東京地方裁判所 平成8年(特わ)1413号 判決 1996年8月09日
裁判所書記官
村瀬雅春
本籍
東京都大田区東六郷三丁目八番
住居
東京都大田区久が原六丁目一八番一四号
会社員
石田宏信
昭和三八年四月一一日生
右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官立澤正人、弁護人小林喜浩各出席の上審理し、次のとおり判決する。
主文
被告人を懲役一年六月及び罰金三五〇〇万円に処する。
右罰金を完納することができないときは金二〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
この裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は、東京都大田区久が原六丁目一番一五号久が原テラスハウスB号(平成四年三月三一日以前は、同区蒲田一丁目一番一〇-一〇一号、平成四年一〇月三一日以前は、同区大森中二丁目一番一-九〇一号。なお、平成六年一二月一日以降は肩書住居地)に居住し、東京都大田区等において、いわゆるゲーム喫茶を営んでいたものであるが、自己の所得税を免れようと企て、日々の売上を記載した集計票を破棄し、かつ、自己の従業員が経営者であるかのように装って所得を秘匿した上、
第一 平成三年分の実際総所得金額が八六三四万六〇六〇円(別紙1の修正損益計算書参照)であったにもかかわらず、右所得税の納期限である平成四年三月一六日までに東京都大田区蒲田本町二丁目一番二二号所在の所轄蒲田税務署長に対し、所得税確定申告書を提出しないで右期限を徒過させ、もって、不正の行為により、平成三年分の所得税額三八一五万三四〇〇円(別紙4のほ脱税額計算書参照)を免れ
第二 平成四年分の実際総所得金額が一億三六一五万〇三四八円(別紙2の修正損益計算書参照)であったにもかかわらず、平成五年三月一五日、前記蒲田税務署において、同税務署長に対し、その総所得金額が一五〇〇万円でこれに対する所得税額が二四七万一二〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書(平成八年押第一一〇五の1)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、平成四年分の正規の所得税額六三三五万九五〇〇円と右申告税額との差額六〇八八万八三〇〇円(別紙4のほ脱税額計算書参照)を免れ
第三 平成五年分の実際総所得金額が一億〇一六八万二五一六円(別紙3の修正損益計算書参照)であったにもかかわらず、右所得税の納期限である平成六年三月一五日までに東京都大田区雪谷大塚町四番一二号所在の所轄雪谷税務署長に対し、所得税確定申告書を提出しないで、右期限を徒過させ、もって、不正の行為により、平成五年分の所得税額四五九四万四〇〇〇円(別紙4のほ脱税額計算書参照)を免れ
たものである。
(証拠の標目)
判示事実全部について
一 被告人の当公判廷における供述
一 被告人の検察官に対する供述調書一〇通
一 被告人の大蔵事務官に対する質問てん末書
一 石田伸二の検察官に対する供述調書
一 原口文一、加我洋幸、金子正男及び宮城猛の大蔵事務官に対する各質問てん末書
一 検察事務官作成の売上、水道光熱費、通信費(二通)、給料(二通)及び賃借料に関する各捜査報告書
一 大蔵事務官作成の通信費調査書、消耗品費調査書、減価償却費調査書、繰延資産償却費調査書、雑費調査書、広告宣伝費調査書、社会保険料控除調査書、生命保険料控除調査書及び配偶者控除調査書
一 検察事務官作成の所轄税務署の所在地等に関する捜査報告書
判示第一及び第二の各事実について
一 大蔵事務官作成の給与収入調査書、給与所得控除(給与所得)調査書及び源泉徴収税額調査書
判示第一及び第三の各事実について
一 大蔵事務官作成の除去損調査書、扶養控除調査書及び基礎控除調査書
判示第二及び第三の各事実について
一 白石勝己、窪田久夫及び笠島大幹の大蔵事務官に対する各質問てん末書
一 大蔵事務官作成の租税公課調査書及び車両費調査書
判示第一の事実について
一 大蔵事務官作成の医療費控除調査書
判示第二の事実について
一 大蔵事務官作成の収入金額(不動産所得)調査書、必要経費(不動産所得)調査書及び領置てん末書
一 押収してある平成四年分の所得税確定申告書一袋(平成八年押第一一〇五号の1)及び収支内訳書一袋(同押号の2)
(法令の適用)
※ 以下の「刑法」は、平成七年法律第九一号による改正前のものである。
一 罰条
いずれも所得税法二三八条一項、二項(情状による)。
二 刑種の選択 懲役刑と罰金刑を併科。
三 併合罪の処理
刑法四五条前段。懲役刑につき同法四七条本文、一〇条(犯情の最も重い判示第二の罪の刑に法定の加重)。
罰金刑につき同法四八条二項。
四 労役場留置 刑法一八条。
五 刑の執行猶予 刑法二五条一項(懲役刑につき)
(量刑の理由)
本件は、ゲーム喫茶を経営していた被告人が、三年度にわたり、合計一億四五一五万円余の所得税を脱税した事案であって、二年分は無申告であり、ほ脱率は通算約九八・三パーセント(源泉徴収税額控除後の差引所得税額で計算)の高率に達している。犯行態様も、日々の売上を記載した集計票を破棄した上、自己の従業員が経営者であるかのように装って、所得を秘匿し、無申告及び虚偽過少申告に及んだというもので、相当悪質である。他方、被告人は、事実を認めて反省の態度を示しており、国税当局の指導に従い、起訴外の年分も含めて所得税の確定申告・修正申告をし、地方税をも含めすでに相当額の納税をし、現在も分割納税中であり、かつ、国に所有不動産を担保として提供しており、近い将来において所得税等を完納するとの意向を明らかにしている。被告人には競馬法違反による罰金前科一犯以外には前科がない。
以上のほか一切の事情を総合考慮し、被告人を主文の懲役刑及び罰金刑に処し、今回に限り懲役刑の執行を猶予するのが相当と判断した。
よって、主文のとおり判断する。
(求刑 懲役一年六月及び罰金四五〇〇万円)
(裁判官 安廣文夫)
別紙1
修正損益計算書
(所得金額総括表)
<省略>
(事業所得)
<省略>
(給与所得)
<省略>
別紙2
修正損益計算書
(所得金額総括表)
<省略>
(事業所得)
<省略>
(不動産所得)
<省略>
(給与所得)
<省略>
別紙3
修正損益計算書
(所得金額総括表)
<省略>
(事業所得)
<省略>
別紙4
ほ脱税額計算書
(1) 平成3年分
<省略>
(2) 平成4年分
<省略>
(3) 平成5年分
<省略>