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東京地方裁判所 平成7年(ワ)6900号 判決 1998年9月30日

京都市南区上鳥羽南塔ノ本町一二番地

原告

株式会社南部電機製作所

右代表者代表取締役

南部邦男

右訴訟代理人弁護士

藤本博光

鈴木正勇

岡山県津山市河面三七五番地

被告

共和機械株式会社

右代表者代表取締役

友末誠夫

右訴訟代理人弁護士

岡田春夫

小池眞一

右補佐人弁理士

北村修

橋本薫

主文

一  原告の請求をいずれも棄却する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

第一  請求

一  被告は、別紙物件目録記載の物件及び同物件を含む鶏卵自動包装装置を製造し、販売してはならない。

二  被告は、その占有する別紙物件目録記載の物件を廃棄せよ。

三  被告は、原告に対し、金二億四〇〇〇万円及びこれに対する平成七年四月一八日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第二  事案の概要

一  争いのない事実

1  原告は、次の特許権(以下「本件特許権」といい、その特許発明を「本件特許発明」という。)を有している。

特許番号 第一七九九四九三号

発明の名称 物品の選別装置

出願日 昭和五九年二月三日

公告日 平成五年一月二八日(平五-七〇七二)

登録日 平成五年一一月一二日

特許請求の範囲 別紙特許公報の特許請求の範囲第1項及び第2項記載のとおり。

2  本件特許発明の構成要件を分説すると、次のようになる。

(一)A 複数の物品を予め定めた移送路に沿って移送する手段と、

B 前記移送路の予め定めた区域内の所望位置に移動配置可能な特定波長光の発光手段と、

C 前記予め定めた区域内における前記物品のうち特定された物品の位置を前記発光手段からの光によって認識する手段と、

D 前記発光手段の発光時点における前記特定物品の位置に対応する位置座標信号を発生する手段と、

E 前記移送手段による物品の移送速度を検出し対応する速度信号を発生する手段と、

F 前記位置座標信号を前記移送速度信号によって補正することにより、前記特定物品の前記移送路における現在位置に対応する現在位置座標信号を発生する手段と、

G 前記物品移送手段に関連配備された物品選別手段と、

H 前記現在位置座標信号に基づいて前記物品選別手段をして前記特定物品を選別すべく動作させる手段と、

I からなることを特徴とする物品の選別装置。

(二)J 前記物品選別手段が特定物品を前記物品移送手段から除去する手段である

右(一)の物品の選別装置。

3  被告は、平成五年二月以降において、別紙物件目録記載の物件(以下「イ号物件」という。)を、製造、販売している。

4  イ号物件の構成上の特徴を分説すると、次のようになる。

a 複数の卵2を検知区域Rから、パッキングステーション及び不良卵回収ステーション8aまでの移送路に沿って移送する、コンベア1及び分配コンベアライン20とを備え、

b 前記コンベア1上のカメラ4の視野に対応する、検知区域R内の所望位置に移動可能で、発光部3aから赤外光を発光するスポットセンサー3を備え、前記スポットセンサー3は、スイッチの押圧により赤外光を発光し、

c リモコン受信機15は発光部3aからの光を検出し、検知区域Rにおける卵2のうち、特定された不良卵2'に前記スポットセンサー3の発光部3aから赤外光を発光させて、その赤外光により不良卵2'の位置をカメラ4に認識させ、

d 前記発光部3aからの赤外光により認識した、不良卵2'の発光時点における位置は、カメラ4からカメラ制御ユニット5を経て制御ユニット7内のマイクロコンピュータに送られ、このマイクロコンピュータは、前記発光時点における、不良卵2'の前記コンベア1上における位置座標を検出する手段を備え、

e この位置座標が検出された時点で、不良卵回収ステーション8aまでの距離情報は、前記分配コンベアライン20及び前記コンベア1と連動して回動するエンコーダ6から発生するパルスのカウント値として設定され、右設定カウント値からその時のコンベアラインでの移送速度に適応した目標地点と放出地点の距離差を、制御ユニット7内の記憶装置に予め用意され、記憶されたエンコーダ6から発生するパルス数に対応したエンコーダカウント値Aで減ずることによって、右設定カウント値が補正され、

f このカウント値は、前記コンベア1及び前記分配コンベアライン20の移動にともなって前記エンコーダ6から発生するパルスをカウントすることによって、一ずつ減算され、

g 前記コンベア1で移送されてくる前記不良卵2'を分配コンベアライン20にのせた後、同ラインから開放して受皿9に置き、同受皿9から容器16に放出する機構を有する不良卵除去装置8を備え、

h 前記カウント値がゼロになったときに、前記分配コンベアライン20上の前記不良卵2'を放出する

i ことを特徴とする卵の選別装置

二  本件は、原告が、被告に対し、本件特許権に基づいてイ号物件及び同物件を含む鶏卵自動包装装置を製造し、販売することの差止め並びにイ号物件の廃棄を求めるとともに、不法行為による損害賠償として、二億四〇〇〇万円及びこれに対する平成七年四月一八日から支払済みまで年五分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案であり、争点は、イ号物件が本件特許発明の技術的範囲に属するかどうかということと原告の損害である。

