東京地方裁判所 平成7年(ワ)22293号 判決 1998年9月30日
東京都足立区西新井五丁目二五番八号
原告
徳勝靖治
右訴訟代理人弁護士
関喆
右補佐人弁理士
奈良武
兵庫県伊丹市鴻池字街道下九番一
被告
相生精機株式会社
右代表者代表取締役
北浦一郎
右訴訟代理人弁護士
鳩谷邦丸
同
別城信太郎
主文
一 原告の請求をいずれも棄却する。
二 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第一 請求
一 被告は、別紙イ号物件目録、同ロ号物件目録及び同ハ号物件目録記載の各物件を、業として、製造し、譲渡し、又は譲渡若しくは貸渡しの申出をしてはならない。
二 被告は、その本店、営業所及び工場において所有する前項記載の各物件(完成品)及びその半製品を廃棄せよ。
三 被告は、その本店、営業所において所有する第一項記載の各物件の譲渡の申出のためのカタログを廃棄せよ。
四 被告は、原告に対し、金二四〇万円及びこれに対する平成七年一一月三〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
第二 事案の概要
本件は、原告が、被告に対し、後記一1記載の特許権に基づき、被告による別紙イ号物件目録、ロ号物件目録及びハ号物件目録記載の各物件(以下、総称して「被告各物件」といい、それぞれを「イ号物件」、「ロ号物件」、「ハ号物件」という。)の製造、販売が原告の右特許権を侵害するものであるとして、被告各物件の製造、譲渡、譲渡又は貸渡しの申出の差止め並びに被告各物件及びそのカタログの廃棄を求めるとともに、不法行為による損害賠償として、二四〇万円及びこれに対する不法行為の後である平成七年一一月三〇日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。
一 争いのない事実
1 原告は、次の特許権(以下「本件特許権」といい、その特許発明を「本件発明」という。)を有していた。
特許番号 第一一一九六六三号
発明の名称 フープ材カッター
出願日 昭和五二年一一月一六日
出願番号 特願昭五二-一三七三八四号
公告日 昭和五七年二月一三日
公告番号 特公昭五七-七八四六号
登録日 昭和五七年一〇月二八日
特許請求の範囲 別紙特許公報(以下「本件公報」という。)の該当欄記載のとおり。
2 本件発明の構成要件を分説すると、次のとおりである。
(一) 固定刃と、この固定刃に対して偏心揺動して離接する動刃と、この動刃を駆動する駆動手段とフープ材ガイドホッパーとから成るフープ材カッターにおいて
(二) 固定刃に対し動刃を上側に於て離接せしめるべく配置する
(三) 当該動刃の切断作用方向の前端に位置せしめ、かつ前記フープ材の送入方向に対向せしめて前記フープ材ガイドホッパーを設ける
(四) 右の各構成から成るフープ材カッター
3(一) 被告は、本件特許権の存続期間中に、イ号物件を製造した(後記のとおりイ号物件の販売については争いがある。)。
(二) 被告は、本件特許権の存続期間中から、ロ号物件及びハ号物件を製造、販売している。
4(一) イ号物件は、本件発明の構成要件(一)、(二)及び(三)のうちの「前記フープ材の送入方向に対向せしめて前記フープ材ガイドホッパーを設ける」との部分をいずれも充足するフープ材カッターである。
(二) ロ号物件及びハ号物件は、本件発明の構成要件(一)及び(三)のうちの「前記フープ材の送入方向に対向せしめて前記フープ材ガイドホッパーを設ける」との部分をいずれも充足するフープ材カッターである。
二 争点
1 本件特許権侵害の成否
(一) イ号物件、ロ号物件及びハ号物件が、構成要件(三)のうちの「当該動刃の切断作用方向の前端に位置せしめ、前記フープ材ガイドホッパーを設ける」との部分を充足するか。
(二) ロ号物件及びハ号物件が、構成要件(二)を充足するか。
2 イ号物件の販売
3 原告の損害
三 争点に関する当事者の主張
1 争点1(一)(イ号物件、ロ号物件及びハ号物件における構成要件(三)の充足性)について
(一) 原告の主張
