東京地方裁判所 平成8年(ワ)9995号 判決 1997年9月24日
原告
小竹信子
ほか一名
被告
丸大工運株式会社
ほか四名
主文
一1 被告丸大工運株式会社及び被告大倉運輸株式会社は、原告小竹信子に対し、各自金四九七万〇四九〇円及びこれに対する平成六年一〇月一七日から支払済みまで年五分の割合による金員を、
2 被告丸大工運株式会社及び被告大倉運輸株式会社は、原告小竹ゆう子に対し、各自金四〇三万〇四九〇円及びこれに対する平成六年一〇月一七日から支払済みまで年五分の割合による金員を、
それぞれ支払え。
二1 被告三井海上火災保険株式会社及び被告東京海上火災保険株式会社は、原告小竹信子に対し、各自金四九七万〇四九〇円及びこれに対する、<1>被告三井海上火災保険株式会社は平成七年三月一日から支払済みまで年五分の割合による金員を、<2>被告東京海上火災保険株式会社は平成七年二月二三日から支払済みまで年五分の割合による金員を、
2 被告三井海上火災保険株式会社及び被告東京海上火災保険株式会社は、原告小竹ゆう子に対し、各自金四〇三万〇四九〇円及びこれに対する、<1>被告三井海上火災保険株式会社は平成七年三月一日から支払済みまで年五分の割合による金員を、<2>被告東京海上火災保険株式会社は平成七年二月二三日から支払済みまで年五分の割合による金員を、
それぞれ支払え。
三 原告らの、
1 被告丸大工運株式会社、被告大倉運輸株式会社、被告三井海上火災保険株式会社及び被告東京海上火災保険株式会社に対するその余の請求を、
2 被告神奈川県自動車交通共済協同組合に対する請求を、
いずれも棄却する。
四 訴訟費用中、
1 原告らと、被告丸大工運株式会社、被告大倉運輸株式会社、被告三井海上火災保険株式会社及び被告東京海上火災保険株式会社との間で生じたものは、これを五分し、その四を原告らの負担とし、その余を右被告らの負担とし、
2 原告らと被告神奈川県自動車交通共済協同組合との間で生じたものは原告らの負担とする。
五 この判決は、第一項(1及び2)並びに第二項(1及び2)に限り、仮に執行することができる。
事実及び理由
第一請求
一 被告丸大工運株式会社及び被告大倉運輸株式会社は、
1 原告小竹信子に対し、各自金三七〇一万三二九六円及びこれに対する平成六年一〇月一七日から支払済みまで年五分の割合による金員を、
2 原告小竹ゆう子に対し、各自金三四七六万六五五二円及びこれに対する平成六年一〇月一七日から支払済みまで年五分の割合による金員を、
それぞれ支払え。
二 被告神奈川県自動車交通共済協同組合は、原告らの被告丸大工運株式会社に対する判決が確定したときは、
1 原告小竹信子に対し、金三七〇一万三二九六円及びこれに対する平成六年一〇月一七日から支払済みまで年五分の割合による金員を、
2 原告小竹ゆう子に対し、各自金三四七六万六五五二円及びこれに対する平成六年一〇月一七日から支払済みまで年五分の割合による金員を、
それぞれ支払え。
三 被告三井海上火災保険株式会社及び被告東京海上火災保険株式会社は、
1 原告小竹信子に対し、各自金一二四八万三三六九円及びこれに対する平成七年二月二三日から支払済みまで年五分の割合による金員を、
2 原告小竹ゆう子に対し、各自金一二四八万三三六九円及びこれに対する平成七年二月二三日から支払済みまで年五分の割合による金員を、
それぞれ支払え。
第二事案の概要
一 争いのない事実及び容易に認められる事実
1 小竹伸夫は、小山方面から黒磯方面へ向かって新国道四号線(以下「本件道路」という。)を普通乗用自動車(以下「小竹車」という。)で走行中、平成六年一〇月一七日午前一時三〇分ころ、栃木県宇都宮市砂田町一番地一二の本件道路において、山田洋一郎運転の業務用大型貨物自動車(被告丸大工運株式会社保有。以下「山田車」という。)が、路外のガソリンスタンドから本件道路に右折進入中であったが車長が一八・七四メートルあった(トラクター部、トレーラー部を含む。)ため一度に右折しきれず本件道路をふさぐように停車していたところ、小竹車が山田車のトレーラー部右側面に衝突し、更に小竹車の後ろを走行していた相馬初夫運転の業務用大型貨物自動車(被告大倉運輸株式会社保有。以下「相馬車」という。)に追突されたため、そのころ死亡した(以下「本件交通事故」という。)。