三  イ号物件が本件特許発明の技術的範囲に属するかどうかに関する当事者の主張

1  原告の主張

本件特許発明とイ号物件を比較すると、次のとおり、イ号物件は、本件特許発明のすべての構成要件を充足し、本件特許発明の技術的範囲に属する。

(一) aは、「複数の物品を予め定めた移送路に沿って移送する手段」であるから、Aとaは同一である。

(二) Bの「移動配置可能な特定波長光の発光手段」には、bにおける移動可能な赤外光(特定波長光である)を発光するスポットセンサー3が含まれるので、Bとbは同一である。

(三) cにおいては、特定された不良卵2'に右スポットセンサー3の発光部3aから赤外光を発光させて、その赤外光により不良卵2'の位置をカメラ4に認識させるから、「特定された物品の位置を前記発光手段からの光によって認識する」ことに当たる。したがって、Cとcは同一である。

(四) dの制御ユニット7内のマイクロコンピュータは物品の位置座標信号を発するから、Dとdは同一である。

(五) eの分配コンベアライン20及びコンベア1と連動して回動するエンコーダ6がパルスを発するということは、次のとおり「前記移送手段による物品の移送速度を検出し対応する速度信号を発生する手段」に当たるから、Eとeは同一である。

(1) Eの「速度信号」について、本件特許発明においては何らの限定もないから、速度情報を含むものであれば足り、速度信号が具体的に数値化されている必要はない。

(2) eのエンコーダ6から発せられるパルスについて検討するに、エンコーダ6から一パルスが発せられるということは、一パルスが発せられる時間において、一パルス分の距離だけ分配コンベアライン20が移動したということを意味するから、エンコーダ6がパルスを発するということは、単なる距離情報だけでなく、時間情報をも含んでいる。そして、速度は、時間と距離の関係において示されるものであるから、エンコーダ6から発せられるパルスは、速度情報を含んでいるといえる。

特に、イ号物件における放出地点までの距離は、単純な距離ではなく、不良卵2'がある特定の速度で移動して到達することを予定した距離であり、ある特定の速度で右距離を移動したことを確認し、目標地点に不良卵2'を放出できるようにするために、エンコーダ6から発生するパルスのカウント値が設定されているから、エンコーダ6から発せられるパルスは、速度情報を含んでいるといえる。

(3) したがって、eのエンコーダ6から発せられるパルスは、Eの「速度信号」に当たるというべきであり、パルスを発することは、Eの「前記移送手段による物品の移送速度を検出し対応する速度信号を発生する手段」に当たる。

(六) fは、次のとおり、「前記位置座標信号を前記移送速度信号によって補正することにより、前記特定物品の前記移送路における現在位置に対応する現在位置座標信号を発生する手段」に相当するから、Fとfは同一である。

(1) Fの「補正」とは、移送速度信号により、物品が特定された地点の位置座標から移動した距離を求め、それにより現在位置を算出することである。

(2) fのエンコーダ6から発生するパルスは、右のとおり移送速度信号であるところ、これをカウントすることは、エンコーダ6からパルスが発せられた時に、前のパルスが発せられた時から不良卵2'がある距離を移動したということを意味するので、各カウント時点において、不良卵2'が前のカウント時から右距離だけそれぞれ移動したということであり、右カウントした数字の合計は、不良卵2'として特定された位置座標から移動した距離に相当し、右カウント数の合計は、不良卵2'の現在位置を示している。もっとも、イ号物件においては、右カウントを加算するという構成をとらず、カウント値からカウント数を減算するという構成を取っているが、実際に数をカウントするという点では同様であり、そのカウント数は不良卵2'が特定された地点の位置座標から移動した距離を示すものであることに変わりはない。