本件発明の明細書(以下「本件明細書」という。)の発明の詳細な説明における「フープ材の送り込み方向を、動刃10の進行乃至は偏心揺動方向と逆向する方向からカッターへ供給すれば、フープ材に対する動刃10の切断作用による引き込み作用は排除できる」(本件公報三欄一六行目ないし二〇行目)との記載から解釈すると、構成要件(三)は、「動刃の切断作用方向の前端側に位置せしめ、かつ、フープ材の送入方向に対向せしめてフープ材ガイドホッパーを設ける」ことを意味するものと解するのが妥当である。
イ号物件、ロ号物件及びハ号物件ではいずれも、フープ材ガイドホッパーは、動刃の切断作用方向の前端側にあるから、構成要件(三)を充足する。
(二) 被告の主張
構成要件(三)のうちの「当該動刃の切断作用方向の前端に位置せしめ、前記フープ材ガイドホッパーを設ける」との要件は、フープ材ガイドホッパーが、「動刃の前端」に、しかも動刃の端がいくつか観念しうるので、端の中でも「切断作用方向の前端」に位置せしめることを意味するものであり、右「前端」とは、まさに動刃の端の一点を意味するものである。
しかして、イ号物件、ロ号物件及びハ号物件ではいずれも、フープ材ガイドホッパーは固定刃に固定されており、「動刃の切断作用方向の前端」に位置せしめられていないから、構成要件(三)を充足しない。
(三) 原告の反論
被告の主張によれば、本件発明の技術的範囲は、フープ材ガイドホッパーを動刃に連動させる構成に限定して解釈することになるが、本件明細書の発明の詳細な説明には、「尚また、本実施例の場合、ホッパー部分43及び47は動刃40と連動するよう構成したがために、フープ材の導入をより一層円滑にできる効果を有するものである。」(本件公報四欄二一行目ないし二四行目)との記載があり、右記載における「尚また」あをいは「より一層」の表現からみて、本件発明の技術的範囲は、右構成に限定されるものではないから、被告の主張は失当である。
2 争点1(二)(ロ号物件及びハ号物件における構成要件(二)の充足性)について
(一) 原告の主張
構成要件(二)は、「固定刃に対して動刃を上側に於いて離接せしめるべく配置する」という固定刃と動刃との配置関係を特定したものであるところ、フープ材カッターの配設条件は一様ではなく、各プレスラインによって個々に選択しなければならないのであるから、右の「固定刃と動刃」の関係は、プレスラインにおける配設状態において、右配置関係となり得る構成を備えていれば足りるものである。
この点、ロ号物件及びハ号物件においては、ロ号物件目録及びハ号物件目録の各第5図記載のように、水平状態では、固定刃に対して動刃が下側に於いて離接する配置状態となっているが、ロ号物件及びハ号物件は、固定刃及び動刃を支持するダイプレートを、ロ号物件においては最大三〇度、ハ号物件においては最大四五度傾け得る構成となっており、このようにダイプレートを傾けて配設した使用状態においては、ロ号物件目録及びハ号物件目録の各第6図記載のとおり、動刃が固定刃の上側に配置されることになるから、ロ号物件及びハ号物件は、構成要件(二)を充足する。
(二) 被告の主張
本件明細書の発明の詳細な説明における「しかも当該実施例に示すフープ材カッターによれば、特に固定刃44に対して動刃40を上側に於て離接せしめるべく配置したので、固定刃44に対して動刃40を下側に於て離接せしめるべく配置した場合のフープ材カッターに比較し、両刃40、44によるフープ材切断時に於けるフープ材の引き込み作用をより効果的に防止し得ることができる。」(本件公報四欄七行目ないし一四行目)との記載によれば、構成要件(二)は、動刃を固定刃に対して、フープ材の送入側に設けることにより切断時にフープ材を送入方向に対向して押しながら切断し、フープ材の引き込み作用をより効果的に防止できるようにするための構成として設けられたものであるから、ここで重要なのは、動刃が固定刃に対して、フープ材の送入側にあることである。そして、本件発明においては、フープ材が上部から送入されることを当然の前提としているため、右のような動刃と固定刃の位置関係が「固定刃に対して動刃を上側に於いて離接せしめるべく配置する」とされたものである。