2(一) 被告丸大工運株式会社及び被告大倉運輸株式会社は、自賠法三条本文に基づき、本件交通事故による損害を賠償すべき義務を負う。
(二) 被告三井海上火災保険株式会社は被告丸大工運株式会社と山田車につき、被告東京海上火災保険株式会社は被告大倉運輸株式会社と相馬車につき、それぞれ保険金額を三〇〇〇万円とする自賠責保険契約を締結した。
したがって、被告三井海上火災保険株式会社及び被告東京海上火災保険株式会社は、原告らに対し、自賠法一六条一項に基づき、右保険金額の限度で損害を賠償すべき義務を負う。
(三) 被告神奈川県自動車交通共済協同組合は、被告丸大工運株式会社と山田車につき対人共済契約を締結した。
したがって、被告神奈川県自動車交通共済協同組合は、原告らに対し、原告らと被告丸大工運株式会社の間で、本件訴訟の判決が確定したときに、保険金を支払うべき義務を負う。
3 原告小竹信子は小竹伸夫の妻であり、原告小竹ゆう子は小竹伸夫の子であるから、原告らは小竹伸夫の権利を二分の一ずつ相続した(甲第八号証の一ないし三)。
4(一) 原告らは、被告三井海上火災保険株式会社及び被告東京海上火災保険株式会社に対し、自賠法一六条一項に基づき、被害者請求したところ、それぞれから一七五一万六六三一円(合計三五〇三万三二六二円)の支払を受けた。
なお、原告らが、被告三井海上火災保険株式会社に対し右請求をしたのは平成七年二月二八日であり(丁第三号証)、被告東京海上火災保険株式会社に対し右請求をしたのは平成七年二月二二日である。
(二) したがって、被告三井海上火災保険株式会社は平成七年三月一日から、被告東京海上火災保険株式会社は平成七年二月二三日から遅延損害金を支払うべき義務がある。
二 争点
1 原告らの主張
(一) 過失相殺について
本件道路は、交通量の多い道路で、他の車両の流れに逆らわないで走行するには、法定最高速度時速六〇キロメートルを超える時速七〇キロメートルないし八〇キロメートルで走行しなければならないから、小竹車が時速七〇キロメートルないし八〇キロメートルで走行していたことをもって、小竹伸夫の過失とすべきではない。
また、本件交通事故が起きたのは夜間であり、付近には街路灯のない暗い道路で、ガソリンスタンドの明かりが道路を照らしていたとしてもかえって本件交通事故現場付近は遠方から見にくい状況であった。そのため、山田洋一郎は、路外から本件道路に右折進入する際、本件道路を走行中の車両を妨げないよう細心の注意が要求され、補助者ないしガソリンスタンドの従業員に安全確認をさせたり、警告灯を振らせるなどをすべき義務があり、また、山田車の側面にも大きな警告灯を設置し、その点灯させ、警音器を鳴らすなどすべき義務があったにもかかわらず、これを怠った。
したがって、小竹伸夫には、本件交通事故につき過失はない。
(二) 損害について
(1) 小竹伸夫の損害について
ア 逸失利益 七三五六万六三六七円
小竹伸夫は、昭和四一年三月早稲田大学を卒業し、同年四月上野ケミカルタンカー株式会社に入社した。昭和五四年、上野ケミカルタンカー株式会社の国際部門が分離されて東京ケミカルタンカー株式会社が設立された際、東京ケミカルタンカー株式会社の設立に参加、その後、平成元年取締役に就任し、平成六年八月三一日東京ケミカルタンカー株式会社を退職した。年収は、退職する前年の平成五年が一一八一万二六五三円、退職した年の平成六年一月一日から同年八月三一日までが七七〇万五五九九円であった。
ところで、小竹伸夫は、妻である原告小竹信子の郷里(福島県郡山市)に、平成四年新築の家があり、また、退職後、郷里で生活していく予定であったため、郡山市で再就職先を探していたところ、平成六年九月中旬ころ、興亜火災海上保険株式会社郡山支社から内定を得た。