(3) したがって、コンベア1及び分配コンベアライン20の移動にともなってエンコーダ6から発生するパルスをカウントし、それが一つずつ減算されるということは、前記位置座標信号を前記移送速度信号によって補正することにより、前記特定物品の前記移送路における現在位置に対応する現在位置座標信号を発生するということを意味している。

(七) gは、「前記物品移送手段に関連配備された物品選別手段」であり、「特定物品を前記物品移送手段から除去する手段」であるから、Gとg、Jとgは同一である。

(八) hにおいては、カウント値が0になったときに、分配コンベアライン20上の放出地点に位置している不良卵2'を放出するのであるが、その「カウント値が0になった」との信号は、現在位置に対応する現在位置座標信号に他ならないというべきである。したがって、Hとhは同一である。

(九) Iとiは同一である。

2  被告の主張

(一) 構成要件B、C、Gについて

原告は、本件特許権の出願経過において、実開昭五八-三一〇八五号と本件特許発明との違いを説明する際に、「本発明は・・・移送路の下流において、前記測定区域と合同な選別区域内において、前記認識した位置に対応する位置座標を決定し、その位置において前記特定物品を選別するものであります。」と主張している。したがって、本件特許発明においては、測定区域と選別区域が合同、すなわち、重ねると一致することが必須の構成要件となる。

ところが、イ号物件においては、測定区域である検知区域Rが六列×一七であるのに対し、選別区域である不良卵回収ステーション8aは、これを一個設けた場合は一列×五、二個設けた場合は一列×一〇である。このように、イ号物件は、合同な測定区域と選別区域がないので、それがあることを前提とした構成要件B、C、Gを充足しない。

(二) 構成要件E、F、Hについて

イ号物件では、不良卵2'の位置座標信号が検出されて、不良卵2'の位置座標が特定されれば、自動的に不良卵2'を選別位置まで移送すべき距離が決まるから、それによってエンコーダのカウント値が設定されるのであり、移送速度を検出して、設定されるものではない。そして、設定後は、選別位置まで右カウント値を一つずつ減算していき、カウント値が0になったときに、不良卵2'を放出するのであって、そこでも移送速度が検出されることはない。したがって、イ号物件には、「前記移送手段による物品の移送速度を検出し対応する速度信号を発生する手段」がないから、構成要件Eを充足しない。

イ号物件には、右のとおり物品の移送速度を検出し対応する速度信号を発生する手段がないから、それによって位置座標信号を補正して、現在位置座標信号を発生することはない。したがって、イ号物件は、構成要件Fを充足しない。

イ号物件は、右のとおり現在位置座標信号を発生することはないから、それに基づいて不良卵を選別することもない。したがって、イ号物件は、構成要件Hを充足しない。

四  原告の損害に関する当事者の主張

1  原告の主張

被告は、イ号物件を、平成五年二月から現在まで少なくとも六〇台販売しているところ、イ号物件の販売価格は一台当たり少なくとも五〇〇万円であり、被告は、一台につき少なくとも二〇〇万円の利益を得ているから、被告がイ号物件の販売によって得た利益の額は一億二〇〇〇万円を下らない。これは、原告が本件特許権侵害行為によって被った損害額と推定される。

2  被告の主張

原告の主張を争う。

第三  当裁判所の判断

一  イ号物件が構成要件Eを充足するかどうかについて判断する。

1(一)  証拠(甲一の一)によると、本件特許発明の実施例について、公報の「発明の詳細な説明」には、「コンベア移送速度検出器4はコンベア1の走行中は常時走行速度(卵の移送速度)を検出し、対応する移送速度信号をマイクロコンピュータ20に与える。マイクロコンピュータ20は上記ビデオセンサー7の検知動作時の位置座標信号をこの移送速度信号によって常に補正し、特定卵2'の現在位置の座標に対応する現在位置座標信号を出力して不良卵除去装置6の制御用マイクロコンピュータ30に伝送する。」(五欄二五ないし三三行目)との記載があることが認められる。

(二)  構成要件Eの「前記移送手段による物品の移送速度を検出し対応する速度信号を発生する手段」は、その文言及び右(一)認定の実施例の記載からすると、物品の移送速度を検出する手段(右実施例ではコンベア移送速度検出器4)が存し、それによって検出された速度に基づいて速度信号を発生するという構成であると認められる。

2  前記第二の一4の事実に証拠(乙一一ないし二一、検乙一ないし四)と弁論の全趣旨を総合すると、イ号物件について、次の事実が認められる。

(一) イ号物件の動作の概要は次のとおりである。

(1) まず、コンベア1の検知区域Rにおいて、卵2のうち特定された不良卵2'にスポットセンサー3の発光部3aから赤外光を発光させて、その赤外光により不良卵2'の位置をカメラ4に認識させる。卵2は、コンベア1の進行方向に対して直角方向に六個ずつ並べて載置される。