したがって、フープ材が上部から送入される限り、動刃が固定刃に対して高い位置側にあるか否かによって、構成要件(二)の充足性を判断すればよいが、原告が主張するように、フープ材が横側から送入される場合を想定するとすれば、動刃が固定刃に対して高い位置側にあるかということではなく、動刃が固定刃に対して、フープ材の送入側にあるか否かによって判断しなければならない。
そして、ロ号物件及びハ号物件においては、原告が主張するようにダイプレートを傾けた状態を前提にしても、動刃が固定刃に対してフープ材の送入側にないことは明らかであるから、ロ号物件及びハ号物件は、構成要件(二)を充足しない。
(三) 原告の反論
本件発明の特許請求の範囲の記載上、被告主張のように、動刃が固定刃に対してフープ材の送入側にあるとの記載は全くない。
また、被告がその主張の根拠とする本件公報四欄七行目ないし一四行目の記載は、一実施例に関する記載であり、また、「フープ材の引き込み作用をより効果的に防止し得るこどができる」との記載における「より効果的」との表現に照らし、本件発明の構成を限定する趣旨の記載ではない。
3 争点2(イ号物件の販売)について
(一) 原告の主張
被告は、イ号物件について、カタログを配布し、顧客に見積書を送付するなどの販売行為を行った。
(二) 被告の主張
被告は、イ号物件を試作品として一台製造したが、これを販売したことはない。
4 争点3(原告の損害)について
(一) 原告の主張
被告は、被告各物件を、本件特許権を侵害するものであることを知り、又は過失によりこれを知らないで製造、販売した。したがって、被告は原告に対し、被告の右侵害行為により原告の被った損害を賠償すべき義務がある。
そして、原告は、被告の右侵害行為により、本件発明の実施に対し通常受けるべき金銭の額に相当する損害を被ったというべきところ、右通常受けるべき金銭の額は二四〇万円を下らないので、同金額が被告の右侵害行為により原告が被った損害である。
(二) 被告の主張
原告の主張を争う。
第三 当裁判所の判断
一 争点1(一)(イ号物件、ロ号物件及びハ号物件における構成要件(三)の充足性)について
1 構成要件(三)のうち「当該動刃の切断作用方向の前端に位置せしめて、前記フープ材ガイドホッパーを設ける」との要件は、フープ材ガイドホッパーを設ける位置について、「動刃の切断作用方向の前端」とすることを定めた要件であるところ、ここでいう「動刃の切断作用方向の前端」の意義について検討する。
まず、「前端」とは、「前部の一端。まえのはし。」(小学館「国語大辞典」)を意味するところ、ここでいう「端」「はし」という用語は、一般に「物の末の部分。先端。」「中心から遠い、外に近い所。へり。ふち。」(岩波書店「広辞苑第四版」)、「物の末の部分。」「細長い物の末の部分。また、平らな物などの周辺の部分。へり。ふち。さき。」(小学館「国語大辞典」)などと定義付けられるものであり、これらを総合すれば、「端」とは、何らかの「物」又は「場所」において、「末」又は「ふち」に相当する特定の「部位」又は「場所」を意味するものというべきである。そして、このような前提で「動刃の切断作用方向の前端」なる文言を分析すると、「方向」に関して「端」という概念を想定することはできないから、ここでいう「前端」とは、「動刃」という物における「前端」すなわち前方の端に当たる特定の部位を指すものと解するほかなく、「切断作用方向の」との文言は、「切断作用方向」すなわちフープ材を切断する際に動刃が移動する方向という一つの方向によって「動刃の前端」を特定する趣旨の文言というべきである。
したがって、構成要件(三)においてフープ材ガイドホッパーが設けられるべき位置とされる「動刃の切断作用方向の前端」とは、動刃の端に当たる部位のうち、動刃がフープ材を切断する際に移動する方向側にある部位を意味するものであり、本件公報の第2図に即していえば、動刃40の左端部がこれに相当するものである。
