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東京地方裁判所 平成7年(特わ)1902号 判決 1995年12月25日

裁判所書記官

釜萢範人

本店所在地

東京都大田区山王一丁目三一番二号

石株式会社

(右代表者代表取締役 石田とき子)

本籍

岐阜県大垣市赤坂町三〇二四番地

住居

東京都大田区山王一丁目三五番一一号

会社役員

石田哲男

昭和一七年六月二一日生

右の者らに対する各法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官沖原史康、弁護人木下貴司、同杉本俊明各出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人石株式会社を罰金三〇〇〇万円に、被告人石田哲男を懲役一年四月にそれぞれ処する。

被告人石田哲男に対し、この裁判の確定した日から三年間右刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人石株式会社(以下「被告会社」という)は、東京都大田区山王一丁目三一番二号に本店を置き、建築用石材工事業等を目的とする資本金一〇〇〇万円(平成四年三月二九日以前は資本金五〇〇万円)の株式会社であり、被告人石田哲男(以下「被告人」という)は、被告会社の代表取締役として、同会社の業務全般を統括していたものであるが、被告人は、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、架空の外注費を計上する等の方法により所得を秘匿した上、

第一  平成三年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が二億七五〇五万六八四四円(別紙1(1)の修正損益計算書参照)であったにもかかわらず、平成四年三月三一日、同都同区中央七丁目四番一八号所在の所轄大森税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が一億七四三四万九六八七円で、これに対する法人税額が六四六一万一〇〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(平成七年押第一六四六号の1)を提出し、そのまま申告期限延長承認後の納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、被告会社の右事業年度における正規の法人税額一億〇二三七万六二〇〇円と右申告税額との差額三七七六万五二〇〇円(別紙2のほ脱税額計算書参照)を免れた

第二  平成四年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が二億五〇八七万六四八四円(別紙1(2)の修正損益計算書参照)であったにもかかわらず、平成五年三月三一日、前記大森税務署おいて、同税務署長に対し、その所得金額が一億六〇〇三万四一七一円で、これに対する法人税額が五九二四万七五〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(同押号の2)を提出し、そのまま申告期限延長承認後の納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、被告会社の右事業年度における正規の法人税額九三三一万三三〇〇円と右申告税額との差額三四〇六万五八〇〇円(別紙2のほ脱税額計算書参照)を免れた

第三  平成五年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が三億二五五〇万四六八八円(別紙1(3)の修正損益計算書参照)であったにもかかわらず、平成六年三月三一日、前記大森税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が一億五三七三万九九〇七円で、これに対する法人税額が五六八二万〇九〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(同押号の3)を提出し、そのまま申告期限延長承認後の納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、被告会社の右事業年度における正規の法人税額一億二一二三万二八〇〇円と右申告税額との差額六四四一万一九〇〇円(別紙2のほ脱税額計算書参照)を免れた

ものである。

(証拠の標目)

判示全部の事実について

一  被告人及び被告会社代表者の当公判廷における各供述

一  被告人の検察官に対する平成七年七月五日付け(二通)、同月一〇日付け及び同月一一日付け各供述調書

一  石田とき子、高橋幸雄及び虫賀照夫の検察官に対する各供述調書

一  大蔵事務官作成の期首材料棚卸高調査書、期末材料棚卸高調査書、外注費調査書、雑収入調査書及び事業税認定損調査書

一  検察事務官作成の平成七年七月三日付け及び同月一一日付け(五通。但し、期首材料棚卸高についてのもの、期末材料棚卸高についてのもの、外注費についてのもの、雑収入についてのもの及び事業税認定損についてのもの)各捜査報告書

一  押収してある申告期限の延長の特例の申請書一袋(平成七年押第一六四六号の4)

判示冒頭の事実について

一  登記官作成の登記簿謄本二通

判示第一、第二の各事実について

一  大谷英司の検察官に対する供述調書

判示第一、第三の各事実について

一  立澤健治の検察官に対する供述調書

一  検察事務官作成の平成七年一二月一一日付け捜査報告書

判示第一の事実について

一  熊谷徹及び内海功の検察官に対する各供述調書

一  押収してある法人税確定申告書一袋(同押号の1)

判示第二、第三の各事実について

一  松岡繁喜の検察官に対する供述調書

一  大蔵事務官作成の材料費調査書及び修繕費調査書

判示第二の事実について

一  被告人の検察官に対する平成七年七月一三日付け供述調書(但し、本文二七丁綴りのもの)

一  川中三平の検察官に対する供述調書

一  加藤勝敏の大蔵事務官に対する質問てん末書

一  大蔵事務官作成の雑損失調査書

一  検察事務官作成の平成七年七月一一日付け捜査報告書(但し、雑損失についてのもの)

一  押収してある法人税確定申告書一袋(同押号の2)

判示第三の事実について

一  被告人の検察官に対する平成七年七月一三日付け供述調書(但し、本文三六丁綴りのもの)

一  和田家輔の検察官に対する供述調書(二通)

一  有馬純雄の大蔵事務官に対する質問てん末書

一  大蔵事務官作成の外注工賃調査書

一  押収してある法人税確定申告書一袋(同押号の3)

(法令の適用)

一  罰条

1  被告会社

判示各事実につき、いずれも法人税法一六四条一項、一五九条一項、二項(情状による)

2  被告人

判示各所為につき、いずれも法人税法一五九条一項

二  刑種の選択

被告人につき、いずれも懲役刑

三  併合罪の処理

1  被告会社

刑法(刑法は、平成七年法律第九一号による改正前のもの。以下、同様)四五条前段、四八条二項

2  被告人

刑法四五条前段、四七条本文、一〇条(犯情の最も重い判示第三の罪の刑に法定の加重)

四  刑の執行猶予

被告人につき、刑法二五条一項

(量刑の理由)

本件は、建築用石材工事業等を目的とする被告会社が、三事業年度にわたり合計一億三六〇〇万円余の法人税を免れた事案であるが、ほ脱税額は相当大きく、ほ脱率も通算約四二・九パーセントに達している上、その手口は、被告会社の仕入先や外注先に依頼して、架空あるいは水増しした請求書等を作成させるなどして、架空・水増しの外注工賃等を計上するなど、計画的かつ悪質なものであり、また、脱税の動機をみても、被告人は、被告会社及び自分の家族のため、業績が好調なうちにできる限り資金を蓄えておきたかったなどと述べているが、そのような事情があるにせよ違法な手段による蓄財が許容される訳ではなく、格別斟酌するに値しないものであって、これらの諸点からすると被告人及び被告会社の刑事責任は重いというべきである。しかしながら、他方、被告会社はその後修正申告の上本件に関する本税、延滞税等を完納していること、被告人は本件各犯行を反省し、現在では被告会社の代表取締役を退任してもいること、被告人には業務上過失傷害罪による古い罰金前科が一犯あるのみで、それ以外には前科がないことなど、被告人及び被告会社のために酌むべき諸事情も認められる。そこで、当裁判所は、以上のほか一切の情状を考慮し、主文のとおり量刑した次第である。

よって、主文のとおり判決する。

(求刑 被告会社・罰金四〇〇〇万円、被告人・懲役一年六月)

(裁判官 平木正洋)

別紙2

ほ脱税額計算書

石株式会社

<省略>

石株式会社

<省略>

石株式会社

<省略>

別紙1(1)

修正損益計算書

<省略>

別紙1(2)

修正損益計算書

<省略>

別紙1(3)

修正損益計算書

<省略>

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