(2) 卵2は、コンベア1によって、重量計量部10まで運ばれ、重量計量部10に到達した卵2は、コンベア1の進行方向に対して直角方向に並んだ六個ずつが、トランスファー部を経て、分配コンベアライン20上の容器に載せられて、不良卵回収ステーション8aまで運ばれる。そして、不良卵回収ステーション8aを構成する五個の不良卵除去装置8の内の一つの装置によって除去され、除去された不良卵2'は、受皿9に放出された後、容器16に収容される。

(3) 分配コンベアライン20は、移動しているので、不良卵除去装置8は、受皿9よりも手前の地点で、不良卵2'を除去して受皿9に放出する必要がある。そこで、不良卵除去装置8等をマザーボードと呼ばれる一枚の金属板に取り付け、これを動かすことによって、不良卵除去装置8が受皿9よりも手前に来るようにしている。

(4) 装置の立ち上げ及び立ち下げの際における速度変化を除いては、コンベア1及び分配コンベアライン20の速度が、動作中に変化することはなく、予め定められた一定の速度を保っている。

(二) 右(一)の動作における距離情報等に関する制御の方法は、次のとおりである。

(1) 発光部3aからの赤外光により認識された、不良卵2'の発光時点における位置は、カメラ4からカメラ制御ユニット5に送られ、位置情報に変換される。この位置情報は、発光時点における不良卵2'の位置から重量計量部10までの間の進行方向と平行な方向における距離の情報X1と進行方向に対して直角方向に並んでいる六個のバケットのいずれに不良卵2'が入っているかという情報(以下「横情報」という。)とからなる。X1は、エンコーダ6からコンベア1が一定距離進むごとに発生するパルスのカウント値として設定される。このカウント値は、エンコーダ6からパルスが発生するごとに減算されていき、不良卵2'が重量計量部10に到達すると、ゼロになる。

(2) 右(1)のX1のカウント値がゼロになった後に初めて発せられる原点パルス信号(エンコーダ6が一回転するたびに発する特殊なパルス信号)がエンコーダ6から発せられると、不良卵2'の横情報が制御ユニット7に送られる。この情報が送られてくると、制御ユニット7は、不良卵回収ステーション8aを構成する五個の不良卵除去装置8の内の一つの装置を、当該不良卵2'を除去する装置として割り当てる。不良卵除去装置8は、分配コンベアライン20の下流側に位置している装置から順に割り当てられる。

(3) 制御ユニット7は、横情報とどの不良卵除去装置8が割り当てられたかという情報に基づいて、分配コンベアライン20の進行方向と平行な方向における不良卵除去装置8までの距離の情報X2を算出し、この情報は、エンコーダ6から分配コンベアライン20が一定距離進むごとに発生するパルスのカウント値として設定される。右(1)のX1のカウント値がゼロになった後に二回目に発せられる原点パルス信号がエンコーダ6から発せられた時点から、X2のカウント値の減算が開始される。

(4) 右(一)(3)のとおり、不良卵除去装置8は、受皿9よりも手前の地点で、不良卵2'を除去して受皿9に放出する必要があるので、不良卵除去装置8と受皿9との距離差が、右(一)(4)の予め定められた速度に対応する、エンコーダ6から発生するパルスのカウント値(エンコーダカウント値A)として予め設定されており、右設定カウント値X2は、それからエンコーダカウント値Aを減ずることによって補正される。そして、補正されたカウント値は、不良卵2'が不良卵除去装置8に到達するとゼロになり、そうすると、不良卵2'が不良卵除去装置8によって除去され、受皿9に放出される。

(5) 装置の立ち上げ及び立ち下げの際における「加速時間」と「減速時間」をユーザーが入力することができるようになっており、それに基づいて装置の立ち上げ及び立ち下げの際におけるエンコーダカウント値Aが設定される。それによって、エンコーダカウント値Aは、装置の立ち上げ及び立ち下げの際における速度変化に対応することができるようになっている。