そして、本件発明の実施例においては、フープ材ガイドホッパーは、動刃40の左端部上に設置され、動刃40と連動する構成となっている(本件公報第2図)から、この実施例では、フープ材ガイドホッパーは右の意味での「動刃の切断作用方向の前端」に設けられているということができ、構成要件(三)について、右のような解釈を前提とすれば、本件発明におけるフープ材ガイドホッパーは、必然的に右実施例のようなものにならざるを得ないと考えられる。
なお、原告の前記主張のとおり、本件明細書の発明の詳細な説明の記載の中には、フープ材ガイドホッパーと動刃とが連動する構成が実施例における付加的な構成であることを前提としているとも考え得る表現部分(本件公報四欄二一行目ないし二四行目)のあることが認められる。しかしながら、構成要件(三)に関する前記のような解釈は、本件明細書の特許請求の範囲の文言自体から一義的に導かれる解釈というべきであるから、右のような「発明の詳細な説明」の記載中の一部の表現のみによって、右解釈が左右されるものとはいえない。
2 イ号物件におけるフープ材ガイドホッパーは、固定刃が取り付けられたダイプレートに取り付け板を介して取り付けられ、ロ号物件及びハ号物件におけるフープ材ガイドホッパーは、固定刃が取り付けられたダイプレートの上側部に取り付けられており、いずれも前記のような意味を有する「動刃の切断作用方向の前端」に位置して設けられているとはいえないから、イ号物件、ロ号物件及びハ号物件は、いずれも本件発明の構成要件(三)を充足しない。
二 争点1(二)(ロ号物件及びハ号物件における構成要件(二)の充足性)について
1 構成要件(二)は、固定刃と動刃とがフープ材の切断に当たって離接する際の両刃の配置関係について、固定刃に対して動刃が「上側」となること定めた要件であるところ、ロ号物件及びハ号物件は、装置を水平に配置し、上方からフープ材を送入するという状態(ロ号物件目録及びハ号物件目録の各第5図記載の状態)を前提とする限り、動刃と固定刃とが離接する際に、動刃が固定刃に対し明らかに下側に配置されることになるから、構成要件(二)を充足しない。
2(一) 原告は、ロ号物件及びハ号物件は、ロ号物件目録及びハ号物件目録の各第6図記載のとおり、装置のダイプレートを傾け得る構成を備えているところ、このように傾けて配設した使用状態を前提とすれば、いずれも動刃が固定刃に対して上側に配置されることになるから、構成要件(二)を充足する旨主張するので、右主張の当否について検討する。
(二) まず、「上側」なる用語は、位置関係を表す相対的な概念であり、原告が主張するように装置自体の配設状態を変えて見れば、動刃と固定刃との上下関係もそれに応じて変わる場合があり得るといえる。したがって、仮に本件発明が、このように装置自体の配設状態を変えることをも想定しているとすれば、「上側」という用語によっては、動刃と固定刃との配置関係を明確に特定することができないのであるから、そのような用語を特許請求の範囲の文言として用いることは考え難いというべきである。
すなわち、本件発明が、その特許請求の範囲において、動刃と固定刃との配置関係につき、あえて「上側」なる用語を用いているのは、本件発明において、装置自体の配設状態を変えることが想定されていないことの証左であると考えられる。
(三) 本件公報によれば、本件明細書の発明の詳細な説明においては、従来技術に関し、装置を水平に配置し上方からフープ材を送入する状態の図が第1図として示され、右図面に基づいた説明がなされていること、実施例に関しても、装置を水平に配置し上方からフープ材を送入する状態の図が第2図として示され、右図面に基づいた説明がなされていること、右第1図及び第2図以外の図面は示されておらず、説明の本文中にも右以外の装置の配置状態に関する記載はないことが認められ、これらによれば、本件発明において想定されている装置の配置状態は、右第1図及び第2図に示された状態であると考えるのが自然である。