さらに、安田火災海上保険株式会社郡山支社が管理職を募集していたことから、平成六年一〇月一五日、筆記試験を受けたところ、同日夕刻、電話で「筆記試験は優秀な成績で合格した。一〇月一七日午後一時から面接試験を行うので来社願いたい。」と連絡があった。そこで、右面接試験を受けるため、松戸の自宅から郡山まで向かう途中、本件交通事故に遭った。
そして、興亜火災海上保険株式会社郡山支社及び安田火災海上保険株式会社郡山支社の採用は、将来、代理店として独立させる含みのものであり、年収は東京ケミカルタンカー株式会社のものを上回る見込みであった。
したがって、逸失利益は、本件交通事故前年(平成五年)の年収一一八一万二六五三円、生活費控除率四〇パーセント、就労可能年数一五年(小竹伸夫は本件交通事故当時五二歳であった。)に相当するライプニッツ係数一〇・三七九六に基づき算定すると、次の数式のとおり、七三五六万六三六七円となる。
11,812,653×(1-0.4)×10.3796=73,566,367
なお、年収一一八一万二六五三円は、賃金センサス平成六年産業計、企業規模計、大卒五二歳男子労働者の平均年収一〇四二万円に比しても高すぎない。
イ 慰謝料 二六〇〇万〇〇〇〇円
(2) 原告小竹信子固有の損害について
葬儀費用及び仏壇仏具代 二二四万六七四四円
(3) 原告らのそれぞれの損害について
弁護士費用 二五〇万〇〇〇〇円
原告らは、それぞれ弁護士費用二五〇万円の損害を受けた。
(4) 原告小竹信子の損害合計 三七〇一万三二九六円
前記(1)の合計九九五六万六三六七円の二分の一(原告小竹信子の相続分。前記一3)に相当する四九七八万三一八三円、前記(2)の二二四万六七四四円、前記(3)の二五〇万円の以上合計五四五二万九九二七円から、既払金一七五一万六六三一円(前記一4(一))を控除した金額である。
(5) 原告小竹ゆう子の損害合計 三四七六万六五五二円
前記(1)の合計九九五六万六三六七円の二分の一(原告小竹ゆう子の相続分。前記一3)に相当する四九七八万三一八三円、前記(3)の二五〇万円の以上合計五二二八万三一八三円から、既払金一七五一万六六三一円(前記一4(一))を控除した金額である。
2 被告らの主張
(一) 過失相殺について
本件交通事故現場はガソリンスタンドの照明で明るかったから、小竹伸夫は、山田車が本件道路をふさいでいたのを発見することができたにもかかわらず、時速約七〇キロメートルないし八〇キロメートルで山田車に衝突した。
したがって、小竹伸夫の右過失も損害賠償額の算定の際に考慮すべきである。
(二) 損害について
(1) 小竹伸夫の損害について
ア 逸失利益
小竹伸夫が、仮に興亜火災海上保険株式会社郡山支社又は安田火災海上保険株式会社郡山支社に採用され、その後、代理店を営んだとしても、東京ケミカルタンカー株式会社から得ていた一一八一万二六五三円の年収を得られたとはいえない。
イ 慰謝料
争う。
(2) 原告小竹信子固有の損害について
争う。
(3) 原告らそれぞれの損害について
争う。
3 被告神奈川県自動車交通共済協同組合固有の主張
被告神奈川県自動車交通共済協同組合と被告丸大工運株式会社の間で締結された共済契約には、一回の対人事故による損害の額が自賠責保険金を超過する場合に限り、その超過額につき保険金を支払う旨定められている。
したがって、被告神奈川県自動車交通共済協同組合が支払うべき保険金は、自賠責保険金を超える額についてである。
第三当裁判所の判断
一 過失相殺について
1 相馬初夫は、小竹車が山田車に衝突して初めて山田車に気付いた旨述べている(甲第一一号証一一丁・一二丁)が、小竹車がノーブレーキでストップランプが付かなかったため、山田車に気付くのが遅れたとも述べていること(甲第一一号証一一丁・一二丁)からすると、相馬初夫は、小竹車に追従して相馬車を走行させ、前方の注視を十分にしていなかったとうかがえ、小竹車が山田車に衝突して初めて山田車に気付いた旨を相馬初夫が述べていることをもって、小竹伸夫が山田車を発見できなかったとまではいえない。