(三) 本訴の対象となっている平成五年二月以降に製造、販売されたイ号物件は、すべて右(一)、(二)のようなものである。

3  右1、2に基づきイ号物件が構成要件Eを充足するかどうかについて判断する。

(一) イ号物件においては、X1は、発光時点における不良卵2'の位置から重量計量部10までの間の距離の情報として、エンコーダ6から発せられるパルスのカウント値として設定され、コンベア1が一定距離進んでパルスが発生するごとに、右カウント値は減らされていき、それがゼロになった時点で、重量計量部への到達と判定される。また、X2は、X1の右カウント値がゼロになった後に二回目に発せられる原点パルス信号がエンコーダ6から発せられた時点における不良卵2'の位置から不良卵除去装置8までの距離の情報として、エンコーダ6から発せられるパルスのカウント値として設定され、分配コンベアライン20が一定距離進んでパルスが発生するごとに、右カウント値は減らされていき、それがゼロになった時点で、不良卵除去装置への到達と判定される。

以上の過程に、イ号物件のコンベア1や分配コンベアライン20の速度を検出する手段は存せず、物品の移送速度が検出されることはないから、イ号物件において、構成要件Eの「前記移送手段による物品の移送速度を検出し対応する速度信号を発生する手段」の存在を認めることはできない。

もっとも、エンコーダ6から発せられるパルスは、コンベア1又は分配コンベアライン20の移送速度に比例したタイミングで送られるものであるから、それは、コンベア1や分配コンベアライン20の移送速度とは無関係ではないが、物品の移送速度が検出されていない以上、構成要件Eを充足するということはできない。

(二) イ号物件においては、不良卵除去装置8と受皿9との距離差が、エンコーダ6から発生するパルスのカウント値(エンコーダカウント値A)として設定されているが、右2認定の事実に証拠(乙一一)と弁論の全趣旨を総合すると、イ号物件においては、装置の立ち上げ及び立ち下げの際における速度変化を除いては、コンベア1及び分配コンベアライン20の速度が動作中に変化することはなく、エンコーダカウント値Aは、その速度に対応した数値として予め設定されており、物品の移送速度を検出して設定されるものではないと認められる。

また、エンコーダカウント値Aは、装置の立ち上げ及び立ち下げの際における速度変化に対応することができるようになっているが、右2認定の事実に証拠(乙一一)と弁論の全趣旨を総合すると、イ号物件においては、装置の立ち上げ及び立ち下げの際においては、「加速時間」と「減速時間」をユーザーが入力し、それに基づいてエンコーダカウント値Aが設定されるようになっており、装置の立ち上げ及び立ち下げの際においても、エンコーダカウント値Aは、物品の移送速度を検出して設定されるものではないと認められる。

以上のとおり、エンコーダカウント値Aの設定においても、物品の移送速度が検出されていない以上、構成要件Eを充足するという余地はない。

(三) その他、イ号物件が構成要件Eを充足するというべき事情は認められない。

二  よって、本訴請求は、その余の点について判断するまでもなく理由がないから、棄却することとし、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 森義之 裁判官 榎戸道也 裁判官 大西勝滋)

物件目録

添付した図面1'、2'、3'、4、5'、9、11及び12に示されるように、複数の卵2を検知区域Rから、パッキングステーション及び不良卵回収ステーション8aまでの移送路に沿って移送する、コンベア1及び分配コンベアライン20とを備える。

前記コンベア1上のカメラ4の視野に対応する、検知区域R内の所望位置に移動配置可能で、発光部3aから赤外光を発光するスポットセンサー3を備える。

前記スポットセンサー3は、スイッチの押圧により赤外光を発光する。

リモコン受信機15は発光部3aからの光を検出する。

検知区域R内における卵2のうち、特定された不良卵2'に前記スポットセンサー3の発光部3aから赤外光を発光させて、その赤外光により不良卵2'の位置をカメラ4に認識させる。

前記発光部3aからの赤外光により認識した、不良卵2'の発光時点における位置は、カメラ4からカメラ制御ユニット5を経て制御ユニット7内のマイクロコンピュータに送られる。

このマイクロコンピュータは、前記発光時点における、不良卵2'の前記コンベア1上における位置座標を検出する手段を備える。

この位置座標が検出された時点で、不良卵回収ステーション8aまでの距離情報が設定される。この距離情報は、エンコーダ6から発生するパルスのカウント値として設定される。

前記エンコーダ6は図11、12に示すように、前記分配コンベアライン20と連動して回動をする(なお、前記分配コンベアライン20は、前記コンベア1と連動しており、その結果、前記エンコーダ6は前記コンベア1とも連動している。)。

前記設定カウント値は、特定された前記不良卵2'の位置から重量計量部10までの第1カウント値X1(図9の距離L1に該当する。)と前記重量計量部10から不良卵回収ステーション8aまでの第2カウント値X2(図9の距離L2に該当する。)の総計(X1+X2)に相当するものである。