(四)(1) さらに、本件発明において構成要件(二)のような動刃と固定刃との配置関係に関する構成が設けられた技術的意義について考察するに、本件明細書の発明の詳細な説明における「しかも当該実施例に示すフープ材カッターによれば、特に固定刃44に対して動刃40を上側に於て離接せしめるべく配置したので、固定刃44に対して動刃40を下側に於て離接せしめるべく配置した場合のフープ材カッターに比較し、両刃40、44によるフープ材切断時に於けるフープ材の引き込み作用をより効果的に防止し得ることができる。」(本件公報四欄七行目ないし一四行目)との記載によれば、構成要件(二)の技術的意義は、動刃を固定刃に対してフープ材の進行方向側に配置した場合には、フープ材の切断時における動刃の動きによってフープ材を引き込む作用が働くことになるため、これとは逆に動刃を固定刃に対してフープ材が送入される側に配置することによって、フープ材の切断時に動刃がフープ材をその送入方向に対して押し上げるように作用して切断が行われるようにし、前記のようなフープ材の引込みを防止することにあると考えられる。
そうすると、右技術的意義との関係において、動刃と固定刃との配置関係に関して重要となるのは、動刃が固定刃に対してフープ材が送入される側に存在することであるはずである。ところが、本件発明の特許請求の範囲は、両刃の配置関係について、単に「固定刃に対し動刃を上側において離接せしめるべく配置する」としているのであり、これは、本件発明において、装置が水平に配置され、フープ材が上方から送入される状態がその前提とされているからにほかならないというべきである。
(2) 原告は、前記本件公報四欄七行目ないし一四行目の記載に関し、一実施例における付加的な構成に関する記載にすぎず、本件発明の構成を限定する趣旨の記載ではない旨主張するが、本件明細書の発明の詳細な説明においては、右記載以外に構成要件(二)の技術的意義について説明する記載がないこと、特許請求の範囲における構成要件(二)の文言がほぼ右記載中の文言どおりとなっていること、右実施例は本件発明における唯一の実施例であり、本件発明に関する説明全体が右実施例図面に基づいてなされていることの各事情を考慮すると、前記本件公報四欄七行目ないし一四行目の記載は、単に一実施例における付加的な構成を説明したものではなく、本件発明において構成要件(二)が設けられた技術的意義を、便宜上実施例の図面に依拠して説明したものと解するのが相当であるから、本件発明の技術的範囲の解釈において、右記載内容を考慮するのは何ら不当ではない。
(五) 以上の(二)ないし(四)で述べた事情を総合すると、本件発明においては、装置全体を水平に配置し、上方からフープ材を送入する状態を当然の前提としており、それ以外の配置状態は想定されていないというべきであり、このような前提の下で、動刃と固定刃との配置関係に関する構成が構成要件(二)のように「上側」なる文言によって表現されているというべきであるから、被告各物件が構成要件(二)を充足するか否かを判断するに当たっても、右のような装置の配置状態を前提とした対比を行うべきであり、原告が主張するように、装置を傾けて配設した使用状態を前提とすべきものではない。
そして、このような装置の配置状態を前提とする限り、ロ号物件及びハ号物件が構成要件(二)を充足しないことは前記1のとおりである。
3 したがって、ロ号物件及びハ号物件は、いずれも本件発明の構成要件(二)を充足しない。
三 結論
以上によれば、イ号物件は構成要件(三)を、ロ号物件及びハ号物件は構成要件(二)及び(三)をそれぞれ充足せず、被告各物件はいずれも本件発明の技術的範囲に属しないから、本訴請求は理由がない。
よって、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 森義之 裁判官 榎戸道也 裁判官 大西勝滋)
イ号物件目録
別紙図面およびイ号物件説明書に示すフープ材カッター
「VECTOR HOOP CUTTER MODEL GRA」
イ号物件説明書
一 別紙図面の説明
第一図は「VECTOR HOOP CUTTER MODEL GRA」の斜視図である。
第二図は同平面図である。
第三図は同正面図である。
第四図は同要部の断面図である。
第五図は第四図A部分の拡大図で、フープ材の切断前におけるガイドホッパー、動刃及び固定刃の位置関係を示すものである。
第六図は同切断後におけるガイドホッパー、動刃及び固定刃の位置関係を示す拡大図である。
