東京地方裁判所 平成8年(ワ)8728号 判決 1996年10月23日
主文
一 被告は、原告三島康裕に対し、金一〇万円及びこれに対する平成七年三月二一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
二 被告は、原告エイアイユーインシユアランスカンパニーに対し、金五九万四〇六〇円及びこれに対する平成七年五月二七日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
三 訴訟費用は被告の負担とする。
四 この判決は仮に執行することができる。
事実及び理由
第一請求
主文同旨
第二事案の概要(当事者間に争いがない)
一 本件事故の発生
1 事故日時 平成七年三月一二日午前六時四九分ころ
2 事故現場 横浜市保土ケ谷区常盤台一八番地先道路(以下「本件道路」いう。)
3 原告車 普通乗用自動車
運転者 原告三島康裕(以下「原告三島」という。)
所有者 原告三島
4 被告車 普通乗用自動車
運転者 被告
5 事故態様 原告が追突事故を起こして本件道路に停止中、後方から進行してきた被告車が追突し、原告車の後部が破損した。
二 責任原因
被告は、前方を注視して進行すべき注意義務があるにもかかわらず、これを怠つて進行した過失によつて本件事故を起こしたのであるから、民法七〇九条により損害を賠償する責任を負う。
三 争点
原告は、「原告車は本件事故によつて後部を破損し、原告三島は、その修理費として六九万四〇六〇円を要した。原告エイアイユーインシユアランスカンパニー(以下「原告会社」という。)と原告三島は、平成六年六月三〇日ころ、保険の目的を原告車とする車両保険契約を締結し、原告会社は、右保険契約に基づき、平成七年五月二六日、原告三島に対し、免責金額一〇万円を控除した金五九万四〇六〇円を支払つたので、原告会社は、原告三島が被告に対して有する同額の損害賠償請求権を商法六六二条に基づいて代位取得した。よつて、被告は、原告三島に対して免責分の一〇万円及び平成七年三月二一日から支払済みまで年五分の割合による遅延損害金を、原告会社に対して代位取得した五九万四〇六〇円及び原告会社が原告三島に弁済をした翌日である平成七年五月二七日から支払済みまで年五分の割合による遅延損害金を、それぞれ支払うべきである。」と主張するのに対し、被告は、「原告三島は、本件事故前に追突事故を起こし(以下「第一事故」という。)、原告車は前部を破損し、修理代金として五四万二〇三〇円を要するところ、原告車の本件事故時の時価は八八万円であり、第一事故による修理費と本件事故による修理費六九万四〇六〇円との合計が原告車の本件事故時の時価を超えるので、経済的全損となり、被告は、本件事故時の時価と第一事故による修理費の差額三三万七九七〇円しか責任を負わない。」と主張している。
第三争点に対する判断
一 原告三島が第一事故を起こしたこと、第一事故による原告車の修理代金が五四万二〇三〇円、本件事故による原告車の修理代金が六九万四〇六〇円であること、原告車の本件事故時の時価は八八万円であること、原告会社が、保険契約に基づき、平成七年五月二六日、原告三島に対し、免責金額一〇万円を控除した金五九万四〇六〇円を支払つたこと、第一事故と本件事故の間には因果関係はなく、かつ、第一事故と本件事故は共同不法行為の関係にはなく、別個独立した事故であることは当事者間に争いがない。
二 ところで、加害者は、当該加害行為と相当因果関係の認められる損害について賠償するものであるから、車両の毀損による損害が、いわゆる経済的全損になるか否かも、当該加害者の加害行為によつて生じた損害による修理費が、当該車両の事故当時の時価を上回るかを基準に判断すべきものであり、加害行為と因果関係の認められない事情や共同不法行為の関係にない事情によつて生じた損害に関する修理費をも考慮して判断すべきものではないことは明らかである。また、本件事故時の原告車の時価が、八八万円から第一事故の修理費を控除した価額に下落したと認めるに足りる証拠はない。
よつて、被告の主張は採用できない。
第四結論
以上の次第で、原告らの請求はいずれも理由がある。
(裁判官 堺充廣)