このカウント値(X1+X2)は、前記コンベア1及び前記分配コンベアライン20の移動にともなって前記エンコーダ6から発生するパルスをカウントすることによって、1つずつ減算され、前記カウント値がゼロになったときに、前記分配コンベアライン20上の前記不良卵2'を放出する。但し、不良卵2'は分配コンベアライン20上をある速度でもって移動しているので、放出すべき目標地点(受皿9)よりも手前で放出させる必要がある。その時のコンベアラインでの移送速度に適応した目標地点と放出地点の距離差をエンコーダ6から発生するパルス数に対応したエンコーダカウント値Aで表すと、前記設定カウント値からAの値を減ずることによって前記設定カウント値が補正され、前記カウント値が0となって不良卵が放出される。この放出した位置は、前記不良卵回収ステーション8aになる。

つまり、前記コンベア1で移送されてくる前記不良卵2'を分配コンベアライン20にのせた後、同ラインから開放して受皿9に置き、同受皿9から容器16に放出する機構を有する不良卵除去装置8を備える。

分配コンベアライン20が一定速度Vで動いているときは、エンコーダカウント値Aは一定である。しかし、装置の立ち上げ時及び停止時速度が変化するので、エンコーダカウント値Aをかえる必要があるが、この速度変化に対するAの値は制御ユニット7内の記憶装置に記憶され、その速度に応じたAが与えられる。

なお、分配コンベアライン20の一定速度Vは予め設定された複数速度の中から選択可能となっている装置もあるが、その場合は、予め設定されたそれぞれの速度に対応したテーブルが予め用意され記憶されている。

以上の構成からなることを特徴とする卵の選別装置。

図面1'

<省略>

図面2'

<省略>

図面3'

<省略>

図面4

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図面5'

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図面9

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図面11

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図面12

<省略>

<19>日本国特許庁(JP) <11>特許出願公告

<12>特許公報(B2) 平5-7072

<51>Int.Cl.5B 07 C 7/00 A 01 K 43/00 B 07 C 5/36 識別記号 庁内整理番号 9244-3F 8502-2B 9244-3F <24><44>公告 平成5年(1993)1月28日

発明の数 1

<54>発明の名称 物品の選別装置

<21>特願 昭59-18906 <65>公開 昭60-166072

<22>出願 昭59(1984)2月3日 <43>昭60(1985)8月29日

<72>発明者 南部幸男 京都府京都市南区上鳥羽南塔ノ本町12番地 株式会社南部電機製作所内

<71>出願人 株式会社南部電機製作 京都府京都市南区上鳥羽南塔ノ本町12番地所

<74>代理人 弁理士 山田豊

審査官 西野健二

早期審査対象出願

<56>参考文献 特開 昭59-37460(JP、A) 実開 昭58-31085(JP、U)

<57>特許請求の範囲

1 複数の物品を予め定めた移送路に沿つて移送する手段と、

前記移送路の予め定めた区域内の所望位置に移動配置可能な特定波長光の発光手段と、

前記予め定めた区域内における前記物品のうち特定された物品の位置を前記発光手段からの光によつて認識する手段と、

前記発光手段の発光時点における前記特定物品の位置に対応する位置座標信号を発生する手段と、

前記移送手段による物品の移送速度を検出し対応する速度信号を発生する手段と、

前記位置座標信号を前記移送速度信号によつて補正することにより前記特定物品の前記移送路における現在位置に対応する現在位置座標信号を発生する手段と、

前記物品移送手段に関連配備された物品選別手段と、

前記現在位置座標信号に基づいて前記物品選別手段をして前記特定物品を選別すべく動作させる手段と、

からなることを特徴とする物品の選別装置。

2 前記前記物品選別手段が特定物品を前記物品移送手段から除去する手段である特請求の範囲第1項に記載の物品の選別装置。

3 前記物品選別手段が前記特定物品に印を付ける手段である特許請求の範囲第1項に記載の物品の選別装置。

発明の詳細な説明

本発明は物品の選別装置に関するものである。

例えば鶏卵を市場へ流通させるために、生産場所から集められた卵は通常洗浄、乾燥され、重量選別の上、包装されるが、その過程で汚卵、ひび割れ卵、血卵等の不良卵が選別される。不良卵の検知は作業員の目視により、またその除去は手作業により行なわれているが、近年装置の高速化が進む中で目視検査と手作業の組み合わせは高速化に対する大きな障害となるとともに、作業員の疲労による作業能率の低下の原因となつている。

