右判示は単に主債務者の資産状況の悪化という事情変更のみを捉えて解約権行使の機会を保証する義務を認めているのではなく、右事情変更のもとで債権者の新たな融資によって保証人は責任が現状よりも過大となる不利益を負うこと、反面において債権者にとっては保証される範囲が拡大する利益が生ずることを考慮して、債権者に前記義務を課していると解されるのであるから、保証人の責任が無限に拡大するおそれがある等、保証人を半永久的・無限の責任負担から保護すべき特段の事情があれば格別、そうでない限りは債権者に前記義務の発生は認められないというべきである。

2  前記認定のように、本件保証契約が期間の定め・保証限度額の定めのないものであることからすれば、本件保証契約が締結されてから相当期間が経過すれば、信義則上保証人である被告山大鉄商に解約権が発生するということができる。そして、前記認定のように、本件商品売買契約の期間は一年とされ、期間満了の一か月前に、原告と被告新日本冷熱が協議して文書でこれを改訂するか、または、とりやめる合意をしない限り、更に一年間更新され、その後も同様とする旨定められ、保証人である被告山大鉄商は、これを承諾するとされていること(右契約書10)からすると、本件商品売買契約は契約締結後一年ごとに更新するか否かを検討する機会があるのに対し、本件保証契約については契約時において保証人が債権者と主債務者との間でされる右更新を予め包括的に承諾することとされており、保証人の責任はその意思にかかわらず継続することになりかねないのであるから、主債務者との均衡も考慮すれば、前記相当期間としては契約締結後一年が相当であるというべきである。よって、本件においては、本件保証契約が締結された昭和五五年七月八日から一年が経過した昭和五六年七月八日に被告山大鉄商は解約権を取得し、その後も毎年七月八日に解約権を取得していたものというべきである。しかし、前記のように右のような解約権の発生のみによっては、原告に対し保証人に対して右解約権行使の機会を与える義務が発生するということはできないし、被告新日本冷熱と被告山大鉄商との後述するような密接な関係が存続していた限り、被告山大鉄商が解約権の行使を選択した可能性はなかったものと推察される。

3  そこで、次に、被告山大鉄商主張の事情変更のもとで右義務の発生を認め得るかを検討する。

≪証拠省略≫、被告新日本冷熱の代表者Bの供述及び弁論の全趣旨によれば、被告新日本冷熱と被告山大鉄商は、昭和五四年一〇月にはほぼ一〇〇パーセント親子会社の関係にあったこと、被告新日本冷熱の発行済株式に占める被告山大鉄商の所有株式の割合は、昭和五五年六月は八八パーセントに減少し、昭和六一年一二月二〇日には九四パーセントとなったが、昭和六二年七月二八日に四七パーセント、昭和六三年一月二二日には二三・五パーセント、さらに、同年一一月にはその所有株式全部を被告新日本冷熱の代表者であるBに譲渡したので持株は零となったことが認められる。また、≪証拠省略≫及び弁論の全趣旨によれば、被告山大鉄商と被告新日本冷熱の代表取締役を兼任していたDが、本件保証契約締結日である昭和五五年七月八日を挟んで、昭和五四年一二月には被告新日本冷熱の代表取締役を辞任し、昭和五七年三月一日に弟Eと被告山大鉄商の代表取締役を交代し、昭和六二年一二月二〇日には被告山大鉄商の取締役、代表取締役を共に辞任したことが認められる。そして、被告新日本冷熱の代表者Bの供述によれば、被告新日本冷熱は、被告山大鉄商から融資を受けていたのであるが、昭和六三年一〇月、Bが被告山大鉄商の取締役を辞任し、被告新日本冷熱の代表取締役に専任するようになったことから、被告新日本冷熱の被告山大鉄商からの借入金は、すべてB個人の借入金に切り替え、以後、被告新日本冷熱は被告山大鉄商からは全く融資を受けておらず、被告山大鉄商が被告新日本冷熱に直接の資金援助をするという関係はなくなったことが認められる。

以上認定の事実によれば、本件保証契約当時においては、被告新日本冷熱はその実質においては被告山大鉄商の子会社であったものの、本件保証契約が締結された後には、徐々に資本関係、役員関係、出資関係等の各方面において、その関係の緊密さの度合いが低下していったということができ、その意味で被告山大鉄商と被告新日本冷熱との間の関係に大きな変更があったということができ、右のような事実からすれば、被告山大鉄商は昭和六三年末には解約権を取得したものということができ、かつ、そのころ、被告山大鉄商の代表者が被告山大鉄商が被告新日本冷熱のために保証したことについて認識を欠如していなかったならば、本件保証契約について解約権の行使に踏み切ったのではないかと想像されるところである。しかしながら、右事情変更は何ら保証人たる被告山大鉄商の責任の拡大をもたらすものではなく、単に、被告山大鉄商による被告新日本冷熱の業務遂行についての支配・監督の可能性が減少したというにすぎず、しかも、≪証拠省略≫、被告新日本冷熱の代表者Bの供述及び弁論の全趣旨によれば、被告新日本冷熱の代表者であるBは、平成七年に至るまで被告山大鉄商に被告新日本冷熱の資金繰りの相談をし、墾請していたこと、被告山大鉄商は、被告新日本冷熱の債務につき、あさひ銀行に対する銀行保証、新菱冷熱に対する保証及び小泉機器に対する保証もしていたこと、被告新日本冷熱の倒産時まで被告山大鉄商の社員を監査役として派遣していたことが認められ、前記のように被告山大鉄商と被告新日本冷熱との間の関係は、Bが被告新日本冷熱の代表取締役に就任した後においても、以前に比べるとその程度はかなり希薄化したとはいえ、依然密接な関係が継続していたということができ、しかも、外観上は密接な関係が見えることも考慮すれば、右のような事情変更によって、債権者たる原告に被告山大鉄商に対して解約権の行使の機会を与えるべき義務が信義則上発生するということはできない。