二 フープ材カッターの構成
(1) フープ材カッター11は、キャスター13a.14aを備える左右両側枠13、14とこの左右両側枠13、14間に、支軸15および左右両側枠13、14のガイド溝19にガイドされるガイドピン17を介して、回動自在に取付けられたダイプレート10によって構成される架台12のダイプレート10に取付けられている。
そして、フープ材カッター11の固定刃1は、前記架台12のダイプレート10の前端側10aの下側に固定されるとともに可動刃2は、前記ダイプレート10と、このダイプレート10の下側に取付けた支持プレート16間に揺動自在に保持される揺動プレート7の前端7aに固定されている。又、前記可動刃2の揺動プレート7は、前記ダイプレート10の上側に架設されたモーター3の回転軸5に、偏心カム6を介して連結されている。
さらに、前記ダイプレート10には、前記固定刃1が取り付けられたダイプレート10にガイドホッパー4を取り付け板4aを介して取り付けられている。
尚、第五図及び第六図は第四図にAで示す部分を拡大して、フープ材9の切断前と切断後のガイドホッパー4、固定刃1及び動刃2の位置関係を示すものである。
第1図
<省略>
第2図
<省略>
第3図
<省略>
第4図
<省略>
第5図
<省略>
第6図
<省略>
ロ号物件目録
別紙図面およびロ号物件説明書に示すフープ材カッター
「VECTOR HOOP CUTTER MODEL GRA」
ロ号物件説明書
一. 別紙図面の説明
第一図は「VECTOR HOOP CUTTER MODEL GRA」の斜視図である。
第二図は同平面図である。
第三図は同正面図である。
第四図は同側面図である。
第五図は同要部の断面図である。
第六図はフープ材投入口を30度に角度調節した状態の断面図である。
二. フープ材カッターの構成
(1) フープ材カッター11は、キャスター13a、14aを備える左右両側枠13、14とこの左右両側枠13、14間に、支軸15および左右両側枠13、14のガイド溝19にガイドされるガイドピン17を介して、回動自在に取付けられたダイプレート10によって構成される架台12のダイプレート10に取付けられている。
そして、フープ材カッター11の固定刃1は、前記架台12のダイプレート10の前端側10aの下側に固定されるとともに可動刃2は、前記ダイプレート10と、このダイプレート10の下側に取付けた支持プレート16間に揺動自在に保持される揺動プレート7の前端7aに固定されている。又、前記可動刃2の揺動プレート7は、前記ダイプレート10の上側に架設されたモーター3の回転軸5に、偏心カム6を介して連結されている。
さらに、前記ダイプレート10の上側部には、前記固定刃1に対して可動刃2が離接する上側に位置せしめて開口された、フープ材9の打入口10bに位置せしめて、フープ材9のガイドホッパー4が取付けられている。
第1図
<省略>
第2図
<省略>
第3図
<省略>
第4図
<省略>
第5図
<省略>
第6図
<省略>
ハ号物件目録
別紙図面およびハ号物件説明書に示すフープ材カッター
「VECTOR HOOP CUTTER MODEL GRA」
ハ号物件説明書
一. 別紙図面の説明
第一図は「VECTOR HOOP CUTTER MODEL GRA」の斜視図である。
第二図は同平面図である。
第三図は同正面図である。
第四図は同側面図である。
第五図は同要部の断面図である。
第六図はフープ材投入口を45度に角度調節した状態の断面図である。
二. フープ材カッターの構成
(1) フープ材カッター11は、キャスター13a、14aを備える左右両側枠13、14とこの左右両側枠13、14間に、支軸15および左右両側枠13、14のガイド溝19にガイドされるガイドピン17を介して、回動自在に取付けられたダイプレート10によって構成される架台12のダイプレート10に取付けられている。