本発明はこの点にかんがみ、不良品の目視検査による特定作業のみを作業員に行なわせ、除去または印付け作業等の選別を自動化することによつて高速化と作業能率の向上を達成した選別装置を提供したものである。

本発明によれば、複数の物品を予め定めた移送路に沿つて一定方向に移送し、この移送路の予め定めた区域を移送されつつある前記複数の物品のうち特定の物品の直上に特定波長の光源を位置付けてこの光源から特定波長の光を一時的に発生させ、この光によつて前記区域内における前記特定物品の特定時点の位置を画像認識手段で認識し、前記特定物品の移送速度と前記区域内の認識位置とから前記移送路上における前記特定物品の現在位置を算定し、この現在位置において前記特定物品を選別する。

この選別は例えば特定物品を移送路から取除いたり、マークを付することによつて行なうことができる。

以下本発明を多数の鶏卵の中から不良卵を選別するのに適用した実施例を図面を参照して説明する。

第1図において、1はコンベヤでその上に載置された検査されるべき多数の卵2をそれぞれ回転させつつ移送する。コンベヤ1は公知のものを使用できるので、具体的構成の詳細は省略する。3はコンベヤ駆動装置、4はコンベヤ走行速度検出器である。

卵2はコンベヤ1上で行列(マトリツクス)を形成して載置されるので、コンベヤ1上で一定の検知区域Rを想定すると、この区域R内のある時点tでの各卵の位置は直角座標によつて規定することができる。

5はコンベヤ1の検知区域Rの下方に配置された照明装置で、少なくとも検知区域R内にある卵を下方より照明する。作業者は照明された卵を目視観察して不良卵を検知する。

6は不良卵位置指示器で、作業者によつて手動操作され先端の発光部6aをコンベヤ1の検知区画R内の不良卵2'上に位置付けてスイツチ6bを操作して発光させる。発光部6aからの光は照明装置5からの光と識別するために波長の異なる光とする。通常照明装置5からの光は可視光の全波長範囲を含むので、位置指示器6の発光部6aからの光は不可視光、例えば赤外線を使用するのが望ましいが、照明装置5からの光が特定波長(または波長範囲)の可視光であれば、発光部6aの光源は他の波長(または波長範囲)の可視光であつてもよい。6cは検知確認表示器で光源6aの発光による不良卵の位置の指示を後述のマイクロコンビユータ20が確認したことを表示するためのものである。

7はコンベヤ1上の少なくとも上記検知区画Rに対応する視野を有するビデオセンサー、8はビデオセンサーの入射光入口に設けたフイルターで、位置指示器6の光源6aの特定波長の光のみを透過させる。従つて、目視検知した不良卵2'上で位置指示器6の発光部6aを発光させることによりビデオセンサー7からの検知信号に基づいてその時点tにおけるその不良卵2'の検知区域R内の位置座標(xa、yb)を特定することができる。

9はコンベヤ1の移送方向Xにおいて検知区域Rよりも下流側でコンベヤ1の側方に設けた不良卵除去装置で、主軸9aと、その昇降機構9bと、主軸9aに対して回動可能に取付られた水平な基アーム9cと、基アーム9cを主軸9aに対して回動させる回動手段9dと、この回動手段に関連配備された第1の回動角度検出器9eと、基アーム9cの先端にこのアーム9cに対して回動可能に連結された水平な先端アーム9fと、基アーム9cに対して先端アーム9fを回動させる回動手段9gと、この回動手段9gに関連配備され基アーム9cに対する先端アーム9fの回動角度を検出する第2の回動角度検出器9hと、先端アーム9fの先端に付設された卵吸着器9iと、この卵吸着器9iに真空を供給する真空ポンプ9jとからなる。

コンベヤ1の移送方向において検知区域Rよりも下流側に対応する不良卵選別区域R'を想定すると、前記時点tにおける検知区域R内の位置座標(xa、yb)の不良卵2'は前記時点tからコンベヤの移送速度に応じた時間経過後の時点t'において、不良卵選別区域R'の対応位置座標(x'a、y'b)に移送されてくる。

不良卵除去装置9の吸着器9jを選別区域R'内のいかなる位置にも位置付けできるように除去装置9を構成配置し、前記時点tからt'までの間に吸着器9iを上記区域R'内の位置座標(x'a、y'b)に移動させることにより、その位置で不良卵を吸着してコンベヤ1上から取り除くことができる。

