東京地方裁判所 平成7年(行ウ)118号 判決 1995年7月20日
主文
一 本件訴えをいずれも却下する。
二 訴訟費用は原告らの負担とする。
理由
一 原告らの請求の趣旨及び原因は、別紙訴状写し記載のとおりであり、原告らの主張するところは、要するに、平成七年六月九日に衆議院で行われた「歴史を教訓に平和への決意を新たにする決議」(以下「本件決議」という。)は、衆議院における十分な討議も尽くされず、法定議席数の過半数の議員が欠席する状況でなされたものであり、その内容において国民の思想及び良心の自由を侵害するものであるなどとして、被告に対して、その無効確認を求めるというものである。
二 ところで、裁判所は、日本国憲法に特別の定めのある場合を除いて一切の法律上の争訟を裁判する権限を有する(裁判所法三条)ものであるが、そこにいう法律上の争訟とは、当事者間の具体的な権利義務ないし法律関係の存否に関する紛争であり、かつ、それが法律の適用によつて終局的に解決し得べきものであることを要すると解される。
しかるに、原告らの本件訴えは、立法府である衆議院が決意の表明として決議を行つた本件決議について、抽象的、一般的にその無効確認を求めるものであるのみならず、原告らが本件訴えにおいて求めるところは、結局、衆議院が政治的又は道義的な見地から自ら決すべき事柄であつて、裁判所が法律の適用によつて終局的に解決し得べき事柄ではなく、裁判所の権限に属するものと認めることはできないというべきである。
そうすると、本件訴えは、裁判所法三条に定める法律上の争訟に当たらないものであることは明らかであるから、不適法な訴えというべきであり、また、その欠缺を補正することができないことも明らかである。
三 よつて、行政事件訴訟法七条、民事訴訟法二〇二条により、本件訴えをいずれも却下することとする。
(裁判長裁判官 秋山寿延 裁判官 竹田光広 裁判官 岡田幸人)