2 そして、本件交通事故現場付近は、街灯等は設置されていないが、ガンリンスタンドの照明により薄明かりが差しており(甲第九号証一丁裏)、小竹車も前照灯を付けていたと考えられるから、仮に、山田車のヘッドランプが路外の畑の方を向いており、山田車のトレーラー荷台の車幅灯(黄色のマーカーランプ)が、四ないし五個点灯していたものの低床車で荷物のカバーが掛かりさほど明るくなかったとしても(甲第一一号証一一丁・一二丁)、小竹伸夫が、山田車を発見することができなかったとは考えにくいことに加え、小竹伸夫が急ブレーキを掛けていないこと(小竹車のスリップ痕が無い。甲第九号証)からすると、小竹伸夫は、前方を十分に注視していなかったため、山田車の発見が遅れ、小竹車の速度が、法定最高速度時速六〇キロメートルを超える時速七〇キロメートルないし八〇キロメートルであった(原告らの自認するところである。前記第二の二1(一))ため、回避行動を採ることができずに山田車に衝突したと推認できる。
3 ところで、原告らは、本件道路を走行する車両の速度が通常時速七〇キロメートルないし八〇キロメートルであるから、小竹車が時速七〇キロメートルないし八〇キロメートルで走行していたことをもって、小竹伸夫の過失とすべきでないと主張する(前記第二の二1(一))。
しかしながら、本件交通事故(午前一時三〇分ころ)後間もなく行われた実況見分(午前三時四〇分から午前四時五〇分まで)の際、本件道路の交通量が閑散としていたこと(甲第九号証一丁裏)から、本件交通事故当時の交通量も同様であったと推認でき(このことは甲第一一号証五丁・一〇丁の記載からもうかがえる。)、小竹伸夫が時速七〇キロメートルないし八〇キロメートルで走行すべき事情は認められない。
したがって、原告らの右主張は前提を欠くものであって失当である。
4 以上のことからすると、小竹伸夫には、本件交通事故につき三割の過失があるというべきである。
二 損害について
1 小竹伸夫の損害について
(一) 逸失利益 三四七〇万六〇六〇円
(1) 原告小竹信子は、小竹伸夫が、本件交通事故がなければ、興亜火災海上保険株式会社郡山支社又は安田火災海上保険株式会社郡山支社に採用され、その後これらの代理店として独立した場合、東京ケミカルタンカー株式会社から得ていた一一八一万二六五三円を上回る年収を得ることができたと供述する(甲第一八号証四項、同人の本人調書九項・二三項)。
(2) しかし、原告小竹信子の右供述は、何ら具体的根拠に基づくものでない上に、興亜火災海上保険株式会社福島支店郡山営業課は、<1>小竹伸夫が、平成六年一〇月当時、保険代理店又は代理店研修生その他同社の業務に関連する地位に就いていた事実はない。<2>代理店研修生の身分は将来代理店として独立するまでの嘱託社員(期間は三年間)、収入は固定給プラス歩合給であるが、小竹伸夫が前勤務先で得ていた月収(九〇万円前後)には遠く及ばず、せいぜい三分の一か、良くて半分である。としていること(乙第二号証)、安田火災海上保険株式会社福島支店郡山支社は、<1>専任社員の募集をしたが年収額は約三二〇万円ないし五〇〇万円である。<2>小竹伸夫が採用される可能性は面接をしていないので不明である。としていること(乙第一号証、調査嘱託の結果)からすると、小竹伸夫が、興亜火災海上保険株式会社又は安田火災海上保険株式会社に採用されるとまで直ちには認められず、仮に、同社に採用され、その後、代理店として独立した場合であっても、小竹伸夫が一一八一万二六五三円の年収を得られたとまでは認められない。
(3) 以上のことを総合すると、小竹伸夫の年収は、五五七万二八〇〇円(賃金センサス平成六年第一巻第一表の産業計、企業規模計、学歴計、男子労働者の全年齢平均の賃金額)とすべきである。
そして、小竹伸夫の本件交通事故当時の年齢は五二歳である(甲第八号証の三)から一五年就労可能であり(一五年のライプニッツ係数は一〇・三七九六である。)、生活費控除率を四〇パーセント(原告ら主張のとおりである。)とすべきである。
(4) したがって、小竹伸夫の逸失利益は、次の数式のとおり、三四七〇万六〇六〇円となる。
5,572,800×(1-0.4)×10.3796=34,706,060