そして、フープ材カッター11の固定刃1は、前記架台12のダイプレート10の前端側10aの下側に固定されるとともに可動刃2は、前記ダイプレート10と、このダイプレート10の下側に取付けた支持プレート16間に揺動自在に保持される揺動プレート7の前端7aに固定されている。又、前記可動刃2の揺動プレート7は、前記ダイプレート10の上側に架設されたモーター3の回転軸5に、偏心カム6を介して連結されている。
さらに、前記ダイプレート10の上側部には、前記固定刃1に対して可動刃2が離接する上側に位置せしめて開口された、フープ材9の打入口10bに位置せしめて、フープ材9のガイドホッパー4が取付けられている。
第1図
<省略>
第2図
<省略>
第3図
<省略>
第4図
<省略>
第5図
<省略>
第6図
<省略>
<19>日本国特許(JP) <11>特許出願公告
<12>特許公報(B2) 昭57-7846
<51>Int.Cl.3B 23 D 15/04 25/14 識別記号 庁内整理番号 7041-3C 7336-3C <24><44>公告 昭和57年(1982)2月13日
発明の数 1
<54>フープ材カッター
<21>特願 昭52-137384
<22>出願 昭52(1977)11月16日
公開 昭54-71487
<43>昭54(1979)6月8日
<72>発明者 德勝靖治
東京都足立区西新井4-37-9
<71>出願人 徳勝靖治
東京都足立区西新井4-37-9
<74>代理人 弁理士 奈良武
<56>引用文献
実開 昭50-115889(JP、U)
<57>特許請求の範囲
1 固定刃と、この固定刃に対して偏心揺動して離接する動刃と、この動刃を駆動する駆動手段とフープ材ガイドホツパーとから成るフープ材カツターにおいて、固定刃に対し動刃を上側に於て離接せしめるべく配置するとともに当該動刃の切断作用方向の前端に位置せしめ、かつ前記フープ材の送入方向に対向せしめて前記フープ材ガイドホツパーを設けることにより構成したことを特徴とするフープ材カツター。
発明の詳細な説明
本発明はフープ材カツターに係り、特にフープ材に些かも引張り作用を加えないフープ材カツターの提供を目的とし、例えば送りピツチや抜き製品寸法を高精度均一にする必要のある高精度順送プレスやトランスフアプレスなどに併用することにより、多大な効果を発揮し得るフープ材カツターを提供しようとするものである。
従来、プレスによる量産製品の高精度、高品質をはかろうとする場合、プレス金型を高精密に製作するとか、フープ材の送り精度を高めるとか、あるいは高精度なプレス装置を用いるなどの方法がとられていた。
ところが、自動順送り金型などでのスクラツプをストリツプ状のまま、即ちフープ材としてプレス後段工程において細断化していく処理が多用されるようになつた現状では、このスクラツプフープ材のカツターによるフープ材引張り作用が上述したような高精密プレス操業に対し、製品精度均一性の維持や金型損傷防止の上で重要祝されるようになつた。
即ち、カツターによるフープ材への引張り作用をいかに微力化あるいは効果的に防止せしめるかが課題となり、その有効な方法及びフープ材カツターの出現が切望されるところであつた。
本発明は、上記した従来のカツター使用によるスクラツプフープ材への引張り作用を極めて効果的に防止できるフープ材カツターであつて、固定刃と、この固定刃に対し偏心揺動して摺動する動刃と、この動刃を駆動すろ駆動手段と、フープ材ガイドホツパーとから成るカツターを対象として、前記フープ材の送り込み方向を前記動刃に対して逆向させつつカツターに供給し所要の切断処理を極めて効果的に実施し得るところのフープ材カツターに係るものである。
以下、本発明をその実施例により図面を参照しつつ具体的に説明する。
第1図は従来のカツターの全体構成を示し、1は動刃10の駆動手段、例えばフラツト型のモータである。14は固定刃であり、この固定刃14に対し、ラム6に取付けた動刃10は偏心揺動して離接動作をモータ1の作動に伴ない展開していくのである。モータ1の出力は減速機2を介して回動軸3に伝達され、回転軸3には偏心カム8を取付けて、軸受9を介してラム6に連結している。
4はベースフレームであり、回動軸3との間に軸受5を介在している。12はサブフレームであつてラム6はこのサブフレーム12とベースフレーム4との間で偏心揺動される。19は潤滑油の供給に供するグリースニツプルであり、潤滑油は油孔23を通じて油溝22に達して、ラム6の揺動作用を円滑にする。