また、本件では、被告山大鉄商が解約権の発生を知っていなかったものと想像されるが、保証人が解約権の発生の事実を知っているか否かは、債権者が通常容易に覚知し得るものではなく、単に継続的保証において相当期間解約権の行使がないからといって、保証人が解約権の行使ができることを知らないで右相当期間が経過した可能性があることも考えて債権者の側から保証人にその解約権を行使するのか否かを確認するべき信義則上の義務があるということもできない。

したがって、本件保証契約に基づく請求が権利の濫用・信義則違反にあたるとの被告山大鉄商の主張は採用することができない。

七  被告山大鉄商の保証責任の信義則等による制限について

証人G、証人Hの各証言によれば、原告は、被告新日本冷熱との取引を拡大するために被告新日本冷熱に対して保証人として被告山大鉄商をつけることを要求したこと、そのための交渉が五回位に及んだこと、被告山大鉄商の保証を要求したのは原告としては被告山大鉄商が被告新日本冷熱の親会社であるとの認識があったためであることが認められる。そして、本件保証契約の締結にあたって、原告が保証人である被告山大鉄商に対していつまで、どの限度で保証する意思があるのかを確認するとか、主債務者との取引額の変動の見込みを説明するといった信義則上の義務を負うということはできないし、自己の手元に契約書が存在せず、保証人である被告山大鉄商が保証の認識を失っていることが、保証責任の制限を基礎づける事情となるものではない。

また、≪証拠省略≫によれば、原告と被告新日本冷熱との間の取引残高が本件保証契約の締結以前は、五〇〇万円前後であったが、右締結以後は、一〇〇〇万円を超えたこと、その後の取引残高の推移は、昭和五五年から平成元年ころまではおよそ一〇〇〇万円から二〇〇〇万円の間、平成元年から平成四年ころまではおよそ一〇〇〇万円から二五〇〇万円の間、平成五年四月から平成七年七月までは一〇七六万四八一一円から二七四六万九〇五九円の間であること、原告と被告新日本冷熱との間の取引は、原告がポンプ等を納入する工事現場ごとに受注がされていたこと、右工事現場の数・規模によって総受注額が変動していたこと、及び平成六年七月ころまで被告新日本冷熱の支払が滞ったことがなかったことが認められる。

右認定の事実によれば、原告と被告新日本冷熱との間の取引残高は、本件保証契約の締結を契機として増加したものの、以後平成七年までの約一五年間については安定して推移しており、また、代金の決済もつつがなく行われていたといえる。確かに、取引残高は時期によって増減しているが、一定の幅をもって増減しており、その取引状況は自然であり、また、右一定の幅の上限が増加しているものの、約一五年という期間の我が国の右肩上がりの経済変動や物価の上昇等を考慮すれば、あながち不自然なものではない。そして、前記認定のように本件保証契約締結の動機が原告と被告新日本冷熱との間の取引の拡大にあったことからすると、右のような原告と被告新日本冷熱との間の取引残高の推移は、まさに本件保証契約の目的とするところであり、契約当事者の予測の範囲外のものとはいえない。したがって、本件債権者たる原告が保証人に対して保証契約締結後いつまで、どの限度で保証するかの意思確認をしなければならない信義則上の義務が発生することはない。

以上のとおりであるから、本件原告が被告山大鉄商に対して、何ら通知・連絡・照会等をしなかったとしても、保証責任の制限を基礎づけるような信義則違反は認められない。また、継続的な売買契約の保証においては、債権者は主債務者の資力が悪化した場合に備えて保証人をつけるのであるから、本件たる売買取引が順調に継続している以上は、債権者が保証人に対し何ら通知・連絡・照会等をしなかったとしても、債権保全を図ろうという状態がないということはできず、また、主債務者の倒産によりはじめて保証人に請求したからといって、不誠実な、怠慢な債権者であるということもできない。

結局、本件においては、保証人の責任を制限すべき事情は存在しない。

八  以上のとおり、原告の被告らに対する請求は、いずれも理由があるので、これを認容することとする。

(裁判長裁判官 塚原朋一 裁判官 白石史子 山田篤)

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