10はこのようにして取り除かれた不良卵の受皿であり、11はコンベヤ1からの正常卵を次の工程へ移送するコンベヤである。

12は操作ユニツトで後述のマイクロコンビユータを含む制御回路を内蔵するとともに、操作バネル12aには各種操作スイツチ12b、表示器12c等が設けられている。

第2図は操作ユニツト12に内蔵された制御回路のブロツク図で、第1図におけると同一の参照記号は対応する要素を示し、20は画像認識用マイクロコンビユータでCPU、RAM、ROMにより構成され、21はそのインブツトボート、22はアウトブツトボート、30は不良卵除去装置9の制御用マイクロコンビユータでCPU、RAM、ROMにより構成され、31はそのインブツトボート、32はアウトブツトボートである。

以上の構成による動作を説明する。

作業員が指示器6を手に持つてコンベヤ1上の卵を検知区域R内で下方の照明により目視検査して不良卵を発見すると、その卵の直上に光源6aを位置付けてスイツチ6bを押して一時的に発光させる。このスイツチ6bの操作信号に応動してビデオセンサー7が検知動作し、光源6aからの光を検知して対応する信号をマイクロコンビユータ20に与える。マイクロコンビユータ20はこの検知信号に基づいて検知区域R内におけるそのときの光源6a(不良卵)の位置の座標を特定して対応する位置座標信号を発生する。

コンベヤ移送速度検出器4はコンベヤ1の走行中は常時走行速度(卵の移送速度)を検出し、対応する移送速度信号をマイクロコンビユータ20に与える。マイクロコンビユータ20は上記ビデオセンサー7の検知動作時の位置座標信号をこの移送速度信号によつて常に補正し、特定卵2'の現在位置の座標に対応する現在位置座標信号を出力して不良卵除去装置6の制御用マイクロコンビユータ30に伝送する。

制御用マイクロコンビユータ30は上記現在位置座標信号と回動角度検出器9e、9hからの角度信号とに基づいて、不良卵除去装置6の卵吸着器9iを現在位置座標信号の示す前記特定卵の現在位置座標へ移動させ、吸着器を下降させて吸着動作を行なわせ、続いてこれを上昇させ、吸着した卵を受皿10へ移送しそこで吸着を解除させるための制御信号をそれぞれ制御回路23、24、25、26に送つて主軸9aの昇降機構9b、基アーム9cの回動機構9d、先端アーム9fの回動機構9g、真空ポンプ9jを所定のシーケンスに従つて動作させる。

なお、画像認識用マイクロコンビユータ20は指示器6のスイツチ6bの操作信号の発生回数(不良卵の個数)を計数して計数信号を表示器12cの制御回路27に与えて個数を表示させるとともに、不良卵の位置座標信号を特定したことに対応する応答信号を制御回路28に与えて指示器6の指示器6cに表示させる。

以上本発明の図示実施例を説明したが本発明はこれに限定されず種々の変形実施例が可能である。例えば、図示例では不良卵の除去はコンベヤ1上で行なつているが、これをコンベヤ11上で行なうようにしてもよい。また、図示例では不良卵除去装置は1台であるが、これを複数台設けてもよい。また除去装置の具体的構成は図示例に限らない。不良卵を例えば汚卵とひび割れ卵に区別して計数しそれぞれ別の受皿に集めるようにしてもよい。このために指示器6に2個の指示スイツチを設けることができる。

さらに不良卵除去装置の代りにマーカー装置を使用し不良卵に印を付けるようにしてもよい。この場合も汚卵とひび割れ卵には別異の印、例えば異なる形状または(および)色の印を付することができる。複数台のマーカー装置を使用してもよい。指示器も1個に限らず2個またはそれ以上設け両手で使用してもよいし、複数の作業員が使用してもよい。

本発明は卵以外の物品を対象とすることもできる。

以上のように本発明によれば多数の物品から選別されるべき物品の特定のみを簡単な手作業によつて行ない、除去または印付けなどの選別作業を自動化したので、高速化と作業能率の向上が達成される。また物品特定を特定波長による光とこの光による画像認識によつて行なうようにしたので指示器が軽便で移動の自由度が大きく、不使用時においても作業の邪魔にならない場所への収納が可能であり作業上有利である。

図面の簡単な説明

第1図は本発明の一実施例における装置の概略構成を示す斜視図、第2図は制御回路のブロツク図である。

1……コンベヤ、4……コンベヤ走行速度検出器、5……照明装置、6……不良卵位置指示器、7……ビデオセンサー、8……フイルター、9……不良卵除去装置、12……制御ユニツト。

第1図

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第2図

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特許公報

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