固定刃14はベースフレーム4側に取付けてある。
13はホツパー、17はガイドであり、フープ材は矢印A1方向から動刃10、固定刃14へ供給される。
ところが、こうした従来カツターでは、フープ材の送り込み方向が矢印A1の如く、動刃10の揺動方向と同一象眼内にあつて、動刃10と略同一な進行方向をとるが故に、動刃10の切断作用に従つて、フープ材は引き込まれる状態となり、高精密なプレス工程では、無視し得ない引張り作用がフープ材に加えられて、この種工程め支障となつていた。
そこで、本発明者はフープ材の送り込み方向を動刃10の進行乃至は偏心揺動方向と逆向する方向からカツターへ供給すれば、フープ材に対する動刃10の切断作用による引込み作用は排除できることを知見したのである。
第2図は、本発明フープ材カツターの1実施例であつて、31は動刃40の駆動装置、32は変速機、33は回動駆動軸、38は軸33に取付けた偏心カム、35、39は軸受、34はベースフレーム、42はサブフレームである。49はラム36の両面に所要のグリースを供給するに供されるグリースニツプルであり、油孔50を通じ、グリースは油溝51へ流れ込み、ラム36の偏心揺動を円滑にする。固定刃44はボルト45などの適当な固定手段によりサブフレーム42側にスペーサ48を介して固定されている。55は固定刃取付け台である。
43はホツパー、47はガイドであり、所要のスクラツプフープ材に矢印A2方向、即ち動刃40の切断作用方向に対して逆向させつつ固定刃44と動刃40に送入供給されることになり、動刃40、固定刃44の切断作用時は、逆に押し戻される状態を呈し、動刃40の揺動進行に従属するような引き込み作用をフープ材が受けることが全くない。換言すれば、フープ材はカツター稼動に伴なう引張り作用を些かも受けず、自動送りプレスや金型の本来の精度を充分に生かすことができカツター併用時でのフープ材送りピツチを不均一にすることを防止でき、勢いプレス作業等の本来の作業を極めて適切に実施することができるものである。
しかも当該実施例に示すフープ材カツターによれば、特に固定刃44に対して動刃40を上側に於て離接せしめるべく配置したので、固定刃44に対して動刃40を下側に於て離接せしめるべく配置した場合のフープ材カツターに比較し、両刃40、44によるフープ材切断時に於けるフープ材の引き込み作用をより効果的に防止し得ることができる。
しかも、またフープ材ガイドホツパー43を動刃40の切断作用方向の前端に位置せしめ、かつ前記フープ材の送入方向に対向せしめて設置したので、動刃40の切断作用方向に対して逆向方向からのフープ材の両刃40、44間への送入を適確化することができる。
尚また、本実施例の場合、ホツパー部分43及び47は動刃40と連動するよう構成したがために、フープ材の導入をより一層円滑にできる効果を有するものである。
以上説明したように本発明のフープ材カツターによれば、所要のフープ材に何等の引張り作用を加えることがないため、高精度な製品、高均一な量産製品を生産する自動精密プレス操業に対してカツターの併用をより一層進展することができる利点と更にプレス操業を高精密のうちに、高能率に実施させうる効果が大きいなど、この種プレス操業に与える利便さ、コスト引下げ、高品質製品の産出への貢献は計り知れないものがある。
図面の簡単な説明
第1図は従来のスクラツプフープ材カツターの断面図、第2図は本発明フープ材カツターの一実施例を示す断面図である。
図中、44は固定刃、40は動刃、31は動刃を駆動する装置、43、47はフープ材のガイドホツパーである。
第1図
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第2図
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特許公報
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