(二) 慰謝料 二六〇〇万〇〇〇〇円
弁論に現れた諸般の事情を考慮すると慰謝料は二六〇〇万円とするのが相当である。
2 原告小竹信子固有の損害について
葬儀費用及び仏壇仏具代 一二〇万〇〇〇〇円
原告小竹信子が葬儀費用及び仏壇仏具代として合計二二四万六七四四円支出した(甲第四号証の一・二、第五号証の一・二、第六号証の一ないし三)ところ、本件交通事故と相当因果関係があるのはそのうち一二〇万円と認められる。
3 原告小竹信子の損害合計 四九七万〇四九〇円
前記1の合計六〇七〇万六〇六〇円の二分の一(原告小竹信子の相続分。前記第二の一3)に相当する金額三〇三五万三〇三〇円、前記2の一二〇万円の以上合計三一五五万三〇三〇円、小竹伸夫に三割の過失があること(前記一)、既払金が一七五一万六六三一円あること(前記第二の一4(一))、本件訴訟の経緯・認容額から弁護士費用は四〇万円とすべきことからすると、原告小竹信子の損害合計は、次の数式のとおり、四九七万〇四九〇円である。
31,553,030×(1-0.3)-17,516,631+400,000=4,970,490
4 原告小竹ゆう子の損害合計 四〇三万〇四九〇円
前記1の合計六〇七〇万六〇六〇円の二分の一(原告小竹ゆう子の相続分。前記第二の一3)に相当する金額三〇三五万三〇三〇円、小竹伸夫に三割の過失があること(前記一)、既払金が一七五一万六六三一円あること(前記第二の一4(一))、本件訴訟の経緯・認容額から弁護士費用は三〇万円とすべきことからすると、原告小竹ゆう子の損害合計は、次の数式のとおり、四〇三万〇四九〇円である。
30,353,030×(1-0.3)-17,516,631+300,000=4,030,490
三 被告神奈川県自動車交通共済協同組合固有の主張(前記第二の二3)について
共済契約が、一回の対人事故による損害の額が自賠責保険金を超過する場合に限り、その超過額につき保険金を支払う旨定められていることは当裁判所に顕著である。
そして、自賠責保険金の残額は、被告三井海上火災保険株式会社及び被告東京海上火災保険株式会社につき、それぞれ一二四八万三三六九円である(三〇〇〇万円(自賠法施行令二条一項一イ参照)から既払金一七五一万六六三一円(前記第二の一4(一))を控除した金額)ところ、原告小竹信子の損害合計四九七万〇四九〇円、原告小竹ゆう子の損害合計四〇三万〇四九〇円(前記二3、4)をいずれも上回る。
したがって、一回の対人事故による損害の額が自賠責保険金を超過しないから、被告神奈川県自動車交通共済協同組合固有の主張は理由があり、原告らの被告神奈川県自動車交通共済協同組合に対する請求はいずれも失当である。
四 結論
よって、原告らの請求は、
1(一) 原告小竹信子は、被告丸大工運株式会社及び被告大倉運輸株式会社に対し、各自金四九七万〇四九〇円及びこれに対する平成六年一〇月一七日から支払済みまで年五分の割合による金員の支払を、
(二) 原告小竹ゆう子は、被告丸大工運株式会社及び被告大倉運輸株式会社に対し、各自金四〇三万〇四九〇円及びこれに対する平成六年一〇月一七日から支払済みまで年五分の割合による金員の支払を、
2(一) 原告小竹信子は、被告三井海上火災保険株式会社及び被告東京海上火災保険株式会社に対し、各自金四九七万〇四九〇円及びこれに対する、<1>被告三井海上火災保険株式会社が平成七年三月一日から支払済みまで年五分の割合による金員の支払を、<2>被告東京海上火災保険株式会社が平成七年二月二三日から支払済みまで年五分の割合による金員の支払を、
(二) 原告小竹ゆう子は、被告三井海上火災保険株式会社及び被告東京海上火災保険株式会社に対し、各自金四〇三万〇四九〇円及びこれに対する、<1>被告三井海上火災保険株式会社が平成七年三月一日から支払済みまで年五分の割合による金員の支払を、<2>被告東京海上火災保険株式会社が平成七年二月二三日から支払済みまで年五分の割合による金員の支払を、
求める限りで理由があるから認容し、その余は理由がないからいずれも棄却し、主文のとおり判決する。
(裁判官 栗原洋三)